第17話「わたせ最高のバトン!ましろ本気のリレー」
○今週のヒーロー
①一緒にリレーをやろう
今週から平常運転。体育祭にあたり、リレーの候補を募集。そこで眼鏡君がソラに合図すると彼女を推薦。こいつ結構絡んで来るよな。フィジカルチートのソラなら異論なし。なんなら彼女一人で制覇できる。二つ返事で引き受けるもリレーがわからない。隣りの席のましろが説明。それを聞いたソラはラルーのことかと納得。スカイランドにもあった。そのワードは禁句。スカイランジナビアの言い間違いと誤魔化します。スカンジナビアじゃないの?っていい加減突っ込まれそう。
推薦されたソラは一つだけ注文をつけます。自分にバトンを渡す選手はましろさんにお願いしたい。今週はそんなお話。
…という話をいつものメンツに話すましろ。ツバサもあげはも期待の眼差し。
しかしましろは運動があまり得意ではない。手紙にも「運動会やだ~」と書く有様。なので別な人に、とも言ったけどソラは断固拒否。「リレーにおいて大事なこと!それは!」と興奮した様子で立ち上がります。学校でもいつの間にか教壇の前に立つとバトンパスについて講釈。生徒たちの反応から言って平常運転になっているところが怖い。溶け込みすぎだろスカイランジナビアの転校生。なお熱い視線を向けられたましろは蛇に睨まれたカエルの如き冷や汗。
熱弁を振るうソラ。まあ、要するに自分が一番信頼しているましろからバトンを受け取りたい。ソラからの熱烈アピールに加えて、クラスからもコンビ扱いされているので外堀も内堀も埋まっている状況。というわけで引き受けることに。それはそれとしてなんでこんなに盛り上がってるんだこのクラス。「ソラしろ」てぇてぇ!(注釈:てぇてぇ=尊い)みたいなノリなのか?
回想から戻って、満更でもない様子のましろ。エルからも励ましを受けます。やるからにはちゃんと走りたい。ソラに特訓を申し出ます。
何故かオーラを出して引き受けるソラ。先週、先々週の話なんて無かったってくらいの軽いノリ。ノリが戻ったと言えばそれまでだけど、むしろ磨きがかかってる。
広々とした公園で特訓開始。
コーチと呼ばれた2人は満面の笑み。その間あげははエルのお世話。ミラーパッドを携帯しているのはいつでもエナジーを回収できるように、という意図かな。
手始めにソラから速く走るコツを伝授。前だけを見て走ること! うん? もう一度言うも反応は薄い。当然といえば当然のこと。しかしましろは丁寧にお礼を言います。この子は他人の好意(行為)を素直に受け取る子なので軽んじたりはしない。具体的にはツバサが調べてきたのでそれをベースに指導。
まずはスタートから。……。そのポーズからどうやって踏み出す気なんだ。重心が高すぎる。早速ツバサからアドバイス。見本を見せるようにソラがスタートを切ります。真似をしようとしたましろはスタートで躓いてしまいます。一緒にジョギングしてたこともあったろうに。短距離と長距離では勝手が違うかもしれないけど。
走り出してからはペースの維持。頑張って走りますが女の子走りなのでどうやっても女子力高いにしかならないましろ嬢。なおスパイシーはこのポーズでプレシャスの全力疾走と併走していた模様。
次はいよいよ肝心要のバトンパス。前の人を追い越すつもりで。昔体育の授業でやったなぁ。ましろからバトンを受け取ったソラは嬉しそう。
休憩。クタクタになるましろ。そんな状態でもエルちゃんもたくさん歩いたねと褒めます。小さい子は体を動かすだけでも楽しいと話すあげは。子どもってくるくる回ったりするのも好きだよね。子どもの頃のましろもあげはに鬼をさせてずっと走っていたらしい。覚えてないと照れるましろ。
でもそれを聞いてやる気を出します。そんな彼女の様子にソラも嬉しそう。後述するようにソラはましろと一緒にリレーをやりたかったので彼女が乗り気になってくれるのは喜ばしい。その日以降も特訓が続きます。
走っているところを撮影してそれをもとに指導。なかなか本格的。その写真あとで横流しお願いします。
そんな話を両親にするましろ。特訓の苦労話をしているつもりが、そんなに体育祭を楽しみにしているなんて初めてだと両親は感心。仕事で海外にいるので見られないと残念がります。彼女のエピソードのわかりやすいところはこうして総括されることですね。両親から見れば娘がどんどん新しいことに、積極的になっていると映るでしょう。
