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映画「絵本の中はみんなチグハグ!」

○うろ覚え本編感想
①前説

 今回は妖精だけでなくみゆき達みんなでミラクルライトの説明。映画でもれいかさんはオチ担当。


②ちょっと昔のお話し
 図書館でいらなくなった絵本が入り口前に置かれています。そこにまた一冊加わります。表紙に羽のレリーフが付いた本。
 
 図書館の庭でみゆきは地面に絵を描きます。描き上がって満足するもどこか寂しげ。目の前でふたりの女の子が楽しそうに遊んでいます。みゆきの視線に気づいた女の子達が振り返ると、みゆきは慌てて顔を下げて絵をいじくります。今でこそ明るく誰にでも声をかけていますが、子どもの頃は人見知りするタイプだったようです。それにしても可愛い。
 みゆきは本に引き寄せられるかのように、羽の表紙の本を見つけます。不思議な力が働いてページがめくられていきます。絵本のようですが、途中でページが破られていてお話しの続きはわかりません。最後のページは女の子がお城のようなところに囚われた様子が描かれています。ちょうど彼女が泣いているかのように雫が本に落ちます。雨が降ってきました。

 図書館でみゆきは絵本を読みます。主人公の女の子がケンカしている動物達を和解させていく物語のようです。「仲良くなるには笑顔が一番」。ものは試し、みゆきは自分の口をぐにっと指でつり上げて笑顔を作ります先ほどの女の子達に見つめられ、恥ずかしがって赤くなるみゆき。なるほど、これが天使か。興味をひかれた女の子達は何を読んでいるのかと声をかけてきます。みゆきは嬉しそうな声で応えると、女の子達と一緒に絵本を読みます。

 女の子達と別れて、みゆきは自分の家で絵本をまた読みます。引っ越す前の家はだいぶ築年数が経っている感じ。畳んだ布団の上に寝っ転がって絵本を見ていたみゆきはお話しの続きはどこへ行ってしまったのだろう?と思案。すると自分で話しの続きを描けばいいのだと思いつきます。絵本と約束します。


③銀幕からの闖入者
 時は流れ、みゆきはみんなで絵本大博覧会にやってきます。テンションが最初からクライマックスなみゆき。
 世界中の絵本が集まり、イラスト、作家のトークショー、お絵かきスペースなど充実したイベントらしい。みゆきをはじめ他のメンバーも楽しみにしています。れいかが持っているのは博覧会のパンフレットでしょうか。流石歩くガイドブック。事前に把握済みといったところか。
 木の枝からひょっこり顔を出す黒い影。どうやらこのイベントを別な意味で待っていた者も居るようです。

 OP。尺の関係もあるので博覧会を遊ぶみゆき達の様子と同時進行。テレビ本編でも流れた映像ですね。前期OP映像でお馴染みだった5人のモーションが映画アレンジされています。れいかさん、それ凄すぎ。ただの棒きれでスイカを綺麗に真っ二つ…だと!? どうでもいい話ですが、映画では珍しくみゆき達の格好はいつもの服装です。映画用の衣装が密かな楽しみだったのですが残念。といっても、みゆきの白ニーソ絶対領域が大好きな私はどちらに転んでも問題ない。

 人気の少ない一角に設置されたテント。黒い影が中に入っていきます。テントの中には誰もいません。一応映画館らしい。みゆきは興味をひかれます。あかねは3Dシアターが気になるようですが、後でそっちも見ればいいとやよいが誘い、みゆきも腕を掴んでテントの中に入ります。これが女の子同士の自然な触れ合い…くっ、私も女の子に生まれていれば……(本末転倒)。
 結局、客はみゆき達とキャンディだけ。係員の姿も見えません。フィルムが自動再生されます。ナレーションが流れると、場面は一転して、緊迫した場所が映し出されます。本を抱えた女の子が追手から逃げます。緊張した面持ちで画面を見つめるみゆき。他のメンツとのギャップが激しい。
 ついに追い詰められる女の子。為す術なしかと思われたその瞬間、黒い影が飛び出すとスクリーンが眩く光り、中から女の子が出てきます。みゆきはすぐに立ち上がると女の子を受け止めます。反応速ぇ。
 スクリーンから出てきた女の子は助けを求めます。案の定、スクリーンから追手が出てきます。今の3Dの技術は凄いとお約束なボケをかましてくれるれいかさん。ある意味とても冷静な人です。
 追手達はニコと呼ばれる女の子を狙いテントの中で大暴れ。ニコの無事を確認して安心するみゆき。何かを思うようなニコの表情。みゆきの優しさは今でも変わらない。けど…。束の間、ニコは追手に捕まってしまいます。

 相手の正体は分からないものの緊急事態。変身。子どもや親御さんがジャンケンしているのを見るとぴかりんジャンケンは正解だったように思います。
 追手は自ら金閣・銀閣と名乗ります。西遊記のアレ。金閣銀閣と言ったら紅葫蘆(べにひさご)。プリキュアを吸い込もうとします。吸引力が凄まじくまともに立っていることもできません。ハッピーが吸い込まれそうになります。ビューティは腕を払うしぐさをすると、氷の矢じりを作り出して反撃に転じます。属性能力を柔軟に発揮。この映画では必殺技をバンクを含めてほとんど使っていません。テンポよく臨機応変に能力を使用。カッコイイ。
 氷によって隙が生まれるとサニーとマーチが一気に接近して攻撃をしかけます。戦闘が本格的に始まり、テントから離れた位置に居る人々も何事かと視線を注ぎます。が、何かのショーと思っているらしくそれほど騒ぎになりません。
 ピースが電撃を使って銀閣をはじき飛ばします。ハッピーがニコを救出。しかし金閣の紅葫蘆の中に吸い込まれてしまいます。それならと紅葫蘆を奪取。紅葫蘆をキャッチしたピースを狙って銀閣が仕掛けてきますが、サニーがサポート。炎に根を上げた紅葫蘆は暴走して金閣と銀閣を吸い込みます。試合終了。中から黒い影が出てきて逃げていきます。テントは消失。後々分かることですが、おそらくこれは自作自演。


