カテゴリー [ スイートプリキュア♪ ]
- ・スイートプリキュア♪総括感想
- ・コラム「ストーリー概要」
- ・最終話「ラララ~♪世界に響け、幸せのメロディニャ!」
- ・第47話「ピカーン!みんなで奏でる希望の組曲ニャ!」
- ・第46話「ズゴーン!プリキュア最後の戦いニャ!」
- ・第45話「ブォー~ン♪ノイズの好きにはさせないニャ!」
- ・第44話「ドレラド~♪聖なる夜に生まれた奇跡ニャ!」
- ・第43話「シクシク……不幸のメロディが完成しちゃったニャ!」
- ・コラム「スイートのストーリー解説(別アプローチ)」
- ・第42話「ピコンピコン!狙われたキュアモジューレニャ!」
- ・第41話「ファファ~♪最後の音符はぜったい渡さないニャ!」
- ・第40話「ルルル~!雨音は女神の調べニャ!」
- ・第39話「フギャー!音符がぜーんぶ消えちゃったニャ!」
- ・第38話「パチパチパチ♪不思議な出会いが新たな始まりニャ♪」
- ・映画「とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪」
- ・第37話「ワクワク!ハロウィンでみんな変身ニャ!」
- ・第36話「キラキラーン!心に届け、ミューズの想いニャ!」
- ・第35話「ジャキーン!遂にミューズが仮面をとったニャ!」
- ・第34話「ズドド~ン!メフィストがやって来ちゃったニャ!」
- ・第33話「ホワワ~ン!みんなの夢はプリキュアの力ニャ!」
- ・第32話「オロオロ~!ヒーリングチェストが盗まれたニャ!」
- ・第31話「ワンツー!プリキュアキャンプでパワーアップニャ♪」
- ・第30話「ワオーン!ヒーリングチェストの不思議ニャ!」
- ・第29話「ハラハラ!メイジャーランドで宝探しニャ♪」
- ・第28話「ドキドキ!エレンの初めての学校生活ニャ!」
- ・第27話「カチッカチッ!30分で世界を救うニャ!」
- ・第26話「ピポパポ♪フェアリートーンの大冒険ニャ♪」
- ・第25話「ヒュ~ドロ~!エレンの弱点見~つけたニャ!」
- ・第24話「サンサン!お砂のハミィで友情の完成ニャ!」
- ・第23話「ザザ~ン!涙は世界で一番ちいさな海ニャ!」
スイートプリキュア♪総括感想
○物語総括
この物語は幸せと不幸の狭間で生きる人間の姿を描いています。喜び、悲しみ、楽しみ、苦しみ、憧れ、嫉妬、連帯、孤独。それらは全て人の心が生み出すものであり、その多くは人間関係から生まれるものです。本作は悲しく辛い出来事を様々な形で提示しています。親友との絶交、親子間の愛情欠如、過ち、家庭崩壊、過去から続く争い。この物語は最初から悲しみや涙がある世界として構築されています。
本作は音楽をモチーフにして人の心を表現しています。主要な場面で発せられる「音楽」はそのまま「心」に置き換えることができます。音楽が人を安心させる心地よいメロディを奏でられる一方で、不安を煽る不協和音を奏でることもできるように同じモノでもその時々、使い方によって大きく様変わりします。それは人の心も同じです。優しい気持ちになるときもあれば、刺々しい気持ちになることもある。昨日まで親友だと思っていた相手が何かのキッカケで憎らしい相手として映ることもあります。しかし本作はややもすると容易に変わりうる人の心を否定しませんでした。人を憎むことも、悲しみに暮れることも人が変わっていく過程として、辛く悲しい出来事を経験していく中で成長し絆や幸せを生み出しています。音楽も人間も不変ではありません。むしろ変わることによってより豊かな音色、人間性を獲得していくものでしょう。幸せと不幸の狭間で生きる人間の賛歌を謳ったのが本作スイートプリキュアです。
○筆者所感
この物語を思い返すたびに私は身につまされるような悲哀を感じずにはいられません。それはこの物語が生きづらさと人の心の弱さを描いているからです。響と奏は心を一つにしなければプリキュアに変身できません。ところがふたりはことあるごとにケンカを繰り返してしまう。親友だった相手や親が敵となって襲いかかる。絆を再び結び家族との愛情を取り戻しても、最後に待ち受けるノイズは人の心が生んだ悲しみ。物語を最初から最後まで貫いているのは生きることが苦痛だと言わんばかりの苦悩です。
元々、日常を守るために戦うのがプリキュアの始まりでした。ではその日常とは本当に楽しいことばかりなのか。仲の良い友達とケンカすることはないのか、親との関係はどうか、ふいに起こる不幸だってあるのではないのか。本作は日常そのものが困難や苦悩の連続であることを浮き彫りにしています。私達の世界に悪はいない。悪がいなくても人は不幸になる。たとえ好意があっても響と奏のように誤解と不信からお互いを傷つけ合ってしまうことだってある。日常を楽しく暮したい、けどその日常に嫌なことがたくさんある。スイートはこのジレンマに向き合い、悲しみを受け入れた上で幸せを創りだしていく道を選びました。ケンカすることがあっても気持ちを伝え合える。悲しみや苦しみを笑える時が来る。ノイズ(悲しみ)を受け入れたことでスイートプリキュアはシリーズで初めて完全な形でのラスボスとの和解、プリキュアの名前の由来にもなっているcureを成し遂げています。プリキュアの女の子達の強さと優しさは倒すためではなく共に生きるためのものへと変っています。
この物語を思い返すたびに私は身につまされるような悲哀を感じずにはいられません。でも同時に暖かさ、勇気、前向きさが心に満ちあふれてくる。それはこの物語が生の豊かさと心の強さを描いているからです。
本作は東日本大震災が起こった年に放送されました。物語の中で響達が苦難を経験したように、現実の我々も未曾有の災害を経験しています。震災がどれほど本作に影響を与えたのか私には知るよしもありません。私が知っているのは過酷な世界であってもひた向きに生きる少女達と、その過酷な世界には幸せもあることです。彼女達の苦しみ、痛み、歓び、笑顔、涙を通じて教わり励まされました。だからこそ信じたい。響達が歩んだ道は私達にも通じている道なのだと。私達もまた過酷な世界で幸せを創りだしていける。
日常を守るべきものとして始まったプリキュアが日常にこそ苦難があると指摘したことは大きな転換です。フレッシュから勧善懲悪のスタイルを改め、前作ハートキャッチにおいて様々な人々の苦悩やコンプレックスを扱い今作へと至っています。しかしだからといってプリキュアが変質したわけではありません。生きることが苦悩の連続であったとしても最後まで諦めることなく歩み続ける女の子達の姿にこそプリキュアの本質があります。初代からスイートまで途絶えることなくプリキュアの意志を受け継いできました。それはまさしく人間賛歌の組曲であると思います。この素晴らしい物語がこれからも続くことを願います。
子ども達に真摯に向き合いながら物語を作ったスタッフの方々に改めてお礼申し上げたい。素晴らしい物語をありがとうございました。また、前作に引き続き眼鏡っ娘ヒロインを起用していただきありがとうございました。しかも小学生。さらには真っ裸変身。最高でした。
最後になりますが、本感想にお付き合いいただきありがとうございました。癖が強くて散文にもほどがある文章だったかと思います。たぶん、この感想で一番印象に残ったのは「奏の白ニーソ太もも」だろうと思います。お目汚し失礼しました。それはそれとして本感想がプリキュアを楽しむ一助になったのであれば幸いです。
この物語は幸せと不幸の狭間で生きる人間の姿を描いています。喜び、悲しみ、楽しみ、苦しみ、憧れ、嫉妬、連帯、孤独。それらは全て人の心が生み出すものであり、その多くは人間関係から生まれるものです。本作は悲しく辛い出来事を様々な形で提示しています。親友との絶交、親子間の愛情欠如、過ち、家庭崩壊、過去から続く争い。この物語は最初から悲しみや涙がある世界として構築されています。
本作は音楽をモチーフにして人の心を表現しています。主要な場面で発せられる「音楽」はそのまま「心」に置き換えることができます。音楽が人を安心させる心地よいメロディを奏でられる一方で、不安を煽る不協和音を奏でることもできるように同じモノでもその時々、使い方によって大きく様変わりします。それは人の心も同じです。優しい気持ちになるときもあれば、刺々しい気持ちになることもある。昨日まで親友だと思っていた相手が何かのキッカケで憎らしい相手として映ることもあります。しかし本作はややもすると容易に変わりうる人の心を否定しませんでした。人を憎むことも、悲しみに暮れることも人が変わっていく過程として、辛く悲しい出来事を経験していく中で成長し絆や幸せを生み出しています。音楽も人間も不変ではありません。むしろ変わることによってより豊かな音色、人間性を獲得していくものでしょう。幸せと不幸の狭間で生きる人間の賛歌を謳ったのが本作スイートプリキュアです。
○筆者所感
この物語を思い返すたびに私は身につまされるような悲哀を感じずにはいられません。それはこの物語が生きづらさと人の心の弱さを描いているからです。響と奏は心を一つにしなければプリキュアに変身できません。ところがふたりはことあるごとにケンカを繰り返してしまう。親友だった相手や親が敵となって襲いかかる。絆を再び結び家族との愛情を取り戻しても、最後に待ち受けるノイズは人の心が生んだ悲しみ。物語を最初から最後まで貫いているのは生きることが苦痛だと言わんばかりの苦悩です。
元々、日常を守るために戦うのがプリキュアの始まりでした。ではその日常とは本当に楽しいことばかりなのか。仲の良い友達とケンカすることはないのか、親との関係はどうか、ふいに起こる不幸だってあるのではないのか。本作は日常そのものが困難や苦悩の連続であることを浮き彫りにしています。私達の世界に悪はいない。悪がいなくても人は不幸になる。たとえ好意があっても響と奏のように誤解と不信からお互いを傷つけ合ってしまうことだってある。日常を楽しく暮したい、けどその日常に嫌なことがたくさんある。スイートはこのジレンマに向き合い、悲しみを受け入れた上で幸せを創りだしていく道を選びました。ケンカすることがあっても気持ちを伝え合える。悲しみや苦しみを笑える時が来る。ノイズ(悲しみ)を受け入れたことでスイートプリキュアはシリーズで初めて完全な形でのラスボスとの和解、プリキュアの名前の由来にもなっているcureを成し遂げています。プリキュアの女の子達の強さと優しさは倒すためではなく共に生きるためのものへと変っています。
この物語を思い返すたびに私は身につまされるような悲哀を感じずにはいられません。でも同時に暖かさ、勇気、前向きさが心に満ちあふれてくる。それはこの物語が生の豊かさと心の強さを描いているからです。
本作は東日本大震災が起こった年に放送されました。物語の中で響達が苦難を経験したように、現実の我々も未曾有の災害を経験しています。震災がどれほど本作に影響を与えたのか私には知るよしもありません。私が知っているのは過酷な世界であってもひた向きに生きる少女達と、その過酷な世界には幸せもあることです。彼女達の苦しみ、痛み、歓び、笑顔、涙を通じて教わり励まされました。だからこそ信じたい。響達が歩んだ道は私達にも通じている道なのだと。私達もまた過酷な世界で幸せを創りだしていける。
日常を守るべきものとして始まったプリキュアが日常にこそ苦難があると指摘したことは大きな転換です。フレッシュから勧善懲悪のスタイルを改め、前作ハートキャッチにおいて様々な人々の苦悩やコンプレックスを扱い今作へと至っています。しかしだからといってプリキュアが変質したわけではありません。生きることが苦悩の連続であったとしても最後まで諦めることなく歩み続ける女の子達の姿にこそプリキュアの本質があります。初代からスイートまで途絶えることなくプリキュアの意志を受け継いできました。それはまさしく人間賛歌の組曲であると思います。この素晴らしい物語がこれからも続くことを願います。
子ども達に真摯に向き合いながら物語を作ったスタッフの方々に改めてお礼申し上げたい。素晴らしい物語をありがとうございました。また、前作に引き続き眼鏡っ娘ヒロインを起用していただきありがとうございました。しかも小学生。さらには真っ裸変身。最高でした。
最後になりますが、本感想にお付き合いいただきありがとうございました。癖が強くて散文にもほどがある文章だったかと思います。たぶん、この感想で一番印象に残ったのは「奏の白ニーソ太もも」だろうと思います。お目汚し失礼しました。それはそれとして本感想がプリキュアを楽しむ一助になったのであれば幸いです。
コラム「ストーリー概要」
ここでは本作をいくつかの章にわけて説明することで物語がどのように進行していったか、各エピソードを通じて提示されている事柄を解説します。
物語の全体的な概要としては総括感想の序文を参照していただくと把握しやすいと思います。あるいは、響を視点としても纏めることができます。彼女は当初音楽を拒絶していました。この物語において音楽は心と同義であり、その一端として父親との結びつきが音楽に対する姿勢としても現れています。響が絆を取り戻していくと同時に音楽に対する姿勢も前を向くようになります。彼女の演奏(心を伝える、の比喩)がノイズに届くことによって、彼女の成長と演奏家としての未来が示されています。
①響・奏編(1~19話)
響と奏が友情を取り戻し、親友になっていく過程を描いたエピソード。このエピソードでは対人関係におけるディスコミュニケーション、軋轢の諸要因や解決の糸口を提示しています。
響を主体として見るとこのエピソードの意味を捉えやすいでしょう。つまり友達、家族と疎遠になってしまったことで彼女は不安と孤独の悪循環へと陥ります。それらの関係が回復されることによって不安は解消され、視野が広くなり将来の夢や希望へと繋がっていきます。対人関係の不和が人を不自由にし、可能性を奪っていくことが暗に描かれています。
より細かくエピソードを分類すると次のようになります。
1.信頼を取り戻す過程(1~7話)
一見すると毎回同じようにケンカしているだけに見えますが、当事者達が抱く劣等感や不安、疑心暗鬼を詳細にまた個別的に描くことによって日常に潜むディスコミュニケーションや葛藤が多様な形で存在していることが見えてきます。お互いに好意を持ちつつも誤解や疑心暗鬼から互いにいがみ合ってしまう。それらを一つ一つ取り上げ絡まった糸を解いていくことによってふたりの信頼関係が形作られていきます。
2.ふたりが親友になる過程(8~19話)
たまにケンカをしますが以前のように危なっかしいものではなくなり、自然に寄りを戻せるようになっています。ケンカを通じてお互いに気持ちを伝え合うなどケンカが信頼を醸成する手段ともなっていることが特徴です。作中でたびたび繰り返されているように、ふたりの絆、友情がプリキュアに変身できる鍵となっており、逆説的にプリキュアとは親友、深い絆で結ばれた少女達の代名詞とも言えます。
響と奏の関係改善は物語全体で見ても長い尺を取っており、それだけ親友の価値の重要性、信頼回復に時間がかかることの裏返しと言えます。彼女達の関係を通して人間関係の危うさ、絆などの目には見えない相互作用やそこから得られる自己肯定感(否定感)が見えてきます。
響の母、まりあが言った「みんなが生きている音」はこの物語の"音楽"を意味する上で重要な示唆となります。22話で自然の音をハミィとセイレーンが口ずさんだように、この物語の音楽は広い意味を持ちます。
一連の響・奏編はほぼこのふたりに焦点が当たっておりハミィとセイレーンはほとんどふたりに影響を及ぼしていません。次のステップであるセイレーン編の前準備もいくつか同時進行していますが、響・奏とハミィ・セイレーンはお互いに独立した関係とストーリーとして併走させています。これは物語を俯瞰すると、最初は不仲だったものの再結合、次いで異文化(新しい友人)との接触という形で拡張しています。
②セイレーン編(20話~23話)
ハミィとの友情を通じてセイレーンがプリキュアになるエピソード。響と奏が見せた親友の在り方を踏まえてハミィのアプローチを補強しています。実質的にはセイレーンに的を絞ったエピソード。この話しの核はセイレーンの再起(再帰)です。要約してしまえば、ハミィとセイレーンは決裂してしまった関係です。響と奏は最後の最後に踏みとどまれた関係でしたが、セイレーンは事あるごとにハミィ達を嫌うようになってしまいます。
信頼が裏切られた時に、悲しみと共に相手を信じた自分に対する否定感も起こるため、それを相殺しようと相手に憎悪を向ける(自分は相手に騙されていたのだと再解釈することで自己否定感情を逸らす)傾向が人間にはあります。セイレーンが述懐したように、大好きなものが大嫌いになってしまうことは決して珍しいことではありません。憎悪が強まれば相手の不幸をも望むようになってしまう。そうした人の心の弱さと恐ろしさ、また良心故に起こる罪悪感の重さを背負ったのがセイレーンでした。
彼女が立ち直るキッカケとなったのがマモルという脇役だったことは本作全体から鑑みても大きな意味を持ちます。プリキュアだけに絆があるわけではありません。人々も持っているし、プリキュアとも繋がれる。人の絆とは開かれたものであり、繋がっていけるものであることが強く打ち出されています。後の劇場版で示された人と人の絆、その絆の連鎖が人間の可能性であることの先触れとなっています。
響、奏、セイレーンを通じて言えるのはこうしたディスコミュニケーションや軋轢が特別なものではないことです。本当に日常で起こりうるありがちな問題を扱っています。単に不仲になった人と関係を切って済むのであれば事は簡単ですが、その仲違いによって自信を失ってしまったり、深く傷ついてしまったり、他者を憎むようになってしまうことがあることは意外と見過ごされやすい部分です。人は社会を築き、他者と何らかの関係を通じて自らの地位や自信を持ち役割を全うしていく存在です。その歯車が上手くかみ合わなくなったときに自分だけでなく他者をも巻き込んで不幸の連鎖を作りだしかねないこと、その状態をどうやって克服していくかをここまでのエピソードで描き出しています。
③エレン・フェアリートーン編(24話~31話)
セイレーンが響奏と友達になり学校に入るエピソード。夏休みと新学期に合わせて、セイレーンが日常的に加音町にとけ込んでいく様子が描かれています。先にも書いたように、響・奏とセイレーン・ハミィは独立的な関係でしたがここで融和していきます。これまでの話しのような複雑な関係性の描写や距離の詰め方はせず、新しい友達や環境に馴染んでいくことで楽しい体験や成長があることを見せています。
3人の絆の醸成を変身シーンの統合、メイジャーでの試練、ハーモニーパワーの強化、新必殺技の習得といった形でステップを踏みながら明示しています。締めの話しとなる合宿エピソードが示しているように他者との協力、連帯を通じてお互いの心を通じ合わせていくことに力点が置かれています。
ハミィとセットで行動していたフェアリートーンが自律的に行動し始めるのもこの時期です。これは子ども向けの楽しいエピソードとなっていますが、人間味が強まったハミィからフェアリートーンに妖精のポストが移行したとも考えられます。また、玩具の付属品的な位置にあったフェアリートーンに人格を持たせたことで、その上位者であるクレッシェンドトーンの意味付けを強めています。音の源である彼女は神格的な位置にあると言えます。
フェアリートーンの自律化はドドリーにも当てはまるため、次のアコ編にてミューズと分離化されていきます。
④アコ編(32話~41話、劇場版含む)
キュアミューズの正体、アフロディテとメフィストの関係、真の敵ノイズ登場など物語の真相が次々と判明します。アコの父親を求める姿、家族の絆を取り戻したいと願う姿はこれまでの響達の姿と重なり物語を重層的にしています。
アコから見てメフィストは父であり助けたい相手でしたが、響達から見れば悪党で倒すべき相手でした。認識の違い、ディスコミュニケーションがここでも見られます。しかし響達はこれまでの経験から相手の身になって考え、ミューズを信じメフィストも守らなければならない相手だと気付きます。アコもまた響達から学び、支えられてメフィストへと想いを届けています。それぞれの視点では見えなかったものが繋がることで可視化され、補い合うことで新たな道を開いていけることが示されています。このように本作は螺旋を描くように「誤解(誤認)-発見-結合」を繰り返しながら物語を深めています。
絆の崩壊と再生を描く中で、とりわけ本作は絆を結ぶことに重きを置いています。彼女達が直面し苦悩と不安に苛まされた最大の要因はコミュニケーションの難しさです。その本質は自己と他者の絶対的な隔たりです。これは誰もが突き当たる問題です。親しいようで知らない、一度親しかったがための軋轢、かつて親しい間柄だったことはその距離感を改めて強調しています。響達は他者を限られた範囲でしか知り得ません。疑心暗鬼や不安によって彼女達は最初から信頼して相手に向き合うことができない。響が奏と、ハミィがセイレーンと、アコがメフィストと絆を結びつつも自分達以外の関係に深く関与できなかったのは裏返せば対人関係の限界、信頼関係を築くことの難しさを物語っています。
人を信じられず不安や自己嫌悪に苦しみ傷つき傷つけることもあれば、相手から学び癒されることもあるでしょう。どちらも人間関係の裏と表であり根源的には同じところから発しています。紆余曲折を経ながらも響達はそうした人間関係の良い面を深め、拡張していくことで着実に成長し視野を広げています。
⑤ノイズ編(42話~48話)
不幸のメロディの完成、ノイズの復活、最終決戦、エピローグと怒濤の展開を繰り広げる最終章。これまで作中で提示されていた事柄が拡張・昇華されてフィナーレを迎えます。
プリキュアを主体にして見ると46話までほとんど活躍の機会がありません。42話~46話まで主導権を握っているのはプリキュア以外の人達です。クリスマスを盛り上げようとしたのは一般人でしたしバスドラ・バリトンは自分の意思でマイナーを抜けています。アフロディテやメイジャーの国民達も石化を厭わず音楽を演奏しました。これらは自由意思の発露です。彼らは恐れや苦しみをモノともせず自らの意思を通しています。プリキュア以外の人々の自立的意思を描くことで心を巡る対立軸がより鮮明になるとともに、プリキュアは何をするべきなのか、守る力とは何なのかが問われていきます。
ノイズが人の悲しみから生まれた存在であったこと、彼自身が悲しみ絶望していることによってこの物語が何と戦ってきたのかが鮮明になります。この物語は悲しみとの戦いであり人との戦いです。不可抗力、他者との摩擦。自己と他者、自分の中に生まれるネガティブな感情とのせめぎ合いが繰り返し行われてきました。
ノイズとの戦いは人間同士の争いと同じです。意見が異なる相手との対立、不幸に陥った人の自滅・破滅的な行為、生存競争等々、人間関係の軋轢そのものです。それは決して悪との戦いではありません。同じ心を持つ者同士の不幸な、あるいは必然的な対立です。しかしそれを通じて互いの心を分かち合い、判り合う未来もある。人の心は喜びにも悲しみにも染まる。けど、心が変わるということはそれだけ多くの未来があることを示しています。
この物語は戦い続ける人間の姿を描いています。しかしその戦いは相手を屈服させるための戦いではありません。より良い関係を作るための、心を強く豊かにするための戦いです。響達はそのことに気付きます。現にそうやって彼女達は絆を育み成長してきました。悲しみは決して無くならないし、他者との軋轢も生まれ続ける。しかしそれでもみんなが笑顔になれる未来を創ることができる。彼女達はそれを信じ実現させていきます。
悲しみ、喜び、様々な感情、親、子ども、友達、他者、様々な人々、全てが在り全てが繋がっていることが「スイート(suite)」に包括されています。また、人が変わりながら歩んでいくことを変身になぞらえることで「プリキュア」が日常においても意味を持つことが提示されています。日常に起こりうる困難を克服しながら他者とともに共生していく。「スイートプリキュア」の名はそれを体現しています。
物語の全体的な概要としては総括感想の序文を参照していただくと把握しやすいと思います。あるいは、響を視点としても纏めることができます。彼女は当初音楽を拒絶していました。この物語において音楽は心と同義であり、その一端として父親との結びつきが音楽に対する姿勢としても現れています。響が絆を取り戻していくと同時に音楽に対する姿勢も前を向くようになります。彼女の演奏(心を伝える、の比喩)がノイズに届くことによって、彼女の成長と演奏家としての未来が示されています。
①響・奏編(1~19話)
響と奏が友情を取り戻し、親友になっていく過程を描いたエピソード。このエピソードでは対人関係におけるディスコミュニケーション、軋轢の諸要因や解決の糸口を提示しています。
響を主体として見るとこのエピソードの意味を捉えやすいでしょう。つまり友達、家族と疎遠になってしまったことで彼女は不安と孤独の悪循環へと陥ります。それらの関係が回復されることによって不安は解消され、視野が広くなり将来の夢や希望へと繋がっていきます。対人関係の不和が人を不自由にし、可能性を奪っていくことが暗に描かれています。
より細かくエピソードを分類すると次のようになります。
1.信頼を取り戻す過程(1~7話)
一見すると毎回同じようにケンカしているだけに見えますが、当事者達が抱く劣等感や不安、疑心暗鬼を詳細にまた個別的に描くことによって日常に潜むディスコミュニケーションや葛藤が多様な形で存在していることが見えてきます。お互いに好意を持ちつつも誤解や疑心暗鬼から互いにいがみ合ってしまう。それらを一つ一つ取り上げ絡まった糸を解いていくことによってふたりの信頼関係が形作られていきます。
2.ふたりが親友になる過程(8~19話)
たまにケンカをしますが以前のように危なっかしいものではなくなり、自然に寄りを戻せるようになっています。ケンカを通じてお互いに気持ちを伝え合うなどケンカが信頼を醸成する手段ともなっていることが特徴です。作中でたびたび繰り返されているように、ふたりの絆、友情がプリキュアに変身できる鍵となっており、逆説的にプリキュアとは親友、深い絆で結ばれた少女達の代名詞とも言えます。
響と奏の関係改善は物語全体で見ても長い尺を取っており、それだけ親友の価値の重要性、信頼回復に時間がかかることの裏返しと言えます。彼女達の関係を通して人間関係の危うさ、絆などの目には見えない相互作用やそこから得られる自己肯定感(否定感)が見えてきます。
響の母、まりあが言った「みんなが生きている音」はこの物語の"音楽"を意味する上で重要な示唆となります。22話で自然の音をハミィとセイレーンが口ずさんだように、この物語の音楽は広い意味を持ちます。
一連の響・奏編はほぼこのふたりに焦点が当たっておりハミィとセイレーンはほとんどふたりに影響を及ぼしていません。次のステップであるセイレーン編の前準備もいくつか同時進行していますが、響・奏とハミィ・セイレーンはお互いに独立した関係とストーリーとして併走させています。これは物語を俯瞰すると、最初は不仲だったものの再結合、次いで異文化(新しい友人)との接触という形で拡張しています。
②セイレーン編(20話~23話)
ハミィとの友情を通じてセイレーンがプリキュアになるエピソード。響と奏が見せた親友の在り方を踏まえてハミィのアプローチを補強しています。実質的にはセイレーンに的を絞ったエピソード。この話しの核はセイレーンの再起(再帰)です。要約してしまえば、ハミィとセイレーンは決裂してしまった関係です。響と奏は最後の最後に踏みとどまれた関係でしたが、セイレーンは事あるごとにハミィ達を嫌うようになってしまいます。
信頼が裏切られた時に、悲しみと共に相手を信じた自分に対する否定感も起こるため、それを相殺しようと相手に憎悪を向ける(自分は相手に騙されていたのだと再解釈することで自己否定感情を逸らす)傾向が人間にはあります。セイレーンが述懐したように、大好きなものが大嫌いになってしまうことは決して珍しいことではありません。憎悪が強まれば相手の不幸をも望むようになってしまう。そうした人の心の弱さと恐ろしさ、また良心故に起こる罪悪感の重さを背負ったのがセイレーンでした。
彼女が立ち直るキッカケとなったのがマモルという脇役だったことは本作全体から鑑みても大きな意味を持ちます。プリキュアだけに絆があるわけではありません。人々も持っているし、プリキュアとも繋がれる。人の絆とは開かれたものであり、繋がっていけるものであることが強く打ち出されています。後の劇場版で示された人と人の絆、その絆の連鎖が人間の可能性であることの先触れとなっています。
響、奏、セイレーンを通じて言えるのはこうしたディスコミュニケーションや軋轢が特別なものではないことです。本当に日常で起こりうるありがちな問題を扱っています。単に不仲になった人と関係を切って済むのであれば事は簡単ですが、その仲違いによって自信を失ってしまったり、深く傷ついてしまったり、他者を憎むようになってしまうことがあることは意外と見過ごされやすい部分です。人は社会を築き、他者と何らかの関係を通じて自らの地位や自信を持ち役割を全うしていく存在です。その歯車が上手くかみ合わなくなったときに自分だけでなく他者をも巻き込んで不幸の連鎖を作りだしかねないこと、その状態をどうやって克服していくかをここまでのエピソードで描き出しています。
③エレン・フェアリートーン編(24話~31話)
セイレーンが響奏と友達になり学校に入るエピソード。夏休みと新学期に合わせて、セイレーンが日常的に加音町にとけ込んでいく様子が描かれています。先にも書いたように、響・奏とセイレーン・ハミィは独立的な関係でしたがここで融和していきます。これまでの話しのような複雑な関係性の描写や距離の詰め方はせず、新しい友達や環境に馴染んでいくことで楽しい体験や成長があることを見せています。
3人の絆の醸成を変身シーンの統合、メイジャーでの試練、ハーモニーパワーの強化、新必殺技の習得といった形でステップを踏みながら明示しています。締めの話しとなる合宿エピソードが示しているように他者との協力、連帯を通じてお互いの心を通じ合わせていくことに力点が置かれています。
ハミィとセットで行動していたフェアリートーンが自律的に行動し始めるのもこの時期です。これは子ども向けの楽しいエピソードとなっていますが、人間味が強まったハミィからフェアリートーンに妖精のポストが移行したとも考えられます。また、玩具の付属品的な位置にあったフェアリートーンに人格を持たせたことで、その上位者であるクレッシェンドトーンの意味付けを強めています。音の源である彼女は神格的な位置にあると言えます。
フェアリートーンの自律化はドドリーにも当てはまるため、次のアコ編にてミューズと分離化されていきます。
④アコ編(32話~41話、劇場版含む)
キュアミューズの正体、アフロディテとメフィストの関係、真の敵ノイズ登場など物語の真相が次々と判明します。アコの父親を求める姿、家族の絆を取り戻したいと願う姿はこれまでの響達の姿と重なり物語を重層的にしています。
アコから見てメフィストは父であり助けたい相手でしたが、響達から見れば悪党で倒すべき相手でした。認識の違い、ディスコミュニケーションがここでも見られます。しかし響達はこれまでの経験から相手の身になって考え、ミューズを信じメフィストも守らなければならない相手だと気付きます。アコもまた響達から学び、支えられてメフィストへと想いを届けています。それぞれの視点では見えなかったものが繋がることで可視化され、補い合うことで新たな道を開いていけることが示されています。このように本作は螺旋を描くように「誤解(誤認)-発見-結合」を繰り返しながら物語を深めています。
絆の崩壊と再生を描く中で、とりわけ本作は絆を結ぶことに重きを置いています。彼女達が直面し苦悩と不安に苛まされた最大の要因はコミュニケーションの難しさです。その本質は自己と他者の絶対的な隔たりです。これは誰もが突き当たる問題です。親しいようで知らない、一度親しかったがための軋轢、かつて親しい間柄だったことはその距離感を改めて強調しています。響達は他者を限られた範囲でしか知り得ません。疑心暗鬼や不安によって彼女達は最初から信頼して相手に向き合うことができない。響が奏と、ハミィがセイレーンと、アコがメフィストと絆を結びつつも自分達以外の関係に深く関与できなかったのは裏返せば対人関係の限界、信頼関係を築くことの難しさを物語っています。
人を信じられず不安や自己嫌悪に苦しみ傷つき傷つけることもあれば、相手から学び癒されることもあるでしょう。どちらも人間関係の裏と表であり根源的には同じところから発しています。紆余曲折を経ながらも響達はそうした人間関係の良い面を深め、拡張していくことで着実に成長し視野を広げています。
⑤ノイズ編(42話~48話)
不幸のメロディの完成、ノイズの復活、最終決戦、エピローグと怒濤の展開を繰り広げる最終章。これまで作中で提示されていた事柄が拡張・昇華されてフィナーレを迎えます。
プリキュアを主体にして見ると46話までほとんど活躍の機会がありません。42話~46話まで主導権を握っているのはプリキュア以外の人達です。クリスマスを盛り上げようとしたのは一般人でしたしバスドラ・バリトンは自分の意思でマイナーを抜けています。アフロディテやメイジャーの国民達も石化を厭わず音楽を演奏しました。これらは自由意思の発露です。彼らは恐れや苦しみをモノともせず自らの意思を通しています。プリキュア以外の人々の自立的意思を描くことで心を巡る対立軸がより鮮明になるとともに、プリキュアは何をするべきなのか、守る力とは何なのかが問われていきます。
ノイズが人の悲しみから生まれた存在であったこと、彼自身が悲しみ絶望していることによってこの物語が何と戦ってきたのかが鮮明になります。この物語は悲しみとの戦いであり人との戦いです。不可抗力、他者との摩擦。自己と他者、自分の中に生まれるネガティブな感情とのせめぎ合いが繰り返し行われてきました。
ノイズとの戦いは人間同士の争いと同じです。意見が異なる相手との対立、不幸に陥った人の自滅・破滅的な行為、生存競争等々、人間関係の軋轢そのものです。それは決して悪との戦いではありません。同じ心を持つ者同士の不幸な、あるいは必然的な対立です。しかしそれを通じて互いの心を分かち合い、判り合う未来もある。人の心は喜びにも悲しみにも染まる。けど、心が変わるということはそれだけ多くの未来があることを示しています。
この物語は戦い続ける人間の姿を描いています。しかしその戦いは相手を屈服させるための戦いではありません。より良い関係を作るための、心を強く豊かにするための戦いです。響達はそのことに気付きます。現にそうやって彼女達は絆を育み成長してきました。悲しみは決して無くならないし、他者との軋轢も生まれ続ける。しかしそれでもみんなが笑顔になれる未来を創ることができる。彼女達はそれを信じ実現させていきます。
悲しみ、喜び、様々な感情、親、子ども、友達、他者、様々な人々、全てが在り全てが繋がっていることが「スイート(suite)」に包括されています。また、人が変わりながら歩んでいくことを変身になぞらえることで「プリキュア」が日常においても意味を持つことが提示されています。日常に起こりうる困難を克服しながら他者とともに共生していく。「スイートプリキュア」の名はそれを体現しています。
最終話「ラララ~♪世界に響け、幸せのメロディニャ!」
○交響曲
①しあわせのスキャット
壊れた調べの館。奏とアコは思い詰めたようにピクリともせず佇んでいます。セイレーンも黙したままギターの調律を続けています。響が館の奥からカップケーキを見つけて持ってきます。
ノイズの力によってあらゆるものが石化しましたが音吉さんのバリアに守られたおかげでいくつか石化を免れたようです。ギターもその一つ。響は明るくみんなにカップケーキを配ります。ありがとう、と受け取る3人。しかし表情は固い。ピアノの椅子に腰掛けた奏の視線の先には眠り続けるハミィの姿。丸一日目を覚ましません。
ソリーに尋ねられたセイレーンは幸せのメロディを唄わないと答えます。正式な歌姫であり前回の立役者であるハミィを差し置いて唄う気はありません。その横で、響はノイズとのことを思い返します。その表情に不安の影はなく明るく希望に満ちたりています。彼と全力で戦い、想いを伝え合い心に届いたからでしょう。あの戦いは彼女達にとって新しい絆と強さ、そして幸せを生むものでした。
ノイズが消えた後、上空にハミィと楽譜、音符達が出現。ハミィは残った力で音符を楽譜に集めます。滝のように楽譜へ吸い込まれる音符。それを見届けるとハミィは意識を失い楽譜に守られて地面へと落ちます。同時に石化したトリオ達も落下。良かった、彼らのこと忘れられていたのかと心配になりました。ちゃっかり三銃士の格好に戻っています。
ハミィが幸せのメロディを唄ってくれたら…呟く響。セイレーンが気付くと響は言葉を飲み込みハミィが元気に目覚められるような歌を唄って欲しいと頼みます。響の呟きは彼女にとっても、この物語にとっても気付かれにくかった真実だと思います。常に傍にいて、笑顔を崩さなかったおとぼけ猫。ハミィがいればどんな緊張場面でも笑いに変えられる。彼女は幸せを招く猫でした。
ギターを構えるとセイレーンは唄います。「エレンの歌」として作曲されたとサントラ2に書いてありました。ハミィは幸せのメロディをセイレーンと一緒に唄うことを望んでいましたが結局一人で唄うことになります。が、こうやってセイレーンの歌が入ることである種の組曲になっているんですね。彼女の歌が次ぎの歌を招く。
セイレーンが唄っている間、ノイズの言葉が反芻されます。人がいる限り悲しみは消えることはない。悲しみの中から生まれ、人がいる限り永遠に生まれ続けるノイズ。ここでこのセリフを出してくるスイートの本気ぶりが凄い。一切妥協することなく物語を締めくくろうとしている。子ども番組としてのスタンスはおそらく大きく分けて2つある。子どもにも判るように明るく楽しくのスタンス、もう一つは難しくなってもシーンが重くなっても作り手が伝えたいことをそのまま伝えようとするスタンス。どちらに舵を切るか、重きを置くかはプリキュアでもその時々で変わるんだけど、後者のスタンスを取り入れることを辞さないのが本作の魅力です。本気で悩んで、本気で泣いて、本気で笑う彼女達と一年一緒に居られることはとても幸せです。
響はノイズの言葉を思い返しながら、あのときハミィも自分と同じことを思ったはず、だからはやく目を覚まして世界をあなたの幸せの声で包み込んでと願います。ある人との再会を響は待ち望んでいます。
②幸せの招き猫
気付くと響は花畑に居ます。ハミィが居ますが響に気付かず花と戯れています。セイレーン、奏、アコもいます。どうやらハミィの夢の中らしい。セイレーンの歌がハミィを想うみんなの気持ちに反応したのだと推測するアコ。心象世界みたいなものでしょうか。映画でもありました。
ではどうすればいいのか。途方に暮れます。ハミィは楽しいときは唄おうとセイレーンを呼びます。みんなを見つけられないハミィ。彼女に話しかけても声が届きません。セイレーンは再び唄い出します。するとハミィに歌が届きます。セイレーンの姿を探すハミィ。
セイレーンは響達にも歌を促します。響、奏、セイレーン、アコは一緒に唄います。ハミィのために。最終回で気付きましたが、セイレーンって身長一番高かったんだなぁ。あと、毎回奏の白ニーソ太ももばかり言ってましたが、セイレーンの黒ニーソ太ももも好きです。スカートの2段フリルと相まって可愛い。
「泣かないでハミィ」
「私達ハミィのおかげで一緒になれた」
「おっちょこちょいで天然ボケの子猫ちゃんだけど」
「ハミィがいないと何も始まらない」
「だから早く起きておいで」
唄い終わり再び調べの館。椅子に腰掛けた奏のスカートとニーソの間の通称絶対領域が素敵です。
ハミィは目を覚まします。
「みんなありがとニャ」
「ハミィはこんなに幸せな気持ちになれたのは初めてニャ。みんなの歌がハミィに幸せをくれたのニャ」
「みんな心で繋がれたね」
「セイレーンのおかげニャ。みんなが来てくれて本当に嬉しかったニャ。ありがとニャセイレーン」
「セイレーンの分も頑張って幸せのメロディを唄うニャ」
「あったりまえでしょう、しっかり唄って世界を幸せにしないと承知しないわよ」
「さあ、行こうみんなの幸せを取り戻しに」
正直に言うと、不覚にも初見で何故Aパートまるまる使ってこのエピソードをやったのか気付きませんでした。これを書いている今このとき判りました。ハミィは幸せを招く猫だったんですね。常に笑顔を絶やさずみんなを明るく楽しくさせるムードメーカー。歌を愛し歌で想いを伝える歌手。彼女の旅路からこの物語は始まり響、奏、セイレーン、アコは出会った。彼女の行動はプリキュアにおいて本質的に正しい。人を信じ決して諦めることなく笑顔を見せ続ける。直接戦うことはないけど紛れもなく彼女が居たからこそ今の響達、ノイズを救った世界がある。みんなを愛した子猫を今度はみんなが愛する。ハミィのこれまで一貫した行動、姿勢を思い返すと彼女が幸せのメロディの歌い手に相応しいのだと改めて実感します。響達とハミィとの関係は割とすっ飛ばされていた感があったんですが、最終回に持って来ることで全体として綺麗に構成されていることに気付きます。ある意味でこの1年のハミィの旅路は歌い手としての資質を証明するものであったとも言えます。
Aパートまるまる使って、この物語の影の功労者を称え愛し今一度彼女達の歌(繋がり、絆)によって世界に幸せのメロディを届ける準備をしています。スイートプリキュアの主力商品への労いと感謝。彼女で飯を食っていた作り手の愛情を感じます。この1年ハミィと一緒に遊んできた視聴者の言葉を代弁。みんなハミィを必要としている。
プリキュアが、主人公の響が、世界に幸せを届けるのではない。みんなが紡いで、あるときは誰かにみんなの想いを託して届ける。
③幸せのメロディ
宮殿のアフロディテ達が居る場所へ移ります。石化した母の姿にアコはいたたまれなくなります。その彼女の肩を奏は掴みます。安心させるように頷いてみせる奏。アコも表情を崩します。忘れずにトリオも宮殿へ運んでいます。
楽譜をセット。
「行くニャよ~!」
「頑張って~!」
ハミィに声援を贈るセイレーン。改めてこのふたりの関係も変わったんだとしみじみ思う。
そんな軽いノリなの…?と戸惑う3人をよそに、セイレーンは真剣にハミィを見つめます。セイレーンの眼差しを見た響はハッとしてハミィの方へ視線を向け直します。今まさに唄い始めようとするハミィの姿は、普段と何一つ変わることがないはずなのにどこか神々しく周囲の空気を変えています。呆然と衝撃を受けたようにそれを見つめる響。おそらくこの体験は響にとって大きな意味を持つだろうと思う。一流の音楽家を目の前で見るのだから。
歌が始まります。音符が楽譜に染みこんでいきます。その歌声に奏はなんて綺麗なメロディ…と感嘆。隣にいる響はもはや無言で見つめます。セイレーンはとても満足げな表情を浮かべています。彼女がかつて嫉妬しそして今期待した美しい歌。ハミィの歌が広がりアフロディテの石化が解けます。
アコは堪らず母に走り寄って胸に飛び込みます。抱擁する母と子。同じく石化が解けた国民達はこの場の空気を完璧に読みます。お互いに目配せすると楽器を演奏。オーケストラにハミィの歌声が乗ります。アフロディテはついにノイズを倒したのね、と娘を労います。後の音吉さんの反応を見てもそうですが、ノイズへの感情は一般人のそれとプリキュアとでは異なります。アコは泣きながらママ、ママと呼びます。母子の再会に響は泣き、奏も潤みます。
バスドラ達も目を覚まします。気付いたセイレーンは彼らが目覚めたことに安堵します。ようやくバスドラ達は自分達が助かったことに気付きます。ファルセットを気遣うバスドラは結構良い奴です。
感激したトリオは「セイレ~ン♪」とセイレーンに飛びつきます。おいおい泣きながら一生付いていきますとか言っちゃってんのが面白い。それに「やっかましいわ!」と答えるセイレーンもなかなかのものです。久しぶりに聞きました。セイレーンがマイナーに居たころに言っていたセリフです。マイナーに居た頃とは色々変わりましたが、この4人も新しい形を築いていくのかもしれません。っていうか、メイジャーを守る三銃士が猫にかしずくってどうなの。
アフロディテはハミィに礼を言うとアコと一緒にメフィストのもとへと向かいます。アフロディテに肯き返しながらハミィは唄い続けます。響と奏は宮殿から外の景色を眺めます。幸せのメロディが広がりメイジャーを元の鮮やかな色へと変えていきます。石版に封じられた音吉さんとクレッシェンドトーンも宮殿へ還ってきます。
メイジャーに虹の橋が架かります。虹を見つめながら幸せが降り注いでいるみたいと話す響。ここで五色(ピンク、橙、黄色、緑、青)の虹が架かっているのはスマイルへの橋渡しを込めているのでしょう。後輩思いの良い先輩です。プリキュアの意志を継いだ本作もまた新しい物語に託して幕を閉じる。プリキュアの組曲は終わることなく続いていく。
メフィストも目を覚まします。父に抱きつくアコ。
幸せのメロディは人間界に届いているはずだとセイレーンは答えます。これでみんな新しい音楽を奏でられる。
「もう一つの声もきっと新しい音楽を口ずさんでくれるはず」
「そしたら私達も鼓動のファンファーレを響かせよう。それぞれの夢に向かって」
よくぞここまで。他者との関わりに不安を抱いていた彼女は、他者と共に在る世界を歩む。
歌が終わり、改めてアフロディテとメフィストは響達にお礼を述べます。迷惑をかけてすまなかったと話すメフィストに、音吉さんはまったくじゃ、と答えます。どっちかってーと勝手に無茶したような気がするんですけどね、あなたは。クレッシェンドトーンももうアコに心配をかけるなと念を押します。アコは彼らのやり取りを明るい表情で見つめます。彼女の表情から父に対する信頼が見えます。
アフロディテはハミィの歌を褒めます。ハミィはセイレーンが一緒に居てくれたおかげだと素直に照れることなく言います。ハミィを抱いていたセイレーンの頬が染まります。まさか最終回でハミィとセイレーンのバカップルぶりを見せつけられるとは。
戦艦調べの館で人間界に戻ります。………。やっぱりあれで戻るんだ。行きと同じく帰りもシュール。メイジャーの人々は歓声をあげてプリキュア達を見送ります。アコはしばらく人間界に滞在するようです。メイジャーに手を振って応える響と奏。みんなに笑顔が戻ったことを喜びます。この笑顔を見るために彼女達は諦めずに戦い抜きました。
④みんなの組曲
ズドーン。調べの館が元の位置に着陸します。本当に轟音立てて着陸したよ。しかもなんか1mくらい高さ違くね? 完全に元の位置に納まってないよね、それ。
響達は様子を伺うようにしてみんなが居る広場が見る位置まで移動します。娘達の姿にまりあさんが気付くと、響は喜び勇んで母のもとへ段差を飛び降りて走り寄ります。……何故だろう、感動の場面なのになんか一手間多い。どこに行ったのかと思ったと訊く母に響は調べの館に…と答えます。ついさっきまで無かったけどね。
奏の家族も何をやっていたのかと尋ねます。なにがなんだか…と曖昧に答える奏。私もなにがなんだか判りません。最終回の感動的な場面なはずなのに、文字どおりピースが綺麗に収まってねぇ。どうするんだろ、あの段差。それが気になってしょうがない。頼むから誰か突っ込んでくれ。
奏太はアコになんともなさそうだな、といつもの軽口で言います。アコは奏太も元気そうで良かったと気遣いを見せます。
聖歌は怖い怪獣が現れたと思ったらいつの間にかここにいて…と不思議がります。和音もそんな目に遭ったら不安でしかたないのに何故かそんな気持ちにならないと言います。王子先輩は満ち足りた気分で何も心配いらないと思えると不思議がります。彼らの言葉にポカンとする響達。響の両親は聴いているだけで幸せになれる素晴らしい歌を聴いたと言います。調べの館からハミィは彼らの姿を見下ろします。彼女の歌声は世界を超えて人々に届く。
普通に考えてあの段差の必然性は低いです。段差が無くても話しに支障はないし、無い方が見る側も違和感を覚えません。おそらくですが、地響きを立てて外の様子を伺いみんなと再会するというシーンは震災を意識しているのだと思います。不安な出来事、みんなは無事なんだろうかと心配した体験を再現しているのだと思います。しかしみんなは不安よりも安心や幸せな気分になっている。それは震災を通じて生まれた絆を比喩しているのかもしれませんし、プリキュアを見てきた視聴者の声として表現しているのかもしれません。いずれにせよ、恐ろしい体験、不安な気持ちがこのシーンにおいても解消されみんなが再会を祝い安心していることが強調されています。話しの繋がりとしては若干損なう面がありますが、本作を製作した方々の想いがあったのだと思います。
夕方になり両親達は家路につきます。調べの館に残る響達。帰らないのかと尋ねる音吉さんに響はもう少し待ってみたいと答えます。やっぱりそうなんだ。彼女達は最初からこれを待っていたんですね。なんのことだか判らない音吉さんに響は笑みを返します。マジやべぇ。超可愛い。益々困惑する音吉さん。
響は話しを変えて、ハミィにみんなを幸せにしてくれてありがとうとお礼を言います。響の言葉に続いて奏達もお礼を言います。ハミィは素直に喜びます。奏の下からのアングルが熱い。座ったときに太ももの下側が見えるって良いと思うんだよね。
「ピー!」
聞き覚えのある鳴き声がします。その声に警戒する音吉さんとクレッシェンドトーン。
ブロックの上に佇む白……驚きの白さ。もしかしたら漂白されているかもしれないと思ってたけど本当に真っ白になってるよ!
「ノイズ!」
「ピーちゃん!」
駆け寄る響達に音吉さんは戸惑います。
「おいでピーちゃん」
ピーちゃんを抱き寄せる響。
「おかえり、ぴーちゃん」
「待ってたよ」
再会を待ち望んでいた相手に優しい声で呼びかけます。音吉さんはそいつはノイズだと驚いて叫びます。
「音吉さん、いくら幸せの世界になっても悲しみや苦しみが全て消えるわけじゃないわ」
「私達はピーちゃんを受け入れた上で前に進みたいの」
「悲しみを見ない振りをするのは幸せとは言えないもの」
「よく見れば可愛いよ」
なんと…! 音吉さんは心底驚いて彼女達を見つめます。子どもだと思っていた彼女達はいつの間にか成長し大人になっていました。なるほど、こういう提示をしてくるのか。本当に真っ直ぐな作品です。ノイズと悲しみと喜びを分かち合ったプリキュア達以外はまだノイズに抵抗があるでしょう。一気呵成には、順風満帆には進まない。しかし一つ一つ、一歩一歩進めていくことは出来る。
「ピーちゃん、これからはずっと一緒だからね」
ピーちゃんは鳴きながら涙を浮かべます。響の言葉どおりみんなと一緒にいられる喜び、悲しみ以外の涙を彼は知った。全ての人に悲しみがあるように、全ての人に喜びがある。
それはそうと、確かによく見れば愛嬌があって可愛……いくねーよ。アコちゃんの美的感覚に疑問を抱きます。
「見守りましょう、彼女達がどんな音楽を奏でていくのかを」
「これでみんな一緒に夢に向かって進めるね」
「うん」
「私達はまだまだ変われる。新しい明日に向かって変身するのよ!」
「レッツ!プレイ!プリキュア!モジュレーション!」
スイートプリキュア最後の、そして彼女達の新たな変身。スイートの音楽の使い方はカッコイイ。変身BGMが先に出ることで期待感が高まります。
スイーツ部でいつものようにケーキを作る奏。部員にアドバイス。
公園でセイレーンは演奏。ハミィも一緒に居ます。
アコは学校の友達と一緒。奏太以外にも友達が出来たでしょうか。
響は父にピアノを教えてもらいます。
演奏会。みんなが見守る中で、深紅のドレスに身を包んだ響は自ら楽しみながらみんなにそれを伝えるようにピアノを奏でます。
「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」
「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」
「爪弾くは魂の調べ! キュアビート!」
「爪弾くは女神の調べ! キュアミューズ!」
「届け! みんなの組曲! スイートプリキュア!」
○トピック
プリキュアシリーズ8年目、6代目プリキュアここに閉幕。
苦しみ悲しみながらも生きる人間の賛歌を謳った本作に心から感謝を申し上げたい。
1年間毎週欠かさず視聴しながら、彼女達の苦しみと悩み、喜びと笑顔、想いを一緒に分かち合ってきたと勝手ながら思っています。番組の途中で震災が起こり私自身大変な思いをしましたし、本作もその影響でシナリオを変えたとも聞き及んでいます。その上で、苦しみや悲しみから目を背けずに真っ直ぐに進んだ本作はまさにプリキュアの意志を継いで見事な組曲、交響曲を奏でています。この1年、プリキュアを見続けてきた8年を私は幸福な時間であったと確信しています。毎年プリキュアを見ながら新しいことを学び、知り、感想書くために無い頭振り絞って自分の考えをまとめて散文にして書き綴ってきました。それがどれだけ役に立ったのかは我ながら微妙なところではあるのですが、私がいかなる時であっても前を向き続けられたのは本シリーズの影響が大きいです。
まるまる1話エピローグに費やしたわけですが、最後まで前に進み続けるのには恐れ入りました。徹頭徹尾絆を結ぶことに重きを置いた作品です。
幸せのメロディの歌い手としてハミィが選ばれたことは1話から視聴者みんな知っています。どうして彼女が選ばれたのか。歌が上手いからだけではありません。彼女が幸せのメロディの歌い手として必要な資質を持っていたからです。歌を愛し、歌で想いを届け、常に笑顔を絶やさずみんなを元気づけてきた彼女の性格は普通だったら主人公向きです。その資質の一端がノイズとの戦いに現れています。そのハミィはみんなにとってどういう存在だったのか。このエピソードを通じて彼女の存在の大きさ、歌い手としての説得力、彼女がみんなに笑顔を与えてきたようにみんなが彼女に幸せを与える絆の連鎖、誰かに託すことの尊さが描かれています。
みんなで唄うことは楽しいだろうし美しい。けど必ずしもみんなで一つのことをやるわけではありません。誰かが選ばれその人に託さなければならない時があります。競争原理や職業選択が一番身近な話題でしょう。この世界はそれぞれがそれぞれに出来ること、やらねばならないことを行うことで成り立っている世界です。幸せのメロディを唄うのは確かにハミィだけど、それもまたハミィを支える人、彼女の声を聴きたいと願う人があってのことです。スイートは組曲であり、常に一つである必要は無い。前段が中段へ、さらに後段へと続くようにお互いに関わり合い繋がり合うことに価値と尊さを見出した本作らしい幸せのメロディの演奏です。
そしてピーちゃんとの再会。彼を笑顔に変えたことで全ての悲しみが幸せへと続いていることは前回証明しています。もはや彼は悲しみ嘆くだけの存在ではない。生まれ変わった彼は悲しみから生まれつつもその悲しみから喜びが、幸せが、笑顔が生まれることを知っている存在へと変わっています。彼との再会を待ち望んでいた響達は本当に素晴らしい。宿敵をも友達にして一緒居たいと願う彼女達の変化、悲しみと共に人はあるべきだという意志、いずれにおいてもこの物語が1年をとおして紡いできたことの答えです。彼女達が言うとおり人は変わっていく。人を知り世界を見ながら生を豊かなものへと変えていく。変わることを積極的に肯定しています。だからこそ最後に変身するんです。敵と戦うための変身ではない、新しい自分になるための変身。
プリキュアは歴史的に見て日常と非日常(戦闘)の対比と相克が行われています。プリキュアは日常のために戦う。日常が最も尊く、それを守るために戦います。しかしシリーズを経るにしたがって日常と非日常が同化していきました。プリキュアに変身することは決して敵と戦うだけの意味に留まりません。むしろ逆です。日常の中に戦いがある。誤解やすれ違い、諦めや憎悪、罪、それらと戦うことを通じて彼女達は成長しています。プリキュアとして戦うということは、日常の中で戦い克服し成長して豊かな日常をおくるための大切な戦いなのです。スイートはプリキュアの力を誰かを守る力だと云いました。それは他者と繋がり絆を結び育んでいく力です。これからも響達はまた同じような苦しみや誤解、ケンカを重ねるでしょう。しかしそれでも彼女達はこの世界を、人の心を肯定するはずです。何故なら全ての悲しみは幸せに通じているからです。ふたりの組曲が3人の組曲に、さらに4人の組曲に、そしてみんなの組曲となった彼女達の変身は本作を締めくくるに相応しい見事なフィナーレです。
ラスボスを倒しても日常は続く。それはハートキャッチでもやっていました。スイートは人が変わりながら歩んでいくことを「変身」に託してメッセージを送っています。換言すれば常に苦楽を乗り越えながら進み続ける人はみなプリキュアであるとも言えるでしょう。スイートらしいプリキュアの提示です。初代からハートキャッチまで5代のプリキュアがありましたがそのどれもがそれぞれのプリキュアらしさを提示し受け継いできました。本作もまたその歴史に名を残しています。プリキュアが続く限りプリキュアは変わりながら新しい価値を創造していくのだろうと思います。組曲の名を冠した本作は一個の作品として、またシリーズを包括する作品として「プリキュア」を提示しています。
改めて、この一年を強く真っ直ぐに絆を紡いで歩んだスイートプリキュアに敬意と、初代から変わることなく脈々と受け継いできたプリキュアの意志に称賛を贈りたい。毎年同じようなことを言っているんですが、毎年同じ、いや年を経る毎に深まっていく感動を与えてくれるプリキュアがおかしいんです。なんで作っている人が変わっているのにこうも昇華され続けていくんだろう。人によってプリキュアとの付き合い方や期間は違いますが、初代から8年付き合い続けてきた私にとって本シリーズは親友であり師であり嫁です(一言余計)。常に可愛く、毎回作画が変わって、設定がチグハグで、時にぶっ飛んでいて、どんな宝石よりも美しく輝いて見える高潔な意志を宿した物語。この作品の全てが大好きです。
①しあわせのスキャット
壊れた調べの館。奏とアコは思い詰めたようにピクリともせず佇んでいます。セイレーンも黙したままギターの調律を続けています。響が館の奥からカップケーキを見つけて持ってきます。
ノイズの力によってあらゆるものが石化しましたが音吉さんのバリアに守られたおかげでいくつか石化を免れたようです。ギターもその一つ。響は明るくみんなにカップケーキを配ります。ありがとう、と受け取る3人。しかし表情は固い。ピアノの椅子に腰掛けた奏の視線の先には眠り続けるハミィの姿。丸一日目を覚ましません。
ソリーに尋ねられたセイレーンは幸せのメロディを唄わないと答えます。正式な歌姫であり前回の立役者であるハミィを差し置いて唄う気はありません。その横で、響はノイズとのことを思い返します。その表情に不安の影はなく明るく希望に満ちたりています。彼と全力で戦い、想いを伝え合い心に届いたからでしょう。あの戦いは彼女達にとって新しい絆と強さ、そして幸せを生むものでした。
ノイズが消えた後、上空にハミィと楽譜、音符達が出現。ハミィは残った力で音符を楽譜に集めます。滝のように楽譜へ吸い込まれる音符。それを見届けるとハミィは意識を失い楽譜に守られて地面へと落ちます。同時に石化したトリオ達も落下。良かった、彼らのこと忘れられていたのかと心配になりました。ちゃっかり三銃士の格好に戻っています。
ハミィが幸せのメロディを唄ってくれたら…呟く響。セイレーンが気付くと響は言葉を飲み込みハミィが元気に目覚められるような歌を唄って欲しいと頼みます。響の呟きは彼女にとっても、この物語にとっても気付かれにくかった真実だと思います。常に傍にいて、笑顔を崩さなかったおとぼけ猫。ハミィがいればどんな緊張場面でも笑いに変えられる。彼女は幸せを招く猫でした。
ギターを構えるとセイレーンは唄います。「エレンの歌」として作曲されたとサントラ2に書いてありました。ハミィは幸せのメロディをセイレーンと一緒に唄うことを望んでいましたが結局一人で唄うことになります。が、こうやってセイレーンの歌が入ることである種の組曲になっているんですね。彼女の歌が次ぎの歌を招く。
セイレーンが唄っている間、ノイズの言葉が反芻されます。人がいる限り悲しみは消えることはない。悲しみの中から生まれ、人がいる限り永遠に生まれ続けるノイズ。ここでこのセリフを出してくるスイートの本気ぶりが凄い。一切妥協することなく物語を締めくくろうとしている。子ども番組としてのスタンスはおそらく大きく分けて2つある。子どもにも判るように明るく楽しくのスタンス、もう一つは難しくなってもシーンが重くなっても作り手が伝えたいことをそのまま伝えようとするスタンス。どちらに舵を切るか、重きを置くかはプリキュアでもその時々で変わるんだけど、後者のスタンスを取り入れることを辞さないのが本作の魅力です。本気で悩んで、本気で泣いて、本気で笑う彼女達と一年一緒に居られることはとても幸せです。
響はノイズの言葉を思い返しながら、あのときハミィも自分と同じことを思ったはず、だからはやく目を覚まして世界をあなたの幸せの声で包み込んでと願います。ある人との再会を響は待ち望んでいます。
②幸せの招き猫
気付くと響は花畑に居ます。ハミィが居ますが響に気付かず花と戯れています。セイレーン、奏、アコもいます。どうやらハミィの夢の中らしい。セイレーンの歌がハミィを想うみんなの気持ちに反応したのだと推測するアコ。心象世界みたいなものでしょうか。映画でもありました。
ではどうすればいいのか。途方に暮れます。ハミィは楽しいときは唄おうとセイレーンを呼びます。みんなを見つけられないハミィ。彼女に話しかけても声が届きません。セイレーンは再び唄い出します。するとハミィに歌が届きます。セイレーンの姿を探すハミィ。
セイレーンは響達にも歌を促します。響、奏、セイレーン、アコは一緒に唄います。ハミィのために。最終回で気付きましたが、セイレーンって身長一番高かったんだなぁ。あと、毎回奏の白ニーソ太ももばかり言ってましたが、セイレーンの黒ニーソ太ももも好きです。スカートの2段フリルと相まって可愛い。
「泣かないでハミィ」
「私達ハミィのおかげで一緒になれた」
「おっちょこちょいで天然ボケの子猫ちゃんだけど」
「ハミィがいないと何も始まらない」
「だから早く起きておいで」
唄い終わり再び調べの館。椅子に腰掛けた奏のスカートとニーソの間の通称絶対領域が素敵です。
ハミィは目を覚まします。
「みんなありがとニャ」
「ハミィはこんなに幸せな気持ちになれたのは初めてニャ。みんなの歌がハミィに幸せをくれたのニャ」
「みんな心で繋がれたね」
「セイレーンのおかげニャ。みんなが来てくれて本当に嬉しかったニャ。ありがとニャセイレーン」
「セイレーンの分も頑張って幸せのメロディを唄うニャ」
「あったりまえでしょう、しっかり唄って世界を幸せにしないと承知しないわよ」
「さあ、行こうみんなの幸せを取り戻しに」
正直に言うと、不覚にも初見で何故Aパートまるまる使ってこのエピソードをやったのか気付きませんでした。これを書いている今このとき判りました。ハミィは幸せを招く猫だったんですね。常に笑顔を絶やさずみんなを明るく楽しくさせるムードメーカー。歌を愛し歌で想いを伝える歌手。彼女の旅路からこの物語は始まり響、奏、セイレーン、アコは出会った。彼女の行動はプリキュアにおいて本質的に正しい。人を信じ決して諦めることなく笑顔を見せ続ける。直接戦うことはないけど紛れもなく彼女が居たからこそ今の響達、ノイズを救った世界がある。みんなを愛した子猫を今度はみんなが愛する。ハミィのこれまで一貫した行動、姿勢を思い返すと彼女が幸せのメロディの歌い手に相応しいのだと改めて実感します。響達とハミィとの関係は割とすっ飛ばされていた感があったんですが、最終回に持って来ることで全体として綺麗に構成されていることに気付きます。ある意味でこの1年のハミィの旅路は歌い手としての資質を証明するものであったとも言えます。
Aパートまるまる使って、この物語の影の功労者を称え愛し今一度彼女達の歌(繋がり、絆)によって世界に幸せのメロディを届ける準備をしています。スイートプリキュアの主力商品への労いと感謝。彼女で飯を食っていた作り手の愛情を感じます。この1年ハミィと一緒に遊んできた視聴者の言葉を代弁。みんなハミィを必要としている。
プリキュアが、主人公の響が、世界に幸せを届けるのではない。みんなが紡いで、あるときは誰かにみんなの想いを託して届ける。
③幸せのメロディ
宮殿のアフロディテ達が居る場所へ移ります。石化した母の姿にアコはいたたまれなくなります。その彼女の肩を奏は掴みます。安心させるように頷いてみせる奏。アコも表情を崩します。忘れずにトリオも宮殿へ運んでいます。
楽譜をセット。
「行くニャよ~!」
「頑張って~!」
ハミィに声援を贈るセイレーン。改めてこのふたりの関係も変わったんだとしみじみ思う。
そんな軽いノリなの…?と戸惑う3人をよそに、セイレーンは真剣にハミィを見つめます。セイレーンの眼差しを見た響はハッとしてハミィの方へ視線を向け直します。今まさに唄い始めようとするハミィの姿は、普段と何一つ変わることがないはずなのにどこか神々しく周囲の空気を変えています。呆然と衝撃を受けたようにそれを見つめる響。おそらくこの体験は響にとって大きな意味を持つだろうと思う。一流の音楽家を目の前で見るのだから。
歌が始まります。音符が楽譜に染みこんでいきます。その歌声に奏はなんて綺麗なメロディ…と感嘆。隣にいる響はもはや無言で見つめます。セイレーンはとても満足げな表情を浮かべています。彼女がかつて嫉妬しそして今期待した美しい歌。ハミィの歌が広がりアフロディテの石化が解けます。
アコは堪らず母に走り寄って胸に飛び込みます。抱擁する母と子。同じく石化が解けた国民達はこの場の空気を完璧に読みます。お互いに目配せすると楽器を演奏。オーケストラにハミィの歌声が乗ります。アフロディテはついにノイズを倒したのね、と娘を労います。後の音吉さんの反応を見てもそうですが、ノイズへの感情は一般人のそれとプリキュアとでは異なります。アコは泣きながらママ、ママと呼びます。母子の再会に響は泣き、奏も潤みます。
バスドラ達も目を覚まします。気付いたセイレーンは彼らが目覚めたことに安堵します。ようやくバスドラ達は自分達が助かったことに気付きます。ファルセットを気遣うバスドラは結構良い奴です。
感激したトリオは「セイレ~ン♪」とセイレーンに飛びつきます。おいおい泣きながら一生付いていきますとか言っちゃってんのが面白い。それに「やっかましいわ!」と答えるセイレーンもなかなかのものです。久しぶりに聞きました。セイレーンがマイナーに居たころに言っていたセリフです。マイナーに居た頃とは色々変わりましたが、この4人も新しい形を築いていくのかもしれません。っていうか、メイジャーを守る三銃士が猫にかしずくってどうなの。
アフロディテはハミィに礼を言うとアコと一緒にメフィストのもとへと向かいます。アフロディテに肯き返しながらハミィは唄い続けます。響と奏は宮殿から外の景色を眺めます。幸せのメロディが広がりメイジャーを元の鮮やかな色へと変えていきます。石版に封じられた音吉さんとクレッシェンドトーンも宮殿へ還ってきます。
メイジャーに虹の橋が架かります。虹を見つめながら幸せが降り注いでいるみたいと話す響。ここで五色(ピンク、橙、黄色、緑、青)の虹が架かっているのはスマイルへの橋渡しを込めているのでしょう。後輩思いの良い先輩です。プリキュアの意志を継いだ本作もまた新しい物語に託して幕を閉じる。プリキュアの組曲は終わることなく続いていく。
メフィストも目を覚まします。父に抱きつくアコ。
幸せのメロディは人間界に届いているはずだとセイレーンは答えます。これでみんな新しい音楽を奏でられる。
「もう一つの声もきっと新しい音楽を口ずさんでくれるはず」
「そしたら私達も鼓動のファンファーレを響かせよう。それぞれの夢に向かって」
よくぞここまで。他者との関わりに不安を抱いていた彼女は、他者と共に在る世界を歩む。
歌が終わり、改めてアフロディテとメフィストは響達にお礼を述べます。迷惑をかけてすまなかったと話すメフィストに、音吉さんはまったくじゃ、と答えます。どっちかってーと勝手に無茶したような気がするんですけどね、あなたは。クレッシェンドトーンももうアコに心配をかけるなと念を押します。アコは彼らのやり取りを明るい表情で見つめます。彼女の表情から父に対する信頼が見えます。
アフロディテはハミィの歌を褒めます。ハミィはセイレーンが一緒に居てくれたおかげだと素直に照れることなく言います。ハミィを抱いていたセイレーンの頬が染まります。まさか最終回でハミィとセイレーンのバカップルぶりを見せつけられるとは。
戦艦調べの館で人間界に戻ります。………。やっぱりあれで戻るんだ。行きと同じく帰りもシュール。メイジャーの人々は歓声をあげてプリキュア達を見送ります。アコはしばらく人間界に滞在するようです。メイジャーに手を振って応える響と奏。みんなに笑顔が戻ったことを喜びます。この笑顔を見るために彼女達は諦めずに戦い抜きました。
④みんなの組曲
ズドーン。調べの館が元の位置に着陸します。本当に轟音立てて着陸したよ。しかもなんか1mくらい高さ違くね? 完全に元の位置に納まってないよね、それ。
響達は様子を伺うようにしてみんなが居る広場が見る位置まで移動します。娘達の姿にまりあさんが気付くと、響は喜び勇んで母のもとへ段差を飛び降りて走り寄ります。……何故だろう、感動の場面なのになんか一手間多い。どこに行ったのかと思ったと訊く母に響は調べの館に…と答えます。ついさっきまで無かったけどね。
奏の家族も何をやっていたのかと尋ねます。なにがなんだか…と曖昧に答える奏。私もなにがなんだか判りません。最終回の感動的な場面なはずなのに、文字どおりピースが綺麗に収まってねぇ。どうするんだろ、あの段差。それが気になってしょうがない。頼むから誰か突っ込んでくれ。
奏太はアコになんともなさそうだな、といつもの軽口で言います。アコは奏太も元気そうで良かったと気遣いを見せます。
聖歌は怖い怪獣が現れたと思ったらいつの間にかここにいて…と不思議がります。和音もそんな目に遭ったら不安でしかたないのに何故かそんな気持ちにならないと言います。王子先輩は満ち足りた気分で何も心配いらないと思えると不思議がります。彼らの言葉にポカンとする響達。響の両親は聴いているだけで幸せになれる素晴らしい歌を聴いたと言います。調べの館からハミィは彼らの姿を見下ろします。彼女の歌声は世界を超えて人々に届く。
普通に考えてあの段差の必然性は低いです。段差が無くても話しに支障はないし、無い方が見る側も違和感を覚えません。おそらくですが、地響きを立てて外の様子を伺いみんなと再会するというシーンは震災を意識しているのだと思います。不安な出来事、みんなは無事なんだろうかと心配した体験を再現しているのだと思います。しかしみんなは不安よりも安心や幸せな気分になっている。それは震災を通じて生まれた絆を比喩しているのかもしれませんし、プリキュアを見てきた視聴者の声として表現しているのかもしれません。いずれにせよ、恐ろしい体験、不安な気持ちがこのシーンにおいても解消されみんなが再会を祝い安心していることが強調されています。話しの繋がりとしては若干損なう面がありますが、本作を製作した方々の想いがあったのだと思います。
夕方になり両親達は家路につきます。調べの館に残る響達。帰らないのかと尋ねる音吉さんに響はもう少し待ってみたいと答えます。やっぱりそうなんだ。彼女達は最初からこれを待っていたんですね。なんのことだか判らない音吉さんに響は笑みを返します。マジやべぇ。超可愛い。益々困惑する音吉さん。
響は話しを変えて、ハミィにみんなを幸せにしてくれてありがとうとお礼を言います。響の言葉に続いて奏達もお礼を言います。ハミィは素直に喜びます。奏の下からのアングルが熱い。座ったときに太ももの下側が見えるって良いと思うんだよね。
「ピー!」
聞き覚えのある鳴き声がします。その声に警戒する音吉さんとクレッシェンドトーン。
ブロックの上に佇む白……驚きの白さ。もしかしたら漂白されているかもしれないと思ってたけど本当に真っ白になってるよ!
「ノイズ!」
「ピーちゃん!」
駆け寄る響達に音吉さんは戸惑います。
「おいでピーちゃん」
ピーちゃんを抱き寄せる響。
「おかえり、ぴーちゃん」
「待ってたよ」
再会を待ち望んでいた相手に優しい声で呼びかけます。音吉さんはそいつはノイズだと驚いて叫びます。
「音吉さん、いくら幸せの世界になっても悲しみや苦しみが全て消えるわけじゃないわ」
「私達はピーちゃんを受け入れた上で前に進みたいの」
「悲しみを見ない振りをするのは幸せとは言えないもの」
「よく見れば可愛いよ」
なんと…! 音吉さんは心底驚いて彼女達を見つめます。子どもだと思っていた彼女達はいつの間にか成長し大人になっていました。なるほど、こういう提示をしてくるのか。本当に真っ直ぐな作品です。ノイズと悲しみと喜びを分かち合ったプリキュア達以外はまだノイズに抵抗があるでしょう。一気呵成には、順風満帆には進まない。しかし一つ一つ、一歩一歩進めていくことは出来る。
「ピーちゃん、これからはずっと一緒だからね」
ピーちゃんは鳴きながら涙を浮かべます。響の言葉どおりみんなと一緒にいられる喜び、悲しみ以外の涙を彼は知った。全ての人に悲しみがあるように、全ての人に喜びがある。
それはそうと、確かによく見れば愛嬌があって可愛……いくねーよ。アコちゃんの美的感覚に疑問を抱きます。
「見守りましょう、彼女達がどんな音楽を奏でていくのかを」
「これでみんな一緒に夢に向かって進めるね」
「うん」
「私達はまだまだ変われる。新しい明日に向かって変身するのよ!」
「レッツ!プレイ!プリキュア!モジュレーション!」
スイートプリキュア最後の、そして彼女達の新たな変身。スイートの音楽の使い方はカッコイイ。変身BGMが先に出ることで期待感が高まります。
スイーツ部でいつものようにケーキを作る奏。部員にアドバイス。
公園でセイレーンは演奏。ハミィも一緒に居ます。
アコは学校の友達と一緒。奏太以外にも友達が出来たでしょうか。
響は父にピアノを教えてもらいます。
演奏会。みんなが見守る中で、深紅のドレスに身を包んだ響は自ら楽しみながらみんなにそれを伝えるようにピアノを奏でます。
「爪弾くは荒ぶる調べ! キュアメロディ!」
「爪弾くはたおやかな調べ! キュアリズム!」
「爪弾くは魂の調べ! キュアビート!」
「爪弾くは女神の調べ! キュアミューズ!」
「届け! みんなの組曲! スイートプリキュア!」
○トピック
プリキュアシリーズ8年目、6代目プリキュアここに閉幕。
苦しみ悲しみながらも生きる人間の賛歌を謳った本作に心から感謝を申し上げたい。
1年間毎週欠かさず視聴しながら、彼女達の苦しみと悩み、喜びと笑顔、想いを一緒に分かち合ってきたと勝手ながら思っています。番組の途中で震災が起こり私自身大変な思いをしましたし、本作もその影響でシナリオを変えたとも聞き及んでいます。その上で、苦しみや悲しみから目を背けずに真っ直ぐに進んだ本作はまさにプリキュアの意志を継いで見事な組曲、交響曲を奏でています。この1年、プリキュアを見続けてきた8年を私は幸福な時間であったと確信しています。毎年プリキュアを見ながら新しいことを学び、知り、感想書くために無い頭振り絞って自分の考えをまとめて散文にして書き綴ってきました。それがどれだけ役に立ったのかは我ながら微妙なところではあるのですが、私がいかなる時であっても前を向き続けられたのは本シリーズの影響が大きいです。
まるまる1話エピローグに費やしたわけですが、最後まで前に進み続けるのには恐れ入りました。徹頭徹尾絆を結ぶことに重きを置いた作品です。
幸せのメロディの歌い手としてハミィが選ばれたことは1話から視聴者みんな知っています。どうして彼女が選ばれたのか。歌が上手いからだけではありません。彼女が幸せのメロディの歌い手として必要な資質を持っていたからです。歌を愛し、歌で想いを届け、常に笑顔を絶やさずみんなを元気づけてきた彼女の性格は普通だったら主人公向きです。その資質の一端がノイズとの戦いに現れています。そのハミィはみんなにとってどういう存在だったのか。このエピソードを通じて彼女の存在の大きさ、歌い手としての説得力、彼女がみんなに笑顔を与えてきたようにみんなが彼女に幸せを与える絆の連鎖、誰かに託すことの尊さが描かれています。
みんなで唄うことは楽しいだろうし美しい。けど必ずしもみんなで一つのことをやるわけではありません。誰かが選ばれその人に託さなければならない時があります。競争原理や職業選択が一番身近な話題でしょう。この世界はそれぞれがそれぞれに出来ること、やらねばならないことを行うことで成り立っている世界です。幸せのメロディを唄うのは確かにハミィだけど、それもまたハミィを支える人、彼女の声を聴きたいと願う人があってのことです。スイートは組曲であり、常に一つである必要は無い。前段が中段へ、さらに後段へと続くようにお互いに関わり合い繋がり合うことに価値と尊さを見出した本作らしい幸せのメロディの演奏です。
そしてピーちゃんとの再会。彼を笑顔に変えたことで全ての悲しみが幸せへと続いていることは前回証明しています。もはや彼は悲しみ嘆くだけの存在ではない。生まれ変わった彼は悲しみから生まれつつもその悲しみから喜びが、幸せが、笑顔が生まれることを知っている存在へと変わっています。彼との再会を待ち望んでいた響達は本当に素晴らしい。宿敵をも友達にして一緒居たいと願う彼女達の変化、悲しみと共に人はあるべきだという意志、いずれにおいてもこの物語が1年をとおして紡いできたことの答えです。彼女達が言うとおり人は変わっていく。人を知り世界を見ながら生を豊かなものへと変えていく。変わることを積極的に肯定しています。だからこそ最後に変身するんです。敵と戦うための変身ではない、新しい自分になるための変身。
プリキュアは歴史的に見て日常と非日常(戦闘)の対比と相克が行われています。プリキュアは日常のために戦う。日常が最も尊く、それを守るために戦います。しかしシリーズを経るにしたがって日常と非日常が同化していきました。プリキュアに変身することは決して敵と戦うだけの意味に留まりません。むしろ逆です。日常の中に戦いがある。誤解やすれ違い、諦めや憎悪、罪、それらと戦うことを通じて彼女達は成長しています。プリキュアとして戦うということは、日常の中で戦い克服し成長して豊かな日常をおくるための大切な戦いなのです。スイートはプリキュアの力を誰かを守る力だと云いました。それは他者と繋がり絆を結び育んでいく力です。これからも響達はまた同じような苦しみや誤解、ケンカを重ねるでしょう。しかしそれでも彼女達はこの世界を、人の心を肯定するはずです。何故なら全ての悲しみは幸せに通じているからです。ふたりの組曲が3人の組曲に、さらに4人の組曲に、そしてみんなの組曲となった彼女達の変身は本作を締めくくるに相応しい見事なフィナーレです。
ラスボスを倒しても日常は続く。それはハートキャッチでもやっていました。スイートは人が変わりながら歩んでいくことを「変身」に託してメッセージを送っています。換言すれば常に苦楽を乗り越えながら進み続ける人はみなプリキュアであるとも言えるでしょう。スイートらしいプリキュアの提示です。初代からハートキャッチまで5代のプリキュアがありましたがそのどれもがそれぞれのプリキュアらしさを提示し受け継いできました。本作もまたその歴史に名を残しています。プリキュアが続く限りプリキュアは変わりながら新しい価値を創造していくのだろうと思います。組曲の名を冠した本作は一個の作品として、またシリーズを包括する作品として「プリキュア」を提示しています。
改めて、この一年を強く真っ直ぐに絆を紡いで歩んだスイートプリキュアに敬意と、初代から変わることなく脈々と受け継いできたプリキュアの意志に称賛を贈りたい。毎年同じようなことを言っているんですが、毎年同じ、いや年を経る毎に深まっていく感動を与えてくれるプリキュアがおかしいんです。なんで作っている人が変わっているのにこうも昇華され続けていくんだろう。人によってプリキュアとの付き合い方や期間は違いますが、初代から8年付き合い続けてきた私にとって本シリーズは親友であり師であり嫁です(一言余計)。常に可愛く、毎回作画が変わって、設定がチグハグで、時にぶっ飛んでいて、どんな宝石よりも美しく輝いて見える高潔な意志を宿した物語。この作品の全てが大好きです。
第47話「ピカーン!みんなで奏でる希望の組曲ニャ!」
○今週の出来事
①舞い降りる黒鳥
アフロディテ達も石化してしまいいよいよ残るは響達のみ。崖っぷちです。どうすればノイズを倒せるのか。ハミィは力を合わせて頑張るニャ、といつものとおり。問題は何をどう頑張るか。
ノイズを倒さないと世界中から音が消えると言うアコ。音の無い世界。そんな世界を作ってノイズはどうするんだろ。響は浮かんだ疑問を反芻するようにつぶやきます。その疑問は正しく大切です。これまで彼女達はノイズをただの外敵として見ていたけど、では彼の側から見たとき彼は何故、何をしようとしているのか。番組当初の響と奏がそうであったように自分の側だけの視点で事を進めようとすると軋轢が深まる。
轟音と振動。ノイズは隠れていた建物を破壊し響達を見つけて奇声をあげます。耳を塞ぐ4人。後々彼が語るように、耳を塞がれ、目を背けられ続けてきたことの証左です。
ノイズはこれで世界から全ての音が消えて理想の世界になると言います。響は疑問を投げ掛けます。「悲しくない?」
ノイズは前回言ったように、全て消えれば悲しさなど感じないと答えます。永遠の静寂。響は判らないと疑問を深めます。音もない、誰もいない、何もない世界であなたは何をするの? 響はノイズを知るために向き合おうとしている。
「いずれ、消え去るさ、私もな」
さらに意味の判らないことを言うノイズ。彼の存在成立過程を考えればおそらく言葉通り消える。心の無いところに悲しみは生まれないし居続けられない。
「どうして? 理想の世界なんでしょ、なのに自分は消えてしまうの? なにそれ何がしたいの? 判らないよ! あなた一体何なの?」
ノイズはまた奇声をあげて突風を起こします。「そんなことこっちが訊きたい」自問するように呟きます。
耳を塞ぐ響達にノイズは、いつもそうやってお前達は私を忌み嫌ってきたと咎めます。鳥がモチーフだからか醜いアヒルの子が真っ先に連想されます。彼の言葉に響は悲しそうな表情を浮かべながら彼へ視線を向けます。ノイズは虐げられた者でもある。
「お前達がいる限り、私は消える事はない」言葉を続けるノイズ。どんどん抽象的、形而上的な概念思考になっていきます。個人的には大喜び。この物語はビックリするくらい真っ直ぐで、羨ましいくらい前を進もうとする。
「私を生み出したのはお前達だからな」
その言葉に一様に驚く4人。
「この世界は決して楽しい事ばかりではない、楽しいことがあれば同じように同じだけ悲しいことがある。その悲しみの中から私は生まれた」
「私は悲しみそのもの。お前達人間の悲しみの結晶。お前達がいる限り私は永遠に生まれ続ける」
「信じられないか? ならば!」突風を起こします。
「どうした? さあ立て、立ち上がり変身して全力でかかってこい! 私を倒して消し去ってみせろ!」
売り言葉に聞こえなくもないけど、これは彼の本心だろう。わざわざ挑発して煽っている。彼が語ったことが真実であるなら、この状況に最も困惑し苦しみ理不尽さを感じているのは他ならぬ彼だ。あるいは、悲しみを消せるというのなら消してみせろ、という要求。ノイズは擬人化と概念思考が両立できるので色々と意味を重ねられます。
ノイズの叫びを聞いて響は堪えるように俯きます。彼の真意を感じたのでしょう。彼女は素直で誠実であるが故に繊細な心を持っています。だから苦しむ人々を助けたいと思うし敵を許せないと思う。では、敵もまた苦しんでいる人だったら?
