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最終話「ラララ~♪世界に響け、幸せのメロディニャ!」

○交響曲
①しあわせのスキャット

 壊れた調べの館。奏とアコは思い詰めたようにピクリともせず佇んでいます。セイレーンも黙したままギターの調律を続けています。響が館の奥からカップケーキを見つけて持ってきます。
 ノイズの力によってあらゆるものが石化しましたが音吉さんのバリアに守られたおかげでいくつか石化を免れたようです。ギターもその一つ。響は明るくみんなにカップケーキを配ります。ありがとう、と受け取る3人。しかし表情は固い。ピアノの椅子に腰掛けた奏の視線の先には眠り続けるハミィの姿。丸一日目を覚ましません。
 ソリーに尋ねられたセイレーンは幸せのメロディを唄わないと答えます。正式な歌姫であり前回の立役者であるハミィを差し置いて唄う気はありません。その横で、響はノイズとのことを思い返します。その表情に不安の影はなく明るく希望に満ちたりています。彼と全力で戦い、想いを伝え合い心に届いたからでしょう。あの戦いは彼女達にとって新しい絆と強さ、そして幸せを生むものでした。
 ノイズが消えた後、上空にハミィと楽譜、音符達が出現。ハミィは残った力で音符を楽譜に集めます。滝のように楽譜へ吸い込まれる音符。それを見届けるとハミィは意識を失い楽譜に守られて地面へと落ちます。同時に石化したトリオ達も落下。良かった、彼らのこと忘れられていたのかと心配になりました。ちゃっかり三銃士の格好に戻っています。

 ハミィが幸せのメロディを唄ってくれたら…呟く響。セイレーンが気付くと響は言葉を飲み込みハミィが元気に目覚められるような歌を唄って欲しいと頼みます。響の呟きは彼女にとっても、この物語にとっても気付かれにくかった真実だと思います。常に傍にいて、笑顔を崩さなかったおとぼけ猫。ハミィがいればどんな緊張場面でも笑いに変えられる。彼女は幸せを招く猫でした。
 ギターを構えるとセイレーンは唄います。「エレンの歌」として作曲されたとサントラ2に書いてありました。ハミィは幸せのメロディをセイレーンと一緒に唄うことを望んでいましたが結局一人で唄うことになります。が、こうやってセイレーンの歌が入ることである種の組曲になっているんですね。彼女の歌が次ぎの歌を招く。
 セイレーンが唄っている間、ノイズの言葉が反芻されます。人がいる限り悲しみは消えることはない。悲しみの中から生まれ、人がいる限り永遠に生まれ続けるノイズ。ここでこのセリフを出してくるスイートの本気ぶりが凄い。一切妥協することなく物語を締めくくろうとしている。子ども番組としてのスタンスはおそらく大きく分けて2つある。子どもにも判るように明るく楽しくのスタンス、もう一つは難しくなってもシーンが重くなっても作り手が伝えたいことをそのまま伝えようとするスタンス。どちらに舵を切るか、重きを置くかはプリキュアでもその時々で変わるんだけど、後者のスタンスを取り入れることを辞さないのが本作の魅力です。本気で悩んで、本気で泣いて、本気で笑う彼女達と一年一緒に居られることはとても幸せです。
 響はノイズの言葉を思い返しながら、あのときハミィも自分と同じことを思ったはず、だからはやく目を覚まして世界をあなたの幸せの声で包み込んでと願います。ある人との再会を響は待ち望んでいます。


