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命はそんなにやわじゃない(杉浦貴之)他4冊

○命はそんなにやわじゃない 杉浦貴之
○非常識の医学書 安保徹・石原結實・福田稔
○今あるガンが消えていく食事 済陽高穂
○がんのひみつ 中川恵一
○病気は才能 おのころ心平


 今や癌で死ぬことは珍しいことではない。にもかかわらず癌についてちゃんと知っている人は少ない。私も知らない。そういうわけで、何冊か手に取ってみました。チョイスした本を見れば分るとおり健康とか病気に対しての自己啓発が目的。

 癌の治療法として、手術・抗がん剤・放射線治療(のいずれか、または全ての組合せ)は必須だと言う医者もいれば、ただでさえ体力と免疫力が下がっているのにそんなことをすれば命を縮めるだけだから免疫力を高める治療法が望ましいと言う医者、またはそれらをミックスさせて行った方が良いと言う医者もいて、正直どれが正しいかは分りません。医者によって言うことが違うせいで、逆説的にセカンドオピニオンを活用することや自分で医者を見つけるなど自らの判断で選択していく姿勢が必要になります。最初に会った医者がヤブである可能性は捨てきれない。また、医者自身の専門によっても治療法のオススメが違うことも頭に入れておく必要がある。昔は胃がんが多く手術で治せたのでもっぱら外科医が優勢だったそうだが、現在では手術が必ずしも効果的であると限らず放射線治療でも同等の治療効果がある場合もあるそうだ。今回アマゾンで癌関連の本を検索して購入したのですが、そのレビューを読むと多くの人が現在の癌治療に対して不満や不安を持っていることを目の当たりにします。医者からも見放された人が、食事療法などを行い奇跡的に助かった例もあり癌治療について様々な言説が登場するのも頷ける。
 余談ですが、これらの本を読む前に私はガン保険を解約しています。理由は金融商品として魅力が無いから(割高だから)です。実際に費用がどの程度かかるかはがん治療費.comが参考になります。高額療養費制度を適用すれば手術を行っても極端な出費にはなりません。



 さて、癌を患った方や克服した方のエッセイを読んで気づくのは、癌を経て自分の人生をもう一度見つめ直すことが少なくないことです。癌は生活習慣や食生活が大きく関わっているので、癌をキッカケに自分のこれまでの生き方を見つめ直す……というか見つめ直さざるを得ないのだと思いますが、そうした発想の転換を行うことで新しい生き方を模索する方がいらっしゃるようです。よくあるパターンがそれまでセカセカして生きてきた自分を反省してもっとゆったりと生きる、周りを気にしすぎてきたがこれからは自分に素直になるなどです。 死を意識することで今までの生き方の総括が行われるわけですね。
 私は幼い頃に死について考えたことがあります。今でも考えます。あんまり考えすぎると厭世的になって投げやりになりかねないんですが、ある程度「死」について考えておくと良い意味で諦めが出来るようになります。無理をかけすぎたり、理想を追い求めすぎるのも往々にして生き方を辛くする。ハイデガーも死を直視することで真の生を獲得できると言っています。まあ、あれはちょっと考え方がマッチョすぎますけど。現在ばかりを見ると疲れるし、過去ばかりを見ると後悔が募るし、未来ばかりを見ると億劫になる。自分の人生を俯瞰的に捉えることで冷静さと洞察を養い、想像力を生み出せると思っています。目的地は同じでもそこへ行くまでの行き方は無数にある。自分を自分で追い詰めない、これ大事。
 あとは、どれだけ腹を括れるか、覚悟を決められるか。それは自分の生き方に責任を持つということです。別な言い方をすれば自分の人生に納得すること。読んだ本の中で共通して出てきた言葉は「病気を自分で治す」でした。医者が治してくれるんじゃない。自分で治す。その気概が必要だと異口同音に述べられています。癌になった理由は人によって違うし、本当の原因が特定できるわけでも原因が分ったからといって治せるわけでもありません。しかし、自分がなぜ病気になったのかその原因の一端を理解し、手術などの外科的治療(悪い部位は取ってしまえ)だけでなく病気になりにくい身体や生活へと改善していくこともまた必要なのだと当事者の言葉から強く実感します。「走れるほどに元気になったのではなく、走ったから元気になった」というのはフルマラソンを完走した癌患者の言葉です。それとは逆に他の何かに理由を求める人もいます。例えば私の同僚はお祓いに行ったりしました(別項「悪霊の価値」参照)。


 人間ってほんと意味に生きている生き物なんだと思います。形はどうであれ解釈したがる、解釈せざるを得ない。病気という現象を自分の罪と捉えるか、悪霊(その他外部要因)と捉えるか、それらは異なるようでいて根っこは同じです。本当の原因なんてわかりゃしない。でもそれが自分を見つめ直すキッカケにもなっていて、今までの生き方の解釈や新しい人生をそこから見いだそうとする。事実新しい人生を創る。そのバイタリティに私は感服します。勿論それが大多数というわけでないことも知っています。私の祖母は癌を患い自殺しました。健康が理由での自殺は多い。自ら命を絶つ方それぞれに理由があると思いますが、怒られることを承知で言うと無知による悲観も少なくないのではないかと思います。敵を知り己を知れば百戦危うからず。本当にそれだけしか手段は無いのか、もっと他に選択肢は無いのか。知ることはそれだけ人を強くすることでもあると思ってます。正しい知識、認識はそれだけ人を冷静にするし、次の一手を考えさせる力を与える(私はこれを想像力と呼びます)。だから知らないものを知ろうとする好奇心や向学心は人生に絶対必要です。
 そして人間というのは、幻想や願望で生きている生き物です。恋人が可愛いと思えるのは実際よりも可愛く思えるからです(断言)。明日が今日よりも良くなると思えるのは、そう信じたいからです。実際には明日死ぬかもしれません。何の保証もない。けど願望や希望を持つからこそ辛い現実の中で一歩一歩進んでいくことができる。良くも悪くも人は想像力を失っては生きていけないのだと思います。


