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砂糖の世界史(川北 稔)

 タイトルは地味だけど、勉強になった。

 イギリスと言えば紅茶のイメージが強いんだけど、この国は砂糖も大好きだったようです。で、面白いのがこのふたつはそもそもイギリスにはなかったことです。お茶は元々中国だったし、砂糖の原料になるサトウキビはヨーロッパじゃ育ちません。なので、15、16世紀あたりまではこれらは貴重品として上流階級に愛好されたようです。
 植民地が増えていくのと平行して庶民の間にも砂糖と紅茶が広がっていく。これを支えたのが黒人奴隷によるプランテーション経営で、サトウキビ栽培ができる植民地はサトウキビだらけになったそうです。このおかげで、その土地自体がサトウキビを生産するための工場と化してしまったので農業やら文化やらが偏るようになります。奴隷や移民などによって外から違う人種や言語、宗教が入ったりもしました。かつて植民地だったところが今でも揉めているのはそういう背景もあるわけだね。

 話しを戻して、イギリスで工業化が進んでくると工場労働者の需要が高まる。すると時間に正確な生活、カロリーを手早く補給できる食事へのインセンティブが働いて、身体を温められる紅茶とカロリーを得られる砂糖への需要が下層階級にも広がっていきます。ここで一気に紅茶と砂糖の需要が急上昇(仕事の合間のティーブレイクなどが設けられた)。次にどうなったかというと、工場経営者のブルジョワ層からすればコストを抑えたい。しかしイギリスは砂糖を生産していた植民地経営者が権益を持っていて高い関税などをかけて国内の砂糖価格は非常に高かった。これを挫くために奴隷制度に非難の矛先を向けることで奴隷制度を廃止させて、めでたく砂糖価格を下落させたという流れになります。これはイギリス国内の話しで、他の国での奴隷制度は別な経緯になるんですが、工業化による生産性向上によって奴隷の労働力が比較的割高になったってのが理由の一つですね。
 ちなみに紅茶は中国から輸入していたわけですが、それが貿易摩擦を生んでアヘン戦争仕掛けたのは有名な話し。


 こんな具合に具体的な例をとおして見ると、時代とともに人々の食や仕事、生活が変わっていること、海の向こうの国とどう関連しているのかが繋がりを持って頭に入る。植民地とか奴隷とか聞いてもやっぱイメージつかないんだよねぇ。ヨーロッパってあんまり土地良くなかったと聞くし。だから色んなものを中国やインドから輸入してたんだよね。戦争も多かったし。そういう競争と逆境がインセンティブにもなってたんだろうね。
 基本的な流れが分かると、そこから枝を生やしたり他の大きい流れと接続しやすくなるので、こういうネタはいくつか仕入れておくと便利ですね。


砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)砂糖の世界史 (岩波ジュニア新書)
(1996/07/22)
川北 稔
茶の世界史―緑茶の文化と紅茶の社会 (中公新書 (596))茶の世界史―緑茶の文化と紅茶の社会 (中公新書 (596))
(1980/12)
角山 栄

[ 2014年05月20日 23:28 ] カテゴリ:本の感想 | TB(0) | CM(-)
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