②幸せの招き猫
 気付くと響は花畑に居ます。ハミィが居ますが響に気付かず花と戯れています。セイレーン、奏、アコもいます。どうやらハミィの夢の中らしい。セイレーンの歌がハミィを想うみんなの気持ちに反応したのだと推測するアコ。心象世界みたいなものでしょうか。映画でもありました。
 ではどうすればいいのか。途方に暮れます。ハミィは楽しいときは唄おうとセイレーンを呼びます。みんなを見つけられないハミィ。彼女に話しかけても声が届きません。セイレーンは再び唄い出します。するとハミィに歌が届きます。セイレーンの姿を探すハミィ。
 セイレーンは響達にも歌を促します。響、奏、セイレーン、アコは一緒に唄います。ハミィのために。最終回で気付きましたが、セイレーンって身長一番高かったんだなぁ。あと、毎回奏の白ニーソ太ももばかり言ってましたが、セイレーンの黒ニーソ太ももも好きです。スカートの2段フリルと相まって可愛い。
 「泣かないでハミィ
 「私達ハミィのおかげで一緒になれた
 「おっちょこちょいで天然ボケの子猫ちゃんだけど
 「ハミィがいないと何も始まらない
 「だから早く起きておいで

 唄い終わり再び調べの館。椅子に腰掛けた奏のスカートとニーソの間の通称絶対領域が素敵です。
 ハミィは目を覚まします。
 「みんなありがとニャ」
 「ハミィはこんなに幸せな気持ちになれたのは初めてニャ。みんなの歌がハミィに幸せをくれたのニャ」
 「みんな心で繋がれたね
 「セイレーンのおかげニャ。みんなが来てくれて本当に嬉しかったニャ。ありがとニャセイレーン」
 「セイレーンの分も頑張って幸せのメロディを唄うニャ」
 「あったりまえでしょう、しっかり唄って世界を幸せにしないと承知しないわよ
 「さあ、行こうみんなの幸せを取り戻しに

 正直に言うと、不覚にも初見で何故Aパートまるまる使ってこのエピソードをやったのか気付きませんでした。これを書いている今このとき判りました。ハミィは幸せを招く猫だったんですね。常に笑顔を絶やさずみんなを明るく楽しくさせるムードメーカー。歌を愛し歌で想いを伝える歌手。彼女の旅路からこの物語は始まり響、奏、セイレーン、アコは出会った。彼女の行動はプリキュアにおいて本質的に正しい。人を信じ決して諦めることなく笑顔を見せ続ける。直接戦うことはないけど紛れもなく彼女が居たからこそ今の響達、ノイズを救った世界がある。みんなを愛した子猫を今度はみんなが愛する。ハミィのこれまで一貫した行動、姿勢を思い返すと彼女が幸せのメロディの歌い手に相応しいのだと改めて実感します。響達とハミィとの関係は割とすっ飛ばされていた感があったんですが、最終回に持って来ることで全体として綺麗に構成されていることに気付きます。ある意味でこの1年のハミィの旅路は歌い手としての資質を証明するものであったとも言えます。
 Aパートまるまる使って、この物語の影の功労者を称え愛し今一度彼女達の歌(繋がり、絆)によって世界に幸せのメロディを届ける準備をしています。スイートプリキュアの主力商品への労いと感謝。彼女で飯を食っていた作り手の愛情を感じます。この1年ハミィと一緒に遊んできた視聴者の言葉を代弁。みんなハミィを必要としている。
 プリキュアが、主人公の響が、世界に幸せを届けるのではない。みんなが紡いで、あるときは誰かにみんなの想いを託して届ける。


③幸せのメロディ
 宮殿のアフロディテ達が居る場所へ移ります。石化した母の姿にアコはいたたまれなくなります。その彼女の肩を奏は掴みます。安心させるように頷いてみせる奏。アコも表情を崩します。忘れずにトリオも宮殿へ運んでいます。
 楽譜をセット。
 「行くニャよ~!
 「頑張って~!
 ハミィに声援を贈るセイレーン。改めてこのふたりの関係も変わったんだとしみじみ思う。
 そんな軽いノリなの…?と戸惑う3人をよそに、セイレーンは真剣にハミィを見つめます。セイレーンの眼差しを見た響はハッとしてハミィの方へ視線を向け直します。今まさに唄い始めようとするハミィの姿は、普段と何一つ変わることがないはずなのにどこか神々しく周囲の空気を変えています。呆然と衝撃を受けたようにそれを見つめる響。おそらくこの体験は響にとって大きな意味を持つだろうと思う。一流の音楽家を目の前で見るのだから。
 歌が始まります。音符が楽譜に染みこんでいきます。その歌声に奏はなんて綺麗なメロディ…と感嘆。隣にいる響はもはや無言で見つめます。セイレーンはとても満足げな表情を浮かべています。彼女がかつて嫉妬しそして今期待した美しい歌。ハミィの歌が広がりアフロディテの石化が解けます。
 アコは堪らず母に走り寄って胸に飛び込みます。抱擁する母と子。同じく石化が解けた国民達はこの場の空気を完璧に読みます。お互いに目配せすると楽器を演奏。オーケストラにハミィの歌声が乗ります。アフロディテはついにノイズを倒したのね、と娘を労います。後の音吉さんの反応を見てもそうですが、ノイズへの感情は一般人のそれとプリキュアとでは異なります。アコは泣きながらママ、ママと呼びます。母子の再会に響は泣き、奏も潤みます。