④絵本の中はチグハグ!?
 紅葫蘆の中からニコを取り出します。力尽くかよ。かけ声的なものってなかったっけ?
 ニコはふらふらとしながらも助けてくれてありがとうとお礼を言います。自己紹介。
 みゆきはニコに本を返します。本に見覚えがあるようですが思い出せません。その時のニコの反応は緊張した表情をしています。しかしみゆきが本のことを思い出せないのを見ると一転して寂しそうな表情になります。ニコの表情は敏感でコロコロ変わります。彼女がここに来た目的は、みゆきを誘い込むための自作自演です。この時点で彼女はみゆきに復讐するつもりがあったはずです。バレるわけにはいきません。だけど気づいて欲しいという相反する思いもあったのだと思います。
 ニコは絵本の世界から来たと言います。それを訊いてビックリ仰天する一同。れいかの表情が面白い。絵本の世界へ招待するとニコが言うとみんな身を乗り出して喜びます。れいかはキャンディに引っ張られているのか、押しつけているのか。
 善は急げとばかりに、ニコは指を鳴らして絵本の世界へ案内します。

 地面に穴が開くと落下するようにみんな落ちていきます。高いところが苦手なあかねとなおは涙目。光の花の中を落ちながらみゆき達は進んでいきます。途中クジラに飲み込まれて、潮吹きとともに飛び出すといよいよ絵本の世界への入り口が見えてきます。

 お約束どおり着地に失敗。絵本の世界に到着。眼下に広がるメルヘンな世界。絵本の住人達が暮らしています。メルヘンランドとコンセプトがだだかぶりです。こちらの世界は妖精の要素がないのでみな原作っぽい雰囲気。桃太郎のおばあさんが超アグレッシブ。
 夢中になっているみゆきとやよいを置いて、ニコはあかね達にこの世界について説明します。自分が絵本の主人公になって物語を体験できるそうです。テーマパークみたいなエンタメ要素まであるとは至れり尽くせり。観光業で生計を立てているのでしょうか。ニコの言葉に聞き耳を立てたみゆきはすぐに話しに飛びつきます。シンデレラに憧れるみゆき。大好きだと言います。彼女の様子を見たニコは「そうか…」と一瞬声のトーンを落とします。自分のことを忘れて他の物語に心奪われたみゆきに彼女が何を思ったのか想像に難くない。
 気を取り直したニコは話しを進めていきます。あかねは小さくても勇気がある一寸法師、やよいはきんと雲に乗りたいので孫悟空、なおはご馳走を食べたいので浦島太郎、れいかはヒーローの桃太郎を志願。れいかさんノリノリ。なおはもう完全に食べ物担当になった感があります。
 再びニコの指パッチンを合図にそれぞれ絵本の世界へと飛んでいきます。
 一人残ったニコは、やっぱりみゆきは約束を忘れている…とつぶやきます。「嘘つき」。彼女の影が異形の姿へ変わります。


 みゆきは暖炉の中から飛び出してきます。灰かぶり。衣装も替わっています。すぐに怖い継母がやってきてみゆきに仕事を命じます。目まぐるしく働くみゆき。こき使われながらもみゆきは物語を楽しみます。
 やよいは孫悟空になってきんと雲で飛び回ります。意外と似合う。ドラゴンボールみたいな動きで空を駆ける。
 超ノリノリなれいか嬢。この子は未だによく分からない。おじいさんとおばあさんからきび団子を貰います。
 あかねはお椀の船で川を進みます。ビッグになったる。いやー、そのセリフ言った人でビッグになった人いるのかなー。
 浦島太郎になったなおは亀を助けて竜宮城へ。ここまではみんな原作どおり。


 ニコは笑顔なんて無くなればいいとつぶやきます。彼女の影が怪しく動きます。

 嬉しそうに床磨きをするみゆきに、キャンディはどうして嬉しそうなのかと尋ねます。傍目には雑用を押しつけられているだけです。自分はシンデレラ、魔法使いがやってきて王子様と出会い、結ばれる…と想像を膨らませます。みゆき達は物語の結末を知っている。今辛いのは単なる通過儀礼でしかない。彼女達は最初から希望に溢れている。ところが、そうではない子がいる。自分の物語がどこに行くのか分からず、どこにも行けなかった子。未来が失われ、希望が失望と絶望に、そして憎しみに変わった子がいる。
 ドアをノックする音。魔法使いかと思ったみゆきはすぐにドアを開きます。しかし目の前に立っているのは精悍な青年。何故かカボチャを持っています。誰? 青年は桃太郎と名乗ります。

 クマに乗った金太郎とすれ違うれいか。いや、それいいのか。犬・猿・キジを見つけると声をかけます。きび団子をあげて家来にしようとしますがすでに他の団子を食べています。竜宮団子。絶品らしい。持ち主は浦島太郎。何故か桃太郎の世界に来ています。亀を助けたら団子が入った玉手箱を貰ったと言います。竜宮城へ行けると思っていたけど、世の中そんなに甘くなかったと言う浦島太郎。亀助ける前から竜宮城行けると思ってたのかよ。