「もちろん…」「出来ないよ!」
奏とアコ、セイレーンが立ち上がって変身の構えをとろうとした刹那、響が叫びます。驚いて言葉が発せられた方を向く3人。私は奏の太ももの方に目が行きました。
(心の声が)聞こえる、ノイズが泣いていると言う響。戸惑う奏達にノイズは本当は悲しいと思っている、自分の声が醜いと思っている、それを聞きたくないから全ての音を、世界を消し去りたいんだと話します。響の瞳に映る彼は強者ではない。
「私、あなたとは戦えない。だってそんなの悲しい。悲しすぎるよ!」
響の言葉を聞いて何かを思うハミィ。
響はノイズに向き合いながら彼の悲しみを分かち合うように涙を浮かべながら彼に語りかけます。あなたも悲しみ苦しんでいるからこそ世界をなくしたいと思っている。それを否定するノイズの言葉を響は嘘!と打ち消します。
ノイズは、なら悲しみをもっと味わって貰おうと響達を吸収しようとします。ハミィが動き出します。トーン達に何があっても諦めないでプリキュアを助けて欲しいと頼み、響を庇って伝説の楽譜を持ったまま自らノイズに飛び込みます。
②最後の戦い
ノイズは苦しみ出します。セイレーンはハミィが唄っているのだと気付きます。
暗闇の中。怒りに染まった音符達が所狭しと浮かぶ中で、ハミィは唄います。
「ノイズ聴こえるニャ? これが音楽ニャ。音楽があれば悲しいことや辛いことなんてみんなすぐに吹き飛んじゃうニャ。ハミィだって今まで時々は悲しいこともあったニャ。でも、楽しく歌を唄えばそんなのすぐに乗り越えられるんだニャ」
彼女は幸せのメロディの歌い手に相応しい。音楽を愛し他者にそれを伝えるために歌を唄う。セイレーンがくれた愛情(セイレーンに音楽を習った)を彼女は受け継ぎ昇華させている。彼女の歌は愛情や友情の歌です。彼女の歌でいくつかの音符から怒りが消えます。
ハミィの歌を聴いた4人は大切なことを思い出します。悲しみは乗り越えればいい。
4人は戦うために変身します。トーンも力を貸します。最後の変身。
「ノイズごめんね、今まで私達あなたを倒すことしか考えてなかった。でもそうじゃない。そうじゃなかった」
「戦わないんじゃなかったのか」
「ううん、戦うわ。戦って今度こそあなたを助けてみせる」
愛するために殴る。プリキュアの真骨頂。
助ける? 心も身体も全て悲しみで出来ているこの私によくもそんなことが言える! 思い上がるな!と怒りを燃やすノイズ。自分の何をお前らは知っているのか、軽々しく言うな、という憤り。彼の中の音符も怒りに染まりハミィも闇の中へ消えます。人間というのは面白いもので、同情されたから、手を伸ばされたからそれをハイそうですかと素直に掴むとは限らない。今までの苦しみや葛藤、生い立ち、そこで堪え忍び生きてきた意地だってある。それを易々と手放して他人に身を委ねるなんてことは早々できません。歪もうと泥の中にあろうと、誰だって誇りを持っている。
プリキュアはノイズに向かって跳躍するも迎撃され落下。彼を見上げるメロディはノイズに届かない、と苦悶の声をあげます。彼との距離は縮まらないどころか開くばかり。
「届くミミ!」
ミリー、ファリー、ソリー、シリーが飛び出してプリキュアの力を増幅させます。腰に羽が生えたプリキュアは今一度ノイズへと飛びます。
「ノイズ!聴いて!」…と言いながらベルティエで突くメロディ。流石です。肉体言語こそプリキュアの戦い。
「悲しみは、乗り越えられる!」
「いくら乗り越えようと悲しみは生まれ続ける!」
「それなら、乗り越え続けるだけよ!」
「それになんの意味がある!?」
生きる限り続く苦悩と解放。それは押しては寄せる波のように終わりが無い。しかも苦悩の方が期間的に長いかもしれない。これではまるで生とは監獄の中に捕らわれた囚人のようではないか。乗り越えたところで監獄の中にいることに変わりないのではないか。
「その分だけ人は前に進めるから!」
「知ったようなことを!」
「知ってるからよ!」
「私はみんなの敵だった。何度も騙して傷つけた。でもみんなが過ちに気付かせてくれたから……私は生まれ変われた」
「私もパパがいなくなって辛かった。独りで迷って悩んで。でも、みんなが居たから私は、ありのままの自分になれた!」
「私も! 響といっぱいケンカした。ホントは仲良くしたいのにつまんない意地張って素直になれなくて…でもいっぱいケンカしたから!」
「そう! 前よりずっとわかり合えた。もっともっと」
「仲良くなれた!」
「私達はそうやって大切な仲間になれた」
セリフだけ書き起こしていますが最後の戦いに相応しいスピーディでパワフルな戦闘が行われています。細々と書いてもテンポが悪くなるので割愛しますが、メロディとリズムのゼロ距離ミュージックロンドは面白い技の解釈です。こういう使い方も出来るのね。
「ならば何故泣く」
「みんなと一緒にいられるのが嬉しいからよ」
「涙は悲しいときだけのものじゃない」
「ノイズ、あなたにもきっと判るよこの涙の意味が」
ノイズはプリキュアに挑みかかり圧倒します。自分はお前達とは違う。お前達などと同じで堪るか!と叫びます。段々と本心が出てきています。メロディ達の言葉は真実であるが、それは「出来た」「乗り越えた」人々の声であって今まさに監獄にいるノイズからすれば自分と違うところにいる、自分と違う人間の声に聞えるでしょう。あなたもきっと判るという投げ掛けは見下されているかのような響きもある。おそらく意図してそうしているのでしょうが、先ほどのプリキュアの言葉はノイズを見下ろす形で発せられています。対等な立場ではありません。自分の抱えるこの苦しみは決して他人には判らない。判って貰えない。しかし誰もが他者に理解されることを望んでいる。そして相手を理解したい、とも思う。
「そうよ、ノイズ。あなたはあなたなの」
「その声も羽の音も」
「あなただけの立派な音楽」
「そうみんな違ってていい」
「みんなそれぞれ自分だけの音楽を持っているの。いろんな人がいて、いろんな音楽があって、喜んだり悲しんだり、きっとそうやってみんな繋がってこの世界は出来ている。この世界が一つの組曲なの」
「ノイズ、あなたもその一部。だから私達はあなたを消すことなんて出来ない」
ノイズという名には雑音として人に見向きされず忌避される意味が入っているのでしょう。しかしそれもまた音楽であり、この世界を構成する一部なのだとここで肯定されています。スイートの名が冠されたこの物語は音そのものを音楽とし、苦しみ悲しみもまた心の在り様として肯定しています。清濁含め全てがあること、それが正しき姿であり完成なのである。
何故そこまで音楽(心)を信じられるのか。メロディとリズムは答えます。「笑顔にするから」。笑顔を見て幸せだと思える。何故幸せだと思えるのか。それが心の繋がりだから。心の繋がりが幸せをくれる。幸せなどあり得ない。
ここで「笑顔」を用いているのは後番組であるスマイルを視野に入れてのことでしょう。幸せとは笑顔に象徴されている、という提示ですね。これはスイートでも幸せな場面で笑顔を描いているので自然な言葉です。地味に引き継ぎを行っています。主役やタイトルが替ろうとプリキュアの物語の根幹は変わりません。幸せを求める人々が如何にして笑顔を作り出していけるか。スイートは音楽にそれを託している。
ミューズは身の丈ほどあるバブルを作って投げます。そんなことできたんだ。ファンネルを飛ばして破壊するノイズ。もうやりたい放題。
「今はそうでもいつか判るよ」
壁走りしてパッショナートハーモニー。ビートもソニックを先置きしてロンドと絡ませて撃ち込みます。使い方かっけぇ。ミューズは鍵盤を弾いてバリアを作りだしてノイズの攻撃を防ぎます。バリアの中から現れたメロディとリズムはスーパーカルテット。バンクを使わずに必殺技全種使用。すげぇ。
「誰だって必ず笑顔になれる!」
「何が笑顔だ、そんなものほんの少しの心次第で一瞬で悲しみに変わる!」
「だからこそ、どんなに深い悲しみも乗り越えたら笑顔に変わる!」
「ならば私が!」「それなら私達が!」
「この世界の全てを!」「悲しみに染めてみせる!」「笑顔に変えてみせる!」
「そうニャ、みんなで願うニャ」
「笑顔と幸せと音楽の溢れる世界を!」
③希望のシンフォニー
プリキュアとノイズが重なると不思議空間が現出。
トーン達はプリキュアに音楽を信じてくれてありがとうと言います。
「その想いで僕らはもっと強くなれる」
「さあ、その心をもう一度重ね合わせよう。僕らと」
フェアリートーンが重なるとクレッシェンドトーンへと姿を変えます。やられた、そうきたか。クレッシェンドトーンはそうやって受け継がれる存在なのかもしれない。親から子へ、子が時代を引き継ぎ親となる。プリキュア達もまた力を得て姿を変えます。最終決戦仕様。
「ねえ、ノイズ、たぶん私は同じなんだよ。悲しみからあなたが生まれたように、喜びや笑顔からこの力は生まれた。それはあなたと一緒に悲しみを乗り越えるため。そのためにプリキュアの力はある。だから、今こそあなたに」
「届けましょう、希望のシンフォニー」
今更ですがシンフォニーの意味を調べました。交響曲。いろいろの異なった要素がまじり合って、ある効果を生み出しているたとえ。今このときをおいて他にないほど最後の口上に相応しい。
「プリキュア・スイートセッション・アンサンブル・クレッシェンド!」
「フィナーレ!」
不死鳥と化したクレッシェンドトーンがノイズを貫き、その身体を消滅させ……ません。ノイズの手をメロディは掴み取ります。
「やっと届いた」
「何故ここまで」
「そんなの決まっているでしょ」「みんなの笑顔を守ること」「それがプリキュアの使命」「あなたの笑顔も守らなきゃプリキュアの名がすたる」
「ははっ」
ノイズの顔に笑顔が浮かびます。メロディはその笑顔に笑顔を返します。
「まったく…」
ノイズは消えます。人の心が生み出した悲しみの権化。そこに笑顔が生まれたことで彼は悲しみの檻から解放されました。彼はもはや黒鳥ではない。
戦いが終わり元の姿に戻るメロディ達。ちゃっかりトーン達も戻っています。
「ん? ねぇ、ハミィは?」
「え?」
そんなオチかよーーー!!
④次回予告
大団円!!
○トピック
この一年を締めくくるに(いやまだ終わってないんですが)相応しい見事な最終決戦。最終回を前にしてラスボス戦終了はシリーズ初。
プリキュアとは何か、プリキュアは何を守るのか、当事者として立ち向かう響達は何を想い、何を願いそれを為すのか。それが全てキッチリと描かれています。これで次回まるまる奏の白ニーソ太もも見られるなんて至れり尽くせり。
前回に引き続いてノイズの動機や成立ちが深掘りされたことでより具体性を持って音楽の価値、心の価値、引いては響達がこれまでやってきたことの意味を昇華させています。そしてプリキュアシリーズが初代から続けてきた光と闇、希望と絶望、罪と赦し、両義性を持った人間に内在する戦いの答えを出しています。このシリーズそのものが組曲として続いている。
ノイズとの戦いは前回までの感想で書いたように、心の両義性の提示です。心は悲しみにも喜びにもどちらにも染まる。悲しみをなくすために心そのものをなくせばいいという主張に対して、悲しみを受け止めた上で幸せになれることが前回までで行われています。この戦いは各々の主張、在り方の提示に留まっていて歩み寄りはありません。
今回ノイズの動機や成立ちを明らかにすることで彼が他者から疎まれ理解されず孤独と悲しみの中で足掻く、いわば弱者であることが判ります。響から見れば彼は悪のボスでも何でもありません。自分と同じように苦しみ悲しむ心を持ち、現に今泣いている人として映っています。これによってノイズとの繋がりが生まれています。今まで見えていなかった、気付かなかったことを知ることで相手に対する見方や考え方が変わるのはこれまでスイートがやってきた(ディス)コミュニケーションと同種です。相手と繋がりを持つには相手をある程度理解して受け入れる必要があります。また同時にノイズは人の心が生んだ存在であるとも説明されたことで、人間の心が生む悲しみや喜びは不滅であることを明確にしています。悲しみはそれを抱いた者自身を蝕み、他者をも巻き込む暗示とも受け取れます。
ノイズの動機や成立ちを提示することによって人間関係や心をテーマとした本作のメッセージを強めています。この物語に合致した見事な拡張です。彼は深く傷つき絶望している。人が抱く悲しみはまさにそうしたものです。これにどう向き合うのか、人は何が出来るのか。その問いが最後の戦いです。
段取りとしては二段階に分けられます。まずプリキュアは自分達が苦しみを乗り越えて笑顔になれたことをノイズに伝えます。彼女達もまた彼同様に悲しみ苦しんだ経験を持ちながらそれを乗り越えてきた人々です。ノイズに悲しみを乗り越えられることを知って貰う過程で彼女達がこれまで経験した苦しみや罪を告白しながらそれがあったからこそ今の自分、関係があるのだと強く叫ぶのはまさに魂の叫びです。弱さが強さに、悲しみが喜びに、苦しみが安心と自信へと変わった軌跡。それは心があたかも音楽のように転調を繰り返していくことに似ています。スイートは音楽をモチーフにして心の在り様を描いていますが、このように個人の生の中で起伏、転換があることを示しています。一人一人が心の音楽を持っている。
それでもノイズを説得することはできません。ノイズはプリキュアとは歩み方も何もかも違います。だからプリキュアはノイズを同じだと言いません。あなたにはあなたの生があると言っています。個性とか言うと聞こえがいいですが、要するに投げているんです。あなたはあなたの幸せを見つけられる、あなたもきっと笑顔になれる、いつか判るって投げているんです。この態度は正しい。結局はその当事者に委ねるしかないのです。自分の心、人生を決めるのは自分だからです。言い換えれば、アフロディテが石化すると判っていても演奏し続けたように運命や環境がどうであろうと最後の最後に自分の在り方を決められる余地が人間にはあると思います。
プリキュアはノイズに正面から自分達の想いをぶつけ、同時に彼の想いを受け止めています。その方法として殴り合う。拳で語り合うって少年漫画に出てくる番長かよってな感じですが相手を真っ直ぐに見てその声を聴いて、自分の想いを真っ直ぐに伝えることはコミュニケーションの基本です。それをやっているんですね。いつまでも悲しみは続かない、あなたも笑顔になれると彼を励ましています。それはノイズに笑顔を見せ、彼の手を握ったことに示されています。彼女達もまたそうやって勇気付けられ立ち上がり絆を紡いできました。これは前作ハートキャッチから一歩進んでいます。人のために心を痛め、人の心を理解しようとし、人のために泣いたさらにその先で、響達はノイズと繋がり絆を結ぼうとしたんですね。彼は孤独ではない、彼の手を取り一緒に笑える人がいることを身を持って示しています。この戦いの最後の答えは彼と友達になること。単純明快にして、おそらく最も困難なこと。
プリキュアは人の心を守る。それは人と繋がり、友情や愛情を育て紡いでいくことです。その過程で争いや誤解、すれ違いがあろうと最後に通じ合えたならその過程もまた肯定できるものとなるでしょう。争いもまた一つのコミュニケーションであるのかもしれない。ケンカをとおして仲良くなる、ということはスイートは争いを否定していません。見えない、知らないために誤解が生まれ対立してもそれを乗り越えて人は共に歩んでいけるのだと言っているんですね。とても強く前向きな意志です。
ノイズと絆を結ぶことをとおして、人間は悲しみを乗り越え笑顔になれること、自分の悲しみも他者の悲しみも人はお互いに救いうることを提示しています。悲しみから生まれた権化すらも笑顔にできる。全ての悲しみは笑顔や幸せへと続いている。プリキュアの最終決戦、一年の昇華はダイナミックで真っ直ぐで強く美しい。
ラスボスとの戦いはシリーズにおいて色々な提示をされてきました。絶望に対する希望として、生の否定に対する肯定として、罪に対する再生として、憎悪に対する愛として、終わることなく続く概念的思想対決の果てに融和を見せた本作に賛辞を贈りたい。脈々と受け継がれてきたプリキュアの意志の集大成です。
という感動と感慨の余韻に浸る間もなくあのオチで全てを台無しにした本作に賠償と謝罪を求めたい。響と奏のバカップルぶりで返して貰いましょう。ラスボスを笑顔にしたのはいいけど石化した人々がまだ戻ってません。全ての人を笑顔に、それを以て最終回とする本作に頭が下がります。
人によって感じ方、環境は大きく異なります。だから人によってはすぐに感じられる幸せ……その源である安心や自信、決意、連帯感、裕福さ、豊かさがなかなか感じられない人もいます。いつもどこか不安で、どこか満たされず、自信が持てない。苦しみばかり感じる。私も学生の頃に厭世観を覚えていました(思春期でよくある)。希望的なものを持っていなかったけど、今なら判る。世界は豊かであるし、人間もまた豊かなのだと。でっかい地震が起きようが生きていれば何とかなる。何とかする。それは単に楽観的なだけだという気もするのだけど、私は不幸せではない。苦しみが10年、20年続こうともそこから解放される可能性があることを忘れてはいけません。解放される保証はしません。されない人もいるでしょう。でも、されるかされないかなんて人の身では知るよしもない。たとえ長く苦しい生活が続いたとしても幸せを感じる時があって、自分はこの時のために生きていたんだ、この幸福や充実、豊かさはこれまでの数十年の苦しみが生んだものなのだ、この先辛いことがあってもそれに耐えていける。…と思えたならそれまでの経験は決して無駄ではない素晴らしいものなんです。苦悩もまた糧とし栄養として、時間がかかっても芽吹き根を伸ばし不動の大木となる生。苦しみと喜びが続く生。その音色は豊かで美しいと私は信じています。
①舞い降りる黒鳥
アフロディテ達も石化してしまいいよいよ残るは響達のみ。崖っぷちです。どうすればノイズを倒せるのか。ハミィは力を合わせて頑張るニャ、といつものとおり。問題は何をどう頑張るか。
ノイズを倒さないと世界中から音が消えると言うアコ。音の無い世界。そんな世界を作ってノイズはどうするんだろ。響は浮かんだ疑問を反芻するようにつぶやきます。その疑問は正しく大切です。これまで彼女達はノイズをただの外敵として見ていたけど、では彼の側から見たとき彼は何故、何をしようとしているのか。番組当初の響と奏がそうであったように自分の側だけの視点で事を進めようとすると軋轢が深まる。
轟音と振動。ノイズは隠れていた建物を破壊し響達を見つけて奇声をあげます。耳を塞ぐ4人。後々彼が語るように、耳を塞がれ、目を背けられ続けてきたことの証左です。
ノイズはこれで世界から全ての音が消えて理想の世界になると言います。響は疑問を投げ掛けます。「悲しくない?」
ノイズは前回言ったように、全て消えれば悲しさなど感じないと答えます。永遠の静寂。響は判らないと疑問を深めます。音もない、誰もいない、何もない世界であなたは何をするの? 響はノイズを知るために向き合おうとしている。
「いずれ、消え去るさ、私もな」
さらに意味の判らないことを言うノイズ。彼の存在成立過程を考えればおそらく言葉通り消える。心の無いところに悲しみは生まれないし居続けられない。
「どうして? 理想の世界なんでしょ、なのに自分は消えてしまうの? なにそれ何がしたいの? 判らないよ! あなた一体何なの?」
ノイズはまた奇声をあげて突風を起こします。「そんなことこっちが訊きたい」自問するように呟きます。
耳を塞ぐ響達にノイズは、いつもそうやってお前達は私を忌み嫌ってきたと咎めます。鳥がモチーフだからか醜いアヒルの子が真っ先に連想されます。彼の言葉に響は悲しそうな表情を浮かべながら彼へ視線を向けます。ノイズは虐げられた者でもある。
「お前達がいる限り、私は消える事はない」言葉を続けるノイズ。どんどん抽象的、形而上的な概念思考になっていきます。個人的には大喜び。この物語はビックリするくらい真っ直ぐで、羨ましいくらい前を進もうとする。
「私を生み出したのはお前達だからな」
その言葉に一様に驚く4人。
「この世界は決して楽しい事ばかりではない、楽しいことがあれば同じように同じだけ悲しいことがある。その悲しみの中から私は生まれた」
「私は悲しみそのもの。お前達人間の悲しみの結晶。お前達がいる限り私は永遠に生まれ続ける」
「信じられないか? ならば!」突風を起こします。
「どうした? さあ立て、立ち上がり変身して全力でかかってこい! 私を倒して消し去ってみせろ!」
売り言葉に聞こえなくもないけど、これは彼の本心だろう。わざわざ挑発して煽っている。彼が語ったことが真実であるなら、この状況に最も困惑し苦しみ理不尽さを感じているのは他ならぬ彼だ。あるいは、悲しみを消せるというのなら消してみせろ、という要求。ノイズは擬人化と概念思考が両立できるので色々と意味を重ねられます。
ノイズの叫びを聞いて響は堪えるように俯きます。彼の真意を感じたのでしょう。彼女は素直で誠実であるが故に繊細な心を持っています。だから苦しむ人々を助けたいと思うし敵を許せないと思う。では、敵もまた苦しんでいる人だったら?
「もちろん…」「出来ないよ!」
奏とアコ、セイレーンが立ち上がって変身の構えをとろうとした刹那、響が叫びます。驚いて言葉が発せられた方を向く3人。私は奏の太ももの方に目が行きました。
(心の声が)聞こえる、ノイズが泣いていると言う響。戸惑う奏達にノイズは本当は悲しいと思っている、自分の声が醜いと思っている、それを聞きたくないから全ての音を、世界を消し去りたいんだと話します。響の瞳に映る彼は強者ではない。
「私、あなたとは戦えない。だってそんなの悲しい。悲しすぎるよ!」
響の言葉を聞いて何かを思うハミィ。
響はノイズに向き合いながら彼の悲しみを分かち合うように涙を浮かべながら彼に語りかけます。あなたも悲しみ苦しんでいるからこそ世界をなくしたいと思っている。それを否定するノイズの言葉を響は嘘!と打ち消します。
ノイズは、なら悲しみをもっと味わって貰おうと響達を吸収しようとします。ハミィが動き出します。トーン達に何があっても諦めないでプリキュアを助けて欲しいと頼み、響を庇って伝説の楽譜を持ったまま自らノイズに飛び込みます。
②最後の戦い
ノイズは苦しみ出します。セイレーンはハミィが唄っているのだと気付きます。
暗闇の中。怒りに染まった音符達が所狭しと浮かぶ中で、ハミィは唄います。
「ノイズ聴こえるニャ? これが音楽ニャ。音楽があれば悲しいことや辛いことなんてみんなすぐに吹き飛んじゃうニャ。ハミィだって今まで時々は悲しいこともあったニャ。でも、楽しく歌を唄えばそんなのすぐに乗り越えられるんだニャ」
彼女は幸せのメロディの歌い手に相応しい。音楽を愛し他者にそれを伝えるために歌を唄う。セイレーンがくれた愛情(セイレーンに音楽を習った)を彼女は受け継ぎ昇華させている。彼女の歌は愛情や友情の歌です。彼女の歌でいくつかの音符から怒りが消えます。
ハミィの歌を聴いた4人は大切なことを思い出します。悲しみは乗り越えればいい。
4人は戦うために変身します。トーンも力を貸します。最後の変身。
「ノイズごめんね、今まで私達あなたを倒すことしか考えてなかった。でもそうじゃない。そうじゃなかった」
「戦わないんじゃなかったのか」
「ううん、戦うわ。戦って今度こそあなたを助けてみせる」
愛するために殴る。プリキュアの真骨頂。
助ける? 心も身体も全て悲しみで出来ているこの私によくもそんなことが言える! 思い上がるな!と怒りを燃やすノイズ。自分の何をお前らは知っているのか、軽々しく言うな、という憤り。彼の中の音符も怒りに染まりハミィも闇の中へ消えます。人間というのは面白いもので、同情されたから、手を伸ばされたからそれをハイそうですかと素直に掴むとは限らない。今までの苦しみや葛藤、生い立ち、そこで堪え忍び生きてきた意地だってある。それを易々と手放して他人に身を委ねるなんてことは早々できません。歪もうと泥の中にあろうと、誰だって誇りを持っている。
プリキュアはノイズに向かって跳躍するも迎撃され落下。彼を見上げるメロディはノイズに届かない、と苦悶の声をあげます。彼との距離は縮まらないどころか開くばかり。
「届くミミ!」
ミリー、ファリー、ソリー、シリーが飛び出してプリキュアの力を増幅させます。腰に羽が生えたプリキュアは今一度ノイズへと飛びます。
「ノイズ!聴いて!」…と言いながらベルティエで突くメロディ。流石です。肉体言語こそプリキュアの戦い。
「悲しみは、乗り越えられる!」
「いくら乗り越えようと悲しみは生まれ続ける!」
「それなら、乗り越え続けるだけよ!」
「それになんの意味がある!?」
生きる限り続く苦悩と解放。それは押しては寄せる波のように終わりが無い。しかも苦悩の方が期間的に長いかもしれない。これではまるで生とは監獄の中に捕らわれた囚人のようではないか。乗り越えたところで監獄の中にいることに変わりないのではないか。
「その分だけ人は前に進めるから!」
「知ったようなことを!」
「知ってるからよ!」
「私はみんなの敵だった。何度も騙して傷つけた。でもみんなが過ちに気付かせてくれたから……私は生まれ変われた」
「私もパパがいなくなって辛かった。独りで迷って悩んで。でも、みんなが居たから私は、ありのままの自分になれた!」
「私も! 響といっぱいケンカした。ホントは仲良くしたいのにつまんない意地張って素直になれなくて…でもいっぱいケンカしたから!」
「そう! 前よりずっとわかり合えた。もっともっと」
「仲良くなれた!」
「私達はそうやって大切な仲間になれた」
セリフだけ書き起こしていますが最後の戦いに相応しいスピーディでパワフルな戦闘が行われています。細々と書いてもテンポが悪くなるので割愛しますが、メロディとリズムのゼロ距離ミュージックロンドは面白い技の解釈です。こういう使い方も出来るのね。
「ならば何故泣く」
「みんなと一緒にいられるのが嬉しいからよ」
「涙は悲しいときだけのものじゃない」
「ノイズ、あなたにもきっと判るよこの涙の意味が」
ノイズはプリキュアに挑みかかり圧倒します。自分はお前達とは違う。お前達などと同じで堪るか!と叫びます。段々と本心が出てきています。メロディ達の言葉は真実であるが、それは「出来た」「乗り越えた」人々の声であって今まさに監獄にいるノイズからすれば自分と違うところにいる、自分と違う人間の声に聞えるでしょう。あなたもきっと判るという投げ掛けは見下されているかのような響きもある。おそらく意図してそうしているのでしょうが、先ほどのプリキュアの言葉はノイズを見下ろす形で発せられています。対等な立場ではありません。自分の抱えるこの苦しみは決して他人には判らない。判って貰えない。しかし誰もが他者に理解されることを望んでいる。そして相手を理解したい、とも思う。
「そうよ、ノイズ。あなたはあなたなの」
「その声も羽の音も」
「あなただけの立派な音楽」
「そうみんな違ってていい」
「みんなそれぞれ自分だけの音楽を持っているの。いろんな人がいて、いろんな音楽があって、喜んだり悲しんだり、きっとそうやってみんな繋がってこの世界は出来ている。この世界が一つの組曲なの」
「ノイズ、あなたもその一部。だから私達はあなたを消すことなんて出来ない」
ノイズという名には雑音として人に見向きされず忌避される意味が入っているのでしょう。しかしそれもまた音楽であり、この世界を構成する一部なのだとここで肯定されています。スイートの名が冠されたこの物語は音そのものを音楽とし、苦しみ悲しみもまた心の在り様として肯定しています。清濁含め全てがあること、それが正しき姿であり完成なのである。
何故そこまで音楽(心)を信じられるのか。メロディとリズムは答えます。「笑顔にするから」。笑顔を見て幸せだと思える。何故幸せだと思えるのか。それが心の繋がりだから。心の繋がりが幸せをくれる。幸せなどあり得ない。
ここで「笑顔」を用いているのは後番組であるスマイルを視野に入れてのことでしょう。幸せとは笑顔に象徴されている、という提示ですね。これはスイートでも幸せな場面で笑顔を描いているので自然な言葉です。地味に引き継ぎを行っています。主役やタイトルが替ろうとプリキュアの物語の根幹は変わりません。幸せを求める人々が如何にして笑顔を作り出していけるか。スイートは音楽にそれを託している。
ミューズは身の丈ほどあるバブルを作って投げます。そんなことできたんだ。ファンネルを飛ばして破壊するノイズ。もうやりたい放題。
「今はそうでもいつか判るよ」
壁走りしてパッショナートハーモニー。ビートもソニックを先置きしてロンドと絡ませて撃ち込みます。使い方かっけぇ。ミューズは鍵盤を弾いてバリアを作りだしてノイズの攻撃を防ぎます。バリアの中から現れたメロディとリズムはスーパーカルテット。バンクを使わずに必殺技全種使用。すげぇ。
「誰だって必ず笑顔になれる!」
「何が笑顔だ、そんなものほんの少しの心次第で一瞬で悲しみに変わる!」
「だからこそ、どんなに深い悲しみも乗り越えたら笑顔に変わる!」
「ならば私が!」「それなら私達が!」
「この世界の全てを!」「悲しみに染めてみせる!」「笑顔に変えてみせる!」
「そうニャ、みんなで願うニャ」
「笑顔と幸せと音楽の溢れる世界を!」
③希望のシンフォニー
プリキュアとノイズが重なると不思議空間が現出。
トーン達はプリキュアに音楽を信じてくれてありがとうと言います。
「その想いで僕らはもっと強くなれる」
「さあ、その心をもう一度重ね合わせよう。僕らと」
フェアリートーンが重なるとクレッシェンドトーンへと姿を変えます。やられた、そうきたか。クレッシェンドトーンはそうやって受け継がれる存在なのかもしれない。親から子へ、子が時代を引き継ぎ親となる。プリキュア達もまた力を得て姿を変えます。最終決戦仕様。
「ねえ、ノイズ、たぶん私は同じなんだよ。悲しみからあなたが生まれたように、喜びや笑顔からこの力は生まれた。それはあなたと一緒に悲しみを乗り越えるため。そのためにプリキュアの力はある。だから、今こそあなたに」
「届けましょう、希望のシンフォニー」
今更ですがシンフォニーの意味を調べました。交響曲。いろいろの異なった要素がまじり合って、ある効果を生み出しているたとえ。今このときをおいて他にないほど最後の口上に相応しい。
「プリキュア・スイートセッション・アンサンブル・クレッシェンド!」
「フィナーレ!」
不死鳥と化したクレッシェンドトーンがノイズを貫き、その身体を消滅させ……ません。ノイズの手をメロディは掴み取ります。
「やっと届いた」
「何故ここまで」
「そんなの決まっているでしょ」「みんなの笑顔を守ること」「それがプリキュアの使命」「あなたの笑顔も守らなきゃプリキュアの名がすたる」
「ははっ」
ノイズの顔に笑顔が浮かびます。メロディはその笑顔に笑顔を返します。
「まったく…」
ノイズは消えます。人の心が生み出した悲しみの権化。そこに笑顔が生まれたことで彼は悲しみの檻から解放されました。彼はもはや黒鳥ではない。
戦いが終わり元の姿に戻るメロディ達。ちゃっかりトーン達も戻っています。
「ん? ねぇ、ハミィは?」
「え?」
そんなオチかよーーー!!
④次回予告
大団円!!
○トピック
この一年を締めくくるに(いやまだ終わってないんですが)相応しい見事な最終決戦。最終回を前にしてラスボス戦終了はシリーズ初。
プリキュアとは何か、プリキュアは何を守るのか、当事者として立ち向かう響達は何を想い、何を願いそれを為すのか。それが全てキッチリと描かれています。これで次回まるまる奏の白ニーソ太もも見られるなんて至れり尽くせり。
前回に引き続いてノイズの動機や成立ちが深掘りされたことでより具体性を持って音楽の価値、心の価値、引いては響達がこれまでやってきたことの意味を昇華させています。そしてプリキュアシリーズが初代から続けてきた光と闇、希望と絶望、罪と赦し、両義性を持った人間に内在する戦いの答えを出しています。このシリーズそのものが組曲として続いている。
ノイズとの戦いは前回までの感想で書いたように、心の両義性の提示です。心は悲しみにも喜びにもどちらにも染まる。悲しみをなくすために心そのものをなくせばいいという主張に対して、悲しみを受け止めた上で幸せになれることが前回までで行われています。この戦いは各々の主張、在り方の提示に留まっていて歩み寄りはありません。
今回ノイズの動機や成立ちを明らかにすることで彼が他者から疎まれ理解されず孤独と悲しみの中で足掻く、いわば弱者であることが判ります。響から見れば彼は悪のボスでも何でもありません。自分と同じように苦しみ悲しむ心を持ち、現に今泣いている人として映っています。これによってノイズとの繋がりが生まれています。今まで見えていなかった、気付かなかったことを知ることで相手に対する見方や考え方が変わるのはこれまでスイートがやってきた(ディス)コミュニケーションと同種です。相手と繋がりを持つには相手をある程度理解して受け入れる必要があります。また同時にノイズは人の心が生んだ存在であるとも説明されたことで、人間の心が生む悲しみや喜びは不滅であることを明確にしています。悲しみはそれを抱いた者自身を蝕み、他者をも巻き込む暗示とも受け取れます。
ノイズの動機や成立ちを提示することによって人間関係や心をテーマとした本作のメッセージを強めています。この物語に合致した見事な拡張です。彼は深く傷つき絶望している。人が抱く悲しみはまさにそうしたものです。これにどう向き合うのか、人は何が出来るのか。その問いが最後の戦いです。
段取りとしては二段階に分けられます。まずプリキュアは自分達が苦しみを乗り越えて笑顔になれたことをノイズに伝えます。彼女達もまた彼同様に悲しみ苦しんだ経験を持ちながらそれを乗り越えてきた人々です。ノイズに悲しみを乗り越えられることを知って貰う過程で彼女達がこれまで経験した苦しみや罪を告白しながらそれがあったからこそ今の自分、関係があるのだと強く叫ぶのはまさに魂の叫びです。弱さが強さに、悲しみが喜びに、苦しみが安心と自信へと変わった軌跡。それは心があたかも音楽のように転調を繰り返していくことに似ています。スイートは音楽をモチーフにして心の在り様を描いていますが、このように個人の生の中で起伏、転換があることを示しています。一人一人が心の音楽を持っている。
それでもノイズを説得することはできません。ノイズはプリキュアとは歩み方も何もかも違います。だからプリキュアはノイズを同じだと言いません。あなたにはあなたの生があると言っています。個性とか言うと聞こえがいいですが、要するに投げているんです。あなたはあなたの幸せを見つけられる、あなたもきっと笑顔になれる、いつか判るって投げているんです。この態度は正しい。結局はその当事者に委ねるしかないのです。自分の心、人生を決めるのは自分だからです。言い換えれば、アフロディテが石化すると判っていても演奏し続けたように運命や環境がどうであろうと最後の最後に自分の在り方を決められる余地が人間にはあると思います。
プリキュアはノイズに正面から自分達の想いをぶつけ、同時に彼の想いを受け止めています。その方法として殴り合う。拳で語り合うって少年漫画に出てくる番長かよってな感じですが相手を真っ直ぐに見てその声を聴いて、自分の想いを真っ直ぐに伝えることはコミュニケーションの基本です。それをやっているんですね。いつまでも悲しみは続かない、あなたも笑顔になれると彼を励ましています。それはノイズに笑顔を見せ、彼の手を握ったことに示されています。彼女達もまたそうやって勇気付けられ立ち上がり絆を紡いできました。これは前作ハートキャッチから一歩進んでいます。人のために心を痛め、人の心を理解しようとし、人のために泣いたさらにその先で、響達はノイズと繋がり絆を結ぼうとしたんですね。彼は孤独ではない、彼の手を取り一緒に笑える人がいることを身を持って示しています。この戦いの最後の答えは彼と友達になること。単純明快にして、おそらく最も困難なこと。
プリキュアは人の心を守る。それは人と繋がり、友情や愛情を育て紡いでいくことです。その過程で争いや誤解、すれ違いがあろうと最後に通じ合えたならその過程もまた肯定できるものとなるでしょう。争いもまた一つのコミュニケーションであるのかもしれない。ケンカをとおして仲良くなる、ということはスイートは争いを否定していません。見えない、知らないために誤解が生まれ対立してもそれを乗り越えて人は共に歩んでいけるのだと言っているんですね。とても強く前向きな意志です。
ノイズと絆を結ぶことをとおして、人間は悲しみを乗り越え笑顔になれること、自分の悲しみも他者の悲しみも人はお互いに救いうることを提示しています。悲しみから生まれた権化すらも笑顔にできる。全ての悲しみは笑顔や幸せへと続いている。プリキュアの最終決戦、一年の昇華はダイナミックで真っ直ぐで強く美しい。
ラスボスとの戦いはシリーズにおいて色々な提示をされてきました。絶望に対する希望として、生の否定に対する肯定として、罪に対する再生として、憎悪に対する愛として、終わることなく続く概念的思想対決の果てに融和を見せた本作に賛辞を贈りたい。脈々と受け継がれてきたプリキュアの意志の集大成です。
という感動と感慨の余韻に浸る間もなくあのオチで全てを台無しにした本作に賠償と謝罪を求めたい。響と奏のバカップルぶりで返して貰いましょう。ラスボスを笑顔にしたのはいいけど石化した人々がまだ戻ってません。全ての人を笑顔に、それを以て最終回とする本作に頭が下がります。
人によって感じ方、環境は大きく異なります。だから人によってはすぐに感じられる幸せ……その源である安心や自信、決意、連帯感、裕福さ、豊かさがなかなか感じられない人もいます。いつもどこか不安で、どこか満たされず、自信が持てない。苦しみばかり感じる。私も学生の頃に厭世観を覚えていました(思春期でよくある)。希望的なものを持っていなかったけど、今なら判る。世界は豊かであるし、人間もまた豊かなのだと。でっかい地震が起きようが生きていれば何とかなる。何とかする。それは単に楽観的なだけだという気もするのだけど、私は不幸せではない。苦しみが10年、20年続こうともそこから解放される可能性があることを忘れてはいけません。解放される保証はしません。されない人もいるでしょう。でも、されるかされないかなんて人の身では知るよしもない。たとえ長く苦しい生活が続いたとしても幸せを感じる時があって、自分はこの時のために生きていたんだ、この幸福や充実、豊かさはこれまでの数十年の苦しみが生んだものなのだ、この先辛いことがあってもそれに耐えていける。…と思えたならそれまでの経験は決して無駄ではない素晴らしいものなんです。苦悩もまた糧とし栄養として、時間がかかっても芽吹き根を伸ばし不動の大木となる生。苦しみと喜びが続く生。その音色は豊かで美しいと私は信じています。
第46話「ズゴーン!プリキュア最後の戦いニャ!」
○今週の出来事
①不吉を呼ぶ鳥、再び
先の戦いで深手を負い宮殿から離れた場所に隠れるノイズ。ファルセットは命令してくれれば自分が代わりにプリキュア討伐に出向くと具申します。素が出てきたのか、ちょっと軽くて陽気なしゃべり口調。ファルセットはお調子者なところがあります。
ファルセットの声を聞いて押し黙るノイズ。その反応を見て彼は益々お節介を焼きます。ついに我慢の限界を超えたノイズはファルセットを自分に取り込みます。取り込まれる瞬間、ファルセットから仮面が外れ地面に落ちて砕けます。意味合い的には洗脳が破綻したような感じかな。そもそも心を否定するノイズが部下を持つこと自体矛盾します。彼はその自己論理からして単独でいなくてはならない。
ファルセットを取り込んだノイズは傷が回復して元の力を発揮します。むしろ強くなっているかもしれない。取り込んでパワーアップはよくある手法ですが、この場合はより一層業を宿したと言えるかもしれません。彼は悲しみ、憎しみを否定しながらそれに染まって深みへ落ちていっている。
プリキュアを飲み込んだらどうなるか。再びノイズは宮殿へと向かいます。
オウムは国民の多くが石化、音吉とクレッシェンドトーンは封印、メフィストの意識は戻らず絶対絶命大ピンチだと騒ぎ立てます。前回までのおさらいご苦労様です。隣で訊いていたアフロディテは落ち着きなさいとオウムを諭します。この辺のやりとりは先のノイズとファルセットと対照的です。ノイズは腹を立て、アフロディテはキチンと取り合っています。
プリキュア達はクレッシェンドトーンを失ったチェストを見つめます。悲しみと無力感に沈むリズム、ミューズ、ビート。さしものハミィも重い空気に抗しがたい。
唐突にメロディは唄いだします。突然のことに呆けてかの彼女を見る3人。
「音吉さんはいつもニコニコしてたよね」
「クレッシェンドトーンは元気のない人がいると色んな音を出して励ましてくれた」
「だからさ、私達は元気でいようよ、ね」
彼女は自分を支え励ましてくれた人達から受け取ったものをその内にちゃんと宿している。
待ってましたとばかりにハミィもノリノリになって場を和まします。オウムが暢気過ぎると返しますがアフロディテはメロディとハミィの言うとおりだとふたりを支持します。
リズム、ミューズ、ビートも明るさを取り戻します。地味にここでトーン達が、僕達が版張ると言っているのがポイント。彼らから見てクレッシェンドトーンは親。彼女は音の源ではあるが旧世代の位置づけです。プリキュアと共に戦ってきたフェアリートーンは当世代の音の子ども達。子どもであるプリキュア、トーン達は今と未来の音楽を創り出す奏者。全ての音、強力な力を持っているわけではないけど、それらを生み出す因子を持っている。世代の継承がプリキュア、妖精共に行われています。
轟音と振動。空中に浮かんでいたコンサートホールから煙が上がっています。襲撃者はもちろんノイズ。深手を負わせたのに何故?と訝るプリキュア。ノイズは決着をつけようとプリキュアを呼びます。
②死せる生
「アフロディテ様、私達行ってきます」
明るく力強く答えるメロディ。プリキュア達の顔には不安や恐れはありません。振り返ったミューズにアフロディテは気をつけて、と言葉をかけます。ハミィとトーン達も出発します。
まるで遠足か何かに行くかのような出発に躍動感あるBGMが重なってとても明るく前向きなイメージを感じます。プリキュア的にいえば、これは出撃ではありません。彼女達は戦いに行くのではない。新しい何かを生み出すための出立(門出)です。今この時点で彼女達がノイズとどう決着がつくのか知り得なくても。子ども達は旅立ち、そこでまた成長していく。
プリキュアを迎え撃つノイズ。メロディ、リズム、ビートが肉弾戦を仕掛けます。ミューズは石の柱を蹴り飛ばして攻撃。ちょ、君パワー系?
4人でキックを決めて体勢が崩れたところで必殺技。メロディとリズムがアイコンタクトを取るのはもはやお約束。もしかしてこの流れはスー…ミラクルベルティエ!あ、違った。セパレーション×2、ソニック、シャワーの同時攻撃。
直撃を受けたノイズは全くの無傷。なんかもう、殴った方がダメージ与えられるんじゃないだろうか。さあ、どうする?と強者の余裕を見せるノイズを怯むことなくプリキュアは見返します。
「どんなことをしてもみんなと音楽を守ってみせる!」
「何故音楽を守るのだ?」
「大事なものだからに決まっているからじゃない!」
「音楽が幸せをもたらすと本気で思っているのか?」
「え…?」
やはりそう来たか。プリキュアは本質を外さない。この物語は音楽に託された心の物語。
「そもそもこの争いの始まりは伝説の楽譜、音楽が原因だ。音符に悪が宿れば不幸のメロディとなり、少し並び替えれば幸せのメロディとなる。だがそれも悪い心が宿ればすぐに不幸に変化する」
「そんなどちらにでも変わるような曖昧なモノ、無い方がいい。音楽など無意味だ!」
「そんなことない! だって、音楽が無い世界なんて寂しすぎるよ!」
「寂しさなど感じてはいない。誰も、何も、感じてはいない。喜びも悲しみも! 全ての音が消え去れば苦しみも消える! 何も感じない平穏な世界。これこそが究極の理想の世界だ!」
心があるから悲しみ、苦しみ、争いが起きる。ケンカしたり裏切ったり孤独を感じたりする。ストレスや人間関係に悩んで身を崩した人がいないと私は言えない。見たことがあるし、しょうもない遺産相続を巡っての親族同士の争いも見聞きしている。心がなければ悲しむことも苦しむことも裏切られることも孤独を感じることもないという言葉は浮世離れしてはいるが、現実逃避手段としての酒や麻薬とどれほど違うというのだろう? 苦しみから解放されたい、現実から目を背けたい、快楽を求めたいという心が結局は破滅や虚無感へと人を貶めるのではないか。
この戦いは生の肯定か否定ではない。生ける生か、死せる生かを問う戦いです。
プリキュアを一蹴したノイズは、自分が何故ダメージから回復したのか種明かしをします。メロディを吸収しようとするノイズ。メロディを見つめるリズムの表情が痛々しい。映画を思い出します。
すんでのところでメロディの手を掴んだのはバスドラとバリトン。メロディを捕まえていた力を断ち切ります。
ファルセットが取り込まれるのを目の当たりにしていたふたりは何故彼を飲み込んだのかノイズに問います。あいつは腹の立つ奴だが真っ直ぐだった、忠実な部下だったのに何故!?と怒気を込めて詰問するふたりに「あいつはうるさかった」とだけ答えるノイズ。「それだけ?それだけなのか?」「ああ」。無感情に話すノイズ。彼にとってファルセットはなんら価値あるものではありません。というか、ノイズは根源的に人を憎んでいるわけじゃない。心の在り方を問うている。
最後は役に立った、おかげで傷がいえた、と捕食者のように言うノイズに涙を流しながらバスドラとバリトンは「あいつの想いを何だと思っている!」「私達にも想いはあるんだぞ!」と詰め寄ります。細かいことですが上手い具合に命のやり取りについて言及を避けています。想い、つまり心を踏みにじったことに対してふたりはノイズに抗議しています。この戦いが心をベースにしていることの一つの例示です。
騒がしいな、とふたりを一蹴するノイズ。心をなくせばいいと語る彼は人の心を斟酌したり感じ取ったりしない。心に価値を置かない故に非情なエゴイストになっている。心を枯らせた人間というのは、自滅するか、不幸をまき散らすかどちらかになるのかもしれない。
プリキュアを飲み込もうとするノイズ。バスドラとバリトンはプリキュアを庇って飲み込まれます。取り込まれる間際「頼むぞ」とふたりは言い残します。
ふたりを取り込んだノイズは石化すると殻を破るように中から人型のノイズが出てきます。プリキュア最終決戦お約束の等身大勝負。人型の方が色々と都合よさそう。擬人化することで対比や類比しやすくなるし。
2度目の変身を遂げるノイズ。人の想いを踏みにじるノイズにプリキュアは怒りを燃やします。必殺技バンク発動。今度こそクロスロッドの出番。やった!本編久しぶりのスーパーカルテット。これが一番好きです。主にふたりの顔の近さ的な意味で。持てる限りの必殺技を使うと最終決戦感が増します。シャイニングサークルで足止めするもノイズに効果はなく割って出てくるとスーパカルテットを打撃で粉砕。ハートフルビートロックも砕かれます。しかしプリキュアは怯むことなくすぐさま連続で繰り出します。これは熱い。
「何度でもやるわ! ノイズ! あなたを倒すまで!」
「フィナーレ!」
ところがどっこいしょ、やっぱりダメ。ノイズはコンサートホールごとプリキュアを吹き飛ばします。たぶん、この戦いは倒すのが目的である限りプリキュアに勝ち目はないし彼を倒すことはできない。
③生ける生
プリキュアが敗北したことを声高々にメイジャーに伝えるノイズ。人々は不安に沈みます。「みな顔をあげなさい」。アフロディテはステージに立ちます。
変身が解けた響達は宮殿から音楽が聴こえてくることに気付きます。あー、そう来るんだ。パネェな。全く歪みねぇ。
アフロディテ指揮のもと、オーケストラが奏でられます。ノイズは宮殿に降り立ち何をしているのか尋ねます。
「みなとこうして演奏をするのは久しぶりですね。とても楽しいです。私は幸せです」
ノイズは苛立つと演奏していた人々の一部を石化します。驚きつつも人々は演奏を再開させます。その姿に戸惑い怯むノイズ。
「嬉しいときも、悲しいときも、苦しいときもどんなときも私達は音楽を奏でてきました」
「ノイズ、あなたがどんなに強くても私達から音楽を愛する心は奪えません!」
絶望的な状況、もはや為す術無く己の無力さ、不安、恐れを感じるのが当たり前の状況の中で、それでも自分を見失わず己の心に向き合いあらゆる束縛から解放されること、それが心の自由であり平穏。自分の意思で自らの運命を決められること。それは幸せなことの一つである。心は確かに外部からの影響を受ける。それは間違いないしだからこそ人は変わっていく。しかし同時に自分の中から発する不可侵の力をも持ちうる。絶望的な状況の中でも笑える、強く自分を保っていられる。これは映画の本編バージョンです。心の不可侵性、自由。その心を愛する気持ち。一人一人がそれを持っている。
ノイズは音楽を遮るために耳を塞ぐと「うるさい」と宮殿に残った人々を全て石化させます。メイジャーランドから音楽が消える。
遠目にそれを知った響達はまた守れなかったと悔やみます。
しかし音は絶対に無くならないとフェアリートーン達は音を出してシンプルな音楽を奏でます。その音色に響達は心を落ち着かせます。小さな音、小さな音楽。
トーン達は自分達だけでは小さな音だけど響達が一緒に演奏してくれたらもっと大きな音になって、もっとたくさん音が出せる、みんなが一緒なら色んな音楽を演奏できると言います。
「伝説の楽譜は真っ白ニャ。どんな曲でも創れるニャ。ハミィは響達の創った音楽が聴きたいニャ」
「私達の鼓動はまだ生きている。だから音楽は無くならないんだよね。絶対に」
「ノイズに消されたって創ればいいよね、何度でも」
「創りたい、そしてメイジャーランドのみんなと一緒に演奏するの」
「唄いたいなみんなと、思いっきり」
「聴かせてやろうよ、ノイズに私達のハーモニーを!」
「私達は絶対に諦めない!」
④次回予告
最終決戦仕様はお約束だと分かっていても熱い。
○トピック
奏の白ニーソと太ももはまだ生きている。だからこのトキメキは無くならないんだよね、絶対に。そんな回。
どこから手を付けて良いのか迷うくらいプリキュアロジック全開。素晴らしい。これだからプリキュアの最終決戦は面白くて熱い。
前回の感想でちょろっと書きましたが、この最終決戦は心の在り方、価値を問う戦いです。この物語は人の心を楽譜に書いている。一つ一つの音符が一人一人の心であり、音符の連なりが音楽を奏でるように、心と心の繋がりが幸せと不幸を奏でる。
しかしその心はひどく曖昧で不安定です。ちょっとした勘違い、すれ違いでそれまで築き上げてきた友情を失いかねない。人の言葉に惑わされ、傷つき、傷つけ合うこともあるものです。心には波がある。心が無くなれば苦しみが消えると言うノイズの主張は決して他人事ではありません。生まれてこなければこんなに苦しむことはなかったのに!という言葉はきっと世界から無くならない。先にも言ったようにそうした不安や苦しみに耐えられず心を壊してしまう人もいれば、苦しみから逃れるために酒や麻薬で紛らわす人もいる。
ノイズは見方を変えれば、苦しみから解放されたいと願う心の一つの帰結です。その結果が非情なエゴイスティックを生んでいる。心と心を繋がない。忠実な部下でも切り捨てるし他者から心を奪おうとする。それって世界が変わればいいんだっていう責任転嫁なんじゃないの。結局のところ彼は自分の心を守りたいだけとも言えます。「死せる生」と呼ぶのはそのためです。彼は生きているし生を否定しているわけではない。しかし彼の生き方は自滅的で破滅的なのです。心を持つ者でありながら心を否定する矛盾と歪み。永遠の孤独。ノイズをとおして解放を求める心の闇(病み)が打ち出されています。
そのノイズに立ち向かったのが今回バスドラ、バリトン、アフロディテ、メイジャーの人々です。彼らは一人一人に想い(心)があるのだと叫び、アフロディテは国民と共に音楽を奏でる。去年のハートキャッチでも砂漠化した世界に残されても人々が心に希望を持ち絶望しなかったように、心があるからこそ辛い状況や環境にも耐えられる強さがあること、一人一人がそれを持ち、時に苦しく悲しい出来事があっても心は常に受け止めて来たのだとアフロディテは云います。
簡単に言えば、この対峙は「心が無くなれば悲しくない」という主張に対する「心は悲しみを受け止められる。その上で幸せでいられる」です。彼女が幸せだと語るのは、外部環境、暴力や理不尽の中であっても人は心の自由を保ちうることを知っているからです。暴力が人を不幸せにするのではない。心が人を不幸せにする。ならば心が人を幸せにできる。アフロディテ達のような生き方は「生ける生」と呼べるでしょう。
どんなにノイズが人から心を奪おうとしても奪えないし、人は悲しみを乗り越えられる。この戦いが心を守る防衛戦ならこれで事実上ノイズとの戦いは決着がついています。しかしこの戦いは防衛戦ではない。だって終わってないしプリキュアはまだ何もしていない。ノイズが心を奪えないようにプリキュアはノイズを倒せない。
じゃあ、プリキュアは何をすればいいの?という話しになります。
その前に少しおさらいをすると、プリキュアの主張として主立ったものは「絶対許さない」「繋がり」「守る」ことです。特に本編や映画では「繋がる」ことと「守る」ことをそれぞれ分けて主要な場面として描いてもいます。6話でメロディがお互いを思い遣る心を守りたいと言ったように、セイレーンがみんなと繋がりたいと海に叫んだように、魔境の森で3人が絆を確かめ合いハミィ達を守ろうとしたように、映画でも親子の心や人々の心が繋がり、ハウリングから音楽を守ろうとしたようにこの物語では「繋がり」「守る」ことを強調しています。
絶対許さないというのは、彼女達が大切にしているものを脅かす相手に対して使われる言葉で、これは多分に怒りの感情が入っています。当然ですよね、大切なものを壊そうとする相手には誰だって怒りを覚える。でもこれは見方によっては復讐や報復とも言えます。だから本当に大切な力として、クレッシェンドトーンが言ったように守る力こそがプリキュアの力なのだと言及されています。
では、守るとは何なのか。防衛なのか、反対勢力抹殺なのか。違います。この物語が今までやってきたことは他者と繋がって愛情や友情を深め日常を豊かにすることです。悪の心と戦うと言ってミューズがやったことは「パパ大好き」です。プリキュアの守るという言葉の本質は、愛情や友情、優しさを大切にして人と繋がりながらそれを育んでいくことです。プリキュアは復讐や怒りでは決して戦いません。本当に大切なのはそうした感情を生む絆や優しさです。この優しさや愛情は心から生まれ、人と人の繋がりによって育まれています。
だからプリキュアは心そのものを肯定しなければなりません。論理的にはノイズの「心なんて無くなってしまえ」という心もまた心であり肯定し守らなければならないはずです。そのためには彼と繋がらなくてはならない。つまりこれはどちらかを否定する戦いではなく、包括し創造する戦いでなければなりません。不幸に染まる心、幸せを生む心、そのどちらも合わさった旋律を奏でる音楽を楽譜に起こす。その奏者としてプリキュアはいます。
ということで、個人的にはノイズの救済になると思っています。彼を救済するということは、すなわち響達の心、心そのものの希望と賛歌、可能性を提示するからです。まあ、別に倒してもいいんですがどちらの場合にしても響達が何を決断し何を生むのかそれが物語の胆です。
私が救済の話しをしたりそこに惹かれるのは、救済に関心があってそれを追求したいと思っているからです。救済というと罪が贖われたり、心の解放とか浄化をイメージしやすいと思いますがそんなご大層な話しではありません。要するに幸せになりたい、幸せになって欲しいという希望です。現実は理不尽で不条理で、人の心は弱く脆く曖昧でいい加減です。どうでもいいことで争ったり一喜一憂したりする。それが人間だと思うしそれを変えたいなどとは思いません。私が信じたいのは人間が持つ希望的な力です。心の不可侵性、自由でも愛情や優しさでも何でもいい。人間として生まれて良かった、この生を感謝し尊いと思えるそうした人間賛歌を謳いたい。「生ける生」の希望と力。それを心に持っていたい。
ってなことを言っている時点で私は理屈で考えすぎだってことも分かってます。本当はこういうのは知るものではなく感じて自ら体現していくものです。友達作ったり、彼女作ったり、子どもを育てたりする中で育むものだろうと思います。が、残念ながら私は人と接するのがストレスになる(刺激を受けやすい)ので社交的なことは勘弁願いたい。だからこんな椅子に座って物思いにふけるようなジメジメっとしたことをやっています。
この感想では物語を抽象化して現実と照合しながら解釈しています。この解釈をとおして私は自分の考え、経験を整理して自分の力となれるような強い心を持ちたいと思っている。それを現実にフィードバックする。この感想はその副産物に過ぎません。1話のときにも書きましたが、この感想はプリキュアの感想ではない。私の思考実験の軌跡です。他の作品でも琴線に触れれば感想を書いていますが、毎週見て何かしら考えながら1年をとおして深く考えられるのは現状プリキュアだけです。この機会を与えてくれた本シリーズへの感謝を忘れたことはありません。書き捨てに近いものではありますが、本作の魅力と感謝を残せるよう腐心してきたつもりです。
さて、この1年もあと2週間で終わります。心を音楽に託したこの物語がいかな賛歌を謳うのか。聴衆としてまた一人の心持つ者として待ち望みたいと思います。
①不吉を呼ぶ鳥、再び
先の戦いで深手を負い宮殿から離れた場所に隠れるノイズ。ファルセットは命令してくれれば自分が代わりにプリキュア討伐に出向くと具申します。素が出てきたのか、ちょっと軽くて陽気なしゃべり口調。ファルセットはお調子者なところがあります。
ファルセットの声を聞いて押し黙るノイズ。その反応を見て彼は益々お節介を焼きます。ついに我慢の限界を超えたノイズはファルセットを自分に取り込みます。取り込まれる瞬間、ファルセットから仮面が外れ地面に落ちて砕けます。意味合い的には洗脳が破綻したような感じかな。そもそも心を否定するノイズが部下を持つこと自体矛盾します。彼はその自己論理からして単独でいなくてはならない。
ファルセットを取り込んだノイズは傷が回復して元の力を発揮します。むしろ強くなっているかもしれない。取り込んでパワーアップはよくある手法ですが、この場合はより一層業を宿したと言えるかもしれません。彼は悲しみ、憎しみを否定しながらそれに染まって深みへ落ちていっている。
プリキュアを飲み込んだらどうなるか。再びノイズは宮殿へと向かいます。
オウムは国民の多くが石化、音吉とクレッシェンドトーンは封印、メフィストの意識は戻らず絶対絶命大ピンチだと騒ぎ立てます。前回までのおさらいご苦労様です。隣で訊いていたアフロディテは落ち着きなさいとオウムを諭します。この辺のやりとりは先のノイズとファルセットと対照的です。ノイズは腹を立て、アフロディテはキチンと取り合っています。
プリキュア達はクレッシェンドトーンを失ったチェストを見つめます。悲しみと無力感に沈むリズム、ミューズ、ビート。さしものハミィも重い空気に抗しがたい。
唐突にメロディは唄いだします。突然のことに呆けてかの彼女を見る3人。
「音吉さんはいつもニコニコしてたよね」
「クレッシェンドトーンは元気のない人がいると色んな音を出して励ましてくれた」
「だからさ、私達は元気でいようよ、ね」
彼女は自分を支え励ましてくれた人達から受け取ったものをその内にちゃんと宿している。
待ってましたとばかりにハミィもノリノリになって場を和まします。オウムが暢気過ぎると返しますがアフロディテはメロディとハミィの言うとおりだとふたりを支持します。
リズム、ミューズ、ビートも明るさを取り戻します。地味にここでトーン達が、僕達が版張ると言っているのがポイント。彼らから見てクレッシェンドトーンは親。彼女は音の源ではあるが旧世代の位置づけです。プリキュアと共に戦ってきたフェアリートーンは当世代の音の子ども達。子どもであるプリキュア、トーン達は今と未来の音楽を創り出す奏者。全ての音、強力な力を持っているわけではないけど、それらを生み出す因子を持っている。世代の継承がプリキュア、妖精共に行われています。
轟音と振動。空中に浮かんでいたコンサートホールから煙が上がっています。襲撃者はもちろんノイズ。深手を負わせたのに何故?と訝るプリキュア。ノイズは決着をつけようとプリキュアを呼びます。
②死せる生
「アフロディテ様、私達行ってきます」
明るく力強く答えるメロディ。プリキュア達の顔には不安や恐れはありません。振り返ったミューズにアフロディテは気をつけて、と言葉をかけます。ハミィとトーン達も出発します。
まるで遠足か何かに行くかのような出発に躍動感あるBGMが重なってとても明るく前向きなイメージを感じます。プリキュア的にいえば、これは出撃ではありません。彼女達は戦いに行くのではない。新しい何かを生み出すための出立(門出)です。今この時点で彼女達がノイズとどう決着がつくのか知り得なくても。子ども達は旅立ち、そこでまた成長していく。
プリキュアを迎え撃つノイズ。メロディ、リズム、ビートが肉弾戦を仕掛けます。ミューズは石の柱を蹴り飛ばして攻撃。ちょ、君パワー系?
4人でキックを決めて体勢が崩れたところで必殺技。メロディとリズムがアイコンタクトを取るのはもはやお約束。もしかしてこの流れはスー…ミラクルベルティエ!あ、違った。セパレーション×2、ソニック、シャワーの同時攻撃。
直撃を受けたノイズは全くの無傷。なんかもう、殴った方がダメージ与えられるんじゃないだろうか。さあ、どうする?と強者の余裕を見せるノイズを怯むことなくプリキュアは見返します。
「どんなことをしてもみんなと音楽を守ってみせる!」
「何故音楽を守るのだ?」
「大事なものだからに決まっているからじゃない!」
「音楽が幸せをもたらすと本気で思っているのか?」
「え…?」
やはりそう来たか。プリキュアは本質を外さない。この物語は音楽に託された心の物語。
「そもそもこの争いの始まりは伝説の楽譜、音楽が原因だ。音符に悪が宿れば不幸のメロディとなり、少し並び替えれば幸せのメロディとなる。だがそれも悪い心が宿ればすぐに不幸に変化する」
「そんなどちらにでも変わるような曖昧なモノ、無い方がいい。音楽など無意味だ!」
「そんなことない! だって、音楽が無い世界なんて寂しすぎるよ!」
「寂しさなど感じてはいない。誰も、何も、感じてはいない。喜びも悲しみも! 全ての音が消え去れば苦しみも消える! 何も感じない平穏な世界。これこそが究極の理想の世界だ!」
心があるから悲しみ、苦しみ、争いが起きる。ケンカしたり裏切ったり孤独を感じたりする。ストレスや人間関係に悩んで身を崩した人がいないと私は言えない。見たことがあるし、しょうもない遺産相続を巡っての親族同士の争いも見聞きしている。心がなければ悲しむことも苦しむことも裏切られることも孤独を感じることもないという言葉は浮世離れしてはいるが、現実逃避手段としての酒や麻薬とどれほど違うというのだろう? 苦しみから解放されたい、現実から目を背けたい、快楽を求めたいという心が結局は破滅や虚無感へと人を貶めるのではないか。
この戦いは生の肯定か否定ではない。生ける生か、死せる生かを問う戦いです。
プリキュアを一蹴したノイズは、自分が何故ダメージから回復したのか種明かしをします。メロディを吸収しようとするノイズ。メロディを見つめるリズムの表情が痛々しい。映画を思い出します。
すんでのところでメロディの手を掴んだのはバスドラとバリトン。メロディを捕まえていた力を断ち切ります。
ファルセットが取り込まれるのを目の当たりにしていたふたりは何故彼を飲み込んだのかノイズに問います。あいつは腹の立つ奴だが真っ直ぐだった、忠実な部下だったのに何故!?と怒気を込めて詰問するふたりに「あいつはうるさかった」とだけ答えるノイズ。「それだけ?それだけなのか?」「ああ」。無感情に話すノイズ。彼にとってファルセットはなんら価値あるものではありません。というか、ノイズは根源的に人を憎んでいるわけじゃない。心の在り方を問うている。
最後は役に立った、おかげで傷がいえた、と捕食者のように言うノイズに涙を流しながらバスドラとバリトンは「あいつの想いを何だと思っている!」「私達にも想いはあるんだぞ!」と詰め寄ります。細かいことですが上手い具合に命のやり取りについて言及を避けています。想い、つまり心を踏みにじったことに対してふたりはノイズに抗議しています。この戦いが心をベースにしていることの一つの例示です。
騒がしいな、とふたりを一蹴するノイズ。心をなくせばいいと語る彼は人の心を斟酌したり感じ取ったりしない。心に価値を置かない故に非情なエゴイストになっている。心を枯らせた人間というのは、自滅するか、不幸をまき散らすかどちらかになるのかもしれない。
プリキュアを飲み込もうとするノイズ。バスドラとバリトンはプリキュアを庇って飲み込まれます。取り込まれる間際「頼むぞ」とふたりは言い残します。
ふたりを取り込んだノイズは石化すると殻を破るように中から人型のノイズが出てきます。プリキュア最終決戦お約束の等身大勝負。人型の方が色々と都合よさそう。擬人化することで対比や類比しやすくなるし。
2度目の変身を遂げるノイズ。人の想いを踏みにじるノイズにプリキュアは怒りを燃やします。必殺技バンク発動。今度こそクロスロッドの出番。やった!本編久しぶりのスーパーカルテット。これが一番好きです。主にふたりの顔の近さ的な意味で。持てる限りの必殺技を使うと最終決戦感が増します。シャイニングサークルで足止めするもノイズに効果はなく割って出てくるとスーパカルテットを打撃で粉砕。ハートフルビートロックも砕かれます。しかしプリキュアは怯むことなくすぐさま連続で繰り出します。これは熱い。
「何度でもやるわ! ノイズ! あなたを倒すまで!」
「フィナーレ!」
ところがどっこいしょ、やっぱりダメ。ノイズはコンサートホールごとプリキュアを吹き飛ばします。たぶん、この戦いは倒すのが目的である限りプリキュアに勝ち目はないし彼を倒すことはできない。
③生ける生
プリキュアが敗北したことを声高々にメイジャーに伝えるノイズ。人々は不安に沈みます。「みな顔をあげなさい」。アフロディテはステージに立ちます。
変身が解けた響達は宮殿から音楽が聴こえてくることに気付きます。あー、そう来るんだ。パネェな。全く歪みねぇ。
アフロディテ指揮のもと、オーケストラが奏でられます。ノイズは宮殿に降り立ち何をしているのか尋ねます。
「みなとこうして演奏をするのは久しぶりですね。とても楽しいです。私は幸せです」
ノイズは苛立つと演奏していた人々の一部を石化します。驚きつつも人々は演奏を再開させます。その姿に戸惑い怯むノイズ。
「嬉しいときも、悲しいときも、苦しいときもどんなときも私達は音楽を奏でてきました」
「ノイズ、あなたがどんなに強くても私達から音楽を愛する心は奪えません!」
絶望的な状況、もはや為す術無く己の無力さ、不安、恐れを感じるのが当たり前の状況の中で、それでも自分を見失わず己の心に向き合いあらゆる束縛から解放されること、それが心の自由であり平穏。自分の意思で自らの運命を決められること。それは幸せなことの一つである。心は確かに外部からの影響を受ける。それは間違いないしだからこそ人は変わっていく。しかし同時に自分の中から発する不可侵の力をも持ちうる。絶望的な状況の中でも笑える、強く自分を保っていられる。これは映画の本編バージョンです。心の不可侵性、自由。その心を愛する気持ち。一人一人がそれを持っている。
ノイズは音楽を遮るために耳を塞ぐと「うるさい」と宮殿に残った人々を全て石化させます。メイジャーランドから音楽が消える。
遠目にそれを知った響達はまた守れなかったと悔やみます。
しかし音は絶対に無くならないとフェアリートーン達は音を出してシンプルな音楽を奏でます。その音色に響達は心を落ち着かせます。小さな音、小さな音楽。
トーン達は自分達だけでは小さな音だけど響達が一緒に演奏してくれたらもっと大きな音になって、もっとたくさん音が出せる、みんなが一緒なら色んな音楽を演奏できると言います。
「伝説の楽譜は真っ白ニャ。どんな曲でも創れるニャ。ハミィは響達の創った音楽が聴きたいニャ」
「私達の鼓動はまだ生きている。だから音楽は無くならないんだよね。絶対に」
「ノイズに消されたって創ればいいよね、何度でも」
「創りたい、そしてメイジャーランドのみんなと一緒に演奏するの」
「唄いたいなみんなと、思いっきり」
「聴かせてやろうよ、ノイズに私達のハーモニーを!」
「私達は絶対に諦めない!」
④次回予告
最終決戦仕様はお約束だと分かっていても熱い。
○トピック
奏の白ニーソと太ももはまだ生きている。だからこのトキメキは無くならないんだよね、絶対に。そんな回。
どこから手を付けて良いのか迷うくらいプリキュアロジック全開。素晴らしい。これだからプリキュアの最終決戦は面白くて熱い。
前回の感想でちょろっと書きましたが、この最終決戦は心の在り方、価値を問う戦いです。この物語は人の心を楽譜に書いている。一つ一つの音符が一人一人の心であり、音符の連なりが音楽を奏でるように、心と心の繋がりが幸せと不幸を奏でる。
しかしその心はひどく曖昧で不安定です。ちょっとした勘違い、すれ違いでそれまで築き上げてきた友情を失いかねない。人の言葉に惑わされ、傷つき、傷つけ合うこともあるものです。心には波がある。心が無くなれば苦しみが消えると言うノイズの主張は決して他人事ではありません。生まれてこなければこんなに苦しむことはなかったのに!という言葉はきっと世界から無くならない。先にも言ったようにそうした不安や苦しみに耐えられず心を壊してしまう人もいれば、苦しみから逃れるために酒や麻薬で紛らわす人もいる。
ノイズは見方を変えれば、苦しみから解放されたいと願う心の一つの帰結です。その結果が非情なエゴイスティックを生んでいる。心と心を繋がない。忠実な部下でも切り捨てるし他者から心を奪おうとする。それって世界が変わればいいんだっていう責任転嫁なんじゃないの。結局のところ彼は自分の心を守りたいだけとも言えます。「死せる生」と呼ぶのはそのためです。彼は生きているし生を否定しているわけではない。しかし彼の生き方は自滅的で破滅的なのです。心を持つ者でありながら心を否定する矛盾と歪み。永遠の孤独。ノイズをとおして解放を求める心の闇(病み)が打ち出されています。
そのノイズに立ち向かったのが今回バスドラ、バリトン、アフロディテ、メイジャーの人々です。彼らは一人一人に想い(心)があるのだと叫び、アフロディテは国民と共に音楽を奏でる。去年のハートキャッチでも砂漠化した世界に残されても人々が心に希望を持ち絶望しなかったように、心があるからこそ辛い状況や環境にも耐えられる強さがあること、一人一人がそれを持ち、時に苦しく悲しい出来事があっても心は常に受け止めて来たのだとアフロディテは云います。
簡単に言えば、この対峙は「心が無くなれば悲しくない」という主張に対する「心は悲しみを受け止められる。その上で幸せでいられる」です。彼女が幸せだと語るのは、外部環境、暴力や理不尽の中であっても人は心の自由を保ちうることを知っているからです。暴力が人を不幸せにするのではない。心が人を不幸せにする。ならば心が人を幸せにできる。アフロディテ達のような生き方は「生ける生」と呼べるでしょう。
どんなにノイズが人から心を奪おうとしても奪えないし、人は悲しみを乗り越えられる。この戦いが心を守る防衛戦ならこれで事実上ノイズとの戦いは決着がついています。しかしこの戦いは防衛戦ではない。だって終わってないしプリキュアはまだ何もしていない。ノイズが心を奪えないようにプリキュアはノイズを倒せない。
じゃあ、プリキュアは何をすればいいの?という話しになります。
その前に少しおさらいをすると、プリキュアの主張として主立ったものは「絶対許さない」「繋がり」「守る」ことです。特に本編や映画では「繋がる」ことと「守る」ことをそれぞれ分けて主要な場面として描いてもいます。6話でメロディがお互いを思い遣る心を守りたいと言ったように、セイレーンがみんなと繋がりたいと海に叫んだように、魔境の森で3人が絆を確かめ合いハミィ達を守ろうとしたように、映画でも親子の心や人々の心が繋がり、ハウリングから音楽を守ろうとしたようにこの物語では「繋がり」「守る」ことを強調しています。
絶対許さないというのは、彼女達が大切にしているものを脅かす相手に対して使われる言葉で、これは多分に怒りの感情が入っています。当然ですよね、大切なものを壊そうとする相手には誰だって怒りを覚える。でもこれは見方によっては復讐や報復とも言えます。だから本当に大切な力として、クレッシェンドトーンが言ったように守る力こそがプリキュアの力なのだと言及されています。
では、守るとは何なのか。防衛なのか、反対勢力抹殺なのか。違います。この物語が今までやってきたことは他者と繋がって愛情や友情を深め日常を豊かにすることです。悪の心と戦うと言ってミューズがやったことは「パパ大好き」です。プリキュアの守るという言葉の本質は、愛情や友情、優しさを大切にして人と繋がりながらそれを育んでいくことです。プリキュアは復讐や怒りでは決して戦いません。本当に大切なのはそうした感情を生む絆や優しさです。この優しさや愛情は心から生まれ、人と人の繋がりによって育まれています。
だからプリキュアは心そのものを肯定しなければなりません。論理的にはノイズの「心なんて無くなってしまえ」という心もまた心であり肯定し守らなければならないはずです。そのためには彼と繋がらなくてはならない。つまりこれはどちらかを否定する戦いではなく、包括し創造する戦いでなければなりません。不幸に染まる心、幸せを生む心、そのどちらも合わさった旋律を奏でる音楽を楽譜に起こす。その奏者としてプリキュアはいます。
ということで、個人的にはノイズの救済になると思っています。彼を救済するということは、すなわち響達の心、心そのものの希望と賛歌、可能性を提示するからです。まあ、別に倒してもいいんですがどちらの場合にしても響達が何を決断し何を生むのかそれが物語の胆です。
私が救済の話しをしたりそこに惹かれるのは、救済に関心があってそれを追求したいと思っているからです。救済というと罪が贖われたり、心の解放とか浄化をイメージしやすいと思いますがそんなご大層な話しではありません。要するに幸せになりたい、幸せになって欲しいという希望です。現実は理不尽で不条理で、人の心は弱く脆く曖昧でいい加減です。どうでもいいことで争ったり一喜一憂したりする。それが人間だと思うしそれを変えたいなどとは思いません。私が信じたいのは人間が持つ希望的な力です。心の不可侵性、自由でも愛情や優しさでも何でもいい。人間として生まれて良かった、この生を感謝し尊いと思えるそうした人間賛歌を謳いたい。「生ける生」の希望と力。それを心に持っていたい。
ってなことを言っている時点で私は理屈で考えすぎだってことも分かってます。本当はこういうのは知るものではなく感じて自ら体現していくものです。友達作ったり、彼女作ったり、子どもを育てたりする中で育むものだろうと思います。が、残念ながら私は人と接するのがストレスになる(刺激を受けやすい)ので社交的なことは勘弁願いたい。だからこんな椅子に座って物思いにふけるようなジメジメっとしたことをやっています。
この感想では物語を抽象化して現実と照合しながら解釈しています。この解釈をとおして私は自分の考え、経験を整理して自分の力となれるような強い心を持ちたいと思っている。それを現実にフィードバックする。この感想はその副産物に過ぎません。1話のときにも書きましたが、この感想はプリキュアの感想ではない。私の思考実験の軌跡です。他の作品でも琴線に触れれば感想を書いていますが、毎週見て何かしら考えながら1年をとおして深く考えられるのは現状プリキュアだけです。この機会を与えてくれた本シリーズへの感謝を忘れたことはありません。書き捨てに近いものではありますが、本作の魅力と感謝を残せるよう腐心してきたつもりです。
さて、この1年もあと2週間で終わります。心を音楽に託したこの物語がいかな賛歌を謳うのか。聴衆としてまた一人の心持つ者として待ち望みたいと思います。
第45話「ブォー~ン♪ノイズの好きにはさせないニャ!」
○今週の出来事
①不吉を運ぶ鳥
メフィストを看護するアフロディテのもとにオウムが慌ててやってきます。ノイズがメイジャーランドに出現。
メイジャーランドはノイズに制圧(石化)され、残るは宮殿のみ。この事態をプリキュアに知らせなければ…アフロディテの希望を砕くようにノイズはプリキュアは来ないと告げます。事情を説明しようとしたファルセットのおしゃべりを遮るノイズ。ファルセットはノイズの使いっ走りであって仲間ではありません。
アフロディテはオウムに託してノイズに対峙。宮殿を石化させようとするノイズに対して、アフロディテはバリアで対抗。映画でもそうですがアフロディテは意外と強い。
プリキュアはオウムに案内されながら鍵盤の橋を飛びます。あれ、戦艦調べの館は? たぶん足が遅いのでプリキュアが先行した模様。
いくらアフロディテが有能でもラスボス相手に抗しきれるはずもなくバリアは割れてしまいます。割れるのがバリアの使命。
そこにプリキュアが駆けつけます。ミューズは母の無事を知って安堵。プリキュアは勢いよく啖呵を切ってノイズに挑みます。が、突風で落下。ハミィが鍵盤を出してフォローします。これビートとミューズも使えそうな気がするんだけどどうなんだろ。
ノイズはしぶとい奴らだと悪態をつきながらも、本当に厄介なのはプリキュアではないと言います。え、この流れだとハミィのこと!?