 バスドラ達も目を覚まします。気付いたセイレーンは彼らが目覚めたことに安堵します。ようやくバスドラ達は自分達が助かったことに気付きます。ファルセットを気遣うバスドラは結構良い奴です。
 感激したトリオは「セイレ~ン♪」とセイレーンに飛びつきます。おいおい泣きながら一生付いていきますとか言っちゃってんのが面白い。それに「やっかましいわ!」と答えるセイレーンもなかなかのものです。久しぶりに聞きました。セイレーンがマイナーに居たころに言っていたセリフです。マイナーに居た頃とは色々変わりましたが、この4人も新しい形を築いていくのかもしれません。っていうか、メイジャーを守る三銃士が猫にかしずくってどうなの。

 アフロディテはハミィに礼を言うとアコと一緒にメフィストのもとへと向かいます。アフロディテに肯き返しながらハミィは唄い続けます。響と奏は宮殿から外の景色を眺めます。幸せのメロディが広がりメイジャーを元の鮮やかな色へと変えていきます。石版に封じられた音吉さんとクレッシェンドトーンも宮殿へ還ってきます。
 メイジャーに虹の橋が架かります。虹を見つめながら幸せが降り注いでいるみたいと話す響。ここで五色(ピンク、橙、黄色、緑、青)の虹が架かっているのはスマイルへの橋渡しを込めているのでしょう。後輩思いの良い先輩です。プリキュアの意志を継いだ本作もまた新しい物語に託して幕を閉じる。プリキュアの組曲は終わることなく続いていく。
 メフィストも目を覚まします。父に抱きつくアコ。
 幸せのメロディは人間界に届いているはずだとセイレーンは答えます。これでみんな新しい音楽を奏でられる。
 「もう一つの声もきっと新しい音楽を口ずさんでくれるはず
 「そしたら私達も鼓動のファンファーレを響かせよう。それぞれの夢に向かって
 よくぞここまで。他者との関わりに不安を抱いていた彼女は、他者と共に在る世界を歩む。


 歌が終わり、改めてアフロディテとメフィストは響達にお礼を述べます。迷惑をかけてすまなかったと話すメフィストに、音吉さんはまったくじゃ、と答えます。どっちかってーと勝手に無茶したような気がするんですけどね、あなたは。クレッシェンドトーンももうアコに心配をかけるなと念を押します。アコは彼らのやり取りを明るい表情で見つめます。彼女の表情から父に対する信頼が見えます。
 アフロディテはハミィの歌を褒めます。ハミィはセイレーンが一緒に居てくれたおかげだと素直に照れることなく言います。ハミィを抱いていたセイレーンの頬が染まります。まさか最終回でハミィとセイレーンのバカップルぶりを見せつけられるとは。

 戦艦調べの館で人間界に戻ります。………。やっぱりあれで戻るんだ。行きと同じく帰りもシュール。メイジャーの人々は歓声をあげてプリキュア達を見送ります。アコはしばらく人間界に滞在するようです。メイジャーに手を振って応える響と奏。みんなに笑顔が戻ったことを喜びます。この笑顔を見るために彼女達は諦めずに戦い抜きました。