 竜宮城へやってくるなお、早速ご馳走を探します。乙姫を見つけたと思ったら豚。何故かここには西遊記の悟空、猪八戒、沙悟浄が居ます。彼らの格好がどことなくキャッツアイに似ているのがなんとも。色々とごちゃ混ぜなカオス世界になってきました。

 やよいが到着したのは鬼ヶ島。もう中国ですらねぇ。とりあえず洞窟の中に入って様子を見ると天井の壁が崩れてきて大ピンチ。そこに現れる一寸法師。岩を切り裂きます。地下に落ちると金銀財宝の山。偶然打ち出の小槌を見つけて一寸法師が大きくなります。一緒に姫様を探すことに。西遊記どころか一寸法師ですらないお話しになってきました。

 あかねはツバメに乗って京へ。途中で落ちて跳ねて行き着いたところに巨大なガラスの靴。つまみ上げられると手の平の上に置かれます。相手はシンデレラ。何故かここに居て、しかも巨大化しています。これでは王子様に嫌われると泣き出してしまいます。

 みゆきは桃太郎からきび団子を貰います。コンビニの袋。とたんに安っぽくなったぞ。桃太郎はでは鬼退治に、とみゆきを誘います。王子様の居るお城に鬼が住んでいると思っているようです。止めようとするみゆき。例によって何故自分がここにいるのか分かっていません。


 ニコの暗躍はエスカレートしていきます。

 黒い影が桃太郎達を包み込みます。黒カラーな主人公達。無駄にカッコイイ。シンデレラはさらに巨大化。浦島太郎は犬達をファンネルのように扱います。しかも自分は宙に浮いています。もう原作のイメージ残ってねぇ。
 桃太郎達は自分がこうなったのはみゆき達のせいだと思い込み攻撃をしかけてきます。

 逃げている途中で3匹の子豚を経由。あかねとれいかが合流。それぞれ逃げながらも同じ場所に集まります。それにしてもれいかさんの格好は似合っている。髪を下ろした姿がまた可愛い。
 シンデレラの鉄拳が落ちてきます。間一髪みゆき達を助けたのは……牛魔王、一寸法師の鬼、桃太郎の鬼。悪役のみなさんが加勢してくれます。助けに来た訳じゃないという牛魔王。主人公達に物語の続きはどうしたと尋ねます。すると続きはない、ハッピーエンドもバッドエンドもない終わりのない物語だと答えが返ってきます。
 牛魔王は物語が続かないと俺達の出番がねぇだろ!と声を荒げます。かっこいいけどかっこ悪い。
 こうなった原因としては影が怪しい。真偽は定かではありませんが、とりあえず変身。サニーは小さいままです。そのために着地シーンも個別だったようです。細かい。
 物語の主人公とライバル、プリキュアがぶつかり合う混戦の始まり。真面目に戦う者もいれば逃げ惑う者も。浦島太郎は仕事しろ。打ち出の小槌がシンデレラに当たって元の大きさに戻ります。同時に取憑いていた影が離れ、サニーが掴みます。
 パンパンという手を打ち鳴らす音。ニコの姿。影はサニーの手から逃れるとニコの影の中に入ります。


⑤復讐するは我にあり
 小高い岩の上からニコは素知らぬ顔でみんなに楽しんでいるかと尋ねます。怖ぇ。この子はよほど辛い思いをしたのでしょう。自分をこんな目に遭わせた人をそれだけ憎んでいる。
 ニコの姿を認めて、物語がめちゃくちゃになっている、元に戻さないといけないとハッピー達は訴えます。ところがニコはその必要は無いと答えます。だって私がめちゃくちゃにしたのだから。いい表情です。理由を尋ねられたニコは全てみゆきのせいだと言います。みゆきが約束を破ったから。何のことだか分からないハッピー。ニコは持っていた本を開いて見せます。破れたページ。ハッピーを射るように見つめる彼女の瞳には必死さと相手を非難する意思が色濃く出ています。ようやくハッピーはその本が幼い頃に見つけた本だと思い出します。
 続きを書いてくれると約束したのに書いてくれなかった。ずっと待っていたと話すニコ。みゆきなんて大嫌い、笑顔のみゆきはもっと嫌い。みゆきの好きな絵本をめちゃくちゃにしようと思った。笑顔なんて無くなればいいんだ! 堰を切ったように想いが彼女の口から溢れ出ます。彼女の影は大きくなると彼女を包み込んで姿を消します。

 呆然と立ち尽くすハッピー。呼びかけても応えが返ってきません。戦闘再開、桃太郎達が襲いかかってきます。この場を引き受けた牛魔王達はプリキュアを投げ飛ばして戦闘区域から待避させます。主人公達に振り返る牛魔王。かっけぇ。


