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第16話「ピンポーン!交換ステイでベストフレンドニャ♪」

○今週の出来事
①ベスト?フレンド

 アバンの前にひとつ。プリキュアからの応援メッセージがCMに挟まっています。これは公式サイトでも見られます。宣伝にもなる一石二鳥な応援メッセージ。社会貢献と企業利益が両立するのは資本主義(市場経済)の本来あるべき姿だと思います。
 
 夏服に衣替え。響が登校すると奏が校門で睨むように待っています。例によってセイレーンの偽もの作戦。いさかいの種を蒔いてセイレーンは撤収。姿・声を真似られるのは結構厄介です。人間性が問われるような問答をするのならまだしも、日常会話レベルでの誤解を発生させられると見分けがつきにくい。
 息を切らせながら教室に入ると本物の奏がおはようと挨拶をしてきます。奏の態度に憤る響。先ほどの会話内容よりも奏が自分を置いてどこかに行ってしまったことや嘘をついていることを問題にしています。今回のお話し全体に言えることですが信頼や誠実さが問われています。

 担任の先生が来てふたりを捕まえてクラスに紹介し始めます。ベストフレンド大賞なるものに響と奏が選ばれたようです。投票によって選考するようですから生徒公認の仲。普段どれだけ学校でもイチャついているか伺えます。ところがふたりはケンカし始めます。


 時計台。メフィストはプリキュアの仲が良いままだとご立腹。しかしセイレーンは慌てず騒がずバリトンに爪を削らせた格好のまますでに手は打ってあると答えます。完全に初期のノリです。猫が上司ってのもホント大変だなぁ。
 セイレーンの思惑どおり響と奏はケンカをしています。大賞に選ばれたのでピアノの連弾を披露するらしい。練習をしようと奏は響を引っ張りますが抵抗されています。子どものように駄々をこねる響。半分拗ねています。
 なにやらフェアリートーンと打合せを行ったハミィはふたりに声をかけます。交換ステイしなさいと突然言い出します。顔を背け合っていたふたりは同時に反応。また揉め始めたのでハミィが遮ります。響は奏の家に、奏は響の家に取り替えっこしてお泊まりする、とフェアリートーンを使って説明。可愛い動きです。フェアリートーンも有力商品なのでプッシュ。
 話しは分かったものの突然のことに戸惑うふたり。ケンカをしていては相手の良いところが見えなくなる。お互いの家に住んでみれば相手の良いところが見えてきて一層仲良しになれると説明するハミィ。色々飛躍している部分がありますが、まあ概ね言いたいことは分かる。
 それでも納得がいかない奏。ハミィはしれっとした態度で言うことを聞かないと肉球を触らせないと脅します。「そんな!」と本気で困った顔をする奏。落ち込んだときどうしたらいいの!?と懇願するように言います。どんだけ肉球に依存してるんだこの子。「じゃやるニャ」と人の弱みにつけ込むハミィ。響は弱みが無いもののケーキ食べ放題につられてあっさり陥落。この妖精黒いなぁ。ハミィの意外な狡猾さにふたりは手玉に取られてしまいます。


②交換ステイ
 奏の家を訪れる響。両親と奏太が迎えます。
 奏太はいつもみたいに叱られないから嬉しいと響に愛嬌よく話します。響も慣れた様子で叱らないとは言ってないと返しますが、奏太の方が一枚上手。手作りケーキをご馳走すると懐柔。この辺の要領の良さは弟な感じがする。早速喜んで食べる響。トラップ発動。からしクリーム。イタズラ大成功。

 大音量。奏は響の父に挨拶をしますが全く聞えていません。ハミィがしっぽでオーディオの電源を切ります。ようやく奏の声が聞えます。いくら家が大きいからとはいえ防音対策は万全なんでしょうか。トリオ達が窓の外で耳を塞いでたけど音漏れてるんじゃないのか。
 ケーキ持参で挨拶。団さんは例によってドイツ語で返答。「楽にして良いよ」とハミィが耳打ちします。ハミィの意外な語学力。団さんはまた音楽を大音量で聴き始めます。全然楽にできないんですけどー、と字幕で主張する奏。ハミィは気にならないのか飄々としています。
 お互いの家をセイレーン達がストーキング。