④みんなの組曲
 ズドーン。調べの館が元の位置に着陸します。本当に轟音立てて着陸したよ。しかもなんか1mくらい高さ違くね? 完全に元の位置に納まってないよね、それ。
 響達は様子を伺うようにしてみんなが居る広場が見る位置まで移動します。娘達の姿にまりあさんが気付くと、響は喜び勇んで母のもとへ段差を飛び降りて走り寄ります。……何故だろう、感動の場面なのになんか一手間多い。どこに行ったのかと思ったと訊く母に響は調べの館に…と答えます。ついさっきまで無かったけどね。
 奏の家族も何をやっていたのかと尋ねます。なにがなんだか…と曖昧に答える奏。私もなにがなんだか判りません。最終回の感動的な場面なはずなのに、文字どおりピースが綺麗に収まってねぇ。どうするんだろ、あの段差。それが気になってしょうがない。頼むから誰か突っ込んでくれ。
 奏太はアコになんともなさそうだな、といつもの軽口で言います。アコは奏太も元気そうで良かったと気遣いを見せます。
 聖歌は怖い怪獣が現れたと思ったらいつの間にかここにいて…と不思議がります。和音もそんな目に遭ったら不安でしかたないのに何故かそんな気持ちにならないと言います。王子先輩は満ち足りた気分で何も心配いらないと思えると不思議がります。彼らの言葉にポカンとする響達。響の両親は聴いているだけで幸せになれる素晴らしい歌を聴いたと言います。調べの館からハミィは彼らの姿を見下ろします。彼女の歌声は世界を超えて人々に届く。
 普通に考えてあの段差の必然性は低いです。段差が無くても話しに支障はないし、無い方が見る側も違和感を覚えません。おそらくですが、地響きを立てて外の様子を伺いみんなと再会するというシーンは震災を意識しているのだと思います。不安な出来事、みんなは無事なんだろうかと心配した体験を再現しているのだと思います。しかしみんなは不安よりも安心や幸せな気分になっている。それは震災を通じて生まれた絆を比喩しているのかもしれませんし、プリキュアを見てきた視聴者の声として表現しているのかもしれません。いずれにせよ、恐ろしい体験、不安な気持ちがこのシーンにおいても解消されみんなが再会を祝い安心していることが強調されています。話しの繋がりとしては若干損なう面がありますが、本作を製作した方々の想いがあったのだと思います。


 夕方になり両親達は家路につきます。調べの館に残る響達。帰らないのかと尋ねる音吉さんに響はもう少し待ってみたいと答えます。やっぱりそうなんだ。彼女達は最初からこれを待っていたんですね。なんのことだか判らない音吉さんに響は笑みを返します。マジやべぇ。超可愛い。益々困惑する音吉さん。
 響は話しを変えて、ハミィにみんなを幸せにしてくれてありがとうとお礼を言います。響の言葉に続いて奏達もお礼を言います。ハミィは素直に喜びます。奏の下からのアングルが熱い。座ったときに太ももの下側が見えるって良いと思うんだよね。
 
 「ピー!
 聞き覚えのある鳴き声がします。その声に警戒する音吉さんとクレッシェンドトーン。
 ブロックの上に佇む白……驚きの白さ。もしかしたら漂白されているかもしれないと思ってたけど本当に真っ白になってるよ!
 「ノイズ!
 「ピーちゃん!
 駆け寄る響達に音吉さんは戸惑います。
 「おいでピーちゃん
 ピーちゃんを抱き寄せる響。
 「おかえり、ぴーちゃん
 「待ってたよ
 再会を待ち望んでいた相手に優しい声で呼びかけます。音吉さんはそいつはノイズだと驚いて叫びます。
 「音吉さん、いくら幸せの世界になっても悲しみや苦しみが全て消えるわけじゃないわ
 「私達はピーちゃんを受け入れた上で前に進みたいの
 「悲しみを見ない振りをするのは幸せとは言えないもの
 「よく見れば可愛いよ