頼もしい用心棒を連れているな、とノイズに言われ「仲間と呼んでください」と訂正するクレッシェンドトーン。彼女の口から「仲間」とか出るとは思わなかった。あんたポジション的に神様だろ。プリキュアを試した上で力を貸してるくせに。一番食えないのあんただから。
クレッシェンドトーンは挑むように今度こそ決着をつけようとノイズに言います。事情が分からないプリキュアに彼女は昔の話しだと答えます。しかしノイズは昨日のことのように憶えていると怨みを込めます。かつてメイジャーを滅ぼそうとしたときに阻んだのが音吉とクレッシェンドトーン。クレッシェンドトーンは魔境の森に封じたものの音吉によって封印された、この怨みを忘れたことはなかったとノイズは述懐します。メフィストを洗脳してマイナーランドを作ったのも再び音楽を世界から消すため。早い話、全部の元凶はこの人。
ミューズは単身躍り出ます。ノイズの行いによって一番苦しんだのはこの子です。「ママがどんなに辛い思いだったかあなたに分かる?」怒りと悲しみを込めながらノイズを殴ります。「分からんな」と一蹴。
続いてビートも飛び出します。メフィスト様もトリオも音楽を愛するメイジャーの住人だったのに。彼らに罪は無いのに大好きな音楽でみんなを悲しませるなんて酷すぎるとノイズを非難します。ミューズもビートもノイズによって歪められた人達の代弁者として怒りをぶつけていますが、実質的には彼女達自身の怒りや怨みもあると思われます。ノイズの影響を直接的、間接的に受けているのは彼女達です。その点でメロディとリズムはふたりと比べて私怨が薄くここで飛び出しません。
「人の心など簡単に染まる、愚かな奴らだ」とこれまた切って捨てるノイズ。でもその洗脳も完全ではないんだけどね。人の想いはどうあっても自由にはならない。良くも悪くも。
ノイズを応援するファルセットにビートは利用されているだけだと訴えます。が、ファルセットは何のことだか分からない様子。ビートもノイズに返り討ち。後半の戦闘との対比にもなりますが、ここでのミューズとビートはほぼ私怨や怒りによって身を投じています。プリキュアでは復讐や私怨は戦う力にはなりません。
ノイズは4人まとめて吹っ飛ばします。クレッシェンドトーン「しっかり!プリキュア!」。さっき仲間だって言った傍からこれだよ。だからあんたは神様ポジションなんだよ。
プリキュアは立ち上がり、よくも罪もない人達を悲しませた、絶対に許さないと闘志を燃やします。未だにノイズを倒すのか和解するのか読めない展開。今まで絶対に許しているんだけど。
必殺技の総攻撃。ファルセットに通じなかったものがノイズに通じるはずもなく破られます。ノイズの反撃をクレッシェンドトーンが弾きます。クレッシェンドトーンはノイズに上をご覧なさいと示すとそこには…。
「なんだ…あれは?」
初めてこの番組でまともなリアクションしてくれたのがラスボスってどうなの。
調べの館の準備は万端。完全にプリキュアは時間稼ぎ。
②復讐
音吉「覚悟!」。殺る気満々です。
パイプオルガンの音色を聴いて苦しみ出すノイズ。こうかはばつぐんだ!
その音色にアンサンブルを加えます。もう完全にプリキュアは動力扱い。戦っているのは音吉さんとクレッシェンドトーンです。この戦いは旧世代がメイン。調べの館からさらに波動砲発射。
放送スケジュール的にまだ数話残っているのでここで倒してはやることが無くなります。ノイズは吸収した音符の力が加わって以前よりも強力になっていました。音吉さんの切り札敗れたり。音楽を否定する割りに不幸のメロディで復活してパワーアップって結局音楽の力使ってない? 彼が攻撃を退ける際に鼓動の音が聞えたのは意味深です。それは彼に心のビートがあることを示しているようにも見えます。
ノイズは音吉さんを捕まえ昔年の怨みを晴らすために彼を封印しようとします。ミューズは飛び出し音吉さんに手を伸ばします。繋がれる手。「後は頼む」。しかし音吉さんは孫の手を放して突き放すとノイズに封印されてしまいます。目の前の出来事に涙を流すミューズ。バルーンスカートならモコモコとはいえ中が見えます。スパッツとは違うのだよ、スパッツとは。
音吉さんはノイズが封じられていた石版に封じられます。意趣返しか。
復讐を果たし悦ぶノイズ。この人も大概感情的だな。
諦めかけるプリキュアをクレッシェンドトーンは励まします。プリキュアの力の源は誰かを守りたいという心。あなた達なら新たな音楽を奏でられるはずだと言います。地面に倒れて涙を浮かべながら頬を染めているミューズの表情がエロい。私はこの表情を守りたい(さっきから最低だよこの感想)。
ノイズはクレッシェンドトーンを封印しようとします。ビートソニックが炸裂。プリキュアはみんなを守るために起ち上がります。オーラを身に纏い打撃でノイズを圧倒。必殺技とかパイプオルガンなんて必要なかった。レベルを上げて物理で殴れば事足りました。
この世界に音楽は必要ない!と言うノイズに、音楽は私達に勇気をくれる大切な力だとプリキュアは答えます。4人のパッショナートハーモニーによってノイズは瀕死。ファルセットが横槍を入れます。満身創痍になりながらもノイズはプリキュアを封印しようとします。クレッシェンドトーンは残った力でプリキュアを助け身代わりに封印されてしまいます。
「プリキュア、この世界の未来をあなた達に託します。今の強くなったあなた達ならきっとやってくれる。そう信じています」
音吉さんの横に並んで封じられるクレッシェンドトーン。
封印が完了すると同時にノイズも気絶。ファルセットは彼を連れて退却。
痛み分け…というには犠牲は大きい。
③次回予告
てっきり後頭部が伸びたりするのかと思ってました。
○トピック
新年早々「神は死んだ」。そんな出だし。
前回響達が自らの心で音符を生み出したことを受けて、クレッシェンドトーンと音吉さんは新しい音楽が生まれるのだと語ったわけですが、それを裏付けるように今回プリキュアに託しています。この流れは前作ハートキャッチと似た構成。キュアフラワーとデューンの戦いがブロッサム世代に引き継がれたように、ノイズとの戦いがメロディ世代に引き継がれています。
音吉さんやクレッシェンドトーンは大人ポジションの上位版(戦える人達)です。プリキュアでは大人は子どもを暖かく見守り励ましますが決して余計な手出しはしません。彼女達の成長を見守るのがプリキュアの大人達の姿勢です。これはシリーズ通して一貫しています。子ども達が困難を克服してこその成長物語です。旧世代の人達が出しゃばって解決しても意味はありません。
また、音吉さん達からすればノイズは倒すべき宿敵(悪)ですが響達にはまだ変化の余地があります。これまで戦ってきた相手とは和解しています。ノイズに対してもその可能性がある。倒すとしても彼女達がこれまで築いてきたことの集大成となるでしょう。知らないことがあるのも、間違うことがあるのも子どもだからです(大人でもそうなんだけど)。しかし子ども達には未来を創る力や可能性がある。音吉さん達が「終わらせる」世代だとすれば、響達は「始める」世代だと言えます。この戦いがプリキュアに託されるのは当然の帰結です。
ちなみに今回プリキュアはノイズをボコボコにしていますが、これを考慮すると単純に彼を倒すという結末になる可能性はかなり薄くなりました。単純な勧善懲悪でなら今回で決着がつけられたはずです。次回予告を見るにノイズはさらに進化するようなので、それに伴って戦いの意味は拡張されるものと考えられます。プリキュアからすれば新しい音楽、未来の創造の具体的な提示が必要になる。この辺りがプリキュアらしい。ノイズ抹殺兵器(オルガン)を使って倒すだとか、みんなを守るために力を引き出して倒すだけでは物語は終れない。
ここからちょっと余談。
ノイズとの戦いは生の肯定と否定の意味が入っていると思っていたんですが、正確には異なるかもしれません。ノイズは人々を石化させています。もし彼がこの世界を悲しみに満ちたものにしようとするなら石化させる必要は無いはずです。生を否定するなら殺せばいい。ゴーヤーンなんて地球を消滅させているしデューンは砂漠化させている。ノイズは音楽が必要ないと言い、人を石化させることで音楽を消しています。この物語における音楽とは心です。彼は心を否定している。「心=生」と捉えていましたが事はもう少し込み入っているかもしれない。ではその心とはどういうものか。この物語で描いてきた心とは、時に人を疑い、憎しみ、裏切り、他者に惑わされるものです。悪い面だけを抜き出せばそうなります。ノイズが悲しみの権化という設定がどこまで使われるか分かりませんが、彼は心の暗さ、不確かさを否定していると言えないだろうか。ノイズもまた生の枠組の中でその在り様の一つを訴えているのかもしれません。
要するに心がなければ裏切られることも悲しむこともないんじゃない? という問題提起。ノイズは感情が無いわけではないし超然としているわけではない。クレッシェンドトーンと対を為す悪の権化というよりどちらかといえば復讐者のソレに近い。誰かを恨むのを超えて、心そのものを憎んでいる。その意味で全ての音の源であるクレッシェンドトーンを封じることは神殺しとも言えます。創造主ごと心を消してしまえ、と。
それに対してプリキュアは音楽(心)は私達に勇気をくれる大切な力だと言います。この戦いは心の在り方、心の裏と表、存在の意味を巡る話しにもなっています。プリキュアらしい思想戦。プリキュア自身人を疑い、憎しみ、裏切り、惑わされたことがある人々です。それでも彼女達は音楽(心)が必要だと言う。ある意味でこの戦いはとても人間臭い。神が死んでも人は音楽を奏で続けようと立ち上がる。
プリキュアにおける勝利とはすなわち幸福の創造、日常の価値の提示、人間の肯定です。それをどのように引き出すか、ここにプリキュアの戦いの面白さがあります。
①不吉を運ぶ鳥
メフィストを看護するアフロディテのもとにオウムが慌ててやってきます。ノイズがメイジャーランドに出現。
メイジャーランドはノイズに制圧(石化)され、残るは宮殿のみ。この事態をプリキュアに知らせなければ…アフロディテの希望を砕くようにノイズはプリキュアは来ないと告げます。事情を説明しようとしたファルセットのおしゃべりを遮るノイズ。ファルセットはノイズの使いっ走りであって仲間ではありません。
アフロディテはオウムに託してノイズに対峙。宮殿を石化させようとするノイズに対して、アフロディテはバリアで対抗。映画でもそうですがアフロディテは意外と強い。
プリキュアはオウムに案内されながら鍵盤の橋を飛びます。あれ、戦艦調べの館は? たぶん足が遅いのでプリキュアが先行した模様。
いくらアフロディテが有能でもラスボス相手に抗しきれるはずもなくバリアは割れてしまいます。割れるのがバリアの使命。
そこにプリキュアが駆けつけます。ミューズは母の無事を知って安堵。プリキュアは勢いよく啖呵を切ってノイズに挑みます。が、突風で落下。ハミィが鍵盤を出してフォローします。これビートとミューズも使えそうな気がするんだけどどうなんだろ。
ノイズはしぶとい奴らだと悪態をつきながらも、本当に厄介なのはプリキュアではないと言います。え、この流れだとハミィのこと!?
頼もしい用心棒を連れているな、とノイズに言われ「仲間と呼んでください」と訂正するクレッシェンドトーン。彼女の口から「仲間」とか出るとは思わなかった。あんたポジション的に神様だろ。プリキュアを試した上で力を貸してるくせに。一番食えないのあんただから。
クレッシェンドトーンは挑むように今度こそ決着をつけようとノイズに言います。事情が分からないプリキュアに彼女は昔の話しだと答えます。しかしノイズは昨日のことのように憶えていると怨みを込めます。かつてメイジャーを滅ぼそうとしたときに阻んだのが音吉とクレッシェンドトーン。クレッシェンドトーンは魔境の森に封じたものの音吉によって封印された、この怨みを忘れたことはなかったとノイズは述懐します。メフィストを洗脳してマイナーランドを作ったのも再び音楽を世界から消すため。早い話、全部の元凶はこの人。
ミューズは単身躍り出ます。ノイズの行いによって一番苦しんだのはこの子です。「ママがどんなに辛い思いだったかあなたに分かる?」怒りと悲しみを込めながらノイズを殴ります。「分からんな」と一蹴。
続いてビートも飛び出します。メフィスト様もトリオも音楽を愛するメイジャーの住人だったのに。彼らに罪は無いのに大好きな音楽でみんなを悲しませるなんて酷すぎるとノイズを非難します。ミューズもビートもノイズによって歪められた人達の代弁者として怒りをぶつけていますが、実質的には彼女達自身の怒りや怨みもあると思われます。ノイズの影響を直接的、間接的に受けているのは彼女達です。その点でメロディとリズムはふたりと比べて私怨が薄くここで飛び出しません。
「人の心など簡単に染まる、愚かな奴らだ」とこれまた切って捨てるノイズ。でもその洗脳も完全ではないんだけどね。人の想いはどうあっても自由にはならない。良くも悪くも。
ノイズを応援するファルセットにビートは利用されているだけだと訴えます。が、ファルセットは何のことだか分からない様子。ビートもノイズに返り討ち。後半の戦闘との対比にもなりますが、ここでのミューズとビートはほぼ私怨や怒りによって身を投じています。プリキュアでは復讐や私怨は戦う力にはなりません。
ノイズは4人まとめて吹っ飛ばします。クレッシェンドトーン「しっかり!プリキュア!」。さっき仲間だって言った傍からこれだよ。だからあんたは神様ポジションなんだよ。
プリキュアは立ち上がり、よくも罪もない人達を悲しませた、絶対に許さないと闘志を燃やします。未だにノイズを倒すのか和解するのか読めない展開。今まで絶対に許しているんだけど。
必殺技の総攻撃。ファルセットに通じなかったものがノイズに通じるはずもなく破られます。ノイズの反撃をクレッシェンドトーンが弾きます。クレッシェンドトーンはノイズに上をご覧なさいと示すとそこには…。
「なんだ…あれは?」
初めてこの番組でまともなリアクションしてくれたのがラスボスってどうなの。
調べの館の準備は万端。完全にプリキュアは時間稼ぎ。
②復讐
音吉「覚悟!」。殺る気満々です。
パイプオルガンの音色を聴いて苦しみ出すノイズ。こうかはばつぐんだ!
その音色にアンサンブルを加えます。もう完全にプリキュアは動力扱い。戦っているのは音吉さんとクレッシェンドトーンです。この戦いは旧世代がメイン。調べの館からさらに波動砲発射。
放送スケジュール的にまだ数話残っているのでここで倒してはやることが無くなります。ノイズは吸収した音符の力が加わって以前よりも強力になっていました。音吉さんの切り札敗れたり。音楽を否定する割りに不幸のメロディで復活してパワーアップって結局音楽の力使ってない? 彼が攻撃を退ける際に鼓動の音が聞えたのは意味深です。それは彼に心のビートがあることを示しているようにも見えます。
ノイズは音吉さんを捕まえ昔年の怨みを晴らすために彼を封印しようとします。ミューズは飛び出し音吉さんに手を伸ばします。繋がれる手。「後は頼む」。しかし音吉さんは孫の手を放して突き放すとノイズに封印されてしまいます。目の前の出来事に涙を流すミューズ。バルーンスカートならモコモコとはいえ中が見えます。スパッツとは違うのだよ、スパッツとは。
音吉さんはノイズが封じられていた石版に封じられます。意趣返しか。
復讐を果たし悦ぶノイズ。この人も大概感情的だな。
諦めかけるプリキュアをクレッシェンドトーンは励まします。プリキュアの力の源は誰かを守りたいという心。あなた達なら新たな音楽を奏でられるはずだと言います。地面に倒れて涙を浮かべながら頬を染めているミューズの表情がエロい。私はこの表情を守りたい(さっきから最低だよこの感想)。
ノイズはクレッシェンドトーンを封印しようとします。ビートソニックが炸裂。プリキュアはみんなを守るために起ち上がります。オーラを身に纏い打撃でノイズを圧倒。必殺技とかパイプオルガンなんて必要なかった。レベルを上げて物理で殴れば事足りました。
この世界に音楽は必要ない!と言うノイズに、音楽は私達に勇気をくれる大切な力だとプリキュアは答えます。4人のパッショナートハーモニーによってノイズは瀕死。ファルセットが横槍を入れます。満身創痍になりながらもノイズはプリキュアを封印しようとします。クレッシェンドトーンは残った力でプリキュアを助け身代わりに封印されてしまいます。
「プリキュア、この世界の未来をあなた達に託します。今の強くなったあなた達ならきっとやってくれる。そう信じています」
音吉さんの横に並んで封じられるクレッシェンドトーン。
封印が完了すると同時にノイズも気絶。ファルセットは彼を連れて退却。
痛み分け…というには犠牲は大きい。
③次回予告
てっきり後頭部が伸びたりするのかと思ってました。
○トピック
新年早々「神は死んだ」。そんな出だし。
前回響達が自らの心で音符を生み出したことを受けて、クレッシェンドトーンと音吉さんは新しい音楽が生まれるのだと語ったわけですが、それを裏付けるように今回プリキュアに託しています。この流れは前作ハートキャッチと似た構成。キュアフラワーとデューンの戦いがブロッサム世代に引き継がれたように、ノイズとの戦いがメロディ世代に引き継がれています。
音吉さんやクレッシェンドトーンは大人ポジションの上位版(戦える人達)です。プリキュアでは大人は子どもを暖かく見守り励ましますが決して余計な手出しはしません。彼女達の成長を見守るのがプリキュアの大人達の姿勢です。これはシリーズ通して一貫しています。子ども達が困難を克服してこその成長物語です。旧世代の人達が出しゃばって解決しても意味はありません。
また、音吉さん達からすればノイズは倒すべき宿敵(悪)ですが響達にはまだ変化の余地があります。これまで戦ってきた相手とは和解しています。ノイズに対してもその可能性がある。倒すとしても彼女達がこれまで築いてきたことの集大成となるでしょう。知らないことがあるのも、間違うことがあるのも子どもだからです(大人でもそうなんだけど)。しかし子ども達には未来を創る力や可能性がある。音吉さん達が「終わらせる」世代だとすれば、響達は「始める」世代だと言えます。この戦いがプリキュアに託されるのは当然の帰結です。
ちなみに今回プリキュアはノイズをボコボコにしていますが、これを考慮すると単純に彼を倒すという結末になる可能性はかなり薄くなりました。単純な勧善懲悪でなら今回で決着がつけられたはずです。次回予告を見るにノイズはさらに進化するようなので、それに伴って戦いの意味は拡張されるものと考えられます。プリキュアからすれば新しい音楽、未来の創造の具体的な提示が必要になる。この辺りがプリキュアらしい。ノイズ抹殺兵器(オルガン)を使って倒すだとか、みんなを守るために力を引き出して倒すだけでは物語は終れない。
ここからちょっと余談。
ノイズとの戦いは生の肯定と否定の意味が入っていると思っていたんですが、正確には異なるかもしれません。ノイズは人々を石化させています。もし彼がこの世界を悲しみに満ちたものにしようとするなら石化させる必要は無いはずです。生を否定するなら殺せばいい。ゴーヤーンなんて地球を消滅させているしデューンは砂漠化させている。ノイズは音楽が必要ないと言い、人を石化させることで音楽を消しています。この物語における音楽とは心です。彼は心を否定している。「心=生」と捉えていましたが事はもう少し込み入っているかもしれない。ではその心とはどういうものか。この物語で描いてきた心とは、時に人を疑い、憎しみ、裏切り、他者に惑わされるものです。悪い面だけを抜き出せばそうなります。ノイズが悲しみの権化という設定がどこまで使われるか分かりませんが、彼は心の暗さ、不確かさを否定していると言えないだろうか。ノイズもまた生の枠組の中でその在り様の一つを訴えているのかもしれません。
要するに心がなければ裏切られることも悲しむこともないんじゃない? という問題提起。ノイズは感情が無いわけではないし超然としているわけではない。クレッシェンドトーンと対を為す悪の権化というよりどちらかといえば復讐者のソレに近い。誰かを恨むのを超えて、心そのものを憎んでいる。その意味で全ての音の源であるクレッシェンドトーンを封じることは神殺しとも言えます。創造主ごと心を消してしまえ、と。
それに対してプリキュアは音楽(心)は私達に勇気をくれる大切な力だと言います。この戦いは心の在り方、心の裏と表、存在の意味を巡る話しにもなっています。プリキュアらしい思想戦。プリキュア自身人を疑い、憎しみ、裏切り、惑わされたことがある人々です。それでも彼女達は音楽(心)が必要だと言う。ある意味でこの戦いはとても人間臭い。神が死んでも人は音楽を奏で続けようと立ち上がる。
プリキュアにおける勝利とはすなわち幸福の創造、日常の価値の提示、人間の肯定です。それをどのように引き出すか、ここにプリキュアの戦いの面白さがあります。
第44話「ドレラド~♪聖なる夜に生まれた奇跡ニャ!」
○今週の出来事
①クリスマスコンサート
テーブルいっぱいに並べられたプレゼント。母は嬉しそうに響に見せます。父も明日のクリスマスはご馳走を作ると意気込んでいます。正直に申しまして、ご遠慮願いたい。またぞろ闇鍋みたいなことになりそう。
クリスマスコンサートの話題でウキウキしている両親と対照的に響は沈んだ表情を浮かべています。響はコンサートのことで奏のところへ行くと外出します。こんな夜更けに……これは、そのままお泊まりする展開…!!
街はクリスマスの装飾に彩られ、人でごった返しています。広場で一人待つ奏。どう見ても恋人待ちの彼女です、本当にありがとうございます。雪が降ってきます。
「綺麗だね」
少し距離をあけて響は話しかけます。平和って感じだね、と続ける響に奏も声のトーンを下げてそうだねと相づちを打ちます。言わんとしていることは分っています。石のように生彩を欠いたモジューレを取り出して見つめる奏と響。伝説の楽譜が完成した今、いつ不幸のメロディが奏でられノイズが復活してもおかしくない。しかしなぜ何も起こらないのか。嵐の前の静けさにふたりは不安を強めます。
調べの館に集合。伝説の楽譜が敵の手中にある以上彼女達に打つ手無し。不安と苛立ちを覚える彼女達に音吉さんが明るい声をかけます。クリスマスに浮かれている場合では、と言う彼女達に音吉さんはもう心配いらないと答えます。ついにパイプオルガンが完成したことを告げます。
クレッシェンドトーンも太鼓判を押します。まだ放送が1ヶ月分あるのにこの大見得は危険きわまりない。むしろフラグにしか聞えない。
奏太の声。振り返るとスイーツ部、王子隊、和音達が勢揃い。コンサートの手伝いに来たと言います。和音は相変わらず本妻の前で響の手を握って自己アピール。クリスマスの前日だろうとふたりっきりにはしないという意思表示。この三角関係怖ぇな。
口々に手伝いを買って出る面々に音吉さんも快く受け入れます。冒頭でも話題になっていたクリスマスコンサートというのは調べの館で催される音楽会のことらしい。普段あまり人気の無い調べの館ですが実は有名なのか。王子先輩に奏が反応しないのはクリスマスなのでマジ本気モードになっているからだと思います。
呆気にとられていた響達はようやく笑顔を取り戻します。ノイズとの戦いは脇に置くとして今はコンサート。このシーンにアコが映らないのは次のシーンの伏線になっています。
翌日。コンサート会場に並ぶ長蛇の列。毎年恒例というだけあって認知度が高いらしい。響が案内して奏とセイレーン、スイーツ部はお菓子を配ります。
みんなから外れて一人佇むアコ。響達と同様サンタの格好をしていますが手伝う気はないようです。なお、小学生設定のためかデザインがちょっと違います。サンタさん、プレゼントが欲しいな。っていうかサンタさんが欲しいな!!
みんなみたいに笑えないと話すアコ。メフィストは病床に伏したまま。ノイズがいつ襲ってくる分らない状態に彼女は緊張しています。至極真っ当な反応です。元々生真面目な性格のようですから思い詰めるのも無理無い。
「そんな顔しないで」
今はコンサートを成功させてみんなに喜んで貰って幸せになってもらうの、と話す響。奏とセイレーンも不幸のメロディを聴いてもないのに暗い顔をしていたらノイズの思うツボだと言います。一緒に前を向いて今できることをやろうと話しを結ぶ響。アコの気持ちは響達も分っています。昨日までそう思っていたんだから。でも彼女達はその不安が何も為さないことに気付いています。みんなが楽しみにしているコンサートをやり遂げる。まずはそれをやろう。プリキュアらしい前の向き方です。これは現実逃避ではありません。足下を疎かにしてはならないということです。みんなを幸せにしようとする彼女達が暗い顔をしていて一体誰が幸せになるというのか。今を見、為すべきことをなす。これは後半パートの響の言動によく表れています。
励ましてくれる仲間達にお礼を言うアコ。彼女達の姿を響の両親は館の窓から見守ります。何度も書いていますがプリキュアのこうしたシーンが好きです。彼女達の優しさ、絆は閉じたものではなく誰かに伝わり、誰かに見守られ、誰かに導かれながら育まれている。子どもを見る親の視線、親を見る子どもの視線、親友を見る視線、様々な視線が幾度となく交差する中で人は他者から何かを受け取り、何かを与えていく。
満席になった会場。本番が近づいています。正装した王子達の満面が舞台へとあがります。響の両親は娘に向き合います。本番が始まると言う響をふたりは何も言わず抱きしめます。彼らは響達が立たされている状況を知っているのかもしれない。
「響は頑張り屋さんだからな。ごめんよこんなことくらいしかできなくて」
「覚えていてね。パパとママは世界で一番響を愛していると」
「パパ、ママ、ありがとう」
②世界最後の日
本番が始まるまさにその時、不穏な声が響き渡ります。
スポットライトを浴びて登場するファルセット。誰が操作してるんだろう。完成した不幸のメロディを歌い始めます。音吉さんはすぐにパイプオルガンを奏でて不幸のメロディを相殺。しかし安心するのも束の間、ノイズが割って入ります。
館の天井が綺麗さっぱりに無くなり、代わりに現れたノイズを見上げる響達。この隙を逃すまいとファルセットが不幸のメロディを再開します。街中の人々の嘆き悲しみのエネルギーを吸収し、楽譜の音符までも吸収するノイズ。巨大化する四肢。姿を変えていくシーンがキモイ。巨大な怪鳥の姿にノイズは変貌します。ポケモンとかでいそう。ノイズの完全体に戦慄する音吉さん。
忌まわしい音楽、耳障りな鼓動、全て消えてしまえ!とノイズは音波を発して世界中の人々を石化させます。クリスマス中止のお知らせ。この瞬間ノイズを支持した人が確実にそれなりの数居たと確信します。私? 私は関係ありません。ここ数年毎年私は女の子見てますから。
完全体になったとたん言葉がしゃべられるようになったノイズは、石化した人々を見て心地よい静寂だと歓喜します。分りやすい生の否定です。
音波がなくなり響達が周囲に気付くとそこには石化した両親達の姿が。間一髪音吉さんのフォローで響達だけは守られたようです。その音吉さんも相当無理をしているのか疲弊しています。
上空から音吉とクレッシェンドトーンを見下ろすノイズ。昔年の怨みを返すようにビーム発射。すんでのところで音吉さんに助けられたアコは祖父が居た場所を振り返るも煙が舞い上がって姿が見えません。そんなことは置いといて、アコの黒タイツが熱い。素敵なクリスマスプレゼントありがとうございます、サンタさん。
ノイズの執念は終わりません。全ての音を消す。次の狙いはメイジャーランド。ファルセットは用済みになった楽譜を捨てます。ノイズの発した光線を受けてネガトーン化。ノイズとファルセットはメイジャーランドへ。
それを追う響達の前にネガトーンが立ちはだかります。プリキュアになれない響達は為す術もなく攻撃に晒されます。チェストを持った音吉さんがアシストガード。タフなお爺ちゃんです。さすがタイマンでノイズとやり合った人。老齢を感じさせない鋭い視線を浮かべながらネガトーンの攻撃に耐えます。
エネルギー弾がきかないと見るやすぐさまバリアを殴りかかるネガトーン。バリアに亀裂が入ります。ネガトーンは鬼気迫る表情で一心不乱に拳を突き出しています。その姿に何かを感じる響。ついにバリアが砕け散ります。
「ごめんね、伝説の楽譜」
ああ、流石プリキュアだよ。
響は一人進み出ると、ネガトーンになった楽譜に謝ります。自分の力がおよばないためにこんな酷いことをさせてしまっている。ネガトーンは戦意を失いますが悪の力がそれを許しません。再度凶暴化したネガトーンは響を狙いますが寸前で動きが止ります。
いつもみんなに助けられて、励まされて元気を貰っていた大切な人々を守れなかった。悔しいと語る響はこのままで終わらせたくないと叫びます。悔しいという表現はプリキュアでは珍しい。セリフから響が楽譜をいたわるとともにそうなってしまった責任を痛感していることが分ります。ここには無力さと、恩を仇で返したかのような苦悩があります。彼女は愛情を与えてきたことよりも、受け取ってきた(愛情に気付いた)ことの方が多いかもしれない。奏のことにしても両親のことにしても彼女は色んな人から支えられてきました。そんな彼女だからこそ、それに報いたいと思っているんですね。
響の手を握る奏。アコもセイレーンも続きます。彼女達の鼓動が響きます。
③新章
「私達の鼓動が刻まれる限り終わっていない。だから私達は」「絶対に諦めない!」
伝説の楽譜は彼女達の鼓動に応えて新しいページを開きます。そこに浮かび上がるト音記号。日の出と共に響達の胸にハートのト音記号が浮かび上がります。再生するキュアモジューレ。今年最後の変身。
クレッシェンドトーンは大切なものを忘れていたと音吉さんに話しかけます。音楽は今あるものが全てでは無い。新しく生み出すことができる。ハートのト音記号は音楽の始まり。新たなメロディを奏で始める。今までクレッシェンドトーンは神様ポジションだと思っていたんですが、これで彼女も音吉さんもプリキュア(次世代)に託すポジションにシフトしています。
楽譜はプリキュアに微笑みかけます。しかしまた悪の力が彼を支配しようとします。浄化。伝説の楽譜を受け取るハミィ。ってデカっ。
コンサート会場にいた人々を全て広場に移します。なんでまた?と思いましたがすぐに分ります。幸せのメロディを唄えば元に戻ると話す音吉さん。彼の号令と共に地面に亀裂が入り揺れ出します。
調べの館が地面ごと持ち上がって戦艦のように(羽までついて)飛翔します。ちょ、なにその超展開。予想の斜め上行き過ぎだろ。パイプオルガンをメイジャーで使うためだろうけど、その発想は無かったわ。
「みんな、行ってきます」
人々の笑顔を取り戻すためプリキュアは旅立ちます。
④次回予告
ノイズよりクレッシェンドトーンの方がデカイのかよ。
○トピック
最後にこのオチかよ、と度肝を抜かれましたがプリキュアらしい最終決戦前夜。
ラスボスの完全復活に世界の石化。毎年恒例のお約束展開。
不幸のメロディが完成し不安を募らせる響達の心を和らげたのが一般の人々というのが近年のプリキュアらしい展開です。プリキュアは決して孤高のヒーローではありません。彼女達は日常を守るために戦う。その日常は彼女達のみならずみんなの努力や笑顔があって作られているものです。そのことに響達は自然と気付いて、まだ不安に陥っているアコを勇気付けます。そんな彼女達の姿を見て、団さんとまりあさんは娘を愛情で包み込んでいます。この1年の変化を感じる美しいシーンです。親友を失い、両親の愛情を見いだせなかった彼女は今しっかりと親友達と両親と絆で結ばれています。この信頼と自信が彼女に大きな力、愛情、豊かさを与えています。愛情が愛情を生み出していく好例です。
今回の、また本作の大きなポイントはここです。楽しいこと、幸せなこと、絆はみんなが居てこそ強く大きくなる。楽譜にはト音記号が書き込まれましたが普通の音符がなければ曲は続きません。前回、前々回のバリトン、バスドラ、メフィストの活躍にしてもそうですが、2人の組曲が3人、4人と拡張され、今回のように世界(プリキュア以外の人々)も含まれることが暗示されています。ハートキャッチは一人一人の心にスポットを当てることで人間の強さを提示して拡張させていきましたが、スイートでは人々の連なり、絆、みんなで作られる調和から拡張させています。スイートらしいアプローチです。
それらを踏まえてネガトーン化した楽譜のシーンへと繋がります。人々に支えられてきた彼女達は、再び幸せな日常、笑顔を取り戻すために全力を尽くしたいと願う。それと同期して楽譜が新しいページを開いてト音記号を生み出すシーンは見事。音楽に仮託された人の心の在り様を映し出しています。希望を失わない限り人は新しい道を切り開いていける。音符がないなら創り出せばいい。不幸のメロディの後に幸福のメロディを唄えばいい。幸福と不幸のメロディどちらに音符を染めるかの戦いは終わりました。これから未来が開示されていくことが示唆されています。
響、奏、セイレーン、アコの絆、親子の絆、プリキュアと一般人の繋がり、それらが全て繋がって最終章へと突き進む。毎年恒例のプリキュア総力戦が始まります。
①クリスマスコンサート
テーブルいっぱいに並べられたプレゼント。母は嬉しそうに響に見せます。父も明日のクリスマスはご馳走を作ると意気込んでいます。正直に申しまして、ご遠慮願いたい。またぞろ闇鍋みたいなことになりそう。
クリスマスコンサートの話題でウキウキしている両親と対照的に響は沈んだ表情を浮かべています。響はコンサートのことで奏のところへ行くと外出します。こんな夜更けに……これは、そのままお泊まりする展開…!!
街はクリスマスの装飾に彩られ、人でごった返しています。広場で一人待つ奏。どう見ても恋人待ちの彼女です、本当にありがとうございます。雪が降ってきます。
「綺麗だね」
少し距離をあけて響は話しかけます。平和って感じだね、と続ける響に奏も声のトーンを下げてそうだねと相づちを打ちます。言わんとしていることは分っています。石のように生彩を欠いたモジューレを取り出して見つめる奏と響。伝説の楽譜が完成した今、いつ不幸のメロディが奏でられノイズが復活してもおかしくない。しかしなぜ何も起こらないのか。嵐の前の静けさにふたりは不安を強めます。
調べの館に集合。伝説の楽譜が敵の手中にある以上彼女達に打つ手無し。不安と苛立ちを覚える彼女達に音吉さんが明るい声をかけます。クリスマスに浮かれている場合では、と言う彼女達に音吉さんはもう心配いらないと答えます。ついにパイプオルガンが完成したことを告げます。
クレッシェンドトーンも太鼓判を押します。まだ放送が1ヶ月分あるのにこの大見得は危険きわまりない。むしろフラグにしか聞えない。
奏太の声。振り返るとスイーツ部、王子隊、和音達が勢揃い。コンサートの手伝いに来たと言います。和音は相変わらず本妻の前で響の手を握って自己アピール。クリスマスの前日だろうとふたりっきりにはしないという意思表示。この三角関係怖ぇな。
口々に手伝いを買って出る面々に音吉さんも快く受け入れます。冒頭でも話題になっていたクリスマスコンサートというのは調べの館で催される音楽会のことらしい。普段あまり人気の無い調べの館ですが実は有名なのか。王子先輩に奏が反応しないのはクリスマスなのでマジ本気モードになっているからだと思います。
呆気にとられていた響達はようやく笑顔を取り戻します。ノイズとの戦いは脇に置くとして今はコンサート。このシーンにアコが映らないのは次のシーンの伏線になっています。
翌日。コンサート会場に並ぶ長蛇の列。毎年恒例というだけあって認知度が高いらしい。響が案内して奏とセイレーン、スイーツ部はお菓子を配ります。
みんなから外れて一人佇むアコ。響達と同様サンタの格好をしていますが手伝う気はないようです。なお、小学生設定のためかデザインがちょっと違います。サンタさん、プレゼントが欲しいな。っていうかサンタさんが欲しいな!!
みんなみたいに笑えないと話すアコ。メフィストは病床に伏したまま。ノイズがいつ襲ってくる分らない状態に彼女は緊張しています。至極真っ当な反応です。元々生真面目な性格のようですから思い詰めるのも無理無い。
「そんな顔しないで」
今はコンサートを成功させてみんなに喜んで貰って幸せになってもらうの、と話す響。奏とセイレーンも不幸のメロディを聴いてもないのに暗い顔をしていたらノイズの思うツボだと言います。一緒に前を向いて今できることをやろうと話しを結ぶ響。アコの気持ちは響達も分っています。昨日までそう思っていたんだから。でも彼女達はその不安が何も為さないことに気付いています。みんなが楽しみにしているコンサートをやり遂げる。まずはそれをやろう。プリキュアらしい前の向き方です。これは現実逃避ではありません。足下を疎かにしてはならないということです。みんなを幸せにしようとする彼女達が暗い顔をしていて一体誰が幸せになるというのか。今を見、為すべきことをなす。これは後半パートの響の言動によく表れています。
励ましてくれる仲間達にお礼を言うアコ。彼女達の姿を響の両親は館の窓から見守ります。何度も書いていますがプリキュアのこうしたシーンが好きです。彼女達の優しさ、絆は閉じたものではなく誰かに伝わり、誰かに見守られ、誰かに導かれながら育まれている。子どもを見る親の視線、親を見る子どもの視線、親友を見る視線、様々な視線が幾度となく交差する中で人は他者から何かを受け取り、何かを与えていく。
満席になった会場。本番が近づいています。正装した王子達の満面が舞台へとあがります。響の両親は娘に向き合います。本番が始まると言う響をふたりは何も言わず抱きしめます。彼らは響達が立たされている状況を知っているのかもしれない。
「響は頑張り屋さんだからな。ごめんよこんなことくらいしかできなくて」
「覚えていてね。パパとママは世界で一番響を愛していると」
「パパ、ママ、ありがとう」
②世界最後の日
本番が始まるまさにその時、不穏な声が響き渡ります。
スポットライトを浴びて登場するファルセット。誰が操作してるんだろう。完成した不幸のメロディを歌い始めます。音吉さんはすぐにパイプオルガンを奏でて不幸のメロディを相殺。しかし安心するのも束の間、ノイズが割って入ります。
館の天井が綺麗さっぱりに無くなり、代わりに現れたノイズを見上げる響達。この隙を逃すまいとファルセットが不幸のメロディを再開します。街中の人々の嘆き悲しみのエネルギーを吸収し、楽譜の音符までも吸収するノイズ。巨大化する四肢。姿を変えていくシーンがキモイ。巨大な怪鳥の姿にノイズは変貌します。ポケモンとかでいそう。ノイズの完全体に戦慄する音吉さん。
忌まわしい音楽、耳障りな鼓動、全て消えてしまえ!とノイズは音波を発して世界中の人々を石化させます。クリスマス中止のお知らせ。この瞬間ノイズを支持した人が確実にそれなりの数居たと確信します。私? 私は関係ありません。ここ数年毎年私は女の子見てますから。
完全体になったとたん言葉がしゃべられるようになったノイズは、石化した人々を見て心地よい静寂だと歓喜します。分りやすい生の否定です。
音波がなくなり響達が周囲に気付くとそこには石化した両親達の姿が。間一髪音吉さんのフォローで響達だけは守られたようです。その音吉さんも相当無理をしているのか疲弊しています。
上空から音吉とクレッシェンドトーンを見下ろすノイズ。昔年の怨みを返すようにビーム発射。すんでのところで音吉さんに助けられたアコは祖父が居た場所を振り返るも煙が舞い上がって姿が見えません。そんなことは置いといて、アコの黒タイツが熱い。素敵なクリスマスプレゼントありがとうございます、サンタさん。
ノイズの執念は終わりません。全ての音を消す。次の狙いはメイジャーランド。ファルセットは用済みになった楽譜を捨てます。ノイズの発した光線を受けてネガトーン化。ノイズとファルセットはメイジャーランドへ。
それを追う響達の前にネガトーンが立ちはだかります。プリキュアになれない響達は為す術もなく攻撃に晒されます。チェストを持った音吉さんがアシストガード。タフなお爺ちゃんです。さすがタイマンでノイズとやり合った人。老齢を感じさせない鋭い視線を浮かべながらネガトーンの攻撃に耐えます。
エネルギー弾がきかないと見るやすぐさまバリアを殴りかかるネガトーン。バリアに亀裂が入ります。ネガトーンは鬼気迫る表情で一心不乱に拳を突き出しています。その姿に何かを感じる響。ついにバリアが砕け散ります。
「ごめんね、伝説の楽譜」
ああ、流石プリキュアだよ。
響は一人進み出ると、ネガトーンになった楽譜に謝ります。自分の力がおよばないためにこんな酷いことをさせてしまっている。ネガトーンは戦意を失いますが悪の力がそれを許しません。再度凶暴化したネガトーンは響を狙いますが寸前で動きが止ります。
いつもみんなに助けられて、励まされて元気を貰っていた大切な人々を守れなかった。悔しいと語る響はこのままで終わらせたくないと叫びます。悔しいという表現はプリキュアでは珍しい。セリフから響が楽譜をいたわるとともにそうなってしまった責任を痛感していることが分ります。ここには無力さと、恩を仇で返したかのような苦悩があります。彼女は愛情を与えてきたことよりも、受け取ってきた(愛情に気付いた)ことの方が多いかもしれない。奏のことにしても両親のことにしても彼女は色んな人から支えられてきました。そんな彼女だからこそ、それに報いたいと思っているんですね。
響の手を握る奏。アコもセイレーンも続きます。彼女達の鼓動が響きます。
③新章
「私達の鼓動が刻まれる限り終わっていない。だから私達は」「絶対に諦めない!」
伝説の楽譜は彼女達の鼓動に応えて新しいページを開きます。そこに浮かび上がるト音記号。日の出と共に響達の胸にハートのト音記号が浮かび上がります。再生するキュアモジューレ。今年最後の変身。
クレッシェンドトーンは大切なものを忘れていたと音吉さんに話しかけます。音楽は今あるものが全てでは無い。新しく生み出すことができる。ハートのト音記号は音楽の始まり。新たなメロディを奏で始める。今までクレッシェンドトーンは神様ポジションだと思っていたんですが、これで彼女も音吉さんもプリキュア(次世代)に託すポジションにシフトしています。
楽譜はプリキュアに微笑みかけます。しかしまた悪の力が彼を支配しようとします。浄化。伝説の楽譜を受け取るハミィ。ってデカっ。
コンサート会場にいた人々を全て広場に移します。なんでまた?と思いましたがすぐに分ります。幸せのメロディを唄えば元に戻ると話す音吉さん。彼の号令と共に地面に亀裂が入り揺れ出します。
調べの館が地面ごと持ち上がって戦艦のように(羽までついて)飛翔します。ちょ、なにその超展開。予想の斜め上行き過ぎだろ。パイプオルガンをメイジャーで使うためだろうけど、その発想は無かったわ。
「みんな、行ってきます」
人々の笑顔を取り戻すためプリキュアは旅立ちます。
④次回予告
ノイズよりクレッシェンドトーンの方がデカイのかよ。
○トピック
最後にこのオチかよ、と度肝を抜かれましたがプリキュアらしい最終決戦前夜。
ラスボスの完全復活に世界の石化。毎年恒例のお約束展開。
不幸のメロディが完成し不安を募らせる響達の心を和らげたのが一般の人々というのが近年のプリキュアらしい展開です。プリキュアは決して孤高のヒーローではありません。彼女達は日常を守るために戦う。その日常は彼女達のみならずみんなの努力や笑顔があって作られているものです。そのことに響達は自然と気付いて、まだ不安に陥っているアコを勇気付けます。そんな彼女達の姿を見て、団さんとまりあさんは娘を愛情で包み込んでいます。この1年の変化を感じる美しいシーンです。親友を失い、両親の愛情を見いだせなかった彼女は今しっかりと親友達と両親と絆で結ばれています。この信頼と自信が彼女に大きな力、愛情、豊かさを与えています。愛情が愛情を生み出していく好例です。
今回の、また本作の大きなポイントはここです。楽しいこと、幸せなこと、絆はみんなが居てこそ強く大きくなる。楽譜にはト音記号が書き込まれましたが普通の音符がなければ曲は続きません。前回、前々回のバリトン、バスドラ、メフィストの活躍にしてもそうですが、2人の組曲が3人、4人と拡張され、今回のように世界(プリキュア以外の人々)も含まれることが暗示されています。ハートキャッチは一人一人の心にスポットを当てることで人間の強さを提示して拡張させていきましたが、スイートでは人々の連なり、絆、みんなで作られる調和から拡張させています。スイートらしいアプローチです。
それらを踏まえてネガトーン化した楽譜のシーンへと繋がります。人々に支えられてきた彼女達は、再び幸せな日常、笑顔を取り戻すために全力を尽くしたいと願う。それと同期して楽譜が新しいページを開いてト音記号を生み出すシーンは見事。音楽に仮託された人の心の在り様を映し出しています。希望を失わない限り人は新しい道を切り開いていける。音符がないなら創り出せばいい。不幸のメロディの後に幸福のメロディを唄えばいい。幸福と不幸のメロディどちらに音符を染めるかの戦いは終わりました。これから未来が開示されていくことが示唆されています。
響、奏、セイレーン、アコの絆、親子の絆、プリキュアと一般人の繋がり、それらが全て繋がって最終章へと突き進む。毎年恒例のプリキュア総力戦が始まります。
第43話「シクシク……不幸のメロディが完成しちゃったニャ!」
○今週の出来事
①女王誘拐
オウムが慌ててアフロディテのもとへやってきて女騎士がトリオを捕まえてきたと報告します。アフロディテが謁見の間に戻るとオウムが言ったとおり縄に縛られたバスドラとバリトン、そして女騎士が居ます。
素性を問う女王に女騎士は「かつてメイジャーランドの三銃士と謳われた英雄の一人、ファルセット様だ!」と正体を現します。もちろんバスドラとバリトンは演技。騙したなー!?と驚くオウム。高い声や格好で女だと思ったんだろうけど、気付こうよ。っていうかファルセットもよくアレで騙せると思ったな。そっちのがすげーよ。とまあ、ツッコミはここまでにして、この三銃士というのは事実なのでしょう。ここで彼らがメイジャーランドの人々であることが再提示されています。
アフロディテを捕えたトリオはまんまとメイジャーを脱出。外出していたメフィストは連れ去られる妻の姿を目撃するも為す術がありません。
調べの館で響達はパイプオルガンの調律を手伝います。対ノイズ用の切り札。これが有効だとプリキュアの存在意義がなくなるんでおそらく効きませんでしたという展開だと思いますが、やはり最終決戦は加音町が舞台になるのかな。
切り札、楽譜最後のピースであるト音記号がこちら側にあるため大きく切迫した状況ではありません。響達も余裕があります。しかしそこにファルセットの声が届きます。
アフロディテが人質に取られたと知りアコは気が気ではありません。しかしファルセットはその不安につけ込むようにモジューレを全てよこせと要求します。断ればアフロディテの命がない。バスドラとバリトンが威嚇します。目尻に涙を浮かべてやめて!と叫ぶアコ。響は前回彼らが一瞬でも悪の心が消えたことをあげて、こんなことをしてなんとも思わないの?と問います。奏もアコの身体を支えながら誰かを悲しませたところで結局自分も悲しい思いをするだけだと彼らを止めます。これはセイレーンのいきさつを思い出せば分りやすい。人を不幸に陥れたと気づいた時に結局は己がその不幸を背負い込んでしまう。今回のメフィストも同様です。セイレーンもノイズはあなた達を利用しているだけだと言葉を継ぎます。
母親を人質に取られたアコは別として、響達の言葉は前回を踏まえた問いかけになっています。つまり彼女達から見てバスドラとバリトンは話し合いができる、わかり合えるかもしれないという認識が出来ています。もしそれが無ければ制止したりせずに卑怯者!と罵ったことでしょう。
彼女達の言葉に戸惑いを見せるふたり。前回の感想でもしかしたら洗脳されている振りをしているだけかも、なんて書きましたがさすがにそこまで心を取り戻しているわけではないようです。ファルセットはとにかくマイナーへ来い、と話しを打ち切ります。
「ママ…」と不安な声をあげるアコ。いくら普段マセた言動が多くても彼女は子どもです。ましてようやく家族が元に戻ったばかり。突然野太い大声が聞えます。発声源はメフィスト。
父の姿を見たアコはパッと顔を輝かせると父の腕の中に飛び込みます。よしよしとアコの頭を撫でながらママは必ず私が助けると安心させるように言うメフィスト。本編でも映画でもギャグキャラが板についていましたが、なんのなんの、しっかりお父さんしています。アコもしっかり子どもしているというか、心細い状態とはいえ父親を求める姿を描いているのは丁寧な描写です。ちゃんとこの家族は家族の愛、親子の絆を取り戻しています。
メフィストは元を正せばトリオのしたことは自分が蒔いた種、自分一人でマイナーへ行くと言います。それに対しセイレーンはアフロディテ様の安全を最優先すべき、そのためならモジューレを渡す選択肢もあるのでは?と腹案を出します。
「それはいかん」
マイナーの狙いはト音記号。不幸のメロディが完成すればノイズが完全に復活してしまう。それだけは絶対にさけねばならんと厳しい口調でみんなに告げます。単に寸尺や作画の問題かもしれませんが、この時のアコが驚くような呆然とするような表情になっているのが目につきます。母親よりもト音記号を優先する言葉を聞けばそうした表情になってもおかしくはない。音吉さんからすれば最悪な事態だけは避けたいのでそのためには娘(アフロディテ)を引き替えにする覚悟もあるでしょう。当然アフロディテもそう考えているはずだと思っているはずです。後述するメフィストもそうなのですが、大人達に「犠牲はやむなし」の姿勢が見えなくもない。
セイレーンは悲しそうな顔を浮かべてモジューレを胸に押し当てます。響と奏はアイコンタクトを取るとみんなでマイナーへ行ってモジューレを奪われることなくアフロディテ様を助け出そうと啖呵を切ります。メフィストが行くよりは救出成功率は高い。メフィストが失敗した場合結局また同じことの繰り返しなので虎穴に入らずんば虎児を得ずと云ったところでしょう。やるんだったら全部ハッピーにする。プリキュアの、子どもの姿勢です。
音吉さんもその答えを予想していたのか異論を挟みません。彼女達に託します。
②交渉人・響
祭壇のようなところで待ち受けるマイナー勢。響達4人が姿を見せます。メフィストは伏兵か。
自分を呼ぶ娘の声に、アフロディテは決してモジューレは渡してはいけない、人間界へ戻るのですと毅然と答えます。映画でもそうですが、女王の責務を背負っているだけはある。ファルセットもその態度に敬意を評しますが、そんなものはどうでもいいとさっさと交渉に入ります。
前に進み出てモジューレを見せる響達。ノイズの判定でも本物。前回のように偽物を掴ませられるわけにはいきません。渡せと要求するファルセットに響は解放が先だと主張。しかし人質を取っている分ファルセットは強気です。威嚇行為に対して思わず身体をこわばらせるアコを響は抑えて毅然と主張します。
「もしもアフロディテ様に手出ししたら、この場でト音記号ごとモジューレを破壊するわ!」
コレットを壊すと主張したのぞみ同様、躊躇いがない響。交渉というより本気です。アフロディテを人質に取られているならこっちはト音記号を人質に取る。
ノイズの指示でト音記号が手に入ればアフロディテは返すと妥協するファルセット。分った、と応じた響はモジューレをトーンに運ばせます。トーンが運ぶシーンはなんだか笑えるんだけど、展開そのものはシリアス。お互いに中間の位置でトーンの動きが止ります。アフロディテを解放してそこまで来させてちょうだい、と要求する響。この子の度胸すげぇ。態度や声に躊躇いがない。ファリー騒動の時もそうだけど大博打や胆が座っていないと出来ないことをやれる子です。要求を受け入れないならプリキュアに変身して倒すと啖呵を切ります。かっけぇ。
ほお、と響の要求に感心するファルセット。ノイズも承知します。その言葉に喜ぶアコ。やはりこの辺はまだ歳相応。隣に居る響は厳しい表情のままです。こういう交渉事では弱味を見せてはいけません。妥協した、寄ってきたと思われたらそこで足下を見られる。っていうか、中学生の響が交渉人できているのが異常なんですが。私でもできねーよ、こんな綱渡りな交渉。
「と、思わせて」
やっぱりというべきか、交渉する気など最初から無いファルセットは先制攻撃を仕掛け響達の動きを封じます。略奪、搾取上等。
モジューレに歩み寄りながらバスドラ達にアフロディテの始末を指示します。しかし躊躇うふたり。再度命令されて従います。ほんとに嫌な仕事だなこれ。現実に会社をクビになりたくないから非合法な命令や地獄のような労働環境も受けざるを得ないパターンってありますが、まさにそんな感じ。実質的には彼らはほぼ正気を取り戻しています。ただマイナーに逆らう決心がついてない、というような感じ。
「そうはさせーん!」
メフィストが空降ってふたりを押さえ込みます。かっけぇ。
「あなた」「おまえ」
夫婦の再会。確かにこんだけ美人な奥さんなら頑張っちゃうよな…ってそういう問題じゃないな。
メフィストに気を取られるファルセット。響達の動きを止めていた突風が止みます。そして第二の伏兵、ハミィが登場。すっかり忘れていました。やればできる子。インターセプター。この事態を予想していたのだとしたらマジで凄い。モジューレを響達の元へ届けます。形勢は逆転。起死回生のチャンス。
「今こそノイズを倒すとき!」
もう次回が最終回なんじゃねーのかというくらいの勢い。
③償い
バスドラとバリトンにノイズの力が与えられます。またも暴走状態に。
ファルセットが放つ攻撃に気圧されながらも、一気呵成に必殺技を撃ち込みます。クリスマス商戦。戦隊でも主力商品を前面に押し出していましたがプリキュアも同じ。ミュージックロンド3連、スパークリングシャワーがファルセットに直撃します。個人的にはクレッシェンドトーンよりこうやって武器(楽器)を使って倒してくれた方が音楽テーマの作品らしくて好きなのですが、それはスポンサーが許さない。大人の事情。
プリキュアの総攻撃を耐えるファルセット。全く効きません。焦ったメロディは先ほどまでの冷静さを失い単身で躍り出ます。勢いのままつきだした正拳突きが軽く受け流されても動きを止めず、ハイ、ミドル、乱打、足払い、かかと落としと連続で仕掛けます。なんだこの動き。これ全部をいなすかスウェーでかわしているファルセットがやばい。一旦距離が離れたことで攻守が逆になります。ムチを使ってメロディを攻撃。傍観していたリズム達のもとへ投げ返します。ナイスキャッチなリズムさん。右手がさりげなく良い位置に。メロディを心配する暇を与えず追撃のエネルギー弾。
声の届かぬバスドラ達に攻撃の態勢を取るメフィスト。しかし綺麗な頃のふたりを思い返して動きが止ります。何故攻撃をやめたのか訊くアフロディテにメフィストは真相を告げます。
元々トリオはメイジャーを守る三銃士。それを洗脳したのがノイズに操られたメフィスト。メフィストは自分はアコやみんなの愛情で元に戻れたが彼らはまだ囚われたままだと悔やむように言います。自分のしたことの責任、自分だけがぬくぬくと助かっていることの罪の意識に苛まれるメフィスト。これは完全に予想外な展開。そう来たか。さすがプリキュアだ、容赦しねぇ。
メフィストは彼らの纏ったノイズの力を全て自分に引き込みます。それが彼の償い。悪の力を抜かれたふたりは元の姿に戻ります。ヘッドフォンもしていません。しかし全てを引き受けたメフィストは自分の身体と共に悪のエネルギーを滅ぼす、あとは頼むぞとアフロディテに託し、バスドラとバリトンにかつての優しかったお前達に戻ってくれと言い残して倒れます。
ああもう、ほんと、容赦ないなこの番組。前作と違って父親更正できたのに結局こうなってしまう。まあ、死んでないけど。誤りを正してさえ、それでも過去を背負わねばならないのが現実です。
メフィストを嘲笑うファルセットにメロディ達は怒りを燃やすもファルセットの力は圧倒的。再び地に伏します。
ノイズの意向に沿いファルセットは再びバスドラとバリトンにアフロディテの始末を命じます。制止の声をあげるプリキュア。ふたりはお互いに顔を見合わせて躊躇います。自らの心とノイズどちらに従うか。
痺れを切らせたファルセットが自ら手を下します。間一髪バスドラとバリトンは自ら盾になって女王を庇います。彼らは自らの心に従った。満身創痍になったメフィストもその姿を見ます。ファルセットは腹を立て、そのままふたりを倒そうとします。悲鳴こそ最高の音楽だ!と悦に入るファルセット。めっちゃ悪役。
ふたりが苦しむ姿を呆然と見ていたメロディは瞳に決意の色を宿すと「もうやめて」と懇願します。
アフロディテに詫びながらもメロディ、リズム、ミューズ、ビートは変身を解きます。モジューレを差し出せば世界がどうなるか。
「分ってるわ。でも、目の前で苦しんでる仲間を放ってはおけない。仲間の苦しみの上に、幸せの世界なんて築けない!」
気丈で悲痛な響の叫び。仲間という言葉の中に自分達が入っていると知ってバスドラとバリトンは涙を浮かべながら彼女を見つめます。
ノイズが叫ぶとモジューレからト音記号が飛び出します。儀式めいた感じに祭壇の松明が燃えさかります。楽譜最後のピースが埋まり不幸のメロディが完成。松明にノイズの姿が浮かび上がります。
不気味な勝ち誇った声をあげるノイズ。「はっひふっへほー♪」とか言いそうで怖い。
④次回予告
良かった、このノリではクリスマスムードは無いのかと心配していましたが安心の恋人ムード。ほんとうにごちそうさまでした。
○トピック
まさかのメフィスト回。予想を上回る展開にテンション上がってきました。
バスドラとバリトンの回復は年越しの最終決戦かと思っていましたがここで持って来るとは。だって、もう2人しか敵いないし。なに詰込む気なんだろう。期待でワクワクが止らない。三銃士の頃の姿を見せることでバスドラ、バリトンに続いてファルセットもまた救済(和解)の対象になっていることを視聴者に自然に示しているのが上手い。これで残るはノイズのみ。
プリキュアらしい容赦の無さが詰込まれた一本。何が凄いかって前回からプリキュアは何もしていません。何も出来ていない。
バスドラとバリトンの洗脳解除に一切プリキュアはタッチしていません。内ゲバ争いとメフィストの捨て身覚悟の行動によって元に戻っています。響と奏のケンカ然り、ハミィとセイレーン然り、アコとメフィスト然り。あくまで当人達の問題や接点を使って関係改善を図っています。これは一面では絆の力や想いの力と言えますが、結局それがない人にはそれ以上立ち入ることができないということでもある。バスドラ達が窮地に陥ったらプリキュアは助けに入るでしょう、けどメフィストのように決死の覚悟とはいかないかもしれない。前回、今回で示されているのはプリキュアの力の有限さ、手出しできない部分があるという事実です。
しかしこれは次のように言い換えることも出来る。プリキュア以外の人々もまた戦っている、と。和音と聖歌が洗脳を自力で解いたように、バスドラとバリトンも最初のキッカケは自分達の意思でした。メフィストは自分が行った責任を果たすために自ら行動を起こしています。ここでメフィストが話しに絡むとは全く予期していませんでしたが、これによって物語はさらに広く多層的になっています。映画を見た人ならお気づきだと思いますが、スイートの音楽とはみんなで奏でる音楽。一人一人持っている心が繋がって奏でられる心の音楽です。一人の優しさ、勇気で救えなくても、他の誰か、みんなの優しさや勇気が伝わり合って事を成し遂げられることが示されています。であるなら、スイートは2人の組曲から始まって4人の組曲となったように、一人の力を信じるのではなく、みんなの力、ひいては人の力を信じる物語となるのが正道と言えるでしょう。このアニメは期待どおり作品の本質を外さない。
いつものように話しがプリキュアから外れますが、私は人間を狂った生き物だと認識しています。基本的にどうしようもない生物だと思っている。そしてこの世界は人間にとって都合良くできていないし、むしろ不条理や理不尽で満たされている世界だと思っている。…と言うとニヒリズム的に聞えるかもしれないんですが、前提としてそう思ってるってだけです。要するに人間が不幸になるのも、不条理や理不尽が襲いかかるのも折込み済み。そういうものだと思っている。だから震災があっても(実際のところ私自身に被害がほとんど無かったんですが)私はそれを不幸だとは思いませんでした。面倒だとは思ったけど。やることは決まっている。また楽しい生活ができるようにするだけ。増えた仕事をいち早く片付けるだけ。そんな風に割り切れるのは本当の意味での危機に直面していないか気付いていないからだというのも承知しています。
(こっからプリキュアの話しに繋がって行く)セイレーンが自分の犯した罪に苦しんだように、メフィストが自分の過ちを償うために過去の犠牲になってしまったように、がんじがらめの世界に人間は住んでいます。どこかで全部過去を切り捨てて、ここから再スタートなんてことはできません。人は必ず過去を背負い、他者と何らかの形で繋がり、世界の檻(と表現するのは前提として世界は人間にとって辛い世界だと思っているからです)に閉じ込められている。
これらを乗り越えるために割り切って「多少の犠牲はやむなし」という考えが用いられるのも納得しています。小を捨て大を取る、そうした選択もまた現実を生きる上で必要になります。
というようなことを踏まえてここから信条(信仰)の話し。そんな辛い世の中だけど、でも世の中面白いよね。人間って面白い。面白く出来る。そうすることが人間には許されているし、出来る。っていうかそれができなかったら生きるのが辛いだけじゃん。じゃあ、這いつくばってでもやりましょう。ってのが私の信条。
過去を背負うの上等じゃないですか。過去があるかこそ今の自分があるし、経験を糧にできる。自分一人で出来ないことがあってもそりゃしょうがない。神様じゃないんだから全てをコントロールできるわけない。自分のあずかり知らぬところで何かが動いているのもそりゃ当然だ。案外それで上手くいくこともある。時には人に任せ、頼ることも重要。世の中捨てたもんじゃない。
人は面倒な生き物だと思うんだけど、でも決して嫌なところばかりじゃない。面白いこと、楽しいこと、凄いこと、自分には出来ない素晴らしいことが出来る人もまた存在する。清濁含めてこその人の豊かさ。それは世界の豊かさでもある。響、奏、セイレーン、アコ、メフィストは人で在るが故に悩み、苦しみ、過去に囚われ傷ついたけど、そこから生まれた素晴らしいものがたくさんある。
そうした可能性をバスドラやバリトンだって持っている。にも関わらず彼らを切り捨てて幸福を築こうなんてプリキュアがするわけがない。やるんだったら全員ハッピー。みんな仲間だと言い張ってこそのプリキュアです。本当の幸福とは人そのものの豊かさ、美しさに内在している。何度も言うし断言するけどプリキュアは人を信じ愛する物語です。それは”人”の可能性を賭けた物語でもある。
…のはずなんだけど、相変わらずプリキュアはファルセットとノイズを敵視しています。ほんとに視野が限定されているんだなぁ、この物語。プリキュアはどのようにして彼を仲間として受け入れていくのか。メフィストに託されたバスドラとバリトンの出番……はあるのか。
それぞれの関係、それぞれの想い、過去、現在を一つの線上で描くこの物語はまさに幸福と不幸の狭間で生きる人間の心の歌(叫び)なのだと思います。
①女王誘拐
オウムが慌ててアフロディテのもとへやってきて女騎士がトリオを捕まえてきたと報告します。アフロディテが謁見の間に戻るとオウムが言ったとおり縄に縛られたバスドラとバリトン、そして女騎士が居ます。
素性を問う女王に女騎士は「かつてメイジャーランドの三銃士と謳われた英雄の一人、ファルセット様だ!」と正体を現します。もちろんバスドラとバリトンは演技。騙したなー!?と驚くオウム。高い声や格好で女だと思ったんだろうけど、気付こうよ。っていうかファルセットもよくアレで騙せると思ったな。そっちのがすげーよ。とまあ、ツッコミはここまでにして、この三銃士というのは事実なのでしょう。ここで彼らがメイジャーランドの人々であることが再提示されています。
アフロディテを捕えたトリオはまんまとメイジャーを脱出。外出していたメフィストは連れ去られる妻の姿を目撃するも為す術がありません。
調べの館で響達はパイプオルガンの調律を手伝います。対ノイズ用の切り札。これが有効だとプリキュアの存在意義がなくなるんでおそらく効きませんでしたという展開だと思いますが、やはり最終決戦は加音町が舞台になるのかな。
切り札、楽譜最後のピースであるト音記号がこちら側にあるため大きく切迫した状況ではありません。響達も余裕があります。しかしそこにファルセットの声が届きます。
アフロディテが人質に取られたと知りアコは気が気ではありません。しかしファルセットはその不安につけ込むようにモジューレを全てよこせと要求します。断ればアフロディテの命がない。バスドラとバリトンが威嚇します。目尻に涙を浮かべてやめて!と叫ぶアコ。響は前回彼らが一瞬でも悪の心が消えたことをあげて、こんなことをしてなんとも思わないの?と問います。奏もアコの身体を支えながら誰かを悲しませたところで結局自分も悲しい思いをするだけだと彼らを止めます。これはセイレーンのいきさつを思い出せば分りやすい。人を不幸に陥れたと気づいた時に結局は己がその不幸を背負い込んでしまう。今回のメフィストも同様です。セイレーンもノイズはあなた達を利用しているだけだと言葉を継ぎます。
母親を人質に取られたアコは別として、響達の言葉は前回を踏まえた問いかけになっています。つまり彼女達から見てバスドラとバリトンは話し合いができる、わかり合えるかもしれないという認識が出来ています。もしそれが無ければ制止したりせずに卑怯者!と罵ったことでしょう。
彼女達の言葉に戸惑いを見せるふたり。前回の感想でもしかしたら洗脳されている振りをしているだけかも、なんて書きましたがさすがにそこまで心を取り戻しているわけではないようです。ファルセットはとにかくマイナーへ来い、と話しを打ち切ります。
「ママ…」と不安な声をあげるアコ。いくら普段マセた言動が多くても彼女は子どもです。ましてようやく家族が元に戻ったばかり。突然野太い大声が聞えます。発声源はメフィスト。
父の姿を見たアコはパッと顔を輝かせると父の腕の中に飛び込みます。よしよしとアコの頭を撫でながらママは必ず私が助けると安心させるように言うメフィスト。本編でも映画でもギャグキャラが板についていましたが、なんのなんの、しっかりお父さんしています。アコもしっかり子どもしているというか、心細い状態とはいえ父親を求める姿を描いているのは丁寧な描写です。ちゃんとこの家族は家族の愛、親子の絆を取り戻しています。
メフィストは元を正せばトリオのしたことは自分が蒔いた種、自分一人でマイナーへ行くと言います。それに対しセイレーンはアフロディテ様の安全を最優先すべき、そのためならモジューレを渡す選択肢もあるのでは?と腹案を出します。
「それはいかん」
マイナーの狙いはト音記号。不幸のメロディが完成すればノイズが完全に復活してしまう。それだけは絶対にさけねばならんと厳しい口調でみんなに告げます。単に寸尺や作画の問題かもしれませんが、この時のアコが驚くような呆然とするような表情になっているのが目につきます。母親よりもト音記号を優先する言葉を聞けばそうした表情になってもおかしくはない。音吉さんからすれば最悪な事態だけは避けたいのでそのためには娘(アフロディテ)を引き替えにする覚悟もあるでしょう。当然アフロディテもそう考えているはずだと思っているはずです。後述するメフィストもそうなのですが、大人達に「犠牲はやむなし」の姿勢が見えなくもない。
セイレーンは悲しそうな顔を浮かべてモジューレを胸に押し当てます。響と奏はアイコンタクトを取るとみんなでマイナーへ行ってモジューレを奪われることなくアフロディテ様を助け出そうと啖呵を切ります。メフィストが行くよりは救出成功率は高い。メフィストが失敗した場合結局また同じことの繰り返しなので虎穴に入らずんば虎児を得ずと云ったところでしょう。やるんだったら全部ハッピーにする。プリキュアの、子どもの姿勢です。
音吉さんもその答えを予想していたのか異論を挟みません。彼女達に託します。
②交渉人・響
祭壇のようなところで待ち受けるマイナー勢。響達4人が姿を見せます。メフィストは伏兵か。
自分を呼ぶ娘の声に、アフロディテは決してモジューレは渡してはいけない、人間界へ戻るのですと毅然と答えます。映画でもそうですが、女王の責務を背負っているだけはある。ファルセットもその態度に敬意を評しますが、そんなものはどうでもいいとさっさと交渉に入ります。
前に進み出てモジューレを見せる響達。ノイズの判定でも本物。前回のように偽物を掴ませられるわけにはいきません。渡せと要求するファルセットに響は解放が先だと主張。しかし人質を取っている分ファルセットは強気です。威嚇行為に対して思わず身体をこわばらせるアコを響は抑えて毅然と主張します。
「もしもアフロディテ様に手出ししたら、この場でト音記号ごとモジューレを破壊するわ!」
コレットを壊すと主張したのぞみ同様、躊躇いがない響。交渉というより本気です。アフロディテを人質に取られているならこっちはト音記号を人質に取る。
ノイズの指示でト音記号が手に入ればアフロディテは返すと妥協するファルセット。分った、と応じた響はモジューレをトーンに運ばせます。トーンが運ぶシーンはなんだか笑えるんだけど、展開そのものはシリアス。お互いに中間の位置でトーンの動きが止ります。アフロディテを解放してそこまで来させてちょうだい、と要求する響。この子の度胸すげぇ。態度や声に躊躇いがない。ファリー騒動の時もそうだけど大博打や胆が座っていないと出来ないことをやれる子です。要求を受け入れないならプリキュアに変身して倒すと啖呵を切ります。かっけぇ。
ほお、と響の要求に感心するファルセット。ノイズも承知します。その言葉に喜ぶアコ。やはりこの辺はまだ歳相応。隣に居る響は厳しい表情のままです。こういう交渉事では弱味を見せてはいけません。妥協した、寄ってきたと思われたらそこで足下を見られる。っていうか、中学生の響が交渉人できているのが異常なんですが。私でもできねーよ、こんな綱渡りな交渉。
「と、思わせて」
やっぱりというべきか、交渉する気など最初から無いファルセットは先制攻撃を仕掛け響達の動きを封じます。略奪、搾取上等。
モジューレに歩み寄りながらバスドラ達にアフロディテの始末を指示します。しかし躊躇うふたり。再度命令されて従います。ほんとに嫌な仕事だなこれ。現実に会社をクビになりたくないから非合法な命令や地獄のような労働環境も受けざるを得ないパターンってありますが、まさにそんな感じ。実質的には彼らはほぼ正気を取り戻しています。ただマイナーに逆らう決心がついてない、というような感じ。
「そうはさせーん!」
メフィストが空降ってふたりを押さえ込みます。かっけぇ。
「あなた」「おまえ」
夫婦の再会。確かにこんだけ美人な奥さんなら頑張っちゃうよな…ってそういう問題じゃないな。
メフィストに気を取られるファルセット。響達の動きを止めていた突風が止みます。そして第二の伏兵、ハミィが登場。すっかり忘れていました。やればできる子。インターセプター。この事態を予想していたのだとしたらマジで凄い。モジューレを響達の元へ届けます。形勢は逆転。起死回生のチャンス。
「今こそノイズを倒すとき!」
もう次回が最終回なんじゃねーのかというくらいの勢い。
③償い
バスドラとバリトンにノイズの力が与えられます。またも暴走状態に。
ファルセットが放つ攻撃に気圧されながらも、一気呵成に必殺技を撃ち込みます。クリスマス商戦。戦隊でも主力商品を前面に押し出していましたがプリキュアも同じ。ミュージックロンド3連、スパークリングシャワーがファルセットに直撃します。個人的にはクレッシェンドトーンよりこうやって武器(楽器)を使って倒してくれた方が音楽テーマの作品らしくて好きなのですが、それはスポンサーが許さない。大人の事情。
プリキュアの総攻撃を耐えるファルセット。全く効きません。焦ったメロディは先ほどまでの冷静さを失い単身で躍り出ます。勢いのままつきだした正拳突きが軽く受け流されても動きを止めず、ハイ、ミドル、乱打、足払い、かかと落としと連続で仕掛けます。なんだこの動き。これ全部をいなすかスウェーでかわしているファルセットがやばい。一旦距離が離れたことで攻守が逆になります。ムチを使ってメロディを攻撃。傍観していたリズム達のもとへ投げ返します。ナイスキャッチなリズムさん。右手がさりげなく良い位置に。メロディを心配する暇を与えず追撃のエネルギー弾。
声の届かぬバスドラ達に攻撃の態勢を取るメフィスト。しかし綺麗な頃のふたりを思い返して動きが止ります。何故攻撃をやめたのか訊くアフロディテにメフィストは真相を告げます。
元々トリオはメイジャーを守る三銃士。それを洗脳したのがノイズに操られたメフィスト。メフィストは自分はアコやみんなの愛情で元に戻れたが彼らはまだ囚われたままだと悔やむように言います。自分のしたことの責任、自分だけがぬくぬくと助かっていることの罪の意識に苛まれるメフィスト。これは完全に予想外な展開。そう来たか。さすがプリキュアだ、容赦しねぇ。
メフィストは彼らの纏ったノイズの力を全て自分に引き込みます。それが彼の償い。悪の力を抜かれたふたりは元の姿に戻ります。ヘッドフォンもしていません。しかし全てを引き受けたメフィストは自分の身体と共に悪のエネルギーを滅ぼす、あとは頼むぞとアフロディテに託し、バスドラとバリトンにかつての優しかったお前達に戻ってくれと言い残して倒れます。
ああもう、ほんと、容赦ないなこの番組。前作と違って父親更正できたのに結局こうなってしまう。まあ、死んでないけど。誤りを正してさえ、それでも過去を背負わねばならないのが現実です。
メフィストを嘲笑うファルセットにメロディ達は怒りを燃やすもファルセットの力は圧倒的。再び地に伏します。
ノイズの意向に沿いファルセットは再びバスドラとバリトンにアフロディテの始末を命じます。制止の声をあげるプリキュア。ふたりはお互いに顔を見合わせて躊躇います。自らの心とノイズどちらに従うか。
痺れを切らせたファルセットが自ら手を下します。間一髪バスドラとバリトンは自ら盾になって女王を庇います。彼らは自らの心に従った。満身創痍になったメフィストもその姿を見ます。ファルセットは腹を立て、そのままふたりを倒そうとします。悲鳴こそ最高の音楽だ!と悦に入るファルセット。めっちゃ悪役。
ふたりが苦しむ姿を呆然と見ていたメロディは瞳に決意の色を宿すと「もうやめて」と懇願します。
アフロディテに詫びながらもメロディ、リズム、ミューズ、ビートは変身を解きます。モジューレを差し出せば世界がどうなるか。
「分ってるわ。でも、目の前で苦しんでる仲間を放ってはおけない。仲間の苦しみの上に、幸せの世界なんて築けない!」
気丈で悲痛な響の叫び。仲間という言葉の中に自分達が入っていると知ってバスドラとバリトンは涙を浮かべながら彼女を見つめます。
ノイズが叫ぶとモジューレからト音記号が飛び出します。儀式めいた感じに祭壇の松明が燃えさかります。楽譜最後のピースが埋まり不幸のメロディが完成。松明にノイズの姿が浮かび上がります。