 これまでとは違う物語の街に落下するプリキュア。ハッピーは依然呆然としています。
 近くでクマの妖精がケンカを始めます。ふたりを諫めるマーチ。ハッピーはここがニコの物語だと気づきます。尋ねられたハッピーはニコについて話し始めます。
 ニコちゃんは名前のとおりいつも笑顔の女の子。はじめは仲の悪かった動物たちもニコちゃんの笑顔でみんな仲良しになりました。そんなある日、笑顔の大嫌いな魔王がニコちゃんを連れ去ってしまいました。すると動物たちからも笑顔が消え、ケンカばかりするようになってしまいました。魔王の城に閉じ込められたニコちゃんは、誰かが助けに来てくれるのをずっと待っていました……。
 その続きは本が破られていて物語は終わりません。だから続きを書こうとしましたが、上手く書けずそれっきりになってしまったと話します。ニコが言ったとおりです。彼女は約束を破った。自分を責めるハッピー。スカートの端を持つ手が印象的です。人は不安になると無意識に何を掴んだりすることが多い。
 サニーは立ち上がるとハッピーに飛びつきます。突然のことに驚く一同。ピース的にはあれですかね、百合キター! 冬はこれだ!的な。サニーはハッピーの口元を指でつり上げると、ハッピーが逃げる、スマイルスマイルと言います。ハッピーが言っていた言葉。映画の製作上、時期的に偶然なのか意図してなのかはわかりませんが、こうやって初期の頃の言動が出てくるのは面白い。誰が誰に言ったのか。そして今誰が誰に言っているのか。自分が言った言葉を誰かが覚えていてくれて今でもそれを心に残していてくれる。それを知ったとき人はどれだけ救われるだろうか。自分が他者の中に生きるということの意味。
 らしくないと言うサニー。36話でみゆきがあかねにらしくないと言ったように、あかねもみゆきにらしくないと言う。それはお互いにお互いの本来の姿、こういう時にあなたはこうするはずだという信頼と願いが込められている。
 前向きなのがみゆきの良いところ。マーチもピースもビューティも頷きます。みゆきはどうしたいのか。みゆきは謝りたいと言います。それでこそプリキュアの主人公。ニコの笑顔を取り戻すために彼女達は前に進みます。


⑥ありがとう、ごめんなさい
 城の中で逃げ惑うニコ。影達が彼女を追い回します。怖く辛い思いをしながらもニコはみゆきの言葉を信じて待ちます。
 過去の記憶から現在に戻ったニコはみゆきへの怒りと憎しみを募らせます。ニコを呼びかける声。彼女の影は異形の姿となり浮き出てきます。魔王。彼はニコにみゆきを憎むよう仕向けます。彼女の憎悪が彼に力を与えている。
 言うまでもないことですが、魔王がニコをそそのかしたからこうなったという話しではありません。ニコの怒りはみゆきへの信頼の裏返しです。魔王はその機に乗じただけです。ニコが黒い服を着ていることから何かしら敵側の意向を組んだキャラだと思っていましたが、ストレートに来ました。
 プリキュア達が城に近づいてきます。バルコニーに出て見下ろすニコ。彼女の心の隙間を埋めるように魔王はニコの憎悪を増幅させます。まるで、自分とニコとの結びつきを深めるかのように。

 ハッピーはニコを見上げると、すかさずごめんなさいと謝ります。90度に腰を曲げて平謝り。しかしニコの心は頑なで、謝っても許さないと言い返します。その答えに心が折れそうになるハッピー。彼女の肩にサニーが手を置きます。黙ってハッピーを見つめます。その表情と態度からは諦めるな、と語っています。
 ニコは牛魔王達を影から出して放り投げます。先ほどカッコイイ啖呵を切ったものの負けてしまったようです。主人公達もバルコニーに現れます。ニコは自分の辛さが分かるまい、みゆきも苦しめばいいと主人公達をけしかけます。ニコの悲痛な叫び。その声はどう聞いても今も苦しみ続けているように聞こえます。

 サニーとピースが相手を引き受けます。ハッピーを謝りに行かせるためにみんなでフォロー。同時攻撃をしのぐハッピー。ポーズがカッコイイ。ファンネルが飛んでくるとマーチが地面パンチで吹き飛ばします。桃太郎はビューティが相手します。ここではそれぞれ自分が主人公になった物語の主人公を相手にしているという構図ですね。

 ハッピーはニコの居る城へと一直線に進みますが、棘に阻まれます。仲間達も次第に圧され倒れていきます。
 ニコはみゆきのせいでボロボロになって可哀想と仲間達に呼びかけます。みゆきを恨んでいる彼女はみんなもみゆきを恨めばいい、みんなから恨まれればいいと思っている。子ども向けとは思えないくらいしっかりと復讐させています。しかしサニーは恨むなんて出来ないと言います。だってみゆきが好きだから。好きだからちょっとくらいボロボロになっても構わない。サニーは一寸法師から打ち出の小槌を奪うとピースにパス。受け取ったピースは振り下ろして西遊記の3人を小さくします。これで彼らは戦闘継続不能。ピースもみゆきが大好き。マーチはみゆきの笑顔が大好き。ファンネルをかわして浦島太郎にぶつけます。ビューティは桃太郎の刀の上に立ちます。すげぇ。彼女もまたみゆきの笑顔が大好き。足下の刀を凍らせて破壊。
 彼女達は巻き込まれたと思っていない。自ら引き受けたと思っている。だから今の状況をみゆきのせいだとは思っていない。自分が選んだ道。自分が好きになった人に対する責任として彼女達は受け入れています。自らの悩みと苦しみから生まれた喜びを甘受してこその自由意思。物事を偶然と見るか、必然と見るか。心に響けば運命。
 心揺れるニコ。それを抑えつけるようにみゆきなんて大嫌いだと再び叫びます。今のニコはとても不安定。自分を不幸にしたみゆきを憎んでいて、みゆきが辛い目に遭えば良いと思っている。けど誰もみゆきを見捨てないし嫌いにもならない。復讐者にとって、その復讐すらも上手くいかなかったときに自分を支えるものが全て失われてしまうかのような気持ちになるのではないかと思う。憎悪もまた人を支える力になりうる。もしここで退路がなくなればニコは行き場を失ってしまうでしょう。その時は魔王が待ってましたとばかりに出張ってきそうですが。