 なんと…! 音吉さんは心底驚いて彼女達を見つめます。子どもだと思っていた彼女達はいつの間にか成長し大人になっていました。なるほど、こういう提示をしてくるのか。本当に真っ直ぐな作品です。ノイズと悲しみと喜びを分かち合ったプリキュア達以外はまだノイズに抵抗があるでしょう。一気呵成には、順風満帆には進まない。しかし一つ一つ、一歩一歩進めていくことは出来る。
 「ピーちゃん、これからはずっと一緒だからね
 ピーちゃんは鳴きながら涙を浮かべます。響の言葉どおりみんなと一緒にいられる喜び、悲しみ以外の涙を彼は知った。全ての人に悲しみがあるように、全ての人に喜びがある。
 それはそうと、確かによく見れば愛嬌があって可愛……いくねーよ。アコちゃんの美的感覚に疑問を抱きます。

 「見守りましょう、彼女達がどんな音楽を奏でていくのかを
 「これでみんな一緒に夢に向かって進めるね
 「うん
 「私達はまだまだ変われる。新しい明日に向かって変身するのよ!
 「レッツ!プレイ!プリキュア!モジュレーション!

 スイートプリキュア最後の、そして彼女達の新たな変身。スイートの音楽の使い方はカッコイイ。変身BGMが先に出ることで期待感が高まります。

 スイーツ部でいつものようにケーキを作る奏。部員にアドバイス。
 公園でセイレーンは演奏。ハミィも一緒に居ます。
 アコは学校の友達と一緒。奏太以外にも友達が出来たでしょうか。
 響は父にピアノを教えてもらいます。

 演奏会。みんなが見守る中で、深紅のドレスに身を包んだ響は自ら楽しみながらみんなにそれを伝えるようにピアノを奏でます。

 「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!
 「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!
 「爪弾くは魂の調べ! キュアビート!
 「爪弾くは女神の調べ! キュアミューズ!
 「届け! みんなの組曲! スイートプリキュア!


○トピック
 プリキュアシリーズ8年目、6代目プリキュアここに閉幕。

 苦しみ悲しみながらも生きる人間の賛歌を謳った本作に心から感謝を申し上げたい。
 1年間毎週欠かさず視聴しながら、彼女達の苦しみと悩み、喜びと笑顔、想いを一緒に分かち合ってきたと勝手ながら思っています。番組の途中で震災が起こり私自身大変な思いをしましたし、本作もその影響でシナリオを変えたとも聞き及んでいます。その上で、苦しみや悲しみから目を背けずに真っ直ぐに進んだ本作はまさにプリキュアの意志を継いで見事な組曲、交響曲を奏でています。この1年、プリキュアを見続けてきた8年を私は幸福な時間であったと確信しています。毎年プリキュアを見ながら新しいことを学び、知り、感想書くために無い頭振り絞って自分の考えをまとめて散文にして書き綴ってきました。それがどれだけ役に立ったのかは我ながら微妙なところではあるのですが、私がいかなる時であっても前を向き続けられたのは本シリーズの影響が大きいです。


 まるまる1話エピローグに費やしたわけですが、最後まで前に進み続けるのには恐れ入りました。徹頭徹尾絆を結ぶことに重きを置いた作品です。
 幸せのメロディの歌い手としてハミィが選ばれたことは1話から視聴者みんな知っています。どうして彼女が選ばれたのか。歌が上手いからだけではありません。彼女が幸せのメロディの歌い手として必要な資質を持っていたからです。歌を愛し、歌で想いを届け、常に笑顔を絶やさずみんなを元気づけてきた彼女の性格は普通だったら主人公向きです。その資質の一端がノイズとの戦いに現れています。そのハミィはみんなにとってどういう存在だったのか。このエピソードを通じて彼女の存在の大きさ、歌い手としての説得力、彼女がみんなに笑顔を与えてきたようにみんなが彼女に幸せを与える絆の連鎖、誰かに託すことの尊さが描かれています。
 みんなで唄うことは楽しいだろうし美しい。けど必ずしもみんなで一つのことをやるわけではありません。誰かが選ばれその人に託さなければならない時があります。競争原理や職業選択が一番身近な話題でしょう。この世界はそれぞれがそれぞれに出来ること、やらねばならないことを行うことで成り立っている世界です。幸せのメロディを唄うのは確かにハミィだけど、それもまたハミィを支える人、彼女の声を聴きたいと願う人があってのことです。スイートは組曲であり、常に一つである必要は無い。前段が中段へ、さらに後段へと続くようにお互いに関わり合い繋がり合うことに価値と尊さを見出した本作らしい幸せのメロディの演奏です。

