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ハートキャッチプリキュア!総括感想

○ハートキャッチプリキュア!総括感想
 これまでの感想でも書いていますがプリキュアの物語は人間賛歌の物語です。無力さや弱さを抱えながらも必死に生きる人間の姿が描かれています。人の肯定、生きることの肯定、人生を朗らかに精一杯歩む人々の物語です。初代からそれを継承させながら物語が紡がれています。
 ハートキャッチ総括とはいうものの過去シリーズも踏まえた内容になります。シリーズが長いので未見な方には分かりにくい面もあると思いますが、ハートキャッチがプリキュアの物語をどう成長・発展させたのかを記します。


①ハートキャッチの対決軸
 ハートキャッチのメインテーマは「心」。敵は人間の苦悩が具現化したものでした。ラスボスのデューンに至っても同様のことが言えます。彼は憎悪を示していました。つまり悪がいないんですね。敵もまた人の中にあるものでした。
 これは前作フレッシュプリキュアから変わった点でした。フレッシュは「幸せ」をテーマとした作品で、自らの過ちや罪が不幸となって返ってくる物語でした。それ以前のシリーズの敵は抽象性が高く絶望や利己主義(排他主義)との思想対決となっていました。近年のプリキュアの敵は人間の内にあるものとして明確に表現されています。これによってプリキュアの物語は人間の内面に焦点を当てながら人が何と向き合い克服していくべきなのかを提示しています。

 本作の敵は人が持つ悩みや苦しみ、コンプレックス。それらは人間関係の中で生み出されています。人と比べて劣っている、人に認められたい、分かってもらいたい、不満を解消したい……わだかまりや葛藤を持つ人々をプリキュアが浄化していきます。ただしプリキュアが問題を解決するわけではなく、あくまで当事者が自分の力で解消していくことが徹底されています。プリキュアがやれることはキッカケを作ったり、励ましたりすることだけでした。場合によってはプリキュアが全く役に立たないこともあります。これはプリキュアシリーズの伝統ともいうべきもので、プリキュアの能力は戦闘にのみ特化したもので日常のなにがしかを解決できるものではありません。主人公達はあくまで中学(高校)生の女の子。特に本作ではつぼみ以外のプリキュアは心の花を萎れさせてしまったことがある点でもプリキュアは特別強い人達ではないと明示されています。


②つぼみの成長
 つぼみは史上最弱のプリキュアと呼ばれつつも心を弱らせなかったプリキュアでした。彼女は引っ込み事案な自分を変えたいと思っていましたが目標はなかった。ただ自分が嫌いなだけでそれを変えたいとだけ思っていたんですね。眼鏡をかけていて服装も地味目。えりかと出会って眼鏡を外してファッション部に入ったことで大きく変わっていく。おそらく初期のこの流れを見ただけなら、外見が変わればいいのか、眼鏡を外せばそれでいいのか、内気な人が社交的になればそれで変わったと言えるのか、という疑問が沸くでしょう。その疑問に本作は真っ正面から応えました。
 この物語が人間の成長を美しく描いたものだと強く実感したのはつぼみの成長の在り方です。何故ゲストキャラを敵として登場させプリキュアがその人々の悩みを直接解決できないのにもかかわらず関わってきたのかもここで繋がります。つぼみはみんなも自分と同じように自分の弱さに苦しみながらも一生懸命に生きていることに気づき、人との出会いを通じて視野を広げました。服装や行動を変えながらも一番に彼女が願っていたものは人の気持ちに応えることでした。ややもすると弱気になりそうになる自分の心を奮い立たせながら人の力になり続けた。他者との出会いが彼女を変え、彼女が本来持っていた優しさや人を素直に認めて励ます心を育てていったのです。
 外見や社交性だけを変えることに留まることなく人間的な成長、心の豊かさと強さにまで踏み込んだ見事な成長と昇華です。この作品の真剣さを感じます。この真っ直ぐさこそがプリキュアなのだと思う。最終回に至ってもつぼみは眼鏡をかけています。それは彼女の変わらない点を示すものでもあります。彼女の変わらぬ優しさ、心の強さが彼女を変えています。
 彼女の心がプリキュアと砂漠の使徒との戦いを終わらせる原動力となります。プリキュアとして最弱で、ゆりのように困難と克服を経験しているわけでもない、にもかかわらずつぼみが主人公である理由、それは愛情に満ちた心が他者を救いうることを証明するためです。


③プリキュアが戦い、救おうとしたもの
 「心」のテーマと平行してあるのが「変わる」「チェンジ」。これはつぼみ自身が変わろうとすると同時にプリキュア自体も変わろうとする示唆を含んでいると思われます。敵が襲ってくるから戦う。プリキュアもまたこの連鎖に荷担していた共犯者でもあります。その連鎖を断ち切るためには何が必要だったのか。ハートキャッチは「愛」だと言いました。
 ではその愛とは何か。抽象的に言ってしまえば「ゆるす」ということなのだと思います。それは自分に対しても、相手に対してもです。自分の弱さ、間違いを認める。相手の弱さ、間違いを認める。その上で正しい自分であることを望む勇気を持つこと。不安や恐怖、憎悪に負けず勇気を持って踏み出していく。人の弱さ、人の愚かさをゆるし、人をそのまま認めることが愛なのだと思います。