 ハッピーは跳躍すると一気にニコの居るバルコニーに降り立ちます。
 怯えるような、拒むような、頑なな態度を固持するニコ。彼女を見つめながらハッピーは話し始めます。ニコちゃんが笑顔を教えてくれた。気になる子になかなか声がかけられなかった時に知った言葉。「仲良くなるには笑顔が一番」。本のことを忘れてしまっていても、ニコが教えてくれた大切なことをみゆきは心に留め実行してきた。ニコちゃんのおかげでその子と友達になれた。「ありがとう」。何故感謝されたのか一瞬分からないニコ。ハッピーは彼女を抱きしめます。離れようとするニコをハッピーは強く抱きしめて約束を守らなくてごめんなさいと何度も謝ります。ハッピーの腕の中でニコのわだかまりはとけていきます。彼女の手から離れた本は、破れたページが光り出します。


⑦魔王の孤独
 これでハッピーエンド……になりません。ラスボス登場。
 城が瓦解し、出てきたのは巨大な竜。尻尾が何本も生えています。ドラゴンとか九尾の狐とか混ざっているような感じ。桃太郎達に取憑いていた影を回収。ニコは棘の檻の中に閉じ込められてしまいます。
 魔王はニコにハッピーを憎むように言います。憎しみの力が彼に力を与える。そして彼はこの世界を憎しみだけが続く終わりの無い世界を作ろうとします。彼は彼なりに独立した存在として物語の中に位置を占めています。作中の扱いは必ずしも大きくありませんが、スマイル全体として見た場合、彼の存在はとても示唆的です。
 魔王は触手的なものを飛ばしてハッピーを攻撃。ピースがサポート。しかし追撃の手は緩みません。手刀で切り裂くビューティ。相変わらず強いな、この人。サニーとマーチは合体攻撃でフォロー。が、それも束の間、魔王の方が彼女達の力を上回ります。
 その間に、牛魔王達がニコを救出しようとします。檻はびくともしません。ニコは何故自分を助けるのかと訊きます。助けてくれなんて言ってない。牛魔王はそんな泣きそうな顔して何言ってる、と返します。かっけぇ。マジイケメン。涙ぐむニコ。キャンディはニコの本当の気持ちはなんだと問います。本の破れたページがさらに光り輝きます。
 不審な動きをする牛魔王達を魔王が攻撃します。ハッピーがガード。しかし防ぐだけで精一杯。地面に叩きつけられながらも3人の無事を知って安堵します。この子は強い。
 苦しいはずなのに何故笑顔でいられるのか、自分は真っ先に笑顔をなくしてしまったのに。ニコは逡巡すると檻を出ようと力を込めます。ニコの行動に魔王は動揺します。誰の笑顔も奪いたくないとニコが叫ぶと光が溢れ檻は消滅します。破れていた本も新しいページが生まれます。彼女が新しい一歩、先へ進めるようになったことの示唆ですね。誰かを恨んで、誰かのせいにしていれば自分自身への責任や問題は棚上げできる。でも、それが問題を解決してくれるとは限らない。みゆきが約束を破ってしまったことで彼女の物語が終わらなかったのは事実でしょうが、では彼女は本当に何もできなかったのか。誰かのせいにするということは、自分の人生を誰かに預けてしまうことと同じです。絵本というモチーフで語られていますが、この物語の本質は人間の物語であり「わたしの物語はわたしが創る」です。そしてその「わたしの物語」の中にはたくさんの「あなたの物語」が入っている。

 魔王はニコに一緒に笑顔のない世界を創ろうと持ちかけます。この言葉一つで彼の位置づけは決定しました。彼は孤独を恐れている。唯一無二の王になりたいわけじゃない。たぶんニコをそそのかしたのも、彼女と一緒に居たいからだ。彼なりに友達が欲しかったのだろうと思う。
 ハッピーは魔王に笑顔が無い世界なんてつまらないよ、と声をかけます。サニー達もハッピーの言葉に続きます。笑顔は大切なのだと。しかし魔王は頑なに拒みます。
 必殺技タイム。プリンセスフォーム。映画なのでクロックのカウントはカットされています。魔王とフェニックスのビーム対決。ポケモン映画ですかね、これ?的なシュールさ。お約束どおりプリキュアの力は跳ね返されてしまいます。技がやぶられてもプリンセスフォームは解除されません。輪っかと装飾部分の発光が消えます。
 魔王は力を増大させて、絵本の世界に支配力を広げていきます。

 ニコは飛び出すと魔王の前に立ちはだかり制止の声をあげます。復讐しても全然心は晴れなかったと話すニコ。自分がしなければならなかったのは誰かを憎むことではなくみんなを笑顔にすることだったと叫びます。人が復讐するときの動機は、自分の自尊心が傷つけられた事に対する報復だろうと思う。自分を否定した、屈辱を与えた、こんな苦労を背負わせた相手も同じ思いをするべきだという感情。合理的に考えればそんなことをしても一文の得にもなりません。その時間を違うことに使った方がよほど生産的だ。けど、復讐は損得ではないんだろうと思う。自分を傷つけた者に対する怒り、報復。それは自己の存在(自尊心や気持ち)が如何に人間にとって重要であるかを物語っている。でもやっぱり復讐者は幸せになれないだろうと思う。ハートキャッチのデューンがそうだったように、憎しみや憎悪に囚われた人の心は決して癒されず満たされない。人を傷つけて得られる自尊心の回復など一時的なものに過ぎない。酒や麻薬と同じだ、常に補給し続けなければ不安に陥る。そうなってしまえば前に進むことすらおぼつかない。自己肯定と他者からの承認があって初めて自尊心は恒常的で健全なものになる。
 ニコは自らの使命を大声で叫びます。
 「私はニコ! いつも笑顔のニコだもん!