バッタモンダーのターゲットはもちろん体育祭。登場するたびにドヤってるけど、化けの皮剥がれるの早いからツッコミ入れるの無駄だなって思い始めてる。
②ましろとソラのバトン
体育祭当日。順調にプログラムは進み、リレー本番。緊張するましろ。どうしてソラはそんなに元気でいられるのか。
「だって信じてますから」
「ましろさんが最高のバトンを渡してくれるって」
目を逸したましろはもっと緊張しちゃうと笑います。視線を外すのは2話のシーンを思い出しますね。ましろは人の好意を受け取れる子ですが、面と向かって純粋な信頼を向けらるのは(ソラの純粋さが際立っていることもあって)キャパオーバーになるのかもしれません。こういうときに「もちろんだよ、絶対にバトンを渡すから」と大見得を切れないところに彼女の弱さがあるのかもしれません。
選手入場。硬い表情のましろ。
リレー順はトリをソラが務めるのでましろはその手前。緊張が高まっていく中バトンを受け取ったましろは特訓の成果もあって快調な出足。視界の先にはソラ。しかしバトンを受け渡す直前、カーブに差し掛かったところで体制を崩して転倒。時が止まったような感覚。でも追い抜かれていく足音はしっかりと聞こえる。立ち上がったましろはソラだけを見て進むとバトンを渡します。
その後はフィジカルチート無双。ゴボウ抜きして1位でゴール。それを見届けたましろは喜びも束の間、緊張の糸が切れたようにガックリと膝をつくと項垂れます。
ソラが駆け寄ると勝利を報告。無理に笑顔を作って褒めていたましろですがたまらなくなってその場から逃げ出してしまいます。
水道で顔を洗っているとソラが駆け寄ってきます。
背を向けて水が飲みたくなったと誤魔化すましろ。勿論その言葉を真に受けるわけがなく、大丈夫ですか?と尋ねるソラ。ましろが言い出すまで待ちます。沈黙を耐えるって意外と難しい。
「私……走るの苦手だし、リレー選手だって自信なくて……。なのに自分にもできるって思っちゃったんだよ」
彼女の緊張は期待の裏返しでもあったということでしょう。初心者にありがちですがちゃんと練習すればその分伸びたりしますからね。特訓や両親との会話からも期待が見て取れます。自分もやればできるんだと。でもその期待は儚くも手痛く裏切られてしまいました。
「でも大事なところで転んじゃって……」
振り返ったましろは本音を打ち明けます。
「それが悔しい…」
勝負には勝てた。それに水をさしていることもわかっている。けどましろはどうしてもそのわだかまりを捨てることができない。これは彼女自身の問題だから。彼女のテーマは一貫しています。それは自分が何者であるかという曖昧さです。例の「特に無い!?」ですね。これまでの様子からも彼女が大抵のことはそつなくこなすタイプであることは見て取れます。しかし逆に言えば明確な「これ!」があるわけではない。こだわりの趣味があるわけではなさそうだし、ソラのような夢や目標、一生懸命さがあるわけでもない。メンタルは安定していますが、本人的な「手応え」があまり無いのだと思います。今回のリレーはそんな中で自分の可能性を感じ取れるものだったのでしょう。別に優秀な選手である必要はない。ただ自分に期待して、その期待に応えられる自分であるのだという手応えを感じたかったのだと思います。
するとソラは直角に近いレベルで頭を下げて謝ります。勝つためにはましろさんのバトンパスが必要だと言った。でもそれは理由の半分。もう半分はただ
「友達と一緒に走りたかったんです」
「だからましろさんが転んでしまったとき、ほんの少しだけ諦めてしまったんです。負けるかもしれないけどしょうがないって」
「でもましろさんは転んで悔しいとか追い抜かれて悲しいとかじゃなくただひたすら前を見て走っていた。ましろさんのその走りが私に火を点けてくれたんです」
「ましろさんは私に最高のバトンを渡してくれましたよ」
シーンを見返すとましろが走り出したところでソラは「ハッ」としているのでそのことですね。一緒に遊びたいから勝手にましろを指名して、失敗したら諦めたというのは身勝手な話。だから謝ったんだろうけど。言い方が悪いけどこのときソラはましろを舐めていたのです。けどちゃんとましろは走りきった。その成果に応えられるのは自分しかいない。
