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地球と一緒に頭も冷やせ!(ビョルン・ロンボルグ)

○地球と一緒に頭も冷やせ! ビョルン・ロンボルグ ソフトバンククリエイティブ株式会社
記2009.3.7

 頭が悪そうなタイトルだけど中身はしっかりしている。地球温暖化とその対策である二酸化炭素排出削減について反論を展開している。著者は「環境危機をあおってはいけない」で一躍有名になったらしい。

 いわゆる反論本であるが、反論の骨子はごく当たり前のことをごく当たり前に書いているので非常にわかりやすい。地球温暖化を否定しているわけではないし、地球温暖化の原因が二酸化炭素であることを否定しているわけでもない(温度が上がった後に二酸化炭素が増えているようにも思われるので専門家の間でも意見が分かれている)。地球が温暖化するとして、じゃあそれって悪いことばかりなの? 二酸化炭素を減らす以外に対策は無いの? 他に有効な対策があるならそっちを優先すべきではないの? というごく当たり前な主張を根拠を上げて展開している。

 盲点だったけど、温暖化すると実は統計的には死者が減るそうです。というのも寒いと心疾患で亡くなる人が多く、熱波などの暑さで死ぬ人よりも圧倒的に多いので温暖化した方が相対的に助かる命が増えるそうです。また、温暖化すれば降雨量が増えるので寒冷地の氷の厚さは増えるし、水不足の地域は相対的に減るそうです。
 歴史的に見ても50年ほど前まで地球は寒冷化すると騒がれていましたし、寒くなれば農作物が育たず困ることもあるので、結局寒くなったらなったで困るし、暑くなったらなったで困るし、逆に良いこともあるので温暖化自体はさほど問題ではないような気がします。
 本書を読んでいて面白かったことは、意外と経済的な事情でなんとでもなることです。降雨量が増えて洪水が増えるなら洪水対策をすればいいし、暑くなるならその対策をすればいい、マラリアだってかつてはヨーロッパ・ロシア・アメリカで猛威を振るっていたけど生活が豊かになって栄養が摂れ医療も発達したから根絶できた経緯があります。水だって技術や貿易(生産するのに水が必要なものを輸入する)でなんとか出来る。経済的な対策で解決が可能でまたその方が圧倒的に二酸化炭素削減よりも効率が良いと著者は述べています。

 おそらく、地球温暖化は危険だから二酸化炭素排出を減らして環境に配慮すべきだ!と言っているのは金持ちだけなのだろうと思います。十分な医療、食事、住居があって生活に困っていない人達。先進国で暮らしている人達がそんなことを言っているのだろうと思います。その人達はお金で大抵のものは解決できるし、国も自治体も普段から各種対策を行っているし、行ってきた経緯があるので現状の暮らしが豊かなのです。ところが発展途上国や貧困国はそんなものはありません。マラリア対策として蚊帳を設置するだけでも効果がありますが、そもそも蚊帳すら十分に無い国だってあります。その人達に十分なお金があれば栄養状態も改善され病気にかかりにくくなって、病気になっても治せて、水不足もインフラを整えて解決できるし、色んな困難にも対応できるようになります。二酸化炭素がすべての元凶でそれを改善できればすべてがたちまちに改善できるわけではありません。100年後温暖化で困る未来の人達を減らすなどと言う前に、今困っている人達を助けられるようにすることの方が重要じゃないの? その人達を助けられれば未来の人達も助けられるんじゃないの? 二酸化炭素排出を止めれば経済が鈍ってしまって途上国や貧困国の発展が阻害されてしまう、彼らは経済的に発展すれば今世紀中に現在の先進国と同等以上の生活ができるようになるんですよ、その方向でもいいんじゃないの? と述べる著者に共感します。

 個人的にはこのようなごく当たり前のことに疑問を持つようなそぶりも見せることなく世界的に二酸化炭素削減の方向に進んでいることの方に疑問と関心を持ちます。確かに人はセンセーショナルなことやインパクトが強い方に気を取られるものですが、それにしても何か裏で金や権力が働いているのか?と思うほどに二酸化炭素削減、エコ、環境云々ばかりが言われます。流行だと言ってしまえばそうですが、まともな思考力があればこのような胡散臭い言説がまかり通ることなどない気がするのですが、まあ、人間は合理的な生き物じゃないから、むしろこうなって当然なのかなぁ、と思ったりもします。流行に流されるし、意地の張り合いでやったりする。
 現在は世界的な経済危機で各種生産は減産しています。日本では電力需要が2009年度は下がる見込みです。二酸化炭素排出削減をしよう!と言っている人達はきっと喜んでいるでしょう。なにしろ経済が衰退すれば共連れで二酸化炭素排出量も減ります。しかしそれは雇用不安や経済不安が起こって自分達の生活が危ぶまれることになるのですが。自分の首が締まっても環境を優先できるなら感心ですがさて、そんな殊勝な人が何人いるか。たぶん、二酸化炭素、環境云々の話はどこかに消えるはずです。それよりも景気を良くして欲しい、仕事が欲しいと言うでしょう。マスメディアもそちらを優先するでしょう。実際最近環境云々の話は聞きません。折角環境に良い経済状態になってきたのに。人間にとってはそれは不便で不安な状態なんです。

 曖昧なデータや根拠を提示して環境危機をあおって、自らのイデオロギーを訴える人々がいるのかもしれませんが、理想論や不安をあおっても現実は何も変わりはしません。絵に描いた餅の政策では良くならない。効率の悪いことをやり続けても結果は当然芳しくない。
 幸いなのは環境云々、二酸化炭素云々の話を真に受ける人が少ないことです。私の周囲の人達を見ていてもそんな話に疑問を持つかそもそも関心が無い人達ばかりです。実際そういうもんでしょう。不安だ!困った!どうしよう!?と騒ぐのではなく、困りそうなこと、問題になりそうなこと、困っていること、問題になっていることをキチンと見て対策を取れば大抵のことは解決できます。解決できないときは腹をくくるしかありません。そもそも地球規模の問題を人間が心配したところでどうにもならないかもしれません。地球自体の力によって良くも悪くもバランスを取るかもしれない。だったら、人間は人間のために、短期的に見ても長期的に見ても人間にとって良いことをすればいいんです。それはたぶん地球にとっても他の動植物にとっても良いことになると思います。
[ 2013年05月22日 14:00 ] カテゴリ:本の感想 | TB(0) | CM(-)
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