不気味な勝ち誇った声をあげるノイズ。「はっひふっへほー♪」とか言いそうで怖い。
④次回予告
良かった、このノリではクリスマスムードは無いのかと心配していましたが安心の恋人ムード。ほんとうにごちそうさまでした。
○トピック
まさかのメフィスト回。予想を上回る展開にテンション上がってきました。
バスドラとバリトンの回復は年越しの最終決戦かと思っていましたがここで持って来るとは。だって、もう2人しか敵いないし。なに詰込む気なんだろう。期待でワクワクが止らない。三銃士の頃の姿を見せることでバスドラ、バリトンに続いてファルセットもまた救済(和解)の対象になっていることを視聴者に自然に示しているのが上手い。これで残るはノイズのみ。
プリキュアらしい容赦の無さが詰込まれた一本。何が凄いかって前回からプリキュアは何もしていません。何も出来ていない。
バスドラとバリトンの洗脳解除に一切プリキュアはタッチしていません。内ゲバ争いとメフィストの捨て身覚悟の行動によって元に戻っています。響と奏のケンカ然り、ハミィとセイレーン然り、アコとメフィスト然り。あくまで当人達の問題や接点を使って関係改善を図っています。これは一面では絆の力や想いの力と言えますが、結局それがない人にはそれ以上立ち入ることができないということでもある。バスドラ達が窮地に陥ったらプリキュアは助けに入るでしょう、けどメフィストのように決死の覚悟とはいかないかもしれない。前回、今回で示されているのはプリキュアの力の有限さ、手出しできない部分があるという事実です。
しかしこれは次のように言い換えることも出来る。プリキュア以外の人々もまた戦っている、と。和音と聖歌が洗脳を自力で解いたように、バスドラとバリトンも最初のキッカケは自分達の意思でした。メフィストは自分が行った責任を果たすために自ら行動を起こしています。ここでメフィストが話しに絡むとは全く予期していませんでしたが、これによって物語はさらに広く多層的になっています。映画を見た人ならお気づきだと思いますが、スイートの音楽とはみんなで奏でる音楽。一人一人持っている心が繋がって奏でられる心の音楽です。一人の優しさ、勇気で救えなくても、他の誰か、みんなの優しさや勇気が伝わり合って事を成し遂げられることが示されています。であるなら、スイートは2人の組曲から始まって4人の組曲となったように、一人の力を信じるのではなく、みんなの力、ひいては人の力を信じる物語となるのが正道と言えるでしょう。このアニメは期待どおり作品の本質を外さない。
いつものように話しがプリキュアから外れますが、私は人間を狂った生き物だと認識しています。基本的にどうしようもない生物だと思っている。そしてこの世界は人間にとって都合良くできていないし、むしろ不条理や理不尽で満たされている世界だと思っている。…と言うとニヒリズム的に聞えるかもしれないんですが、前提としてそう思ってるってだけです。要するに人間が不幸になるのも、不条理や理不尽が襲いかかるのも折込み済み。そういうものだと思っている。だから震災があっても(実際のところ私自身に被害がほとんど無かったんですが)私はそれを不幸だとは思いませんでした。面倒だとは思ったけど。やることは決まっている。また楽しい生活ができるようにするだけ。増えた仕事をいち早く片付けるだけ。そんな風に割り切れるのは本当の意味での危機に直面していないか気付いていないからだというのも承知しています。
(こっからプリキュアの話しに繋がって行く)セイレーンが自分の犯した罪に苦しんだように、メフィストが自分の過ちを償うために過去の犠牲になってしまったように、がんじがらめの世界に人間は住んでいます。どこかで全部過去を切り捨てて、ここから再スタートなんてことはできません。人は必ず過去を背負い、他者と何らかの形で繋がり、世界の檻(と表現するのは前提として世界は人間にとって辛い世界だと思っているからです)に閉じ込められている。
これらを乗り越えるために割り切って「多少の犠牲はやむなし」という考えが用いられるのも納得しています。小を捨て大を取る、そうした選択もまた現実を生きる上で必要になります。
というようなことを踏まえてここから信条(信仰)の話し。そんな辛い世の中だけど、でも世の中面白いよね。人間って面白い。面白く出来る。そうすることが人間には許されているし、出来る。っていうかそれができなかったら生きるのが辛いだけじゃん。じゃあ、這いつくばってでもやりましょう。ってのが私の信条。
過去を背負うの上等じゃないですか。過去があるかこそ今の自分があるし、経験を糧にできる。自分一人で出来ないことがあってもそりゃしょうがない。神様じゃないんだから全てをコントロールできるわけない。自分のあずかり知らぬところで何かが動いているのもそりゃ当然だ。案外それで上手くいくこともある。時には人に任せ、頼ることも重要。世の中捨てたもんじゃない。
人は面倒な生き物だと思うんだけど、でも決して嫌なところばかりじゃない。面白いこと、楽しいこと、凄いこと、自分には出来ない素晴らしいことが出来る人もまた存在する。清濁含めてこその人の豊かさ。それは世界の豊かさでもある。響、奏、セイレーン、アコ、メフィストは人で在るが故に悩み、苦しみ、過去に囚われ傷ついたけど、そこから生まれた素晴らしいものがたくさんある。
そうした可能性をバスドラやバリトンだって持っている。にも関わらず彼らを切り捨てて幸福を築こうなんてプリキュアがするわけがない。やるんだったら全員ハッピー。みんな仲間だと言い張ってこそのプリキュアです。本当の幸福とは人そのものの豊かさ、美しさに内在している。何度も言うし断言するけどプリキュアは人を信じ愛する物語です。それは”人”の可能性を賭けた物語でもある。
…のはずなんだけど、相変わらずプリキュアはファルセットとノイズを敵視しています。ほんとに視野が限定されているんだなぁ、この物語。プリキュアはどのようにして彼を仲間として受け入れていくのか。メフィストに託されたバスドラとバリトンの出番……はあるのか。
それぞれの関係、それぞれの想い、過去、現在を一つの線上で描くこの物語はまさに幸福と不幸の狭間で生きる人間の心の歌(叫び)なのだと思います。
コラム「スイートのストーリー解説(別アプローチ)」
別コラムにてストーリーをいくつかに区切って解説しています(※)が、別なアプローチ方法も思いついたためここに記述します。概要としては、スイートを過去・現在・未来と時間軸で分けそれぞれ対比することで物語の進行や響達の成長を整理するのが目的。本格的に終盤戦に入る前の準備体操。覚え書きです。
※「ストーリー解説」はリアルタイムで追記していったため、最終的な時系列は総括感想と併記しました。
○過去-現在
響と奏、ハミィとセイレーンが以前は親友だったこと、アコとメフィストが仲良い親子だったことなどを踏まえて整理すると過去と現在のギャップに悩むエピソードが序盤~中盤の中核になっています。
ここでは「過去=理想的な関係」「現在=間違った関係(あるいは否定的な関係)」として描かれています。この過去と現在のギャップを埋めるために絆を再び結んだり、友情や優しさを取り戻しています。簡単に言えば過去を取り戻すための動機付けが働いています。過去を理想(ロールモデル)として現在を回復させていくのが序盤~中盤の大筋です。
この大筋を背景としながら響達は精神的な成長や絆、人を信じる心を養っていきます。物語に懐古的な姿勢はありません。現在の関係をより良いものとしていけるよう自分を変えて相手に働きかけていく姿を丁寧かつ強調して描写しています。彼女達は過去ではなく現在の相手をちゃんと見ている。いわば過去と現在のギャップは一過性(過渡期)のものです。仲の良い時期もあれば悪い時期もあって、そうした変遷を辿りながら彼女達は人の多面性、見えないからこそ信じることが大切なことなのだと理解していきます。かつて親友だった相手に対してさえ疑心を募らせていた彼女達が黒ミューズに理解を示し、敵だと思われていたメフィストをも助けようとすることにそれが表れています。
スイートの時間経過(話数の経過)は対人関係や内面の変化を促すことに費やされています。成長や変化がストーリー進行と連動するのは当然のことですが、プリキュアの主人公を比較したときに違いが顕著になります。例えば、のぞみ、ラブ、つぼみは終始一貫して愛情深くある種のカリスマ性(超人的特性)を備えています。彼女達のメンタルは特性が強化されることはあっても本質的に変わりません。ラスボスに対しても向けられる情の深さを最初から持っています。
スイートは経験が成長に大きく影響している上にそれ自体が物語の進行に大きく関与しているのが特徴です。前作ハートキャッチは中盤までほぼ横軸(パラレル)のエピソードで構成されています。ゲストキャラの心の悩みとその解消がメイン。つぼみ達は傍観者の位置づけ。終盤でそれらが繋がって物語のテーマが一気に拡張される展開でした。スイートは1話から縦軸でストーリーが続いています。
現在(本編42話終了時点)では響達の関係は安定しています。現時点で満ち足りているため彼女達だけに限ればハッピーエンドで終れる。しかし物語はまだ続きます。
○現在-未来
彼女達にとってここから先は過去を取り戻すというような目標はありません。ここにきて提示されているのはトリオ・ザ・マイナー、ノイズのような親しかった過去があるわけでもなく実質的に初対面(未知)の相手です。しかも敵対している。
42話でバスドラとバリトンが元の姿に戻ってプリキュアを助けてくれたのが転換点。これを受けてプリキュアは彼らを倒すわけにはいかないと考えるようになりました。逆に言えば倒す気満々だったんですね。視聴者から見ればトリオは洗脳された人達だから元に戻すんだろうと思えるんだけど、肝心のプリキュアはそんなこと思っていません。ミューズが止めなかったらメフィストもそのままクレッシェンドトーンで轢き殺していたはずです。
ここで思い出されるのが、スイートがこれまで何度もやっている多面性の構図です。人や事象について見えていることと見えていないことがある。響と奏はお互いの好意を見逃していました。響達からハミィとセイレーンの友情は見えないし、アコとメフィストの関係も見えていませんでした。彼女達の視野は限られている。彼女達の苦悩を見るとその原因は表面的な言動によるものではなく、相手の心が見えないことや自分の気持ちが伝わるか不安だったからです。自分が見えていない(気付いていない)部分に関しては疑心暗鬼や思い違いをしている。そうした心の弱さ、信じることの難しさ、最初から全てを見通すことができない不自由さにもがきながらも様々な経験や発見を通じて自分の心と絆を強めています。
皮肉にも人間というのは見えないもの(見えないこと)に恐怖を抱くと同時に、そこに価値を見出して力とする生き物なのだと思います。響達が信じ心の支えとしている友情や愛情、絆は目には見えません。行為によって間接的にしか知り得ない。本当に友情があるか、愛情があるかなんて分らない。けど確かにあると彼女達は信じられるからこそ不安が安心へ、不信が信頼へと変わっている。お互いにそれを信じることで絆が生まれている。愛情が憎悪へと転じ憎悪が再び愛情へと転じたように、人の心が生み出すあらゆる感情や信仰(信心)が幸福と不幸を創りだしていく。
ここから先の物語は何の取っかかりもない相手に対してどう接するか、信じることができるかが試されると思われます。時間をかけて少しずつ信頼を得て、絆を結んで視野を広げていった響達の次なる試練。これはのぞみ達のような一貫して相手を信じて愛せる人に対する試練とは意味が異なります。響達は凡人です。人を疑って、自分が傷ついて、相手を傷つけて、薄氷を踏むような危うい人間関係を結んでいる私達と同じ。でも、苦い経験から人を信じ自分の想いを伝え、相手の気持ちを受け取ることの価値と素晴らしさを信じる意思を磨いている。その先に何を創造できるのか。凡人が創り出す未来。それは天才が生み出す世界のようなスケールの大きさや奇跡はないかもしれない。けど、小さくとも価値がある。深い愛情を初めから持っていないのも、人を疑い善意を悪意に変えてしまうことがあるのも、間違いを繰り返すのも人の常です。それでも豊かで幸せな生を導き出することできるなら、そこに人の普遍性、生の価値、在り方を提示しうる。
ある意味でようやく響達はスタートラインに立ったのだと言えるかもしれません。これまでの主人公達なら出来たことを彼女達は出来なかったし、そこに至までに多くの経験や苦難を必要としました。しかしその過程にこそ人間の成長、変わっていくことを含めた人の豊かさがあるのだと思います。プリキュアを長年見ていますが、このシリーズは毎年2歩さがって3歩進んでいる印象があります。シリーズ毎にアプローチは違えど目指すのは人間賛歌。そして必ず最後には新しい一歩を踏み出す。
…とまあ、いつものようにプリキュアのこと書くより自分の思考を書くのが目的になっちゃって話しが横にそれちゃったんだけど、簡単に纏めると「過去-現在」の対比によって響達は過去イメージや理想を希望や展望として現在を回復させられました。要するにまた仲良くやろうよ、ってわけ。しかし今直面しているのは未知の世界。どうなれば正解なのか、みんなの幸せを守ることになるのか、それは自分達で答えを出さなければいけない。心の成長、絆の拡張とともに彼女達はさらに困難な課題と直面しています。
こんな感じで時間軸を整理してストーリーを俯瞰するとシンプルでよく出来た構成だと思います。大筋で見ると過去→現在→未来へとステップを踏んでいるし、その中で成長していく響達の姿は人間の弱さや脆さ、変化と強さを映し出しています。
プリキュアは弱さを恥であるとは言わない。しかし決してそのままでいて良いとも言わない。プリキュアは強く生きようとする姿、人を信じようとする姿を描き続ける。そこがプリキュアの最も美しく好きなところです。
※「ストーリー解説」はリアルタイムで追記していったため、最終的な時系列は総括感想と併記しました。
○過去-現在
響と奏、ハミィとセイレーンが以前は親友だったこと、アコとメフィストが仲良い親子だったことなどを踏まえて整理すると過去と現在のギャップに悩むエピソードが序盤~中盤の中核になっています。
ここでは「過去=理想的な関係」「現在=間違った関係(あるいは否定的な関係)」として描かれています。この過去と現在のギャップを埋めるために絆を再び結んだり、友情や優しさを取り戻しています。簡単に言えば過去を取り戻すための動機付けが働いています。過去を理想(ロールモデル)として現在を回復させていくのが序盤~中盤の大筋です。
この大筋を背景としながら響達は精神的な成長や絆、人を信じる心を養っていきます。物語に懐古的な姿勢はありません。現在の関係をより良いものとしていけるよう自分を変えて相手に働きかけていく姿を丁寧かつ強調して描写しています。彼女達は過去ではなく現在の相手をちゃんと見ている。いわば過去と現在のギャップは一過性(過渡期)のものです。仲の良い時期もあれば悪い時期もあって、そうした変遷を辿りながら彼女達は人の多面性、見えないからこそ信じることが大切なことなのだと理解していきます。かつて親友だった相手に対してさえ疑心を募らせていた彼女達が黒ミューズに理解を示し、敵だと思われていたメフィストをも助けようとすることにそれが表れています。
スイートの時間経過(話数の経過)は対人関係や内面の変化を促すことに費やされています。成長や変化がストーリー進行と連動するのは当然のことですが、プリキュアの主人公を比較したときに違いが顕著になります。例えば、のぞみ、ラブ、つぼみは終始一貫して愛情深くある種のカリスマ性(超人的特性)を備えています。彼女達のメンタルは特性が強化されることはあっても本質的に変わりません。ラスボスに対しても向けられる情の深さを最初から持っています。
スイートは経験が成長に大きく影響している上にそれ自体が物語の進行に大きく関与しているのが特徴です。前作ハートキャッチは中盤までほぼ横軸(パラレル)のエピソードで構成されています。ゲストキャラの心の悩みとその解消がメイン。つぼみ達は傍観者の位置づけ。終盤でそれらが繋がって物語のテーマが一気に拡張される展開でした。スイートは1話から縦軸でストーリーが続いています。
現在(本編42話終了時点)では響達の関係は安定しています。現時点で満ち足りているため彼女達だけに限ればハッピーエンドで終れる。しかし物語はまだ続きます。
○現在-未来
彼女達にとってここから先は過去を取り戻すというような目標はありません。ここにきて提示されているのはトリオ・ザ・マイナー、ノイズのような親しかった過去があるわけでもなく実質的に初対面(未知)の相手です。しかも敵対している。
42話でバスドラとバリトンが元の姿に戻ってプリキュアを助けてくれたのが転換点。これを受けてプリキュアは彼らを倒すわけにはいかないと考えるようになりました。逆に言えば倒す気満々だったんですね。視聴者から見ればトリオは洗脳された人達だから元に戻すんだろうと思えるんだけど、肝心のプリキュアはそんなこと思っていません。ミューズが止めなかったらメフィストもそのままクレッシェンドトーンで轢き殺していたはずです。
ここで思い出されるのが、スイートがこれまで何度もやっている多面性の構図です。人や事象について見えていることと見えていないことがある。響と奏はお互いの好意を見逃していました。響達からハミィとセイレーンの友情は見えないし、アコとメフィストの関係も見えていませんでした。彼女達の視野は限られている。彼女達の苦悩を見るとその原因は表面的な言動によるものではなく、相手の心が見えないことや自分の気持ちが伝わるか不安だったからです。自分が見えていない(気付いていない)部分に関しては疑心暗鬼や思い違いをしている。そうした心の弱さ、信じることの難しさ、最初から全てを見通すことができない不自由さにもがきながらも様々な経験や発見を通じて自分の心と絆を強めています。
皮肉にも人間というのは見えないもの(見えないこと)に恐怖を抱くと同時に、そこに価値を見出して力とする生き物なのだと思います。響達が信じ心の支えとしている友情や愛情、絆は目には見えません。行為によって間接的にしか知り得ない。本当に友情があるか、愛情があるかなんて分らない。けど確かにあると彼女達は信じられるからこそ不安が安心へ、不信が信頼へと変わっている。お互いにそれを信じることで絆が生まれている。愛情が憎悪へと転じ憎悪が再び愛情へと転じたように、人の心が生み出すあらゆる感情や信仰(信心)が幸福と不幸を創りだしていく。
ここから先の物語は何の取っかかりもない相手に対してどう接するか、信じることができるかが試されると思われます。時間をかけて少しずつ信頼を得て、絆を結んで視野を広げていった響達の次なる試練。これはのぞみ達のような一貫して相手を信じて愛せる人に対する試練とは意味が異なります。響達は凡人です。人を疑って、自分が傷ついて、相手を傷つけて、薄氷を踏むような危うい人間関係を結んでいる私達と同じ。でも、苦い経験から人を信じ自分の想いを伝え、相手の気持ちを受け取ることの価値と素晴らしさを信じる意思を磨いている。その先に何を創造できるのか。凡人が創り出す未来。それは天才が生み出す世界のようなスケールの大きさや奇跡はないかもしれない。けど、小さくとも価値がある。深い愛情を初めから持っていないのも、人を疑い善意を悪意に変えてしまうことがあるのも、間違いを繰り返すのも人の常です。それでも豊かで幸せな生を導き出することできるなら、そこに人の普遍性、生の価値、在り方を提示しうる。
ある意味でようやく響達はスタートラインに立ったのだと言えるかもしれません。これまでの主人公達なら出来たことを彼女達は出来なかったし、そこに至までに多くの経験や苦難を必要としました。しかしその過程にこそ人間の成長、変わっていくことを含めた人の豊かさがあるのだと思います。プリキュアを長年見ていますが、このシリーズは毎年2歩さがって3歩進んでいる印象があります。シリーズ毎にアプローチは違えど目指すのは人間賛歌。そして必ず最後には新しい一歩を踏み出す。
…とまあ、いつものようにプリキュアのこと書くより自分の思考を書くのが目的になっちゃって話しが横にそれちゃったんだけど、簡単に纏めると「過去-現在」の対比によって響達は過去イメージや理想を希望や展望として現在を回復させられました。要するにまた仲良くやろうよ、ってわけ。しかし今直面しているのは未知の世界。どうなれば正解なのか、みんなの幸せを守ることになるのか、それは自分達で答えを出さなければいけない。心の成長、絆の拡張とともに彼女達はさらに困難な課題と直面しています。
こんな感じで時間軸を整理してストーリーを俯瞰するとシンプルでよく出来た構成だと思います。大筋で見ると過去→現在→未来へとステップを踏んでいるし、その中で成長していく響達の姿は人間の弱さや脆さ、変化と強さを映し出しています。
プリキュアは弱さを恥であるとは言わない。しかし決してそのままでいて良いとも言わない。プリキュアは強く生きようとする姿、人を信じようとする姿を描き続ける。そこがプリキュアの最も美しく好きなところです。
第42話「ピコンピコン!狙われたキュアモジューレニャ!」
○今週の出来事
①最後のピース
音符を全て手に入れたマイナー勢。歓喜しているファルセットの横では、バスドラとバリトンがこれまでの不満とこれからの不安を呟き合います。後半の展開にも関わってくるところですがこの人達はファルセットほど洗脳が強くないので忠誠心は低い。
音符が奪われた響達はアフロディテに相談します。ノイズとの戦いに不安を見せるセイレーンに響は力を合わせれば大丈夫だと答えます。しかしアコが今までのように甘くはないと言うと緊張した空気が場を包みます。
明るい声で心配いらないと言うアフロディテ。ノイズは復活しない。
楽譜が完成するやいなや、ト音記号が剥がれ消えてしまいます。ノイズが騒ぎ立てます。それを聞いて愕然とするファルセット。……ノイズ語判るんだ。
響達の疑問にアフロディテは答えます。響達の心に宿ったハートのト音記号こそが楽譜完成のための最後の鍵。モジューレの中にト音記号が入っています。マイナーを欺くため偽物のト音記号を紛れ込ませたと音吉さんが説明します。心配して損したと言わんばかりにどうして教えてくれなかったのかとアコが尋ねると、アフロディテは敵を欺くには味方からと茶目っ気たっぷりに答えます。可愛いなこの人妻。それはそれとしてメフィストさんにも何か言わせてやってください。
1話でセイレーンがト音記号がないと楽譜が始まらないと言っていたり、偽ミューズに扮した時に(ト音記号から生まれたので)モジューレが必要だと言っていた話しの顛末ですね。相変わらずプリキュアらしく話しの繋ぎ方がいい加減ですが、人の心から生まれたト音記号から楽譜が始まるのはこれまで本編や映画を見てきた人には納得のいく流れです。歌、音楽は人の心から生じる。1話では意味不明に聞えましたが、ここに至って音楽に仮託された人の心の物語が鮮明になっています。
ファルセットはバスドラとバリトンに八つ当たりしたあげく、奪えと命じます。返事の代わりに目を逸らすふたり。やってらんないわな
②名探偵アコ
冒頭の不安と打って変わって学校では和音と部活にいそしむ響と、聖歌に褒められて喜ぶ奏の姿が映ります。これが本妻の余裕。お互いに浮気しても問題ない。日曜朝から泥沼のようなドロドロぶりです。
暢気なふたりの様子に呆れるアコ。セイレーンはトリオはモジューレに触れないので大丈夫だと気楽に構えます。ハミィも悪い心の持ち主にはモジューレは触れないと楽観。焼き芋美味しそうです。
そんな余裕の姿にバスドラは吠え面をかかせてやると言わんばかりに策を試みます。
落とし穴作戦。バスドラが暴れ、プリキュアが駆けつけたら穴に落としてモジューレをゲットする作戦。実際のところモジューレはマジックハンドや厚手の手袋で掴めるので響達が楽観視するほど余裕ってわけではありません。
道路工事しているふたりの姿を見て不審がる4人。アコが何か小細工しているんだろうと言うと、3人もああ~と納得。蔑むを通り越してクズを見るような視線が向けられます。切ねぇ。
スコップを使えばいいのにシャベルを使っているのがなんとも。日が暮れてしまうぞ。戦闘用の力を土木作業用に応用できないものなんでしょうか。ちなみに、今スコップとシャベルという語を使いましたが、どうやら東日本と西日本で使い分けが逆のようです。大型のものをスコップ、小型のものをシャベルと呼称するのは東日本で、西日本はその逆。
「ふ~ん。ここに私達を落としてキュアモジューレを奪うつもり?」
即小学生に見抜かれてしまいます。内心の焦りを無理矢理隠して温泉を掘っていると誤魔化そうとします。それを聞いてまた例のクズを見るような目で見返す4人。特にセイレーンの眉をひそめた表情がキツイ。女子小中学生にこんな目で見られたら俺生きてけないわ。
温泉なんて出ない、図体が大きい割りにやることが小さいと散々な言われよう。アコさんマジ毒舌。小学生に罵られたい特殊な趣味の人は大喜びです。やけっぱち気味に勝負を挑もうと足を踏み込むと水道管が割れたのか水が噴き出してそのままふたりはどこかへ飛んで行ってしまいます。
口ひげを付けたアコが表彰状を読み上げます「温泉出た出た掘って出た。感謝感謝」。元上司として鼻が高いとセイレーンも大喜び。さりげに悪役時代のネタが使われるの面白い。この人猫の姿に戻れるんだろうか。ハミィと一緒に幸せのメロディを合唱して欲しいな。
ドラトン温泉。微妙に語呂が良いのがニクイ。プリキュア割引よろしく、としたたかな響。いや、それよりもプリキュア風呂を希望したい。全力でのぞきに行きます。
……という夢でした。今度はバリトンが作戦を実行します。
音吉人質作戦。
玄関のチャイムを鳴らして正面から行きます。それもう作戦とかじゃないよね。出てきた相手を見て嫌そうに目を背けるふたり。
「なによその顔、なんか用?」
平然と受け答えるアコ。もう敵としてすら見られてねぇ。上がらせて貰うと言うバリトンにどうやって?と返すアコ。どう見ても玄関をくぐれません。
「どーせ、お爺ちゃんを捕まえてキュアモジューレを奪おうって作戦でしょ。ほんと単純よね」
知恵比べで小学生に完敗するバスドラとバリトン。この位の歳になると知恵も口も達者になってくるので厄介です。ちょっと前(40話参照)までは可愛げがあったのに。これはこれで有りなんだけど。
「私同様明晰な頭脳、メフィスト様とはえらい違いだ」と内心思うバリトン。さりげに酷いな、おい。
家の中から魚を咥えた猫が逃げ出してきます。音吉さんに捕まえてくれ~と頼まれて加勢するバスドラとバリトン。無事魚を取り戻した音吉さんはふたりにお礼を言うとアコと家に戻ります。前回同様この仕事報われないなぁ。
お仕置きの雷。ファルセットが出撃します。
③傀儡からの解放
ラッキースプーンでおやつタイム。今頃マイナーランドで大目玉を食らっているだろうと言うアコ。ご名答。
全く緊張感のない彼女達のもとに和音が慌てて駆けつけます。聖歌が連れ去られたと言います。
時計台に向かうと聖歌が捕らわれているのを発見します。警戒して中の様子を伺うセイレーン達を無視して中に入ったハミィはトーンを使って五線譜の結界を解除。聖歌も意識を取り戻します。部屋の中には誰もいません。不審がるセイレーン。
時計台を出るとファルセットが待ち受けます。和音と聖歌を逃がしてファルセットに向き合うとモジューレを構えます。直後、和音と聖歌が4人のモジューレを奪取。捕縛はダミーで和音と聖歌を4人に近づけさせるのが狙いでした。ふたりはノイズに操られています。ファルセットの作戦になんて卑怯、ノイズ様の力を借りるなんて狡い、と物陰から様子を見るバスドラとバリトン。
ファルセットは袋の中にモジューレを入れます。直接触っているけど良いんだろうか。勝ち誇るファルセットにアコは不敵な笑みを返します。ポケットからモジューレを取り出して見せます。こんなこともあろうかと先んじてすり替えたと言います。アコさんマジ策士。だから直接触れたんだろうけどファルセットも気付け。アフロディテ同様、しかし不敵な様子で敵を欺くには味方から、と響達に答えます。セイレーンも夏祭りの時に騙していたんで味方が味方を欺くのはスイートでは日常茶飯。
「ああ、さすがだ」「面白くなってきたぞー」観戦モードのふたり。仕事するつもりねぇ。
アコの機転で振り出しに戻ったものの、和音と聖歌はそのまま人質として使えます。再びふたりにモジューレ奪取の指示を与えるファルセット。「そこまでするかファルセット」。実況すんな。
響は和音に辛い試合も一緒に乗り越えてきた最高のパートナーだと呼びかけます。奏が隣に居るのに堂々と言っちゃったよこの人。奏がマイナー落ちしたらどうしよう。しかしそこは本妻、妾の一人や二人容認する方向。奏は聖歌にスイーツ部みんなの憧れだと呼びかけます。目の前までふたりが迫ると突如雷が落ちます。わざと外した、今度はふたりに当てると脅すファルセットさんマジ外道。傍観していたバスドラ達もファルセットのやり方に不信を募らせていきます。
響は何かに気付いたように一瞬間を置くと、判ったと頷いてモジューレを渡すと要求を飲みます。セイレーン、奏、アコも了解します。モジューレを持って戻る途中で和音と聖歌は膝を付いてもがき始めます。驚きつつも悪のノイズと戦っている、と状況を理解するセイレーン。隣に居る響はその様子を冷静に見ています。微妙なところで、判りにくい描写ですがおそらく先ほど響は和音と聖歌に正気の意思を感じ取ってふたりに賭けたのだろうと思われます。単に信じていただけなのかもしれませんが。和音と聖歌は正気に戻りそのまま意識を失います。傀儡が解けてノイズは地団駄を踏みます。
ふたりに駆け寄ろうとした4人をファルセットが牽制。しかしファルセットがモジューレを拾うよりも早くハミィが咥えて持って行きます。ナイス。が、ファルセットも反撃を加えてハミィからモジューレを離します。地面に転がるモジューレ。一番近くにいるのはバスドラとバリトン。
ファルセットはふたりに早く回収しろと命じます。響達はそれに触ったらタダでは済まないと彼らの身を案じます。それに対してお前達などどうなっても良い、ノイズ様のために身を捧げろと命じるファルセット。なるほど、和音と聖歌はいわば前座。このふたりにスポットが当たっているのね。
ふたりがモジューレに手を伸ばして触れると目映い光が辺りを包込みます。光が消えると元の姿に戻ったふたりが立っています。ふたりは顔を見合わせると4人にモジューレを返します。ファルセットに嫌気が差したふたりはプリキュアを応援。これは予想外の展開。このふたりとの決着は年明けの最終決戦になるかと思ってました。
④勝負は持ち越し
悪の心が消えたとはいえ、耳にはヘッドフォンがくっついたまま。再度ノイズによって再洗脳。目的のためには仲間をも犠牲する敵のやり方に憤った4人は変身します。
自我を失い暴走したふたりと本気で戦えないためプリキュアは苦戦。味方してくれたふたりをただ倒すなんて出来ないと言うメロディとリズムにクレッシェンドトーンが答えます。
「あなた達の力は倒すための力ではありません。信じるのです。大切な人を守るための力、プリキュアの力を」
長いプリキュアの歴史の中でこうして明言したのは初めてかもしれない。言わずとも長らく、いや本作だけを見ていても気付くことですが、もはやプリキュアは敵を倒せば良いという物語ではありません。如何にして人の心を救い、守るか。プリキュアの力とは想いの力であり、想いを届ける力。
アンサンブルが直撃する直前、ふたりは正気に戻ります。同時にふたりの前に邪悪な力が落ちてアンサンブルは失敗。ノイズが横やりを入れます。決着がつくかと思いきや持ち越し。
捨てセリフを残してファルセットとノイズが姿を消し、続こうとしたバスドラとバリトンをメロディが呼び止めます。助けてくれてありがとうとお礼を言うメロディ。リズム達も感謝の気持ちを表情に浮かべています。しかしふたりは勝負はお預け、モジューレは必ず頂く、と言い残して姿を消します。
意識を取り戻した和音と聖歌とともに帰路につきます。
夜。各々モジューレを不安げに見つめる4人。彼女達を追い詰めるように次の手が打たれます。
⑤次回予告
メロディかっけぇ。メフィストの正義の拳が唸る。
○トピック
まさかのバスドラ・バリトン回。いよいよ終盤戦の様を呈してきました。
プリキュアは細かい話しの整合や設定を無視して進めることが度々あるんですが、物語の根本部分に関しては手を抜きません。まあ、そこを手抜きしたらどうしようもなくなるんですが、そこがちゃんとしているからこそ安心して見られる作品です。ツッコミを入れることはあっても欠陥として指摘しないのはそのためです。物語の本質がしっかりしていれば後はどうでもいい。
マイナー側はノイズに洗脳されています。ここで重要なのはどうやってその洗脳を解くか。高出力の浄化パワーで悪の力をぶっ飛ばすのか、説得するかで物語の方向性が変わってきます。スイートは後者、つまり自発的な意思によって正気を取り戻させています。セイレーン然り、メフィスト然り。殴ることもありますが当人達の絆や想いを尊重しています。そもそも洗脳というのは意味的に自由意思の抹殺なので、これを克服し本来あるべき形に戻すというのなら自由意思の萌芽がなくてはなりません。浄化パワーで悪の力を払って解決というのでは結局当人の自由意思を無視していることに違いはありません。プリキュアはここで線引きをしていて、プリキュア自身に浄化パワーを使わせていません。アンサンブルでメフィストを殴ろうとした時も中断させています。仮に使ったとしても事前に想いが届いていれば必殺技は意思力の表現として捉えられるんですが、変なところでこだわるのがプリキュアの特徴。私が好きな点です。
ハミィと親友だったセイレーン、アコの父親であったメフィストと比べるとバスドラとバリトンは響達と関係性が薄い。おそらく彼らは幸せの楽譜の歌い手候補とかそんなだと思いますが、それ故に取っかかりが無い。説得の難易度が高い相手です。実際今回元の姿に戻れたのも、正義の心を取り戻したというよりファルセットやノイズのやり方についていけなくなって嫌気が差して解けたという印象です。それで解ける洗脳って実は大したこと……ゴホゴホッ。冗談は置くとしても、彼らはファルセットほど洗脳が強くなく、見た目は異形だけどどこか憎めない人の良さがあることは当初から描写されてきたことでもあります。ただしそこですぐに元に戻るわけではなく再洗脳されているのが今回のポイントです。敢えて一手間かけている。
これにはいくつか意味があって、バスドラとバリトンの本当の解放のための準備がまず上げられます。単なる内ゲバ争いで元に戻ったのでは不十分。セイレーンやメフィストのようにまた一緒に過ごせるようにならないと本当の解放とは言えないでしょう。モジューレを触ってはいけないと心配されたことや、お礼を言われたことで彼らとプリキュアの間に接点が設けられています。敵であろうと心配したりお礼を言うのはプリキュアのプリキュアらしい優しさです。そうした"情"が彼らの意思を変えていく契機になると予想されます。元々マイナー勢は洗脳によって敵になっているので、どうやって切り崩していくかがポイントになるわけですが、バスドラとバリトンをファルセットと差別化させることで先鞭をつけているのは上手い転換です。
もう一つはスイート恒例の「敵だと思っていた相手が実は意思通じる相手だった」ことの再確認。プリキュア側から見たときの再評価です。響達はこれでバスドラとバリトンが切って捨てていい相手だとは思えなくなりました。スイートは物語的に多面性の構図をベースにしていて、桜の木のすれ違いから始まり人の心の表と裏、音楽が人を勇気付ける裏で人を悲しませるなどの両面性(多面性)を描いています。ひいてはどこまで線引きしていくかが試されている。セイレーンは仲間に出来る、メフィストもOK、バスドラとバリトンもこっち側。じゃあファルセットやノイズは? どこまで含めるのか、どこで線を引くのか。線を引いてしまったら「裏」がそれ自体になってしまって「表」は見えてこなくなる。プリキュアの最終決戦の緊張感、ドキドキやワクワクはここにあります。プリキュアの力はどこまで届くのか。ハッピーエンドになることは判っている。問題はどこまでそのハッピーを広げられるか、未来を切り開けるかにあります。
さて、バスドラとバリトン。アンサンブルの直撃直前に暴走状態が解けていますが、実はこれ完全に正気に戻っていてノイズを騙すための演技を続けているのだとしたら面白いのですが、さすがにそこまではやらないかな。
物語も残り僅か。奏の白ニーソ絶対領域を拝めるのもあと僅かと思うと寂しくなります。次期プリキュアでもナイスな太ももが見られることを願います。
①最後のピース
音符を全て手に入れたマイナー勢。歓喜しているファルセットの横では、バスドラとバリトンがこれまでの不満とこれからの不安を呟き合います。後半の展開にも関わってくるところですがこの人達はファルセットほど洗脳が強くないので忠誠心は低い。
音符が奪われた響達はアフロディテに相談します。ノイズとの戦いに不安を見せるセイレーンに響は力を合わせれば大丈夫だと答えます。しかしアコが今までのように甘くはないと言うと緊張した空気が場を包みます。
明るい声で心配いらないと言うアフロディテ。ノイズは復活しない。
楽譜が完成するやいなや、ト音記号が剥がれ消えてしまいます。ノイズが騒ぎ立てます。それを聞いて愕然とするファルセット。……ノイズ語判るんだ。
響達の疑問にアフロディテは答えます。響達の心に宿ったハートのト音記号こそが楽譜完成のための最後の鍵。モジューレの中にト音記号が入っています。マイナーを欺くため偽物のト音記号を紛れ込ませたと音吉さんが説明します。心配して損したと言わんばかりにどうして教えてくれなかったのかとアコが尋ねると、アフロディテは敵を欺くには味方からと茶目っ気たっぷりに答えます。可愛いなこの人妻。それはそれとしてメフィストさんにも何か言わせてやってください。
1話でセイレーンがト音記号がないと楽譜が始まらないと言っていたり、偽ミューズに扮した時に(ト音記号から生まれたので)モジューレが必要だと言っていた話しの顛末ですね。相変わらずプリキュアらしく話しの繋ぎ方がいい加減ですが、人の心から生まれたト音記号から楽譜が始まるのはこれまで本編や映画を見てきた人には納得のいく流れです。歌、音楽は人の心から生じる。1話では意味不明に聞えましたが、ここに至って音楽に仮託された人の心の物語が鮮明になっています。
ファルセットはバスドラとバリトンに八つ当たりしたあげく、奪えと命じます。返事の代わりに目を逸らすふたり。やってらんないわな
②名探偵アコ
冒頭の不安と打って変わって学校では和音と部活にいそしむ響と、聖歌に褒められて喜ぶ奏の姿が映ります。これが本妻の余裕。お互いに浮気しても問題ない。日曜朝から泥沼のようなドロドロぶりです。
暢気なふたりの様子に呆れるアコ。セイレーンはトリオはモジューレに触れないので大丈夫だと気楽に構えます。ハミィも悪い心の持ち主にはモジューレは触れないと楽観。焼き芋美味しそうです。
そんな余裕の姿にバスドラは吠え面をかかせてやると言わんばかりに策を試みます。
落とし穴作戦。バスドラが暴れ、プリキュアが駆けつけたら穴に落としてモジューレをゲットする作戦。実際のところモジューレはマジックハンドや厚手の手袋で掴めるので響達が楽観視するほど余裕ってわけではありません。
道路工事しているふたりの姿を見て不審がる4人。アコが何か小細工しているんだろうと言うと、3人もああ~と納得。蔑むを通り越してクズを見るような視線が向けられます。切ねぇ。
スコップを使えばいいのにシャベルを使っているのがなんとも。日が暮れてしまうぞ。戦闘用の力を土木作業用に応用できないものなんでしょうか。ちなみに、今スコップとシャベルという語を使いましたが、どうやら東日本と西日本で使い分けが逆のようです。大型のものをスコップ、小型のものをシャベルと呼称するのは東日本で、西日本はその逆。
「ふ~ん。ここに私達を落としてキュアモジューレを奪うつもり?」
即小学生に見抜かれてしまいます。内心の焦りを無理矢理隠して温泉を掘っていると誤魔化そうとします。それを聞いてまた例のクズを見るような目で見返す4人。特にセイレーンの眉をひそめた表情がキツイ。女子小中学生にこんな目で見られたら俺生きてけないわ。
温泉なんて出ない、図体が大きい割りにやることが小さいと散々な言われよう。アコさんマジ毒舌。小学生に罵られたい特殊な趣味の人は大喜びです。やけっぱち気味に勝負を挑もうと足を踏み込むと水道管が割れたのか水が噴き出してそのままふたりはどこかへ飛んで行ってしまいます。
口ひげを付けたアコが表彰状を読み上げます「温泉出た出た掘って出た。感謝感謝」。元上司として鼻が高いとセイレーンも大喜び。さりげに悪役時代のネタが使われるの面白い。この人猫の姿に戻れるんだろうか。ハミィと一緒に幸せのメロディを合唱して欲しいな。
ドラトン温泉。微妙に語呂が良いのがニクイ。プリキュア割引よろしく、としたたかな響。いや、それよりもプリキュア風呂を希望したい。全力でのぞきに行きます。
……という夢でした。今度はバリトンが作戦を実行します。
音吉人質作戦。
玄関のチャイムを鳴らして正面から行きます。それもう作戦とかじゃないよね。出てきた相手を見て嫌そうに目を背けるふたり。
「なによその顔、なんか用?」
平然と受け答えるアコ。もう敵としてすら見られてねぇ。上がらせて貰うと言うバリトンにどうやって?と返すアコ。どう見ても玄関をくぐれません。
「どーせ、お爺ちゃんを捕まえてキュアモジューレを奪おうって作戦でしょ。ほんと単純よね」
知恵比べで小学生に完敗するバスドラとバリトン。この位の歳になると知恵も口も達者になってくるので厄介です。ちょっと前(40話参照)までは可愛げがあったのに。これはこれで有りなんだけど。
「私同様明晰な頭脳、メフィスト様とはえらい違いだ」と内心思うバリトン。さりげに酷いな、おい。
家の中から魚を咥えた猫が逃げ出してきます。音吉さんに捕まえてくれ~と頼まれて加勢するバスドラとバリトン。無事魚を取り戻した音吉さんはふたりにお礼を言うとアコと家に戻ります。前回同様この仕事報われないなぁ。
お仕置きの雷。ファルセットが出撃します。
③傀儡からの解放
ラッキースプーンでおやつタイム。今頃マイナーランドで大目玉を食らっているだろうと言うアコ。ご名答。
全く緊張感のない彼女達のもとに和音が慌てて駆けつけます。聖歌が連れ去られたと言います。
時計台に向かうと聖歌が捕らわれているのを発見します。警戒して中の様子を伺うセイレーン達を無視して中に入ったハミィはトーンを使って五線譜の結界を解除。聖歌も意識を取り戻します。部屋の中には誰もいません。不審がるセイレーン。
時計台を出るとファルセットが待ち受けます。和音と聖歌を逃がしてファルセットに向き合うとモジューレを構えます。直後、和音と聖歌が4人のモジューレを奪取。捕縛はダミーで和音と聖歌を4人に近づけさせるのが狙いでした。ふたりはノイズに操られています。ファルセットの作戦になんて卑怯、ノイズ様の力を借りるなんて狡い、と物陰から様子を見るバスドラとバリトン。
ファルセットは袋の中にモジューレを入れます。直接触っているけど良いんだろうか。勝ち誇るファルセットにアコは不敵な笑みを返します。ポケットからモジューレを取り出して見せます。こんなこともあろうかと先んじてすり替えたと言います。アコさんマジ策士。だから直接触れたんだろうけどファルセットも気付け。アフロディテ同様、しかし不敵な様子で敵を欺くには味方から、と響達に答えます。セイレーンも夏祭りの時に騙していたんで味方が味方を欺くのはスイートでは日常茶飯。
「ああ、さすがだ」「面白くなってきたぞー」観戦モードのふたり。仕事するつもりねぇ。
アコの機転で振り出しに戻ったものの、和音と聖歌はそのまま人質として使えます。再びふたりにモジューレ奪取の指示を与えるファルセット。「そこまでするかファルセット」。実況すんな。
響は和音に辛い試合も一緒に乗り越えてきた最高のパートナーだと呼びかけます。奏が隣に居るのに堂々と言っちゃったよこの人。奏がマイナー落ちしたらどうしよう。しかしそこは本妻、妾の一人や二人容認する方向。奏は聖歌にスイーツ部みんなの憧れだと呼びかけます。目の前までふたりが迫ると突如雷が落ちます。わざと外した、今度はふたりに当てると脅すファルセットさんマジ外道。傍観していたバスドラ達もファルセットのやり方に不信を募らせていきます。
響は何かに気付いたように一瞬間を置くと、判ったと頷いてモジューレを渡すと要求を飲みます。セイレーン、奏、アコも了解します。モジューレを持って戻る途中で和音と聖歌は膝を付いてもがき始めます。驚きつつも悪のノイズと戦っている、と状況を理解するセイレーン。隣に居る響はその様子を冷静に見ています。微妙なところで、判りにくい描写ですがおそらく先ほど響は和音と聖歌に正気の意思を感じ取ってふたりに賭けたのだろうと思われます。単に信じていただけなのかもしれませんが。和音と聖歌は正気に戻りそのまま意識を失います。傀儡が解けてノイズは地団駄を踏みます。
ふたりに駆け寄ろうとした4人をファルセットが牽制。しかしファルセットがモジューレを拾うよりも早くハミィが咥えて持って行きます。ナイス。が、ファルセットも反撃を加えてハミィからモジューレを離します。地面に転がるモジューレ。一番近くにいるのはバスドラとバリトン。
ファルセットはふたりに早く回収しろと命じます。響達はそれに触ったらタダでは済まないと彼らの身を案じます。それに対してお前達などどうなっても良い、ノイズ様のために身を捧げろと命じるファルセット。なるほど、和音と聖歌はいわば前座。このふたりにスポットが当たっているのね。
ふたりがモジューレに手を伸ばして触れると目映い光が辺りを包込みます。光が消えると元の姿に戻ったふたりが立っています。ふたりは顔を見合わせると4人にモジューレを返します。ファルセットに嫌気が差したふたりはプリキュアを応援。これは予想外の展開。このふたりとの決着は年明けの最終決戦になるかと思ってました。
④勝負は持ち越し
悪の心が消えたとはいえ、耳にはヘッドフォンがくっついたまま。再度ノイズによって再洗脳。目的のためには仲間をも犠牲する敵のやり方に憤った4人は変身します。
自我を失い暴走したふたりと本気で戦えないためプリキュアは苦戦。味方してくれたふたりをただ倒すなんて出来ないと言うメロディとリズムにクレッシェンドトーンが答えます。
「あなた達の力は倒すための力ではありません。信じるのです。大切な人を守るための力、プリキュアの力を」
長いプリキュアの歴史の中でこうして明言したのは初めてかもしれない。言わずとも長らく、いや本作だけを見ていても気付くことですが、もはやプリキュアは敵を倒せば良いという物語ではありません。如何にして人の心を救い、守るか。プリキュアの力とは想いの力であり、想いを届ける力。
アンサンブルが直撃する直前、ふたりは正気に戻ります。同時にふたりの前に邪悪な力が落ちてアンサンブルは失敗。ノイズが横やりを入れます。決着がつくかと思いきや持ち越し。
捨てセリフを残してファルセットとノイズが姿を消し、続こうとしたバスドラとバリトンをメロディが呼び止めます。助けてくれてありがとうとお礼を言うメロディ。リズム達も感謝の気持ちを表情に浮かべています。しかしふたりは勝負はお預け、モジューレは必ず頂く、と言い残して姿を消します。
意識を取り戻した和音と聖歌とともに帰路につきます。
夜。各々モジューレを不安げに見つめる4人。彼女達を追い詰めるように次の手が打たれます。
⑤次回予告
メロディかっけぇ。メフィストの正義の拳が唸る。
○トピック
まさかのバスドラ・バリトン回。いよいよ終盤戦の様を呈してきました。
プリキュアは細かい話しの整合や設定を無視して進めることが度々あるんですが、物語の根本部分に関しては手を抜きません。まあ、そこを手抜きしたらどうしようもなくなるんですが、そこがちゃんとしているからこそ安心して見られる作品です。ツッコミを入れることはあっても欠陥として指摘しないのはそのためです。物語の本質がしっかりしていれば後はどうでもいい。
マイナー側はノイズに洗脳されています。ここで重要なのはどうやってその洗脳を解くか。高出力の浄化パワーで悪の力をぶっ飛ばすのか、説得するかで物語の方向性が変わってきます。スイートは後者、つまり自発的な意思によって正気を取り戻させています。セイレーン然り、メフィスト然り。殴ることもありますが当人達の絆や想いを尊重しています。そもそも洗脳というのは意味的に自由意思の抹殺なので、これを克服し本来あるべき形に戻すというのなら自由意思の萌芽がなくてはなりません。浄化パワーで悪の力を払って解決というのでは結局当人の自由意思を無視していることに違いはありません。プリキュアはここで線引きをしていて、プリキュア自身に浄化パワーを使わせていません。アンサンブルでメフィストを殴ろうとした時も中断させています。仮に使ったとしても事前に想いが届いていれば必殺技は意思力の表現として捉えられるんですが、変なところでこだわるのがプリキュアの特徴。私が好きな点です。
ハミィと親友だったセイレーン、アコの父親であったメフィストと比べるとバスドラとバリトンは響達と関係性が薄い。おそらく彼らは幸せの楽譜の歌い手候補とかそんなだと思いますが、それ故に取っかかりが無い。説得の難易度が高い相手です。実際今回元の姿に戻れたのも、正義の心を取り戻したというよりファルセットやノイズのやり方についていけなくなって嫌気が差して解けたという印象です。それで解ける洗脳って実は大したこと……ゴホゴホッ。冗談は置くとしても、彼らはファルセットほど洗脳が強くなく、見た目は異形だけどどこか憎めない人の良さがあることは当初から描写されてきたことでもあります。ただしそこですぐに元に戻るわけではなく再洗脳されているのが今回のポイントです。敢えて一手間かけている。
これにはいくつか意味があって、バスドラとバリトンの本当の解放のための準備がまず上げられます。単なる内ゲバ争いで元に戻ったのでは不十分。セイレーンやメフィストのようにまた一緒に過ごせるようにならないと本当の解放とは言えないでしょう。モジューレを触ってはいけないと心配されたことや、お礼を言われたことで彼らとプリキュアの間に接点が設けられています。敵であろうと心配したりお礼を言うのはプリキュアのプリキュアらしい優しさです。そうした"情"が彼らの意思を変えていく契機になると予想されます。元々マイナー勢は洗脳によって敵になっているので、どうやって切り崩していくかがポイントになるわけですが、バスドラとバリトンをファルセットと差別化させることで先鞭をつけているのは上手い転換です。
もう一つはスイート恒例の「敵だと思っていた相手が実は意思通じる相手だった」ことの再確認。プリキュア側から見たときの再評価です。響達はこれでバスドラとバリトンが切って捨てていい相手だとは思えなくなりました。スイートは物語的に多面性の構図をベースにしていて、桜の木のすれ違いから始まり人の心の表と裏、音楽が人を勇気付ける裏で人を悲しませるなどの両面性(多面性)を描いています。ひいてはどこまで線引きしていくかが試されている。セイレーンは仲間に出来る、メフィストもOK、バスドラとバリトンもこっち側。じゃあファルセットやノイズは? どこまで含めるのか、どこで線を引くのか。線を引いてしまったら「裏」がそれ自体になってしまって「表」は見えてこなくなる。プリキュアの最終決戦の緊張感、ドキドキやワクワクはここにあります。プリキュアの力はどこまで届くのか。ハッピーエンドになることは判っている。問題はどこまでそのハッピーを広げられるか、未来を切り開けるかにあります。
さて、バスドラとバリトン。アンサンブルの直撃直前に暴走状態が解けていますが、実はこれ完全に正気に戻っていてノイズを騙すための演技を続けているのだとしたら面白いのですが、さすがにそこまではやらないかな。
物語も残り僅か。奏の白ニーソ絶対領域を拝めるのもあと僅かと思うと寂しくなります。次期プリキュアでもナイスな太ももが見られることを願います。
第41話「ファファ~♪最後の音符はぜったい渡さないニャ!」
○今週の出来事
①最後の音符
今日は加音町音楽会。広場では本番前のリハーサル。団さんが王子隊に指示を出しています。それを離れたところでこっそり見ていた奏は黄色い声で「王子先輩!」を連呼。もはやツッコミすらせず、響達は参加したかったものの今はそれどころではないと話し合います。危機感が全くない奏に3人+1匹の視線が集中。視線に気付いた奏はようやくそれどころじゃないよね、と話しを合わせます。奏さん、もうそろそろその作戦は通じないと思うんだよ。響の気を引きたいのは分るんだけどさ。大体、相手が寝ても起きないとか、早朝にベランダを訪れても全く躊躇うことなく響だと思える仲なんでしょ?
こちらが保有している音符は一つだけ。しかし音楽会なら音符も集まってきそうです。まだまだチャンスはある。
残念なお知らせ。楽譜完成に必要な音符はあと一つ。つまりファリーが持っている音符が奪われたら終わり。音符集めは終了。いよいよ伸るか反るかの大勝負へと進んでいます。
ノイズが出す音波に心地よさを感じるトリオ達。音を使うという意味ではクレッシェンドトーンもノイズも同じ領域に属するような気がするけど、さて。
4人バージョンOP映像。ビートかっけぇ。ミューズ持って帰って良いですかね?
ビートとミューズ、メロディとリズムでお互いにアイコンタクトを取り合っているのは面白い動きです。相手を見ながら一緒に一つを目指す。
バスドラとバリトンは鼻水を垂らしながらこの乗り物は冬はキツイと寒がります。乗り物がどうこうっていうか、その姿でも寒がるんだ。パワーアップしてもその辺は融通が利かないらしい。残る音符は一つだけ。やる気を出して街へと向かいます。
ちょうどその話しを物陰で盗み聞きする4人。音符探しのためなのか、人気の無いところでイチャイチャするためかは分りませんが、展開早ぇ。なるほど今回はこういうノリなのね。
肝心要のファリーはキャッキャはしゃいでいます。どっかのたおやかな人並に緊張感ねぇ。持ち主(相方?)に似ています。ファリーが持っている音符は世界の最後の希望だと響は真面目に言います。隣に居るアコは少々呆れた表情を浮かべています。心許ない。ハミィは響の言葉を継いでもし取られたら世界は不幸のズンどこになると真面目な顔で言います。するとファリーも真面目な顔でその言葉を受け止めると、ハミィと一緒にズンどこ踊りをし始めます。ダメだこいつら早く何とかしないと。レリーがファリーはお調子者だと言います。細かく分類して見ていませんがトーンには個性があります。ドリー、レリー、ラリー、ドドリーあたりは真面目でしょうか。ラリーは少々臆病。
ミリーが預かると言うと、ファリーは脚も早いしこんなに高く飛べると身のこなしの軽さを強調。が、匂いをかぎつけたのかバスドラ達がもの凄いスピードで駆け戻ってきます。間一髪ハミィが救出。幸いバスドラ達は気にぶつかって気絶。その隙に退却。
街に戻ったものの、何か策を講じないと奪取されかねません。マイナー側の有利な点は音符をわざわざ人間界に持って来る必要がないので取られるリスクがないことです。対してプリキュア側はトーンが保管しているとはいえ万全ではないのでリスクを負っています。ま、結局収集物は敵に奪われるのがお約束なんですけどね。
響は映画のポスターを見て閃きます。
バスドラ達は街で地道にファリー探し。子ども達が目撃します。当たり前と言えば当たり前ですが、どうやってもこいつらは目立つ。子ども達に化け物呼ばわりされてこれにはバスドラも堪えます。隣で不格好な自分の姿に泣いているバリトンと共に悲観に暮れます。不幸のメロディ作ろうとしている奴が一番不幸な目にあってるってのは皮肉な話しです。
街中に響の声が響き渡ります。これから映画の撮影が始まる。妖精ファリーが獣のような悪者ふたりに追いかけられるストーリー。セイレーンと奏も手伝って、街のみなさんも登場人物、ファリーを見かけたら助けてあげてと説明します。撮影スタート!と啖呵を切る響。こういう時の彼女はとても活き活きとしている。学校でミューズ探しやったときもそうですが大胆なことを堂々とやります。
②映画だよ全員集合
ということで、不思議なことが起きたらテレビの撮影か?的な疑問を逆手にとって「映画です」で乗り切る作戦。街の人々を巻き込みます。
その話しを聞いて、何故か嬉しそうな顔を浮かべるバスドラとバリトン。いよいよ自分達が主役かとワクワクしています。いやいや話し聞いてました? あんた達悪者だよ。子ども達もふたりを指さして絶対悪者だと言葉を交わします。当然の反応です。
「見つけたぞ、この悪者め! 変・身! 正義のヒーロー太陽マン!」
以前工作で作った仮面を付けて奏太が挑みます。行動早ぇ。あの小道具が陽の目を浴びるとは。映画に出れると聞いて速攻準備したのでしょう。奏太の隣にアコがいます。たぶん奏太がやろうと言い出したのだと思いますがアコも付き合いがいい。
奏太は偽ファリーを見せてバスドラ達の気を引きます。奏太は行くぞ!と啖呵を切ると、謎のポーズをアコと取って逃げ出します。アコの表情は分りませんが、たぶん色々と諦めていると思う。っていうかてめぇ、アコの手を掴んで走るとか役得すぎんだろ。バスドラは逃がすものかとバリトンを投げつけます。回避。電灯に命中してバリトンはノックアウト。しかし足止めには成功。バスドラが追いつきます。奏太はファリーを捨てて逃げ出します。慌ててファリーを掴んだバスドラはそこでようやくそれが偽物だと気付きます。それを見て笑う奏太。イタズラ成功。
なんだ狡いなぁ、と悔しがるバスドラ。そういう問題なのかな。面白いなそのリアクション。使い捨てにされたバリトンはバスドラを怨みます。
そこに本物のファリー登場。分身の術、と黄色く塗装されたトーン達が出現。よく見ると一人だけ瞳が違います。ドドリーだな。本物はひとつドド。ちゃんと正しいのを捕まえられるレレ? や~いベロベロファ~!とおちょくるトーン達。語尾で見分けられそうです。
トーンを捕まえようと開けた場所に出るとそこには黄色、黄色、黄色、ファリーの人形や置物が至る所に置いてあります。なんという黄色プッシュ。いくら東堂いづみが黄色贔屓だからといって、ここまでなりふり構わないとは。
「名付けて、ファリーを隠すならファリーの中作戦!」
調べの館でポーズを決めて説明する奏。誰に言ってるんだそれ。木を隠すには森ってわけですね。後ろでは響とセイレーンが新しいダミーを作っています。学芸会的なノリですね。
バスドラ達はしらみつぶしに探しますが本物は見つけられません。音吉さんも製作に関わっているらしく残念じゃったな、と素知らぬ顔で言います。この際この人が手先器用なのは驚くことでもないけど、この資材と資金どこから出ているんだろう。まさか…メイジャーの金!?
散歩するように飛んでいたファリーはバスドラ達を見て思わず自分はファリーではないと言って墓穴を掘ります。語尾で見分けられるのでバスドラ達は全力で追いかけます。作戦そのものは悪くないと思うんだけど、肝心のファリーを引っ込めないでどうする。
追いかけっこを見て響達は誰があんな本物っぽい偽物を作ったんだろうと話し合います。作れるわけないじゃんと至極真っ当な返事をするアコ。この面子、まともなのが小学生ってどうなんだ。仕掛け人が本物と偽物見分けられないでどうする。プリキュアのボケ率の高さは異常。益々オールスターズでりんやくるみの負担が大きくなりそうです。そのくるみもボケに近いので実質りんとアコしかいねぇ。ゆりさんは、遂にプリキュアも小学生かぁ…と切ない空気出してると思います。
本物が見つかっては作戦もへったくれもない。困った時の和音。響は指笛を吹きます。いや、だからそれで呼べるのってどうなの。
「お助け和音ちゃん参上!」
いや、だからそれで来れちゃうのってどうなの。
シュートを決めてバスドラに会心の一撃を与えます。割とマジで痛いと思うよ、これ。
すると今度は聖歌先輩登場。お久しぶりです。弱いモノいじめは感心しないと言います。いや~この状況だとどうなんだろ。聖歌は両手にクリームが入った絞り袋を持って構えます。え?
「そこで大人しくなさってて」
バスドラとバリトンを使って特大ケーキをこしらえます。ちょ、君そういうキャラだったの!?
「かっこいい~聖歌先輩!」
もうなんていうか、スイーツ部すげぇな!!
「やめてよ聖歌先輩~」
バスドラきめぇ。
「ファリーを、助けなきゃね!」
王子隊見参。流れ的にオチ担当だよ、これ。
「悪者捕獲!」
バスドラ達を縛り上げます。奏は狂喜乱舞。っていうか王子先輩何もしてねぇ。どんだけこの街の人映画に出たがりなんだよ。
「ふざけおって!」
脚本と演出の人に言ってください。
黄色い声が近づいてきます。王子のファンが押しかけてきてバスドラ達は下敷きに。「もう嫌だ」「お家に帰りたい」。辛い仕事です。しかし容赦なくお仕置きの雷が落ちます。ファルセットは使えない部下に不満を表わします。言い訳するふたりに、ファルセットはファリーの性格を利用してやればいいと余裕を見せます。
上手いこと逃げられた、やっぱり自分は凄いと自惚れるファリー。他のトーンが諫めます。しかしファリーはトーンの中で一番強くて賢いと聞く耳を持ちません。
そこにトリオが表れます。思わずレリーの後ろに隠れるファリー。言ってる傍からこれかよ。ミリーが呆れた視線を送ります。
トリオ達はファリーが見つからずテンテコ舞い、ノイズ様に叱られる、こうなったら良い人間になろう、と芝居をはじめます。その話しに乗ったファリーは前に進み出てしまい捕まってしまいます。したり顔でお前が本物のファリーか、と本性を表わすファルセット。本物見分けなくても全部捕まえられたんじゃない?と言ってはいけないんだろうなぁ。
ファリーが敵の手に渡り大ピンチ。響は大声で街中に映画のクライマックス、ファリーを助けてとお願いします。
すると街の人々が大勢押しかけてきます。何を勘違いしたのかコスプレしている人がチラホラ。なんでだ。この街よくイベントやってるし、のど自慢の時にも本番が明日と聞いても動じなかった人達なのでお祭りに慣れている上に好きなのかもしれない。毎週不幸の音波で被害者が出ているけど、アレも何かのイベントと勘違いされているのかもしれない。
街の人達にもみくちゃにされてファリーがファルセットの手を離れて上空に逃れます。ラストチャンス。響とバスドラは同時に上空へと躍り出ます。生身でその跳躍力はすげぇ。っていうか、物語が終盤戦に入ろうって時にギャグを全力でやれるこの番組がすげぇ。
③ファリー救出大作戦
交差する両雄。手応えを感じた響は手の中を確かめます。ハズレ。本物はバスドラの手に。
勝ち誇るもバスドラは着地に失敗してボロボロ。500mくらいジャンプしたんじゃないかな。響は安全に着地。突っ込むのは野暮だと分ってるんだけど、プリキュアの生身身体能力選手権やったらゆりと良い勝負出来るかもしれない。
最後の音符を手にしたファルセットが勝ち誇ると切り札が発動。
団さん指揮下の音楽隊による演奏が始まります。苦しみはじめるトリオ。忘れてたけどそういやそんな設定でした。プリキュアいらねぇ。
辛抱堪らずネガトーンを召喚します。強制的にファリーから音符が飛び出て偽ファリーを依代に実体化。ファリーも巻き込まれてしまいます。最初っからそれでよかったんじゃないですかねーー!??
ネガトーンの出す音波を浴びて団さん達は悲しみます。いや、あんた素晴らしい音色しか耳に入らなかったんじゃなかったっけ? ネガトーンパワーアップしてるから団さんでもダメなのかな。
ファリーがネガトーンの中に捕らわれてしまったと響に教えるドドリー。身体の色を落としているのはこれから変身するためでしょう。芸が細かい。
「最近の映画は凄いな」と感心していた人々はネガトーンの音波で悲しみに暮れます。そろそろカメラが無いことに気付いてください。
ファリー救出のためプリキュアが躍り出ます。発注されていないのに作曲者が勝手に作ったBGMが流れます(詳細はサントラ2を参照されたし)。困ったことにこの曲がスイートで一番カッコイイ。ビートとミューズは左右へ分かれ、正面からメロディとリズムが挑みます。ネガトーンは小型の分身体を飛ばして迎え撃ちます。先頭を走るリズムは回避。メロディは迎撃しようとしますが弾き損ねて爆発に巻き込まれます。構わずリズムはネガトーンに一撃。しかし分身体が取り憑きピンチ。ビートがフォロー。ミューズが垂直落下でネガトーンを地面に沈めます。いいチームワーク。ファリーを助けようとしますが爆発で後退。この直前ファリーが危ない!と言っているシーンでミューズのスカートの中が見えています。モコモコ?それがなんだというのだね? 勝ち目が無くても私は絶対に諦めない。
プリキュアの周りを分身体が取り囲みます。形勢は一気に悪くなりました。
メロディは勝ち目がなくても絶対諦めない!と戦意を高めます。私の同志がここにも居ます(一緒にすんな)。プリキュア達は再び挑み分身体を各個撃破していきます。戦闘中に背中がぶつかったビートとミューズはお互いに笑うと位置を変えて戦闘継続。メロディはネガトーンに肉薄し見事ファリーを救出。後はお約束の必殺技で残処理完了。
安心したのも束の間、ピーちゃんことノイズが最後の音符を咥えて去っていきます。
不幸のメロディが完成します。
街の音楽会は無事催されて人々は音楽を楽しみます。和音と聖歌は映画を楽しみにしますが、いつ公開するのかと疑問を持ちます。ん~まあ、アレだ、色々やり過ぎちゃったんで丸々カットということで。
時計台で響達は落ち込みます。恐れていた最悪の事態。そんなことはつゆ知らず眼下で奏でられている音楽とそれを聴く人々は心地良い時間を過ごしています。音吉さんもズレとらんと高(?)評価。音楽がある限り世界は大丈夫じゃ。ずばり映画でもやっていたメッセージです。本編ではどう表現されるのか。
響は街のみんなの笑顔を守りたいと言います。奏もファリーを守ってくれたもの、と同意します。そんな優しい人達を悲しませるわけにはいかないとセイレーンも言葉を継ぎます。なるほどここでこの無茶なバカ騒ぎは物語の本流に加わるのね。
「私達がみんなの笑顔を守らなくちゃ」
音符が全て敵の手に渡り不幸のメロディが完成しようとも、彼女達の意思はいささかも鈍ることなく太陽のように輝き続けます。
④次回予告
1話や偽ミューズの時にセイレーンが言ってた「ト音記号が無いと楽譜が始まらない」ってやつですね。
○トピック
街全体で学芸会。例年だと文化祭や修学旅行などのイベントが行われるところですが、今年は街中を巻き込んでイベント化。嵐の前の静……静か?…いや、まあ、番組も最終決戦が目前に迫ってきたので最後の息抜きと言ったところでしょうか。次回もドタバタしそうですが。
余談ですが、先日発売されたサントラ2の歌詞カードに工藤真由さんと池田彩さんの対談と番組BGMを作曲している高梨氏のインタビューが載っています。トーンの性格は演じている真由さんが決めたようなのでそこから今回の話しが練られたのかもしれません。1年ものアニメはこういうことが出来るのが強味でもありますね。
さて、和音、聖歌、王子隊などのサブキャラクターが勢揃いしてドンチャン騒ぎしているわけですが、街全体で一体感を作りだしているのがポイント。毎回毎回街にネガトーンが現れて悲しい音波を出しまくっているわけですが、街の人々は音楽を愛し楽しんでいます。そこはまあ、ご都合なんですが音楽を奏でる側も聴く側も一緒に楽しむ、楽しめる、音楽は良くも悪くも人と共に在るのが音楽と人間の関わり方です。そしてスイートの音楽とは人の心でもある。自ら唄い、人に届き、人の心に響き、一緒に唄い奏でられるもの。
音符が全て敵の手に渡り不幸のメロディが完成するという最悪の事態が起こるわけですが、それと諦めることとはイコールではありません。響達は街の人々を巻き込むことで逆説的にこの戦いが人々と関係していること、その人達を守ることを再認識しています。メフィストと戦ったときのように全ての人々の幸せを守る、それが改めて示されています。同時にその動機によって彼女達は諦めることなく立ち向かう意思を宿しています。人の心というのは、状況にどっぷり浸かって沈み込むこともあるけど、活路や希望を持ちうるものでもあります。ま、現実逃避とも言うんですが。これも余談ですが、人の心をへし折るのに一番良い方法は手段を一つ一つ潰してやることです。どう足掻いても好転できない。その絶望感が人を殺す。
次回モジューレも奪われそうな勢いですが、響達はこの状況をどう覆していくか。何を希望とするか、どんな幸せのメロディを奏でるのか楽しみです。
①最後の音符
今日は加音町音楽会。広場では本番前のリハーサル。団さんが王子隊に指示を出しています。それを離れたところでこっそり見ていた奏は黄色い声で「王子先輩!」を連呼。もはやツッコミすらせず、響達は参加したかったものの今はそれどころではないと話し合います。危機感が全くない奏に3人+1匹の視線が集中。視線に気付いた奏はようやくそれどころじゃないよね、と話しを合わせます。奏さん、もうそろそろその作戦は通じないと思うんだよ。響の気を引きたいのは分るんだけどさ。大体、相手が寝ても起きないとか、早朝にベランダを訪れても全く躊躇うことなく響だと思える仲なんでしょ?
こちらが保有している音符は一つだけ。しかし音楽会なら音符も集まってきそうです。まだまだチャンスはある。
残念なお知らせ。楽譜完成に必要な音符はあと一つ。つまりファリーが持っている音符が奪われたら終わり。音符集めは終了。いよいよ伸るか反るかの大勝負へと進んでいます。
ノイズが出す音波に心地よさを感じるトリオ達。音を使うという意味ではクレッシェンドトーンもノイズも同じ領域に属するような気がするけど、さて。
4人バージョンOP映像。ビートかっけぇ。ミューズ持って帰って良いですかね?
ビートとミューズ、メロディとリズムでお互いにアイコンタクトを取り合っているのは面白い動きです。相手を見ながら一緒に一つを目指す。
バスドラとバリトンは鼻水を垂らしながらこの乗り物は冬はキツイと寒がります。乗り物がどうこうっていうか、その姿でも寒がるんだ。パワーアップしてもその辺は融通が利かないらしい。残る音符は一つだけ。やる気を出して街へと向かいます。
ちょうどその話しを物陰で盗み聞きする4人。音符探しのためなのか、人気の無いところでイチャイチャするためかは分りませんが、展開早ぇ。なるほど今回はこういうノリなのね。
肝心要のファリーはキャッキャはしゃいでいます。どっかのたおやかな人並に緊張感ねぇ。持ち主(相方?)に似ています。ファリーが持っている音符は世界の最後の希望だと響は真面目に言います。隣に居るアコは少々呆れた表情を浮かべています。心許ない。ハミィは響の言葉を継いでもし取られたら世界は不幸のズンどこになると真面目な顔で言います。するとファリーも真面目な顔でその言葉を受け止めると、ハミィと一緒にズンどこ踊りをし始めます。ダメだこいつら早く何とかしないと。レリーがファリーはお調子者だと言います。細かく分類して見ていませんがトーンには個性があります。ドリー、レリー、ラリー、ドドリーあたりは真面目でしょうか。ラリーは少々臆病。
ミリーが預かると言うと、ファリーは脚も早いしこんなに高く飛べると身のこなしの軽さを強調。が、匂いをかぎつけたのかバスドラ達がもの凄いスピードで駆け戻ってきます。間一髪ハミィが救出。幸いバスドラ達は気にぶつかって気絶。その隙に退却。
街に戻ったものの、何か策を講じないと奪取されかねません。マイナー側の有利な点は音符をわざわざ人間界に持って来る必要がないので取られるリスクがないことです。対してプリキュア側はトーンが保管しているとはいえ万全ではないのでリスクを負っています。ま、結局収集物は敵に奪われるのがお約束なんですけどね。
響は映画のポスターを見て閃きます。
バスドラ達は街で地道にファリー探し。子ども達が目撃します。当たり前と言えば当たり前ですが、どうやってもこいつらは目立つ。子ども達に化け物呼ばわりされてこれにはバスドラも堪えます。隣で不格好な自分の姿に泣いているバリトンと共に悲観に暮れます。不幸のメロディ作ろうとしている奴が一番不幸な目にあってるってのは皮肉な話しです。
街中に響の声が響き渡ります。これから映画の撮影が始まる。妖精ファリーが獣のような悪者ふたりに追いかけられるストーリー。セイレーンと奏も手伝って、街のみなさんも登場人物、ファリーを見かけたら助けてあげてと説明します。撮影スタート!と啖呵を切る響。こういう時の彼女はとても活き活きとしている。学校でミューズ探しやったときもそうですが大胆なことを堂々とやります。
②映画だよ全員集合
ということで、不思議なことが起きたらテレビの撮影か?的な疑問を逆手にとって「映画です」で乗り切る作戦。街の人々を巻き込みます。
その話しを聞いて、何故か嬉しそうな顔を浮かべるバスドラとバリトン。いよいよ自分達が主役かとワクワクしています。いやいや話し聞いてました? あんた達悪者だよ。子ども達もふたりを指さして絶対悪者だと言葉を交わします。当然の反応です。
「見つけたぞ、この悪者め! 変・身! 正義のヒーロー太陽マン!」
以前工作で作った仮面を付けて奏太が挑みます。行動早ぇ。あの小道具が陽の目を浴びるとは。映画に出れると聞いて速攻準備したのでしょう。奏太の隣にアコがいます。たぶん奏太がやろうと言い出したのだと思いますがアコも付き合いがいい。
奏太は偽ファリーを見せてバスドラ達の気を引きます。奏太は行くぞ!と啖呵を切ると、謎のポーズをアコと取って逃げ出します。アコの表情は分りませんが、たぶん色々と諦めていると思う。っていうかてめぇ、アコの手を掴んで走るとか役得すぎんだろ。バスドラは逃がすものかとバリトンを投げつけます。回避。電灯に命中してバリトンはノックアウト。しかし足止めには成功。バスドラが追いつきます。奏太はファリーを捨てて逃げ出します。慌ててファリーを掴んだバスドラはそこでようやくそれが偽物だと気付きます。それを見て笑う奏太。イタズラ成功。
なんだ狡いなぁ、と悔しがるバスドラ。そういう問題なのかな。面白いなそのリアクション。使い捨てにされたバリトンはバスドラを怨みます。
そこに本物のファリー登場。分身の術、と黄色く塗装されたトーン達が出現。よく見ると一人だけ瞳が違います。ドドリーだな。本物はひとつドド。ちゃんと正しいのを捕まえられるレレ? や~いベロベロファ~!とおちょくるトーン達。語尾で見分けられそうです。
トーンを捕まえようと開けた場所に出るとそこには黄色、黄色、黄色、ファリーの人形や置物が至る所に置いてあります。なんという黄色プッシュ。いくら東堂いづみが黄色贔屓だからといって、ここまでなりふり構わないとは。
「名付けて、ファリーを隠すならファリーの中作戦!」
調べの館でポーズを決めて説明する奏。誰に言ってるんだそれ。木を隠すには森ってわけですね。後ろでは響とセイレーンが新しいダミーを作っています。学芸会的なノリですね。
バスドラ達はしらみつぶしに探しますが本物は見つけられません。音吉さんも製作に関わっているらしく残念じゃったな、と素知らぬ顔で言います。この際この人が手先器用なのは驚くことでもないけど、この資材と資金どこから出ているんだろう。まさか…メイジャーの金!?
