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セッション

監督・脚本:デミアン・チャゼル

 是非映画館で観て欲しい作品。これはもう観賞というより体験する映画。レンタルの場合は大画面テレビとホームシアター必須。電気消して観て下さい。

 ストーリー的には大した話しじゃない。音大に通う主人公がスパルタ教授のもとで血のにじむ努力を重ねながらドラムスの主奏者を目指す。
 スパルタ教授ことフレッチャーは『フルメタル・ジャケット』のハートマン軍曹のような人で雰囲気や言葉遣いはまさにあんな感じ。彼の教室は超精鋭チームでメンバーの入れ替えが激しい。ちょっとでも音が外れれば叱責が飛び教室から放り出されてしまう。ドラムスの座は一人だけ。主人公は3人の候補生の一人。熾烈な競争は見ているだけで胃が痛くなる。それもそのはず、彼の目的は一人の天才を生み出すことで、そのためなら他のいかなる犠牲(主に生徒)を厭わない。こんな人の下では廃人か狂人になるのがオチで実際に生徒を潰している。

 とにかく観ていて息が詰まる。ドラムを400拍子で叩く音がずっと続いているんじゃないかと錯覚するくらい映像と音楽によって観客を終始飲み込み続ける。緊張の糸が全く緩まない。レギュラー争いが激化してくると主人公は恋人と別れて音楽を選び自分を追い込んでいく。元々彼はプライドが高く少々陰気で、親戚から音大故に低く見られがちなことにコンプレックスを抱いていた。だからある程度のなりふり構わぬ姿も納得できる面がある。しかし中盤でのある出来事と、そこでの彼の行動はカルト宗教さながらの狂気を発していて常軌を逸している。彼をここまでさせるのは自身の功名心もさることながら過剰な競争による面も大きい。フレッチャーの強権と存在感が生徒達を支配し、ひいては映画のムードをも操っている。
 それが打ち破られるのがラスト10分の演奏。実はすったもんだあって主人公はフレッチャーの罠にかかってしまうのだが、それを彼は自分の演奏によって覆してしまう。彼の迫真の演奏に今度はフレッチャーが飲まれ支配されると、彼の演奏を指揮し最高の音楽へと導いていく。

 正直、言葉で説明しづらくて、映画館で見てこいとしか言えません。映画館独特の暗闇と巨大スクリーン、そして四方から叩きつけられる音。観客は映画に没入し、まるで作中の客席にいるかのような感覚を味わえる。ストーリーやアクションで緊張を保ち続ける映画は何本も見てきたけど、演技と音楽によって2時間弱を完璧に持たせている本作は個人的に類例がない。冒頭に書いたようにこれはもう体験で、アトラクション料金払って体験してきたと言って差し支えない。鮮烈な映画体験でした。

[ 2015年06月21日 20:01 ] カテゴリ:映画の感想 | TB(0) | CM(-)
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