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神様ゲーム(麻耶雄嵩)

神様ゲーム (講談社文庫)

○神様ゲーム 麻耶 雄嵩 講談社文庫

 「神様の電話番号は誰も知らないんじゃないか


 読み終えた人の大多数が「???」になるミステリー。
 え、これで終わり? 説明なし? ってなること請け合い。あまりに突拍子もないのでネット上では神様を信じるか、信じないかで結論が変わる的な読み方もされていますが、それ言っちゃうと小説としての前提全部覆っちゃう。別にこの真相であっても矛盾はない。

 主人公は10歳の誕生日に戦隊のDXロボを買ってもらって喜ぶ普通の小学生。しかし最近近所で猫の惨殺死体が見つかる事件が頻発、クラスの女の子が可愛がっていた猫も被害に遭ってしまう。
 ふとしたキッカケで転校生の鈴木君と話してみると、彼は自分を神様だと言う。あー、はいはい、そういうゲームなのねと思った主人公は彼に調子を合わせて猫殺しの犯人の名前を尋ねるとあっさりと教えられる。そうこうしているうちに殺人事件が発生し、その後も鈴木君は犯人を言い当る。主人公がお願いした犯人への天誅も主人公の予想もしなかった形で実行される。ここに至って主人公は鈴木君を神様と信じざるを得なくなり、また自分の推理が自分にとって苦しい真相と知りながら彼に再び天誅をお願いする。
 しかし下された相手はこれまた主人公の推理を裏切る人物であった。


 実は鈴木君が犯人(あるいはその関係者)なんじゃないの?という想像も読んでいる時はしていたんですが、この小説的には鈴木君は神。これは揺るがせない。一般ミステリーでいう探偵役。神ですから文字どおり神視点。ただあまりに結末が突拍子もないのでそこにまで異論が差し挟まれるのもわかる。
 単に奇をてらっているだけじゃねーかって気もしてきますからね。でも、この小説最初からそういうノリなんですよ。

 この小説がヤバイのは戦隊のネーミングでもわかる。
 「ダビレンジャー」「タルムード司令」「ジェノサイドロボ」「(必殺技は)ファイナル・イェシバー」。
 去年の戦隊は「タクラマカン5」「ネクロフィリアロボ」
 色んな意味で色んな方面にケンカ売ってくスタイル。この世界の人、ネジ外れてますね。

 また神様が告げる真実も酷い。
 曰く、生徒達に人気のある美人教師が不倫関係にある。
 主人公は36歳までしか生きられない、っていうか両親の実の子ではない。
 戦隊のレッドとブルーが飲酒運転でひき逃げ。
 その他、クラスメイトの重大な事実等々、ロクな話がでない。そもそもこの小説は子ども向けミステリーとして出版されたものらしいんだけど、ブラックユーモア集かよってレベル。

 そう、この小説最初から逆張りなんです。一見すると嘘っぽい、突拍子もないことが真実。でも人間はそれを正直に認めたがらない。嘘じゃないのかと疑う。もちろんこれも神様は織込み済。そういう風に人を作っている。物語の最初から最後までこのノリが貫かれていることを考えれば、この結末もまたその一つの事象に過ぎないのだとわかります。この作者非常にやらしい。一歩間違えれば悪趣味。でも世の中実際そんなもんでもある。事実は小説よりも奇なりなんて言葉はしょっちゅう見かける。
 神様が本当にいて、真実を見せてくれているのにそれでも信じられず疑う人々(読者)。この構図絶対狙ってますね。小説の構造を現実にまで延長させている手腕は見事。
 (欲をいえば文体に違和感。主人公の一人称で書かれているため台詞は年齢相応なのに説明(地の文)は大人びている)


[ 2017年02月10日 02:29 ] カテゴリ:本の感想 | TB(0) | CM(-)
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