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記憶力が良すぎる人は思想家になれない(ニーチェ)

 もし見聞きしたことを全て憶えることができたら。

 誰もが一度は考えるフィクションでしかあり得ないような能力を持ったが人が現実にいました。シェレシェフスキー。しかも彼は自分からこの能力について研究してくれるよう名乗ったそうで、多くの研究結果が残っています。
 彼が特異だったのはその記憶力(漫画のようなレベルで本当に全部記憶するし忘れない)とともに共感覚の持ち主だったこと。音から色などの視覚情報を得られたことも記憶力の助けになったのではないかと推測されています。

 しかしこのずば抜けた記憶力には大きな欠点もあって、人の顔を覚えるのがひどく苦手だったそうです。人の表情(感情)は刻一刻と変わるため昨日と今日とで別人のように思えたらしい。彼の記憶力は視覚的な情報に特化されていること、無限ともいえる記憶容量のために見たモノを写真のように一枚一枚保存してしまい連続性が保てなかったようです。そのため論理的・抽象的推理力に欠けていて、リストから鳥の名前だけを取り出すといったことができなかったり、数字の配列から規則性を読み取ることもできなかったそうです。また、言葉や文章の”重さ”を量るなんてどうやったらできるというんだ!と嘆いていたそうな。
 普通の人なら昨日と今日とで若干違っていてもその差に気付かなかったり、変化として受け入れられることでも、完全に記憶しその違いを全て認識できるならそれはもはや別なものに見えてしまう。その意味では記憶力のない人と同じというのは皮肉な話し。

 ここからわかることは、人間の記憶力の不確かさは抽象化や効率的な情報処理の裏返しでもあるということ。昔何かの本で、人間の脳は9割使われていないみたいなことが言われているがそれは違う。100%フルに使ったらあっと言う間にオーバーヒートする。必要最小限で最大限の性能が出せるように効率化された結果だ、ってなことが書かれていたんですがそんな感じですね。


 ちなみにサヴァン症候群でカレンダー計算に特化した人がいるんですが、これも独自の視覚的なカレンダーを持っているのではないかという説があります。彼らは単純な計算ができず、記憶力もそこまであるわけではない。どうやら思考イメージに視覚化されたカレンダーがあって、それを読み取っているのではないか。だから瞬時にパッと日付が出てくるんではないかと。
 これは自閉症であったテンプル・グランディンも似たようなことを言っていて、非常に精巧な立体モデルをイメージすることができたと語っています。記憶力や計算力、思考力に見えるものが実はその人に埋め込まれているイメージの結果なのかもしれませんね。


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[ 2016年04月11日 22:33 ] カテゴリ:よもやま話し | TB(0) | CM(-)
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