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第38話「怪しいワナ…!ひとりぼっちのプリンセス!」

○今週の出来事
①黒須の好感度アップテクニック

 開幕から対ロボット戦。チャンネルを間違えたわけではありません。
 シャットさんが負けるのはいつものことですが、あまりにパターン化しているためか必殺技すら短縮される始末。40秒もあれば十分。前回なら開幕ぶっぱでも余裕でした。
 シャットが逃げ帰る横でクローズは冷静に戦闘を分析。一計を案じます。

 映画宣伝仕様OP。はるかは落ち担当。でもどちらかというとみなみの方が浮いてる感ありますが。


 夜明けとともにジョギング。学校では水やりと朝から活動的なはるか。そんな彼女にフレンドリーに話しかけてくる見知らぬ少年。黒須と名乗ります。何だから健康に良さそうな名前です(実際にある名字のようです)。正体がバレバレなのはこの際お約束なので置くとして、夢がプリンセスであること、学園でも目立った存在であることを指摘。そうなの?とはるかに尋ねられたゆいちゃんは苦笑して誤魔化します。夢が広まっているかはわかりませんが、学園じゃ間違いなく有名人でしょうね。黒須は応援していると言うと人の波に溶け込むように去っていきます。コミュ力高ぇ。
 はるかは自分の夢をカナタ以外でからかわなかったと感銘を受けます。思いのほか好感度アップ。しまった、盲点だった。そんな手があったなんて。


 きららの今度の仕事が南の島と聞いて目を輝かすはるか。水着っすか、その雑誌いつ発売するんですか。今日出発で明後日には帰る日程。仕事も増えてきて順調のようです。その逆にみなみは落ち着かない様子。今晩母の代わりにパーティに呼ばれていると語ります。社交界に出席するなら願ったり叶ったりではないかと喜ぶはるか。しかし意外にもみなみは消極的。こちらも帰りが明後日のため不在の間に何か起ったらと心配。
 行って下さい!とはるかが言うとそれに被せるように黒須が現われ直訴。はるかの顔面白い。自分の夢は大事にするもんだ、と殊勝な発言。黒須に一瞬役目を奪われたはるかですが、彼の言葉に乗ってみなみを応援。そこまで言われればみなみも首を縦に振ります。
 立ち去る黒須に礼を言ったはるかは「自分の夢は大切に」という言葉を反芻します。


 …という話しをカナタにしたら「よくわからないな」と(はるか的に)予想外の言葉が返ってきます。記憶喪失とともに夢についても空白になっているようです。後半のための前振り。彼は夢にこだわりや意味付けを行っていません。はるかはカナタに何か欲しいものは無いかと尋ねます。「とくにないかな」。彼の落ち着きはがっつくものがないからと言えるかもしれません。
 街から帰ってきたはるか達にゆいちゃんが合流。パフとアロマを置いてきた理由をトワが説明している間難しい顔をするはるか。考えを話そうとした瞬間風が吹いてチラシとそれを追いかける黒須が現われます。どんだけテンプレに忠実なんだよ。ちなみにここではるかが言おうとしたのはプレゼント選びの件だと思われます。
 チラシには絵本展の告知が書かれています。早速ゆいちゃんが食いつきます。当然の如く彼女の夢も知っている黒須。もうこれストーカーだろ。一緒に行こうと誘います。はるかに後押しされるとゆいちゃんも首を縦に振ります。なん…だと!? こいつ攻略本でも持ってるのか。全国100万人の視聴者が血の涙を流す大惨事が発生。
 黒須は続けてトワにもアプローチ。直接的な面識がないためか夢を知りません。さぐりを入れますが不審に思ったトワは話す理由はないとキッパリ断ります。グランプリンセスと言っても通じないしね。

 みなみときららを見送ります。
 メンツが減りましたが、明日はゆいちゃんも黒須と美術館。そわそわする彼女にはるかは気が回らない様子。逃げるように部屋に戻ってしまいます。はるかはパフ達を迎えに行ってそのまま買い物の予定。それを聞いたトワは真剣な顔を浮かべると美術館へは自分も同行すると言い出します。黒須に良い印象を持てない。今回は彼女の勘の方が正しい。逆にはるかはバイアスがかかっていて警戒心が低い。元々この子は人を疑わないのですが、自分に共感的で都合の良いイメージを見せられて安心しています。
 「たしかにちょっと変わってるけど、でも良い子だと思うな
 これは彼女の素朴な良さでもあり、欠点にもなり得る部分です。そのことが今回大きくクローズアップされます。