散歩するように飛んでいたファリーはバスドラ達を見て思わず自分はファリーではないと言って墓穴を掘ります。語尾で見分けられるのでバスドラ達は全力で追いかけます。作戦そのものは悪くないと思うんだけど、肝心のファリーを引っ込めないでどうする。
追いかけっこを見て響達は誰があんな本物っぽい偽物を作ったんだろうと話し合います。作れるわけないじゃんと至極真っ当な返事をするアコ。この面子、まともなのが小学生ってどうなんだ。仕掛け人が本物と偽物見分けられないでどうする。プリキュアのボケ率の高さは異常。益々オールスターズでりんやくるみの負担が大きくなりそうです。そのくるみもボケに近いので実質りんとアコしかいねぇ。ゆりさんは、遂にプリキュアも小学生かぁ…と切ない空気出してると思います。
本物が見つかっては作戦もへったくれもない。困った時の和音。響は指笛を吹きます。いや、だからそれで呼べるのってどうなの。
「お助け和音ちゃん参上!」
いや、だからそれで来れちゃうのってどうなの。
シュートを決めてバスドラに会心の一撃を与えます。割とマジで痛いと思うよ、これ。
すると今度は聖歌先輩登場。お久しぶりです。弱いモノいじめは感心しないと言います。いや~この状況だとどうなんだろ。聖歌は両手にクリームが入った絞り袋を持って構えます。え?
「そこで大人しくなさってて」
バスドラとバリトンを使って特大ケーキをこしらえます。ちょ、君そういうキャラだったの!?
「かっこいい~聖歌先輩!」
もうなんていうか、スイーツ部すげぇな!!
「やめてよ聖歌先輩~」
バスドラきめぇ。
「ファリーを、助けなきゃね!」
王子隊見参。流れ的にオチ担当だよ、これ。
「悪者捕獲!」
バスドラ達を縛り上げます。奏は狂喜乱舞。っていうか王子先輩何もしてねぇ。どんだけこの街の人映画に出たがりなんだよ。
「ふざけおって!」
脚本と演出の人に言ってください。
黄色い声が近づいてきます。王子のファンが押しかけてきてバスドラ達は下敷きに。「もう嫌だ」「お家に帰りたい」。辛い仕事です。しかし容赦なくお仕置きの雷が落ちます。ファルセットは使えない部下に不満を表わします。言い訳するふたりに、ファルセットはファリーの性格を利用してやればいいと余裕を見せます。
上手いこと逃げられた、やっぱり自分は凄いと自惚れるファリー。他のトーンが諫めます。しかしファリーはトーンの中で一番強くて賢いと聞く耳を持ちません。
そこにトリオが表れます。思わずレリーの後ろに隠れるファリー。言ってる傍からこれかよ。ミリーが呆れた視線を送ります。
トリオ達はファリーが見つからずテンテコ舞い、ノイズ様に叱られる、こうなったら良い人間になろう、と芝居をはじめます。その話しに乗ったファリーは前に進み出てしまい捕まってしまいます。したり顔でお前が本物のファリーか、と本性を表わすファルセット。本物見分けなくても全部捕まえられたんじゃない?と言ってはいけないんだろうなぁ。
ファリーが敵の手に渡り大ピンチ。響は大声で街中に映画のクライマックス、ファリーを助けてとお願いします。
すると街の人々が大勢押しかけてきます。何を勘違いしたのかコスプレしている人がチラホラ。なんでだ。この街よくイベントやってるし、のど自慢の時にも本番が明日と聞いても動じなかった人達なのでお祭りに慣れている上に好きなのかもしれない。毎週不幸の音波で被害者が出ているけど、アレも何かのイベントと勘違いされているのかもしれない。
街の人達にもみくちゃにされてファリーがファルセットの手を離れて上空に逃れます。ラストチャンス。響とバスドラは同時に上空へと躍り出ます。生身でその跳躍力はすげぇ。っていうか、物語が終盤戦に入ろうって時にギャグを全力でやれるこの番組がすげぇ。
③ファリー救出大作戦
交差する両雄。手応えを感じた響は手の中を確かめます。ハズレ。本物はバスドラの手に。
勝ち誇るもバスドラは着地に失敗してボロボロ。500mくらいジャンプしたんじゃないかな。響は安全に着地。突っ込むのは野暮だと分ってるんだけど、プリキュアの生身身体能力選手権やったらゆりと良い勝負出来るかもしれない。
最後の音符を手にしたファルセットが勝ち誇ると切り札が発動。
団さん指揮下の音楽隊による演奏が始まります。苦しみはじめるトリオ。忘れてたけどそういやそんな設定でした。プリキュアいらねぇ。
辛抱堪らずネガトーンを召喚します。強制的にファリーから音符が飛び出て偽ファリーを依代に実体化。ファリーも巻き込まれてしまいます。最初っからそれでよかったんじゃないですかねーー!??
ネガトーンの出す音波を浴びて団さん達は悲しみます。いや、あんた素晴らしい音色しか耳に入らなかったんじゃなかったっけ? ネガトーンパワーアップしてるから団さんでもダメなのかな。
ファリーがネガトーンの中に捕らわれてしまったと響に教えるドドリー。身体の色を落としているのはこれから変身するためでしょう。芸が細かい。
「最近の映画は凄いな」と感心していた人々はネガトーンの音波で悲しみに暮れます。そろそろカメラが無いことに気付いてください。
ファリー救出のためプリキュアが躍り出ます。発注されていないのに作曲者が勝手に作ったBGMが流れます(詳細はサントラ2を参照されたし)。困ったことにこの曲がスイートで一番カッコイイ。ビートとミューズは左右へ分かれ、正面からメロディとリズムが挑みます。ネガトーンは小型の分身体を飛ばして迎え撃ちます。先頭を走るリズムは回避。メロディは迎撃しようとしますが弾き損ねて爆発に巻き込まれます。構わずリズムはネガトーンに一撃。しかし分身体が取り憑きピンチ。ビートがフォロー。ミューズが垂直落下でネガトーンを地面に沈めます。いいチームワーク。ファリーを助けようとしますが爆発で後退。この直前ファリーが危ない!と言っているシーンでミューズのスカートの中が見えています。モコモコ?それがなんだというのだね? 勝ち目が無くても私は絶対に諦めない。
プリキュアの周りを分身体が取り囲みます。形勢は一気に悪くなりました。
メロディは勝ち目がなくても絶対諦めない!と戦意を高めます。私の同志がここにも居ます(一緒にすんな)。プリキュア達は再び挑み分身体を各個撃破していきます。戦闘中に背中がぶつかったビートとミューズはお互いに笑うと位置を変えて戦闘継続。メロディはネガトーンに肉薄し見事ファリーを救出。後はお約束の必殺技で残処理完了。
安心したのも束の間、ピーちゃんことノイズが最後の音符を咥えて去っていきます。
不幸のメロディが完成します。
街の音楽会は無事催されて人々は音楽を楽しみます。和音と聖歌は映画を楽しみにしますが、いつ公開するのかと疑問を持ちます。ん~まあ、アレだ、色々やり過ぎちゃったんで丸々カットということで。
時計台で響達は落ち込みます。恐れていた最悪の事態。そんなことはつゆ知らず眼下で奏でられている音楽とそれを聴く人々は心地良い時間を過ごしています。音吉さんもズレとらんと高(?)評価。音楽がある限り世界は大丈夫じゃ。ずばり映画でもやっていたメッセージです。本編ではどう表現されるのか。
響は街のみんなの笑顔を守りたいと言います。奏もファリーを守ってくれたもの、と同意します。そんな優しい人達を悲しませるわけにはいかないとセイレーンも言葉を継ぎます。なるほどここでこの無茶なバカ騒ぎは物語の本流に加わるのね。
「私達がみんなの笑顔を守らなくちゃ」
音符が全て敵の手に渡り不幸のメロディが完成しようとも、彼女達の意思はいささかも鈍ることなく太陽のように輝き続けます。
④次回予告
1話や偽ミューズの時にセイレーンが言ってた「ト音記号が無いと楽譜が始まらない」ってやつですね。
○トピック
街全体で学芸会。例年だと文化祭や修学旅行などのイベントが行われるところですが、今年は街中を巻き込んでイベント化。嵐の前の静……静か?…いや、まあ、番組も最終決戦が目前に迫ってきたので最後の息抜きと言ったところでしょうか。次回もドタバタしそうですが。
余談ですが、先日発売されたサントラ2の歌詞カードに工藤真由さんと池田彩さんの対談と番組BGMを作曲している高梨氏のインタビューが載っています。トーンの性格は演じている真由さんが決めたようなのでそこから今回の話しが練られたのかもしれません。1年ものアニメはこういうことが出来るのが強味でもありますね。
さて、和音、聖歌、王子隊などのサブキャラクターが勢揃いしてドンチャン騒ぎしているわけですが、街全体で一体感を作りだしているのがポイント。毎回毎回街にネガトーンが現れて悲しい音波を出しまくっているわけですが、街の人々は音楽を愛し楽しんでいます。そこはまあ、ご都合なんですが音楽を奏でる側も聴く側も一緒に楽しむ、楽しめる、音楽は良くも悪くも人と共に在るのが音楽と人間の関わり方です。そしてスイートの音楽とは人の心でもある。自ら唄い、人に届き、人の心に響き、一緒に唄い奏でられるもの。
音符が全て敵の手に渡り不幸のメロディが完成するという最悪の事態が起こるわけですが、それと諦めることとはイコールではありません。響達は街の人々を巻き込むことで逆説的にこの戦いが人々と関係していること、その人達を守ることを再認識しています。メフィストと戦ったときのように全ての人々の幸せを守る、それが改めて示されています。同時にその動機によって彼女達は諦めることなく立ち向かう意思を宿しています。人の心というのは、状況にどっぷり浸かって沈み込むこともあるけど、活路や希望を持ちうるものでもあります。ま、現実逃避とも言うんですが。これも余談ですが、人の心をへし折るのに一番良い方法は手段を一つ一つ潰してやることです。どう足掻いても好転できない。その絶望感が人を殺す。
次回モジューレも奪われそうな勢いですが、響達はこの状況をどう覆していくか。何を希望とするか、どんな幸せのメロディを奏でるのか楽しみです。
第40話「ルルル~!雨音は女神の調べニャ!」
○今週の出来事
①お爺ちゃんとの思い出
放課後。雨。小学生達は迎えに来た親達と一緒に下校します。一人取り残されるアコ。今よりも幼い頃の出来事のようです。不安で寂しそうな彼女に伸ばされる手。奏太が笑顔で自分の傘を差しだしています。同情の様子はありません。根っからいい奴です。
しかしアコは逡巡すると、傘を取らずに駆けだしていきます。脇目もふらずに疾走。先に出た親子達の中を独り突っ切っていきます。雨に濡れ頬の上を滴がこぼれ落ちていきます。寂しさ、孤独、不安は大人にとっても子どもにとっても恐れの対象です。それは自尊心をも傷つける。奏太の好意を受け取ってしまえば自分が独りであることを認めてしまう。
校門を出て角を曲がると人とぶつかってしまいます。見上げると見知った、そして望んだ顔が映ります。遅れてすまんのう、と普段の口調で答える音吉さん。先ほどまでの苦悩と嬉しい気持ちが交ざったアコは一瞬むくれると来るのが遅いと抗議します。すると雨も止んでしまいます。無駄になってしまったとアコの傘を見ながら言う音吉さん。しかしアコは祖父に嬉しそうな瞳を向けます。傘は無駄になってしまいましたが、しっかりと彼女に愛情が届けられました。
「ありがとう、お爺ちゃん」
ふたりは手を繋いで一緒に帰ります。
目を覚ますアコ。夢だったようです。音吉さんがちょうど朝ご飯の支度ができたと知らせます。
おそらく最後の映画宣伝仕様OP。クライマックスシーン集。ふたりで泣いているシーンはとても印象的です。
マイナーランド。いつの間にか大量の音符が保管されています。ノイズの働きによるもののようです。あ、じゃあ前回のアレはやっぱり消滅ではなく転送だったのね。
復活して間もないのでは?と疑問を口にするバスドラ達にファルセットは、ノイズ様は密かにパワーアップしていると言います。タイマンで音吉さんに遅れをとったわけだからここでパワーアップしたことにしておかないとプリキュアと戦うときに箔が付きません。
中学校。響達は3人で昼食を摂ります。ガツガツ食べる響を見て奏は一日で一番楽しい時間ね、と頷きます。響のことならなんでも知ってます感が出まくっています。
ハミィは解決しなきゃいけない問題がある!と珍しく焦っています。音符消失の件です。ノイズの仕業だろうと見当を付けます。もしかしたらすぐ近くまで来ているのかもしれない。
ピー!と大きな音にみんな驚きます。ピーちゃんの姿を見てなんだピーちゃんかとほっとする響。いやいや、ピーちゃんの存在を疑おうよ。どう見てもおかしいだろあの造詣。そりゃすぐ隣にしゃべる猫や人間の姿の猫が居るけどさ。
雨が降ってきます。
いつものように奏は王子の演奏姿を見てときめいています。もうそろそろその演技やめてもいいんじゃないかな。
ハミィが言うにはこの辺にノイズが居るそうです。と言っても、ノイズは全ての音楽を奪うのが目的だから音楽に関係する場所に居るだろうという心許ない理由。それを聞いて3人も呆れ果てます。その反応を見て何か匂ったから、と理由を変えるハミィ。ちょうど音符を発見します。
デジャヴ。あの時のように小学校の玄関前で親の迎えを待つ生徒達。合羽を着せて貰っている男の子は恥ずかしそうです。
表情を変えず一人で待つアコ。彼女とて成長しています。少し待つくらいどうということは無いでしょう。そこにまた伸ばされる手。奏太は少しぶっきらぼうな感じでアコが転校してきてすぐの頃こういうことがあったな、と話しかけます。こちらも成長したというか、それなりにお年頃になってきているようです。しかし以前のような笑顔は健在。
いつも傘を持っているんだね、と答えるアコ。ママがうるさいから要らないと言っても無理矢理持たせるんだと不満そうに奏太は言います。私も小学生の頃そういうのありました。
お爺ちゃんが迎えに来てくれるから、と傘を受け取ろうとしないアコ。すると奏太は自分も待つと言い出します。お互いに売り言葉に買い言葉で「勝手にすれば」「勝手にするよ」などと言い合います。
「ねえ、奏太って、優しいんだね」
なん…だと…?! フラグが立った!?
突然のことに驚く奏太にアコは「本気にしてるし」といつもの口調。ずっこける奏太に構わず彼女は笑顔を浮かべます。もう彼の優しさと自分が抱えている不安とを天秤にかけて逃げ出すようなことはしません。彼の優しさをちゃんと彼女は受け取っている。
それはそうと一緒に一つの傘で帰るシチュエーションは一見美味しいようにも見えますが、一緒に学校で待つというのも美味しいイベントで、むしろ好感度が上がりそうな気がします(ゲーム脳)。
パイプオルガンの製作に夢中になっていた音吉さんはようやく雨が降っていることに気付くとアコを迎えに行くために身支度をし始めます。
②ピーちゃんの正体
学校で待ちながら奏太は本当に来るのか?と訊きます。必ず来ると答えるアコ。
お爺ちゃんを信じていると話すアコ。自分が寂しい想いをしているときに必ず来てくれたと過去を振り返ります。授業参観のときも、運動会のときも、一人で泣いているときも。
「何も心配することはない。全ては上手く行く。アコが不安なときはわしが傍にいる。寂しい想いをしていてもわしが必ずやってくる。だから一人ぼっちじゃない。アコは安心して待っておればいい」
自分を優しく包んでくれる、励ましてくれる、傍にいてくれる祖父。お爺ちゃんはその約束をずっと守ってくれたとアコは話します。自分の弱い時期を話しているのは凄い。それだけ奏太に信頼を寄せているとも言えます。
奏太はこんなに待ってても来ないのは何かあったのかな、と何気なく呟きます。何か来られない理由ができたとか。それを聞いたアコはノイズの仕業ではないかと考えて突き動かされるように駆けだしていきます。奏太も報われないなぁ。
音吉さんがこれからアコを迎えに行こうとすると、突然パイプオルガンの木造装飾部分が倒れてきます。間一髪響達が駆けつけ事なきを得ます。
ピーちゃんの仕業とは気付かず響はピーちゃんを抱き上げます。不可解な事態。音吉さんはノイズが鳥のような姿をしていたことを思い出します。ピーちゃんがノイズではないかと疑います。友情・愛情・信じる心を利用するのがノイズ。クレッシェンドトーンに鑑定を依頼します。
事情を聞いたクレッシェンドトーンはピーちゃんを調べます。しかし心が読み取れないと彼女も驚きます。限りなく黒に近いと思うのですが、断定できないので微妙な空気が流れます。
飛びたったピーちゃんからネジが落ちます。それを見た響はハッと先ほどの倒壊を思い返してとっさにパイプオルガンを弾き始めます。するとピーちゃんは突然苦しみ出します。ピーちゃんの瞳に一瞬だけ悪の心が浮かんだ気がしたと話す響。ホールに入った時にピーちゃんが力を使っていたのを見たのでしょう。ピーちゃんは落ちてもがき苦しみます。これで犯人は確定。
「なにをしているの?」
アコが息を切らせて帰ってきます。アコに助けを求めるようにピーちゃんは彼女の手に乗ります。音吉さんは緊張した声でアコにノイズであることを伝えます。アコの優しさを利用してケガの振りをしていた。前回オルガンを弾いたときに姿を消したことも合点がいきます。誤解だと言わんばかりにアコの手の上でわめくピーちゃん。アコの瞳は眼鏡の反射で隠れます。
アコは前に進みながら、ピーちゃんに嘘はついてないよね?と尋ねます。ピーちゃんのこと信じていたい。けど、お爺ちゃんは今まで絶対嘘をついたことはないの。だから私お爺ちゃんを信じる! そう断言するアコ。
ここまでの描写からアコが祖父を信じることは容易に想像できる展開ですが、アコの立場からすると突然ピーちゃんと祖父が天秤にかけられた状態だと言っていいでしょう。比較としては16話の響が母を取るか奏を取るかで悩んだ状況に似ています。しかしここで異なるのはその圧倒的な関係性の違いです。アコとピーちゃんの関係と、音吉さんとのそれとでは比べものになりません。絆の強さや正しい判断の根拠となっています。
ピーちゃんはギャーと鳴き声を出すと飛びたっていきます。馬脚を表わしたな。捕まえようとするとファルセット達が天窓を割って現れます。身体が大きいバスドラは引っかかります。
ファリーに保管した音符を取り出すとピアノに憑依させてネガトーン化。
場所を外に移します。そのまま建屋内で戦ってオルガン破壊すればいいんじゃない?と野暮なツッコミはしてはいけません。
ネガトーンは音波を出して街中を悲しみで満たします。奏太も泣き崩れています。一部の大きなお友達はその光景に喜んだことでしょう。胸のすく思いとはこのことか、などと思っているに違いありません。
ファルセットの手に乗ったピーちゃんに悲しみのエネルギーが集まっていきます。
「私達の大切なピアノをネガトーンにするなんて!」
ノイズは関係ないらしい。確かに奏と一緒に連弾の練習をした想い出とかが詰まったピアノです。プリキュアにおいてボスを倒すとか、世界を守るだとかの大義の価値は著しく低い。大切な想い出、日常の豊かさを破壊するものへの断固とした抵抗がプリキュアの戦闘動機です。その戦いをとおしてさらに価値を創造する。
ネガトーンの鍵盤ロケット爆撃から一人脱出したミューズはシャイニングサークルでネガトーンの動きを止めます。以前は破られましたが今回はそのまま必殺技へと繋げます。早っ。変身シーンの方が尺長いだろこれ。
ここで決着をつける!とノイズに挑もうとするとすでにファルセット達の姿は消えています。
③お爺ちゃんと孫の帰り道
ピアノが元に戻って良かったと安堵する響。パイプオルガンも本体は無事なので音吉さんも完成を急ぎます。
奏太がアコを探してやってきます。音吉さんが無事だったか尋ねます。姉に似て面倒見が良いというか、わざわざ心配してやってくるあたりめちゃいい奴です。音吉さんの姿を見て取り越し苦労だったとばかりに安心する奏太。
なんで心配してるの?と訊く姉に、奏太は事情を話します。音吉さんはそれで調べの館に来たのかと合点がいきます。知られて恥ずかしそうにするアコ。私の「アコフォルダ」がますます重くなるな。
雨があがり、夕日が祖父と孫を照らします。
音吉さんは久しぶり手でも繋いで帰ろうかと誘います。恥ずかしがるアコにこちらに来たばかりの頃はいつも手を繋いでいたと話します。手がスウスウするとわざとらしく言い始める音吉さん。面白いシーンです。これは彼が手を繋ぎたいからやっているのではありません。もちろん繋ぎたいだろうけど、それ以上にアコの内心を代弁しているんですね。彼女が恥ずかしがらずに繋げるように、さもお爺ちゃんの方が繋ぎたいのだと示すことで彼女の面子を立てているのです。
それに気付いているであろうアコは、ゆっくりとぎこちなく手を伸ばしながら「今日は特別だからね」と遠慮がちに言います。ふたりは手を繋ぎます。
音吉さんは遅くなったことを謝ります。パイプオルガンの修理に夢中になって雨に気付かなかったと言います。そんなことだと思ったと答えるアコ。
「でも、お爺ちゃんが無事で良かった」
④次回予告
これどういう状況なの。黄色プッシュ。いや、それ違くね?
○トピック
低学年、パジャマ、体操着、恥ずかしそうな表情、これは死人が出るレベル。東堂いづみの黄色びいきは異常。
ついに本格的に祖父母にまで戦略を広げるアニメ製作会社とスポンサー。これは子どもの親にもメリットがあります。直接懐を痛めずに子どもの要望を叶えられる。年金を絞り出させてクリスマスまでに在庫を一掃する気満々です。そして年が明ければ新番組。汚いなさすがプリキュアきたない。
アコとお爺ちゃんの絆のお話し。親と離れて暮していたとはいえ彼女が決して孤独ではなかったこと、愛情を受けていたことが分るエピソード。また、プリキュアがちゃんと子ども視点で作られた物語であることが如実に表れたエピソードでもあります。子どもの気持ちを代弁しつつ、その想いにしっかりと受け答えしています。
(今でも幼いのだけど)幼い頃のアコは独りぼっちを寂しがって不安になっていただけでしたが、今のアコは祖父に愛情を抱き彼の身を案じています。子どもに限った話しというわけではないですが、特に子どもの頃は一人で留守番している時など帰宅が遅いと家族の身に何か起こったのではないかと不安になります。それはもしかしたら自分の不安が転化されているのかもしれませんが、それでも心配する気持ちは確かにあります。私も子どもの頃経験した憶えがあります。実際には万が一の事態など早々起こることではないのですが、経験が少ない子どもにはそうした経験則は使えません。アコが学校を飛び出したシーンは対比として面白い。1度目は不安と孤独、惨めさからの逃避でしたが、2度目は祖父を心配して自分から動いています。彼女のこうした変化には子ども自身の成長もありますが家族との絆も深く結びついています。
また、アコの精神的な成長を示唆するものとして奏太との関わりも外せません。気持ちに余裕が持てているアコは奏太の優しさを受け入れています。奏太も音吉さんもやっていることは変わりません。アコに手を差し伸ばしている。それをアコが以前と今でどう捉えていたか、その時の心の動きを丁寧に描いています。
成長していくと照れや恥ずかしさが沸いてくる。それは成長の証しです。自己と他者の距離を意識する。自立心と依存心がせめぎ合う。手と手を繋ぐ、心と心を繋ぐ。それは成長していくと子どもの頃のように素直にできなくなってしまうものです。しかしだからこそ響と奏がそうだったように、本心を受け取って貰えた時の喜び、相手の中から同じものを見つけることができた時の喜びは大きいのです。相手の本心を知りながらも素直に答えない(奏太の好意に対するアコの反応)、相手の本心を知りながら婉曲に示す(アコに対する音吉さんの反応)。そのように屈折しながらも人は人の心に愛情を感じられるのもまた事実なのです。人間の成長とともに変わっていくそうした愛情表現が美しく示されたエピソードです。
そんな感じで人間って歪んでいるよね、ってことを再確認させてくれるエピソードなわけなんですが、スイート本編の方もなかなか展開が読めません。ノイズが鳥の格好をして出てきたので、もしやこのままアコと絆を結んで和解エンドへの伏線となるかとも思っていたのですがそれは無いようです。音符も順調に敵の手に渡っています。むしろ王道的にノイズを倒して世界は平和になりましたってな感じの路線ではあるのですが、残りの話しで何を持って来るのか。親友、家族愛を取り戻した響達は言うなればすでに幸せを獲得しています。これでノイズがいなければそのままハッピーエンドで終れる。しかしそれじゃあ小っちゃすぎる。全ての人を幸せにするのがプリキュア、と言うのならプリキュアは何を示すことでそれを証明するのか。心を守る、絆を守る、心を繋ぐ先にあるのは。そんなこんなでノイズを倒すよりもそっちが楽しみでならんのですが、次回はファリー大量生産。このアニメどこ行くんだろうなぁ。
①お爺ちゃんとの思い出
放課後。雨。小学生達は迎えに来た親達と一緒に下校します。一人取り残されるアコ。今よりも幼い頃の出来事のようです。不安で寂しそうな彼女に伸ばされる手。奏太が笑顔で自分の傘を差しだしています。同情の様子はありません。根っからいい奴です。
しかしアコは逡巡すると、傘を取らずに駆けだしていきます。脇目もふらずに疾走。先に出た親子達の中を独り突っ切っていきます。雨に濡れ頬の上を滴がこぼれ落ちていきます。寂しさ、孤独、不安は大人にとっても子どもにとっても恐れの対象です。それは自尊心をも傷つける。奏太の好意を受け取ってしまえば自分が独りであることを認めてしまう。
校門を出て角を曲がると人とぶつかってしまいます。見上げると見知った、そして望んだ顔が映ります。遅れてすまんのう、と普段の口調で答える音吉さん。先ほどまでの苦悩と嬉しい気持ちが交ざったアコは一瞬むくれると来るのが遅いと抗議します。すると雨も止んでしまいます。無駄になってしまったとアコの傘を見ながら言う音吉さん。しかしアコは祖父に嬉しそうな瞳を向けます。傘は無駄になってしまいましたが、しっかりと彼女に愛情が届けられました。
「ありがとう、お爺ちゃん」
ふたりは手を繋いで一緒に帰ります。
目を覚ますアコ。夢だったようです。音吉さんがちょうど朝ご飯の支度ができたと知らせます。
おそらく最後の映画宣伝仕様OP。クライマックスシーン集。ふたりで泣いているシーンはとても印象的です。
マイナーランド。いつの間にか大量の音符が保管されています。ノイズの働きによるもののようです。あ、じゃあ前回のアレはやっぱり消滅ではなく転送だったのね。
復活して間もないのでは?と疑問を口にするバスドラ達にファルセットは、ノイズ様は密かにパワーアップしていると言います。タイマンで音吉さんに遅れをとったわけだからここでパワーアップしたことにしておかないとプリキュアと戦うときに箔が付きません。
中学校。響達は3人で昼食を摂ります。ガツガツ食べる響を見て奏は一日で一番楽しい時間ね、と頷きます。響のことならなんでも知ってます感が出まくっています。
ハミィは解決しなきゃいけない問題がある!と珍しく焦っています。音符消失の件です。ノイズの仕業だろうと見当を付けます。もしかしたらすぐ近くまで来ているのかもしれない。
ピー!と大きな音にみんな驚きます。ピーちゃんの姿を見てなんだピーちゃんかとほっとする響。いやいや、ピーちゃんの存在を疑おうよ。どう見てもおかしいだろあの造詣。そりゃすぐ隣にしゃべる猫や人間の姿の猫が居るけどさ。
雨が降ってきます。
いつものように奏は王子の演奏姿を見てときめいています。もうそろそろその演技やめてもいいんじゃないかな。
ハミィが言うにはこの辺にノイズが居るそうです。と言っても、ノイズは全ての音楽を奪うのが目的だから音楽に関係する場所に居るだろうという心許ない理由。それを聞いて3人も呆れ果てます。その反応を見て何か匂ったから、と理由を変えるハミィ。ちょうど音符を発見します。
デジャヴ。あの時のように小学校の玄関前で親の迎えを待つ生徒達。合羽を着せて貰っている男の子は恥ずかしそうです。
表情を変えず一人で待つアコ。彼女とて成長しています。少し待つくらいどうということは無いでしょう。そこにまた伸ばされる手。奏太は少しぶっきらぼうな感じでアコが転校してきてすぐの頃こういうことがあったな、と話しかけます。こちらも成長したというか、それなりにお年頃になってきているようです。しかし以前のような笑顔は健在。
いつも傘を持っているんだね、と答えるアコ。ママがうるさいから要らないと言っても無理矢理持たせるんだと不満そうに奏太は言います。私も小学生の頃そういうのありました。
お爺ちゃんが迎えに来てくれるから、と傘を受け取ろうとしないアコ。すると奏太は自分も待つと言い出します。お互いに売り言葉に買い言葉で「勝手にすれば」「勝手にするよ」などと言い合います。
「ねえ、奏太って、優しいんだね」
なん…だと…?! フラグが立った!?
突然のことに驚く奏太にアコは「本気にしてるし」といつもの口調。ずっこける奏太に構わず彼女は笑顔を浮かべます。もう彼の優しさと自分が抱えている不安とを天秤にかけて逃げ出すようなことはしません。彼の優しさをちゃんと彼女は受け取っている。
それはそうと一緒に一つの傘で帰るシチュエーションは一見美味しいようにも見えますが、一緒に学校で待つというのも美味しいイベントで、むしろ好感度が上がりそうな気がします(ゲーム脳)。
パイプオルガンの製作に夢中になっていた音吉さんはようやく雨が降っていることに気付くとアコを迎えに行くために身支度をし始めます。
②ピーちゃんの正体
学校で待ちながら奏太は本当に来るのか?と訊きます。必ず来ると答えるアコ。
お爺ちゃんを信じていると話すアコ。自分が寂しい想いをしているときに必ず来てくれたと過去を振り返ります。授業参観のときも、運動会のときも、一人で泣いているときも。
「何も心配することはない。全ては上手く行く。アコが不安なときはわしが傍にいる。寂しい想いをしていてもわしが必ずやってくる。だから一人ぼっちじゃない。アコは安心して待っておればいい」
自分を優しく包んでくれる、励ましてくれる、傍にいてくれる祖父。お爺ちゃんはその約束をずっと守ってくれたとアコは話します。自分の弱い時期を話しているのは凄い。それだけ奏太に信頼を寄せているとも言えます。
奏太はこんなに待ってても来ないのは何かあったのかな、と何気なく呟きます。何か来られない理由ができたとか。それを聞いたアコはノイズの仕業ではないかと考えて突き動かされるように駆けだしていきます。奏太も報われないなぁ。
音吉さんがこれからアコを迎えに行こうとすると、突然パイプオルガンの木造装飾部分が倒れてきます。間一髪響達が駆けつけ事なきを得ます。
ピーちゃんの仕業とは気付かず響はピーちゃんを抱き上げます。不可解な事態。音吉さんはノイズが鳥のような姿をしていたことを思い出します。ピーちゃんがノイズではないかと疑います。友情・愛情・信じる心を利用するのがノイズ。クレッシェンドトーンに鑑定を依頼します。
事情を聞いたクレッシェンドトーンはピーちゃんを調べます。しかし心が読み取れないと彼女も驚きます。限りなく黒に近いと思うのですが、断定できないので微妙な空気が流れます。
飛びたったピーちゃんからネジが落ちます。それを見た響はハッと先ほどの倒壊を思い返してとっさにパイプオルガンを弾き始めます。するとピーちゃんは突然苦しみ出します。ピーちゃんの瞳に一瞬だけ悪の心が浮かんだ気がしたと話す響。ホールに入った時にピーちゃんが力を使っていたのを見たのでしょう。ピーちゃんは落ちてもがき苦しみます。これで犯人は確定。
「なにをしているの?」
アコが息を切らせて帰ってきます。アコに助けを求めるようにピーちゃんは彼女の手に乗ります。音吉さんは緊張した声でアコにノイズであることを伝えます。アコの優しさを利用してケガの振りをしていた。前回オルガンを弾いたときに姿を消したことも合点がいきます。誤解だと言わんばかりにアコの手の上でわめくピーちゃん。アコの瞳は眼鏡の反射で隠れます。
アコは前に進みながら、ピーちゃんに嘘はついてないよね?と尋ねます。ピーちゃんのこと信じていたい。けど、お爺ちゃんは今まで絶対嘘をついたことはないの。だから私お爺ちゃんを信じる! そう断言するアコ。
ここまでの描写からアコが祖父を信じることは容易に想像できる展開ですが、アコの立場からすると突然ピーちゃんと祖父が天秤にかけられた状態だと言っていいでしょう。比較としては16話の響が母を取るか奏を取るかで悩んだ状況に似ています。しかしここで異なるのはその圧倒的な関係性の違いです。アコとピーちゃんの関係と、音吉さんとのそれとでは比べものになりません。絆の強さや正しい判断の根拠となっています。
ピーちゃんはギャーと鳴き声を出すと飛びたっていきます。馬脚を表わしたな。捕まえようとするとファルセット達が天窓を割って現れます。身体が大きいバスドラは引っかかります。
ファリーに保管した音符を取り出すとピアノに憑依させてネガトーン化。
場所を外に移します。そのまま建屋内で戦ってオルガン破壊すればいいんじゃない?と野暮なツッコミはしてはいけません。
ネガトーンは音波を出して街中を悲しみで満たします。奏太も泣き崩れています。一部の大きなお友達はその光景に喜んだことでしょう。胸のすく思いとはこのことか、などと思っているに違いありません。
ファルセットの手に乗ったピーちゃんに悲しみのエネルギーが集まっていきます。
「私達の大切なピアノをネガトーンにするなんて!」
ノイズは関係ないらしい。確かに奏と一緒に連弾の練習をした想い出とかが詰まったピアノです。プリキュアにおいてボスを倒すとか、世界を守るだとかの大義の価値は著しく低い。大切な想い出、日常の豊かさを破壊するものへの断固とした抵抗がプリキュアの戦闘動機です。その戦いをとおしてさらに価値を創造する。
ネガトーンの鍵盤ロケット爆撃から一人脱出したミューズはシャイニングサークルでネガトーンの動きを止めます。以前は破られましたが今回はそのまま必殺技へと繋げます。早っ。変身シーンの方が尺長いだろこれ。
ここで決着をつける!とノイズに挑もうとするとすでにファルセット達の姿は消えています。
③お爺ちゃんと孫の帰り道
ピアノが元に戻って良かったと安堵する響。パイプオルガンも本体は無事なので音吉さんも完成を急ぎます。
奏太がアコを探してやってきます。音吉さんが無事だったか尋ねます。姉に似て面倒見が良いというか、わざわざ心配してやってくるあたりめちゃいい奴です。音吉さんの姿を見て取り越し苦労だったとばかりに安心する奏太。
なんで心配してるの?と訊く姉に、奏太は事情を話します。音吉さんはそれで調べの館に来たのかと合点がいきます。知られて恥ずかしそうにするアコ。私の「アコフォルダ」がますます重くなるな。
雨があがり、夕日が祖父と孫を照らします。
音吉さんは久しぶり手でも繋いで帰ろうかと誘います。恥ずかしがるアコにこちらに来たばかりの頃はいつも手を繋いでいたと話します。手がスウスウするとわざとらしく言い始める音吉さん。面白いシーンです。これは彼が手を繋ぎたいからやっているのではありません。もちろん繋ぎたいだろうけど、それ以上にアコの内心を代弁しているんですね。彼女が恥ずかしがらずに繋げるように、さもお爺ちゃんの方が繋ぎたいのだと示すことで彼女の面子を立てているのです。
それに気付いているであろうアコは、ゆっくりとぎこちなく手を伸ばしながら「今日は特別だからね」と遠慮がちに言います。ふたりは手を繋ぎます。
音吉さんは遅くなったことを謝ります。パイプオルガンの修理に夢中になって雨に気付かなかったと言います。そんなことだと思ったと答えるアコ。
「でも、お爺ちゃんが無事で良かった」
④次回予告
これどういう状況なの。黄色プッシュ。いや、それ違くね?
○トピック
低学年、パジャマ、体操着、恥ずかしそうな表情、これは死人が出るレベル。東堂いづみの黄色びいきは異常。
ついに本格的に祖父母にまで戦略を広げるアニメ製作会社とスポンサー。これは子どもの親にもメリットがあります。直接懐を痛めずに子どもの要望を叶えられる。年金を絞り出させてクリスマスまでに在庫を一掃する気満々です。そして年が明ければ新番組。汚いなさすがプリキュアきたない。
アコとお爺ちゃんの絆のお話し。親と離れて暮していたとはいえ彼女が決して孤独ではなかったこと、愛情を受けていたことが分るエピソード。また、プリキュアがちゃんと子ども視点で作られた物語であることが如実に表れたエピソードでもあります。子どもの気持ちを代弁しつつ、その想いにしっかりと受け答えしています。
(今でも幼いのだけど)幼い頃のアコは独りぼっちを寂しがって不安になっていただけでしたが、今のアコは祖父に愛情を抱き彼の身を案じています。子どもに限った話しというわけではないですが、特に子どもの頃は一人で留守番している時など帰宅が遅いと家族の身に何か起こったのではないかと不安になります。それはもしかしたら自分の不安が転化されているのかもしれませんが、それでも心配する気持ちは確かにあります。私も子どもの頃経験した憶えがあります。実際には万が一の事態など早々起こることではないのですが、経験が少ない子どもにはそうした経験則は使えません。アコが学校を飛び出したシーンは対比として面白い。1度目は不安と孤独、惨めさからの逃避でしたが、2度目は祖父を心配して自分から動いています。彼女のこうした変化には子ども自身の成長もありますが家族との絆も深く結びついています。
また、アコの精神的な成長を示唆するものとして奏太との関わりも外せません。気持ちに余裕が持てているアコは奏太の優しさを受け入れています。奏太も音吉さんもやっていることは変わりません。アコに手を差し伸ばしている。それをアコが以前と今でどう捉えていたか、その時の心の動きを丁寧に描いています。
成長していくと照れや恥ずかしさが沸いてくる。それは成長の証しです。自己と他者の距離を意識する。自立心と依存心がせめぎ合う。手と手を繋ぐ、心と心を繋ぐ。それは成長していくと子どもの頃のように素直にできなくなってしまうものです。しかしだからこそ響と奏がそうだったように、本心を受け取って貰えた時の喜び、相手の中から同じものを見つけることができた時の喜びは大きいのです。相手の本心を知りながらも素直に答えない(奏太の好意に対するアコの反応)、相手の本心を知りながら婉曲に示す(アコに対する音吉さんの反応)。そのように屈折しながらも人は人の心に愛情を感じられるのもまた事実なのです。人間の成長とともに変わっていくそうした愛情表現が美しく示されたエピソードです。
そんな感じで人間って歪んでいるよね、ってことを再確認させてくれるエピソードなわけなんですが、スイート本編の方もなかなか展開が読めません。ノイズが鳥の格好をして出てきたので、もしやこのままアコと絆を結んで和解エンドへの伏線となるかとも思っていたのですがそれは無いようです。音符も順調に敵の手に渡っています。むしろ王道的にノイズを倒して世界は平和になりましたってな感じの路線ではあるのですが、残りの話しで何を持って来るのか。親友、家族愛を取り戻した響達は言うなればすでに幸せを獲得しています。これでノイズがいなければそのままハッピーエンドで終れる。しかしそれじゃあ小っちゃすぎる。全ての人を幸せにするのがプリキュア、と言うのならプリキュアは何を示すことでそれを証明するのか。心を守る、絆を守る、心を繋ぐ先にあるのは。そんなこんなでノイズを倒すよりもそっちが楽しみでならんのですが、次回はファリー大量生産。このアニメどこ行くんだろうなぁ。
第39話「フギャー!音符がぜーんぶ消えちゃったニャ!」
○今週の出来事
①音符の消失
フェアリートーンのモーニングコールでお目覚めのハミィ。ベランダに出て小鳥に挨拶しようとするとピーちゃんが鳴き声を上げて小鳥たちは去っていきます。代わりにピーちゃんに挨拶。
まだ寝ている響をトーンが起こそうとするのをハミィは止めます。今日は休みだし前回の活躍を労って朝寝坊しても良いと言います。が、あることに気付いて大騒ぎ。響を叩き起こします。音符が全て無くなってしまいました。
映画宣伝仕様OP。今回は決戦シーン集。
ラッキースプーンに招集。音符が消えたことをみんなに伝えます。トーン達も何故消えたのか、どこに行ったのか皆目見当がつきません。セイレーンは寝ている間にトリオに奪われたのではないか?と言います。それは気付くでしょ、と響。住所とかバレバレなのでやろうと思えばできる。が、女子中学生の部屋に夜中に忍び込むのは窃盗以上にやばい。それをやろうとした妻子持ちの国王は居ましたが。
ふたりの会話を聞いていた奏は響は気付かないわ、と言います。一度寝たら朝までぐっすりだと断言。何故をそれを知っている。奏さんパないっすわ。隣で聞いていたセイレーンはたじたじになりつつも、音符がひとりでにどこかへ行った可能性を考えます。ハミィはそれを否定。責任を感じるトーンをアコは励まします。
ハミィはやけ食いのようにカップケーキを食べまくります。これでも普段より食べていないらしい。絶体絶命とてんてこ舞い。響は先手を打って諦めたら負け決定だよ!とみんなに渇を入れます。サッカーの試合の例を引き合いに出して諦めなければ可能性があることを伝えます。音符はまた集めればいい。みんなで協力し合えば大丈夫と励まします。響がそう言えば奏も乗る。音符探しへレッツゴー。最近特にリーダーっぽい言動が増えてきました。奏やセイレーンとの関係、プリキュアとしての経験が自信に繋がっています。
それらの様子をピーちゃんは見つめます。
マイナーランドでは楽譜を眺めていたファルセットが不満を顔に出します。バリトンは相変わらず自分の姿に不満を漏らしますが、バスドラはもう諦めたのか爪を研いでいます。そんな彼らに音符を集めに行くと指示を出すファルセット。大量に音符を持っているものの、楽譜を全部埋めるには至っていません。後半部分はまっさら。
②音符の収集
音吉さんに報告。ノイズの仕業だろうと見当をつけます。クレッシェンドトーンもノイズの気配を感じとっていますがすぐに消失してしまうと言います。響はノイズが復活する前に幸せのメロディを復活させればいい、と前向き。奏は音吉さんにオルガンを弾くよう頼みます。以前音吉さんが演奏したときに音符が大量発生したことがあります。
諸刃の剣だと言う音吉さん。意味を知らない響に替って辞典を携えたセイレーンが説明。普段から持ち歩いているのでしょうか。リターンも大きいがマイナー勢に奪われるリスクもあります。しかし響達の意思は変わりません。
音吉さんがオルガンの前に行くと、ピーちゃんはどこかへ飛び去ってしまいます。たぶんオルガンの演奏を聴きたくないのでしょう。
荘厳な演奏とともに音符達が大量にわき出ます。その様子に沸くセイレーンとアコ。当然と言えばそうですがやっぱりアコも見えるようです。ハミィに頼んで可視化させます。
マイナー勢も収集。成果は乏しかったものの、オルガンの効果であちこちに音符がわき出たことで好機と捉えます。
公園で収集。セイレーンは軽い身のこなしで空中の音符を掴んでいきます。アコが自分の背よりも高いところにある音符に手を伸ばしているとセイレーンが代わりに取ります。高いところは任せて、と言われて対抗心を燃やしたアコは黒ミューズのブーツを履いてセイレーンに対抗。ちょっと待て。それ色々といいのか。変装のときの身長差についてスルーするのかと思いきや堂々とシークレットブーツ使いだしたよ。っていうかまだ持ってたのかよ。公式がネタをやるのはプリキュアらしいっちゃらしい。「黒ミューズ」って名称でOKのようです。
負けず嫌いなアコの様子を面白がる響。私達も負けてられないと奏も張り切ります。その甲斐あって大量の音符を回収。ピーちゃんも同行します。
サッカーの試合をする少年達。セイレーンはボールに音符が取り憑いているのを見つけます。響は事を急がず試合が終わるまで待とう、このためにあの子達も練習頑張ってきたと試合を観戦します。それに倣う奏。付き合いが長い分このふたりはお互いのやることに理解が早い。
が、空気を読まない人達登場。マイナー勢が試合に乱入。
ボールをネガトーン化。変身。アコの例に倣って響達も作画修正。すごい今更感。いや、まあ、正直あれは直した方が自然だと思ってました。
試合(?)開始。そのまんまボール形態になったネガトーンはプリキュアに体当たりしてきます。手に持ったボールを爆弾代わりに使用。近づいても離れても厄介。さらにバスドラやバリトンも加わって乱戦の様相。前回はプリキュアに遅れを取りましたが今回は強い。その様子をピーちゃんは静観。彼なりの思惑があるらしい。
ファルセットはハミィから音符を奪います。形勢は不利。勝ち誇るマイナー勢。するとプリキュアは話しを聞かず作戦会議。円陣を組んで気合いを入れます。
試合後半戦。一旦二手に分かれて後退。敵を分断します。位置関係を上手く利用して敵を相打ちに。ネガトーンのボールを蹴り返したリズムはネガトーン本体を打ち上げ、メロディがオーバーヘッドキック。バリトン、バスドラ纏めてゴールネットにたたき込みます。仕上げの必殺技で試合終了。
隙を突いてミューズはファルセットから音符を奪います。すかさずハミィ、トーンが回収。大量ゲット。
チームワークの勝利!と喜ぶプリキュア。メロディとリズムはハイタッチ。流石です。ビートとミューズにも促します。ビートは応じようとするもののミューズは加わろうとしません。ビートに促されて照れながらミューズはビートとハイタッチ。流石ミューズあざとい。
家に戻るとトーン達は防災頭巾を被って用心します。何かあったらベルでお知らせ。万全な体勢を整えます。響とハミィは夕飯の支度のために部屋を出ます。
残ったトーン達は訓練をはじめます。その様子を窓の外から見ていたピーちゃんが怪しげな力を使うとトーン達の動きがとたんに緩慢に。調べの館に居た音吉さんはノイズの気配を感じ取ります。
動きが遅くなったトーン達から音符が抜け出ていきます。それにトーンは気付きません。全ての音符を抜き出すとピーちゃんは障気のようなものを吐き出します。音符は障気に包まれ、そして消滅します。これは予想外。どこかに転移されているのかもしれないけど。ノイズ自身は嘆き悲しみのエネルギーで動いているから不幸のメロディはなくてもいいのかもしれない。むしろ音符の消滅こそ彼が望んでいる事態だとすれば合点は行きます。
力を使い終わるとトーン達の様子も元に戻ります。やはり今あったことに気付いていません。ピーちゃんはどこかに飛び去っていきます。
ようやく事態に気付いたトーン達は響を呼びます。
プリキュアの成長と時を同じくしてノイズの動きも顕在化。
③次回予告
アコの体操着姿…だと…!?
○トピック
夫婦の貫禄を見せる響奏、コスプレ趣味をのぞけば常識人なセイレーン、生意気な小娘(セイレーン談)なアコ、ムードメーカーなハミィにマスコットのフェアリートーン。個性豊かな面子が繰り広げるドタバタコメディ。前回絆を新たにした4人の通常モードという感じ。戦闘でも自然と連携して勝利を掴み取っています。
大方の予想通り、ピーちゃんがノイズで確定。が、ファルセット達とは完全に別行動を取っている上に音符を消滅させているように見えるのは面白い点です。今の所ノイズ自身の口から何を目的としているのかは語られていません。音楽が心の絆として仮託されている本作では音楽そのものの消滅は敵の目的としては分りやすいものですが、さてどうなるか。また、なんだかんだいって一緒に行動しているトリオに比べれば完全に単独独断行動しているノイズは他者と関わらない上に真意をも見せないという点でプリキュア(広義にはトリオ含め)と対極的です。まっ、ラスボスの真意や物語上での意味付けは最終回にならないと結論付けられないのは毎年のことなので気長に待ちます。
近年のプリキュアはラスボスを単純に悪として倒さない流れにあり、スイートはそれがより顕著です。前作ハートキャッチではデューンの憎悪に対して愛を返すことで彼を浄化していますが、「絆」「心の繋がり」をテーマとする本作はラスボスとの和解の実現性が高いと考えられます。といっても、別にラスボスと和解するかどうかが重要というわけではなく、プリキュア達が何をして彼女達の幸せを実現できるかが最大の焦点です。勝つことは目的ではありません。幸せへの一手段です。不幸のメロディが完成するにしても、音符が消滅するにしても、音吉さんのパイプオルガンが切り札になる(ならない)にしても、響達が如何にして何を実現させるかに全てがかかっています。そのヒントは本作がずっとこれまで積み重ねてきた「心の繋がり」にあります。プリキュアの最終決戦の醍醐味はこの積み重ねてきたテーマの昇華にあります。
残り10話程度。2ヶ月ちょいとなりましたが終わりへの歩みは、新しい発見と喜びへの歩みであると信じてます。それがプリキュアってもんです。
①音符の消失
フェアリートーンのモーニングコールでお目覚めのハミィ。ベランダに出て小鳥に挨拶しようとするとピーちゃんが鳴き声を上げて小鳥たちは去っていきます。代わりにピーちゃんに挨拶。
まだ寝ている響をトーンが起こそうとするのをハミィは止めます。今日は休みだし前回の活躍を労って朝寝坊しても良いと言います。が、あることに気付いて大騒ぎ。響を叩き起こします。音符が全て無くなってしまいました。
映画宣伝仕様OP。今回は決戦シーン集。
ラッキースプーンに招集。音符が消えたことをみんなに伝えます。トーン達も何故消えたのか、どこに行ったのか皆目見当がつきません。セイレーンは寝ている間にトリオに奪われたのではないか?と言います。それは気付くでしょ、と響。住所とかバレバレなのでやろうと思えばできる。が、女子中学生の部屋に夜中に忍び込むのは窃盗以上にやばい。それをやろうとした妻子持ちの国王は居ましたが。
ふたりの会話を聞いていた奏は響は気付かないわ、と言います。一度寝たら朝までぐっすりだと断言。何故をそれを知っている。奏さんパないっすわ。隣で聞いていたセイレーンはたじたじになりつつも、音符がひとりでにどこかへ行った可能性を考えます。ハミィはそれを否定。責任を感じるトーンをアコは励まします。
ハミィはやけ食いのようにカップケーキを食べまくります。これでも普段より食べていないらしい。絶体絶命とてんてこ舞い。響は先手を打って諦めたら負け決定だよ!とみんなに渇を入れます。サッカーの試合の例を引き合いに出して諦めなければ可能性があることを伝えます。音符はまた集めればいい。みんなで協力し合えば大丈夫と励まします。響がそう言えば奏も乗る。音符探しへレッツゴー。最近特にリーダーっぽい言動が増えてきました。奏やセイレーンとの関係、プリキュアとしての経験が自信に繋がっています。
それらの様子をピーちゃんは見つめます。
マイナーランドでは楽譜を眺めていたファルセットが不満を顔に出します。バリトンは相変わらず自分の姿に不満を漏らしますが、バスドラはもう諦めたのか爪を研いでいます。そんな彼らに音符を集めに行くと指示を出すファルセット。大量に音符を持っているものの、楽譜を全部埋めるには至っていません。後半部分はまっさら。
②音符の収集
音吉さんに報告。ノイズの仕業だろうと見当をつけます。クレッシェンドトーンもノイズの気配を感じとっていますがすぐに消失してしまうと言います。響はノイズが復活する前に幸せのメロディを復活させればいい、と前向き。奏は音吉さんにオルガンを弾くよう頼みます。以前音吉さんが演奏したときに音符が大量発生したことがあります。
諸刃の剣だと言う音吉さん。意味を知らない響に替って辞典を携えたセイレーンが説明。普段から持ち歩いているのでしょうか。リターンも大きいがマイナー勢に奪われるリスクもあります。しかし響達の意思は変わりません。
音吉さんがオルガンの前に行くと、ピーちゃんはどこかへ飛び去ってしまいます。たぶんオルガンの演奏を聴きたくないのでしょう。
荘厳な演奏とともに音符達が大量にわき出ます。その様子に沸くセイレーンとアコ。当然と言えばそうですがやっぱりアコも見えるようです。ハミィに頼んで可視化させます。
マイナー勢も収集。成果は乏しかったものの、オルガンの効果であちこちに音符がわき出たことで好機と捉えます。
公園で収集。セイレーンは軽い身のこなしで空中の音符を掴んでいきます。アコが自分の背よりも高いところにある音符に手を伸ばしているとセイレーンが代わりに取ります。高いところは任せて、と言われて対抗心を燃やしたアコは黒ミューズのブーツを履いてセイレーンに対抗。ちょっと待て。それ色々といいのか。変装のときの身長差についてスルーするのかと思いきや堂々とシークレットブーツ使いだしたよ。っていうかまだ持ってたのかよ。公式がネタをやるのはプリキュアらしいっちゃらしい。「黒ミューズ」って名称でOKのようです。
負けず嫌いなアコの様子を面白がる響。私達も負けてられないと奏も張り切ります。その甲斐あって大量の音符を回収。ピーちゃんも同行します。
サッカーの試合をする少年達。セイレーンはボールに音符が取り憑いているのを見つけます。響は事を急がず試合が終わるまで待とう、このためにあの子達も練習頑張ってきたと試合を観戦します。それに倣う奏。付き合いが長い分このふたりはお互いのやることに理解が早い。
が、空気を読まない人達登場。マイナー勢が試合に乱入。
ボールをネガトーン化。変身。アコの例に倣って響達も作画修正。すごい今更感。いや、まあ、正直あれは直した方が自然だと思ってました。
試合(?)開始。そのまんまボール形態になったネガトーンはプリキュアに体当たりしてきます。手に持ったボールを爆弾代わりに使用。近づいても離れても厄介。さらにバスドラやバリトンも加わって乱戦の様相。前回はプリキュアに遅れを取りましたが今回は強い。その様子をピーちゃんは静観。彼なりの思惑があるらしい。
ファルセットはハミィから音符を奪います。形勢は不利。勝ち誇るマイナー勢。するとプリキュアは話しを聞かず作戦会議。円陣を組んで気合いを入れます。
試合後半戦。一旦二手に分かれて後退。敵を分断します。位置関係を上手く利用して敵を相打ちに。ネガトーンのボールを蹴り返したリズムはネガトーン本体を打ち上げ、メロディがオーバーヘッドキック。バリトン、バスドラ纏めてゴールネットにたたき込みます。仕上げの必殺技で試合終了。
隙を突いてミューズはファルセットから音符を奪います。すかさずハミィ、トーンが回収。大量ゲット。
チームワークの勝利!と喜ぶプリキュア。メロディとリズムはハイタッチ。流石です。ビートとミューズにも促します。ビートは応じようとするもののミューズは加わろうとしません。ビートに促されて照れながらミューズはビートとハイタッチ。流石ミューズあざとい。
家に戻るとトーン達は防災頭巾を被って用心します。何かあったらベルでお知らせ。万全な体勢を整えます。響とハミィは夕飯の支度のために部屋を出ます。
残ったトーン達は訓練をはじめます。その様子を窓の外から見ていたピーちゃんが怪しげな力を使うとトーン達の動きがとたんに緩慢に。調べの館に居た音吉さんはノイズの気配を感じ取ります。
動きが遅くなったトーン達から音符が抜け出ていきます。それにトーンは気付きません。全ての音符を抜き出すとピーちゃんは障気のようなものを吐き出します。音符は障気に包まれ、そして消滅します。これは予想外。どこかに転移されているのかもしれないけど。ノイズ自身は嘆き悲しみのエネルギーで動いているから不幸のメロディはなくてもいいのかもしれない。むしろ音符の消滅こそ彼が望んでいる事態だとすれば合点は行きます。
力を使い終わるとトーン達の様子も元に戻ります。やはり今あったことに気付いていません。ピーちゃんはどこかに飛び去っていきます。
ようやく事態に気付いたトーン達は響を呼びます。
プリキュアの成長と時を同じくしてノイズの動きも顕在化。
③次回予告
アコの体操着姿…だと…!?
○トピック
夫婦の貫禄を見せる響奏、コスプレ趣味をのぞけば常識人なセイレーン、生意気な小娘(セイレーン談)なアコ、ムードメーカーなハミィにマスコットのフェアリートーン。個性豊かな面子が繰り広げるドタバタコメディ。前回絆を新たにした4人の通常モードという感じ。戦闘でも自然と連携して勝利を掴み取っています。
大方の予想通り、ピーちゃんがノイズで確定。が、ファルセット達とは完全に別行動を取っている上に音符を消滅させているように見えるのは面白い点です。今の所ノイズ自身の口から何を目的としているのかは語られていません。音楽が心の絆として仮託されている本作では音楽そのものの消滅は敵の目的としては分りやすいものですが、さてどうなるか。また、なんだかんだいって一緒に行動しているトリオに比べれば完全に単独独断行動しているノイズは他者と関わらない上に真意をも見せないという点でプリキュア(広義にはトリオ含め)と対極的です。まっ、ラスボスの真意や物語上での意味付けは最終回にならないと結論付けられないのは毎年のことなので気長に待ちます。
近年のプリキュアはラスボスを単純に悪として倒さない流れにあり、スイートはそれがより顕著です。前作ハートキャッチではデューンの憎悪に対して愛を返すことで彼を浄化していますが、「絆」「心の繋がり」をテーマとする本作はラスボスとの和解の実現性が高いと考えられます。といっても、別にラスボスと和解するかどうかが重要というわけではなく、プリキュア達が何をして彼女達の幸せを実現できるかが最大の焦点です。勝つことは目的ではありません。幸せへの一手段です。不幸のメロディが完成するにしても、音符が消滅するにしても、音吉さんのパイプオルガンが切り札になる(ならない)にしても、響達が如何にして何を実現させるかに全てがかかっています。そのヒントは本作がずっとこれまで積み重ねてきた「心の繋がり」にあります。プリキュアの最終決戦の醍醐味はこの積み重ねてきたテーマの昇華にあります。
残り10話程度。2ヶ月ちょいとなりましたが終わりへの歩みは、新しい発見と喜びへの歩みであると信じてます。それがプリキュアってもんです。
第38話「パチパチパチ♪不思議な出会いが新たな始まりニャ♪」
○今週の出来事
①音吉さんの誕生日
オルゴールを奏でながらアコはバースデーカードを書き上げます。上手い。アコも出来に満足。
OPは今回も映画宣伝仕様。親子の思い出編。さりげに本編と関連しています。
新提供絵。響はピアノ、エレンはギタ、アコはボーカル、奏はタンバリン。……。いやいや立派なポジションです。ええ、そうですとも。むしろ笑顔が素敵。
鳥……鳥?が時計台の屋根から羽ばたいていきます。同時刻パイプオルガンの調整をしていた音吉さんは音のずれに気づきます。
ラッキースプーンで誕生日ケーキを注文するアコ。奏に誰の誕生日か尋ねられると誤魔化そうとします。が、ドドリーが暴露。ドドリーに聞けばアコちゃんのこと教えてくれるかもしれない。
響とセイレーンも入店。響はアコにバースデーカードを見せます。うっかり落としてしまったようです。慌てて返して!とカードを受け取ると恥ずかしそうにありがとう…とお礼を言います。弱味を見せてしまっているのでいつもの毒舌も影を潜めています。セイレーンは素敵な家族愛…と感激して涙を流します。序盤の頃温もりとかに憧れていたようでしたが、彼女の家族は健在なんだろうか。
響が一緒にお祝いしようと言うと奏もセイレーンも賛成。みるみる話しが進んでみんなで歌を唄おうと決まります。しかし肝心のアコは辞退。唄いたくないようです。
おやつのカップケーキを食べながら響達は何故アコが唄いたがらないのか不思議がります。以前歌が苦手だと奏太が言っていました。しかしそんな話しは聞いたことがないとハミィとセイレーンは言います。何か理由があるのでは?
帰り道。アコはドドリーから先ほどの態度を注意されますが聞き入れる様子はありません。
道端にケガをした…鳥?が転んでいます。「え、何、アンタ、とっ鳥なの?」ですよねー。
家に連れて行って手当をします。しかし鳥はまだ痛むのかのたうち回っています。アコはオルゴールのネジを巻くとメロディに合わせて唄います。映画を観た人なら気付くところですが、この歌はアコのとても大切な曲です。
転がっていた鳥は歌を聴くと大人しくなってアコの方を向きます。気を紛らわすために唄ってごらんと言うアコに応えてピーピー鳴き出します。唄うというより喚いているような感じ。アコは穏やかな瞳を向けながら、もしかして唄いたくなくてワザとそうしてる?と問いかけます。ギクリとする鳥。苦手というのはそういう事情なのね。
アコは鳥をピーちゃんと名付けます。魔法少女モノには小動物がつきものですが、可愛くねぇ。
音吉さんにバースデーパーティを調べの館でしたいと響達は頼みます。響達の申し出に快く承諾しますが他に気がかりがあるようです。音のズレを気にしています。ノイズ復活が近い。クレッシェンドトーンも同意見。しかしこちらもミューズが加わっている。4人で力を合わせて立ち向かうのです、と士気を高めます。
帰り道、音吉さんが元気なかったと言う奏。明日の誕生日会では笑顔になってもらいたい。アコは来るのか。
マイナーランド。黒い羽根を拾って不思議がるバリトンとバスドラ。ファルセットが何をしているか尋ねます。やる気のない様子でノイズ様がいなくなったと答えるバリトン。士気だだ下がりです。無理矢理ファルセットに従わされている上にノイズは直接的にバリトンとバスドラに関係しません。そりゃやる気も失せます。
化石がなくなった石版を見上げてついにお目覚めになったとファルセットは喜びます。後ろで「置いてかれてやんのププっ」と笑われて電撃でお仕置き。音符回収命令を下します。
ふたりが行ってから「自分で行った方が早いかもしれん…」と呆れたように呟きます。よく分ってるじゃないですか。
②アコの一歩
誕生日当日。奏太はアコに誕生日会のことを尋ねます。奏から聞いたのでしょう。ところがアコは他人事のように答えて自分は行かないと言います。家族で祝うものだろ、アコがいないと始まらないじゃんと真っ当に返す奏太。響達がいるからいいでしょ、家族じゃないけど、と突き放すように言うアコ。
すると響達が待ち構えていたように「そういう言い方はひどいな~」と声をかけます。もう家族みたいなものでしょ、と言う響。だってプリ…セイレーンが口止めします。早業です。予想していたのかもしれない。プリンが大好きなのよ、と誤魔化す奏。プリン繋がりで家族になれるのかよ。私もプリン大好きです。ハミィはカップケー…奏が口止めします。口が軽すぎる。せっかくいい感じで登場していい感じのセリフ言ったのに台無しです。
響は再び誘いますがアコは頑なです。歩き出したアコの後ろ姿に「待ってるからね」と声をかける響。アコが振り向くと響奏セイレーンは笑顔で、奏太は心配そうに見ています。
アコは庭でオルゴールを眺めます。家族だと言った響の言葉を反芻。プリキュアがどういう存在かもう気付いているはず、あとはもう一歩踏み出すだけだとドドリーは言います。
奏太が声をかけます。
プリンを見せながらこれ食べたら音吉さんのところに行こうと言います。歌は唄わなくていいとも言います。わざわざ買ってきたの?と思わず吹き出してしまうアコ。プリンはご機嫌取りというより枕詞みたいなものでしょう。この少年は出来る。この気遣いは王子先輩や聖歌先輩にも勝るとも劣らない。むくれる奏太に謝るとありがとうとお礼を言います。
アイキャッチも修正。アコ追加。Bパート入るときのアコのムッツリした表情がらしい感じ。
奏太は率直に何故唄いたくないのか尋ねます。歌は好きだと言っていたのに。
好きだけど今はまだ唄いたくないと答えるアコ。オルゴールのネジを巻きながらアコは自分の家族が遠い国に居ること知ってるでしょ?と話し始めます。奏太は肯きながら表情を曇らせます。楽しい話題ではありません。このオルゴールは両親から貰ったものだと話しを続けるアコ。これを聞けばパパとママのことを思い出せる。いつも一緒に居るって気がする。あの頃はいつもみんなで唄っていたと言います。みんなで唄うときっと想い出だけじゃ足りなくて両親と会いたくなってしまう。でもまだそれは出来ないから今はまだ唄わない。いつか一緒に暮らせるときまで。穏やかな口調で話します。
声とは裏腹に彼女の決意や覚悟は相当なものです。彼女は精神的に早熟なのでしょう。これだけ自分を律せるのは大した物です。適応とも言えますが。ただ脆さもある。想い出を大切にしようとするあまり彼女は自分が暮しているこの世界から想い出を遠ざけようとしている。それは想い出が風化してしまったり傷ついたり、自分が感傷に浸ってしまうことを忌避しているのだと思います。こちらの世界で友達が少なさそうなのもメイジャーランドにいずれ帰るからなのでしょう。彼女にとってこちらの世界は仮の住処で仮の姿。それを使い分けられる理性と、そうしなければならない繊細さが同居している。普段の言動がぶっきらぼうなのもそれだけ距離や壁が必要なのでしょう。両親や身近な人相手では口調は年相応です。ある意味で彼女は閉じてしまっている。
「そんな日はこないさ~」。ファルセットが割って入ります。
不審者と見て取ると奏太はアコを庇って前に出ます。私なら驚いてツッコミの一つでも入れている間に奏太は女の子をガード。こいつ…出来る! 映画のときといい、肝っ玉が据わっています。
が、しかしカッコイイのはここまで。残念ながら荒事はプリキュアの領分。男子諸君は気絶して頂くのが本作の流儀です。草むらに突っ込んだだけで気絶。プリキュアの一般人の気絶耐性の無さはガチです。
ファルセットの目的は音符。オルゴールを奪い取ります。「それをどうするつもり!?」「知ってるくせに」ここのファルセットさんマジであくどい。ネガトーンに変えます。
ミューズに変身。レッツプレイ!とモジューレ動かしているシーンで一部作画修正されています。たぶん紛らわしから修正されるだろうと思ってたんですがやっぱりそうなりました。具体的にどこが、とは申しません。あ、気付いた人、私を変な目で見ない。あなたも同罪です。あと細かいですが、前回(映画でも)から決めポーズ取るときにシュ、シュっという動作音が追加されました。
調べの館でアコを待つ一同。響は自信を持って来ると言います。
トーン達がネガトーンが出現したことを知らせに来ます。
ミューズはネガトーンを追って街に出ます。
想い出のオルゴールを前にしてミューズはすぐに元に戻してあげるから、と謝りながらも戦意を向けます。ネガトーンの攻撃を泡状のバリアで緩和。プリキュアの法則というか、追加メンバーは追加スキルを持っています。
ネガトーンも火力負けすることなく鉄球を使います。が、これはミューズが機転を利かせてロープの中間点に蹴りを撃ち込んで振り子の要領でネガトーンの自爆を誘発させます。ショックで倒れるネガトーン。一人でも強ぇ。
ファルセットも拍手で答えます。余裕の体。それもそのはず、離れたところに奏太を人質に取っています。手出しが出来ないミューズは防戦一方。
遅れてバスドラとバリトンがやってきます。意外なことに音符をそれなりに集めています。もっと人間達を悲しませて不幸のエネルギーを送れと命じるファルセット。
ミューズが待ったをかけます。
ファルセットは何故そこまで必死になるのか問います。メフィストは元に戻った。この世界は関係ない。戦う理由は無いはず。
「関係あるのよ!」
「私が守りたいのはパパやママだけじゃない。この世界の大事な人がいるから。大事な人ができたから。私を家族って言ってくれた、みんながいるから、だから、私は私の家族がいるこの世界を守りたい!」
「守る!」
「守ってみせる!」
「そう決めたの!」
「どんなに粋がったところで、お前一人で何ができる」
ファルセットは奏太の束縛を強め、それに気を取られたミューズをネガトーンが襲います。
バリアでガード。お約束の展開です。っていうか腕組んで仁王立ちしてるメロディかっけぇ。
「残念一人じゃない!」
ヒロインなのにこの貫禄。
ネガトーンが跳びかかってきます。メロディが迎撃。奏太を助けるため、仲間に道を空けるための露払い。ミューズ、ビート、リズムは全力疾走。何故かプリキュアは走るときに腕を後ろに伸ばします。これ好きです。
バリトンはビートが相手をします。気付きませんでしたが巨大化しているようです。ミューズはバスドラに捕まってしまいますがリズムがアシスト。ミューズに奏太を託します。ビートがソニックを移動手段代わりに使います。ソニックを掴んで高速移動。おお、こういう使い方もあるのね。応用を利かせるのは面白い。
残るファルセットにメロディとリズムが手を握り合わせて撃ち込みます。
ソニックはそのまま奏太の束縛を破壊。ミューズが抱き留めて着地。救出作戦成功。4人の連係プレイです。
「奏太は返して貰ったわ」
お姫様にお姫様抱っこしてもらう…だと?!
リズムが奏太に抱っこしてもらってかっこ悪い子、と呟くとミューズは意外とカッコイイところだってあるんだよ、と優しい声で答えます。プリキュアは立場上女の子が活躍しますが男の子も勇敢で強いのです。
リズムはミューズの頭に手を乗せると「知ってるわ。だって私の家族だもん」と答えます。弟と言わず敢えて「家族」と言っているのは今回のアコとの繋がりを強調するためでしょう。時に口悪く言うことがあっても信頼で繋がっている。
弟を助けてくれてありがとうと言うリズムにミューズは自分一人じゃダメだった、みんながいてくれたおかげだと答えます。メロディとビートが合流しながらミューズの言葉に同意します。みんながみんなで支え合う。それが家族。良いお姉さん達です。
前回は不幸のメロディに妨害されましたが、4人の絆を深くした今こそその真価を発揮するとき。アンサンブル・クレッシェンドでフィナーレ。
奏太を起こします。アコは調べの館に行くと声をかけます。お爺ちゃんにお祝いの歌を唄ってあげなくちゃ。
それを聞いたセイレーンは唄いたくないなら無理に唄わなくていいと気遣いながら言います。
アコは違うと言います。今すっごく唄いたい。みんなと唄いたいと眼鏡を外しながら答えます。これは彼女が一歩を踏み出した印です。眼鏡は偽装のためにしていたもの、つまり偽りや距離、壁を意味しています。彼女の素顔を直接的に見ているのは家族だけです(前回のハロウィンは例外的)。だからこれは響達を家族と認め自分から壁を取り払ったことを意味しています。
③家族の歌
音吉さんの誕生日パーティ。孫のプレゼントに音吉さんは照れながらも嬉しそうです。
他人の誕生日だというのにイチャつく響と奏は歪みねぇ。
想い出の歌をアコは唄います。その歌にみんなも加わって合唱。彼女の歌声を聴いた奏太は唄えんじゃん、とこぼします。舌を出して答えるアコ。年相応の可愛らしさです。
「ん、ズレとらん」
EDは映画で先行的に使われていたミューズ追加バージョンに更新。冒頭部分が雪景色になっているのは芸が細かい。
④次回予告
ピーちゃん怖っ。
○トピック
ミューズ強化月間。もはやあざといという言葉ですら足りない。
前回に続きプリキュアお約束の追加メンバーとの絆を深めるお話し。アコが唄っているのは映画でも使われた「心の歌」です。こう書くと映画を見ていない人には不親切なようにも聞えるかもしれませんが、今回アコが話しているように両親との想い出の曲ということで理解しておけば問題ありません。映画を見た人には話しの繋がりが見えて一層楽しめる見せ方になっています。
前回の感想でも触れたようにアコは孤独な生活を送っていました。もっと言えば家庭崩壊。今住んでいる世界も仮の場所です。彼女が人と距離を置くような背景にはそうした事情が関係していると思います。黒ミューズは仮面を着けていましたが、精神的にも仮面を着けていたと言っても差し支えない。その仮面を脱ぐのが今回のエピソードの位置づけです。
家族の愛情が欠乏していた彼女に「友達」としてでなく「家族」として歩み寄っていく響達の態度はストレートで分りやすい。また、プリキュアの絆が反映しているのも特徴です。プリキュアは親友であり、親密な関係であることが繰り返し本作で描写されています。今回の戦闘でも絆や協力の価値を強調しています。プリキュアの繋がりはイコール日常の繋がり。プリキュアはもはや彼女達にとっての日常と地続きなんですね。戦うことを前面に押し出すと非日常的になってしまいますが、プリキュアの戦いとは絆や繋がり、人の想いを守るためのものとして意識されています。
大切な家族(お姉さん)、大切な友達(奏太)が出来たことで彼女は親と離れて暮していても愛情と連帯を得ることができました。人や世界との結びつきを感じて自分が守りたいと思うもの、一緒に居たいと思う人々のために立ち向かえる意思を彼女は宿しています。歌を唄わないことで想い出を守ろうとした彼女が、歌を唄うことで想い出を守りながらも新しい想い出を作りだしていく姿はとても美しい。その想い出は一緒に唄う響達にとっても大切な想い出となっていくでしょう。家族の愛情を取り戻し、遠く離れた土地でも新しい絆を育んでいく。プリキュアらしい丁寧なエピソードです。
さて、本編も終盤にさしかかり映画も公開されて大分情報や作品の方向性が見えてきたのでここらでこの感想を修正します。基本的にこの感想は私の趣味嗜好バイアスが働いています。とはいえ、作品内容と解離しすぎたり先入観にとらわれすぎると本末転倒になるので論点整理を兼ねます。
響、奏、セイレーンのエピソードからスイートはコミュニケーションの問題を扱っていると考えてきました。これは今でも変わりません。人間関係が崩れてしまう背景には各人の心の変化や印象が関与しています。約束が破られたとか歌姫に選ばれなかったとか、そういった失望や挫折感です。セイレーンは洗脳されていましたが心に隙があったのは確かです。それは本人も認めています。ですから、スイートでは洗脳というのは一種の建前で実際には原因の根本は当人達にあると捉えていました。この物語に悪は存在しないとこれまでの感想で何回か書いていますがこれはそうした理由からです。憎むのも愛するのも人の心の働き。スイートはそこを一貫して描く物語なのかと思っていました。これはハートキャッチの解釈に近い認識です。ハートキャッチは心に迷いや葛藤が生じることはあっても操られるものではありませんでした。
しかし、メフィストや映画のアフロディテを見るにこの仮説は適応できません。彼らに非はない。心を操られていただけで元は善人です。ということは、スイートは人が自ら犯してしまう過ちやそこから生まれる不協和音などの過失問題については重きを置いていないことになります。フレッシュやハートキャッチではそこが一つのポイントになっていたのでその延長で見ていましたが、ここが思い違いでした。スイートはある意味でそこから先の物語になっています。人の心を操る悪との対決は物語を次のステップへと進める措置であると考えられます。
スイートがこれまで一貫してやっているのは絆の構築です。ケンカした親友、離ればなれになった親子の絆を繋いでいます。誤解や洗脳を解いた後が本番。そこから関係を修復していく様子を丁寧に描いています。また、セイレーンを新しい友達として、アコを妹分として響と奏は迎え入れています。本作の柱はこの「心を繋ぐ」ことです。
この物語は慈悲深く相手を許して受け止めるという話しではなく、自責の念を乗り越えていく話しでもない。心を繋いで小さな幸せを創り、それを繋げて大きくしていく話しなのだと思います。「あなたに伝えたい」「あなたの心を知りたい」その気持ちが素直に届かなくて諍いが起きてしまうこともある。でもその気持ちを捨てずに届けることが出来たなら、お互いに許し合って仲良くケンカできる信頼と関係が築けるようになる。映画を見て改めて気付かされました。この物語は心を繋ぐ物語。人と人、心と心を繋いでメロディを創り上げる。となれば、他者の心を操り人々の関係を壊すノイズはスイート最大の敵です。と同時に最も遠い所にある心とも言える。
プリキュアシリーズはこれまで罪や過ちから克服して、憎悪を向けられても愛を返してきました。ここで再び「親友」「家族愛」にスポットが当てられたことはとても感慨深い。罪の意識からの解放、救済、憎悪の浄化、無限の愛の先にあるのは、心を繋ぐことで生まれる幸せなのかもしれません。
毎年そうなのですが、プリキュアの1年はそれまでのプリキュアの歴史、意思が宿った重い1年です。それを背負って視聴できることを嬉しく思います。
①音吉さんの誕生日
オルゴールを奏でながらアコはバースデーカードを書き上げます。上手い。アコも出来に満足。
OPは今回も映画宣伝仕様。親子の思い出編。さりげに本編と関連しています。
新提供絵。響はピアノ、エレンはギタ、アコはボーカル、奏はタンバリン。……。いやいや立派なポジションです。ええ、そうですとも。むしろ笑顔が素敵。
鳥……鳥?が時計台の屋根から羽ばたいていきます。同時刻パイプオルガンの調整をしていた音吉さんは音のずれに気づきます。
ラッキースプーンで誕生日ケーキを注文するアコ。奏に誰の誕生日か尋ねられると誤魔化そうとします。が、ドドリーが暴露。ドドリーに聞けばアコちゃんのこと教えてくれるかもしれない。
響とセイレーンも入店。響はアコにバースデーカードを見せます。うっかり落としてしまったようです。慌てて返して!とカードを受け取ると恥ずかしそうにありがとう…とお礼を言います。弱味を見せてしまっているのでいつもの毒舌も影を潜めています。セイレーンは素敵な家族愛…と感激して涙を流します。序盤の頃温もりとかに憧れていたようでしたが、彼女の家族は健在なんだろうか。
響が一緒にお祝いしようと言うと奏もセイレーンも賛成。みるみる話しが進んでみんなで歌を唄おうと決まります。しかし肝心のアコは辞退。唄いたくないようです。
おやつのカップケーキを食べながら響達は何故アコが唄いたがらないのか不思議がります。以前歌が苦手だと奏太が言っていました。しかしそんな話しは聞いたことがないとハミィとセイレーンは言います。何か理由があるのでは?