 お客さんで賑わう店の様子を物珍しそうに見る響。奏太は響に奏のスケジュール表を渡します。びっしり予定が書き込まれているようです。奏らしいと納得する響。

 昼食。団さんが怪しい煮込み鍋を作ります。「なんか大胆…」控えめなコメントですがドン引きです。ご飯係は交代制なので夕食は奏にお願いする団さん。お客さん扱いしないのは好感が持てます。以前(9話)昼食を響が作っていたことがありますが、慣れない様子だったのでてっきり家事は団さんが全部やっていたのかと思いましたが日常的にやっていたようです。矛盾するほどではないですが、プリキュアの設定は結構いい加減です。団さんは音楽バカな傾向があるのでその他の事についてはいい加減なのかもしれません。響も料理を作る方にはそれほどこだわりがなさそうです。自分で料理を作るからといって上達するかどうかは本人の資質とやる気次第。

 奏太に勉強を教え…られない響。お茶を濁します。スケジュール表を見るとお店の手伝いが書いてあります。家がケーキ屋さんだからといって良いことばかりではありません。
 美空さんが店の手伝いを奏太にお願いします。響も一緒にお手伝い。店のテラスに違和感おおありな人影が見えます。

 そろそろ店が忙しい頃だと心配する奏。こちらは逆に手持ち無沙汰な様子。団さんは趣味や仕事に没頭するタイプだろうし、兄弟もいないので話し相手もいない。掃除くらいしかやることなさそうですが、奏なら手際よく終わらせてしまいそうです。

 平然と店で食事をするトリオをセイレーンが見とがめます。客が多いたって、存在感ありすぎだろお前ら。どんな節穴でも気づくだろ。響の家を見張れと命じます。不承不承撤収するトリオ。一人くらい音符探しに行ったらいいんじゃない?

 夕食は炊き込みご飯。しかし団さんはそそくさと食事を済ませてしまいます。仕事が忙しくてベストフレンド授賞式にも来られないようです。自室に引っ込んでしまいます。ハミィもすでに食べ終えて昼寝タイム。結局一人で夕食をとることに。テーブルに載った空のお椀が寂しい。

 打って変わって南野家では家族揃っての食事。普段父とふたりだけの響には珍しい体験です。母も忙しく海外を回っているためいつ帰ってくるか分かりません。それは寂しいねぇ、と相づちを打つ奏介さん。美空さんといちゃついているイメージが強いですが、私服でこうして座っているとなかなかナイスミドルなおっさんです。美空さんが母親ならいつも娘のこと考えているとフォローを入れます。家の親はふたりとも自由だから、とあまり実感がない様子の響。確かに自由人ぽいね。
 奏太は交換ステイして姉ちゃんの良いところ見つかった?と訊きます。響は素直に頷いて感心した点をあげていきます。何故かお互いの皿のおかずを食べ合う響と奏太。精神年齢は近そう。奏介さんは響ちゃんがいると家が明るくなると褒めます。

 響の部屋で奏はひたすらハミィの肉球を触っています。だいぶ長い時間触っているのかさしものハミィもうんざりしています。奏は響にいつも一人なのかと訊きます。自分がいると答えるハミィ。気を取り直した奏はハミィの肉球の頬ずりしながら響を癒してね、とお願いします。いやーそれ効くの君だけだと思うよ。
 フェアリートーン達が並んでなにやら抗議の声をあげています。どうやら自分達もいると主張しているようです。ファリーだけ違うリアクションをしています。よく分かりませんが、自分が忘れられているのか悔しかったのでしょうか。リズムのベルティエにくっつくし。
 ハミィの発案で響母のまりあさんとネットで交信。まりあさんはいつも話しの終わりにケンカになってしまうと言います。奏は、響はそういうの引きずらないとフォローを入れます。しかしそこは母親、響の明るい性格を承知しつつも自分が家を空けていることに後ろめたさと響への心配を示します。その言葉を聞いた奏の反応が面白い。それまでは響の事は分かってます的な友人然とした様子から一転して「普段はそういうこと口に出しませんけど」と受け答えています。表情も声も微妙にニュアンスが変わっている。こういう細かい演出のさじ加減がプリキュアの良いところです。
 授賞式の話しは初耳だったらしい。昨日響と話したのに知らなかったようです。毎日言葉を交わすことと、一緒に住むこととには隔たりがある。もっといえば一緒に住んでいるからといって必ずしも心を交わすわけではないのだけど。
 ストーキング継続中。また何か悪巧みを思いついたらしいセイレーン。


③一夜明けて
 奏太、アコと一緒に登校する響。アコは交換ステイで何がわかるわけ?と訊きます。響は素直に嬉しそうに見習う点がいっぱいあったと言います。でも仲直りは簡単にはいかない。大人には色々あると言います。「知ってる。でもあんたたち別に大人じゃないし」。いつもどおりアコに言い負かされてしまいます。大人じゃないからこそ出来ることもある。