 んじゃ、具体的に想像力を持つ、あるいは保つ方法って何?と言えば、私は「常に逃げ道を作る」ことをやってます。
 例えば、仕事関係の悩みなんかは多いと思うんですが、辞めたいと思ったらいつでも辞められるように貯蓄を確保しています。また、それだけでは食いつぶしになりかねないので、自分なりにこっそり副業なり副収入になる手段を確立しておきます。私の場合だと株式投資ですね。最初は余剰資金(捨てていい金)を使って勉強がてらやってましたが今では年間に給料一ヶ月分くらいの収益をコンスタントにあげられるくらいになっています。流石にこれを主に置き換えることはできませんが、こうした副収入や副業なりを持っておけば経済的なボトルネックはある程度緩和できます。これが逃げ道になる。勿論、本業でも自分を追い詰めない工夫をします。人によって差が出るのが人の頼り方。ただ人に聞くだけの人は「教えて君」みたいな感じで嫌われますが、ある程度自分なりの考えを持った上で人に尋ねれば大抵は快く教えてくれます。互いに勉強になるのでそういうのを日頃から行っておくとスキルアップにもなるし、相談できる人を持てることにもなりますね。私がよく使う手は「すみません、今更こんなこと聞くの恥ずかしいんですが」作戦ですね。知らないことはどんどん聞く。そして自分も人に教える。こうすると自然と職場内での自分のポジションが定まっていきます。あとは趣味を持って生活にメリハリを付ける。バカ話が出来る友人を持つ。病気になってからでは遅いので事前に知識を得たり、体力、体調管理に気をつける。個人的に有効だと思っているのは哲学的思考を持つ(抽象的思考ができるようになると微妙に精神的耐性が上がる…ような気がする)。
 一つ一つは単純で大したことじゃありませんが、それを積み重ねるなり、二手三手先を見据えて動いておけば多少予定外のことが起きても修正ができるようになります(そういう力が身につく)。いくつか選択肢を自分で用意しておいて、最悪のパターンを選んだとしてもそれなりに得をする状況を作っておく。それが逃げ道を作るということです。自分を追い詰めない、追い込まれない状況を作っておく。まあ、これが完全に出来たら苦労はしませんが、心に余裕を持つというのは単なる精神論ではなくて、地道な鍛錬なんです。 一日や二日で極意なんて習得できるわけないですから。
 


 「絶望は単なる失望、落胆、憂うつ、あきらめだけでなく、『見通しがきかず、今の瞬間しか見えず、未来に目を閉じていること』であり、待つこと、願うこと、信頼すること、信仰することを失った状態ともいえる。また、「想像力の欠如」でもあり、孤立、孤独、寂しさにも通ずる。 このように絶望とは、まさに人間の極限状態を指す言葉であり、キルケゴールが『(死の内には無限に多くの希望があるが)絶望は死に至る病である』と言ったのもうなずける。
 絶望は短所だけではない。不可能なこと(ないものを求める)に対しては絶望したほうがいいのであり、絶望を通して人間は賢く、忍耐強くなれるのであり、真の自分との出会いも可能にする。総じて、人生は絶望と希望の弁証法だと考えてもいい。絶望は、希望と同時に人生の宝なのである

 (「難事例と絶望感の治療ポイント―治療の壁を越える22の対処法」 平井孝男)


 「苦しみと喜びをちゃんと体験してこそ、つまり限界まで体験し、その限界を自分で確かめてこそ、個人としてのアイデンティティを確立することができる。どんな苦痛も体験しないようにと、苦痛を感じるたびにいちいち治療を受けていたのでは、ストレスをどう乗り切り、困難をどう克服するかを考える機会を失ってしまう。そして、そもそも自分が何者なのかを考える機会を失ってしまう

 「あなたの心のなかには、単に生き延びるためだけでなく、幸せになるための、そして目標を達成するための能力が備わっているのです。決してそれを忘れないでください

 「あなたには自分を治す強さがあるし、そうする責任がある
(「フロイト先生のウソ」 ロルフ・デーゲン)


命はそんなにやわじゃない命はそんなにやわじゃない
杉浦 貴之
非常識の医学書非常識の医学書 
安保 徹、石原 結實 他
今あるガンが消えていく食事 (ビタミン文庫)今あるガンが消えていく食事 (ビタミン文庫) 
済陽高穂
がんのひみつがんのひみつ
中川恵一
病気は才能病気は才能
おのころ心平


[ 2013年06月04日 00:07 ] カテゴリ:本の感想 | TB(0) | CM(-)
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