⑧ここから始まる物語
 しかしその言葉は魔王にとっては絶縁状に等しい。自分を受け入れてくれなかったニコに魔王は態度を翻します。拒絶されたと感じたのでしょう。彼はニコを攻撃します。
 自分の身代わりになったハッピーを抱きとめたニコはみんなに力を貸して!と頼みます。映画お約束のミラクルライトのお時間です。子どももそろそろだねとつぶやくくらいお約束です。映画館がライトで明るく照らされます。そうそう、これこれ、この光景が見たくて映画館に来たんです。子どもの応援があってプリキュア映画は完成する。子どもの応援は最高の演出装置です。余談ですが作中できんと雲までライト振ってたのがツボでした。気を失ったハッピーにニコは何事かつぶやきます。
 応援の力によってハッピーはさらなる変身を遂げます。今回は変身モーション付き。羽が生えた上にハートの後光が上下に輝くという豪華さ。映画の作画クオリティも加わってただでさえ可愛いハッピーがさらに可愛くなります。
 魔王の攻撃を簡単に粉砕。パワーのインフレは基本です。
 彼女が地面に降り立つと花が一面に広がり絵本の世界を包み込んでいきます。どんだけ浄化力高いんだ。
 「笑顔で包む愛の光。ウルトラキュアハッピー
 ごめん、正直に言うと、これ何回訊いても吹きそうになります。ウルトラって付けると安っぽくなるというか。普段みゆきが言ってるウルトラハッピーとキュアハッピーをかけているんだろうけど、やっぱ笑いそうになるね。

 魔王と対峙するハッピーに戦意はありません。どこか悲しそうな表情。彼女は分かっている。ニコも魔王も同じ。同じ苦しみと渇望を持っている。孤独を恐れる気持ちが様々な形をとって悲劇を作り出す。
 ニコはハッピーの手を掴むと「魔王を…」と言葉を切ります。手を握り返しながらハッピーは分かっていると答えます。
 サニー達はプリンセスキャンドルを構えます。白い大きな羽が魔王を包み込みます。魔王と二人っきりになったハッピーは両手を握り合せて懇願するように魔王に語りかけます。世界は笑顔でキラキラしてとても綺麗。そんな世界を壊すなんてやめよう。その世界にあなたもいて欲しい。彼女が手を触れると魔王の姿は元の小さな姿に戻ります。魔王を優しく抱きしめるハッピー。ニコが待っている世界へ戻ります。
 映画やテレビシリーズでボスの浄化は何回かやっていますが、これといった必殺技を使わずに説得したのは今回が初めて。みゆきは彼に語りかけ、受け入れることで戦いの幕を閉じています。必死に語りかける彼女の姿は「伝説の戦士」の言葉からはほど遠い。けれどもとても強く美しい。すげー身も蓋もなくぶっちゃけると、密室で腹を割って和解というオチ。肩肘張らずに素直になろう。ニコちゃんと友達になりたいんだよね、だから一緒にいようよ、という話し。


 魔王が目を覚ますと目の前にみゆきとニコが覗き込んでいます。驚いて物陰に隠れる魔王。ニコは魔王も笑顔でいられる世界にしたいと言います。自分は悪い奴だぞ?と言う魔王にニコは本を見せます。私の物語には魔王の笑顔も必要。魔王は真っ赤になります。
 牛魔王達が主人公達を拾ってやってきます。彼らに謝るニコ。牛魔王は反省してるならいい、とあっさりと流します。まさに漢。
 みゆき達にもニコは謝ります。本を見せてこれからは自分の物語は自分で創れると言います。ニコは改めてみゆきに謝ると一番伝えたかったことを伝えます。「大好き」。それを訊いたみゆきは堪らず泣き出してしまいます。みんなからスマイルスマイルと言われて笑顔を浮かべるみゆき。嬉しい時に泣くのも笑顔の一つの在り方だと思うよ。

 エピローグ。クレジットが流れる後ろでその後の物語が描かれます。桃太郎達の物語の中でニコと魔王は常に笑顔を浮かべています。その物語を読んだみゆき達の顔にも笑顔が溢れます。


⑨EDダンス
 スイートもそうでしたがダンスで締めってのは良いと思う。子ども達のノリノリな姿が可愛かった。物語を楽しんで最後に身体を動かして遊ぶ。エンターテイメント。EDの花畑はラストシーンの花畑を連想させるので、その意味でもEDのダンスは余韻を残す良い終わり方でした。
 期待に応えて春映画はオールスターズNS第2弾。これもお約束の親御さん達の「また~」な声。



○トピック
 みゆきが可愛過ぎて生きるのがハッピー。
 プリキュアの映画はその年のプリキュアの骨子が色濃く反映されています。物語の核心に踏み込めば自ずとそうなるのだろうと思います。本作もまたスマイルのエッセンス、指向性、意志が如実に現れています。
 今回の映画は大きく2段階に分けられます。ニコとみゆきの物語と、魔王です。それぞれについて分けて感想を書いていきます。前者は罪と救済を巡る話し、後者はその救済の先にある物語が示唆されています。