 校門前でばったり遭遇する響と奏。一瞬の、そして長い沈黙。部屋散らかさなかった?と先制する奏。この子も素直でない。散らかしてないと答えるとめちゃくちゃ散らかっていたので片付けたと返す奏。口では勝てません。まあ、当然片付けるときにタンスや引き出しを全部開けて好みやサイズやらをチェック済。「響観察ノート」にバッチリメモしているはずです。
 絶妙なタイミングでハミィが交換ステイの感想を訪ねます。「楽しかった♪」答えを聞くまでもない。お互い子どもじみた意地の張り合いはこれで胡散霧消。ハミィの肉球ずっと触ってたんでしょ?と訊く響。そんなことはないとハミィに同意を求める奏。「触りまくりニャ」そうりゃそうです。もっとも、タンスを開けまくったことは完璧に口止め済みです。

 仲良しに戻ったふたりを見てもセイレーンは余裕。とっておきの手があると言います。お手並み拝見、と不遜な態度のバスドラ。しかしセイレーンは悪のベストフレンドだから仲良くやろうと共闘路線。こいつらも相変わらずだなぁ。


④合奏
 授賞式には父兄達が列席。奏介さんが大声でかけ声をかけたので会場が爆笑。恥ずかしそうな奏。その隣では響は寂しそうな反応。しかし大きく深呼吸をすると演奏に気持ちを切替えます。
 袖に引っ込むと母が待っています。予想外の出来事に目を丸くする響。しかしこれもセイレーンの罠。奏の言葉が気になって、と言う母に響は目を輝かせて「なんて?」と訊きます。この素直さは逆に危うい。この子は少し真に受けすぎるきらいがある。
 間違った情報を吹き込むセイレーン。わざとピアノを間違って恥をかかせろとまで言います。母を信じるか奏を信じるかの両天秤に響は困惑します。有名人だけあって生徒達に見つかり偽まりあに人だかりが出来てしまいます。

 ピアノの連弾発表。すでに奏は椅子に座っています。続く響も足を進めますが、客席の拍手は耳に入りません。偽母の言葉が脳裏を覆い尽くさんとこだまします。奏はあんな嘘はつかないと言葉を払おうとしますが、しかしそれは母を嘘つきにしてしまうことでもある。響の視界には奏も映らない。進むことも退くことも出来なくなった響は立ち止まってしまいます。響の異変に奏も会場の生徒達も気づきます。奏の表情が凄い。こんな響の姿を見たことがないというくらい表情に出ている。
 「響ー! リラックスよー!
 思考停止を打ち破る声が発せられます。会場の後ろからまりあが大声で響に声をかけます。どうやら緊張しているのだと思ったらしい。
 ステージ袖にももう一人の母。響はここにきて奏も母も偽物だったことに気づきます。犯人はセイレーン。
 ピアノに置いてあるメトロノームに音符を発見。ハミィとセイレーン、バスドラ達が奪い合おうとしますがまりあのファンが押しかけていて混雑。猫の姿に戻ったセイレーンが召喚します。場所を考えたのかわざわざ外に出て実体化します。外から音波を発して会場を一網打尽。まりあさんは団さんと同じで平気そうな気がしないでもない。変身。

 一気に勝負を決めようと必殺技を戦闘開始早々使うプリキュア。時間的にはちょうどいいのですが、展開やBGM的に駄目。弾かれてしまいます。苦戦するプリキュアにセイレーンは高笑い。しかしミューズは屋上にスタンバイ。いつでも出られます。
 ミューズを頼るリズムにメロディはふたりで乗り越えようと言います。
 「交換ステイしてお互いの良いところ見つけたでしょ
 ドドリーが何かしゃべろうとしていますがミューズが口を押さえます。空気読みました。
 「うん、見つけた。寂しくても辛い顔見せないで元気に笑ってるとこ
 「私も見つけた。いつも周りのこと考えて一生懸命なとこ。その良いところ、交換して強くなろう!
 「うん、そうすればどんなピンチも切り抜けられるね!
 「交換すればもっと強くなれる!

 驚異のバンク更新スピード。スイート本気で玩具売る気満々です。
 「ふたつのトーンをひとつの力に!
 「奏でましょう奇跡のメロディ! ミラクルベルティエ・クロスロッド!
 「刻みましょう大いなるリズム! ファンタスティックベルティエ・クロスロッド!
 「駆け巡れトーンのリング! プリキュアミュージックロンド! スーパーカルテット!
 「せーの! フィナーレ!

