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コラム7「ふたりはプリキュアの総括感想」

 この感想は「ふたりはプリキュア」および「ふたりはプリキュアMaxHeart」の総括的感想です。

 『個』と『個』の理解から始まり、日常を肯定し、そこに生きることの大切さを見出し、親や仲間との繋がりを自覚し、さらに自らの可能性とその未来の可能性を提示した作品。つまるところ、この世界で生きることを肯定した作品。


 何のことは無い、この作品は子ども番組で少女アニメです。子ども達が暮らす日常や親や友達やその未来の可能性を示唆することはあたりまえのことです。この作品に評価される点があるとしたらそのあたりまえのことをあたりまえに正面から取り組んだことです。友達を作るということはどういうことなのか、友達とはなんなのか、不安や試練にどうやって立ち向かうのか、この世界に対してどうやって生きていけばいいのか、その先には何があるのか、それらをこの作品はたとえ大人から見て取るに足らないことであっても大切に真摯に取り組み描きました。そうやって作られた物語は最早子ども騙しなどではなく一種の理想であり、また生きることを真剣に考えさせるに足る物語であったと思います。この作品の支持者に大人、とりわけアニメファンではない大人や親の層が多いのは決して偶然ではなく、その真摯さに心打たれたからであると思います。無論、私もその一人です。


 さて、そもそも私がこの作品を強く見たい・見続けたいと思わせた劇中の台詞があります。一年目第5話「マジヤバ!捨て身のピーサード」の対決シーンにおけるホワイトの台詞「バカにしないで!みんな一生懸命に生きているのよ、理解し合って、尊敬し合って生きているんじゃないの!力ずくでみんなを支配しようとするなんて、そんなの、そんなの絶対間違っている!」という言葉でした。
 いかにもこの当時のホワイトらしい理念的な台詞です。ヒーロー・ヒロイン番組的にもありがちな台詞でもあります。しかし、私はこの台詞が好きです。それは他者との理解をストレートに力強く主張しているからです。これが主人公一人の物語であればよくあることとして認識されましたが、プリキュアはふたりいることでその主張の強さが際立ちました。そしてまだこの時期はなぎさもほのかも苗字でお互いを呼び合っている段階であり、ホワイトの台詞が如何にして証明され得るかを見てみたいと思いました。他人から始まった彼女達の関係がどのようにして友達になるのか、理解や尊敬ってなんなのかをこの作品は見せてくれるんじゃないかという期待を抱いたのです。それだけあの台詞には強いものを感じました。
 その期待は8話を代表されるように叶うことになりますが、この作品が見せた人間関係の素晴らしさは単に1話の良否の問題ではなく継続・積み重ねによる絆の強さでした。彼女達の関係は物語が進むに連れてより強くより高次へと発展していきました。それに伴い課題となる問題もより深いものとなりました。他者を信頼することは依存へとならないか?別れ難い友達と別れられるのか?そもそも本当の友達ってなんだ?それらの課題をこの作品は下手な理屈をこねくり回すのではなく、馬鹿正直に悩み馬鹿正直に答えました。その答えは愚直なまでに真っ直ぐでした。それは幼稚であるということではありません。真剣に悩めるのはそれだけの友達がいるからであり、正直に答えられるのは真剣に考えた末に自分というものを忘れることなく自分と他者の繋がり方を見出したからです。その姿と想いに私は幾度と無く心を打ち涙しました。クイーンは言います「答えはあなた達の中にある」と。私の知り合いに賢者や神様はいません。物事の答えを教えてくれる人もいません。そもそも答えは与えられるものでもないかもしれません。彼女達は自らが見・聞き・知り・経験した中から答えを出しました。彼女達の真剣に悩み真剣に答えを出すその過程(それまでの経験)そのものに説得力があり、彼女達が答えを叫ぶ姿に強さと力を感じます。最早私はそれを理屈で解釈する気はありません。心の叫びを心で聴かずして理解する方法を私は持っていません。
 (この作品は理屈では描いていないと思います。理屈で言えば理屈で理解しますし、せざるを得ません。しかし、この作品が見せたかったものは生きることであり、意志することの強さであり、信じることだったと思います。プリキュアはそれを人の想いによって見せています。それは理屈で理解するものではなく、心で理解するものだと思います)