①ニコ
 筋としてはフレッシュの映画の類型。つまり主人公への告発と贖罪(救済)の物語です。このテーマはフレッシュからさらに一歩踏み込んだものになっていて、人間の脆さと救いを追求するプリキュアシリーズの昇華、積み重ねを感じます。

 テレビ本編では大きな失敗や挫折をしなかったみゆきですが、今回のお話しでは大きく彼女の心が揺さぶられます。フレッシュの映画では、ラブはウサピョンを裏切っていません。だから彼女とウサピョンに大きな溝はありませんでした。それに比べるとみゆきとニコの関係は直接的で、みゆきに非がある。フレッシュ以上に彼女の行動、責任が問われています。彼女が真っ先に行ったことは謝罪でした。しかしニコの態度は翻りません。当然ですね、謝って済まされるほどニコの苦しみや悲しみは軽くも安くもない。いくら自分の非を認めて謝ったとしてもそれは相手の不満が立証されたに過ぎません。謝罪では彼女の孤独、寂しさ、悲しみ、怒りは無くならない。
 ニコの復讐心の裏には希望や願い、みゆきへの信頼がありました。自分を忘れないで欲しい、見て欲しい、受け入れて欲しい、助けて欲しい、私という存在を見捨てないで。人間なら誰もが持っている他者への願望や自己愛の感情です。人間というのは本質的に他者に依存し、孤独には耐えられない生き物だと思います。自分を肯定するには他者の承認が必要になる。逆に他者に受け入れられないと自分が否定されたかのように感じてしまう。
 だからこそみゆきの感謝の言葉は彼女の心を捉えたのでした。あなたのおかげで今の私はいる。あなたの言葉をずっと覚えている。あなたのおかげで友達ができた。ありがとう。ごめんなさい。というみゆきの言葉はニコの全てを受け入れる言葉です。確かにみゆきは約束を破りましたが彼女の中にはずっとニコの物語が息づいていました。ニコにとってみゆきは一番憎らしい相手だけど、そのニコのことを一番愛して大切に思っているのもみゆきです。感謝と謝罪の言葉はどちらもみゆきの本心であり自分の罪と彼女への愛情を示しています。無論、今更それでなにが償われるというわけではありません。過去は変わらない。辛かった思いも変わらない。でも、今愛されていることも確かなのです。それを認めることも辛く勇気が必要かもしれません。すぐには受け入れられなくても、みゆきの懸命な姿と笑顔を見てニコは自分の気持ちを取り戻しています。
 本当に人間というのは面倒臭い生き物だと思います。心の底では人に愛されたいと思っているのに、相手を糾弾する言葉を投げかける。謝罪の言葉をかけられても余計に不満が高まる。みゆきは罪の意識に押しつぶされることも囚われることもなく、ニコが自分にとって何であるのかを素直に伝えたのでした。そしてまたニコもそれに応えています。とてもプリキュアらしいアプローチです。

 失望や絶望によって生きる気力を無くす者(バッドエナジーがでている人)もいれば、それが怒りや憎悪に転化されて復讐者になる者もいる。ニコは後者でした。この映画では深い悲しみから生まれる暴力が描かれています。テレビ本編を補足してスマイルの物語に奥行きを与えています。
 ずっと苦しい思い、復讐、罪の意識を背負って生きていては笑顔になることはできない。いみじくもニコの本はそれを示しています。ページが破れて物語が終わらない。ずっと同じところで繰り返すか立ち止まってしまう。かといって誰かが物語の続きを書いても(誰かの言いなりになる。魔王はそれをしようとしたのかもしれないね)自分の人生と思いにくい。白紙のページが生まれたことは、自分で書き加えていける、先へ行けるようになったこととして捉えられます。みゆき達がプリキュアの本を自ら書き加えていく(6話で提示)のと同じ比喩が使われています。
 赦すことで前に進めるのか、前に進めるようになったから赦せるのか。たぶん後者の方が受け入れやすいのではないかと思う。相手を赦せ、そうすることであなたも前に進めるようになるという説教はいくらでもあるでしょうが、感情的には反発が強い。相手を赦す前に今の自分に納得しなくちゃならない。今の自分を肯定できるなら今の状況に追いやった相手も赦せるようになる。赦すとは、今の自分を認め信じること、今の自分を作った環境や他者をも受け入れることなのだと思います。とても難しいけれど、それが「わたしの物語はわたしが創る」ということの自覚であり背負わなければならない責任でもあるのだと思います。人はすでに書かれた過去について書き換えることはできません。できることはそこから始めることだけです。世界が私に何をしてくれるか(世界に何を期待するか)ではなく、私が世界に何をしていくか。プリキュアの物語は厳しいくらい自立的です。