応えたソラの瞳をましろは正面から見つめ返します。
体育祭を襲撃するバッタモンダー。強い者が弱い者に力を見せつける残酷な祭り。これなら壊しても誰も心が傷まないよね。そうだな(運動オンチ並感)。いつもビリになる俺の気持ちに配慮しろ。なお学力テストの成績は私に都合が良いので採用するものとする。
ライン引きランボーグ召喚。
暴走運転するランボーグは意外と素早くスカイの攻撃もプリズムの攻撃も当たらない。ここはウィングの出番。必殺技で足止め……したつもりが思ったよりも早く復帰。するとプリズムが光弾をスカイの譲渡。それ渡せるんだ。まあ、蹴れるしな。プリズムからバトンを渡されたスカイは全力疾走。リレーの特訓は何もましろだけじゃない。スカイの脚が光るとみるみる距離を詰めてダイレクトシュート。さすがフィジカルモンスター。あとはエナジー回収。
体育祭再開。一緒に表彰台に立つソラとましろ。
涙が出るくらい悔しいって思ったのは初めて。自分でも意外だったと振り返るましろ。でも新しい自分に出会うのってドキドキしない?とあげは。ましろさんが出会ったのはどんなましろさんですか?
「思ってたより負けず嫌いで、思ってたより走るのが好きな自分…かな」
チャレンジしてよかったわね、と労うお婆ちゃん。
日課のランニングこれからも一緒に頑張りましょう、と誘うソラに快く応えるましろ。人知れず拳に力が入ります。彼女の中でまた一つ自信がついたようです。
③次回予告
前振りねぇのかよ!? 追加キャラ枠なら20話くらいかなって思ってたらこれだよ。
ドキドキは現状シリーズで唯一ヒーローをやったプリキュアですね。四葉とかいう金の暴力。
○トピック
相変わらず次回予告が持っていってますが、これだけは言いたい。ましろちゃんの使用済み体操服ください。
「可能性に賭けなくていい。可能性を楽しむだけで人生はこんなにも豊かになるのか」なエピソード。詳細はリンク先を参照されたし。
ましろのエピソードはいずれも穏やかに描かれている点で一貫しています。別に彼女は悲観しているわけではないし、自分に無力感を抱いているわけでもない。むしろ客観的には優秀で信頼もされている。ただ本人的には自分というものを上手く掴めていない。そんな印象を抱いている節があります。深刻ではないからこそ表面化もしないし、目立った弊害もない。お悩み相談するような話でもない。そんな満たされない何か、曖昧な何かに誰しも心当たりがあるでしょう。俺の人生はこれだ!と確信して生きてる人の方がレア。そんな彼女はどちらかと言えば受動的な人生を送ってきたと思われます。
人生の転機はソラとの出会い。さらには幼馴染のあげはとも再会。友達と過ごし、友達に引っ張られているうちに彼女の人生はイベントだらけに。
これはヒーローとしての目標や使命感を持ったソラとは全く異なるアプローチですが、ヒーローではない子なりのエピソードとして面白い試みだと思います。クラスの人気者、あるいは変人は必ずいる。その子と友達になって一緒に何かをやることで今まで知らなかった自分を発見することもある。そのことに気づけたとき、すでに自分は一歩を踏み出している。言ってしまえばそういう話です。
可能性という言葉は概して曖昧に使われる言葉ですがここではチャレンジと言い換えて良いでしょう。自分に何ができるのか、できないのか、何を感じるのか、それはやってみないことにはわからない。何なら失敗してもいい。ましろは失敗しても学んでいる。成功体験の積み重ねが大事とよく言いますが、そもそも体験してみないことには始まらない。チャレンジすること、その手段を持つこと(友達に誘われるでもいい)が大事なのだと本エピソードは語っています。
ましろは『成瀬は天下を取りにいく』の島崎とよく似ています。破天荒な成瀬に付き合いながらそこに手応えを感じ、彼女が付き合うからこそ成瀬も新しいことにチャレンジし続けられる。引っ張られる関係に見えて実は二人三脚。だからましろも島崎も意外とガッツがある。そのガッツに助けられることは多い。
①一緒にリレーをやろう