 プリキュアにおける戦いは『悪』との戦いではありませんでした。敵は日常を壊しにやってきますがそれが目的ではありません。世界征服でもありません。闇という『たった一つの未来』で支配することでした。それは自分も無い他人も無い未来が一つのものでしかない世界です。それを否定(究極的には肯定)したのが光の側であるプリキュアです。未来は閉ざされていない。諦めない。絶望もしない。希望を持ち続ける。それらを意志することで未来への可能性を多様なものとします。
 プリキュアにおける『光』と『闇』の対決とはそういうものであったと思います。ひるがえせば我々が生きるこの世界の在り方そのものでもあります。諦めたら、何もしなかったら生まれるものは無いでしょう。生きるのをやめれば何もありません。それらを克服できるなら、負の部分を取り除けるなら理想かもしれませんがそんなことは勿論できません。闇の可能性は決して無くなる事はないのです。しかし、その闇の可能性があるから人は頑張れるのだと思います。希望しかないのなら、絶望しかないのならそれらを区別することは出来ません。希望と絶望は隣合せであり両者が同時に存在することで乗り越えようとする意志が生まれます。その意志は言い換えれば生命力と呼んでいいと思います。不条理と希望が同時に存在する世界だからこそ生きる意味が見出されると思います。


 私がこの作品に魅かれたのは、ひたすらに前を向く姿でした。前を向くこと、前に進むこと、今この瞬間を大切に生きること、そのことを肯定しました。何ものも否定することなく、肯定し切りました。その姿・志向は眩しいほどに輝いていました。
 プリキュアは闇に抗いつつも闇を肯定することで『希望を信じる』という答えを出しています。『信じる』というのは理屈ではないし不確定で曖昧なものです。現実的にはその意志は力を持たないかもしれません。何にもならないかもしれません。(悪い意味で)利口な人が得をして馬鹿正直者な人は損をするだけかもしれません。それを否定する気はありません。現実的に世の中はそういうものだからです(この世界から負を取り除こうと思うほど私は我侭ではない)。しかしだからこそ、『希望を信じる』ことを意志することの意味があるはずです。それを失ってしまえば本当にどうにもならなくなります。死んだ方がマシだということにもなってしまいます。生きることはそんな暗くつまらないものであっていいのでしょうか? 嫌です。私は嫌です。生きることが否定されるというのなら、その先の未来は一つしかありません。何もない未来です。そんな未来は嫌です。生きることは肯定されるべきものです。いえ、肯定するものです。生きることは未来を紡ぐものであり、未来を多様なものにします。生きてこそその多様な未来を作ることが出来ます(余談ながら、ルミナスが迷い答えを出したのはそういうことだと思います。死ぬことを恐れなくても生きることの意味に気付かなければ未来は開かれない)。未来は自らが作り出します。作らなければなりません。作るには力が必要です。生きる(生きようとする)力が。自分で生きることを肯定し未来を意志した時、その生きる力が生まれるものだと思います。希望を信じ生きることを肯定したプリキュアは何よりも強く熱く真っ直ぐでした。

 人が生きる場所は世界です。死んだらあの世に行くのかもしれませんが生きているうちは世界に生きます。その世界での人の拠りどころとしてプリキュアは『日常の大切さ』『人との繋がり』を見出しました。ありふれた日常とそこに暮らす人々との生活を核としました。それはあまりにあたりまえの事ですが、そのあたりまえの生活を私達は営んでいます。『世界』という言葉は大げさに感じますが、私達が生きて生活している日常は紛れも無く世界の中心であり世界と繋がっているものです。人と交わり、日常を大切にする。ただそのあたりまえのことをプリキュアは力強く肯定しました。
 (また余談ですが、ひかりが本来虹の園とは無関係でありながら、虹の園で生きアカネさんや友達と過ごした日々を肯定しこの世界を愛していると言ったこと、クイーンとなってこの世界の未来を意志したことでプリキュアという作品・世界は完全に肯定されることになります)


 『肯定する』こと。それには力があると思います。否定は排他的な力を生みますが、肯定はその逆生み出す力があると思います。プリキュアの劇中で出てくる『全てを生み出す力』は意志と想いに応えたと最終回で言われましたが私は逆だと思います。肯定すること、前を向いて進むこと、希望を持つこと、生きること、それを意志した時に『全てを生み出す力』が生まれると思います(劇中描写でそう解釈しても問題はない)。それが確かなものかは分かりません。しかし、私はそう信じます。彼女達が見せた力は人の意志の可能性です。
 ようやくこの作品を見た私の答えを見つけることができました。『生きる』その手段を知りました。たったそれだけの、それだけで十分な答えです。今はまだ不完全かもしれませんが、それはまた何か大切なものを知った時に改めて気づくことかもしれません。それはまた後の話です。だから今、その大切な事を教えてくれたこの作品と彼女達に、この言葉を贈ります。


ありがとう。あいしてる。
[ 2013年05月21日 21:26 ] カテゴリ:MaxHeart | TB(0) | CM(-)
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