 お互いのベルティエを交換して組合わせることで対のベルティエが完成。メロディの持ち方だとフルーレっぽい。リズムだと軍配とか布団叩き。これで殴ったら痛そう。メロディに付く虫はぶちのめすという意思の表れでしょうか。そんなおふざけは脇に置くとして、躍動感とふたりの笑顔が最大限に発揮されていて楽しい。パッショナートハーモニーの意匠も入っているのかふたりで手を繋ぐのも良い。手繋ぎ技は「ふたりはプリキュア」の特権的なモーションです。ふたりだから出来て、ふたりの絆が力になって一緒に技を出す。ハートキャッチのフォルテッシモもふたりで使う技ですが、この「手繋ぎ技」はプリキュアのコンビ技として象徴であり最高のものだと思います。カルテット(四重奏)の名のとおり4つの環が出現。おそらく各ベルティエ(フェアリートーンと同じ色)の数に合わせているのでしょう。実際には手を繋いでもう一つの環を作り出しているのでクインテット(五重奏)になっています。ロンドとパッショナートハーモニーの合成ですね。ふたりで演奏→楽器を使って演奏→ふたりで楽器を使って演奏という風に上位互換的に技が繋がっています。フィナーレの可愛さは異常。ふたりで2倍どころか3倍にも4倍にもなっている。リズムのウィンクもずるい。さすがプリキュアあざとい。


 演奏が終わり母に飛びつく響。どこからでも駆けつけるわ…と言いたいところだけど奏ちゃんが教えてくれたと話します。響の後ろで奏は暖かく見守っています。
 「奏…ありがとう
 自分が想うように、相手もまた想っていてくれる。そう信じられるなら人はもっと強くなれる。


⑤次回予告
 まりあさんもネガトーンの音波効かなさそう。


○トピック
 これで残すはパジャマパーティで一緒にお泊まり。当然一緒にお風呂に入る。スイートならやる!っていうか奏ならやる!
 おそらくベルティエの玩具には組合せられると書いてあったと思うのですが、プリキュアが物語的にそれを見せるとこうなりますよ、という見本みたいな回。シリーズ的にパワーアップは強引な回もありますが、意味を持たせるときはバカ丁寧にやるのが特徴。


 響はプリキュアの主人公には珍しく自分の芯がそれほど色濃く出ていません。普段の様子を見ていても奏が話しを引っ張ることが多いし、戦闘でも前に出て主張することが少ない。そのためちょっと掴み所がない。しかし彼女は自分が経験するものを素直に吸収しています。彼女の素直さは未熟さや危うさが伴っていますが、その素直さ故に彼女は視野を広げながら心を強く持ちつつあります。改めて彼女の成長はこの物語の成長でもあったのだと気づかされました。
 6話のベルティエ取得の時に、自分の経験を糧として心を豊かにしていることに感心しましたが今回もそれがよく出ています。勉強も料理も出来るしっかり者のお姉さんの奏に比べれば響は幼くも見えますが、それはメイン視聴者である女児の写し身でもあるだろうし、"素直さ"は子どもが示しやすい特性でもあります。特別な能力や手段は必要ない。それを見て感じるあなたが自分の心に素直に向き合えれば、あなたは強くなれるし大切な友人を作れるのだ、とプリキュアは言っています。


 セイレーンの偽物作戦は心の隙をつくことが多い。特に4話、8話は顕著です。結果としてはケンカを誘発していますがその根底には自分を認めて貰いたい、相手をどれだけ信じられるか、自己と他者との関係性とそこに深く結びついた孤独と連帯、不安と自信、猜疑心と信頼があります。誤解や行き違いを起こしてしまう人の心をどう結びつけ、またそこから成長をどう見出していくかというところにスイートの洞察があります。

