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メアリー&マックス

監督・脚本:アダム・エリオット

 クレイアニメーション(粘土で作った人形を動かして映像化したもの)。雰囲気的にはNHKとかでやっている人形劇のソレに近い。が、内容は大人向け。
 地味で額に痣があっていじめられっ子なメアリーとアスペルガー症候群のマックスの文通による交流を描く物語。下ネタやブラックなネタが随所に見られ、キャラクターの造詣もちょっと不気味だが暖かみを感じる人間ドラマに仕上がっている。
 マックスの描写は非常にリアルで、自閉症(アスペルガーは高機能自閉症にあたる)の人の自伝や関連書籍の記述とかなり符合する。この物語は監督であるエリオットの文通体験を元にしているらしい。
 やがて成長し大学では学業を認められ、結婚、と順風満帆な道を歩むメアリーは次第に自惚れるようになり自分はどんな心の病も治せると思うようになる。マックスとの交流を題材に本を書き、自分はマックスの病気を治せると親切心から彼へ献本する。が、これがマックスの怒りを買う。彼は自身の症状を病気だとは思っていない。欠点もまた自分の個性であり受け入れて背負っていくものであると彼は知っているからだ。メアリーのこの行為は彼にとって裏切り行為でありここでふたりの友情は一旦切れてしまう。
 その結果メアリーもまた傷つき酒に溺れるようになってしまう。夫のダミアンはメアリーから離れ男のもとに逃げる(ちなみにエリオットも同性愛者らしい)。独り残されたメアリーは自殺まで図る。しかしマックスは彼女を許す。それは人が完璧ではないから。自分も彼女もみんなも、と彼は云う。

 アニメという言葉から想像されるコミカルさや明るさはこの物語には無い。実写でやっても良いんじゃないかと思うほど現実的な心理描写と関係を描いている。アスペルガーを題材としている点では自閉症を扱った「レインマン」にも通じている。ただパニック症状などをリアルにやると多分普通の人は引く。彼らの言動は奇異に見えるからだ。そこはクレイアニメーションによって印象が和らぎ受け入れやすくなっている。

 この物語のキモは人と人との交流、絆である。メアリーがコンプレックスを抱え自惚れ身を崩したように、マックスもまた日常で苦労している。ここに健常者や病人(障害者)という区別は無い。彼らは悩み、傷つきながらも自分と世の中に折り合いを付けながら暮している。完璧ではない者達がお互いに支え学びながら各々の人生を過ごしている。クライマックスは賛否が分かれるかもしれないが私は評価している。友情や絆は離れていても成立するし、またお互いの道が直接交わることがなくともお互いを支え合えるからだ。相手を尊重し相手に学んで自分の人生を彩れるならこれを幸福と言わずなんと言うのか。メアリーとマックスが歩んだ道、そこで交わされた言葉と心の交流に人間の面白さと美しさがある。
[ 2013年05月22日 18:35 ] カテゴリ:映画の感想 | TB(0) | CM(-)
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