 デザトリアンとの戦い、大幹部との戦い、デューンとの戦い、それらに対してプリキュアがやったことはただ一つです。正しい生き方をする。それだけ。愛情深く、朗らかに、人を信じて、自らの運命に前向きに立ち向かっていく。そうすることが日々を暮らす上で大切なことであり幸せを作る方法なのです。それが本当に正しい方法なのか、実現できうるものなのか、それを証明するためにこの物語は人の心の中に潜み、ややもすれば染まってしまいかねない感情をプリキュア自身にも味合わせたのです。正しい選択は時に険しく勇気が必要になる。人の心もその時々で変わる。試練の果てに彼女達は憎悪を向けてくる相手のためにも涙をこぼしました。プリキュアが戦っていたのは人の「心」そのものだったんです。自分の心に何を持つのか、相手の心をどう見るのか。正しく生きる、愛情深い心を持つということは自分を幸せにするだけでなく、相手の心をも照らして勇気や愛情の芽を育てることでもあるのだと証明したんですね。
 幸せをテーマとしたフレッシュの主人公はラブという名の女の子でした。一人の不幸な少女を救い、敵首領に対しても「あなたの幸せは何?」と愛情を向けた人でした。愛情、心の清らかさが幸せを生み出していく。ちゃんと前作フレッシュからも繋がっています。


 みんな不安と孤独、苦しみに晒されている。時に暴走し過ちを犯してしまう。それでも人々を愛し、励ますことができる人としてハートキャッチはつぼみを主人公に選んだ。しかし彼女は完全でも無欠でもなく最弱のプリキュアでした。他のプリキュアだって似たり寄ったりです。この物語は個人の限界、絶対的なヒーローがいないことを承知の上でみんながそれぞれにできること、変われることを見せたんですね。つぼみが変われたように、みんなも変わっていける。みんながみんなと関わり合いながら助けになり、力になり、伝わっていくことで人が救われうることをこの物語は見せたのです。
 人には克服していける力がある!
 自分を幸せにする力がある!
 他者をも幸せに導く力がある!
 人を信じる意志がこの作品に込められています。



④総括の総括
 前向きに幸せを感じようとする人は幸せになれる。人に優しくできる人は人から優しくされるし、人を愛する人は人に愛される。人に誠意を持って優しくするだけで要らぬ争いを無くすことだってできる。ところがそれが最も難しいことだと、そんなのは理想論だと感じてしまうところに人の不合理さがあるのだと思います。しかし、それに屈してはならない。弱いことが恥じなのではなく、弱いことから逃げてしまうことが恥じなのです。理想を求めるその心に幸せの芽がある。それがどんなに険しく困難であろうとその芽を咲かせる努力をし続けるべきなのです。それが自分の幸せを作ることであり、そうすることでもっと多くの花を咲かせることができる。
 ハートキャッチプリキュアはそれを見せてくれました。


 プリキュアは女の子が悪と戦うアニメです。でもただ戦えばそれでいいのか。彼女達は何のために戦うのか。彼女達はどうして強大な力を持つ敵に勝てるのか。それらが全部ただ一つのことに集約されます。日常を楽しく過ごす。それだけです。中学生の女の子が日々を楽しく、そして将来へも羽ばたいていけるように一生懸命頑張る中に大切なことがあるんですね。男でも女でも大人でも子どもでも、生きるということに違いはないのです。それぞれに重みと苦悩がある。プリキュアの物語はずっとそれと戦い続けてきました。それを打ち負かすのではなく、その重みに耐えそれでも踏み出していける人々を描いてきました。この物語が宿敵をも救うまでになったのは素敵なことだと思います。私達が暮らしていくために必要なのは悪を滅ぼす力ではなく、幸せを作る力だからです。


 人を信じ、人を愛する物語。それがプリキュアの物語。
 オールスターズDX2を見たときにつぼみ達にプリキュアの意志が伝わったと思いました。そしてつぼみ達がプリキュアを育ててくれるとも。それを今万感の想いで振り返ることができます。プリキュアの名が継がれると同時にその意志も継がれ、立ち止まることなく歩んでいく。戦いが終わっても自分の人生を歩み続けるつぼみ達と同様、この物語は次代へと継がれていきます。
 ハートキャッチはたった1年の物語でしたが、プリキュアの歴史を知る私には長い1年でした。ハートキャッチの中にプリキュアの歴史、想い、意志のすべてを感じます。この1年でプリキュアはさらに成長し大輪の花を咲かせました。この素晴らしい伝統が潰えることなく続いて欲しいと願うばかりですが、それはまた別の物語が答えてくれるでしょう。

 プリキュアの意志を受け継ぎ、成長させ、次代へと継いだこと。そして何よりもシリーズ初の眼鏡っ娘ヒロインを登場させたことに感謝の念が絶えません。眼鏡っ娘大好きです。可愛い女の子と熱く素敵な物語。それがプリキュアの醍醐味です。
[ 2013年05月22日 13:30 ] カテゴリ:ハートキャッチプリキュア! | TB(0) | CM(-)
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