②クローズの罠
 アロマとパフを回収した後、演劇会のお礼にとはるかはカナタへのプレゼントを考えます。
 バイオリンの形をした小物を見つけると早速購入。しかしちょっと目を離した隙にアロマ達が消えてしまいます。

 アロマ達を探すはるかの前に黒須が現われます。不自然なほどのエンカウント率。希によくある。街で見知った顔を見つけたはるかは安心すると駆け寄ります。

 買い物に出ていたカナタは偶然何故かペットショップに閉じ込められているアロマ達を発見。はるかに危険が迫っているとアロマ達は伝えます。

 黒須に相談すると心当たりがあるようです。というかお前ここに居ていいのか。疑問に思ったはるかが尋ねると時間は十分にあるとはぐらかします。一方、美術館は閉店中。そもそも絵本展の予定もない。
 森の中を歩くはるかは黒須の手を患わせたことを詫びつつも、街で一人になって少し寂しくなったことを打ち明けます。黒須の攻略スピードが速いのでサクサク進んでいますが、この展開はベターな問題提起を含んでいます。それぞれが夢を追いかけたら進む方向はバラバラになるよね?という話し。5話でも触れましたが、最近のプリキュアは独立志向です。これはスマイルが転換点です(れいかが海外留学を蹴りつつも最終回でキャンディとの別れを了承)。馴れ合いとケジメですね。自分の意思決定を重視しつつ親しい人と別れることも受け入れる。ドキドキで六花がマナと進路が別れることを納得していたのもその表われです。物理的な距離は精神的な結びつきで克服しています。
 馬脚をあらわすクローズ。

 疑念を強めたトワ達の前に案の定ストップとスリーズが現われます。久々のスカーレット単独変身。

 クローズと一対一。すぐに劣勢に追い込まれます。夢はお前達をバラバラにする、夢はお前を追い詰めると精神攻撃もバッチリ。彼女のピンチにカナタが大声をあげます。

 同じ頃、スカーレットは好戦。あっさりと撤退してくれます。彼らの狙いに気付いたふたりははるかの元へ。


③裏切り
 傷つき倒れたフローラに夢に裏切られた気分はどうだ?と勝ち誇るクローズ。
 フローラの意識は子どもの頃に。カナタの言葉。彼女の原点。エネルギーを充填したフローラは一気に反転攻勢。当然のことですがこの程度のことでフローラが屈することはありません。シリーズ的にもすでに通過しています。彼女自身も夢の力でこれまで戦い、たくさんの人達と絆を結んできました。今更ちょっと寂しいからとそれで絶望するほどヤワではありません。
 「離れていても私の夢を支えてくれる人がいる。それだけで心強いから!
 この一言で纏めてくれました。彼女の盲点は別なところにあります。

 それでも強いクローズ。カナタがフローラの元に駆け寄ります。彼を見たクローズはカナタに似ているが別人だと判断します。夢の力を感じない。
 カナタの声を聞いたフローラは心から安心すると振り返ります。しかしそこにあったのは期待に反して不安と焦燥に満ちた顔。不思議がっているとカナタはフローラの身を案じ始めます。どうしてこんなに傷ついてまで…。そう言う彼にフローラは笑うと答えます。
 「カナタが支えてくれたから…
 「プリンセスになる……強く…優しく…美しい…みんなの夢を守るプリンセスに……それが私の夢でしょ
 言葉とは裏腹にヨロヨロと歩く彼女の姿は弱くみすぼらしくすら見えます。少なくともカナタにはそう見えたでしょう。
 「あの男の言うとおりだ。夢…夢が君を追い詰める
 ガッツポーズ。久しぶりに来ましたよ、これ。なるほどそっちで来たか。そっちで名を捨ててくるか。前回の話しの流れでいけばカナタは夢の支持者としての復活もありえました。はるかは真っ直ぐで頑張り屋。夢に一生懸命。しかし今のカナタは夢に対しては思うところがありません。あるのは彼女への親しみです。だとすれば彼がこう言うのも自然な話しです。
 「はるか。もういい。もう頑張らなくていい。これ以上君が傷つく必要はない!
 「君をそうさせているその原因が、僕にあるというのなら……僕のせいで君が夢に縛られているのなら…僕が間違ってたんだ
 はるかがはるからしくあれるのは彼女が夢を追いかけていられるからです。しかし夢を追い続けるかぎり彼女は全力で身をすり減らしていく。この二律背反は物語当初から露見していますが力技でねじ伏せてきました。それを支える想い出は神聖な原体験にしてエネルギー源。なら、当人にそれを壊してもらいましょう。最も大切な人に最も大切なものを壊させる。それが一番効果的。裏切りは、その人が安心していること、これだけは絶対に覆らないと思っているものほどダメージが大きい。東堂いづみマジ鬼畜。これを堂々とやれるプリキュアはだからこそ素晴らしい。
 「夢が君を傷つける
 過去のカナタと今のカナタが交錯。
 「夢なんて、そんなもの…もういらない
 「やめて!
 「はるか。君は、プリンセスになんてなるな!
 「なるんじゃない
 死刑宣告が下されます。