 そしてピーちゃんとの再会。彼を笑顔に変えたことで全ての悲しみが幸せへと続いていることは前回証明しています。もはや彼は悲しみ嘆くだけの存在ではない。生まれ変わった彼は悲しみから生まれつつもその悲しみから喜びが、幸せが、笑顔が生まれることを知っている存在へと変わっています。彼との再会を待ち望んでいた響達は本当に素晴らしい。宿敵をも友達にして一緒居たいと願う彼女達の変化、悲しみと共に人はあるべきだという意志、いずれにおいてもこの物語が1年をとおして紡いできたことの答えです。彼女達が言うとおり人は変わっていく。人を知り世界を見ながら生を豊かなものへと変えていく。変わることを積極的に肯定しています。だからこそ最後に変身するんです。敵と戦うための変身ではない、新しい自分になるための変身。
 プリキュアは歴史的に見て日常と非日常(戦闘)の対比と相克が行われています。プリキュアは日常のために戦う。日常が最も尊く、それを守るために戦います。しかしシリーズを経るにしたがって日常と非日常が同化していきました。プリキュアに変身することは決して敵と戦うだけの意味に留まりません。むしろ逆です。日常の中に戦いがある。誤解やすれ違い、諦めや憎悪、罪、それらと戦うことを通じて彼女達は成長しています。プリキュアとして戦うということは、日常の中で戦い克服し成長して豊かな日常をおくるための大切な戦いなのです。スイートはプリキュアの力を誰かを守る力だと云いました。それは他者と繋がり絆を結び育んでいく力です。これからも響達はまた同じような苦しみや誤解、ケンカを重ねるでしょう。しかしそれでも彼女達はこの世界を、人の心を肯定するはずです。何故なら全ての悲しみは幸せに通じているからです。ふたりの組曲が3人の組曲に、さらに4人の組曲に、そしてみんなの組曲となった彼女達の変身は本作を締めくくるに相応しい見事なフィナーレです。

 ラスボスを倒しても日常は続く。それはハートキャッチでもやっていました。スイートは人が変わりながら歩んでいくことを「変身」に託してメッセージを送っています。換言すれば常に苦楽を乗り越えながら進み続ける人はみなプリキュアであるとも言えるでしょう。スイートらしいプリキュアの提示です。初代からハートキャッチまで5代のプリキュアがありましたがそのどれもがそれぞれのプリキュアらしさを提示し受け継いできました。本作もまたその歴史に名を残しています。プリキュアが続く限りプリキュアは変わりながら新しい価値を創造していくのだろうと思います。組曲の名を冠した本作は一個の作品として、またシリーズを包括する作品として「プリキュア」を提示しています。


 改めて、この一年を強く真っ直ぐに絆を紡いで歩んだスイートプリキュアに敬意と、初代から変わることなく脈々と受け継いできたプリキュアの意志に称賛を贈りたい。毎年同じようなことを言っているんですが、毎年同じ、いや年を経る毎に深まっていく感動を与えてくれるプリキュアがおかしいんです。なんで作っている人が変わっているのにこうも昇華され続けていくんだろう。人によってプリキュアとの付き合い方や期間は違いますが、初代から8年付き合い続けてきた私にとって本シリーズは親友であり師であり嫁です(一言余計)。常に可愛く、毎回作画が変わって、設定がチグハグで、時にぶっ飛んでいて、どんな宝石よりも美しく輝いて見える高潔な意志を宿した物語。この作品の全てが大好きです。
[ 2013年05月22日 19:37 ] カテゴリ:スイートプリキュア♪ | TB(0) | CM(-)
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