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ドキドキ!プリキュア総括感想

○総括を書くにあたって
 この感想を読んできた人には説明不要ですが、私はプリキュアシリーズをシリース(直線)的に解釈しています。作品単体はもちろんのこと、作品を跨いだ継承・発展があると捉え作品毎の位置づけや内在論理の変遷を整理しながら感想を書いています。私がこれまでのシリーズをどう見てきたかはコラム「プリキュアシリーズの勧善懲悪から救済まで」を参照下さい。

 ちょっと話しが変わりますがプリキュアは作品毎に作風や方向性が大きく変わります。自律的な人間関係が特徴であるドキドキと幼稚的な関係性からスタートしたスマイルは対照的です。ケンカから始まったスイート、コミカルでありつつもコンプレックスを抱えるハートキャッチなどテーマや人間関係、キャラクターデザインも含めて毎回特色が異なります。
 見た目には大きな変化があってもシリーズを跨ぐ大きなテーマを持ち、人間関係を軸にした成長と苦悩を様々な視点で書き続けているのが興味深く面白いっていうのが私の感想の根幹です。こんな見方しながら感想書いている人は希なので、ピンとこない人もいるでしょうし最近見始めたばかりの人は敷居が高く感じるかもしれませんが、プリキュアという作品の奥深さ、楽しみ方の幅を知っていただければ幸いです。


 では、これまでのシリーズから本作はどのような一歩を踏み出したのか?ということから見ていきましょう。


①ドキドキのプリキュアってなんだろう?
 真っ先に思い浮かぶのがマナの姿です。大貝第一中学生徒会長を自負している彼女は、同じようにキュアハートであることを自然に受け入れています。「私はみなぎる愛キュアハートだから!」は象徴的なセリフです。
 1話の人助けから始まり、立ち止まることなく進み続けたあげくラスボス浄化後もプリキュアのまま活動している姿に度肝を抜かれつつも納得した人は多いはずです。本作のプリキュアとは、世界を変えていくほどのパワーを持ったスーパーヒロイン。マナの行動理念は「プリキュアだから~すべき」ではなく「私は~したい」。マナはプリキュアの力を自分のしたいことのために使っています。「マナであること」と「プリキュアであること」はほぼイコール。彼女の人助けは最終決戦においても健在です。
 マナ以外も同じです。六花やありすにしてもプリキュアになる最大の理由はマナと一緒にいたい、マナの助けになりたいからですし真琴もアン王女のためです。レジーナは変身こそしませんがやっていることは限りなくマナ達と同じです。要するに変身してもしなくても、彼女達がやることは変わりません。

 これまでプリキュアが世界に求められたのは、それが異常事態だったからです。世界が大ピンチ。だからプリキュアになって戦う。それを解決してしまえばプリキュアになる必要は無いし(戦う相手がいない)、今までどおりの日常生活に戻ります。だから世界の平和を守っても世界が以前と変わるわけでも、街の人々の意識が変わるわけでもありませんでした。元に戻るだけだからです。フレッシュやハートキャッチのような多少の例外はあっても日常への回帰は守られています。むしろその日常回帰、日常を大事にすることこそがプリキュアらしさでした。シリーズが進むにつれて日常と非日常の境界が曖昧になってきたことは確かですが「私」と「プリキュア」にはやはり見えない壁がありました。
 しかし本作ではその壁が完全に取り払われています。「私はプリキュア」。女の子がプリキュアであることを続けられる、世界を変えてしまう。最終回で見たとおり、プリキュアとしての活動は世界に変化を与えています。完全に日常の延長であり、日常の中にプリキュアが取り込まれています。
 誰かをを守りたい、その優しい気持ちがあれば女の子は誰だってプリキュアになれる。そのプリキュアとは、逃げも隠れもしない天下無敵のパワフルガールズ。

 というのがドキドキのプリキュア像です。ざっくり言えばプリキュアのアイドル化(公式化)ですね。これはハピネスに引き継がれる要素だろうと思います。変身ヒロインものは卒業するのが通例で、プリキュアシリーズはそれをぼかしてきたのですが、ここで明確になったのは大きな変化だと思います。