今週から平常運転。体育祭にあたり、リレーの候補を募集。そこで眼鏡君がソラに合図すると彼女を推薦。こいつ結構絡んで来るよな。フィジカルチートのソラなら異論なし。なんなら彼女一人で制覇できる。二つ返事で引き受けるもリレーがわからない。隣りの席のましろが説明。それを聞いたソラはラルーのことかと納得。スカイランドにもあった。そのワードは禁句。スカイランジナビアの言い間違いと誤魔化します。スカンジナビアじゃないの?っていい加減突っ込まれそう。
推薦されたソラは一つだけ注文をつけます。自分にバトンを渡す選手はましろさんにお願いしたい。今週はそんなお話。
…という話をいつものメンツに話すましろ。ツバサもあげはも期待の眼差し。
しかしましろは運動があまり得意ではない。手紙にも「運動会やだ~」と書く有様。なので別な人に、とも言ったけどソラは断固拒否。「リレーにおいて大事なこと!それは!」と興奮した様子で立ち上がります。学校でもいつの間にか教壇の前に立つとバトンパスについて講釈。生徒たちの反応から言って平常運転になっているところが怖い。溶け込みすぎだろスカイランジナビアの転校生。なお熱い視線を向けられたましろは蛇に睨まれたカエルの如き冷や汗。
熱弁を振るうソラ。まあ、要するに自分が一番信頼しているましろからバトンを受け取りたい。ソラからの熱烈アピールに加えて、クラスからもコンビ扱いされているので外堀も内堀も埋まっている状況。というわけで引き受けることに。それはそれとしてなんでこんなに盛り上がってるんだこのクラス。「ソラしろ」てぇてぇ!(注釈:てぇてぇ=尊い)みたいなノリなのか?
回想から戻って、満更でもない様子のましろ。エルからも励ましを受けます。やるからにはちゃんと走りたい。ソラに特訓を申し出ます。
何故かオーラを出して引き受けるソラ。先週、先々週の話なんて無かったってくらいの軽いノリ。ノリが戻ったと言えばそれまでだけど、むしろ磨きがかかってる。
広々とした公園で特訓開始。
コーチと呼ばれた2人は満面の笑み。その間あげははエルのお世話。ミラーパッドを携帯しているのはいつでもエナジーを回収できるように、という意図かな。
手始めにソラから速く走るコツを伝授。前だけを見て走ること! うん? もう一度言うも反応は薄い。当然といえば当然のこと。しかしましろは丁寧にお礼を言います。この子は他人の好意(行為)を素直に受け取る子なので軽んじたりはしない。具体的にはツバサが調べてきたのでそれをベースに指導。
まずはスタートから。……。そのポーズからどうやって踏み出す気なんだ。重心が高すぎる。早速ツバサからアドバイス。見本を見せるようにソラがスタートを切ります。真似をしようとしたましろはスタートで躓いてしまいます。一緒にジョギングしてたこともあったろうに。短距離と長距離では勝手が違うかもしれないけど。
走り出してからはペースの維持。頑張って走りますが女の子走りなのでどうやっても女子力高いにしかならないましろ嬢。なおスパイシーはこのポーズでプレシャスの全力疾走と併走していた模様。
次はいよいよ肝心要のバトンパス。前の人を追い越すつもりで。昔体育の授業でやったなぁ。ましろからバトンを受け取ったソラは嬉しそう。
休憩。クタクタになるましろ。そんな状態でもエルちゃんもたくさん歩いたねと褒めます。小さい子は体を動かすだけでも楽しいと話すあげは。子どもってくるくる回ったりするのも好きだよね。子どもの頃のましろもあげはに鬼をさせてずっと走っていたらしい。覚えてないと照れるましろ。
でもそれを聞いてやる気を出します。そんな彼女の様子にソラも嬉しそう。後述するようにソラはましろと一緒にリレーをやりたかったので彼女が乗り気になってくれるのは喜ばしい。その日以降も特訓が続きます。
走っているところを撮影してそれをもとに指導。なかなか本格的。その写真あとで横流しお願いします。
そんな話を両親にするましろ。特訓の苦労話をしているつもりが、そんなに体育祭を楽しみにしているなんて初めてだと両親は感心。仕事で海外にいるので見られないと残念がります。彼女のエピソードのわかりやすいところはこうして総括されることですね。両親から見れば娘がどんどん新しいことに、積極的になっていると映るでしょう。