 久しぶりにケンカをしていますがこれは深刻な問題に発展していません。珍しくハミィが気を利かせて交換ステイを提案していますが冒頭でセイレーンが蒔いたケンカの種を直接的に解消するものではありません。それとは関係がないんですね。このケンカはほとんど自然解消しています。すでにふたりの信頼関係は多少の行き違いや誤解があっても損なわれないのです。奏の家で響が奏を褒めているのも、まりあさんに奏がケンカを引きずらないと話しているのもお互いがお互いを信頼して好いているからです。ケンカしているだけで嫌悪しているわけではない。意地を張るのはお互いに承知済みと言ったところでしょう。
 一度仲良くなればずっと仲良いままというのがこれまでのプリキュアでしたが、本作では親友でもちょっとしたケンカくらいはするし、すぐに仲直り出来る様子が描かれています。これはプリキュアとしては画期的です(プリキュア5でも中盤で仲違いが起きますが、あれは5人のスタートラインという位置づけ)。親友でもケンカするのは当たり前のことなんですが、それでも親友でいられるのは信頼関係があるからです。相手が何を言うか、自分がどこまで許されるのか知っていて、相手を受け入れ、自分が相手のために思い煩い時に相手に仮託する。交換ステイを通して相手の立場や環境、優れた点を見出しているように、ふたりはケンカしていても相手をより好きになってすらいるんですね。6話でメロディが言ったように仲良くケンカしている。仲が良いことが親友なのではなく、相手を信頼し続けられる関係が親友なのだと。「友情」は初代からのテーマですがより現実的に、より能動的で前向きなメッセージを打ちだしています。



 今回響の行動で素晴らしいのは、偽母の言葉を受けても奏を疑わなかったことです。奏があんな嘘をつくはずがないと確信している。でも、それだと母の言葉が嘘になってしまうし母を信じられなくなってしまう。奏と母の板挟みになって動けなくなってしまったのはそれだけ響が素直で誠実だからです。
 その響がミューズに頼らずにあくまでふたりにこだわったのは重要です。物語としても正しい。言うまでもなく奏に全幅の信頼を寄せているからであり、セイレーンに惑わされたことを払拭する意味でも必要でした。どんなことがあっても奏を信じるし、奏と共に乗り越えたいという彼女の信頼と願いが込められています。プリキュアの戦闘の醍醐味は心の強さ、正しさがそのまま勝利へと繋がる点です。人の心が正しく、強くある限り困難に屈しはしない。
 響の信頼が、奏の信頼によって報われるラストシーンは見事。奏も響同様に相手のことを考え響の孤独をどうにか埋められないかと心を砕いています。まりあさんに助言したのも、メロディに応えたのも自分に出来ることをやった結果です。奏の描写も密度の高いものでした。そしてここで一番大事なのはこれらの行動の経過がお互いには見えていないことです。響は奏に母親を呼んで貰ったから戦闘で一緒に頑張りたいと言ったのではありません。奏も何かを期待したり、何かのお返しにしているわけではありません。お互いが勝手にやったんです。これをキッチリ描いているのは素晴らしい。物語の序盤、ふたりがまだ信頼を築けていなかった頃のエピソードでしばしば見られた「善意はあるけど上手く伝えられずに溝を深めてしまう」ことから完全に脱却しています。善意そのものは当人の勝手です。それは変わらない。問題はそれをどう伝え、相手の反応をどう受け取り、どう向き合うか。偽親友大作戦のときのように奏は一方的に響に嫌われても自分の想いを伝えたし、響は奏を受け入れ陰に陽に支えてきました。そうしたこれまでの過程がきっちり積もって今回の合奏へと繋がっています。
 終わってみればお互いを信頼し、お互いのためになることをしていたとふたりは気づきます。今までもそうだったようにこれからも彼女達はお互いを信じ合うでしょう。でも、たぶん些細なケンカはなくならないでしょう。しかし決して相手の気持ちに背いたり、相手を想う自分の心に蓋をすることはないはずです。人を信じること、人に信じられることは、人に力と充実を与えることでもあります。それが成長を促し新しい可能性や広がりを生み出していく。

 こうした人間関係の双方向性、相互作用、いや、極論すれば相手からどのように思われようと己の心に正直に誠実に歩みたいと思うことによって人の可能性を見出すこの意気込みとメッセージはプリキュアが代々受け継ぎながら昇華してきている部分です。これ凄く好きです。別にこのとおりに私が生きられるわけじゃないんですが、それでも心の奥底から時々わき出して軌道修正してくれるくらいには染みついていると思っています。


 お互いの長所を素直に認め、お互いの辛苦を素直に受け入れ、共に成長しようと進むスイートプリキュアの物語は初代の原点回帰であると同時にこれまでのプリキュアの意匠を継ぎながらも新しい物語を紡ごうとしていると感じます。響は素直なために傷つきやすく脆いところがありますが、それ故に強く美しい心を持ちうる。その心がこの物語を奏でていくでしょう。プリキュアのこの真っ直ぐさは何物にも代え難い。
 6代目プリキュアは何をやらかしてくれるのか。この物語もまたプリキュアシリーズの組曲の一つたらんことを願います。
[ 2013年05月22日 19:20 ] カテゴリ:スイートプリキュア♪ | TB(0) | CM(-)
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