帰り道。アコはドドリーから先ほどの態度を注意されますが聞き入れる様子はありません。
道端にケガをした…鳥?が転んでいます。「え、何、アンタ、とっ鳥なの?」ですよねー。
家に連れて行って手当をします。しかし鳥はまだ痛むのかのたうち回っています。アコはオルゴールのネジを巻くとメロディに合わせて唄います。映画を観た人なら気付くところですが、この歌はアコのとても大切な曲です。
転がっていた鳥は歌を聴くと大人しくなってアコの方を向きます。気を紛らわすために唄ってごらんと言うアコに応えてピーピー鳴き出します。唄うというより喚いているような感じ。アコは穏やかな瞳を向けながら、もしかして唄いたくなくてワザとそうしてる?と問いかけます。ギクリとする鳥。苦手というのはそういう事情なのね。
アコは鳥をピーちゃんと名付けます。魔法少女モノには小動物がつきものですが、可愛くねぇ。
音吉さんにバースデーパーティを調べの館でしたいと響達は頼みます。響達の申し出に快く承諾しますが他に気がかりがあるようです。音のズレを気にしています。ノイズ復活が近い。クレッシェンドトーンも同意見。しかしこちらもミューズが加わっている。4人で力を合わせて立ち向かうのです、と士気を高めます。
帰り道、音吉さんが元気なかったと言う奏。明日の誕生日会では笑顔になってもらいたい。アコは来るのか。
マイナーランド。黒い羽根を拾って不思議がるバリトンとバスドラ。ファルセットが何をしているか尋ねます。やる気のない様子でノイズ様がいなくなったと答えるバリトン。士気だだ下がりです。無理矢理ファルセットに従わされている上にノイズは直接的にバリトンとバスドラに関係しません。そりゃやる気も失せます。
化石がなくなった石版を見上げてついにお目覚めになったとファルセットは喜びます。後ろで「置いてかれてやんのププっ」と笑われて電撃でお仕置き。音符回収命令を下します。
ふたりが行ってから「自分で行った方が早いかもしれん…」と呆れたように呟きます。よく分ってるじゃないですか。
②アコの一歩
誕生日当日。奏太はアコに誕生日会のことを尋ねます。奏から聞いたのでしょう。ところがアコは他人事のように答えて自分は行かないと言います。家族で祝うものだろ、アコがいないと始まらないじゃんと真っ当に返す奏太。響達がいるからいいでしょ、家族じゃないけど、と突き放すように言うアコ。
すると響達が待ち構えていたように「そういう言い方はひどいな~」と声をかけます。もう家族みたいなものでしょ、と言う響。だってプリ…セイレーンが口止めします。早業です。予想していたのかもしれない。プリンが大好きなのよ、と誤魔化す奏。プリン繋がりで家族になれるのかよ。私もプリン大好きです。ハミィはカップケー…奏が口止めします。口が軽すぎる。せっかくいい感じで登場していい感じのセリフ言ったのに台無しです。
響は再び誘いますがアコは頑なです。歩き出したアコの後ろ姿に「待ってるからね」と声をかける響。アコが振り向くと響奏セイレーンは笑顔で、奏太は心配そうに見ています。
アコは庭でオルゴールを眺めます。家族だと言った響の言葉を反芻。プリキュアがどういう存在かもう気付いているはず、あとはもう一歩踏み出すだけだとドドリーは言います。
奏太が声をかけます。
プリンを見せながらこれ食べたら音吉さんのところに行こうと言います。歌は唄わなくていいとも言います。わざわざ買ってきたの?と思わず吹き出してしまうアコ。プリンはご機嫌取りというより枕詞みたいなものでしょう。この少年は出来る。この気遣いは王子先輩や聖歌先輩にも勝るとも劣らない。むくれる奏太に謝るとありがとうとお礼を言います。
アイキャッチも修正。アコ追加。Bパート入るときのアコのムッツリした表情がらしい感じ。
奏太は率直に何故唄いたくないのか尋ねます。歌は好きだと言っていたのに。
好きだけど今はまだ唄いたくないと答えるアコ。オルゴールのネジを巻きながらアコは自分の家族が遠い国に居ること知ってるでしょ?と話し始めます。奏太は肯きながら表情を曇らせます。楽しい話題ではありません。このオルゴールは両親から貰ったものだと話しを続けるアコ。これを聞けばパパとママのことを思い出せる。いつも一緒に居るって気がする。あの頃はいつもみんなで唄っていたと言います。みんなで唄うときっと想い出だけじゃ足りなくて両親と会いたくなってしまう。でもまだそれは出来ないから今はまだ唄わない。いつか一緒に暮らせるときまで。穏やかな口調で話します。
声とは裏腹に彼女の決意や覚悟は相当なものです。彼女は精神的に早熟なのでしょう。これだけ自分を律せるのは大した物です。適応とも言えますが。ただ脆さもある。想い出を大切にしようとするあまり彼女は自分が暮しているこの世界から想い出を遠ざけようとしている。それは想い出が風化してしまったり傷ついたり、自分が感傷に浸ってしまうことを忌避しているのだと思います。こちらの世界で友達が少なさそうなのもメイジャーランドにいずれ帰るからなのでしょう。彼女にとってこちらの世界は仮の住処で仮の姿。それを使い分けられる理性と、そうしなければならない繊細さが同居している。普段の言動がぶっきらぼうなのもそれだけ距離や壁が必要なのでしょう。両親や身近な人相手では口調は年相応です。ある意味で彼女は閉じてしまっている。
「そんな日はこないさ~」。ファルセットが割って入ります。
不審者と見て取ると奏太はアコを庇って前に出ます。私なら驚いてツッコミの一つでも入れている間に奏太は女の子をガード。こいつ…出来る! 映画のときといい、肝っ玉が据わっています。
が、しかしカッコイイのはここまで。残念ながら荒事はプリキュアの領分。男子諸君は気絶して頂くのが本作の流儀です。草むらに突っ込んだだけで気絶。プリキュアの一般人の気絶耐性の無さはガチです。
ファルセットの目的は音符。オルゴールを奪い取ります。「それをどうするつもり!?」「知ってるくせに」ここのファルセットさんマジであくどい。ネガトーンに変えます。
ミューズに変身。レッツプレイ!とモジューレ動かしているシーンで一部作画修正されています。たぶん紛らわしから修正されるだろうと思ってたんですがやっぱりそうなりました。具体的にどこが、とは申しません。あ、気付いた人、私を変な目で見ない。あなたも同罪です。あと細かいですが、前回(映画でも)から決めポーズ取るときにシュ、シュっという動作音が追加されました。
調べの館でアコを待つ一同。響は自信を持って来ると言います。
トーン達がネガトーンが出現したことを知らせに来ます。
ミューズはネガトーンを追って街に出ます。
想い出のオルゴールを前にしてミューズはすぐに元に戻してあげるから、と謝りながらも戦意を向けます。ネガトーンの攻撃を泡状のバリアで緩和。プリキュアの法則というか、追加メンバーは追加スキルを持っています。
ネガトーンも火力負けすることなく鉄球を使います。が、これはミューズが機転を利かせてロープの中間点に蹴りを撃ち込んで振り子の要領でネガトーンの自爆を誘発させます。ショックで倒れるネガトーン。一人でも強ぇ。
ファルセットも拍手で答えます。余裕の体。それもそのはず、離れたところに奏太を人質に取っています。手出しが出来ないミューズは防戦一方。
遅れてバスドラとバリトンがやってきます。意外なことに音符をそれなりに集めています。もっと人間達を悲しませて不幸のエネルギーを送れと命じるファルセット。
ミューズが待ったをかけます。
ファルセットは何故そこまで必死になるのか問います。メフィストは元に戻った。この世界は関係ない。戦う理由は無いはず。
「関係あるのよ!」
「私が守りたいのはパパやママだけじゃない。この世界の大事な人がいるから。大事な人ができたから。私を家族って言ってくれた、みんながいるから、だから、私は私の家族がいるこの世界を守りたい!」
「守る!」
「守ってみせる!」
「そう決めたの!」
「どんなに粋がったところで、お前一人で何ができる」
ファルセットは奏太の束縛を強め、それに気を取られたミューズをネガトーンが襲います。
バリアでガード。お約束の展開です。っていうか腕組んで仁王立ちしてるメロディかっけぇ。
「残念一人じゃない!」
ヒロインなのにこの貫禄。
ネガトーンが跳びかかってきます。メロディが迎撃。奏太を助けるため、仲間に道を空けるための露払い。ミューズ、ビート、リズムは全力疾走。何故かプリキュアは走るときに腕を後ろに伸ばします。これ好きです。
バリトンはビートが相手をします。気付きませんでしたが巨大化しているようです。ミューズはバスドラに捕まってしまいますがリズムがアシスト。ミューズに奏太を託します。ビートがソニックを移動手段代わりに使います。ソニックを掴んで高速移動。おお、こういう使い方もあるのね。応用を利かせるのは面白い。
残るファルセットにメロディとリズムが手を握り合わせて撃ち込みます。
ソニックはそのまま奏太の束縛を破壊。ミューズが抱き留めて着地。救出作戦成功。4人の連係プレイです。
「奏太は返して貰ったわ」
お姫様にお姫様抱っこしてもらう…だと?!
リズムが奏太に抱っこしてもらってかっこ悪い子、と呟くとミューズは意外とカッコイイところだってあるんだよ、と優しい声で答えます。プリキュアは立場上女の子が活躍しますが男の子も勇敢で強いのです。
リズムはミューズの頭に手を乗せると「知ってるわ。だって私の家族だもん」と答えます。弟と言わず敢えて「家族」と言っているのは今回のアコとの繋がりを強調するためでしょう。時に口悪く言うことがあっても信頼で繋がっている。
弟を助けてくれてありがとうと言うリズムにミューズは自分一人じゃダメだった、みんながいてくれたおかげだと答えます。メロディとビートが合流しながらミューズの言葉に同意します。みんながみんなで支え合う。それが家族。良いお姉さん達です。
前回は不幸のメロディに妨害されましたが、4人の絆を深くした今こそその真価を発揮するとき。アンサンブル・クレッシェンドでフィナーレ。
奏太を起こします。アコは調べの館に行くと声をかけます。お爺ちゃんにお祝いの歌を唄ってあげなくちゃ。
それを聞いたセイレーンは唄いたくないなら無理に唄わなくていいと気遣いながら言います。
アコは違うと言います。今すっごく唄いたい。みんなと唄いたいと眼鏡を外しながら答えます。これは彼女が一歩を踏み出した印です。眼鏡は偽装のためにしていたもの、つまり偽りや距離、壁を意味しています。彼女の素顔を直接的に見ているのは家族だけです(前回のハロウィンは例外的)。だからこれは響達を家族と認め自分から壁を取り払ったことを意味しています。
③家族の歌
音吉さんの誕生日パーティ。孫のプレゼントに音吉さんは照れながらも嬉しそうです。
他人の誕生日だというのにイチャつく響と奏は歪みねぇ。
想い出の歌をアコは唄います。その歌にみんなも加わって合唱。彼女の歌声を聴いた奏太は唄えんじゃん、とこぼします。舌を出して答えるアコ。年相応の可愛らしさです。
「ん、ズレとらん」
EDは映画で先行的に使われていたミューズ追加バージョンに更新。冒頭部分が雪景色になっているのは芸が細かい。
④次回予告
ピーちゃん怖っ。
○トピック
ミューズ強化月間。もはやあざといという言葉ですら足りない。
前回に続きプリキュアお約束の追加メンバーとの絆を深めるお話し。アコが唄っているのは映画でも使われた「心の歌」です。こう書くと映画を見ていない人には不親切なようにも聞えるかもしれませんが、今回アコが話しているように両親との想い出の曲ということで理解しておけば問題ありません。映画を見た人には話しの繋がりが見えて一層楽しめる見せ方になっています。
前回の感想でも触れたようにアコは孤独な生活を送っていました。もっと言えば家庭崩壊。今住んでいる世界も仮の場所です。彼女が人と距離を置くような背景にはそうした事情が関係していると思います。黒ミューズは仮面を着けていましたが、精神的にも仮面を着けていたと言っても差し支えない。その仮面を脱ぐのが今回のエピソードの位置づけです。
家族の愛情が欠乏していた彼女に「友達」としてでなく「家族」として歩み寄っていく響達の態度はストレートで分りやすい。また、プリキュアの絆が反映しているのも特徴です。プリキュアは親友であり、親密な関係であることが繰り返し本作で描写されています。今回の戦闘でも絆や協力の価値を強調しています。プリキュアの繋がりはイコール日常の繋がり。プリキュアはもはや彼女達にとっての日常と地続きなんですね。戦うことを前面に押し出すと非日常的になってしまいますが、プリキュアの戦いとは絆や繋がり、人の想いを守るためのものとして意識されています。
大切な家族(お姉さん)、大切な友達(奏太)が出来たことで彼女は親と離れて暮していても愛情と連帯を得ることができました。人や世界との結びつきを感じて自分が守りたいと思うもの、一緒に居たいと思う人々のために立ち向かえる意思を彼女は宿しています。歌を唄わないことで想い出を守ろうとした彼女が、歌を唄うことで想い出を守りながらも新しい想い出を作りだしていく姿はとても美しい。その想い出は一緒に唄う響達にとっても大切な想い出となっていくでしょう。家族の愛情を取り戻し、遠く離れた土地でも新しい絆を育んでいく。プリキュアらしい丁寧なエピソードです。
さて、本編も終盤にさしかかり映画も公開されて大分情報や作品の方向性が見えてきたのでここらでこの感想を修正します。基本的にこの感想は私の趣味嗜好バイアスが働いています。とはいえ、作品内容と解離しすぎたり先入観にとらわれすぎると本末転倒になるので論点整理を兼ねます。
響、奏、セイレーンのエピソードからスイートはコミュニケーションの問題を扱っていると考えてきました。これは今でも変わりません。人間関係が崩れてしまう背景には各人の心の変化や印象が関与しています。約束が破られたとか歌姫に選ばれなかったとか、そういった失望や挫折感です。セイレーンは洗脳されていましたが心に隙があったのは確かです。それは本人も認めています。ですから、スイートでは洗脳というのは一種の建前で実際には原因の根本は当人達にあると捉えていました。この物語に悪は存在しないとこれまでの感想で何回か書いていますがこれはそうした理由からです。憎むのも愛するのも人の心の働き。スイートはそこを一貫して描く物語なのかと思っていました。これはハートキャッチの解釈に近い認識です。ハートキャッチは心に迷いや葛藤が生じることはあっても操られるものではありませんでした。
しかし、メフィストや映画のアフロディテを見るにこの仮説は適応できません。彼らに非はない。心を操られていただけで元は善人です。ということは、スイートは人が自ら犯してしまう過ちやそこから生まれる不協和音などの過失問題については重きを置いていないことになります。フレッシュやハートキャッチではそこが一つのポイントになっていたのでその延長で見ていましたが、ここが思い違いでした。スイートはある意味でそこから先の物語になっています。人の心を操る悪との対決は物語を次のステップへと進める措置であると考えられます。
スイートがこれまで一貫してやっているのは絆の構築です。ケンカした親友、離ればなれになった親子の絆を繋いでいます。誤解や洗脳を解いた後が本番。そこから関係を修復していく様子を丁寧に描いています。また、セイレーンを新しい友達として、アコを妹分として響と奏は迎え入れています。本作の柱はこの「心を繋ぐ」ことです。
この物語は慈悲深く相手を許して受け止めるという話しではなく、自責の念を乗り越えていく話しでもない。心を繋いで小さな幸せを創り、それを繋げて大きくしていく話しなのだと思います。「あなたに伝えたい」「あなたの心を知りたい」その気持ちが素直に届かなくて諍いが起きてしまうこともある。でもその気持ちを捨てずに届けることが出来たなら、お互いに許し合って仲良くケンカできる信頼と関係が築けるようになる。映画を見て改めて気付かされました。この物語は心を繋ぐ物語。人と人、心と心を繋いでメロディを創り上げる。となれば、他者の心を操り人々の関係を壊すノイズはスイート最大の敵です。と同時に最も遠い所にある心とも言える。
プリキュアシリーズはこれまで罪や過ちから克服して、憎悪を向けられても愛を返してきました。ここで再び「親友」「家族愛」にスポットが当てられたことはとても感慨深い。罪の意識からの解放、救済、憎悪の浄化、無限の愛の先にあるのは、心を繋ぐことで生まれる幸せなのかもしれません。
毎年そうなのですが、プリキュアの1年はそれまでのプリキュアの歴史、意思が宿った重い1年です。それを背負って視聴できることを嬉しく思います。
映画「とりもどせ!心がつなぐ奇跡のメロディ♪」
○うろ覚え本編感想
①前説
今年はミラクルライトの説明があります。ハミィとトーン達が楽しく説明。ドドリーが身体をはって注意を促します。
はじまり~はじまり~。
②お巡りさんこいつです
朝。奏の部屋。奏の寝顔。映画冒頭から私の心を鷲づかみです。
コンコン、と窓を叩く音。カーテン越しに人影。奏はどうせ響だろうと見当をつけ、身体を起こして窓の方へ向かいます。不審者かもしれないという発想よりも先に響だと思うのが凄い。普段から朝早く会っているの?
カーテンを開けると、髭もじゃのスーツを着たおっさんが笑顔を向けています。
奏「………!!」
堂々と正面から行くとは……俺、メフィストさんのこと見直しました。妻子持ちで女子中学生の部屋に特攻とか熱すぎる。
奏が驚いて悲鳴を上げると同時にOP曲。
姉の悲鳴を聞きつけた奏太はバットを持って姉の部屋へ。幼いながら頼りになる少年です。警察を呼びます。パパさんは泣きながら奏を抱き寄せています。あっと言う間に大量のパトカーがおしよせてきます。メフィストをそのまま連行。
至急電話で連絡。音吉さん、セイレーン、アコはすぐに交番へ向かいます。自転車に乗っていた音吉さんは坂道にあらがえず後退。パトカーを見ていた響は奏の家へ。みんな合流して交番へ。
おそらく尺がないための苦肉の策かとは思いますが、セリフが一切なくてもストーリーの進行が分るのは親切です。
交番で事情聴取。メフィストはマイナーランド云々とそのまま答えます。隣に座ったアコがその都度訂正します。9歳で「政治」や「司る」と言えるのは大したものです。その様子を響達は外から伺います。どうやらメフィストは奏太に会いに来たらしく間違えて奏の部屋を訪れたようです。どちらにせよ、玄関から来い。
事情聴取していたお巡りさんは娘さんの方がしっかりしていると呆れます。お馬鹿な父親としっかり者の娘という構図がここで完成。この関係はこの映画のキーになっています。
遅れてやってきた音吉さんが自転車で交番に突入。婿殿がご面倒を、と陳謝します。音吉さんの顔はお巡りさんにも知れているらしく納得して貰えます。
場所を公園に移して、メフィストは改めて奏太に挨拶します。急な話しだけどメイジャーランドに帰ることになったと言います。
また余計なことを言って話しがややこしくなりだしたのでアコは父親を押しのけます。
奏太はアコが故郷に帰ってしまうと聞いて驚き寂しがります。しかしアコは両親と一緒に暮らせることの方が嬉しくてあまり寂しがってはいません。その様子に奏太は腹を立てます。純粋に寂しいのでしょう。ちょっとでもいいからそこで寂しがってくれれば奏太の心も慰められたのに。
メフィストは離れて見ていた響達の近くに腰を下ろします。娘に信用されていないと落込みます。近くで演奏していた父親と幼い娘が楽しそうに会話しているのを見て、アコは知らぬ間に難しい年頃になったとため息を溢します。映画館に来ているお父さん達の言葉を代弁するかのようなポジション。悪の親玉やっていたというのは一つの例えで、これが単身赴任していて数年ぶりに会ったとか、普段接することが少なくて気付けば昔の頃のような関係ではなくなっていたということでもいいでしょう。
奏太が声を荒げます。彼は苛立ってアコから去っていきます。こちらも難しい年頃。
セイレーンは奏太の心情を汲みつつも、姫様はメイジャーランドの跡継ぎなので人間界にずっと居られないと言います。すると響は本当に今まで姫様だと気付かなかったの?と訪ねます。眼鏡をかけていなかったしあんな格好ではただの生意気な小娘……などと言っているところをアコに見咎められます。国に帰ったら不敬罪でしょっぴかれそうです。アコは姫様はやめてと言います。響達も同じプリキュアなんだし、とアコのセリフに頷きます。
ところがアコはプリキュアを続けずに国に帰ると言います。自分がプリキュアをやっていたのは父親を助けるため。自分のために尽力してくれた娘に感激したメフィストはアコの身体を持ち上げて喜びます。みんなが見ているとアコは恥ずかしがります。セイレーンが言うように微笑ましい。
定時になったので時計台の音楽隊が曲を奏でます。すると突然不快な音が響き渡ります。それが止むと今度は公園から音楽が消えてしまいます。楽器を鳴らしてもいっこうに音がでません。メフィストがメイジャーランドの映像を出すとすぐに映像はかき消され、何やら不気味なマークが地面に残ります。
メイジャーランドでおかしなことが起こっていて、それが人間界にも影響していると推測する音吉さん。一同はメイジャーランドへ向かいます。
③メイジャーランド
メイジャーランドへの橋を滑空。みんなスカートなのでいいアングルです。セイレーンは国王とお姫様のお供ということで町娘の格好をセレクト。当然、この知識は音吉さんの本から。知識の仕入れ先がどうのというよりこの子は何かになりきったりするのが好きなのかもしれない。ところで衣装や小道具は誰持ちなんですかね?
アコは不安が隠せないのか袖を握る力を強めます。それを感じたメフィストはアコの手を握ります。握られたアコはちょっと戸惑いながらも父にはにかみます。それを見たメフィストもぎこちなく答えます。中学生の恋愛かよってくらい初々しいシーンです。
メイジャーランドが見えてきます。なんかもうはっきりと悪の力に乗っ取られています的な雰囲気。急ごうと城の付近に橋を延ばすとハウリング音がして橋がくずれてしまいます。
メフィストはアコの手を放さずしっかりと守ります。しかしその上から響達がどっすん。かろうじてアコを掴み上げるも女子中学生3人+ネコの下敷きに。我々の業界ではご褒美です。背中に感じる暖かくて柔らかい温もりのためならどんな痛みにも耐えよう。
城下の様子もお城同様ただならぬ雰囲気。マイナーランドにあったようなキノコがそこら中に生えています。人の声もなく、ベンチに座っている人も石のように固まり音の鳴らないアコーディオンを弾き続けています。呼びかけに答えません。
物音に気付いた女の子が声をかけてきます。その顔を見てアコはスズ、と呼びます。友達らしい。響は奏太以外の友達が居たんだ、と驚きます。無事な人が居たとかじゃなくそこかよ。
アコを警戒するスズ。アコは話しかけながらスズが首にかけていた音符のペンダントと同じものをポケットから出して見せます。するとスズはそれを叩き落としてしまいます。メイジャーランドから音楽がなくなったのはアフロディテ様のせいだと言います。アコはショックを受けつつもにわかには信じられません。彼女の様子を見てスズは私を信じてくれないのね、と言い残してどこかに行ってしまいます。
真偽を確かめようとメフィストはすぐさまお城へと向かいます。アコは母のところへ行くべきか、スズを追うべきか迷います。すると響が彼女の肩を掴んで母のもとへ行くように言います。奏も落ちた音符を拾ってアコに持たせて響の言葉に賛同します。
一旦二手に分かれて行動。ここで物語はアコに友達より母親との関係を優先させています。後述するようにスズにとってもこれはアコとの問題ではなく、両親と引き裂かれたことによるものとして話しを進めています。
スズを追って響達はコンサートホールに辿り付きます。スズはそこで両親にすがって泣いています。ただ音楽を奪うだけでなく人を自動機械のように変えてしまった邪悪な力に響は憤り、独り残されたスズの心情を慮ります。
スズにもう一度事情を尋ねます。アフロディテが音楽を消すと宣言して言葉通りになったと話します。ハミィがアフロディテ様はそんなことしない!と泣きじゃくるとクレッシェンドトーンはスズが言っていることは本当だと言います。
響達はスズを家に送り届けることにします。
玉座に腰掛けたアフロディテはクレッシェンドトーンの気配を感じ取ります。音の無い世界にした今、クレッシェンドトーンを手に出来れば完全制覇。目の前でかしずくメイジャー3に奪取を命じます。
アコとメフィストは2人でお城へ向かいます。母を心配するアコの不安を紛らわそうとメフィストは歌を唄おうと言います。しかしアコは唄いたくないとにべもない。子どもの頃はよく歌をせがんでいたと言うメフィストにアコは何故自分が歌を唄いたくないのか判らない?と尋ねます。答えられない父を見て、じゃあ私が一番好きな歌を憶えているかと質問を変えます。もちろんと答える父に唄ってみてと頼みます。ギクリとするメフィスト。やはり憶えていないらしい。
とりあえず適当なものを唄おうとすると出だしでハウリング音の妨害が入り中断されます。アコは父が憶えていなかったことに失望して、ママが心配ではないのかと責めるように言って先に行こうとします。それを追うメフィストは柱に顔をぶつけてしまいます。
アコは、自分はパパより強くなったし早く走れるようになったと父を置いて先に行ってしまいます。頼りない父を見て失望感いっぱいです。
メフィストは父親とはなんと難しいものだ、これなら悪のボスをやっていた頃の方が楽だったとため息を溢します。
普段なら音楽で絶えない森の道も今は静寂に包まれています。スズはアコに嫌われてしまった、もう友達ではいられないだろうと食いやみます。響は大丈夫だと励ましますが、自分の両親をあんな風にしてしまったアフロディテへの怒りの感情も大きく板挟みの状態。
スズが悩むのを見て奏は少し一人にしてやろうと距離を取ります。この問題はスズとアコの問題ではなく、音楽が消えたことに起因していると言います。後々の展開も含めてここで一旦整理しておくと、この映画はアコとスズの友情の物語ではありません。その要素は限定的で重要性が低い。アコとスズとの和解シーンが無いのもそのためでしょう。とはいえ一度手放した音符を再び手元に置いているし、アフロディテの誤解も解けるので関係は改善されるはずです。まあ、アコは加音町に行っちゃうんですが。
チェストを背負って歩いていたハミィは疲れて座り込みます。肩からチェストを外して一休み。スズはこの中にクレッシェンドトーンが居るのかと尋ねます。首肯するハミィ。トーン達が早く来ないとカップケーキ食べさせないぞと脅かすとハミィはチェストを置いて先に進んでしまいます。スズの目の前にチェストが残されます。
母と再会。アコは内心の不安を消そうと、何事もなかったと期待するように母に返事を求めます。しかしアフロディテは何も答えず、虚ろな瞳はアコを捉える事もありません。
「ママ!私を見て!」叫ぶように母を呼ぶアコの頭上から樹木が伸びるとアコを包み込み封じ込んでしまいます。ガラスの球体の中で苦しむ娘を見て、メフィストはアフロディテに語気荒く詰問します。彼の問いにも答えずアフロディテの瞳は虚空を見続ける。
スズとはぐれてしまった響と奏は口論し始めます。セイレーンが止めに入りスズを探します。すると見知らぬ男性3人が声をかけてきます。ナチュラル、シャープ、フラット。妙なポーズと気取った声でメイジャー3と名乗ります。メイジャーランド初のアイドルらしい。
あまりに怪しいのでスルーする響達。あからさまに怪しい。奏はちょっとカッコイイけど怪しいと言います。カッコイイ人には反応するらしい。なるほど、響もカッコイイしね。
メイジャー3は彼女達を呼び止め、響の手を無理矢理掴んで向き直らせると響をキュアメロディと呼び、アフロディテの使いでクレッシェンドトーンを預かりに来たと言います
アコを包んでいるのは音楽を遮断する結界のようなものらしく、メフィストはアコが一番好きな歌を唄えばいいと判断します。あて推量で唄う上にハウリング音の妨害があるので難航。
響達はメイジャー3の言葉を信用せず直接アフロディテ様に渡すと言い返します。彼らを警戒した響はハミィにチェストを守ってと頼みます。そこでようやくハミィは自分がチェストをなくしたことに気付いてその場から離れます。ハミィを追おうとするメイジャー3を響達が阻みます。「どちらへ?」すげぇ強そう。ネガトーンを召喚。響達も変身。
ネガトーンを囮にしてメイジャー3はハミィを追跡。
ネガトーンは特殊な弾丸を発射します。ビートの腰に巻きつき固まります。メロディとリズムも両腕に巻き付いて固定されてしまいます。地味に面倒くさい攻撃です。
行動にほとんど制約がないビートはネガトーンに攻撃をしかけます。一方両手がふさがれた上に密着状態のメロディとリズムはそれどころではありません。メロディはベルティエを出そうとしますが幅が取れないので「痛てて」と召喚できません。あ、そういうものなんだ。これではリズムも不可能。するとメロディは自分の右手とリズムの左手を合わせたらクロスロッドが出るのではないかと思いつきます。え、どうだろう?とリズムも興味を持ちます。実際にやってみますがやっぱり幅が取れないのでふたりで痛がります。何してるんだ君達は。実際これでクロスロッドが出たら面白い。本編でやらないかな。
ふたりのコントに呆れるビート。ハミィが心配なのでネガトーンをふたりに任せて先に行ってしまいます。
ハミィはチェストを探して全力疾走。何かにぶつかって止ると目の前に箱のような物が落ちています。チェストを見つけたと駆け寄るとそれがただの箱だと気付きます。状況は悪化の一途。
メイジャー3に肉薄したビートは彼らに攻撃を仕掛けます。しかし多勢に無勢。
メフィストの単独のど自慢大会は終わりが見えません。
ハミィはもしかしたら形を変えたのでは…?と中を覗きます。やっぱりただの箱でハミィは愕然とします。そこにメイジャー3がやってきます。
チェストを渡せと要求するメイジャー3に戦々恐々のハミィ。ビートが駆けつけます。ハミィはチェストをなくして気が動転しているため泣きじゃくりながら説明します。何を言っているのかさっぱり判りません。ビートはイジメられたと思ったのか、いたいけな子猫をいたぶるなんて人でなし!とメイジャー3を責めます。普段そういうシーン無いけどやっぱりセイレーンはハミィのこと好きなんだな。
ビートはハミィと同じようにチェストが違うことに気付き、でも形を変えたのでは?と中をのぞき込みます。ハミィと同類です。中にスズの音符が入っていることに気付きます。
メイジャー3はビートから箱を奪うと撤退。チェストを知らないので勘違いしたようです。ビートは独り言のように探しても居ないわけだ、と呟きます。
一方、ネガトーンを押しつけられたメロディとリズムは反撃に出ます。衝撃で腕を固定していた金属が砕けます。これ幸いとベルティエを召喚してアルペジオとピアチェーレで撃退。
メイジャー3はアフロディテにチェスト(偽)を献上するも突き返されてしまいます。箱は砕け音符は階下に落ちていきます。もう一度チャンスを!と許しを請うメイジャー3にアフロディテは待っていればプリキュアは来る。迎い撃てと命じます。
彼らの隣ではメフィストは未だに悪戦苦闘中。100回目。失敗が続きます。彼はアコに情けない親だと謝ります。しかしパパはアコの傍にいる。せめて心で聴いてくれ、と彼は心の中で唄います。抽象的ですがこれは表象的な形や行為にとらわれない愛情を示しています。彼は父として娘への愛情を失わない。そして諦めない。
④心の歌
スズはコンサートホールに戻ると、クレッシェンドトーンに音楽を戻してとお願いします。クレッシェンドトーンは音楽がなくなった世界、本当にそうでしょうか? まだ音楽に希望を繋ぐ人達が残っていると答えます。伝説の戦士プリキュア。そしてスズにあなたにも為すべきことがあるはずだと告げます。
プリキュアは城内へ突入。メイジャー3が待ち受けます。これは予想済み。ダミー投げて気を引きます。ビートが持っているのが風呂敷ってのが芸が細かい。それぞれバラバラになって進むプリキュア。
リズムを追って青い化け物になったナチュラルが肉薄。指に水かきが見えます。デザイン的に西遊記の沙悟浄(河童)をモチーフにしているかもしれません。電撃をリズムに浴びせます。
ビートはイノシシ(豚?)の化け物になったフラットを相手にします。ボール型の攻撃をはね除けるも、本体の防御が堅牢で通じません。巨体を活かした攻撃に苦戦します。
猿のような化け物になったシャープが炎を飛ばしてメロディを狙います。メロディの動きがカッコイイ。しかし彼女も劣勢に立たされます。
父の想いが届いたアコは父を見つめます。自分が一番好きな歌を憶えていてくれた。幼い頃にひまわり畑で肩車された記憶。父との思い出。家族共通の深い思い出なのでしょう。響と奏にとって親友のイメージが小学生の頃だったように、アコ達の家族愛の原型はこのひまわり畑の頃のイメージなのでしょう。離れていても、悪のボスをやっていたときでもずっと大好きだったと心の中で話すアコ。父と娘はガラスを隔てて手を合わせ見つめ合います。
父と娘は共に心の中で歌を唄います。
スズはアコの歌に気付きます。
クレッシェンドトーンはスズに語りかけます。音楽とは人の心の奥から生まれるもの。取り戻すのではない。どんな敵が攻めてこようと想い続ける限り決して奪われることはないのだと。スズの両親、コンサートホールの人々は涙を溢しています。
ピンチに陥っていたプリキュア達にもアコとメフィストの唄が聴えてきます。立ち上がったメロディにシャープは諦めたんじゃなかったのか?と問いかけます。「仲間の歌を聴いていたのよ」と毅然と答えるメロディ。
聴えないものが聴えるようになったのかと嘲笑するメイジャー3。しかしプリキュアは力強く確信をもって目の前の敵に挑みます。歌が彼女達を繋ぐ。その歌は心の中にある。人の絆。一人だけど一人じゃない。スイートの真価は離れていても繋がり合っているという確信。自分と共に居てくれる、戦ってくれる、呼びかけてくれる人がいるという信頼に基づいた力です。
アコは父に打ち明けます。何故唄いたくなかったのか。それは家族の記憶だから。ひまわり畑には母も居ました。家族が一緒になって唄われた歌なのに今は欠けてしまっている。それを思い起こすのが辛かったと言います。またパパとママ3人で唄いたいと願うアコ。
アフロディテの瞳から涙がこぼれ落ちます。
プリキュアはメイジャー3を倒します。
アコを閉じ込めていた容器が砕け散ります。抱き合い、母の声が聞えたと喜ぶアコとメフィスト。
アフロディテは自分にも歌が届いたと心で呼びかけます。ハウリングがメイジャーランドに襲いかかってきたこと、自分が彼を封じ込めたこと、そして自分の命を絶てばハウリングの命も絶たれるとメフィストに託します。
メフィストが彼女に触れると袖口からひまわりの種が落ち、剣へと姿を変えます。アフロディテの覚悟。メフィストは剣を持ちます。後ろで見ていたアコの瞳は困惑と驚きに染まります。一閃。
プリキュアが駆けつけると同時にメフィストの剣は振り下ろされます。アフロディテを傷つけることなく彼女を縛り付けていた樹木を断っただけ。安堵のため息をつくハミィ。すると今度はメフィストの唸るような声が聞こえてきます。
メフィストは妻を抱え上げると城から飛び降ります。メロディとリズムも同時に窓口に駆け寄り外に身体を投げ出します。外壁伝いに走って降ります。カッコイイ。ビートもアコを抱えて階段を跳躍しながら下ります。ハミィは降りる途中で転んでしまいますが、スズの音符を見つけます。
落下しながらメフィストはハウリングに呼びかけます。このままアフロディテが死ねばお前も死ぬ。しかし出てくれば俺の正義のパンチをぶちこんでやる!と啖呵を切ります。熱いなこのおっさん。
ハウリングはアフロディテから出てきます。っていうか出てこられるのかよ。
意識を取り戻したアフロディテはメフィストを叩き、顔をいじりまわします。これでは意味がない。しかしメフィストに愛する妻にそんなことできるか!と真顔で言われて頬を赤らめます。女の顔です。
メフィストはハウリングに夫婦善哉アタックを敢行。ところがガスのような気体の身体のため攻撃が通じません。そのままメフィストは落ちていきます。夫を助けようとアフロディテも向かいます。鍵盤の橋を使っているので機動がカッコイイ。ハウリングに阻まれメフィスト共々コンサートホールへ落下。
④プリキュアと同じもの
そろそろ主役の出番。メロディ、リズム、ビートは目の前のハウリングを睨みます。アコにメフィスト達を任せてメロディのかけ声とともに一気にハウリング目がけて跳躍。その姿は決戦に赴く戦士というより仲の良い友達が遊びに行くような印象。彼女達を見るアコの表情もどこか驚きと羨ましさを感じさせます。これは一種の選択です。両親の元に行くか、仲間と共に行くか。
スーパーカルテットを撃ちます。本編で使われなくなって久しいのですが、これ凄く格好良くて可愛いので好きな技です。これもハウリングには通じません。反撃を加えてきます。
四拍子を取っていたアコは自分も戦う!と変身。拍子を取りながら自分の心に浮かぶ為すべきことを見出したのでしょう。チェストを持って城へやってきていたスズはアコがプリキュアに変身するところを目撃します。クレッシェンドトーンは彼女達がメイジャーランドを救う伝説の戦士プリキュアであることを伝えます。
プリキュアが4人揃い総攻撃。しかし実体の無いハウリングに技は通じず、音波攻撃で戦闘継続不可に。「頭の中が嫌な音でいっぱいになっちゃう…」ごめん、ちょっと興奮した。
スズを見つけたハミィはチェストを持っていることに気付いて飛びつきます。非難されるどころかお礼を言われたスズは本当のことを打ち明けようとしますがハミィは話しを聞かずに音符を差し出します。こういうときのハミィは良い方向に話しを進めます。もう済んだことです。
スズは音符を振ってプリキュアに声援を送ります。小さな光の球が現れます。クレッシェンドトーンは言います。あなたの想いは小さいものだけど、とても強く尊いもの。それはプリキュアと同じハーモニーパワー。
スズは父と母にも願いを込めて音符を握りしめます。すると父と母に願いが届き、彼らの光と共にプリキュアの元へ届けられます。
ミラクルライトタイム。映画の観客を巻き込んで声援がプリキュアへと届けられます。無数の光がハウリングを包み込んでいきます。厚い雲に覆われていた空からは太陽の日差しが伸び、人々は元の姿へと戻っていきます。コンサートホールではアフロディテ、メフィストもその様子を見て歓声をあげます。人々の心がメイジャーランドを再生させます。
⑤「諦めない」それは強く美しい心
声援を贈ってくれた人達にプリキュアはお礼を言います。みんなが応援してくれる限り私達は絶対に諦めない。
ハウリングは光の呪縛を破ると城に巻き付いていた骨と融合して実体化。ガーゴイル風。ハウリングの攻撃をメロディとリズムはお互いに蹴り合って回避。面白い動きです。しかしビートとミューズは巻き込まれ戦闘不能に。リズムも捕まってしまいます。
一人窮地に立たされるメロディ。リズムを放しなさい!と怒気を含んだ声で叫ぶとハウリング目がけて跳躍。が、ビームを浴びて地面に叩きつけられます。ボロボロになりながらも「諦めない」と立ち上がったメロディにもう一撃。
メロディは朦朧としながらも、リズムを助けないとこいつを倒せない、こいつを倒さないと音楽は守れないと前に進み出ます。ハウリングはリズムを掴んだ拳でそのままメロディを殴ります。一瞬の静寂。リズムの目の前で叩きつけられるメロディ。これ仰天しました。本気で殴りつけています。それを観客に明確に見せつけている。
メロディは倒れ、苦悶の声すらも聞こえてきません。リズムは倒れたメロディを前にして涙ながらに「響!!」と叫びます。余談ですが奏は泣かない人です。じっと堪えて耐える子。逆に響は素直に泣いてしまう子。これはテレビ本編の監督が明言しています。本編でも彼女は泣いたことがありません。DX3は本編外なので除外していいでしょう。
リズムの声とともに鼓動がメロディの中に生まれます。指がかすかに動きます。クレッシェンドトーンは語りかけます。まだあなたは立ち上がれる。どんな苦難を前にしても諦めない強い気持ち、確かに見届けた。あなたに大いなる力を授けましょう。この精霊はとんだ食わせ者です。メロディが倒れることは承知だったのでしょう。この精霊が見極めようとしていたのはメロディの覚悟、意思、絆の強さ。
プリキュアを超えたプリキュアになるのです、とクレッシェンドトーンはメロディに力を与えます。
再生したメロディはリズムを一瞬で救い出します。
「爪弾くは心の調べ! クレッシェンドキュアメロディ!」
お姫様を助ける王子様。もしくは新郎と新婦。
リズムはメロディが無事な姿を見てまた泣き出します。それを見たメロディもなんで泣いているのよ?と自分も泣き出してしまいます。彼女達は抱き合っておいおい泣き出します。語弊があるかもしれないけど女の子らしいシーンです。相手の身を慮って泣いて、相手の無事を知って泣いて、相手と一緒に泣く。それが彼女達の絆なんですね。共に泣ける相手がいるのはとても幸せな事なのだと思う。
ハウリングの攻撃をメロディは軽く弾きます。立ち上がり、ふたりでパッショナートハーモニー。メロディ側のト音記号が大きくなりますが繋いだ両手から力がほとばしって大きさが合います。これは絆の力。「クレッシェンド!」と叫んで撃ち込みます。
クレッシェンドキュアメロディは変身を解いて元のメロディに戻ると最後の決めはみんなで!と合図を送ります。うお、パワーアップフォームを捨てた!? スイート本気出してる。
「プリキュアスイートセッションアンサンブル!クレッシェンド!」
なんでもかんでもクレッシェンドって付ければいいってもんじゃねーだろ、というツッコミも乗せてハウリングを倒しメイジャーランドに平和が戻ります。
アコは両親に謝りながら人間界に戻ると言います。ノイズはもっと手強い相手、それに…と彼女はもっとみんなと一緒に居たい、4人で力を合せて戦いたいと話します。それを予想していたアフロディテとメフィストは笑顔で娘を送り出します。
⑥エピローグ
嬉しそうな奏太。またよろしくな、って感じでアコの肩を叩きます。朝ショック受けていたくせに現金なものです。
白猫と黒猫がじゃれて遊んでいるのを見つけて響はセイレーンに合図を送ります。たぶん似ていると言ったのでしょう。まんざらでもない様子のセイレーン。しかし頭の上で寝ていたハミィはヨダレを垂らしています。
スズは父と母と手を繋ぎ家に帰ります。メフィストは目から鼻から液体垂れ流しでアコを見送ります。アフロディテが彼に寄り添います。
メイジャーランドを揺るがした大事件はこうして幕を下ろします。
⑦EDダンス
「みんなー、映画楽しかった?」の呼びかけに「うん!」と答えた客席の声が印象的でした。ダンスをしようと呼びかけると「はい」とも。プリキュア4人のEDダンス。ミューズがやたら可愛くモデリングされています。さすが黄色あざとい。身体を必死に振り回して踊る子ども達の様子は見ていて微笑ましいです。子どもに愛されてこそのヒーロー・ヒロイン。プリキュアを映画館で見る楽しみの一つはこれです。
来年の3月にオールスターズが装いを新たにして公開。
○トピック
どんだけスイートは盛る気なんだよ、という意気込みを感じる映画。
本映画はこれまでのプリキュア映画と違いテレビ本編と連動しています。多少の齟齬はありますが、本編36話と37話の間のエピソードです。これは震災の影響でテレビのスケジュールがズレてしまい一から作り直してこの形にしたと梅澤プロデューサーのインタビューでも明らかになっています。
他映画のように外の国に行くわけでもなく登場人物もいつもの面子なので例年のような"お祭り"はしていませんが、本編の補足的内容となっており本作のメッセージ性を高める内容となっています。
この映画はタイトルのとおり心を繋いでメロディを奏でる物語になっています。親子の絆、人々の想い、プリキュアの絆、それらが繋がり合ってメイジャーランドを救うお話しです。このエピソードで提示しているのは絆の尊さ、繋がる喜び、心の不可侵性です。心と心が響合う様子を歌や音楽に喩えることで、それはあたかも合奏曲あるいは組曲のように異なる個性や関係が一つのメロディを奏でる。本作スイートのテーマ、プリキュアシリーズのテーマを拡張しながら深掘りしています。
下記では親子の絆、人々の想い、プリキュアの絆それぞれに分けて記述します。
①親子の絆
去年のハートキャッチ映画では疑似親子関係を描いていましたが、今回はよりストレートな形で家族愛を描いています。
本編36話にてメフィストは正気を取り戻しアコの父親として復帰しています。37話ではメイジャーに帰っています。上述したようにこの映画はその間のエピソードです。
この映画の大半はアコ、メフィスト、アフロディテの絆を取り戻すことに費やされています。見逃しやすいところなのですが、よくよく考えればアコの家庭は崩壊しています。メフィストは家を出て悪のボスをやっており、アコは母親とも離れて暮していました。メフィストが復帰したからといってすぐに家族の絆が戻るかと言えばそんなことはないでしょう。悪の呪縛が解けることと家族の絆や信頼が戻ることは別の話です。現にメフィストはアコを幼少時の認識で接しておりズレがあります。そこにスポットを当てて父子間、夫婦間、家族間の絆を再び繋いでいます。本編と映画を連続したものとして見ると、アコは家族愛を確信した上で仲間と絆を育んでいくステップへと進んでいます。
謎の覆面プリキュア、小学生プリキュアといった話題作りに終始せず父親と母親の断絶によって傷ついていた子どもの心を癒すとても真面目で真摯な作りです。スイートをアコの物語として捉えても十分耐える質を備えています。
アコとメフィストには時間の空白が出来てしまっているため双方に認識のズレができてしまっています。メフィストにとってアコはまだ小さい子ども、にも関わらずアコが好きな歌を覚えていない。これではアコは父親に不信感を持っても仕方ありません。あんなに自分が頑張って好きだと伝えたのに本当にパパは自分のことを知っているのか、愛してくれているのか。父に対して距離が出来てしまっている。それを挽回するようにアコの救出、アフロディテの救出までの話しはメフィストが主体となっています。
特に見事だったのは、彼が娘の一番好きな歌を当てようとして100回失敗している点です。普通に考えれば彼はダメな父親なのでしょう。でも、だからこそ彼の父親としての深い愛情、幾度となく間違い阻まれ痛みに耐えても娘に愛情を届けようとしたことを示しています。アコが父親を救うことを諦めなかったように、メフィストもまた娘を救うことを諦めませんでした。その姿にアコは自分が愛されていると気付くんですね。
それと共にひまわり畑のイメージを共通認識として父母子3人の家族の絆を確かめています。さらに夫婦間の関係も修復。これは当然の流れで、いくら父子間、母子間で仲が良くても夫婦仲が冷めていてはやはり子どもは辛い気持ちになってしまいます。
家族を求める子どもの気持ちを、親の深い愛情で叶える。親から子へのメッセージになっています。
②人々の想い(ハウリング前半戦)
心の音楽は奪えない。一人一人が想い抱けるもの。それを証明する戦いが一般人の石化解除にて描かれています。プリキュアは関与していません。
プリキュアの勝利を待つことなくハウリングの力を断ち切ってメイジャーランドと国民は元に戻っています。つまりこの世界はプリキュアが救うのではなく、一人一人の人間がその内に抱く力で救っていくもの、救えるものなのだということです。一人一人心があり、その心で苦難を乗り越えていける。心の音楽は誰もが持ち、自ら奏でて人の心を響かせられる。
アコとメフィストの想いがプリキュアに伝わり、プリキュアの想いが人々にも伝わっていく。人の想い、人への想い、人と共に在りたいと願う信頼や絆を「歌」「音楽」にたとえて表現しています。それは聴えるものであり、届けられるものであり、人に響き、一緒に奏でられるもの。そして決して奪われることがないもの。暴力によって支配されようと私達の心までは支配されないという明示です。
私は独り身ですがアコとメフィストの親子愛に共感を覚えますし、プリキュア達の絆に感動もする。それは人の共感能力の作用と言ってしまえばそれまでなのですが他者の姿や想いを感じ取って自分の糧にしていくのが人の有り様なのだと思います。人の歌(想い)が聴こえる。意思を共有して同じ志しを持つことが出来ます。
シリーズを重ねながらプリキュアと一般人(視聴者)の関係を緊密に、意味を持って描いています。プリキュアは確かに世界を救うけど、だからといって一般人が無力だということではありません。プリキュアの女の子も一般人も同じ人間で、同じ力を持っている。プリキュアシリーズが見せているのは人間の力や可能性です。
あなたにも力があるし、あなたの応援がプリキュアを助ける。一般人と視聴者を同期させてミラクルライトを使うのは恒例ですが、本作ではよりその効果や結びつきを強くしています。視聴者もまたプリキュアと一緒に戦っている。プリキュアから視聴者へ、視聴者からプリキュアへのメッセージを共有することで連帯を生み出しています。
③プリキュアの絆(ハウリング後半戦)
クレッシェンドトーンはメロディの意思を見届け、彼女にその意思を実現できる力を与えています。ではその意思とは何か。
メロディとリズムが抱き合って泣き合うシーンがとても印象的でした。プリキュアの力とは人智を越えた力や圧倒的な戦闘力ではなく、人と一緒に泣いてしまうような優しさ、人のために頑張れる力。ミラクルライトを振ってくれた観客に答えたとおり彼女達は人の想いに応える人々なんですね。
過去シリーズの映画ではシャイニングドリームやキュアエンジェルなど主人公格のプリキュアがパワーアップして敵を倒すか浄化していましたが、スイートは明確に違うことをしています。ここがスイートのスイートたるところ。メロディはリズムと共にパッショナートハーモニーを使います。偏っていた力がふたりの力で完全な形へと変わるのは心の繋がりをテーマとして描いてきた本作の象徴です。ハーモニーパワーこそがスイートプリキュアの力。独奏ではなく合奏。メロディはそれを選んだのです。そして2人から始まった組曲は今や4人の組曲。映画のクライマックスを飾るパワーアップを捨ててでも物語のテーマを明確にした判断に恐れ入ります。本作もプリキュアの名に恥じない真っ直ぐな作品です。
アコとメフィスト、アフロディテが心を通い合わせたように、メイジャーランドの人々が心の音楽をプリキュアに届けたように、プリキュアもまた心を繋いでいくことで困難を乗り越えています。様々な個性、関係、想いが伝わり響き合いながら一つのメロディを形作る。それは人を幸せへと導く音楽と云えるでしょう。心と心を繋ぐことに心血を注いで来た本作の集大成です。心を繋いでこそのプリキュア。「ふたりで手を繋いで変身する」そこから始まったプリキュアシリーズの絆のテーマが拡張・昇華されています。人には心が在り、その心は他者と繋がり合うことができる。その繋がり、絆は力であり幸せを生み出す源泉となる。
震災を乗り越えてこの物語を仕上げたスタッフに心から敬意を表したい。人間万事塞翁が馬。
④物語は再びテレビ本編へ(結びにかえて)
心の音楽は誰にも奪えない。心の歌が聴こえる。「音楽」や「歌」に託されているのは自由意思や心の繋がりです。取り戻すのではなくそれは最初から持っているものであなたの気持ち次第なのだ、というメッセージは本作の骨子になっています。
響達は友情を壊してしまったけど再び結んでいます。それは取り戻したものではなくお互いに自らの意思で再び繋がり合ったものです。一度離れた心を繋ぐということは過去を取り戻すことではなく現在を繋ぐことなのです。過去に戻るなんてことはできっこない。過去の誤りも断絶もケンカも許容し今のあなたを信じる。だからこそ今繋がれる。それはとても難しいことで勇気がいる。でもとても尊いことでその繋がりは過去の繋がりよりも強く心を結びつける力があるのだと思います。
響、奏、セイレーン、アコにはそれぞれ内に秘めた苦悩や孤独がありました。彼女達は心に悩みを抱えながらも相手に向き合うことで苦難を乗越えています。時にケンカをして、時に謝り、時に愛を拳に込めて。
ある意味で本作は群像劇です。響奏、セイレーン、アコは別個の問題を扱っています。ですが彼女達は「心の繋がり」という問題で一致しています。孤独と連帯、疑心と信頼の間で揺らぎながら人の愛情を求めていました。彼女達は心を繋げていく中で強く美しく成長しています。物語当初、響は不安を抱えていましたが今ではその面影はありません。彼女の素直さ、誠実さは思い遣りと強さへと変わっています。心の繋がりが人を成長させることも本作の重要なメッセージでしょう。
その彼女達が立ち向かうのがノイズです。ノイズとの戦いはスイートの最後の舞台に相応しい相手になるでしょう。絶対に許せない相手がいる一方で、彼女達は互いに相手を許し合ってきました。相手を知ろうとすることで心の繋がりができる。彼女達はノイズとどう向き合うのでしょうか。
幸せと不幸を繰り返し奏でてきた本作もそろそろ終幕が近づいてきました。この物語が全ての人々を幸せにするメロディを弾くことができるのか、それが試されようとしています。
①前説
今年はミラクルライトの説明があります。ハミィとトーン達が楽しく説明。ドドリーが身体をはって注意を促します。
はじまり~はじまり~。
②お巡りさんこいつです
朝。奏の部屋。奏の寝顔。映画冒頭から私の心を鷲づかみです。
コンコン、と窓を叩く音。カーテン越しに人影。奏はどうせ響だろうと見当をつけ、身体を起こして窓の方へ向かいます。不審者かもしれないという発想よりも先に響だと思うのが凄い。普段から朝早く会っているの?
カーテンを開けると、髭もじゃのスーツを着たおっさんが笑顔を向けています。
奏「………!!」
堂々と正面から行くとは……俺、メフィストさんのこと見直しました。妻子持ちで女子中学生の部屋に特攻とか熱すぎる。
奏が驚いて悲鳴を上げると同時にOP曲。
姉の悲鳴を聞きつけた奏太はバットを持って姉の部屋へ。幼いながら頼りになる少年です。警察を呼びます。パパさんは泣きながら奏を抱き寄せています。あっと言う間に大量のパトカーがおしよせてきます。メフィストをそのまま連行。
至急電話で連絡。音吉さん、セイレーン、アコはすぐに交番へ向かいます。自転車に乗っていた音吉さんは坂道にあらがえず後退。パトカーを見ていた響は奏の家へ。みんな合流して交番へ。
おそらく尺がないための苦肉の策かとは思いますが、セリフが一切なくてもストーリーの進行が分るのは親切です。
交番で事情聴取。メフィストはマイナーランド云々とそのまま答えます。隣に座ったアコがその都度訂正します。9歳で「政治」や「司る」と言えるのは大したものです。その様子を響達は外から伺います。どうやらメフィストは奏太に会いに来たらしく間違えて奏の部屋を訪れたようです。どちらにせよ、玄関から来い。
事情聴取していたお巡りさんは娘さんの方がしっかりしていると呆れます。お馬鹿な父親としっかり者の娘という構図がここで完成。この関係はこの映画のキーになっています。
遅れてやってきた音吉さんが自転車で交番に突入。婿殿がご面倒を、と陳謝します。音吉さんの顔はお巡りさんにも知れているらしく納得して貰えます。
場所を公園に移して、メフィストは改めて奏太に挨拶します。急な話しだけどメイジャーランドに帰ることになったと言います。
また余計なことを言って話しがややこしくなりだしたのでアコは父親を押しのけます。
奏太はアコが故郷に帰ってしまうと聞いて驚き寂しがります。しかしアコは両親と一緒に暮らせることの方が嬉しくてあまり寂しがってはいません。その様子に奏太は腹を立てます。純粋に寂しいのでしょう。ちょっとでもいいからそこで寂しがってくれれば奏太の心も慰められたのに。
メフィストは離れて見ていた響達の近くに腰を下ろします。娘に信用されていないと落込みます。近くで演奏していた父親と幼い娘が楽しそうに会話しているのを見て、アコは知らぬ間に難しい年頃になったとため息を溢します。映画館に来ているお父さん達の言葉を代弁するかのようなポジション。悪の親玉やっていたというのは一つの例えで、これが単身赴任していて数年ぶりに会ったとか、普段接することが少なくて気付けば昔の頃のような関係ではなくなっていたということでもいいでしょう。
奏太が声を荒げます。彼は苛立ってアコから去っていきます。こちらも難しい年頃。
セイレーンは奏太の心情を汲みつつも、姫様はメイジャーランドの跡継ぎなので人間界にずっと居られないと言います。すると響は本当に今まで姫様だと気付かなかったの?と訪ねます。眼鏡をかけていなかったしあんな格好ではただの生意気な小娘……などと言っているところをアコに見咎められます。国に帰ったら不敬罪でしょっぴかれそうです。アコは姫様はやめてと言います。響達も同じプリキュアなんだし、とアコのセリフに頷きます。
ところがアコはプリキュアを続けずに国に帰ると言います。自分がプリキュアをやっていたのは父親を助けるため。自分のために尽力してくれた娘に感激したメフィストはアコの身体を持ち上げて喜びます。みんなが見ているとアコは恥ずかしがります。セイレーンが言うように微笑ましい。
定時になったので時計台の音楽隊が曲を奏でます。すると突然不快な音が響き渡ります。それが止むと今度は公園から音楽が消えてしまいます。楽器を鳴らしてもいっこうに音がでません。メフィストがメイジャーランドの映像を出すとすぐに映像はかき消され、何やら不気味なマークが地面に残ります。
メイジャーランドでおかしなことが起こっていて、それが人間界にも影響していると推測する音吉さん。一同はメイジャーランドへ向かいます。
③メイジャーランド
メイジャーランドへの橋を滑空。みんなスカートなのでいいアングルです。セイレーンは国王とお姫様のお供ということで町娘の格好をセレクト。当然、この知識は音吉さんの本から。知識の仕入れ先がどうのというよりこの子は何かになりきったりするのが好きなのかもしれない。ところで衣装や小道具は誰持ちなんですかね?