バッタモンダーのターゲットはもちろん体育祭。登場するたびにドヤってるけど、化けの皮剥がれるの早いからツッコミ入れるの無駄だなって思い始めてる。
②ましろとソラのバトン
体育祭当日。順調にプログラムは進み、リレー本番。緊張するましろ。どうしてソラはそんなに元気でいられるのか。
「だって信じてますから」
「ましろさんが最高のバトンを渡してくれるって」
目を逸したましろはもっと緊張しちゃうと笑います。視線を外すのは2話のシーンを思い出しますね。ましろは人の好意を受け取れる子ですが、面と向かって純粋な信頼を向けらるのは(ソラの純粋さが際立っていることもあって)キャパオーバーになるのかもしれません。こういうときに「もちろんだよ、絶対にバトンを渡すから」と大見得を切れないところに彼女の弱さがあるのかもしれません。
選手入場。硬い表情のましろ。
リレー順はトリをソラが務めるのでましろはその手前。緊張が高まっていく中バトンを受け取ったましろは特訓の成果もあって快調な出足。視界の先にはソラ。しかしバトンを受け渡す直前、カーブに差し掛かったところで体制を崩して転倒。時が止まったような感覚。でも追い抜かれていく足音はしっかりと聞こえる。立ち上がったましろはソラだけを見て進むとバトンを渡します。
その後はフィジカルチート無双。ゴボウ抜きして1位でゴール。それを見届けたましろは喜びも束の間、緊張の糸が切れたようにガックリと膝をつくと項垂れます。
ソラが駆け寄ると勝利を報告。無理に笑顔を作って褒めていたましろですがたまらなくなってその場から逃げ出してしまいます。
水道で顔を洗っているとソラが駆け寄ってきます。
背を向けて水が飲みたくなったと誤魔化すましろ。勿論その言葉を真に受けるわけがなく、大丈夫ですか?と尋ねるソラ。ましろが言い出すまで待ちます。沈黙を耐えるって意外と難しい。
「私……走るの苦手だし、リレー選手だって自信なくて……。なのに自分にもできるって思っちゃったんだよ」
彼女の緊張は期待の裏返しでもあったということでしょう。初心者にありがちですがちゃんと練習すればその分伸びたりしますからね。特訓や両親との会話からも期待が見て取れます。自分もやればできるんだと。でもその期待は儚くも手痛く裏切られてしまいました。
「でも大事なところで転んじゃって……」
振り返ったましろは本音を打ち明けます。
「それが悔しい…」
勝負には勝てた。それに水をさしていることもわかっている。けどましろはどうしてもそのわだかまりを捨てることができない。これは彼女自身の問題だから。彼女のテーマは一貫しています。それは自分が何者であるかという曖昧さです。例の「特に無い!?」ですね。これまでの様子からも彼女が大抵のことはそつなくこなすタイプであることは見て取れます。しかし逆に言えば明確な「これ!」があるわけではない。こだわりの趣味があるわけではなさそうだし、ソラのような夢や目標、一生懸命さがあるわけでもない。メンタルは安定していますが、本人的な「手応え」があまり無いのだと思います。今回のリレーはそんな中で自分の可能性を感じ取れるものだったのでしょう。別に優秀な選手である必要はない。ただ自分に期待して、その期待に応えられる自分であるのだという手応えを感じたかったのだと思います。
するとソラは直角に近いレベルで頭を下げて謝ります。勝つためにはましろさんのバトンパスが必要だと言った。でもそれは理由の半分。もう半分はただ
「友達と一緒に走りたかったんです」
「だからましろさんが転んでしまったとき、ほんの少しだけ諦めてしまったんです。負けるかもしれないけどしょうがないって」
「でもましろさんは転んで悔しいとか追い抜かれて悲しいとかじゃなくただひたすら前を見て走っていた。ましろさんのその走りが私に火を点けてくれたんです」
「ましろさんは私に最高のバトンを渡してくれましたよ」
シーンを見返すとましろが走り出したところでソラは「ハッ」としているのでそのことですね。一緒に遊びたいから勝手にましろを指名して、失敗したら諦めたというのは身勝手な話。だから謝ったんだろうけど。言い方が悪いけどこのときソラはましろを舐めていたのです。けどちゃんとましろは走りきった。その成果に応えられるのは自分しかいない。