 変身が解けると同時に芽吹いていたツルは勢いを増して周囲を浸食していきます。手を下すこともなく仕事が完了し満足するクローズ。
 スカーレットが駆けつけると、入れ替わるようにはるかはどこかへと走り去っていきます。


④次回予告
 駅伝ゼツボーグの絶望感。映画館でお会いしましょう。


○トピック
 もうお前ら別れちゃいなよ(歓喜)


 安心安定のロジック。これだからプリキュアはやめられない。ジョーカーはジョーカーでも不吉なジョーカーでした。
 それが努力や技能で埋められる事柄ならはるかは乗り越えられるでしょう。トワ救出の時にも触れましたが本作は力を持っていることは尊敬されこそすれ、否定されるものではありません。強くても間違っているなら負ける、弱くても正しいなら勝つなんて屁理屈は使いません。夢は強い(断言)。強さの根底には夢がある。この勢いで一貫しています。裏返せば夢を捨ててしまう、その動機や神聖さを失うことは死刑宣告にも等しい。もはや舞台に立つことも叶いません。戦う以前の問題。
 カナタとの出会いははるかにとって神聖な想い出。それが彼女を支えてきたことは全視聴者が知っています。これを本人に否定させることでへし折るのは合理的かつ正しいやり方です。記憶喪失設定とも相性がいい。これを導き出したスタッフに賛辞を贈りたい。

 こうなってしまった要因には彼女の脆さがあります。私もすっかり見逃していましたが、はるかは思い込みが激しい。夢をバカにされて泣いて凹んで、励まされて喜ぶ。それは今でも変わりません。初めて会った黒須に簡単に心開くのは、彼が都合の良いことを言ったからです。自分の意に沿うことを言われて安心したから。カナタとの想い出が特別なのは、(男の子で)初めて自分を認めてくれたからというのが大きな理由でしょう。彼との想い出は彼女に安心と心地よさを与え、承認の裏付けをしてくれます。
 トワが警告している横でなんの警戒心もなく黒須を良い人認定している彼女の姿から見えてくるのは、同じ理由でカナタを良い人認定しているのではないか?という疑問です。それ自体はもちろん心情として当たり前のことで、彼女に不義があるわけではありません。誰だって自分に優しくしてくれる人に好感を持つ。問題は彼女がその快原理にあまりに素直すぎることです。最近のはるかはカナタを引き継いで指導的な役割も担えるようになってきましたが、今回提起されたのは今まで見逃されてきた彼女の脆さであり、彼女の足下が安心と依存によって成り立っているという事実です。
 本作に限らずプリキュアは他者との関係性を重んじ、他者からの肯定や応援を大切にしてきました。はるかの行動原理はこれを完全に担保にしたものです。初めて人から肯定してもらった神聖な原体験。しかしそれも問い直す時期に来ているのかもしれません。人に応援されなきゃ、安心できなきゃ夢も追えないのか、と。カナタとの関係の変化ははるかの弱さを露見させ、新たな試練を突きつける。プリキュアのこの問い続ける姿勢は、ほんとゾクゾクする。


[ 2015年10月25日 17:50 ] カテゴリ:Go!プリンセスプリキュア | TB(0) | CM(-)
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