アコは不安が隠せないのか袖を握る力を強めます。それを感じたメフィストはアコの手を握ります。握られたアコはちょっと戸惑いながらも父にはにかみます。それを見たメフィストもぎこちなく答えます。中学生の恋愛かよってくらい初々しいシーンです。
メイジャーランドが見えてきます。なんかもうはっきりと悪の力に乗っ取られています的な雰囲気。急ごうと城の付近に橋を延ばすとハウリング音がして橋がくずれてしまいます。
メフィストはアコの手を放さずしっかりと守ります。しかしその上から響達がどっすん。かろうじてアコを掴み上げるも女子中学生3人+ネコの下敷きに。我々の業界ではご褒美です。背中に感じる暖かくて柔らかい温もりのためならどんな痛みにも耐えよう。
城下の様子もお城同様ただならぬ雰囲気。マイナーランドにあったようなキノコがそこら中に生えています。人の声もなく、ベンチに座っている人も石のように固まり音の鳴らないアコーディオンを弾き続けています。呼びかけに答えません。
物音に気付いた女の子が声をかけてきます。その顔を見てアコはスズ、と呼びます。友達らしい。響は奏太以外の友達が居たんだ、と驚きます。無事な人が居たとかじゃなくそこかよ。
アコを警戒するスズ。アコは話しかけながらスズが首にかけていた音符のペンダントと同じものをポケットから出して見せます。するとスズはそれを叩き落としてしまいます。メイジャーランドから音楽がなくなったのはアフロディテ様のせいだと言います。アコはショックを受けつつもにわかには信じられません。彼女の様子を見てスズは私を信じてくれないのね、と言い残してどこかに行ってしまいます。
真偽を確かめようとメフィストはすぐさまお城へと向かいます。アコは母のところへ行くべきか、スズを追うべきか迷います。すると響が彼女の肩を掴んで母のもとへ行くように言います。奏も落ちた音符を拾ってアコに持たせて響の言葉に賛同します。
一旦二手に分かれて行動。ここで物語はアコに友達より母親との関係を優先させています。後述するようにスズにとってもこれはアコとの問題ではなく、両親と引き裂かれたことによるものとして話しを進めています。
スズを追って響達はコンサートホールに辿り付きます。スズはそこで両親にすがって泣いています。ただ音楽を奪うだけでなく人を自動機械のように変えてしまった邪悪な力に響は憤り、独り残されたスズの心情を慮ります。
スズにもう一度事情を尋ねます。アフロディテが音楽を消すと宣言して言葉通りになったと話します。ハミィがアフロディテ様はそんなことしない!と泣きじゃくるとクレッシェンドトーンはスズが言っていることは本当だと言います。
響達はスズを家に送り届けることにします。
玉座に腰掛けたアフロディテはクレッシェンドトーンの気配を感じ取ります。音の無い世界にした今、クレッシェンドトーンを手に出来れば完全制覇。目の前でかしずくメイジャー3に奪取を命じます。
アコとメフィストは2人でお城へ向かいます。母を心配するアコの不安を紛らわそうとメフィストは歌を唄おうと言います。しかしアコは唄いたくないとにべもない。子どもの頃はよく歌をせがんでいたと言うメフィストにアコは何故自分が歌を唄いたくないのか判らない?と尋ねます。答えられない父を見て、じゃあ私が一番好きな歌を憶えているかと質問を変えます。もちろんと答える父に唄ってみてと頼みます。ギクリとするメフィスト。やはり憶えていないらしい。
とりあえず適当なものを唄おうとすると出だしでハウリング音の妨害が入り中断されます。アコは父が憶えていなかったことに失望して、ママが心配ではないのかと責めるように言って先に行こうとします。それを追うメフィストは柱に顔をぶつけてしまいます。
アコは、自分はパパより強くなったし早く走れるようになったと父を置いて先に行ってしまいます。頼りない父を見て失望感いっぱいです。
メフィストは父親とはなんと難しいものだ、これなら悪のボスをやっていた頃の方が楽だったとため息を溢します。
普段なら音楽で絶えない森の道も今は静寂に包まれています。スズはアコに嫌われてしまった、もう友達ではいられないだろうと食いやみます。響は大丈夫だと励ましますが、自分の両親をあんな風にしてしまったアフロディテへの怒りの感情も大きく板挟みの状態。
スズが悩むのを見て奏は少し一人にしてやろうと距離を取ります。この問題はスズとアコの問題ではなく、音楽が消えたことに起因していると言います。後々の展開も含めてここで一旦整理しておくと、この映画はアコとスズの友情の物語ではありません。その要素は限定的で重要性が低い。アコとスズとの和解シーンが無いのもそのためでしょう。とはいえ一度手放した音符を再び手元に置いているし、アフロディテの誤解も解けるので関係は改善されるはずです。まあ、アコは加音町に行っちゃうんですが。
チェストを背負って歩いていたハミィは疲れて座り込みます。肩からチェストを外して一休み。スズはこの中にクレッシェンドトーンが居るのかと尋ねます。首肯するハミィ。トーン達が早く来ないとカップケーキ食べさせないぞと脅かすとハミィはチェストを置いて先に進んでしまいます。スズの目の前にチェストが残されます。
母と再会。アコは内心の不安を消そうと、何事もなかったと期待するように母に返事を求めます。しかしアフロディテは何も答えず、虚ろな瞳はアコを捉える事もありません。
「ママ!私を見て!」叫ぶように母を呼ぶアコの頭上から樹木が伸びるとアコを包み込み封じ込んでしまいます。ガラスの球体の中で苦しむ娘を見て、メフィストはアフロディテに語気荒く詰問します。彼の問いにも答えずアフロディテの瞳は虚空を見続ける。
スズとはぐれてしまった響と奏は口論し始めます。セイレーンが止めに入りスズを探します。すると見知らぬ男性3人が声をかけてきます。ナチュラル、シャープ、フラット。妙なポーズと気取った声でメイジャー3と名乗ります。メイジャーランド初のアイドルらしい。
あまりに怪しいのでスルーする響達。あからさまに怪しい。奏はちょっとカッコイイけど怪しいと言います。カッコイイ人には反応するらしい。なるほど、響もカッコイイしね。
メイジャー3は彼女達を呼び止め、響の手を無理矢理掴んで向き直らせると響をキュアメロディと呼び、アフロディテの使いでクレッシェンドトーンを預かりに来たと言います
アコを包んでいるのは音楽を遮断する結界のようなものらしく、メフィストはアコが一番好きな歌を唄えばいいと判断します。あて推量で唄う上にハウリング音の妨害があるので難航。
響達はメイジャー3の言葉を信用せず直接アフロディテ様に渡すと言い返します。彼らを警戒した響はハミィにチェストを守ってと頼みます。そこでようやくハミィは自分がチェストをなくしたことに気付いてその場から離れます。ハミィを追おうとするメイジャー3を響達が阻みます。「どちらへ?」すげぇ強そう。ネガトーンを召喚。響達も変身。
ネガトーンを囮にしてメイジャー3はハミィを追跡。
ネガトーンは特殊な弾丸を発射します。ビートの腰に巻きつき固まります。メロディとリズムも両腕に巻き付いて固定されてしまいます。地味に面倒くさい攻撃です。
行動にほとんど制約がないビートはネガトーンに攻撃をしかけます。一方両手がふさがれた上に密着状態のメロディとリズムはそれどころではありません。メロディはベルティエを出そうとしますが幅が取れないので「痛てて」と召喚できません。あ、そういうものなんだ。これではリズムも不可能。するとメロディは自分の右手とリズムの左手を合わせたらクロスロッドが出るのではないかと思いつきます。え、どうだろう?とリズムも興味を持ちます。実際にやってみますがやっぱり幅が取れないのでふたりで痛がります。何してるんだ君達は。実際これでクロスロッドが出たら面白い。本編でやらないかな。
ふたりのコントに呆れるビート。ハミィが心配なのでネガトーンをふたりに任せて先に行ってしまいます。
ハミィはチェストを探して全力疾走。何かにぶつかって止ると目の前に箱のような物が落ちています。チェストを見つけたと駆け寄るとそれがただの箱だと気付きます。状況は悪化の一途。
メイジャー3に肉薄したビートは彼らに攻撃を仕掛けます。しかし多勢に無勢。
メフィストの単独のど自慢大会は終わりが見えません。
ハミィはもしかしたら形を変えたのでは…?と中を覗きます。やっぱりただの箱でハミィは愕然とします。そこにメイジャー3がやってきます。
チェストを渡せと要求するメイジャー3に戦々恐々のハミィ。ビートが駆けつけます。ハミィはチェストをなくして気が動転しているため泣きじゃくりながら説明します。何を言っているのかさっぱり判りません。ビートはイジメられたと思ったのか、いたいけな子猫をいたぶるなんて人でなし!とメイジャー3を責めます。普段そういうシーン無いけどやっぱりセイレーンはハミィのこと好きなんだな。
ビートはハミィと同じようにチェストが違うことに気付き、でも形を変えたのでは?と中をのぞき込みます。ハミィと同類です。中にスズの音符が入っていることに気付きます。
メイジャー3はビートから箱を奪うと撤退。チェストを知らないので勘違いしたようです。ビートは独り言のように探しても居ないわけだ、と呟きます。
一方、ネガトーンを押しつけられたメロディとリズムは反撃に出ます。衝撃で腕を固定していた金属が砕けます。これ幸いとベルティエを召喚してアルペジオとピアチェーレで撃退。
メイジャー3はアフロディテにチェスト(偽)を献上するも突き返されてしまいます。箱は砕け音符は階下に落ちていきます。もう一度チャンスを!と許しを請うメイジャー3にアフロディテは待っていればプリキュアは来る。迎い撃てと命じます。
彼らの隣ではメフィストは未だに悪戦苦闘中。100回目。失敗が続きます。彼はアコに情けない親だと謝ります。しかしパパはアコの傍にいる。せめて心で聴いてくれ、と彼は心の中で唄います。抽象的ですがこれは表象的な形や行為にとらわれない愛情を示しています。彼は父として娘への愛情を失わない。そして諦めない。
④心の歌
スズはコンサートホールに戻ると、クレッシェンドトーンに音楽を戻してとお願いします。クレッシェンドトーンは音楽がなくなった世界、本当にそうでしょうか? まだ音楽に希望を繋ぐ人達が残っていると答えます。伝説の戦士プリキュア。そしてスズにあなたにも為すべきことがあるはずだと告げます。
プリキュアは城内へ突入。メイジャー3が待ち受けます。これは予想済み。ダミー投げて気を引きます。ビートが持っているのが風呂敷ってのが芸が細かい。それぞれバラバラになって進むプリキュア。
リズムを追って青い化け物になったナチュラルが肉薄。指に水かきが見えます。デザイン的に西遊記の沙悟浄(河童)をモチーフにしているかもしれません。電撃をリズムに浴びせます。
ビートはイノシシ(豚?)の化け物になったフラットを相手にします。ボール型の攻撃をはね除けるも、本体の防御が堅牢で通じません。巨体を活かした攻撃に苦戦します。
猿のような化け物になったシャープが炎を飛ばしてメロディを狙います。メロディの動きがカッコイイ。しかし彼女も劣勢に立たされます。
父の想いが届いたアコは父を見つめます。自分が一番好きな歌を憶えていてくれた。幼い頃にひまわり畑で肩車された記憶。父との思い出。家族共通の深い思い出なのでしょう。響と奏にとって親友のイメージが小学生の頃だったように、アコ達の家族愛の原型はこのひまわり畑の頃のイメージなのでしょう。離れていても、悪のボスをやっていたときでもずっと大好きだったと心の中で話すアコ。父と娘はガラスを隔てて手を合わせ見つめ合います。
父と娘は共に心の中で歌を唄います。
スズはアコの歌に気付きます。
クレッシェンドトーンはスズに語りかけます。音楽とは人の心の奥から生まれるもの。取り戻すのではない。どんな敵が攻めてこようと想い続ける限り決して奪われることはないのだと。スズの両親、コンサートホールの人々は涙を溢しています。
ピンチに陥っていたプリキュア達にもアコとメフィストの唄が聴えてきます。立ち上がったメロディにシャープは諦めたんじゃなかったのか?と問いかけます。「仲間の歌を聴いていたのよ」と毅然と答えるメロディ。
聴えないものが聴えるようになったのかと嘲笑するメイジャー3。しかしプリキュアは力強く確信をもって目の前の敵に挑みます。歌が彼女達を繋ぐ。その歌は心の中にある。人の絆。一人だけど一人じゃない。スイートの真価は離れていても繋がり合っているという確信。自分と共に居てくれる、戦ってくれる、呼びかけてくれる人がいるという信頼に基づいた力です。
アコは父に打ち明けます。何故唄いたくなかったのか。それは家族の記憶だから。ひまわり畑には母も居ました。家族が一緒になって唄われた歌なのに今は欠けてしまっている。それを思い起こすのが辛かったと言います。またパパとママ3人で唄いたいと願うアコ。
アフロディテの瞳から涙がこぼれ落ちます。
プリキュアはメイジャー3を倒します。
アコを閉じ込めていた容器が砕け散ります。抱き合い、母の声が聞えたと喜ぶアコとメフィスト。
アフロディテは自分にも歌が届いたと心で呼びかけます。ハウリングがメイジャーランドに襲いかかってきたこと、自分が彼を封じ込めたこと、そして自分の命を絶てばハウリングの命も絶たれるとメフィストに託します。
メフィストが彼女に触れると袖口からひまわりの種が落ち、剣へと姿を変えます。アフロディテの覚悟。メフィストは剣を持ちます。後ろで見ていたアコの瞳は困惑と驚きに染まります。一閃。
プリキュアが駆けつけると同時にメフィストの剣は振り下ろされます。アフロディテを傷つけることなく彼女を縛り付けていた樹木を断っただけ。安堵のため息をつくハミィ。すると今度はメフィストの唸るような声が聞こえてきます。
メフィストは妻を抱え上げると城から飛び降ります。メロディとリズムも同時に窓口に駆け寄り外に身体を投げ出します。外壁伝いに走って降ります。カッコイイ。ビートもアコを抱えて階段を跳躍しながら下ります。ハミィは降りる途中で転んでしまいますが、スズの音符を見つけます。
落下しながらメフィストはハウリングに呼びかけます。このままアフロディテが死ねばお前も死ぬ。しかし出てくれば俺の正義のパンチをぶちこんでやる!と啖呵を切ります。熱いなこのおっさん。
ハウリングはアフロディテから出てきます。っていうか出てこられるのかよ。
意識を取り戻したアフロディテはメフィストを叩き、顔をいじりまわします。これでは意味がない。しかしメフィストに愛する妻にそんなことできるか!と真顔で言われて頬を赤らめます。女の顔です。
メフィストはハウリングに夫婦善哉アタックを敢行。ところがガスのような気体の身体のため攻撃が通じません。そのままメフィストは落ちていきます。夫を助けようとアフロディテも向かいます。鍵盤の橋を使っているので機動がカッコイイ。ハウリングに阻まれメフィスト共々コンサートホールへ落下。
④プリキュアと同じもの
そろそろ主役の出番。メロディ、リズム、ビートは目の前のハウリングを睨みます。アコにメフィスト達を任せてメロディのかけ声とともに一気にハウリング目がけて跳躍。その姿は決戦に赴く戦士というより仲の良い友達が遊びに行くような印象。彼女達を見るアコの表情もどこか驚きと羨ましさを感じさせます。これは一種の選択です。両親の元に行くか、仲間と共に行くか。
スーパーカルテットを撃ちます。本編で使われなくなって久しいのですが、これ凄く格好良くて可愛いので好きな技です。これもハウリングには通じません。反撃を加えてきます。
四拍子を取っていたアコは自分も戦う!と変身。拍子を取りながら自分の心に浮かぶ為すべきことを見出したのでしょう。チェストを持って城へやってきていたスズはアコがプリキュアに変身するところを目撃します。クレッシェンドトーンは彼女達がメイジャーランドを救う伝説の戦士プリキュアであることを伝えます。
プリキュアが4人揃い総攻撃。しかし実体の無いハウリングに技は通じず、音波攻撃で戦闘継続不可に。「頭の中が嫌な音でいっぱいになっちゃう…」ごめん、ちょっと興奮した。
スズを見つけたハミィはチェストを持っていることに気付いて飛びつきます。非難されるどころかお礼を言われたスズは本当のことを打ち明けようとしますがハミィは話しを聞かずに音符を差し出します。こういうときのハミィは良い方向に話しを進めます。もう済んだことです。
スズは音符を振ってプリキュアに声援を送ります。小さな光の球が現れます。クレッシェンドトーンは言います。あなたの想いは小さいものだけど、とても強く尊いもの。それはプリキュアと同じハーモニーパワー。
スズは父と母にも願いを込めて音符を握りしめます。すると父と母に願いが届き、彼らの光と共にプリキュアの元へ届けられます。
ミラクルライトタイム。映画の観客を巻き込んで声援がプリキュアへと届けられます。無数の光がハウリングを包み込んでいきます。厚い雲に覆われていた空からは太陽の日差しが伸び、人々は元の姿へと戻っていきます。コンサートホールではアフロディテ、メフィストもその様子を見て歓声をあげます。人々の心がメイジャーランドを再生させます。
⑤「諦めない」それは強く美しい心
声援を贈ってくれた人達にプリキュアはお礼を言います。みんなが応援してくれる限り私達は絶対に諦めない。
ハウリングは光の呪縛を破ると城に巻き付いていた骨と融合して実体化。ガーゴイル風。ハウリングの攻撃をメロディとリズムはお互いに蹴り合って回避。面白い動きです。しかしビートとミューズは巻き込まれ戦闘不能に。リズムも捕まってしまいます。
一人窮地に立たされるメロディ。リズムを放しなさい!と怒気を含んだ声で叫ぶとハウリング目がけて跳躍。が、ビームを浴びて地面に叩きつけられます。ボロボロになりながらも「諦めない」と立ち上がったメロディにもう一撃。
メロディは朦朧としながらも、リズムを助けないとこいつを倒せない、こいつを倒さないと音楽は守れないと前に進み出ます。ハウリングはリズムを掴んだ拳でそのままメロディを殴ります。一瞬の静寂。リズムの目の前で叩きつけられるメロディ。これ仰天しました。本気で殴りつけています。それを観客に明確に見せつけている。
メロディは倒れ、苦悶の声すらも聞こえてきません。リズムは倒れたメロディを前にして涙ながらに「響!!」と叫びます。余談ですが奏は泣かない人です。じっと堪えて耐える子。逆に響は素直に泣いてしまう子。これはテレビ本編の監督が明言しています。本編でも彼女は泣いたことがありません。DX3は本編外なので除外していいでしょう。
リズムの声とともに鼓動がメロディの中に生まれます。指がかすかに動きます。クレッシェンドトーンは語りかけます。まだあなたは立ち上がれる。どんな苦難を前にしても諦めない強い気持ち、確かに見届けた。あなたに大いなる力を授けましょう。この精霊はとんだ食わせ者です。メロディが倒れることは承知だったのでしょう。この精霊が見極めようとしていたのはメロディの覚悟、意思、絆の強さ。
プリキュアを超えたプリキュアになるのです、とクレッシェンドトーンはメロディに力を与えます。
再生したメロディはリズムを一瞬で救い出します。
「爪弾くは心の調べ! クレッシェンドキュアメロディ!」
お姫様を助ける王子様。もしくは新郎と新婦。
リズムはメロディが無事な姿を見てまた泣き出します。それを見たメロディもなんで泣いているのよ?と自分も泣き出してしまいます。彼女達は抱き合っておいおい泣き出します。語弊があるかもしれないけど女の子らしいシーンです。相手の身を慮って泣いて、相手の無事を知って泣いて、相手と一緒に泣く。それが彼女達の絆なんですね。共に泣ける相手がいるのはとても幸せな事なのだと思う。
ハウリングの攻撃をメロディは軽く弾きます。立ち上がり、ふたりでパッショナートハーモニー。メロディ側のト音記号が大きくなりますが繋いだ両手から力がほとばしって大きさが合います。これは絆の力。「クレッシェンド!」と叫んで撃ち込みます。
クレッシェンドキュアメロディは変身を解いて元のメロディに戻ると最後の決めはみんなで!と合図を送ります。うお、パワーアップフォームを捨てた!? スイート本気出してる。
「プリキュアスイートセッションアンサンブル!クレッシェンド!」
なんでもかんでもクレッシェンドって付ければいいってもんじゃねーだろ、というツッコミも乗せてハウリングを倒しメイジャーランドに平和が戻ります。
アコは両親に謝りながら人間界に戻ると言います。ノイズはもっと手強い相手、それに…と彼女はもっとみんなと一緒に居たい、4人で力を合せて戦いたいと話します。それを予想していたアフロディテとメフィストは笑顔で娘を送り出します。
⑥エピローグ
嬉しそうな奏太。またよろしくな、って感じでアコの肩を叩きます。朝ショック受けていたくせに現金なものです。
白猫と黒猫がじゃれて遊んでいるのを見つけて響はセイレーンに合図を送ります。たぶん似ていると言ったのでしょう。まんざらでもない様子のセイレーン。しかし頭の上で寝ていたハミィはヨダレを垂らしています。
スズは父と母と手を繋ぎ家に帰ります。メフィストは目から鼻から液体垂れ流しでアコを見送ります。アフロディテが彼に寄り添います。
メイジャーランドを揺るがした大事件はこうして幕を下ろします。
⑦EDダンス
「みんなー、映画楽しかった?」の呼びかけに「うん!」と答えた客席の声が印象的でした。ダンスをしようと呼びかけると「はい」とも。プリキュア4人のEDダンス。ミューズがやたら可愛くモデリングされています。さすが黄色あざとい。身体を必死に振り回して踊る子ども達の様子は見ていて微笑ましいです。子どもに愛されてこそのヒーロー・ヒロイン。プリキュアを映画館で見る楽しみの一つはこれです。
来年の3月にオールスターズが装いを新たにして公開。
○トピック
どんだけスイートは盛る気なんだよ、という意気込みを感じる映画。
本映画はこれまでのプリキュア映画と違いテレビ本編と連動しています。多少の齟齬はありますが、本編36話と37話の間のエピソードです。これは震災の影響でテレビのスケジュールがズレてしまい一から作り直してこの形にしたと梅澤プロデューサーのインタビューでも明らかになっています。
他映画のように外の国に行くわけでもなく登場人物もいつもの面子なので例年のような"お祭り"はしていませんが、本編の補足的内容となっており本作のメッセージ性を高める内容となっています。
この映画はタイトルのとおり心を繋いでメロディを奏でる物語になっています。親子の絆、人々の想い、プリキュアの絆、それらが繋がり合ってメイジャーランドを救うお話しです。このエピソードで提示しているのは絆の尊さ、繋がる喜び、心の不可侵性です。心と心が響合う様子を歌や音楽に喩えることで、それはあたかも合奏曲あるいは組曲のように異なる個性や関係が一つのメロディを奏でる。本作スイートのテーマ、プリキュアシリーズのテーマを拡張しながら深掘りしています。
下記では親子の絆、人々の想い、プリキュアの絆それぞれに分けて記述します。
①親子の絆
去年のハートキャッチ映画では疑似親子関係を描いていましたが、今回はよりストレートな形で家族愛を描いています。
本編36話にてメフィストは正気を取り戻しアコの父親として復帰しています。37話ではメイジャーに帰っています。上述したようにこの映画はその間のエピソードです。
この映画の大半はアコ、メフィスト、アフロディテの絆を取り戻すことに費やされています。見逃しやすいところなのですが、よくよく考えればアコの家庭は崩壊しています。メフィストは家を出て悪のボスをやっており、アコは母親とも離れて暮していました。メフィストが復帰したからといってすぐに家族の絆が戻るかと言えばそんなことはないでしょう。悪の呪縛が解けることと家族の絆や信頼が戻ることは別の話です。現にメフィストはアコを幼少時の認識で接しておりズレがあります。そこにスポットを当てて父子間、夫婦間、家族間の絆を再び繋いでいます。本編と映画を連続したものとして見ると、アコは家族愛を確信した上で仲間と絆を育んでいくステップへと進んでいます。
謎の覆面プリキュア、小学生プリキュアといった話題作りに終始せず父親と母親の断絶によって傷ついていた子どもの心を癒すとても真面目で真摯な作りです。スイートをアコの物語として捉えても十分耐える質を備えています。
アコとメフィストには時間の空白が出来てしまっているため双方に認識のズレができてしまっています。メフィストにとってアコはまだ小さい子ども、にも関わらずアコが好きな歌を覚えていない。これではアコは父親に不信感を持っても仕方ありません。あんなに自分が頑張って好きだと伝えたのに本当にパパは自分のことを知っているのか、愛してくれているのか。父に対して距離が出来てしまっている。それを挽回するようにアコの救出、アフロディテの救出までの話しはメフィストが主体となっています。
特に見事だったのは、彼が娘の一番好きな歌を当てようとして100回失敗している点です。普通に考えれば彼はダメな父親なのでしょう。でも、だからこそ彼の父親としての深い愛情、幾度となく間違い阻まれ痛みに耐えても娘に愛情を届けようとしたことを示しています。アコが父親を救うことを諦めなかったように、メフィストもまた娘を救うことを諦めませんでした。その姿にアコは自分が愛されていると気付くんですね。
それと共にひまわり畑のイメージを共通認識として父母子3人の家族の絆を確かめています。さらに夫婦間の関係も修復。これは当然の流れで、いくら父子間、母子間で仲が良くても夫婦仲が冷めていてはやはり子どもは辛い気持ちになってしまいます。
家族を求める子どもの気持ちを、親の深い愛情で叶える。親から子へのメッセージになっています。
②人々の想い(ハウリング前半戦)
心の音楽は奪えない。一人一人が想い抱けるもの。それを証明する戦いが一般人の石化解除にて描かれています。プリキュアは関与していません。
プリキュアの勝利を待つことなくハウリングの力を断ち切ってメイジャーランドと国民は元に戻っています。つまりこの世界はプリキュアが救うのではなく、一人一人の人間がその内に抱く力で救っていくもの、救えるものなのだということです。一人一人心があり、その心で苦難を乗り越えていける。心の音楽は誰もが持ち、自ら奏でて人の心を響かせられる。
アコとメフィストの想いがプリキュアに伝わり、プリキュアの想いが人々にも伝わっていく。人の想い、人への想い、人と共に在りたいと願う信頼や絆を「歌」「音楽」にたとえて表現しています。それは聴えるものであり、届けられるものであり、人に響き、一緒に奏でられるもの。そして決して奪われることがないもの。暴力によって支配されようと私達の心までは支配されないという明示です。
私は独り身ですがアコとメフィストの親子愛に共感を覚えますし、プリキュア達の絆に感動もする。それは人の共感能力の作用と言ってしまえばそれまでなのですが他者の姿や想いを感じ取って自分の糧にしていくのが人の有り様なのだと思います。人の歌(想い)が聴こえる。意思を共有して同じ志しを持つことが出来ます。
シリーズを重ねながらプリキュアと一般人(視聴者)の関係を緊密に、意味を持って描いています。プリキュアは確かに世界を救うけど、だからといって一般人が無力だということではありません。プリキュアの女の子も一般人も同じ人間で、同じ力を持っている。プリキュアシリーズが見せているのは人間の力や可能性です。
あなたにも力があるし、あなたの応援がプリキュアを助ける。一般人と視聴者を同期させてミラクルライトを使うのは恒例ですが、本作ではよりその効果や結びつきを強くしています。視聴者もまたプリキュアと一緒に戦っている。プリキュアから視聴者へ、視聴者からプリキュアへのメッセージを共有することで連帯を生み出しています。
③プリキュアの絆(ハウリング後半戦)
クレッシェンドトーンはメロディの意思を見届け、彼女にその意思を実現できる力を与えています。ではその意思とは何か。
メロディとリズムが抱き合って泣き合うシーンがとても印象的でした。プリキュアの力とは人智を越えた力や圧倒的な戦闘力ではなく、人と一緒に泣いてしまうような優しさ、人のために頑張れる力。ミラクルライトを振ってくれた観客に答えたとおり彼女達は人の想いに応える人々なんですね。
過去シリーズの映画ではシャイニングドリームやキュアエンジェルなど主人公格のプリキュアがパワーアップして敵を倒すか浄化していましたが、スイートは明確に違うことをしています。ここがスイートのスイートたるところ。メロディはリズムと共にパッショナートハーモニーを使います。偏っていた力がふたりの力で完全な形へと変わるのは心の繋がりをテーマとして描いてきた本作の象徴です。ハーモニーパワーこそがスイートプリキュアの力。独奏ではなく合奏。メロディはそれを選んだのです。そして2人から始まった組曲は今や4人の組曲。映画のクライマックスを飾るパワーアップを捨ててでも物語のテーマを明確にした判断に恐れ入ります。本作もプリキュアの名に恥じない真っ直ぐな作品です。
アコとメフィスト、アフロディテが心を通い合わせたように、メイジャーランドの人々が心の音楽をプリキュアに届けたように、プリキュアもまた心を繋いでいくことで困難を乗り越えています。様々な個性、関係、想いが伝わり響き合いながら一つのメロディを形作る。それは人を幸せへと導く音楽と云えるでしょう。心と心を繋ぐことに心血を注いで来た本作の集大成です。心を繋いでこそのプリキュア。「ふたりで手を繋いで変身する」そこから始まったプリキュアシリーズの絆のテーマが拡張・昇華されています。人には心が在り、その心は他者と繋がり合うことができる。その繋がり、絆は力であり幸せを生み出す源泉となる。
震災を乗り越えてこの物語を仕上げたスタッフに心から敬意を表したい。人間万事塞翁が馬。
④物語は再びテレビ本編へ(結びにかえて)
心の音楽は誰にも奪えない。心の歌が聴こえる。「音楽」や「歌」に託されているのは自由意思や心の繋がりです。取り戻すのではなくそれは最初から持っているものであなたの気持ち次第なのだ、というメッセージは本作の骨子になっています。
響達は友情を壊してしまったけど再び結んでいます。それは取り戻したものではなくお互いに自らの意思で再び繋がり合ったものです。一度離れた心を繋ぐということは過去を取り戻すことではなく現在を繋ぐことなのです。過去に戻るなんてことはできっこない。過去の誤りも断絶もケンカも許容し今のあなたを信じる。だからこそ今繋がれる。それはとても難しいことで勇気がいる。でもとても尊いことでその繋がりは過去の繋がりよりも強く心を結びつける力があるのだと思います。
響、奏、セイレーン、アコにはそれぞれ内に秘めた苦悩や孤独がありました。彼女達は心に悩みを抱えながらも相手に向き合うことで苦難を乗越えています。時にケンカをして、時に謝り、時に愛を拳に込めて。
ある意味で本作は群像劇です。響奏、セイレーン、アコは別個の問題を扱っています。ですが彼女達は「心の繋がり」という問題で一致しています。孤独と連帯、疑心と信頼の間で揺らぎながら人の愛情を求めていました。彼女達は心を繋げていく中で強く美しく成長しています。物語当初、響は不安を抱えていましたが今ではその面影はありません。彼女の素直さ、誠実さは思い遣りと強さへと変わっています。心の繋がりが人を成長させることも本作の重要なメッセージでしょう。
その彼女達が立ち向かうのがノイズです。ノイズとの戦いはスイートの最後の舞台に相応しい相手になるでしょう。絶対に許せない相手がいる一方で、彼女達は互いに相手を許し合ってきました。相手を知ろうとすることで心の繋がりができる。彼女達はノイズとどう向き合うのでしょうか。
幸せと不幸を繰り返し奏でてきた本作もそろそろ終幕が近づいてきました。この物語が全ての人々を幸せにするメロディを弾くことができるのか、それが試されようとしています。
第37話「ワクワク!ハロウィンでみんな変身ニャ!」
○今週の出来事
①アコの使命感
マイナーランドではリーダーの座を巡ってバスドラとバリトンが毎度恒例のケンカ。するとファルセットが彼らの自由を奪って一方的に自分がリーダーだと告げます。ノイズが彼を配下として選んだのか、元々ノイズを復活させようと企んでいたのかは分りませんが、もはやトリオとしての関係は崩れました。
ふたりにノイズの力を与え異形化させます。もうほとんど化け物。バリトンは泣き崩れます。泣いちゃったじゃないかよ、と抗議するバスドラ。ケンカはするけどこういうときは温情的。子どものケンカみたいなもんか。口答えしたバスドラは突然風船のように膨らみ出します。完全にファルセットの支配下に置かれています。
ファルセットが座っていた玉座の頭上に化石が埋め込まれた石版が現れます。ノイズが封じられた石版です。
調べの館で音吉さんが説明。
ノイズとは全宇宙の悲しみが集まって生み出された究極の悪。全ての美しい音楽を怨みメイジャーランドも人間界も音楽の無い世界にしようと企んでいる。以前メイジャーに現れた時に音吉さんが封じ込めました。つえぇぇ。プリキュアのご老人は最強ポジション。
僅かに残った力で姿を消し、人を操って不幸のメロディを完成させてそのエネルギーで復活する気のようです。ハミィとフェアリートーンは焼き鳥や手羽先を食べながらその話し聴き入ります。緊張感無いっスね。音吉さんが作っていたパイプオルガンは聖なる音を持った対ノイズ兵器ということのようです。
ということで、対立関係の図式を更新。メイジャー・人間界含めたプリキュアVSノイズとなります。話しの流れからもう音符を集めて幸福のメロディを奏でようという目的が忘れられていそうな感じですが、実際必要ありません。この手の収集物は敵に使われるためにあります。ここのポイントはノイズが悲しみの存在だということです。
話しを聞いていたメフィストが声をかけます。彼はすでにメイジャーに戻っています。メフィストが今回の一件を謝罪すると音吉さんは悔いてもしょうがない、これからどうするかだと建設的な態度で彼を受け入れます。メフィストはメイジャーランドをノイズの脅威から命を賭けても守ると語気を強くして言い放ちます。おお、国王っぽい。隣に居たアフロディテは操られる前より国王らしくなったと笑います。父の威厳を保った表情を見てアコは微笑みます。この辺は映画も参照するとより分りやすいでしょう。彼女の父親に対する信頼(愛情とはまた別の問題)は回復しています。
アコはパパ、と呼びかけます。するとメフィストはパパはもう大丈夫だよ、とさっきと打って変わったひょうきんな声で答えます。その様子にちょっと引くアコ。前言撤回、やっぱダメだわ。
メフィストのメイジャーへ帰っておいでとの呼びかけをアコは断ります。メイジャーランドの姫だけどプリキュアでもある。引き留めようとするメフィストをアフロディテは止めます。心配しないで、と気丈なアコ。響達も私達がついていると彼女の肩を持ちます。メフィストは改まって響さん、奏さん、セイレーンさん、と呼びかけると土下座してこれまでのことを詫びて娘を託します。しきりに可愛いアコ、可愛い可愛いと連呼し続けます。実際可愛いのは判るが親ばかにもほどがある。アコは顔を真っ赤にします。響達は彼の頼みを引き受けます。メフィストが優しい父親だと再認識。
本編と映画とで若干の差異はありますが、映画は36話と37話の間のエピソードに相当します。そこでアコは人間界に残ることを決意するのですが、流石にそこをまるまる本編で省くわけにはいかないでしょうからこういう形になっているようです。
街に出るとハロウィンの飾り付けで商店街は盛り上がっています。響や奏は街の様子にウキウキします。しかしアコは感情を表に出しません。響は肉屋のおばちゃんの手伝いを申し出ます。奏も話しに乗って結局みんなで夕方までお手伝い。
響は明日が楽しみだね、可愛いアコ♪と半分からかいながら話しかけます。しかしアコは冷静な態度でこんなことより音符集めの方が大事だと言います。彼女の責任感や使命感が見て取れる発言です。音符集めもすると付け足す響に素っ気ない態度を返します。
アコはハロウィンに興味ないのかと訝る響。セイレーンは真面目なのだとフォローします。アコの表情は真剣で、それ故に余裕がない。
②お姫様
ハロウィン当日。奏の家で着付け。ドレス姿のアコに響とセイレーンは目を輝かせます。正真正銘お姫様。奏!なによこれ!と抗議するアコ。アコがなんて呼ぶか気になっていたのですがプリキュア内ではみんな呼び捨てのようです。可愛い~♪と恍惚の表情を浮かべる奏。聞いちゃいねぇ。絶対自分の趣味でやってる。きっと響との間に娘が生まれたらこんな感じで着飾りたいとか思ってるはず。女の子同士じゃ子どもできないけどそんなの奏に関係ねぇ。
仮装する気がないアコを「いいじゃない姫様」とセイレーンは誘います。頬を赤らめてアコは彼女を見ます。ナイス表情。東堂いづみ先生の黄色への並ならぬ情熱が伝わってきます。アコはセイレーンに姫様はやめてと頼みます。ハミィに促されたセイレーンが照れながら「行きましょうアコ」と呼びかけるとアコは「嫌っ」とむくれます。何しても可愛いな、この子。
最近キャラが変わったかと思いましたが、本来の調子が戻ってきたようです。ちょっと背伸びした感じがいかにも子どもらしい。精神的に早熟なのでしょう。彼女の場合、環境が環境でしたが。
街では仮装した人々で大賑わい。吸血鬼の格好をした奏太はアコを見て唖然とします。いつもと全然違うと見とれる奏太に、アコは恥ずかしさを隠すように無理矢理着せられたと癇癪を起こします。本物のお姫様みたいでしょう?というセイレーンに素直にうんと答える奏太。奏はアコの可愛らしさに驚いちゃったのね、とからかいます。敬語で受け答えするあたり図星なのでしょう。響も話しに乗って冷やかします。ちなみに言い忘れましたが、響は海賊の格好、奏はカボチャの魔女(?)、セイレーンはネコの格好です。メイジャー組は本職そのまんまじゃねーかよ。
響がアコに話しかけるとアコは照れてその場を離れます。アコが可愛すぎて生きるのが辛い。アコの様子を見て響は可愛いと評します。奏も生意気な妹が出来た感じと印象を言います。妹と聞いてセイレーンも感慨深げにその言葉を呟きます。これまでのプリキュアでは同年代(中学生)同士の関係がメインだったのでこうした年齢差を感じさせる態度は新鮮です。視聴者的には自分と響達を重ねて妹を見る感じでも良いし、アコに重ねてお姉さんを見る感じでもいけそうです。
人気の無いところに来ると、アコはスカートを少し持ち上げて意味分かんない…と呟きます。こんな事している場合じゃないでしょ、という気持ちもあるのでしょう。
昨日のおばちゃんがアコを見つけてキャンディをお裾分します。アコが断ろうとすると笑顔になれるキャンディよと再び勧めます。笑顔?と聞き返すアコにおばちゃんは今日はそういう日、みんなで準備してみんなで笑顔になる、素敵じゃない。だからアコちゃんも笑って頂戴と語ります。響達が伝えるのではなく、普通の人、昨日お手伝いしたおばちゃんから語られるのは面白い。
アコはキャンディを頬張ります。するとアコより小さい子ども達がお姫様を泣かせようとやってきます。あっけにとられていたアコはすぐにお化けなんて怖くない、といつもの小生意気な口調で言い返します。すると今度は王子様の格好をした子どもが姫に手を出させないとアコを庇います。王子の少年はアコの手を引いて逃げていきます。アコもまんざらではないのか微笑み返して身を任せます。
アコを探していた響はアコが子ども達と遊んでいるのを見て安心します。響達からお人形さん扱いされるよりは、こっちの方が彼女にとって打ち解けやすいでしょう。
③4人の組曲
アコは音符を見つけて立ち止まります。同時にファルセットと愉快な仲間達が現れます。バスドラとバリトンを見て変な仮装…と呟くアコ。ふたりは仮装じゃねーよ!と抗議します。特にバリトンは泣いています。なんかもう色々大変だなこの人達も。
ファルセットはネガトーンを召喚。音波攻撃で街の人々を苦しめます。腕の中で嘆く少年を撫でて安心させようとしているアコの動きが細かい。子どものあやし方知っているようです。
駆けつけた響にアコは響!と呼びかけます。4人同時変身。セイレーンさん、その予備動作いらないですよね?
ついにスイートプリキュア変身バンクが完成。てっきり響達のようにアコも一時静止して布を巻き付けるシーンがあるのかと思っていましたがスルーされました。おのれ!東堂いづみ謀ったな!
ドレミファソラシド♪と奏でて整列。ミューズの位置がメロディとリズムの間ですが、決してふたりの子どもではありません。念のため。
「届け!4人の組曲! スイート!プリキュア!」
単身ミューズが速攻するも反撃にあいます。メロディ達も苦戦。ネガトーンが強化されているようです。
ミューズはモジューレを構えてシリーを呼びます。ようやくシリーが日の目を浴びます。
「シ、の音符のシャイニングメロディ!」
モジューレを吹くとミューズは分身。ネガトーンを囲みます。モジューレから光を飛すと分身達が反射してネガトーンを囲む五芒星を作り出します。
「プリキュア・シャイニングサークル!」
結界を発生させてネガトーンを攻撃。要するに一人グランドフィナーレ。意外にもミューズは攻撃系キャラなのか。
しかし結界は破壊されてしまいます。吹っ飛ばされて倒れるミューズを心配してメロディ達が駆け寄ります。ミューズは一人ででも倒す!と闘志をむき出しにします。
それを聞いたメロディは悲しそうな瞳を浮かべ息を飲みます。メロディはミューズの頬を掴むとキャンディを咥えさせます。笑顔になれるキャンディ。穏やかな、優しい声で言います。
「ミューズ、もう独りで頑張らなくていいんだよ。私達は4人いる。4人で一緒にみんなの笑顔を守ろう。そして一緒に笑おう」
幾多の経験が彼女の心を育んでいる。
4人でクレッシェンドトーン召喚。特に何が変わるというわけではないのですがアンサンブルの名にクレッシェンドが付きます。必殺の一撃。が、ファルセットが不幸のメロディを奏でたことで技が相殺されてします。調べの館に居た音吉さんはこの歌がノイズの復活を早めると危惧します。
それなら、と直接本体を攻撃。パッショナートハーモニーでファルセットの歌を止めます。隙をついてミューズの必殺技が発動。
「おいでシリー!」
「シ、の音符のシャイニングメロディ!」
「プリキュア!スパークリングシャワー!」
大量に発生させたシャボン玉を音符に見立てて飛ばします。要するにレモネードフラッシュ。映画でも使われた技ですが、これが正式バンク。
モジューレを手のひらの上に浮かべながら三拍子。子どもらしい可憐さと姫としての気品、威厳を漂わせて「フィナーレ!」
このスタッフどんだけ黄色好きなんだよ。でもそんなプリキュアが私は大好きです。
前作のムーンライトもそうでしたが、新商品を使わず既存の玩具で遊べるのは好印象。ミューズ用のモジューレは発売されていますが基本的には従来品で代替可能。こういう遊びの幅を広げる提示の仕方は面白い。
感心するメロディ達にミューズは大したことはない、と余裕ぶって答えます。ところがドドリーが本心を暴露。メロディの「おー」の声がツボに入った。頬を赤らめて抗議するミューズ。ドドリーを捕まえようと悪戦苦闘。あざとい流石黄色あざとい。この30分にどれだけの可愛さを詰込む気なんだ。
まったく、世話の焼ける妹だこと、とメロディ達は暖かく見守ります。
石版から化石は消失。物語は終盤へ。
④次回予告
EDの映像は変わらず。映画が先行してミューズ追加バージョンをお披露目しています。
その小鳥は……よもや。
○トピック
お菓子をあげるからイタズラさせて下さい!!
スイートが終わる前に私が社会的に終わりそうです。東堂いづみが悪いんだ!俺をたぶらかそうとするんだ! こんなの正気でいろって方が無理だよ!
そんな葛藤を抱えながら本題。
上述しましたが37話は映画の続きとして見ることが出来ます。映画の詳細についてはそちらを参照して頂くとして、今回のエピソードはプリキュア恒例のアフターフォローとなります。セイレーンがプリキュアに加入した後すぐに響達と絆を結ばせたように、アコも響達との絆を結ばせています。
繰り返し何度か書いていますが、音符を集めて幸福のメロディを完成させることに意味はありません。プリキュアが云う幸せとは人が自ら創りだしていくもの、みんなで創り上げていくものです。ラスボスを倒して全部解決、みんな幸せになりました、なんてことにはなりません。幸福のメロディでみんな幸せになれるのなら苦労しません。また、それでラスボスを倒しても意味がありません。彼女達は彼女達なりの方法で幸せを獲得しなければいけませんし、その幸せこそがラスボスを倒す力になります。音符集めよりハロウィンを楽しむことが優先されているのはそのためです。自らの心に幸せの種がある。これは映画でも主張されています。
ストーリーの流れとしては、アコの家族関係を回復させた上で響達との関係を築いています。これは家族が引き裂かれて孤独になってしまった少女の救済とも言えます。ノイズに立ち向かうために一人で気負って日常を蔑ろにしたのでは意味がない。ミューズの険しい表情、独りでいいという言葉にメロディが悲しむのはそのためです。人を幸せにしようとする人が怖い顔をして独りで居てはいけないのです。アコもまた幸せがどういうものかを知り、幸せにならなければならない。プリキュアとして戦うということはそういうことです。心の繋がりをメインテーマとしたスイートらしい展開です。
さて、ラスボスを倒すと書きましたが、そうならなさそうです。予告でも分るように小鳥はノイズの幼体か何かなのでしょう。ノイズは悲しみの権化という扱いを受けており、それ自体悲壮感があります。前作のデューンのような憎悪ならまだしも、悲しみから生まれた暴力を悪と言っていいのかという問題がある。
メイジャー対マイナーの対立関係からプリキュア対ノイズの関係に整理し直されているのは物語のテーマ拡張と見て良いでしょう。人を操って音楽を消そうとする。分りやすい悪者です。これによってメフィストやファルセット達は免罪符を持てるのですが、それが無くてもこの物語は人の罪や過ちが赦されています。また一緒に楽しく暮せばいいよ、で済む。実際セイレーンがそれをやっています。他者を傷つけて悲しませた者を赦さないというのなら、響と奏も赦されないでしょう。彼女達は結果として互いに了解し合ったから問題にならないのです。つまり対ノイズは罪の大小問題でしかありません。
ということで、例年通りラスボスとの戦いは物語の本質を示す戦いになるのですが、この物語が何を示すのかは蓋を開けてみるまでわかりません。案外あっさりノイズを倒してしまうのかもしれません。そのときはまたテキトーに理屈をこねましょう(身も蓋もない)。
プリキュアの最も大事なこと、この物語が1年をかけて、シリーズをかけて提示するのは人の生の価値。プリキュアは苦しみと弱さに喘ぎながらも強く生きんとする人々の物語です。
①アコの使命感
マイナーランドではリーダーの座を巡ってバスドラとバリトンが毎度恒例のケンカ。するとファルセットが彼らの自由を奪って一方的に自分がリーダーだと告げます。ノイズが彼を配下として選んだのか、元々ノイズを復活させようと企んでいたのかは分りませんが、もはやトリオとしての関係は崩れました。
ふたりにノイズの力を与え異形化させます。もうほとんど化け物。バリトンは泣き崩れます。泣いちゃったじゃないかよ、と抗議するバスドラ。ケンカはするけどこういうときは温情的。子どものケンカみたいなもんか。口答えしたバスドラは突然風船のように膨らみ出します。完全にファルセットの支配下に置かれています。
ファルセットが座っていた玉座の頭上に化石が埋め込まれた石版が現れます。ノイズが封じられた石版です。
調べの館で音吉さんが説明。
ノイズとは全宇宙の悲しみが集まって生み出された究極の悪。全ての美しい音楽を怨みメイジャーランドも人間界も音楽の無い世界にしようと企んでいる。以前メイジャーに現れた時に音吉さんが封じ込めました。つえぇぇ。プリキュアのご老人は最強ポジション。
僅かに残った力で姿を消し、人を操って不幸のメロディを完成させてそのエネルギーで復活する気のようです。ハミィとフェアリートーンは焼き鳥や手羽先を食べながらその話し聴き入ります。緊張感無いっスね。音吉さんが作っていたパイプオルガンは聖なる音を持った対ノイズ兵器ということのようです。
ということで、対立関係の図式を更新。メイジャー・人間界含めたプリキュアVSノイズとなります。話しの流れからもう音符を集めて幸福のメロディを奏でようという目的が忘れられていそうな感じですが、実際必要ありません。この手の収集物は敵に使われるためにあります。ここのポイントはノイズが悲しみの存在だということです。
話しを聞いていたメフィストが声をかけます。彼はすでにメイジャーに戻っています。メフィストが今回の一件を謝罪すると音吉さんは悔いてもしょうがない、これからどうするかだと建設的な態度で彼を受け入れます。メフィストはメイジャーランドをノイズの脅威から命を賭けても守ると語気を強くして言い放ちます。おお、国王っぽい。隣に居たアフロディテは操られる前より国王らしくなったと笑います。父の威厳を保った表情を見てアコは微笑みます。この辺は映画も参照するとより分りやすいでしょう。彼女の父親に対する信頼(愛情とはまた別の問題)は回復しています。
アコはパパ、と呼びかけます。するとメフィストはパパはもう大丈夫だよ、とさっきと打って変わったひょうきんな声で答えます。その様子にちょっと引くアコ。前言撤回、やっぱダメだわ。
メフィストのメイジャーへ帰っておいでとの呼びかけをアコは断ります。メイジャーランドの姫だけどプリキュアでもある。引き留めようとするメフィストをアフロディテは止めます。心配しないで、と気丈なアコ。響達も私達がついていると彼女の肩を持ちます。メフィストは改まって響さん、奏さん、セイレーンさん、と呼びかけると土下座してこれまでのことを詫びて娘を託します。しきりに可愛いアコ、可愛い可愛いと連呼し続けます。実際可愛いのは判るが親ばかにもほどがある。アコは顔を真っ赤にします。響達は彼の頼みを引き受けます。メフィストが優しい父親だと再認識。
本編と映画とで若干の差異はありますが、映画は36話と37話の間のエピソードに相当します。そこでアコは人間界に残ることを決意するのですが、流石にそこをまるまる本編で省くわけにはいかないでしょうからこういう形になっているようです。
街に出るとハロウィンの飾り付けで商店街は盛り上がっています。響や奏は街の様子にウキウキします。しかしアコは感情を表に出しません。響は肉屋のおばちゃんの手伝いを申し出ます。奏も話しに乗って結局みんなで夕方までお手伝い。
響は明日が楽しみだね、可愛いアコ♪と半分からかいながら話しかけます。しかしアコは冷静な態度でこんなことより音符集めの方が大事だと言います。彼女の責任感や使命感が見て取れる発言です。音符集めもすると付け足す響に素っ気ない態度を返します。
アコはハロウィンに興味ないのかと訝る響。セイレーンは真面目なのだとフォローします。アコの表情は真剣で、それ故に余裕がない。
②お姫様
ハロウィン当日。奏の家で着付け。ドレス姿のアコに響とセイレーンは目を輝かせます。正真正銘お姫様。奏!なによこれ!と抗議するアコ。アコがなんて呼ぶか気になっていたのですがプリキュア内ではみんな呼び捨てのようです。可愛い~♪と恍惚の表情を浮かべる奏。聞いちゃいねぇ。絶対自分の趣味でやってる。きっと響との間に娘が生まれたらこんな感じで着飾りたいとか思ってるはず。女の子同士じゃ子どもできないけどそんなの奏に関係ねぇ。
仮装する気がないアコを「いいじゃない姫様」とセイレーンは誘います。頬を赤らめてアコは彼女を見ます。ナイス表情。東堂いづみ先生の黄色への並ならぬ情熱が伝わってきます。アコはセイレーンに姫様はやめてと頼みます。ハミィに促されたセイレーンが照れながら「行きましょうアコ」と呼びかけるとアコは「嫌っ」とむくれます。何しても可愛いな、この子。
最近キャラが変わったかと思いましたが、本来の調子が戻ってきたようです。ちょっと背伸びした感じがいかにも子どもらしい。精神的に早熟なのでしょう。彼女の場合、環境が環境でしたが。
街では仮装した人々で大賑わい。吸血鬼の格好をした奏太はアコを見て唖然とします。いつもと全然違うと見とれる奏太に、アコは恥ずかしさを隠すように無理矢理着せられたと癇癪を起こします。本物のお姫様みたいでしょう?というセイレーンに素直にうんと答える奏太。奏はアコの可愛らしさに驚いちゃったのね、とからかいます。敬語で受け答えするあたり図星なのでしょう。響も話しに乗って冷やかします。ちなみに言い忘れましたが、響は海賊の格好、奏はカボチャの魔女(?)、セイレーンはネコの格好です。メイジャー組は本職そのまんまじゃねーかよ。
響がアコに話しかけるとアコは照れてその場を離れます。アコが可愛すぎて生きるのが辛い。アコの様子を見て響は可愛いと評します。奏も生意気な妹が出来た感じと印象を言います。妹と聞いてセイレーンも感慨深げにその言葉を呟きます。これまでのプリキュアでは同年代(中学生)同士の関係がメインだったのでこうした年齢差を感じさせる態度は新鮮です。視聴者的には自分と響達を重ねて妹を見る感じでも良いし、アコに重ねてお姉さんを見る感じでもいけそうです。
人気の無いところに来ると、アコはスカートを少し持ち上げて意味分かんない…と呟きます。こんな事している場合じゃないでしょ、という気持ちもあるのでしょう。
昨日のおばちゃんがアコを見つけてキャンディをお裾分します。アコが断ろうとすると笑顔になれるキャンディよと再び勧めます。笑顔?と聞き返すアコにおばちゃんは今日はそういう日、みんなで準備してみんなで笑顔になる、素敵じゃない。だからアコちゃんも笑って頂戴と語ります。響達が伝えるのではなく、普通の人、昨日お手伝いしたおばちゃんから語られるのは面白い。
アコはキャンディを頬張ります。するとアコより小さい子ども達がお姫様を泣かせようとやってきます。あっけにとられていたアコはすぐにお化けなんて怖くない、といつもの小生意気な口調で言い返します。すると今度は王子様の格好をした子どもが姫に手を出させないとアコを庇います。王子の少年はアコの手を引いて逃げていきます。アコもまんざらではないのか微笑み返して身を任せます。
アコを探していた響はアコが子ども達と遊んでいるのを見て安心します。響達からお人形さん扱いされるよりは、こっちの方が彼女にとって打ち解けやすいでしょう。
③4人の組曲
アコは音符を見つけて立ち止まります。同時にファルセットと愉快な仲間達が現れます。バスドラとバリトンを見て変な仮装…と呟くアコ。ふたりは仮装じゃねーよ!と抗議します。特にバリトンは泣いています。なんかもう色々大変だなこの人達も。
ファルセットはネガトーンを召喚。音波攻撃で街の人々を苦しめます。腕の中で嘆く少年を撫でて安心させようとしているアコの動きが細かい。子どものあやし方知っているようです。
駆けつけた響にアコは響!と呼びかけます。4人同時変身。セイレーンさん、その予備動作いらないですよね?
ついにスイートプリキュア変身バンクが完成。てっきり響達のようにアコも一時静止して布を巻き付けるシーンがあるのかと思っていましたがスルーされました。おのれ!東堂いづみ謀ったな!
ドレミファソラシド♪と奏でて整列。ミューズの位置がメロディとリズムの間ですが、決してふたりの子どもではありません。念のため。
「届け!4人の組曲! スイート!プリキュア!」
単身ミューズが速攻するも反撃にあいます。メロディ達も苦戦。ネガトーンが強化されているようです。
ミューズはモジューレを構えてシリーを呼びます。ようやくシリーが日の目を浴びます。
「シ、の音符のシャイニングメロディ!」
モジューレを吹くとミューズは分身。ネガトーンを囲みます。モジューレから光を飛すと分身達が反射してネガトーンを囲む五芒星を作り出します。
「プリキュア・シャイニングサークル!」
結界を発生させてネガトーンを攻撃。要するに一人グランドフィナーレ。意外にもミューズは攻撃系キャラなのか。
しかし結界は破壊されてしまいます。吹っ飛ばされて倒れるミューズを心配してメロディ達が駆け寄ります。ミューズは一人ででも倒す!と闘志をむき出しにします。
それを聞いたメロディは悲しそうな瞳を浮かべ息を飲みます。メロディはミューズの頬を掴むとキャンディを咥えさせます。笑顔になれるキャンディ。穏やかな、優しい声で言います。
「ミューズ、もう独りで頑張らなくていいんだよ。私達は4人いる。4人で一緒にみんなの笑顔を守ろう。そして一緒に笑おう」
幾多の経験が彼女の心を育んでいる。
4人でクレッシェンドトーン召喚。特に何が変わるというわけではないのですがアンサンブルの名にクレッシェンドが付きます。必殺の一撃。が、ファルセットが不幸のメロディを奏でたことで技が相殺されてします。調べの館に居た音吉さんはこの歌がノイズの復活を早めると危惧します。
それなら、と直接本体を攻撃。パッショナートハーモニーでファルセットの歌を止めます。隙をついてミューズの必殺技が発動。
「おいでシリー!」
「シ、の音符のシャイニングメロディ!」
「プリキュア!スパークリングシャワー!」
大量に発生させたシャボン玉を音符に見立てて飛ばします。要するにレモネードフラッシュ。映画でも使われた技ですが、これが正式バンク。
モジューレを手のひらの上に浮かべながら三拍子。子どもらしい可憐さと姫としての気品、威厳を漂わせて「フィナーレ!」
このスタッフどんだけ黄色好きなんだよ。でもそんなプリキュアが私は大好きです。
前作のムーンライトもそうでしたが、新商品を使わず既存の玩具で遊べるのは好印象。ミューズ用のモジューレは発売されていますが基本的には従来品で代替可能。こういう遊びの幅を広げる提示の仕方は面白い。
感心するメロディ達にミューズは大したことはない、と余裕ぶって答えます。ところがドドリーが本心を暴露。メロディの「おー」の声がツボに入った。頬を赤らめて抗議するミューズ。ドドリーを捕まえようと悪戦苦闘。あざとい流石黄色あざとい。この30分にどれだけの可愛さを詰込む気なんだ。
まったく、世話の焼ける妹だこと、とメロディ達は暖かく見守ります。
石版から化石は消失。物語は終盤へ。
④次回予告
EDの映像は変わらず。映画が先行してミューズ追加バージョンをお披露目しています。
その小鳥は……よもや。
○トピック
お菓子をあげるからイタズラさせて下さい!!
スイートが終わる前に私が社会的に終わりそうです。東堂いづみが悪いんだ!俺をたぶらかそうとするんだ! こんなの正気でいろって方が無理だよ!
そんな葛藤を抱えながら本題。
上述しましたが37話は映画の続きとして見ることが出来ます。映画の詳細についてはそちらを参照して頂くとして、今回のエピソードはプリキュア恒例のアフターフォローとなります。セイレーンがプリキュアに加入した後すぐに響達と絆を結ばせたように、アコも響達との絆を結ばせています。
繰り返し何度か書いていますが、音符を集めて幸福のメロディを完成させることに意味はありません。プリキュアが云う幸せとは人が自ら創りだしていくもの、みんなで創り上げていくものです。ラスボスを倒して全部解決、みんな幸せになりました、なんてことにはなりません。幸福のメロディでみんな幸せになれるのなら苦労しません。また、それでラスボスを倒しても意味がありません。彼女達は彼女達なりの方法で幸せを獲得しなければいけませんし、その幸せこそがラスボスを倒す力になります。音符集めよりハロウィンを楽しむことが優先されているのはそのためです。自らの心に幸せの種がある。これは映画でも主張されています。
ストーリーの流れとしては、アコの家族関係を回復させた上で響達との関係を築いています。これは家族が引き裂かれて孤独になってしまった少女の救済とも言えます。ノイズに立ち向かうために一人で気負って日常を蔑ろにしたのでは意味がない。ミューズの険しい表情、独りでいいという言葉にメロディが悲しむのはそのためです。人を幸せにしようとする人が怖い顔をして独りで居てはいけないのです。アコもまた幸せがどういうものかを知り、幸せにならなければならない。プリキュアとして戦うということはそういうことです。心の繋がりをメインテーマとしたスイートらしい展開です。
さて、ラスボスを倒すと書きましたが、そうならなさそうです。予告でも分るように小鳥はノイズの幼体か何かなのでしょう。ノイズは悲しみの権化という扱いを受けており、それ自体悲壮感があります。前作のデューンのような憎悪ならまだしも、悲しみから生まれた暴力を悪と言っていいのかという問題がある。
メイジャー対マイナーの対立関係からプリキュア対ノイズの関係に整理し直されているのは物語のテーマ拡張と見て良いでしょう。人を操って音楽を消そうとする。分りやすい悪者です。これによってメフィストやファルセット達は免罪符を持てるのですが、それが無くてもこの物語は人の罪や過ちが赦されています。また一緒に楽しく暮せばいいよ、で済む。実際セイレーンがそれをやっています。他者を傷つけて悲しませた者を赦さないというのなら、響と奏も赦されないでしょう。彼女達は結果として互いに了解し合ったから問題にならないのです。つまり対ノイズは罪の大小問題でしかありません。
ということで、例年通りラスボスとの戦いは物語の本質を示す戦いになるのですが、この物語が何を示すのかは蓋を開けてみるまでわかりません。案外あっさりノイズを倒してしまうのかもしれません。そのときはまたテキトーに理屈をこねましょう(身も蓋もない)。
プリキュアの最も大事なこと、この物語が1年をかけて、シリーズをかけて提示するのは人の生の価値。プリキュアは苦しみと弱さに喘ぎながらも強く生きんとする人々の物語です。
第36話「キラキラーン!心に届け、ミューズの想いニャ!」
○今週の出来事
①明かされる真相
いよいよ映画まで一週間を切りました。おい、メイジャー3、汚ねぇ手で響に触るな、奏に殺されたいのか。アフロディテさんマジで怖いです。
マイナーランドに戻ってきたメフィストは息も絶え絶えに憔悴しています。その様子を訝るバスドラとバリトン。よく見るとファルセットはふたりと違う表情をしています。これもラストシーンに繋がるわけね。
虚ろな瞳は記憶の中の映像を映しています。魔響の森?
調べの館。不安そうに佇むアコ。離れたところから響達は様子を伺います。するとハミィはこうやって見守っていても仕方ないと言います。響も頷いてアコちゃんを元気づけようとアコのもとに向かいます。フェアリートーン、プリキュアが合流。
アコは自分の生い立ちを話し始めます。メフィストはメイジャーランドの国王。それを聞いて響と奏は驚きます。当然ハミィもセイレーンも知っていることですが、ハミィはしれっとした態度でごめん、と謝ります。となると、母親は…
「そう、私がアコの母です」
アフロディテが答えます。メフィストと夫婦か兄弟で迷いましたが順当なところです。となると、アコはメイジャーランドのお姫様。アコは「一応ね」とやや自嘲気味に言います。自分でもらしくないと思っているのかもしれません。なにしろ散々悪態ついてきた小生意気な小学生でしたから。最近キャラ変えました。奏太の周りの人達はクセ強いなぁ。
セイレーンはモジモジしながらアコから離れると(何その可愛い動き)、アコに謝罪します。セイレーンがメイジャーに居たころはまだ幼く、髪も長く眼鏡もかけていませんでした。プリキュアの幼女クオリティの高さは異常。ハミィは王族前にしても態度が変わらないのは凄いと思う。
アコは気付かれないようにしていた、メイジャーから逃げてきたと言います。表情に陰りが入ります。
アフロディテが言葉を引き取ります。あの日が来るまで幸せに暮していたと話し始めます。メフィストが魔響の森へ行ったときから歯車が狂いはじめした。チェストを取り戻しに森へ入ったメフィストは、戻ってくるや人が変わりトリオを従えてメイジャーを出奔しマイナーランドとして独立。
家族は引き裂かれ、アフロディテはメイジャーを守るために残り、幼かったアコは祖父のもとに逃げた。そこで音吉さんが現れます。音吉さんはアコの母方の祖父。話しがこんがらがってきた奏と響は家系図を描いて納得。大人の視聴者は概ね予想の範囲内だと思いますが、子どもへの配慮です。
そして本作の1話を迎えた、ということのようです。時系列的にメフィストが出奔したのは大分前なのでしょう。数年は経っている。多少演出的な脚色はあるとはいえ、アフロディテがメフィストに対して冷ややかな態度だったのもある程度合点は行きます(夫婦ではなく兄弟と予想できたのもこの態度が要因としてある)。言ってしまえば夫婦仲が冷えてしまっていたと捉えてもよい。基本的にこのエピソードは親と子の話しのため夫婦関係は脇道と言ってよいので、何とでも捉えることは可能です。別居していたとかの比喩でもいいでしょう。この問題の本質は父と母の間で苦しむ子どもが居る、ということです。
アコはこのままでは父と母がケンカしてしまうと危惧し、プリキュアの力を得たようです。ドドリーがやってきて変身。今更言う必要もないですが、ト音記号は音楽がどうとかもう関係ありません。要は絆を結びたいという心。
正体がばれるのを防ぐために仮面を被り想いはドドリーに託したとアコは話します。ドドリーを愛おしそうに抱きしめます。
初めは戦う気は無なかったようですがメロディ達のピンチを黙って見ているわけにも行かず、また自分が戦えばパパが目を覚ますのではないかという期待もあったようです。しかしメロディ達が力を増していく内に不安が高まります。その力は父を傷つけるのではないか? クレッシェンドトーンの力に危惧したのはそういう背景のようです。だからパパを庇ったと語るアコ。彼女の瞳は誰かを見るのではなく自分の心を見るように真っ直前を見ています。隣で話しを聞いていた響は彼女の悲痛さを感じ取ります。罪悪感を覚えたかもしれない。
「パパを守れるのは私しかいないって思ったから」
「でもね! あなたの言葉を聞いて思ったの」
アコは響の方を向くと自分の心の変化を告白します。
「私も戦わなきゃいけないんだって。パパの幸せを守るために」
瞳の奥に決意を固め、彼女は毅然と言います。
相手を信じようとする気持ちは、寛容さとある種の犠牲を容認する。しかしそれは傍観することと何が違うのか。守りたいと思うあなたは何もしないで良いのか?という問いかけが暗になされている。
響はアコの手に触れるとアコの気持ちを労います。セイレーンも奏も元の優しいパパに戻ると勇気付けます。どんなに悪い力も家族の愛には絶対敵わないと響は言います。アコは彼女達の言葉を受けて表情を和らげます。しかしすぐに我に返って反芻するように難しい表情を浮かべ、また素直に頷きます。事は簡単には進まない。けど信じなければ何も出来ない。
メフィストは洗脳波を浴び苦悶しながら、自分が何者かを思い出しかけます。森で誰かを捜している自分。大きな木の後ろに……しかしそれを思い出すよりも早く、それを封じるように悪の心は彼を蝕みます。
②爪弾くは女神の調べ!
どす黒い雲から放たれる稲光。ネガトーン化したメフィストが街に降り立ちます。
現場に駆けつけたアコは父の姿を見てひるみます。不安そうに自分の手を見つめます。戦う決意は本人を前にして鈍っているようです。響達が代りに変身。
メロディは説得しようと語りかけます。メフィストは娘などいないと全否定。とりつく島もない。その言葉にアコはショックを受けます。心理的には前後不覚の状態に陥っていると言えるので発している言葉にそれほど真実性はないのですが、明言されるとそれはそれで苦しい。ことに子どもには。
メフィストは背からカラスの骸を伸ばします。力が増しています。バリアで攻撃をしのぎます。バックステップでバリアを発生させるモーションがカッコイイ。メフィスト様を守るにはどうしたら…とビート。懐かしい響きです。今考えるとセイレーンがメフィストの下についたのも国王という身分の影響もあるかもしれない。甘言に乗りやすい状況ではあった。いずれにせよ、メフィストと臣下達は元位置と姿に戻さなければならない。
メロディは仲間を励ますとパッショナートハーモニーを放ちます。最近特にリーダーシップが出てきました。しかし簡単に防がれ動きを封じられてしまいます。セイレーンの心を動かせるのがハミィであるように、メフィストの心を動かすことができるのはアコしかいない。
メフィストはミューズを呼びます。涙を浮かべるアコ。醜く変貌した父を見るのは忍びない光景です。代りにアフロディテがメフィストの前に現れます。
「いい加減に目を覚ましなさい!」
毅然と言い放つアフロディテ。これはアカン、けんか腰だ。完全に夫婦ケンカの流れ。この流れで和解することがあるのか夫婦100組に聞いてみたい。
売り言葉に買い言葉、メフィストはアフロディテと戦う気です。アコは堪らず仲裁に入ります。
「あたし、パパとママのケンカなんて見たくない!」
視聴者の親御さんはこの言葉を真摯に受け止めるべきです。人間誰しも腹を立てたり苛ついたりする。でも僅かでも理性と優しさがあるのなら子どもの前ではしてはいけません。子どもにとって悪意や暴力的な意思は魔物と同じです。いや魔物より質が悪い。魔物なら倒すなり逃げればいい。でも両親は倒すことも、両親から逃げることもできない。まだ自分の心を守る鎧を作りきれていない子どもにとって、憎悪に満ちた激しい感情はむき出しのナイフと変わりません。それは恐怖の対象です。
余談ですが恐怖に縛られた人間は、他者の顔色を伺い感情の機微で動くようになるか、逆にそれを利用して人を支配する場合があります。もちろん、個人差や資質にも大きく左右されるのでどのように育つかは環境のみに依存するものではありません。
ということで、子どもの前でケンカするような親が出る幕ではありません。明言はされていませんが、アコが守ろうとしたのは両親の仲でもあります。プリキュアに変身します。
「レッツプレイ!プリキュアモジュレーション!」
東堂いづみ先生が誇る黄子力研究所の成果。これを作るために本編のいくつかを犠牲にしたと確信させる気合いを入れすぎた変身シーン。眼鏡をギリギリまで付けてくれる配慮に感謝を覚えた次の瞬間には怒濤の勢いで衣装を身に纏っていきます。カボチャスカートの前にロングスカート状になっているのがもの凄く可愛い。このままでもいい。ロングスカートから覗く太ももとか最高じゃん。この世に存在する秘宝の一つです。小柄な身体を小気味よく動かしていきます。よろけるような動作でブーツ装着。ぶりっこポーズをしながら名乗ります。
「爪弾くは女神の調べ!キュアミューズ!」
映画の告知で知った日から指折り数え、忍び難きを忍び耐え難きを耐えて目の前に現れたのは女神。
③喰らえ、この愛
父に対峙する娘。カボチャスカートの中はモコモコです。
黄色お披露目回ということもあって素敵アクション。鍵盤の足場を作って機動するのはサンシャインを彷彿とさせます。メフィストに肉薄し全力で拳を突き出すも寸前で止ってしまいます。ミューズの悲痛な表情を見てメフィストは記憶がフラッシュバックします。悶えるメフィストを前にミューズはやっぱり戦えないと戸惑います。パパを傷つけられない。
メロディは傷つけるためではなく守るために戦うのだと声をかけます。それはミューズも分っている。しかし目の前にいるのは実の父。目を見たらどうしたらいいのか分らない。みんなには自分の気持ちは判らないと涙を浮かべます。この場にいる誰一人として父と戦わねばならない少女の気持ちを判る人はいないでしょう。判った気になっても、当事者としての責任も重責も負わないのでは第三者でしかありません。
「そうだよ。判らないよ」
しかしそれでもメロディは伝えます。
「私はミューズじゃないから。ミューズの気持ちを全部判ってあげられない。でもミューズの心をもっと知りたい。だから今ミューズの心に叫んでるの」
「そうよ、私達はいつもそうしてきた。私達いっぱいケンカしてきたけど、相手を傷つけたいからじゃないの。それは、相手の心を知りたいから」
「だから」
リズムはメロディの顔を見ます。メロディに想いを伝えるように、自分の言葉を引き継ぐように、自分の心を託すように。
「うん、だから、相手の心が判らないときは大きな声で叫ぶの!」
「姫様、お父様の心に貴女の気持ちを届けて下さい」
プリキュアの力は人を傷つける力に有らず。想いの力。全力で相手に飛び込んで愛していると伝えられる力。手の込んだ細工も技もなにも必要ない。あなたの心をぶつければいい。たとえそれで傷つくことがあっても、あなたはそれを乗越え叶えていけるのだという強い意思。この真っ直ぐさがプリキュアの戦いです。
「パパ! 私、パパが大好きだよ! 私のパパに戻って!」
自らの想いを乗せた拳を父の胸に打ち込みます。愛するために殴る。喰らえ、この愛。
メフィストの脳裏にかつての光景が蘇ります。大きな木の陰に隠れた娘。見つけられたアコは喜びながら父の胸に飛び込み抱きつきます。幸せそうに笑うアフロディテと音吉さん。幸せな家族の風景。
耳からヘッドフォンが落ち、メフィストは元の姿へと戻ります。少し照れくさそうに彼は娘に笑いかけます。アコは父の胸に飛び込みます。もうどこにも行かないと約束する父。アコは泣きながら頷きます。
みんなが父と娘の再会を見守る中で、とりわけメロディは感動するように見つめます。父子の姿は彼女にとって自分と父との関係を彷彿とさせるのかもしれません。時間はかかりましたが父との絆は戻り深められました。相手に自分の気持ちを伝えること、相手を信じて自分を託すこと、それを恐れないこと。その先に生まれる絆。それを彼女は守りました。
④ファルセット台頭
マイナーランドで見ていたトリオ達。ファルセットが正体を現します。
「メフィスト、お前はもう用済みだ」
ノイズ様を復活させるとプリキュアに言います。これは予想外。このままだとファルセットだけネガトーン召喚シーンがないんじゃないかと思いましたが、ここで台頭してくるとは。
ノイズ。人の心を一瞬で悪に染める存在。メロディは絶対に負けないと約束するように答えます。
⑤次回予告
奏がさらにあぶない人に。セイレーンさん、それ仮装じゃないです。音吉さんが全部持って行った。
○トピック
さあ、進もう、叫ぼう、一緒に
まったく、小学生は最高だぜ!!
このトピック史上、最低な始め方をしましたがいつもどおり本題に入ります。
気持ちを伝えるのに必殺技など不要。拳に愛を込めて殴る。プリキュアなら絶対そうするだろうと確信していました。技とか使って悪いオーラを浄化なんて無粋なことするはずがない。
メフィストが出奔した背景には彼(あるいは夫婦間)に何らかの事情が関与していたのかとも思っていましたが語られず。元々心に隙が出来ていたかは物語の本質に関わってくるところですが、このエピソードの本題はそこではないので放置しときます。
このエピソードの本題は夫婦関係やメイジャーマイナーの対立などの大人の視点ではなく、子どもからの視点です。自分を捨ててどこかへ行ってしまった父親、ややもするとケンカをし始めてしまうかもしれない両親の間に挟まれた子どもの視点。親友関係が壊れた響奏とは違い、夫婦関係が壊れた家族では当事者だけでなく子どもが残される。前半のパートでアコが響達に事情を説明する時の真剣な思い詰めた表情、不安が入り交じった声、自分がどうにかしなければ家族が崩壊してしまうという危機感はまさに子どもからの視点を描いています。スイートは二者間での関係構造だと思い込んでいましたがこの視点の提示は盲点でした。これによって物語はぐっと奥行きと広がりを見せています。
夫婦喧嘩を危惧し実際に止めに入るシーンがありますがプリキュアを子ども向け、とりわけ親子揃って見るアニメとして見ると今回最も素晴らしいのはここです。ちゃんとこの作品は子どもの気持ちをくみ取り代弁させています。しかし実際に夫婦喧嘩はさせない。そんなことをすれば子どもは傷つくからです。ギリギリのラインで子どもが何に怯え、何を求めているのかを見せています。子どもは両親の愛情、夫婦間の愛情、それらが一体となった家族の愛情を求めている。
しかし皮肉なのは愛情というのはそれが当たり前になると意識されないことです。普通愛情深く育った人はそれ自体を自覚しません。幸福を感謝することは少なく、不幸を嘆くのが人の常です。「幸福な家庭はみな似通っているが、不幸な家庭は不幸の相もさまざまである」ともトルストイは残しています。
子どもの手で家族の愛情を取り戻す。陳腐でご都合な話しだと言えばそうなるのですが、本作を順を追って見ていくとこのエピソードが持つ意味と価値は変わってきます。先に行われていた北条親子の話しは父親への愛情を失っている(父親から愛情を受けていないと感じる)ところから始まっています。つまりこの物語は父親との関係を一から取り戻しているんですね。
その過程の延長として今回のエピソードは位置づけられます。父への信頼を取り戻した響と、父を助けるために自分の愛を伝えるアコ。アコの姿は響の映し身とも言えます。もし団さんにメフィストと同じようなことが起きても響はアコと同じように自分の愛を伝えたでしょう。物語としては響の話しもアコの話しも「父親と娘の絆」という点で繋がっています。
さらに俯瞰して物語を見れば、最初から全部繋がっていることが判ります。ミューズを勇気付けたメロディとリズムの言葉はそれを示しています。彼女達は信頼や愛情を築く過程で傷ついてきました。相手の心が判らないが故に自分が傷つき、時に相手を傷つけている。その根底にあるのは相手を愛したい、相手から愛されたい気持ちです。メロディの言葉は誠実です。人の心は判らない。だから相手を知りたいなら呼びかけなさいと言う。アコが守ろうとしたのが父の愛だとすれば、響はそうした他者への愛情、自分から飛び込んでいく勇気を守り、また育んでいます。人の絆を知るごとに響の心は豊かに、強くなっています。
親子話しに終始することなく今まで響と奏、セイレーンがやってきた「親友を作る」ことも踏まえた見事なシナリオです。親友の絆も、親子の絆も育んでいくことは実はとても難しくて勇気がいる。それを学びながら、伝えながら、人と人の心を繋いでいます。
愛を取り戻す、愛を与えると言えば綺麗だし陳腐にも聞えるでしょう。しかしそこに辿り付くには多くの困難と立ち向かわなければならないのです。自分の心に向き合い、むき出しの悪意に立ち向かわけなればならないときもある。自分が傷つき、相手も傷つくかもしれない。好きな相手の欠点も見えてくるかもしれない。そうしたことも含めて全部受け止められるのか。悪い心を打ち消すという結果はその困難の先にあります。
親友や父親の愛情を取り戻す過程で彼女達が立ち向かい続けてきたのは、人の心そのものです。「親友との絆」も「父親との絆」も愛情を求める心の発露です。その心は、内にあっては自分を縛りつける鎖であり外にあっては見ることができないものです。それを自己と他者とを結ぶ糸に変えて、見えないからこそ信じる力に変えていく。
幸せのメロディは如何にして奏でられるのか。楽しみです。
①明かされる真相
いよいよ映画まで一週間を切りました。おい、メイジャー3、汚ねぇ手で響に触るな、奏に殺されたいのか。アフロディテさんマジで怖いです。
マイナーランドに戻ってきたメフィストは息も絶え絶えに憔悴しています。その様子を訝るバスドラとバリトン。よく見るとファルセットはふたりと違う表情をしています。これもラストシーンに繋がるわけね。
虚ろな瞳は記憶の中の映像を映しています。魔響の森?
調べの館。不安そうに佇むアコ。離れたところから響達は様子を伺います。するとハミィはこうやって見守っていても仕方ないと言います。響も頷いてアコちゃんを元気づけようとアコのもとに向かいます。フェアリートーン、プリキュアが合流。
アコは自分の生い立ちを話し始めます。メフィストはメイジャーランドの国王。それを聞いて響と奏は驚きます。当然ハミィもセイレーンも知っていることですが、ハミィはしれっとした態度でごめん、と謝ります。となると、母親は…
「そう、私がアコの母です」
アフロディテが答えます。メフィストと夫婦か兄弟で迷いましたが順当なところです。となると、アコはメイジャーランドのお姫様。アコは「一応ね」とやや自嘲気味に言います。自分でもらしくないと思っているのかもしれません。なにしろ散々悪態ついてきた小生意気な小学生でしたから。最近キャラ変えました。奏太の周りの人達はクセ強いなぁ。
セイレーンはモジモジしながらアコから離れると(何その可愛い動き)、アコに謝罪します。セイレーンがメイジャーに居たころはまだ幼く、髪も長く眼鏡もかけていませんでした。プリキュアの幼女クオリティの高さは異常。ハミィは王族前にしても態度が変わらないのは凄いと思う。
アコは気付かれないようにしていた、メイジャーから逃げてきたと言います。表情に陰りが入ります。
アフロディテが言葉を引き取ります。あの日が来るまで幸せに暮していたと話し始めます。メフィストが魔響の森へ行ったときから歯車が狂いはじめした。チェストを取り戻しに森へ入ったメフィストは、戻ってくるや人が変わりトリオを従えてメイジャーを出奔しマイナーランドとして独立。
家族は引き裂かれ、アフロディテはメイジャーを守るために残り、幼かったアコは祖父のもとに逃げた。そこで音吉さんが現れます。音吉さんはアコの母方の祖父。話しがこんがらがってきた奏と響は家系図を描いて納得。大人の視聴者は概ね予想の範囲内だと思いますが、子どもへの配慮です。
そして本作の1話を迎えた、ということのようです。時系列的にメフィストが出奔したのは大分前なのでしょう。数年は経っている。多少演出的な脚色はあるとはいえ、アフロディテがメフィストに対して冷ややかな態度だったのもある程度合点は行きます(夫婦ではなく兄弟と予想できたのもこの態度が要因としてある)。言ってしまえば夫婦仲が冷えてしまっていたと捉えてもよい。基本的にこのエピソードは親と子の話しのため夫婦関係は脇道と言ってよいので、何とでも捉えることは可能です。別居していたとかの比喩でもいいでしょう。この問題の本質は父と母の間で苦しむ子どもが居る、ということです。
アコはこのままでは父と母がケンカしてしまうと危惧し、プリキュアの力を得たようです。ドドリーがやってきて変身。今更言う必要もないですが、ト音記号は音楽がどうとかもう関係ありません。要は絆を結びたいという心。
正体がばれるのを防ぐために仮面を被り想いはドドリーに託したとアコは話します。ドドリーを愛おしそうに抱きしめます。
初めは戦う気は無なかったようですがメロディ達のピンチを黙って見ているわけにも行かず、また自分が戦えばパパが目を覚ますのではないかという期待もあったようです。しかしメロディ達が力を増していく内に不安が高まります。その力は父を傷つけるのではないか? クレッシェンドトーンの力に危惧したのはそういう背景のようです。だからパパを庇ったと語るアコ。彼女の瞳は誰かを見るのではなく自分の心を見るように真っ直前を見ています。隣で話しを聞いていた響は彼女の悲痛さを感じ取ります。罪悪感を覚えたかもしれない。
「パパを守れるのは私しかいないって思ったから」
「でもね! あなたの言葉を聞いて思ったの」
アコは響の方を向くと自分の心の変化を告白します。
「私も戦わなきゃいけないんだって。パパの幸せを守るために」
瞳の奥に決意を固め、彼女は毅然と言います。
相手を信じようとする気持ちは、寛容さとある種の犠牲を容認する。しかしそれは傍観することと何が違うのか。守りたいと思うあなたは何もしないで良いのか?という問いかけが暗になされている。
響はアコの手に触れるとアコの気持ちを労います。セイレーンも奏も元の優しいパパに戻ると勇気付けます。どんなに悪い力も家族の愛には絶対敵わないと響は言います。アコは彼女達の言葉を受けて表情を和らげます。しかしすぐに我に返って反芻するように難しい表情を浮かべ、また素直に頷きます。事は簡単には進まない。けど信じなければ何も出来ない。
メフィストは洗脳波を浴び苦悶しながら、自分が何者かを思い出しかけます。森で誰かを捜している自分。大きな木の後ろに……しかしそれを思い出すよりも早く、それを封じるように悪の心は彼を蝕みます。
②爪弾くは女神の調べ!
どす黒い雲から放たれる稲光。ネガトーン化したメフィストが街に降り立ちます。
現場に駆けつけたアコは父の姿を見てひるみます。不安そうに自分の手を見つめます。戦う決意は本人を前にして鈍っているようです。響達が代りに変身。
メロディは説得しようと語りかけます。メフィストは娘などいないと全否定。とりつく島もない。その言葉にアコはショックを受けます。心理的には前後不覚の状態に陥っていると言えるので発している言葉にそれほど真実性はないのですが、明言されるとそれはそれで苦しい。ことに子どもには。
メフィストは背からカラスの骸を伸ばします。力が増しています。バリアで攻撃をしのぎます。バックステップでバリアを発生させるモーションがカッコイイ。メフィスト様を守るにはどうしたら…とビート。懐かしい響きです。今考えるとセイレーンがメフィストの下についたのも国王という身分の影響もあるかもしれない。甘言に乗りやすい状況ではあった。いずれにせよ、メフィストと臣下達は元位置と姿に戻さなければならない。
メロディは仲間を励ますとパッショナートハーモニーを放ちます。最近特にリーダーシップが出てきました。しかし簡単に防がれ動きを封じられてしまいます。セイレーンの心を動かせるのがハミィであるように、メフィストの心を動かすことができるのはアコしかいない。
メフィストはミューズを呼びます。涙を浮かべるアコ。醜く変貌した父を見るのは忍びない光景です。代りにアフロディテがメフィストの前に現れます。
「いい加減に目を覚ましなさい!」
毅然と言い放つアフロディテ。これはアカン、けんか腰だ。完全に夫婦ケンカの流れ。この流れで和解することがあるのか夫婦100組に聞いてみたい。
売り言葉に買い言葉、メフィストはアフロディテと戦う気です。アコは堪らず仲裁に入ります。
「あたし、パパとママのケンカなんて見たくない!」
視聴者の親御さんはこの言葉を真摯に受け止めるべきです。人間誰しも腹を立てたり苛ついたりする。でも僅かでも理性と優しさがあるのなら子どもの前ではしてはいけません。子どもにとって悪意や暴力的な意思は魔物と同じです。いや魔物より質が悪い。魔物なら倒すなり逃げればいい。でも両親は倒すことも、両親から逃げることもできない。まだ自分の心を守る鎧を作りきれていない子どもにとって、憎悪に満ちた激しい感情はむき出しのナイフと変わりません。それは恐怖の対象です。
余談ですが恐怖に縛られた人間は、他者の顔色を伺い感情の機微で動くようになるか、逆にそれを利用して人を支配する場合があります。もちろん、個人差や資質にも大きく左右されるのでどのように育つかは環境のみに依存するものではありません。
ということで、子どもの前でケンカするような親が出る幕ではありません。明言はされていませんが、アコが守ろうとしたのは両親の仲でもあります。プリキュアに変身します。
「レッツプレイ!プリキュアモジュレーション!」
東堂いづみ先生が誇る黄子力研究所の成果。これを作るために本編のいくつかを犠牲にしたと確信させる気合いを入れすぎた変身シーン。眼鏡をギリギリまで付けてくれる配慮に感謝を覚えた次の瞬間には怒濤の勢いで衣装を身に纏っていきます。カボチャスカートの前にロングスカート状になっているのがもの凄く可愛い。このままでもいい。ロングスカートから覗く太ももとか最高じゃん。この世に存在する秘宝の一つです。小柄な身体を小気味よく動かしていきます。よろけるような動作でブーツ装着。ぶりっこポーズをしながら名乗ります。
「爪弾くは女神の調べ!キュアミューズ!」
映画の告知で知った日から指折り数え、忍び難きを忍び耐え難きを耐えて目の前に現れたのは女神。
③喰らえ、この愛
父に対峙する娘。カボチャスカートの中はモコモコです。
黄色お披露目回ということもあって素敵アクション。鍵盤の足場を作って機動するのはサンシャインを彷彿とさせます。メフィストに肉薄し全力で拳を突き出すも寸前で止ってしまいます。ミューズの悲痛な表情を見てメフィストは記憶がフラッシュバックします。悶えるメフィストを前にミューズはやっぱり戦えないと戸惑います。パパを傷つけられない。
メロディは傷つけるためではなく守るために戦うのだと声をかけます。それはミューズも分っている。しかし目の前にいるのは実の父。目を見たらどうしたらいいのか分らない。みんなには自分の気持ちは判らないと涙を浮かべます。この場にいる誰一人として父と戦わねばならない少女の気持ちを判る人はいないでしょう。判った気になっても、当事者としての責任も重責も負わないのでは第三者でしかありません。
「そうだよ。判らないよ」
しかしそれでもメロディは伝えます。
「私はミューズじゃないから。ミューズの気持ちを全部判ってあげられない。でもミューズの心をもっと知りたい。だから今ミューズの心に叫んでるの」
「そうよ、私達はいつもそうしてきた。私達いっぱいケンカしてきたけど、相手を傷つけたいからじゃないの。それは、相手の心を知りたいから」
「だから」
リズムはメロディの顔を見ます。メロディに想いを伝えるように、自分の言葉を引き継ぐように、自分の心を託すように。
「うん、だから、相手の心が判らないときは大きな声で叫ぶの!」
「姫様、お父様の心に貴女の気持ちを届けて下さい」
プリキュアの力は人を傷つける力に有らず。想いの力。全力で相手に飛び込んで愛していると伝えられる力。手の込んだ細工も技もなにも必要ない。あなたの心をぶつければいい。たとえそれで傷つくことがあっても、あなたはそれを乗越え叶えていけるのだという強い意思。この真っ直ぐさがプリキュアの戦いです。
「パパ! 私、パパが大好きだよ! 私のパパに戻って!」
自らの想いを乗せた拳を父の胸に打ち込みます。愛するために殴る。喰らえ、この愛。
メフィストの脳裏にかつての光景が蘇ります。大きな木の陰に隠れた娘。見つけられたアコは喜びながら父の胸に飛び込み抱きつきます。幸せそうに笑うアフロディテと音吉さん。幸せな家族の風景。
耳からヘッドフォンが落ち、メフィストは元の姿へと戻ります。少し照れくさそうに彼は娘に笑いかけます。アコは父の胸に飛び込みます。もうどこにも行かないと約束する父。アコは泣きながら頷きます。
みんなが父と娘の再会を見守る中で、とりわけメロディは感動するように見つめます。父子の姿は彼女にとって自分と父との関係を彷彿とさせるのかもしれません。時間はかかりましたが父との絆は戻り深められました。相手に自分の気持ちを伝えること、相手を信じて自分を託すこと、それを恐れないこと。その先に生まれる絆。それを彼女は守りました。
④ファルセット台頭
マイナーランドで見ていたトリオ達。ファルセットが正体を現します。
「メフィスト、お前はもう用済みだ」
ノイズ様を復活させるとプリキュアに言います。これは予想外。このままだとファルセットだけネガトーン召喚シーンがないんじゃないかと思いましたが、ここで台頭してくるとは。
ノイズ。人の心を一瞬で悪に染める存在。メロディは絶対に負けないと約束するように答えます。
⑤次回予告
奏がさらにあぶない人に。セイレーンさん、それ仮装じゃないです。音吉さんが全部持って行った。
○トピック
さあ、進もう、叫ぼう、一緒に
まったく、小学生は最高だぜ!!