 映画を見て印象を強めましたが、みゆきは周囲からたくさんのものを貰っています。ニコから笑顔を貰い、あかね達から勇気を貰っています。1話で転校してきて不慣れだった彼女に良くしてくれたのもあかねをはじめとした友人達でした。プリキュアの歴代主人公はみな愛情深い主人公ですが、最近の主人公、響やみゆきは先天性よりも他者から貰った優しさ、他者と育んだ絆によって他者へと還元していく姿が描かれています。ニコから貰った笑顔を彼女に返し、ニコもまた新しい発見と力を得て自分の物語を自分で動かしていく。それはみゆきもあかね達も同じです。誰か一人が中心となって広がっていくのではなく、相互に関わりながら広がっていく。笑顔が組曲となって紡がれていく物語になっています。その輪を広げていくにあたって大切なのは常に他者に感謝する気持ちなのだろうと思います。あなたのおかげで、あなたがいたから今の私がいる。出会いと別れを繰り返しながらも人は何かを残していける。
 フレッシュの映画は玩具を扱っていました。子どもは玩具をいずれ卒業します。同じように絵本もいずれ卒業する。でもだからといってそれらとの出会いや体験が無駄で無意味だったわけではありません。そこに大切な想い出や萌芽があることだってあります。大人になると忘れがちですが、子どもにとって玩具や絵本は友達であったり、大切なものだったりします。フレッシュの映画は単純に「玩具を大切にしてね」というのでなく「あなたの友達を大切にしてね」ということが含意されています。だから私はフレッシュの映画も、この映画もただの玩具や本と見ずに「人」として見ています。もちろん純粋に玩具、本として見ても差し支えありません。いずれにしても人は、様々な体験と出会い、それらとの別れを通じて人生を創っていくのですから。


②魔王
 近年のプリキュアは敵を救済しています。同時にそれは敵にも何かしらの事情や想いがあることを含意してもいます。映画の中では深く描かれてはいませんが、魔王の言動には身勝手さ、その名のとおりの暴君性が見られますが、同時にニコを必要としている態度、孤独を恐れる様子が見て取れます。一緒に憎しみの世界を作ろうという言葉にはニコを利用しようという以上に、彼もまた誰かを求めている感情が感じられる。彼は他者との繋がりを否定していません。そもそも憎しみは他者あっての感情です。
 また本映画の特徴は絵本の主人公達が敵となる反面、敵であるはずの牛魔王や鬼達が味方になって戦う点です。ニコも物語の主人公ですが復讐者として登場しています。敵と味方が逆転あるいは混在している。スマイルの物語は敵・味方の価値を相殺しています。これはほぼ間違いなくテレビ本編にも関連してくる部分だろうと思います。物語に出てくる悪者がそのまま悪である、倒していい相手であるとは限らない。彼らもまた大切な登場人物なのだと。

 魔王も笑顔になって欲しい、一緒に居たいという願いはプリキュアであるみゆきが伝えていますが、ニコも同じ気持ちです。作劇上プリキュアの活躍によって解決しているけど物語の筋はニコのお話し。彼女は自分の使命、自分の物語がなんであるか、どこに進んで行くべきかに気づきそれを実行しています。32話と同じです。辛くても苦しくても自分の人生を自分で受け入れ、その使命を全うしようと全力を尽くす。魔王の救済はニコが前に進み出したことの証しであり、EDにて彼女の本が全うされた(物語が完結した)ことが分かります。このメッセージはスマイルプリキュアが目指す物語の先触れだろうと思います。こうした点からもプリキュアの映画はテレビ本編の骨子が色濃く出たエピソードで、本編と直接的に話しは繋がらないものの物語のテーマを拡張・補足・深掘りする位置づけにあります。別な言い方をすれば、映画を見れば大体そのプリキュアの本質が見えてくる。


③プリキュアの物語(結びにかえて)
 この物語に悪は存在しません。魔王は憎しみの世界を作ろうとしたけど、同時にニコとも友達になりたかった。ニコはみんなを笑顔にしたかったのに悲しみに沈んでみゆきを憎んでしまう。彼女達は孤独を恐れ、傷つくのを恐れるあまり他者を傷つけてしまう。それがさらに彼女達を孤独にしてしまう。愛されることを望んでいるのに、それと反対のことをしてしまう。プリキュアであるみゆきがその状況を作ってしまったことも含めて、この物語に悪は存在しません。私は人を憎むことや傷つけてしまうことを悪だとは思いません。それは人間の在り方から生まれているものだからです。
 上で述べたように、人間というのは本質的に他者に依存し、孤独を恐れる生き物です。勿論、独りでも不安を感じない人や人からの評価を気にせず高い自己肯定感を持ち続ける人もいます。でも、それは他者からの承認や愛情を受けているという前提で健全な精神が養われている場合の話しです。それが上手くいかないと前作スイートのように不安や自分の気持ちを押しつけてしまい溝が深まってしまう。人は孤独を恐れる反面、他者との関係によってさらに孤独になったり厄介事を起こしてしまいます。他者といても辛い、いなくても辛い。ですが、それでも人は誰かの承認、誰かの愛がなければこの辛さに耐えていけないのだと思います。そして生きていく中で様々な人に出会い、様々なものを受け取っていきながら同じように他者に分け与えていくのだと思います。みゆきが絵本の物語から学び、絵本が大好きなのは、人の生き方の縮図です。人は数限りない人の物語と出会い、その中で学び、人やモノや考えや在り方を好きになっていく。人の中には様々な物語の欠片が入っていて、同時に一つの大きな物語が形作られている。つまりその人自身の人生がある。この世界はそんな物語で満たされている世界。スマイルの物語は人の世界をそのように提起しています。

 プリキュアの物語は理想や綺麗事を言います。しかしそこでは必死な努力と泥まみれになっても笑顔でありたいと願う人々の姿が描かれています。みゆきのようにやれば必ずハッピーになるとは限りません。結局自分で答えを見つけていかなければならないし、その過程で多くの失敗を重ねていくでしょう。でもそれが生きるということの証しなのだと思います。辛さも喜びも、憎しみも愛も、貰うことも与えることも、人が人である証しなのです。プリキュアが肯定しようとしているのはまさにその人の在り様です。
[ 2013年05月22日 21:35 ] カテゴリ:スマイルプリキュア! | TB(0) | CM(-)
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