②プリキュアが戦っているもの
 次いで、プリキュアと敵の関係について。
 梅Pプリキュアと同じく本作でも人間に内在する諸問題が軸になっています。ここでもドキドキらしさが出ています。
 本作の愛とジコチューが単純な善悪ではないことは作中でも明言されています。浮き沈みのある気持ちを不断の努力によってバランスさせる。その要となるのが人間関係で、健全な関係によって健全な愛が、健全な愛によって健全な関係が構築されていく様子を描いています。26話トピックでも詳述しているのでここでは割愛します。最終回でマナが言ったように、ジコチューが独りではジコチューになりえないように、愛もまた独りでは愛足りえないことは重要な提示です。
 そして本作の画期的な……というかある意味ギャグにまで昇華されているのがラスボスがラスボスになっていない点です。マナはあっさりとラスボスを論破して浄化します。それは最初に出てきたカニジコチューに対するスタンスとほとんど変わりません。この物語におけるジコチューとは、心の持ち方さえしっかりしていれば立ち向かって行けるものです。この態度が上述したスーパーヒロインぶりを目立たせると同時に、本作における成長の在り方、心の在り方、人から助けられつつも自ら人を助けていくことを選び取る女の子の強さを示しています。

 これは決してマナが完璧超人であること、ジコチューの浄化が簡単にできることを意味するものではありません。本編中でもマナは小さな失敗をいくつもやっていますし、一度大きく傷つきました。特に映画ではそれが顕著に出ています。
 物語の様々な場面で心に魔が差してしまう(ジコチューになる)ことが描かれ、同時にそこから元に戻る姿も描かれています。本作は心の浮き沈みが単なる繰り返しなのではなく、そうした心の変化、時に初めて知る気持ちを通して人は成長していけることをメッセージに込めています。祖母から愛を継承したマナ、憧れを成長の糧にした六花、自分の力を包容力へと昇華させたありす、誰かのためにから誰かと共にへと変わった真琴、二つの愛を知った亜久里とレジーナ。本作の愛とは他者と共に成長していく意思のことです。それは人から人へ渡していく(感化する)ことができるものです。
 繰り返しますが本作は心の健全化、関係性の健全化が肝であり、一時の「気の迷い」「魔が差してしまう」ことは悪ではなく常に人が戦っていかなければならない邪念です。この意味でジコチューやラスボスを浄化する(和解するのではなく消してしまう、抑え込んでしまう)のは正しい処置だと言えます。邪念を抱く人が悪いのではなく、邪念を消したり抑えたりすることができるはずだというスタンス。その邪念が愛から生まれることがあったとしても、その愛に罪はない。そこで傷つく人を助け、愛を失った心にドキドキを取り戻すのが本作の戦う意味です。本作は人を更生させていません。そこにも「人は間違っている」と「人は間違いを犯す」ことの違いがあります。
 敵が外部からやってくるのだとすればそれを排除すればプリキュアに変身する必要はなくなる。けど、敵が常に自分の中から湧き出てしまうのだとすればずっと戦い続けなければならない。プリキュアが日常の延長、日常に内包されてしまう構図は戦いの意味を含めて論理的に繋がっています。

 また、愛とジコチューの両義性、人間関係の健全化を示す大きな道標となった亜久里・レジーナの家庭問題が具体的な事例として扱われたことは特筆に値します。とても分かりやすく、それ故に難しい問題でもありました。彼女達の関係や姿をとおして多くを学びました。女児向けアニメだからこそ子ども達が抱える不安、大好きという気持ちを大切にしているのだと強く感じます。プリキュアの良さですね。


③まとめ
 この他、幸せの王子をモチーフとした二重構造などについては48話トピックを参照してもらうとして、そろそろ纏めに入ります。

 ドキドキ単独で見た場合、その内在論理やストーリーは一貫しています。それはマナの一貫性にも表れています。各話感想の中でよく頭が良い、賢いという言葉を多用しましたがマナ達は自分で考え、自分で答えを出しながら進んできた子達でした。敵と友達になりたい、お父さんと話し合いで決着をつけたい。これ、本来ならおかしな話しなんです。だって本作のプリキュアはトランプ王国直轄の戦士で、そのプリキュアが王国の利害無視して独断で動いているんですから。しかし誰もマナ達にああしろ、こうしろとは言いません。全てマナ達が自分で決めてやってきた。この自主性と決断力が痛快でした。
 振り返れば、涙涙の最終回だったスマイル、悲しみや辛さを受け入れたスイート、父親と死別したハートキャッチなど悲劇的で悲壮感も漂う最終決戦が恒例化していた中で本作は「マナがいれば大丈夫」と視聴者の誰もが安心と期待が持てるラストでした。毎年シリーズを総括しながらプリキュアは成長してきたと書いてきましたが、それが実ったシリーズだったと言えるかもしれません。プリキュア10年の歴史と経験を愛の力に換えて真っ直ぐにぶつける。勧善懲悪でも救済でもない、女の子がその力と元気を思う存分に発揮する物語。

 柴Pが作り出す新しいプリキュア。その気風と気位が今後どんな物語を紡いでいくのか。見終えた満足感と共に新時代への期待を抱くドキドキでいっぱいの作品でした。


[ 2014年02月01日 23:59 ] カテゴリ:ドキドキ!プリキュア | TB(0) | CM(-)
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