応えたソラの瞳をましろは正面から見つめ返します。
体育祭を襲撃するバッタモンダー。強い者が弱い者に力を見せつける残酷な祭り。これなら壊しても誰も心が傷まないよね。そうだな(運動オンチ並感)。いつもビリになる俺の気持ちに配慮しろ。なお学力テストの成績は私に都合が良いので採用するものとする。
ライン引きランボーグ召喚。
暴走運転するランボーグは意外と素早くスカイの攻撃もプリズムの攻撃も当たらない。ここはウィングの出番。必殺技で足止め……したつもりが思ったよりも早く復帰。するとプリズムが光弾をスカイの譲渡。それ渡せるんだ。まあ、蹴れるしな。プリズムからバトンを渡されたスカイは全力疾走。リレーの特訓は何もましろだけじゃない。スカイの脚が光るとみるみる距離を詰めてダイレクトシュート。さすがフィジカルモンスター。あとはエナジー回収。
体育祭再開。一緒に表彰台に立つソラとましろ。
涙が出るくらい悔しいって思ったのは初めて。自分でも意外だったと振り返るましろ。でも新しい自分に出会うのってドキドキしない?とあげは。ましろさんが出会ったのはどんなましろさんですか?
「思ってたより負けず嫌いで、思ってたより走るのが好きな自分…かな」
チャレンジしてよかったわね、と労うお婆ちゃん。
日課のランニングこれからも一緒に頑張りましょう、と誘うソラに快く応えるましろ。人知れず拳に力が入ります。彼女の中でまた一つ自信がついたようです。
③次回予告
前振りねぇのかよ!? 追加キャラ枠なら20話くらいかなって思ってたらこれだよ。
ドキドキは現状シリーズで唯一ヒーローをやったプリキュアですね。四葉とかいう金の暴力。
○トピック
相変わらず次回予告が持っていってますが、これだけは言いたい。ましろちゃんの使用済み体操服ください。
「可能性に賭けなくていい。可能性を楽しむだけで人生はこんなにも豊かになるのか」なエピソード。詳細はリンク先を参照されたし。
ましろのエピソードはいずれも穏やかに描かれている点で一貫しています。別に彼女は悲観しているわけではないし、自分に無力感を抱いているわけでもない。むしろ客観的には優秀で信頼もされている。ただ本人的には自分というものを上手く掴めていない。そんな印象を抱いている節があります。深刻ではないからこそ表面化もしないし、目立った弊害もない。お悩み相談するような話でもない。そんな満たされない何か、曖昧な何かに誰しも心当たりがあるでしょう。俺の人生はこれだ!と確信して生きてる人の方がレア。そんな彼女はどちらかと言えば受動的な人生を送ってきたと思われます。
人生の転機はソラとの出会い。さらには幼馴染のあげはとも再会。友達と過ごし、友達に引っ張られているうちに彼女の人生はイベントだらけに。
これはヒーローとしての目標や使命感を持ったソラとは全く異なるアプローチですが、ヒーローではない子なりのエピソードとして面白い試みだと思います。クラスの人気者、あるいは変人は必ずいる。その子と友達になって一緒に何かをやることで今まで知らなかった自分を発見することもある。そのことに気づけたとき、すでに自分は一歩を踏み出している。言ってしまえばそういう話です。
可能性という言葉は概して曖昧に使われる言葉ですがここではチャレンジと言い換えて良いでしょう。自分に何ができるのか、できないのか、何を感じるのか、それはやってみないことにはわからない。何なら失敗してもいい。ましろは失敗しても学んでいる。成功体験の積み重ねが大事とよく言いますが、そもそも体験してみないことには始まらない。チャレンジすること、その手段を持つこと(友達に誘われるでもいい)が大事なのだと本エピソードは語っています。
ましろは『成瀬は天下を取りにいく』の島崎とよく似ています。破天荒な成瀬に付き合いながらそこに手応えを感じ、彼女が付き合うからこそ成瀬も新しいことにチャレンジし続けられる。引っ張られる関係に見えて実は二人三脚。だからましろも島崎も意外とガッツがある。そのガッツに助けられることは多い。
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