このトピック史上、最低な始め方をしましたがいつもどおり本題に入ります。
気持ちを伝えるのに必殺技など不要。拳に愛を込めて殴る。プリキュアなら絶対そうするだろうと確信していました。技とか使って悪いオーラを浄化なんて無粋なことするはずがない。
メフィストが出奔した背景には彼(あるいは夫婦間)に何らかの事情が関与していたのかとも思っていましたが語られず。元々心に隙が出来ていたかは物語の本質に関わってくるところですが、このエピソードの本題はそこではないので放置しときます。
このエピソードの本題は夫婦関係やメイジャーマイナーの対立などの大人の視点ではなく、子どもからの視点です。自分を捨ててどこかへ行ってしまった父親、ややもするとケンカをし始めてしまうかもしれない両親の間に挟まれた子どもの視点。親友関係が壊れた響奏とは違い、夫婦関係が壊れた家族では当事者だけでなく子どもが残される。前半のパートでアコが響達に事情を説明する時の真剣な思い詰めた表情、不安が入り交じった声、自分がどうにかしなければ家族が崩壊してしまうという危機感はまさに子どもからの視点を描いています。スイートは二者間での関係構造だと思い込んでいましたがこの視点の提示は盲点でした。これによって物語はぐっと奥行きと広がりを見せています。
夫婦喧嘩を危惧し実際に止めに入るシーンがありますがプリキュアを子ども向け、とりわけ親子揃って見るアニメとして見ると今回最も素晴らしいのはここです。ちゃんとこの作品は子どもの気持ちをくみ取り代弁させています。しかし実際に夫婦喧嘩はさせない。そんなことをすれば子どもは傷つくからです。ギリギリのラインで子どもが何に怯え、何を求めているのかを見せています。子どもは両親の愛情、夫婦間の愛情、それらが一体となった家族の愛情を求めている。
しかし皮肉なのは愛情というのはそれが当たり前になると意識されないことです。普通愛情深く育った人はそれ自体を自覚しません。幸福を感謝することは少なく、不幸を嘆くのが人の常です。「幸福な家庭はみな似通っているが、不幸な家庭は不幸の相もさまざまである」ともトルストイは残しています。
子どもの手で家族の愛情を取り戻す。陳腐でご都合な話しだと言えばそうなるのですが、本作を順を追って見ていくとこのエピソードが持つ意味と価値は変わってきます。先に行われていた北条親子の話しは父親への愛情を失っている(父親から愛情を受けていないと感じる)ところから始まっています。つまりこの物語は父親との関係を一から取り戻しているんですね。
その過程の延長として今回のエピソードは位置づけられます。父への信頼を取り戻した響と、父を助けるために自分の愛を伝えるアコ。アコの姿は響の映し身とも言えます。もし団さんにメフィストと同じようなことが起きても響はアコと同じように自分の愛を伝えたでしょう。物語としては響の話しもアコの話しも「父親と娘の絆」という点で繋がっています。
さらに俯瞰して物語を見れば、最初から全部繋がっていることが判ります。ミューズを勇気付けたメロディとリズムの言葉はそれを示しています。彼女達は信頼や愛情を築く過程で傷ついてきました。相手の心が判らないが故に自分が傷つき、時に相手を傷つけている。その根底にあるのは相手を愛したい、相手から愛されたい気持ちです。メロディの言葉は誠実です。人の心は判らない。だから相手を知りたいなら呼びかけなさいと言う。アコが守ろうとしたのが父の愛だとすれば、響はそうした他者への愛情、自分から飛び込んでいく勇気を守り、また育んでいます。人の絆を知るごとに響の心は豊かに、強くなっています。
親子話しに終始することなく今まで響と奏、セイレーンがやってきた「親友を作る」ことも踏まえた見事なシナリオです。親友の絆も、親子の絆も育んでいくことは実はとても難しくて勇気がいる。それを学びながら、伝えながら、人と人の心を繋いでいます。
愛を取り戻す、愛を与えると言えば綺麗だし陳腐にも聞えるでしょう。しかしそこに辿り付くには多くの困難と立ち向かわなければならないのです。自分の心に向き合い、むき出しの悪意に立ち向かわけなればならないときもある。自分が傷つき、相手も傷つくかもしれない。好きな相手の欠点も見えてくるかもしれない。そうしたことも含めて全部受け止められるのか。悪い心を打ち消すという結果はその困難の先にあります。
親友や父親の愛情を取り戻す過程で彼女達が立ち向かい続けてきたのは、人の心そのものです。「親友との絆」も「父親との絆」も愛情を求める心の発露です。その心は、内にあっては自分を縛りつける鎖であり外にあっては見ることができないものです。それを自己と他者とを結ぶ糸に変えて、見えないからこそ信じる力に変えていく。
幸せのメロディは如何にして奏でられるのか。楽しみです。
第35話「ジャキーン!遂にミューズが仮面をとったニャ!」
○今週の出来事
①プリキュアが守るもの
映画予告。本編映像が多くなりました。
「アフロディテさま一体どうしちゃったの!?」。いや、それよりもセイレーンが町娘の格好をしている方がどうしたんだって感じなんですが。でもそれ以上にその後ろでスーツ着たメフィストが立っているのがヤバイ。シュールすぎる。響と奏のバカップルぶりは映画でも健在。
物語の急変を示すように外の天気は荒れています。響の部屋に集まったみんなの表情も曇っています。
音符が取られて不安になるトーン達をよそにハミィは響達が取り返してくれると楽観的。他力本願かよ。そんなハミィにお気楽すぎるとミリーは呆れます。
一人窓際に立っていた響は、どうしてミューズはメフィストを庇ったのだろうと呟きます。プリキュアなのに何故。セイレーンは何か事情があるのではないかと言います。その言葉に意表を突かれたようにハッとする響と奏。セイレーンはやや躊躇いながらも自分もそうだったから…正義と悪の間で悩んでいるのではないかと言葉を続けます。
操られている?とハミィ。そうは見えないと奏。響はもっとなにか別の理由があるのではないかと考えます。その言葉に呼応するようにチェストが輝き出します。
物語がどんどん深掘りされています。セイレーンが、いやそもそも響と奏が対立していることから始まった物語は誰が悪で誰が正義か、そうした単純な二極化を求めていません。そこにあるのは人々の心の葛藤、他者との関係、そしてそれが他者からは見えないことの誤解と疑惑です。響達は自分達の経験を通して他者を見始めています。
一人佇むミューズ。ドドリーがこのままでは他のプリキュアがミューズを敵と判断してしまう、すべてを話した方が良いと話しかけます。
メイジャーランド。鍵盤の橋をかけてアフロディテは出立しようとしています。その表情には躊躇いの色が表れています。彼女を呼び止める声。振り返るとそこには音吉さんが居ます。もうほんと、この人どこに居てもおかしくないな。
ミューズはプリキュアの使命を忘れている、これ以上あの子を悩ませるわけにはいかないと言うアフロディテ。彼女にはミューズが誰か完全に分っているようです。しかし音吉さんはそれはいけない、プリキュアを信じて任せろと彼女を引き留めます。
一方、音符が集まったマイナーランドではついに不幸のメロディが完成……しません。まだ音符が足りないようです。トリオを探しに行かせます。
現れたクレッシェンドトーンに響達はミューズのことを訪ねます。また庇うようなことがあれば自分達は戦わなければならないのか。逆にクレシェンドトーンはどう思うかと聞き返します。響はプリキュア同士で戦うなんて絶対に嫌だと即答。その言葉に奏とセイレーンも続きます。それを聞くとクレッシェンドトーンは頷いて、プリキュアが何のために戦っているのかもう一度よく考えなさい、答えは自分達だけで出すのですと答えます。
プリキュアとは何か。何と戦いその後に何を残すのか。このシリーズは常にそれを問い続ける物語です。
調べの館で音吉さんはパイプオルガンの完成を急ぎます。
物音。ドドリーが飛んできます。ドドリーを見て音吉さんは警戒を解きます。やっぱり顔見知りなのね。おそらくこの人視点だとほぼこの物語の全体像は見えている。ドドリーはなんでもないと誤魔化します。
唐突に音吉さんは話し始めます。誰にだって守りたい人がいる。その人を守るためならどんな犠牲をも払う、たとえそのせいで一緒に戦うべき仲間を失ったとしても。だが、本当に守るとはどういうことなのか。どうすればその人を本当に守ることができるのか、その答えは自分自身で探すしかない。
影に隠れていた何者かはその場から去っていきます。音吉さんはそこに居たであろう方向に視線を送ります。伝えるべき事は伝えた。
②明かされる真相
音符をなかなか探し出せないトリオに業を煮やしたメフィストはトリオをマイナーに帰して自ら音符を探索します。首領だけあってすぐに発見。時計台の人形をネガトーン化。
嘆き悲しむ人々を眼下にミューズは戸惑います。ドドリーはこの前メフィストを守ったから、これが望んだことなのか?と問いかけます。悲しそうな、苦しそうな表情を浮かべるミューズ。どことなく響が母と奏との間で悩んだ姿に似ています。
ネガトーンは他の隠れた音符を吸収して巨大化していきます。なるほど音符を探索回収するための召喚なのね。
響達が駆けつけます。嘆き悲しんでいる人々に今助けるからそれまで頑張って!と声をかけます。もしまたミューズがメフィストを庇ったら…迷うセイレーンに響はそれでもネガトーンを倒さなきゃ、と躊躇うことなく断言します。倒すことを躊躇っても救うことを躊躇ってはいけない。響の答えに呆気にとられながらもセイレーンと奏は頷きます。変身。
プリキュアとネガトーンは交戦。分が悪いと見て取ったメフィストはネガトーンを強化します。プリキュアは激しい攻撃から逃れるため路地に隠れます。
ネガトーンが強化されたのを見てそんなこともできるのかとメロディとリズムが言うとビートは思い出します。元に戻りかけていた自分をもう一度悪に染めたのはあの(メフィストが付けている)ヘッドフォンから聞えた音。
では、そのヘッドフォンをしているメフィストは? メロディはメフィストもまた何者かによって悪に染められているのかもしれないと気付きます。本当の敵はメフィストではない。ミューズはそれを知っていたのではないか。ミステリドラマよろしく真相が明らかになっていきます。ミューズが抱えていた葛藤に思い当たります。
「ミューズは悪に操られたメフィストと戦うべきかって、ずっと苦しんでいたのかもしれない」
ネガトーンの手から逃れながら、リズムはもしそうなら戦えないと言います。
「私達はメフィストと戦うわけじゃない。私達はメフィストを操る悪の心と戦うの!」
メロディは答えます。プリキュアが何のために戦っているのか。
「私は全ての人の幸せを守るためだと思う。それはメフィストが相手でも同じ事。メフィストを操る悪の心と戦うことがメフィストの幸せを守るということなのよ!」
この悪とは、メフィストを操っている黒幕を指しているのではありません。この悪とは人が迷い、染まってしまう想いや過ち、心の中に潜む暗い感情です。それは人が人である以上誰しもが持つ心。響も奏もセイレーンも持っている。ミミちゃんの持ち主の女の子に語りかけたようにプリキュアが戦うのはそうした過ちや不義、不信、憎悪です。いわゆる罪を憎んで人を憎まず。これに打ち勝ち克服してこそ人は本当の豊かさを獲得しうる。
プリキュアの意思に呼応してチェストが出現します。クレッシェンドトーンも人が悪い。こうなることが分っていて任せている。必殺技でネガトーンを浄化します。音符を一気にゲット。
しかしそれは問屋が卸さない。メフィストは音符を奪取すると自身をネガトーン化させて巨大化します。
メフィストの拳をバリアでガード。指鳴らして武器を召喚するのカッコイイ。とはいえ所詮ビートのバリアは割れるバリアなので長く持ちません。
追い詰められながらもメロディは正々堂々と戦って悪の心を打ち消してみせる!と叫びます。その言葉にミューズは声を漏らします。プリキュアの正々堂々とは、つまり真っ直ぐに相手に自分の想いを伝えること。メフィストに対してはアコがそれを担うでしょう。
振り下ろされる巨大な拳。プリキュアの前に立って庇うミューズを見て動きが止ります。
「もう止めて! パパ!」
その言葉に驚くメフィストとプリキュア。様子を見ていたアフロディテは予期していた事態に悲痛の表情を浮かべています。
ミューズは自ら黒装束を脱ぎ捨てます。そこに現れた黄色いプリキュアを見たメフィストから名前が漏れ出ます。
「アコ…」
「パパもう目を覚まして!」
「なぜだ、なぜお前がここに!?」
「これ以上パパに悪いことをして欲しくないの。お願い!優しかったあの頃のパパに戻って!」
娘は父を見上げて懇願します。続く言葉は決意の言葉。
「私はたとえ悪に操られているパパでも守りたかった。でも、みんなが大切なことを教えてくれたの。あたしがパパを守りたいと思うならパパを操る悪の心とも戦わなければならない。たとえそれがどんな辛い戦いになっても乗越えなければならない。それがパパを本当に守るということだから!」
アコは瞳に意思を込めて父に対峙します。しかしその瞳には涙も浮かんでいます。
メフィストが娘に手を伸ばそうとするとヘッドフォンからノイズが発生し苦しみ出します。そのまま空へと消えます。
真相が白日の下にさらされても、心の迷いは晴れず。
③次回予告
綺麗な頃のメフィスト。そしてお待ちかね!小学…もとい、キュアミューズの変身シーン!
響さん、大事なことだと分るんだけど2回言わなくていいから。またみてね、ドドリーのミューズリボンが可愛い。
○トピック
様々な憶測と期待を呼んだミューズの正体がついに明かされる。私の近辺では人妻予想の人気が高かったのですが、そんな一部の人にしか需要ないことはしません。ついにプリキュア初の小学生です。女児もいい歳した大人も親しみが持てます。決して常時小学生が見たいとか、変身シーンが見たいとかそんなこと思っても口に出しては言えません。私の硬派なイメージが崩れかねません。
脱いだら激やせならぬ小型化を遂げているのは一体なんなのか気にならないでもないですが、きっと魔法のキャンディがあるのでしょう。というか、体格よりもこれまでの口調と打って変わった可愛らしい声の方がビックリです。アコちゃん、それキャラ変えすぎ。
授業参観でアゴヒゲ生やしまくった父親が来て周囲のヒソヒソ話しに恥ずかしがるアコを想像すると幸せになれます。家に帰ったら親子ゲンカ。お父さんの悩みは絶えません。
閑話休題。
プリキュアのプリキュア足るところは何か、と問われればいくつもあげることができますが「プリキュアとは何か?を自問する」こともその一つです。常にそれを作品の中で、少女達に考えさせていくことで彼女達自身が成し遂げる物語として紡がれています。
何かしらの業を背負ってしまった少女をプリキュアとして再生させるエピソードは前々作フレッシュプリキュアから描かれていますが、いよいよ本格的に敵側にもそれを適用させようとしています。記憶の新しいところでは前作ハートキャッチで敵側についた父親が非業の死を遂げています。道を誤ってしまった父親を救う物語としてスイートは明確な意図を持っています。
プリキュアシリーズは、このように過去作で成し得なかったことを後の作品で実現しているのも特徴です。5で救えなかった女の子をフレッシュで救い、フレッシュで最後まで見ることが出来なかった敵首領の安らぎをハートキャッチで与え、そしてハートキャッチで救えなかった父親を今作で救う。僅かではあっても歩を進め続ける真っ直ぐさは本シリーズが個別の作品の集まりとしでてはなく、一本の長編だと感じさせる点です。私はそこに敬意を抱きます。作っている人違うはずなんだけど、なんでこうも繋がって行くんだろう。
プリキュアは敵も助ける。ではその敵とは元々何なのか、悪人なのか。違う。その人達もまた過ちを犯し、苦しみ、幸せを求めようとして不幸になってしまった人々、響や奏と変わらぬ人々です。作中では洗脳装置を使って悪に染まっていますがセイレーンがそうだったように元を正せば彼女自身の心の隙から生まれたモノです。メフィストにしてもその可能性があります。他者との関係の中で不信や不満を募らせ、それが反感に変わって行動が変わっていったのは響と奏も同じです。本当の幸せとは邪魔者を排除した先にあるのか? この戦いの本質は断罪であるのか?
真に立ち向かうべきは悪い心なのだとメロディは言います。その悪い心とは人の心に巣くう不実の心のことでしょう。意図的だと思いますが、悪い心と戦う、打ち消すとは言っても倒すとは言っていません。本質的にこの心が倒せるものではないことを暗喩していると思われます。それは常に克服し続けるものです。
ミューズが何のために戦っているのかを知る過程で、響達はメフィスト達との戦いの意味に気付いていきます。もはやこの戦いはメイジャー対マイナーではない。では黒幕との対決になるのか。それも違う。なぜならこの物語の目指す先が「幸せ」であるからです。
プリキュアは罪なんて気にしない。過ちを犯そうが人は幸せになって良い!幸せになるべきだ!と言い切ってきたシリーズです。人は間違うし、間違いを乗越えて幸せへと歩を進めることだってできる。そして人を信じ愛するなら、その内に持つ悪と罪をも受け入れねばならない。それを赦しと云うのかもしれません。それは本当に難しいことなのだと思います。でも「親友」を取り戻した響達ならその意味と価値に気づけるはずです。
響がラブやつぼみのような生得的な愛情、慈愛を持っているとは言えないかもしれません。彼女は素直で誠実ではあるが心弱い人間です。人を疑ってもしまう。しかしだからこそ彼女がその体験を通じて道を指し示すことが出来たなら、それは人のまた新たな強さと可能性を見いだせることになるのではないかと思います。
この物語は今までねじを巻いていたのだと気付きます。それが今放たれようとしている。こっからが本番。
①プリキュアが守るもの
映画予告。本編映像が多くなりました。
「アフロディテさま一体どうしちゃったの!?」。いや、それよりもセイレーンが町娘の格好をしている方がどうしたんだって感じなんですが。でもそれ以上にその後ろでスーツ着たメフィストが立っているのがヤバイ。シュールすぎる。響と奏のバカップルぶりは映画でも健在。
物語の急変を示すように外の天気は荒れています。響の部屋に集まったみんなの表情も曇っています。
音符が取られて不安になるトーン達をよそにハミィは響達が取り返してくれると楽観的。他力本願かよ。そんなハミィにお気楽すぎるとミリーは呆れます。
一人窓際に立っていた響は、どうしてミューズはメフィストを庇ったのだろうと呟きます。プリキュアなのに何故。セイレーンは何か事情があるのではないかと言います。その言葉に意表を突かれたようにハッとする響と奏。セイレーンはやや躊躇いながらも自分もそうだったから…正義と悪の間で悩んでいるのではないかと言葉を続けます。
操られている?とハミィ。そうは見えないと奏。響はもっとなにか別の理由があるのではないかと考えます。その言葉に呼応するようにチェストが輝き出します。
物語がどんどん深掘りされています。セイレーンが、いやそもそも響と奏が対立していることから始まった物語は誰が悪で誰が正義か、そうした単純な二極化を求めていません。そこにあるのは人々の心の葛藤、他者との関係、そしてそれが他者からは見えないことの誤解と疑惑です。響達は自分達の経験を通して他者を見始めています。
一人佇むミューズ。ドドリーがこのままでは他のプリキュアがミューズを敵と判断してしまう、すべてを話した方が良いと話しかけます。
メイジャーランド。鍵盤の橋をかけてアフロディテは出立しようとしています。その表情には躊躇いの色が表れています。彼女を呼び止める声。振り返るとそこには音吉さんが居ます。もうほんと、この人どこに居てもおかしくないな。
ミューズはプリキュアの使命を忘れている、これ以上あの子を悩ませるわけにはいかないと言うアフロディテ。彼女にはミューズが誰か完全に分っているようです。しかし音吉さんはそれはいけない、プリキュアを信じて任せろと彼女を引き留めます。
一方、音符が集まったマイナーランドではついに不幸のメロディが完成……しません。まだ音符が足りないようです。トリオを探しに行かせます。
現れたクレッシェンドトーンに響達はミューズのことを訪ねます。また庇うようなことがあれば自分達は戦わなければならないのか。逆にクレシェンドトーンはどう思うかと聞き返します。響はプリキュア同士で戦うなんて絶対に嫌だと即答。その言葉に奏とセイレーンも続きます。それを聞くとクレッシェンドトーンは頷いて、プリキュアが何のために戦っているのかもう一度よく考えなさい、答えは自分達だけで出すのですと答えます。
プリキュアとは何か。何と戦いその後に何を残すのか。このシリーズは常にそれを問い続ける物語です。
調べの館で音吉さんはパイプオルガンの完成を急ぎます。
物音。ドドリーが飛んできます。ドドリーを見て音吉さんは警戒を解きます。やっぱり顔見知りなのね。おそらくこの人視点だとほぼこの物語の全体像は見えている。ドドリーはなんでもないと誤魔化します。
唐突に音吉さんは話し始めます。誰にだって守りたい人がいる。その人を守るためならどんな犠牲をも払う、たとえそのせいで一緒に戦うべき仲間を失ったとしても。だが、本当に守るとはどういうことなのか。どうすればその人を本当に守ることができるのか、その答えは自分自身で探すしかない。
影に隠れていた何者かはその場から去っていきます。音吉さんはそこに居たであろう方向に視線を送ります。伝えるべき事は伝えた。
②明かされる真相
音符をなかなか探し出せないトリオに業を煮やしたメフィストはトリオをマイナーに帰して自ら音符を探索します。首領だけあってすぐに発見。時計台の人形をネガトーン化。
嘆き悲しむ人々を眼下にミューズは戸惑います。ドドリーはこの前メフィストを守ったから、これが望んだことなのか?と問いかけます。悲しそうな、苦しそうな表情を浮かべるミューズ。どことなく響が母と奏との間で悩んだ姿に似ています。
ネガトーンは他の隠れた音符を吸収して巨大化していきます。なるほど音符を探索回収するための召喚なのね。
響達が駆けつけます。嘆き悲しんでいる人々に今助けるからそれまで頑張って!と声をかけます。もしまたミューズがメフィストを庇ったら…迷うセイレーンに響はそれでもネガトーンを倒さなきゃ、と躊躇うことなく断言します。倒すことを躊躇っても救うことを躊躇ってはいけない。響の答えに呆気にとられながらもセイレーンと奏は頷きます。変身。
プリキュアとネガトーンは交戦。分が悪いと見て取ったメフィストはネガトーンを強化します。プリキュアは激しい攻撃から逃れるため路地に隠れます。
ネガトーンが強化されたのを見てそんなこともできるのかとメロディとリズムが言うとビートは思い出します。元に戻りかけていた自分をもう一度悪に染めたのはあの(メフィストが付けている)ヘッドフォンから聞えた音。
では、そのヘッドフォンをしているメフィストは? メロディはメフィストもまた何者かによって悪に染められているのかもしれないと気付きます。本当の敵はメフィストではない。ミューズはそれを知っていたのではないか。ミステリドラマよろしく真相が明らかになっていきます。ミューズが抱えていた葛藤に思い当たります。
「ミューズは悪に操られたメフィストと戦うべきかって、ずっと苦しんでいたのかもしれない」
ネガトーンの手から逃れながら、リズムはもしそうなら戦えないと言います。
「私達はメフィストと戦うわけじゃない。私達はメフィストを操る悪の心と戦うの!」
メロディは答えます。プリキュアが何のために戦っているのか。
「私は全ての人の幸せを守るためだと思う。それはメフィストが相手でも同じ事。メフィストを操る悪の心と戦うことがメフィストの幸せを守るということなのよ!」
この悪とは、メフィストを操っている黒幕を指しているのではありません。この悪とは人が迷い、染まってしまう想いや過ち、心の中に潜む暗い感情です。それは人が人である以上誰しもが持つ心。響も奏もセイレーンも持っている。ミミちゃんの持ち主の女の子に語りかけたようにプリキュアが戦うのはそうした過ちや不義、不信、憎悪です。いわゆる罪を憎んで人を憎まず。これに打ち勝ち克服してこそ人は本当の豊かさを獲得しうる。
プリキュアの意思に呼応してチェストが出現します。クレッシェンドトーンも人が悪い。こうなることが分っていて任せている。必殺技でネガトーンを浄化します。音符を一気にゲット。
しかしそれは問屋が卸さない。メフィストは音符を奪取すると自身をネガトーン化させて巨大化します。
メフィストの拳をバリアでガード。指鳴らして武器を召喚するのカッコイイ。とはいえ所詮ビートのバリアは割れるバリアなので長く持ちません。
追い詰められながらもメロディは正々堂々と戦って悪の心を打ち消してみせる!と叫びます。その言葉にミューズは声を漏らします。プリキュアの正々堂々とは、つまり真っ直ぐに相手に自分の想いを伝えること。メフィストに対してはアコがそれを担うでしょう。
振り下ろされる巨大な拳。プリキュアの前に立って庇うミューズを見て動きが止ります。
「もう止めて! パパ!」
その言葉に驚くメフィストとプリキュア。様子を見ていたアフロディテは予期していた事態に悲痛の表情を浮かべています。
ミューズは自ら黒装束を脱ぎ捨てます。そこに現れた黄色いプリキュアを見たメフィストから名前が漏れ出ます。
「アコ…」
「パパもう目を覚まして!」
「なぜだ、なぜお前がここに!?」
「これ以上パパに悪いことをして欲しくないの。お願い!優しかったあの頃のパパに戻って!」
娘は父を見上げて懇願します。続く言葉は決意の言葉。
「私はたとえ悪に操られているパパでも守りたかった。でも、みんなが大切なことを教えてくれたの。あたしがパパを守りたいと思うならパパを操る悪の心とも戦わなければならない。たとえそれがどんな辛い戦いになっても乗越えなければならない。それがパパを本当に守るということだから!」
アコは瞳に意思を込めて父に対峙します。しかしその瞳には涙も浮かんでいます。
メフィストが娘に手を伸ばそうとするとヘッドフォンからノイズが発生し苦しみ出します。そのまま空へと消えます。
真相が白日の下にさらされても、心の迷いは晴れず。
③次回予告
綺麗な頃のメフィスト。そしてお待ちかね!小学…もとい、キュアミューズの変身シーン!
響さん、大事なことだと分るんだけど2回言わなくていいから。またみてね、ドドリーのミューズリボンが可愛い。
○トピック
様々な憶測と期待を呼んだミューズの正体がついに明かされる。私の近辺では人妻予想の人気が高かったのですが、そんな一部の人にしか需要ないことはしません。ついにプリキュア初の小学生です。女児もいい歳した大人も親しみが持てます。決して常時小学生が見たいとか、変身シーンが見たいとかそんなこと思っても口に出しては言えません。私の硬派なイメージが崩れかねません。
脱いだら激やせならぬ小型化を遂げているのは一体なんなのか気にならないでもないですが、きっと魔法のキャンディがあるのでしょう。というか、体格よりもこれまでの口調と打って変わった可愛らしい声の方がビックリです。アコちゃん、それキャラ変えすぎ。
授業参観でアゴヒゲ生やしまくった父親が来て周囲のヒソヒソ話しに恥ずかしがるアコを想像すると幸せになれます。家に帰ったら親子ゲンカ。お父さんの悩みは絶えません。
閑話休題。
プリキュアのプリキュア足るところは何か、と問われればいくつもあげることができますが「プリキュアとは何か?を自問する」こともその一つです。常にそれを作品の中で、少女達に考えさせていくことで彼女達自身が成し遂げる物語として紡がれています。
何かしらの業を背負ってしまった少女をプリキュアとして再生させるエピソードは前々作フレッシュプリキュアから描かれていますが、いよいよ本格的に敵側にもそれを適用させようとしています。記憶の新しいところでは前作ハートキャッチで敵側についた父親が非業の死を遂げています。道を誤ってしまった父親を救う物語としてスイートは明確な意図を持っています。
プリキュアシリーズは、このように過去作で成し得なかったことを後の作品で実現しているのも特徴です。5で救えなかった女の子をフレッシュで救い、フレッシュで最後まで見ることが出来なかった敵首領の安らぎをハートキャッチで与え、そしてハートキャッチで救えなかった父親を今作で救う。僅かではあっても歩を進め続ける真っ直ぐさは本シリーズが個別の作品の集まりとしでてはなく、一本の長編だと感じさせる点です。私はそこに敬意を抱きます。作っている人違うはずなんだけど、なんでこうも繋がって行くんだろう。
プリキュアは敵も助ける。ではその敵とは元々何なのか、悪人なのか。違う。その人達もまた過ちを犯し、苦しみ、幸せを求めようとして不幸になってしまった人々、響や奏と変わらぬ人々です。作中では洗脳装置を使って悪に染まっていますがセイレーンがそうだったように元を正せば彼女自身の心の隙から生まれたモノです。メフィストにしてもその可能性があります。他者との関係の中で不信や不満を募らせ、それが反感に変わって行動が変わっていったのは響と奏も同じです。本当の幸せとは邪魔者を排除した先にあるのか? この戦いの本質は断罪であるのか?
真に立ち向かうべきは悪い心なのだとメロディは言います。その悪い心とは人の心に巣くう不実の心のことでしょう。意図的だと思いますが、悪い心と戦う、打ち消すとは言っても倒すとは言っていません。本質的にこの心が倒せるものではないことを暗喩していると思われます。それは常に克服し続けるものです。
ミューズが何のために戦っているのかを知る過程で、響達はメフィスト達との戦いの意味に気付いていきます。もはやこの戦いはメイジャー対マイナーではない。では黒幕との対決になるのか。それも違う。なぜならこの物語の目指す先が「幸せ」であるからです。
プリキュアは罪なんて気にしない。過ちを犯そうが人は幸せになって良い!幸せになるべきだ!と言い切ってきたシリーズです。人は間違うし、間違いを乗越えて幸せへと歩を進めることだってできる。そして人を信じ愛するなら、その内に持つ悪と罪をも受け入れねばならない。それを赦しと云うのかもしれません。それは本当に難しいことなのだと思います。でも「親友」を取り戻した響達ならその意味と価値に気づけるはずです。
響がラブやつぼみのような生得的な愛情、慈愛を持っているとは言えないかもしれません。彼女は素直で誠実ではあるが心弱い人間です。人を疑ってもしまう。しかしだからこそ彼女がその体験を通じて道を指し示すことが出来たなら、それは人のまた新たな強さと可能性を見いだせることになるのではないかと思います。
この物語は今までねじを巻いていたのだと気付きます。それが今放たれようとしている。こっからが本番。
第34話「ズドド~ン!メフィストがやって来ちゃったニャ!」
○今週の出来事
①ミューズとの距離
夜の灯台…だと思うんだけど、灯台以外は砂漠というくらいに砂しか見えません。加音町ではないのか。ミューズの心象風景かもしれませんが。いつもの通りミューズは物言わず前を見つめています。心中は図りしれません。分るのは、こんな格好でおまわりさんに見つかったら職務質問確実なことだけです。
一人唄っていたドドリーはミューズを誘います。しかし何も答えは帰ってきません。そろそろ踏みだした方がいい、プリキュアは力になってくれると話すドドリー。ミューズは苛立たしげな表情を浮かべると飛び立ってしまいます。
この一連のシーン、妙に作画が気合い入っていてミューズのボディラインが艶めかしい。
いつもの3馬鹿コンビは七輪で焼き肉中。メフィストへの報告を押しつけ合います。いつものとおり失敗の報告なので誰もやりたがりません。
そうしているとメフィストが目の前に現れて叱責します。トリオをマイナーに戻して楽譜の警備、自ら出撃する旨を指示します。その間もジュウジュウと肉が焼かれ続けます。この後のパターンとしては、メフィストが焼き肉を食べてしまう。メフィストのマントが焼けてしまう。黒こげになる。が考えられます。
「焦げちゃうよ」どうやら黒こげパターンだったようです。トリオはご飯食べてるシーン多いけど、あの格好で買い出しに行くんでしょうか。
下校。響はなにやら考え事。早速奏が声をかけます。悩み事なら相談に乗るわ。どうせならふたりっきりでお話ししましょうというパターンに持って行くつもりでしょうか。
セイレーンが指摘したようにミューズの事を考えていたようです。前回「守りたいものがある」と言い残して去ったミューズ。守りたいものとは何か。ハミィはみんなの幸せのことだろうと言いますが、それでは積極的に幸せのメロディを完成させようとしないのは不自然です。ああ言うからには彼女なりの守りたいものがあるはず。
クレッシェンドトーンにも意見を求めますが生憎お休み中です。
奏太・アコ組。奏太は竹馬に乗ってアコに見せます。よたよたと危なっかしい動き。アコは「へっぴり腰」と辛口コメント。奏太に興味を示さず落ちているドングリを手に取ります。
猫の声に振り返ると、木の上に子猫が居ます。どうやら降りられなくなった様子。奏太が助けようとしますが転倒。どちらかというと助けられる側です。第一高さが足りない。
子猫の声にアコは真剣な表情を浮かべると竹馬を拝借して高さを調節、器用に乗ると子猫に手を伸ばします。片手で竹馬押さえて静止とかレベル高ぇ。怖がる猫に優しく声をかけます。バランスが崩れる前に子猫がアコにダイブ。キャッチしたアコは器用に竹馬を降ります。うめぇ。
子猫はアコに懐いて手を舐めます。笑顔を返すアコ。
「この子、ありがとうって言ってるわ」セイレーンが話しかけます。実際に猫語を翻訳しているものと思われます。奏も優しいのね、と歓心します。褒められて照れたアコは頬を染めます。破壊力絶大。本来の視聴者よりもいい歳した大人が大喜びするに違い無い場面です。アコはそそくさと竹馬を奏太に返すと逃げるように去っていきます。
「ミューズも本当は優しい人なのかも」
ラッキースプーンでおやつを食べているとぼそりと奏が言います。
何かを守りたいという気持ちはその人の優しさだと話す奏。そういう考え方は一理ある。もっとも、その守りたいものが何であるか、それを守るために他のものを排斥するかどうかは重要な部分でもあるのだが。大抵の個人レベルでの諍いは下らない意固や偏狭さに根ざしている。
ミューズには幾度となく助けられたこともあります。しかし味方ではないと言う。素直になりたいけどなれないのでは?とセイレーン。経験談ですね。ハミィに指摘されて顔を真っ赤にします。コホン、と咳をすると守りたいものがあることを教えてくれた。一つずつちゃんと話し合っていけばわかり合える日が来るはずだと言います。クレッシェンドトーンもセイレーンの言葉を後押しします。
ここの会話のポイントはミューズが敵か味方か、目的は何か、というような損得勘定や究明ではありません。ミューズもまた自分達とわかり合える相手、言葉を交わし気持ちや意思を理解できる相手なのだという共通認識を明確にするためのものです。セイレーンがプリキュアになるときに響奏には疑心暗鬼な部分がありましたが、現在は冷静にじっくりと腰を落ち着けて静観することを望んでいます。
②直接対決
街は人々で溢れかえり賑やかな音を立てています。広場で演奏が終わると人々から拍手が起こります。
それを見ていたメフィストは聞く者を和ませる音楽など不要、と三首のネガトーンを召喚します。街の人々が嘆き悲しみ出します。調べの館に居た音吉さんはついに来たかと警戒します。ミューズの正体よりもこの人の立場が知りたい。
その様子をマイナーから観戦していたバスドラは「いいぞ!メフィスト!」と呼び捨て。ファルセットとバリトンに見咎められます。バスドラは野心が強い。
広場に駆けつける響達。メフィストと会うのは2度目。
メフィストの目的は初めからプリキュア。おびき寄せるためにネガトーンを召喚して人々を嘆き悲しませたと言います。それを聞いた3人は憤慨。変身。
プリキュアは3人でパッショナートハーモニーを使用。単発のイベント技ってわけじゃないんだ。しかしそれでもマイナーランドの王が使役するネガトーン相手では力負け。ミューズが駆けつけプリキュアを助けます。
メフィストと対峙したミューズに浮かぶ焦りの表情。臆しているというよりやりにくそうな印象を受けます。何者だ、何が目的なんだと詰問するメフィスト。ミューズは拳に力を込め、眼前の相手へと挑みます。
ネガトーンの攻撃を回避し続けるミューズ。反撃しません。そんなミューズに腰抜けと罵るメフィスト。
プリキュアはミューズをバカにしないでと抗議します。優しい心の持ち主を腰抜け呼ばわりすることに憤ります。ドドリーもミューズにプリキュアはあなたのために怒っていると伝えます。相変わらずプリキュアらしい言い回しです。分りやすく言うと、友達になりかけている相手が悪口言われたので怒っている、という感じです。
手を繋いでハーモニーパワーを高めたプリキュアは体当たりでネガトーンの動きを止めます。体当たり強ぇ。そのまま現状最強の必殺体当たりでネガトーンを仕留めます。続いてメフィストを狙います。初めての直接攻撃。結構えげつないかもしれない。
ところが今度はメフィストをミューズが守ります。直前でクレッシェンドトーンは軌道をズラして攻撃を外します。当たり前と言えば当たり前なんだろうけど、やっぱクレッシェンドトーン自身が攻撃してたんだ。妖精そのものが攻撃するって新鮮だなぁ。つか、どんだけ力もってんだよ。
空中でクレッシェンドトーンは消えてプリキュアは地面に落下。
予想外の事態に、メイジャーで様子を見ていたアフロディテも驚きそしてミューズの正体に思い当たります。
メフィストを庇うミューズにプリキュアは困惑します。その隙を突いてメフィストはフェアリートーンに接近。ヒョウタンを使ってトーン達から音符を奪います。金角と銀角みたいなことするね。
流石にこの事態にはミューズも歯噛みします。メフィストが倒されては困るがさりとて音符が奪われて不幸のメロディが完成してもまずい。ジレンマ。
姿を消すメフィスト。残されたのは呆然と佇むミューズだけ。メロディはミューズにメフィストを守りたかったのかと尋ねると彼女は背を向け何も答えません。ミューズはその場を離れます。
ミューズの真意。不幸のメロディ。世界は混沌の様相を呈し始める。
③次回予告
ついにミューズの閉ざされていた口が開かれる。彼女が発する言葉は?
○トピック
いよいよ中盤の山場へとさしかかった感じ。今月末には映画公開。その前には黄色が登場するでしょうから、ミューズの正体、真意、メイジャー・マイナーとの関係などが明かされることになりそうです。ややこしい人間関係が出てきそうですが、この物語はその複雑に絡み合った関係とそれぞれの想いを再び綺麗に繋いでいくでしょう。
細かいことですが、ミューズとドドリーは当初一心同体でしたが数話前から分離化が図られています。これはミューズ自身に話しがクローズアップされてきたことと同期しています。合わせて今まで助っ人扱いだったミューズに対して響達は一個人としての好意、理解可能な相手として受け入れ始めています。プリキュアはあくまで個人レベルでの関係がベースなのでその手順を踏んでいると考えられます。組織とか陣営とか利害は考慮の余地に入りません。重要なのは、心ある者を愛し守りたいという意思。子ども向け番組らしいストレートさです。
すれ違いから絆に亀裂が入った響と奏、ハミィに憎悪を向けるようになったセイレーン、この物語は他者との関係の中で苦しみ迷う人々を描いてきました。次に登場するのはどんな悲しい物語なのか。おそらくミューズもまた満たされぬ何かを秘めている。基本的にこの物語は悲しい物語です。誰も満たされていない。自分達でそうしてしまった。でも、それを元に戻したのも他ならぬ彼女達です。一つ一つの小さな悲しい物語は幸せの物語へと変わり、それらを束ねるこの物語もその途上にある。そこで見えてくるのは人の業であり、それでもなお幸せや愛情を求める人々の願いである。
子ども向けアニメの良いところは、その願いを叶えること。
プリキュアの良いところは、それを真正面から真剣にやること。
①ミューズとの距離
夜の灯台…だと思うんだけど、灯台以外は砂漠というくらいに砂しか見えません。加音町ではないのか。ミューズの心象風景かもしれませんが。いつもの通りミューズは物言わず前を見つめています。心中は図りしれません。分るのは、こんな格好でおまわりさんに見つかったら職務質問確実なことだけです。
一人唄っていたドドリーはミューズを誘います。しかし何も答えは帰ってきません。そろそろ踏みだした方がいい、プリキュアは力になってくれると話すドドリー。ミューズは苛立たしげな表情を浮かべると飛び立ってしまいます。
この一連のシーン、妙に作画が気合い入っていてミューズのボディラインが艶めかしい。
いつもの3馬鹿コンビは七輪で焼き肉中。メフィストへの報告を押しつけ合います。いつものとおり失敗の報告なので誰もやりたがりません。
そうしているとメフィストが目の前に現れて叱責します。トリオをマイナーに戻して楽譜の警備、自ら出撃する旨を指示します。その間もジュウジュウと肉が焼かれ続けます。この後のパターンとしては、メフィストが焼き肉を食べてしまう。メフィストのマントが焼けてしまう。黒こげになる。が考えられます。
「焦げちゃうよ」どうやら黒こげパターンだったようです。トリオはご飯食べてるシーン多いけど、あの格好で買い出しに行くんでしょうか。
下校。響はなにやら考え事。早速奏が声をかけます。悩み事なら相談に乗るわ。どうせならふたりっきりでお話ししましょうというパターンに持って行くつもりでしょうか。
セイレーンが指摘したようにミューズの事を考えていたようです。前回「守りたいものがある」と言い残して去ったミューズ。守りたいものとは何か。ハミィはみんなの幸せのことだろうと言いますが、それでは積極的に幸せのメロディを完成させようとしないのは不自然です。ああ言うからには彼女なりの守りたいものがあるはず。
クレッシェンドトーンにも意見を求めますが生憎お休み中です。
奏太・アコ組。奏太は竹馬に乗ってアコに見せます。よたよたと危なっかしい動き。アコは「へっぴり腰」と辛口コメント。奏太に興味を示さず落ちているドングリを手に取ります。
猫の声に振り返ると、木の上に子猫が居ます。どうやら降りられなくなった様子。奏太が助けようとしますが転倒。どちらかというと助けられる側です。第一高さが足りない。
子猫の声にアコは真剣な表情を浮かべると竹馬を拝借して高さを調節、器用に乗ると子猫に手を伸ばします。片手で竹馬押さえて静止とかレベル高ぇ。怖がる猫に優しく声をかけます。バランスが崩れる前に子猫がアコにダイブ。キャッチしたアコは器用に竹馬を降ります。うめぇ。
子猫はアコに懐いて手を舐めます。笑顔を返すアコ。
「この子、ありがとうって言ってるわ」セイレーンが話しかけます。実際に猫語を翻訳しているものと思われます。奏も優しいのね、と歓心します。褒められて照れたアコは頬を染めます。破壊力絶大。本来の視聴者よりもいい歳した大人が大喜びするに違い無い場面です。アコはそそくさと竹馬を奏太に返すと逃げるように去っていきます。
「ミューズも本当は優しい人なのかも」
ラッキースプーンでおやつを食べているとぼそりと奏が言います。
何かを守りたいという気持ちはその人の優しさだと話す奏。そういう考え方は一理ある。もっとも、その守りたいものが何であるか、それを守るために他のものを排斥するかどうかは重要な部分でもあるのだが。大抵の個人レベルでの諍いは下らない意固や偏狭さに根ざしている。
ミューズには幾度となく助けられたこともあります。しかし味方ではないと言う。素直になりたいけどなれないのでは?とセイレーン。経験談ですね。ハミィに指摘されて顔を真っ赤にします。コホン、と咳をすると守りたいものがあることを教えてくれた。一つずつちゃんと話し合っていけばわかり合える日が来るはずだと言います。クレッシェンドトーンもセイレーンの言葉を後押しします。
ここの会話のポイントはミューズが敵か味方か、目的は何か、というような損得勘定や究明ではありません。ミューズもまた自分達とわかり合える相手、言葉を交わし気持ちや意思を理解できる相手なのだという共通認識を明確にするためのものです。セイレーンがプリキュアになるときに響奏には疑心暗鬼な部分がありましたが、現在は冷静にじっくりと腰を落ち着けて静観することを望んでいます。
②直接対決
街は人々で溢れかえり賑やかな音を立てています。広場で演奏が終わると人々から拍手が起こります。
それを見ていたメフィストは聞く者を和ませる音楽など不要、と三首のネガトーンを召喚します。街の人々が嘆き悲しみ出します。調べの館に居た音吉さんはついに来たかと警戒します。ミューズの正体よりもこの人の立場が知りたい。
その様子をマイナーから観戦していたバスドラは「いいぞ!メフィスト!」と呼び捨て。ファルセットとバリトンに見咎められます。バスドラは野心が強い。
広場に駆けつける響達。メフィストと会うのは2度目。
メフィストの目的は初めからプリキュア。おびき寄せるためにネガトーンを召喚して人々を嘆き悲しませたと言います。それを聞いた3人は憤慨。変身。
プリキュアは3人でパッショナートハーモニーを使用。単発のイベント技ってわけじゃないんだ。しかしそれでもマイナーランドの王が使役するネガトーン相手では力負け。ミューズが駆けつけプリキュアを助けます。
メフィストと対峙したミューズに浮かぶ焦りの表情。臆しているというよりやりにくそうな印象を受けます。何者だ、何が目的なんだと詰問するメフィスト。ミューズは拳に力を込め、眼前の相手へと挑みます。
ネガトーンの攻撃を回避し続けるミューズ。反撃しません。そんなミューズに腰抜けと罵るメフィスト。
プリキュアはミューズをバカにしないでと抗議します。優しい心の持ち主を腰抜け呼ばわりすることに憤ります。ドドリーもミューズにプリキュアはあなたのために怒っていると伝えます。相変わらずプリキュアらしい言い回しです。分りやすく言うと、友達になりかけている相手が悪口言われたので怒っている、という感じです。
手を繋いでハーモニーパワーを高めたプリキュアは体当たりでネガトーンの動きを止めます。体当たり強ぇ。そのまま現状最強の必殺体当たりでネガトーンを仕留めます。続いてメフィストを狙います。初めての直接攻撃。結構えげつないかもしれない。
ところが今度はメフィストをミューズが守ります。直前でクレッシェンドトーンは軌道をズラして攻撃を外します。当たり前と言えば当たり前なんだろうけど、やっぱクレッシェンドトーン自身が攻撃してたんだ。妖精そのものが攻撃するって新鮮だなぁ。つか、どんだけ力もってんだよ。
空中でクレッシェンドトーンは消えてプリキュアは地面に落下。
予想外の事態に、メイジャーで様子を見ていたアフロディテも驚きそしてミューズの正体に思い当たります。
メフィストを庇うミューズにプリキュアは困惑します。その隙を突いてメフィストはフェアリートーンに接近。ヒョウタンを使ってトーン達から音符を奪います。金角と銀角みたいなことするね。
流石にこの事態にはミューズも歯噛みします。メフィストが倒されては困るがさりとて音符が奪われて不幸のメロディが完成してもまずい。ジレンマ。
姿を消すメフィスト。残されたのは呆然と佇むミューズだけ。メロディはミューズにメフィストを守りたかったのかと尋ねると彼女は背を向け何も答えません。ミューズはその場を離れます。
ミューズの真意。不幸のメロディ。世界は混沌の様相を呈し始める。
③次回予告
ついにミューズの閉ざされていた口が開かれる。彼女が発する言葉は?
○トピック
いよいよ中盤の山場へとさしかかった感じ。今月末には映画公開。その前には黄色が登場するでしょうから、ミューズの正体、真意、メイジャー・マイナーとの関係などが明かされることになりそうです。ややこしい人間関係が出てきそうですが、この物語はその複雑に絡み合った関係とそれぞれの想いを再び綺麗に繋いでいくでしょう。
細かいことですが、ミューズとドドリーは当初一心同体でしたが数話前から分離化が図られています。これはミューズ自身に話しがクローズアップされてきたことと同期しています。合わせて今まで助っ人扱いだったミューズに対して響達は一個人としての好意、理解可能な相手として受け入れ始めています。プリキュアはあくまで個人レベルでの関係がベースなのでその手順を踏んでいると考えられます。組織とか陣営とか利害は考慮の余地に入りません。重要なのは、心ある者を愛し守りたいという意思。子ども向け番組らしいストレートさです。
すれ違いから絆に亀裂が入った響と奏、ハミィに憎悪を向けるようになったセイレーン、この物語は他者との関係の中で苦しみ迷う人々を描いてきました。次に登場するのはどんな悲しい物語なのか。おそらくミューズもまた満たされぬ何かを秘めている。基本的にこの物語は悲しい物語です。誰も満たされていない。自分達でそうしてしまった。でも、それを元に戻したのも他ならぬ彼女達です。一つ一つの小さな悲しい物語は幸せの物語へと変わり、それらを束ねるこの物語もその途上にある。そこで見えてくるのは人の業であり、それでもなお幸せや愛情を求める人々の願いである。
子ども向けアニメの良いところは、その願いを叶えること。
プリキュアの良いところは、それを真正面から真剣にやること。
第33話「ホワワ~ン!みんなの夢はプリキュアの力ニャ!」
○今週の出来事
①夢への障害
セイレーンは心地よさそうにピアノの旋律に耳を傾けます。
弾き終わった響は不安を抱きながら感想を求めます。セイレーンはアドバイスすることはもうないと太鼓判を押します。響は彼女の手を掴んでエレンのおかげだとお礼を言います。先ほどから奏の姿が見えません。これは密会でしょうか。奏が見たら大変なことになるかもしれ……あーでも、正妻の余裕で問題ないかもしれない。
響が練習していたのはピアノコンクールのため。彼女の父も来るそうです。しかしまだ自分が参加することを伝えていません。照れくさいと話す響。この響の心境は父との距離感にあります。今回のお話しは夢の話しであると同時に父と子のお話しでもあります。
家に戻るとビックリするのは響の方でした。父が審査員をやると言います。友人の代理でやることになったと話す父を前に響は固まります。出場しないか?と訪ねる父に響は大げさな態度でパス!と辞退します。可愛い。
家庭科室にいくつものカップケーキが並びます。奏の試作品。ハミィは相変わらず何でもかんでも食べてしまいますが、セイレーンはこれが良いとアドバイスします。これは戦闘シーンでの彼女の言葉を支える部分にもなっています。支援、応援、補助、促進なども人の夢を"守る"ことに含まれます。
カップケーキに背を向けて響は考え事。奏が名前を呼んでも応えません。ようやく気付いて振り返った響の口に問答無用でスプーンを入れます。「どれが美味しい?」これが正妻の実力。流石です。全部美味しいと答える響にいい加減さを感じる奏。嫁と亭主の会話かよ。
奏がカップケーキを作っていたのはピアノコンクール同様、スイーツコンクールのため。奏は改めて、今度の日曜は夢への第一歩、それぞれの夢に向かって頑張るのだと言います。セイレーンも応援。しかし響は浮かない顔。
学校帰り、調べの館まで来ると響はコンクールに出たくないと言い出します。パパが審査員では緊張して良い演奏ができない、それにまた自分を評価してくれないだろうと頭を抱えます。響のじれったい態度を見て奏はいつもの響らしくないと言います。今の響は煮え切らない。
みんなと別れて一人で帰る響を奏太はお面使って驚かします。それを見て響は閃きます。セリフはありませんが着々とアコの出番が増えています。
②導き手
ラッキースプーンで奏は店の手伝い。しゃがんで女の子にケーキが入った箱を手渡します。ナイスなアングル。衣替えの季節なので私服チェンジ。白ニーソの効果は抜群です。
新しいお客さんがやってきます。が、それを見て奏はちょっと引きます。胡散臭い格好の女性客。変装した響です。怪しむ奏の視線に耐えられなくなって店を出ようとした途端転んで変装が解けてしまいます。
コンクールへは出るけどパパの手前では緊張するから変装して行くと話す響。それを聞いてそういう問題じゃないと奏は率直に言います。この問題はコンクールで弾けるかどうかではなく、響の父への心理的障壁を乗越えられるかにある。自分だと気付かなければ公平に審査してくれると口実を続ける響に「響の夢を一番応援してくれるのは誰? 北条先生じゃないの?」と疑問を投げかけます。自分にカップケーキを教えてくれたのはパパだった、今の自分が居るのはパパのおかげ。響もキチンとお父さんと向き合わなきゃ夢から逃げることになると言葉を続けます。
奏の言っていることは正しい。が、父親との在り方に響と奏の境遇の違いがある。奏は常に家族から承認され彼女もそれを素直に受け止めてきた背景があります。しかし響は違う。彼女は父親に見捨てられたという強い愛情の欠乏を味わっている。それは容易なことでは打ち消せない。確かに今の彼女は父親に愛情を抱いているし音楽への情熱も再び持てた。が、一度深く刻まれた不安や軋轢は喉に引っかかった小骨のようになかなか取れずもやもやと残ってしまっている。余談ですがこれが大人になっても解消されず、ずっと対人関係において不安の種になり続け本質に気づけないまま誤った補填の仕方をする人は居る。
将来パパの店を手伝うと意気込んで話す奏に、響はパパのためにピアニストになりたいわけじゃないと弱々しく答えます。それまで自信を持って話していた奏はそれを聞いて虚を突かれます。何気ない言葉が思わぬ呼び水となる。
調べの館で練習。しかしこの前のように上手く行きません。セイレーンは変だと指摘します。セイレーンも事情はハミィから聞いています。
セイレーンは大事なことから逃げていると直球で言います。ふたりは夢があって羨ましい、しかもお父さんがそれを応援してくれる。本気でピアニストを目指すならお父さんに向き合うべきだと言います。
その夜、明かりを消した自室でひとしきり悩んだ後響は母親に相談します。母は話しを茶化しつつもその答えに気付いているはずだと意味深長な言葉を残します。どうしてピアニストになりたいのかもう一度よく考えてごらん。
奏はケーキを作る途中でボーッとしています。父親が夜更かしはいけないと声をかけます。奏は父にどうして店を始めたのか訪ねます。美味しいと言ってくれる人がいるからと答えるとママのこと?と奏が合の手を入れます。しかしそれだけの理由ではないと父は言います。微笑を返しながら父はその答えに気付いているんじゃないかな、どうしてパティシエになりたいんだい?
ため息を一つつくと幸せがひとつ逃げていく。セイレーンの様子を見て音吉さんは声をかけます。自分には夢がないと話す彼女に、お前さんはもうその答えに気付いていると言います。未来が見えなかったら今を見つめればいい。お前さんが夢中になれることは?どんな時に幸せを感じ、どんな人と喜びを分かち合いたいのか、その先にお前さんの夢がある。
プリキュアの大人はカッコイイ。
メフィストは成果が上がらない部下にご立腹。次成果を出せなければ用無しと言います。これが現実。子どもが抱く夢と理想。大人が背負う現実のこのギャップ。ノルマが果たせなければクビ。長い夏休みが待っています。
③開演
コンクール当日。変装セットを前に大きくため息をつきます。そこに奏が声をかけます。
奏は響に渡したいものがあると言います。響専用巨大カップケーキ。自信に満ちあふれて不敵な笑みを浮かべる奏可愛い。奏自身が響専用みたいなものですが。
カップケーキを見て響は顔を輝かせます。
「そう! それ、それなの! あたしの夢!」
響に言われて考えたと言います。自分の夢は何のためか。私の作ったカップケーキで誰かを笑顔にしたい。それが私の夢。だって笑顔を見ると凄く嬉しいと話します。
それを聞いた響は勢いよく自分の頬を叩きます。痛いけど目が覚めた。
「一番大事なこと忘れてたよ。私も奏と同じ! 私のピアノで誰かを笑顔にしたい! それが夢!」
「響はそうでなくっちゃ♪」
物陰に隠れていたセイレーンはふたりの会話に安心するとそのままふたりに声をかけることなくその場を去ります。プリキュアのこういう演出は大好きです。奏がいなくてもおそらくセイレーンが声をかけたのでしょうが、こうやって彼女達がお互いに励まし合い、助け合い、愛情を注いでいくこと、時には気付かれなくてもそれを見守っていることは大切なことです。そうした目には見えない絆や優しさは必ず別などこかで形となって現れる。彼女達が守り、この物語が一番伝えようとしているのはそれです。
「わたし怖かったの。もし失敗してパパに才能が無いって言われたらって、そればっかり考えていた。でも、逃げるのはもう終わり。ここで決めなきゃ女がすたる」
父は演奏者リストに載った娘の名に目を留めます。穏やかな、暖かい眼差しが彼の表情に浮かびます。視線をステージへ戻します。
「14番。北条響です!」
トリオ達はコンクールを台無しにしようとネガトーンを召喚。それを阻止せんと立ちはだかるセイレーン。久しぶりの単独変身。
演奏が始まります。戦闘も激化。どこにそんな作画体力が、と思わせるアクション。映画はどうした。どこからそんな予算と人員が出ているんだろう。などと余計な疑問が一瞬頭をかすめます。
一人でもかなり戦えるビート。しかしそれも長続きはしません。瀬戸際に立たされます。それでもビートはふたりが夢に向かって頑張っていること、たくさんの人を笑顔する夢を守る、それが自分の夢だと決意を固めて立ち上がります。
間一髪で駆けつけるメロディリズム。ふたりの登場にビートは嬉しさで表情をいっぱいにします。今週一番可愛いシーンです。コンクールはバッチリと答えるふたり。今度は自分達がビートを守る番。作画班の執念を思わせる勢いとテンポが伝わるアクション。逆に映画の方が心配になります。トドメは神風アタック。
コンクールで奏は入選。タテが銀色ってことは優勝ってわけではないのかな。響も銀のトロフィーが父から手渡されます。響の後ろには金のトロフィーを持った子がいるのでやはり最優秀というわけではないようです。
コンクールが終わって、帰ろうとする父を響は呼び止めます。出場のことを黙っていてごめんなさいと謝ると、父は知っていたとあっさり言います。
心の重荷が取れてガックリきたのか安堵して座り込む響。彼女の誠実さ、素直さから考えると父を騙していたような形になるので良心の呵責になっていたのでしょう。父に対する不安が消えた後に残るのがそうした良心だというのは彼女らしい。
響の頭に父は手を乗せます。ちょうど幼子に手をやる父親の感じになっています。おそらくこれは意図してそういう構図にしています。この番組は子どもと親とが一緒に見ている番組です。
「よく頑張ったね。響の演奏とても心に響いたよ」
その言葉に響は涙を浮かべると立ち上がって父の腕にしがみつきます。子どもの頃のようにピアノを教えて欲しいとお願いします。その瞳は幼子のようにキラキラと一心に輝いています。もっとピアノが上手くなりたい。パパとママのようにたくさんの人に感動を届けたいと勢い込んでしゃべります。
ドイツ語で答える父。
「喜んで」そう言ったのよ。セイレーンが代りに説明します。幼い頃、父の言葉が分らず心が離れてしまいましたが今度は違う。タテを持った奏が響にピースサインを送ります。同じように満面の笑みで響は返します。
父と別れると、近くにミューズが居ることに気付きます。彼女は先ほどから物憂げな態度を示しています。ドドリーが伝言で「私にも守りたいものがある」と残して去ります。
メフィスト出陣。
④次回予告
黄色は映画に間に合うんでしょうか。
○トピック
夢に向かって進むお話し。時期的そろそろやるだろうと思っていましたがやっぱりやってくれました。親子の関わりを視聴者目線で伝えています。女児向けアニメの面目躍如。中盤のエピソードとして見事なものでした。音楽、夢、親子の絆、友達との絆、意思疎通、スイートがこれまでにやってきたことを纏め上げています。
人のための夢を抱くのはシリーズでも定番になっています。これをテーマにしたのはプリキュア5で、この作品からプリキュアは主人公達に夢を持たせています。具体的な目標を立てることで自信と喜び、他者への思い遣りを昇華していけるようになっています。本作でもそれは変わりませんが、そこに父と子のエピソードを入れているのはスイートらしいところです。
響は幼い頃に父との間で大きな失望を味わっています。これは父への不信、愛されていないのではないかという不安となって彼女の心の底に沈殿することになります。これまでのエピソードで父親や音楽へのわだかまりはある程度改善されていましたが今回で完全に解消。コンクールへの参加が幼い頃の再現になっているのも分りやすい。彼女が本当に父に、音楽に向き合えるかの試練となっています。
北条親子の関係と夢の話しは一見関係ないようで緊密に繋がっているのが面白い。これは自信や不安、自分を他者に開示していけるかの根底に関わっています。響が抱いている潜在的な不安を父の愛情と期待を受けることで払拭させて夢に向かって真っ直ぐに進めるようにしています。夢が親子の絆を繋ぎ、親子の絆が夢を実現させる助けになっている。
夢というのは自分が歩く道のことです。それは一面では将来の職業ややりたいこととして具体的な形を取りますが、生き方の指針として抽象的な、しかし生涯を通じて叶えていくような信念として表現しうるものでもあります(こういう大人になりたいとか)。要は志し。奏は誰かを笑顔にしたいためにパティシエを選び、響はピアニストを選ぶ。セイレーンは具体的に選んではいないものの根底にはふたりと同じ意思があります。ビートが単独で戦っているのもその補強になっています。響と奏がきっちりコンクールを終わせられたことでセイレーンが他者の助けになっていることを示します。これは日常パートでピアノの練習、ケーキの品評を手伝っている部分にも言えます。
夢というテーマを通じて今回表現しているのは「あなたは何のために頑張るか」ということです。志しや動機が肝要。夢は職業とイコールではありません。例えば私の今の職業は偶然と取捨選択によるものです。職業的使命や責任は持っていますがそれと私自身が人生の中で叶えたいものは直結していません。おそらく職業を通じて自己実現を叶えようというのは現代に生まれた発想だと思います。それに捕らわれる必要はありません。
奏は響の親子問題に適切な助言を与えることはできませんでしたが、響を励ますことはできました。響が何気なくささやいた言葉を彼女は真剣に受け取って響のためにケーキを作りました。これよくよく考えると自分勝手な話しです。奏は自分の話しをしていると言って良い。でも彼女には確信があったのだと思います。響がきっと笑顔になってくれる。きっと自分が伝えたいことを分ってくれる。どうして自分がパティシエになりたいのか。その根底は響も同じなんだと。それを見て響はちゃんと気付きます。何のために自分がここに立っているのかを。セイレーンが立ち去っていくシーンを含めて素敵な場面です。
こうした人の心の結びつき、全く関係ないように見えてそれが繋がっていくこと、信頼と自信、確信、人が人を殺し生かしていくそのどうしようもない社会的動物の性の中でそれでも幸せを掴み取っていく姿に私は心動かされます。この物語は最悪な状態から始まっている。響と奏は崩壊寸前の状態だったしセイレーンは他者を憎んでいた。それが今ではお互いを愛し信頼して幸せや夢を掴み取っていけるようになっている。人が人を損ない壊していくことに違いはないが、人が人を生かし創りだしていけるものがある、というのがプリキュアから感じ取る最も重要なことだと私は思っています。
北条親子の話しに戻ります。
響は音楽を通じて父への信頼を喪失してしまいましたが、その音楽を通じて信頼を取り戻しています。父親が音楽の才能の有り無しで娘を評価しているわけではありません。しかし響はそういう風に受け取ってしまいそれが不安の種になっていました。だからこの物語はもう一度過去を再現させて響に父と向き合えるようにしています。非常に論理的な展開です。
スイートの物語は響の成長に仮託されている部分が多いのですが、今回のエピソードでもそれが分ります。響は父に拒まれてしまうのではないかという不安を断ち切って自分がやりたことのために奮い立つ。そこには父親だけに認められようとする幼い意思からより多くの人々に自分を示したいという意思への変化が見られます。たくさんの人々に感動を届けたいという気持ちは彼女をより成長させるでしょう。音楽を通じて彼女は自己実現の方法、親子の絆を見出しています。
話しがいったん飛びますが、幼少期の親子関係が後々の人格形成や愛情の持ち方、感じ方に影響を与えるという説があります。愛情に飢えた幼年期を過ごすとそれが不安や歪みとしてその人の心に残る。他者への関わり方が独善的になったり、依存的になったり、作為的になったりする(その辺の方向性は本人の資質にもよる)。
だからと言ってそれが一概に駄目ということではありません。孤独感を埋めようと働きかけていくことによって創造性が生まれることがあるし、そうした補填しようとする活動が人の原動力ともなる。その結果愛情や信頼を得るキッカケにもなります。それは個別的な生き方、模索の仕方と言えます。一種の適応ですね。
人は生まれ持った環境や資質によって様々な生き方が生じます。その過程で幸せや愛情、自己の正当性を勝ち取るための戦いや争いが起きることもあります。しかしそれが不幸のどん底に陥る道ではない、と私は思いたい。遠い道のりになったとしても間違いではない、と思いたい。プリキュアは子ども番組なので親子の絆、愛情をキチンと取り戻す話しをしています。しかしこれは親子に限らず、相手が友人や恋人、あるいは自分が親になったときに取り戻すことも可能なはずです。
親子関係、奏との関係もそうですが紆余曲折を経てより一層絆が深まっています。禍福はあざなえる縄のごとしとは言ったもので、長い人生の中では幸福な時期や苦悩と困難の時期がある。重要なのはその経験を糧にして自分の理想や使命を築き上げていくことにある。その場その場で一生懸命になることは勿論大切だけどのど元過ぎて忘れられていくのでは何も残らない。プリキュアの物語は1年をかけて紡がれるお話しです。その体験を通じて彼女達は自分で大切なものを磨き上げていく。その姿は生きることの意味と価値を映している。私にとって物語を見ることは人生を見ることと同義です。人の生き方から学ぶことはたくさんある。
……というプリキュアの話しをしているようで関係ない話しをするのがこの感想の目的です。
①夢への障害
セイレーンは心地よさそうにピアノの旋律に耳を傾けます。
弾き終わった響は不安を抱きながら感想を求めます。セイレーンはアドバイスすることはもうないと太鼓判を押します。響は彼女の手を掴んでエレンのおかげだとお礼を言います。先ほどから奏の姿が見えません。これは密会でしょうか。奏が見たら大変なことになるかもしれ……あーでも、正妻の余裕で問題ないかもしれない。
響が練習していたのはピアノコンクールのため。彼女の父も来るそうです。しかしまだ自分が参加することを伝えていません。照れくさいと話す響。この響の心境は父との距離感にあります。今回のお話しは夢の話しであると同時に父と子のお話しでもあります。
家に戻るとビックリするのは響の方でした。父が審査員をやると言います。友人の代理でやることになったと話す父を前に響は固まります。出場しないか?と訪ねる父に響は大げさな態度でパス!と辞退します。可愛い。
家庭科室にいくつものカップケーキが並びます。奏の試作品。ハミィは相変わらず何でもかんでも食べてしまいますが、セイレーンはこれが良いとアドバイスします。これは戦闘シーンでの彼女の言葉を支える部分にもなっています。支援、応援、補助、促進なども人の夢を"守る"ことに含まれます。
カップケーキに背を向けて響は考え事。奏が名前を呼んでも応えません。ようやく気付いて振り返った響の口に問答無用でスプーンを入れます。「どれが美味しい?」これが正妻の実力。流石です。全部美味しいと答える響にいい加減さを感じる奏。嫁と亭主の会話かよ。
奏がカップケーキを作っていたのはピアノコンクール同様、スイーツコンクールのため。奏は改めて、今度の日曜は夢への第一歩、それぞれの夢に向かって頑張るのだと言います。セイレーンも応援。しかし響は浮かない顔。
学校帰り、調べの館まで来ると響はコンクールに出たくないと言い出します。パパが審査員では緊張して良い演奏ができない、それにまた自分を評価してくれないだろうと頭を抱えます。響のじれったい態度を見て奏はいつもの響らしくないと言います。今の響は煮え切らない。
みんなと別れて一人で帰る響を奏太はお面使って驚かします。それを見て響は閃きます。セリフはありませんが着々とアコの出番が増えています。
②導き手
ラッキースプーンで奏は店の手伝い。しゃがんで女の子にケーキが入った箱を手渡します。ナイスなアングル。衣替えの季節なので私服チェンジ。白ニーソの効果は抜群です。
新しいお客さんがやってきます。が、それを見て奏はちょっと引きます。胡散臭い格好の女性客。変装した響です。怪しむ奏の視線に耐えられなくなって店を出ようとした途端転んで変装が解けてしまいます。
コンクールへは出るけどパパの手前では緊張するから変装して行くと話す響。それを聞いてそういう問題じゃないと奏は率直に言います。この問題はコンクールで弾けるかどうかではなく、響の父への心理的障壁を乗越えられるかにある。自分だと気付かなければ公平に審査してくれると口実を続ける響に「響の夢を一番応援してくれるのは誰? 北条先生じゃないの?」と疑問を投げかけます。自分にカップケーキを教えてくれたのはパパだった、今の自分が居るのはパパのおかげ。響もキチンとお父さんと向き合わなきゃ夢から逃げることになると言葉を続けます。
奏の言っていることは正しい。が、父親との在り方に響と奏の境遇の違いがある。奏は常に家族から承認され彼女もそれを素直に受け止めてきた背景があります。しかし響は違う。彼女は父親に見捨てられたという強い愛情の欠乏を味わっている。それは容易なことでは打ち消せない。確かに今の彼女は父親に愛情を抱いているし音楽への情熱も再び持てた。が、一度深く刻まれた不安や軋轢は喉に引っかかった小骨のようになかなか取れずもやもやと残ってしまっている。余談ですがこれが大人になっても解消されず、ずっと対人関係において不安の種になり続け本質に気づけないまま誤った補填の仕方をする人は居る。
将来パパの店を手伝うと意気込んで話す奏に、響はパパのためにピアニストになりたいわけじゃないと弱々しく答えます。それまで自信を持って話していた奏はそれを聞いて虚を突かれます。何気ない言葉が思わぬ呼び水となる。
調べの館で練習。しかしこの前のように上手く行きません。セイレーンは変だと指摘します。セイレーンも事情はハミィから聞いています。
セイレーンは大事なことから逃げていると直球で言います。ふたりは夢があって羨ましい、しかもお父さんがそれを応援してくれる。本気でピアニストを目指すならお父さんに向き合うべきだと言います。
その夜、明かりを消した自室でひとしきり悩んだ後響は母親に相談します。母は話しを茶化しつつもその答えに気付いているはずだと意味深長な言葉を残します。どうしてピアニストになりたいのかもう一度よく考えてごらん。
奏はケーキを作る途中でボーッとしています。父親が夜更かしはいけないと声をかけます。奏は父にどうして店を始めたのか訪ねます。美味しいと言ってくれる人がいるからと答えるとママのこと?と奏が合の手を入れます。しかしそれだけの理由ではないと父は言います。微笑を返しながら父はその答えに気付いているんじゃないかな、どうしてパティシエになりたいんだい?
ため息を一つつくと幸せがひとつ逃げていく。セイレーンの様子を見て音吉さんは声をかけます。自分には夢がないと話す彼女に、お前さんはもうその答えに気付いていると言います。未来が見えなかったら今を見つめればいい。お前さんが夢中になれることは?どんな時に幸せを感じ、どんな人と喜びを分かち合いたいのか、その先にお前さんの夢がある。
プリキュアの大人はカッコイイ。
メフィストは成果が上がらない部下にご立腹。次成果を出せなければ用無しと言います。これが現実。子どもが抱く夢と理想。大人が背負う現実のこのギャップ。ノルマが果たせなければクビ。長い夏休みが待っています。
③開演
コンクール当日。変装セットを前に大きくため息をつきます。そこに奏が声をかけます。
奏は響に渡したいものがあると言います。響専用巨大カップケーキ。自信に満ちあふれて不敵な笑みを浮かべる奏可愛い。奏自身が響専用みたいなものですが。
カップケーキを見て響は顔を輝かせます。
「そう! それ、それなの! あたしの夢!」
響に言われて考えたと言います。自分の夢は何のためか。私の作ったカップケーキで誰かを笑顔にしたい。それが私の夢。だって笑顔を見ると凄く嬉しいと話します。
それを聞いた響は勢いよく自分の頬を叩きます。痛いけど目が覚めた。
「一番大事なこと忘れてたよ。私も奏と同じ! 私のピアノで誰かを笑顔にしたい! それが夢!」
「響はそうでなくっちゃ♪」
物陰に隠れていたセイレーンはふたりの会話に安心するとそのままふたりに声をかけることなくその場を去ります。プリキュアのこういう演出は大好きです。奏がいなくてもおそらくセイレーンが声をかけたのでしょうが、こうやって彼女達がお互いに励まし合い、助け合い、愛情を注いでいくこと、時には気付かれなくてもそれを見守っていることは大切なことです。そうした目には見えない絆や優しさは必ず別などこかで形となって現れる。彼女達が守り、この物語が一番伝えようとしているのはそれです。
「わたし怖かったの。もし失敗してパパに才能が無いって言われたらって、そればっかり考えていた。でも、逃げるのはもう終わり。ここで決めなきゃ女がすたる」
父は演奏者リストに載った娘の名に目を留めます。穏やかな、暖かい眼差しが彼の表情に浮かびます。視線をステージへ戻します。
「14番。北条響です!」
トリオ達はコンクールを台無しにしようとネガトーンを召喚。それを阻止せんと立ちはだかるセイレーン。久しぶりの単独変身。
演奏が始まります。戦闘も激化。どこにそんな作画体力が、と思わせるアクション。映画はどうした。どこからそんな予算と人員が出ているんだろう。などと余計な疑問が一瞬頭をかすめます。
一人でもかなり戦えるビート。しかしそれも長続きはしません。瀬戸際に立たされます。それでもビートはふたりが夢に向かって頑張っていること、たくさんの人を笑顔する夢を守る、それが自分の夢だと決意を固めて立ち上がります。
間一髪で駆けつけるメロディリズム。ふたりの登場にビートは嬉しさで表情をいっぱいにします。今週一番可愛いシーンです。コンクールはバッチリと答えるふたり。今度は自分達がビートを守る番。作画班の執念を思わせる勢いとテンポが伝わるアクション。逆に映画の方が心配になります。トドメは神風アタック。
コンクールで奏は入選。タテが銀色ってことは優勝ってわけではないのかな。響も銀のトロフィーが父から手渡されます。響の後ろには金のトロフィーを持った子がいるのでやはり最優秀というわけではないようです。
コンクールが終わって、帰ろうとする父を響は呼び止めます。出場のことを黙っていてごめんなさいと謝ると、父は知っていたとあっさり言います。
心の重荷が取れてガックリきたのか安堵して座り込む響。彼女の誠実さ、素直さから考えると父を騙していたような形になるので良心の呵責になっていたのでしょう。父に対する不安が消えた後に残るのがそうした良心だというのは彼女らしい。
響の頭に父は手を乗せます。ちょうど幼子に手をやる父親の感じになっています。おそらくこれは意図してそういう構図にしています。この番組は子どもと親とが一緒に見ている番組です。
「よく頑張ったね。響の演奏とても心に響いたよ」
その言葉に響は涙を浮かべると立ち上がって父の腕にしがみつきます。子どもの頃のようにピアノを教えて欲しいとお願いします。その瞳は幼子のようにキラキラと一心に輝いています。もっとピアノが上手くなりたい。パパとママのようにたくさんの人に感動を届けたいと勢い込んでしゃべります。
ドイツ語で答える父。
「喜んで」そう言ったのよ。セイレーンが代りに説明します。幼い頃、父の言葉が分らず心が離れてしまいましたが今度は違う。タテを持った奏が響にピースサインを送ります。同じように満面の笑みで響は返します。
父と別れると、近くにミューズが居ることに気付きます。彼女は先ほどから物憂げな態度を示しています。ドドリーが伝言で「私にも守りたいものがある」と残して去ります。
メフィスト出陣。
④次回予告
黄色は映画に間に合うんでしょうか。
○トピック
夢に向かって進むお話し。時期的そろそろやるだろうと思っていましたがやっぱりやってくれました。親子の関わりを視聴者目線で伝えています。女児向けアニメの面目躍如。中盤のエピソードとして見事なものでした。音楽、夢、親子の絆、友達との絆、意思疎通、スイートがこれまでにやってきたことを纏め上げています。
人のための夢を抱くのはシリーズでも定番になっています。これをテーマにしたのはプリキュア5で、この作品からプリキュアは主人公達に夢を持たせています。具体的な目標を立てることで自信と喜び、他者への思い遣りを昇華していけるようになっています。本作でもそれは変わりませんが、そこに父と子のエピソードを入れているのはスイートらしいところです。
響は幼い頃に父との間で大きな失望を味わっています。これは父への不信、愛されていないのではないかという不安となって彼女の心の底に沈殿することになります。これまでのエピソードで父親や音楽へのわだかまりはある程度改善されていましたが今回で完全に解消。コンクールへの参加が幼い頃の再現になっているのも分りやすい。彼女が本当に父に、音楽に向き合えるかの試練となっています。
北条親子の関係と夢の話しは一見関係ないようで緊密に繋がっているのが面白い。これは自信や不安、自分を他者に開示していけるかの根底に関わっています。響が抱いている潜在的な不安を父の愛情と期待を受けることで払拭させて夢に向かって真っ直ぐに進めるようにしています。夢が親子の絆を繋ぎ、親子の絆が夢を実現させる助けになっている。
夢というのは自分が歩く道のことです。それは一面では将来の職業ややりたいこととして具体的な形を取りますが、生き方の指針として抽象的な、しかし生涯を通じて叶えていくような信念として表現しうるものでもあります(こういう大人になりたいとか)。要は志し。奏は誰かを笑顔にしたいためにパティシエを選び、響はピアニストを選ぶ。セイレーンは具体的に選んではいないものの根底にはふたりと同じ意思があります。ビートが単独で戦っているのもその補強になっています。響と奏がきっちりコンクールを終わせられたことでセイレーンが他者の助けになっていることを示します。これは日常パートでピアノの練習、ケーキの品評を手伝っている部分にも言えます。
夢というテーマを通じて今回表現しているのは「あなたは何のために頑張るか」ということです。志しや動機が肝要。夢は職業とイコールではありません。例えば私の今の職業は偶然と取捨選択によるものです。職業的使命や責任は持っていますがそれと私自身が人生の中で叶えたいものは直結していません。おそらく職業を通じて自己実現を叶えようというのは現代に生まれた発想だと思います。それに捕らわれる必要はありません。
奏は響の親子問題に適切な助言を与えることはできませんでしたが、響を励ますことはできました。響が何気なくささやいた言葉を彼女は真剣に受け取って響のためにケーキを作りました。これよくよく考えると自分勝手な話しです。奏は自分の話しをしていると言って良い。でも彼女には確信があったのだと思います。響がきっと笑顔になってくれる。きっと自分が伝えたいことを分ってくれる。どうして自分がパティシエになりたいのか。その根底は響も同じなんだと。それを見て響はちゃんと気付きます。何のために自分がここに立っているのかを。セイレーンが立ち去っていくシーンを含めて素敵な場面です。
こうした人の心の結びつき、全く関係ないように見えてそれが繋がっていくこと、信頼と自信、確信、人が人を殺し生かしていくそのどうしようもない社会的動物の性の中でそれでも幸せを掴み取っていく姿に私は心動かされます。この物語は最悪な状態から始まっている。響と奏は崩壊寸前の状態だったしセイレーンは他者を憎んでいた。それが今ではお互いを愛し信頼して幸せや夢を掴み取っていけるようになっている。人が人を損ない壊していくことに違いはないが、人が人を生かし創りだしていけるものがある、というのがプリキュアから感じ取る最も重要なことだと私は思っています。
北条親子の話しに戻ります。
響は音楽を通じて父への信頼を喪失してしまいましたが、その音楽を通じて信頼を取り戻しています。父親が音楽の才能の有り無しで娘を評価しているわけではありません。しかし響はそういう風に受け取ってしまいそれが不安の種になっていました。だからこの物語はもう一度過去を再現させて響に父と向き合えるようにしています。非常に論理的な展開です。
スイートの物語は響の成長に仮託されている部分が多いのですが、今回のエピソードでもそれが分ります。響は父に拒まれてしまうのではないかという不安を断ち切って自分がやりたことのために奮い立つ。そこには父親だけに認められようとする幼い意思からより多くの人々に自分を示したいという意思への変化が見られます。たくさんの人々に感動を届けたいという気持ちは彼女をより成長させるでしょう。音楽を通じて彼女は自己実現の方法、親子の絆を見出しています。
話しがいったん飛びますが、幼少期の親子関係が後々の人格形成や愛情の持ち方、感じ方に影響を与えるという説があります。愛情に飢えた幼年期を過ごすとそれが不安や歪みとしてその人の心に残る。他者への関わり方が独善的になったり、依存的になったり、作為的になったりする(その辺の方向性は本人の資質にもよる)。
だからと言ってそれが一概に駄目ということではありません。孤独感を埋めようと働きかけていくことによって創造性が生まれることがあるし、そうした補填しようとする活動が人の原動力ともなる。その結果愛情や信頼を得るキッカケにもなります。それは個別的な生き方、模索の仕方と言えます。一種の適応ですね。
人は生まれ持った環境や資質によって様々な生き方が生じます。その過程で幸せや愛情、自己の正当性を勝ち取るための戦いや争いが起きることもあります。しかしそれが不幸のどん底に陥る道ではない、と私は思いたい。遠い道のりになったとしても間違いではない、と思いたい。プリキュアは子ども番組なので親子の絆、愛情をキチンと取り戻す話しをしています。しかしこれは親子に限らず、相手が友人や恋人、あるいは自分が親になったときに取り戻すことも可能なはずです。
親子関係、奏との関係もそうですが紆余曲折を経てより一層絆が深まっています。禍福はあざなえる縄のごとしとは言ったもので、長い人生の中では幸福な時期や苦悩と困難の時期がある。重要なのはその経験を糧にして自分の理想や使命を築き上げていくことにある。その場その場で一生懸命になることは勿論大切だけどのど元過ぎて忘れられていくのでは何も残らない。プリキュアの物語は1年をかけて紡がれるお話しです。その体験を通じて彼女達は自分で大切なものを磨き上げていく。その姿は生きることの意味と価値を映している。私にとって物語を見ることは人生を見ることと同義です。人の生き方から学ぶことはたくさんある。
……というプリキュアの話しをしているようで関係ない話しをするのがこの感想の目的です。
第32話「オロオロ~!ヒーリングチェストが盗まれたニャ!」
○今週の出来事
①フリーマーケット
時計台のてっぺんに佇むミューズ。人に見つけられたら100%通報ものの出立ちと状況ですが、本人はあまり気にしていないかもしれません。
ミューズは前回メロディ達がクレッシェンドトーンの力を使っていたことを思い返しながら拳に力を入れます。不審に思ったドドリーが訪ねても相変わらず無言のまま。表情からも感情が読み取れません。ただ一つ分ることは、歯車がまた一つ動き出し始めたこと。
今日は加音町のフリーマーケット。広場には人が集まり各々品を広げています。もちろん響達も店側として参加。セイレーンは周囲の様子を伺いながら活気に感嘆。春と秋に開催されるんだけどピクニックみたいで楽しいと響は説明を加えながら自身もウキウキしています。
奏が声をかけます。すぐ隣でラッキースプーンの出張営業をやっています。店番は美空さんが担当。相変わらずお若い。絶対この店の男性利用客は美空さん目当てだと思う。
おやつにカップケーキが出ると聞いてハミィははしゃぎます。小判を持っているのは招き猫の真似でしょうか。その様子を男性が目撃。興味を持ちます。セイレーンはしゃべるぬいぐるみだと誤魔化します。ハミィも必死にモノマネ。ところがますます興味を持った男性は欲しがります。売り物ではないと説明すると今度はチェストを欲しがりますがこれも売り物ではないと断ります。だったら人目のつくところに置くなよという気もしますが、いわゆる客寄せ的なものです。おっさんも欲しがる「にゃんにゃんハミィ」と「ヒーリングチェスト」のセット。娘さんに買っていってあげれば喜ばれること間違いなし。子ども視点ではなく大人視点で訴求。女児向け玩具業界を席巻するプリキュアに隙はありません。
ハミィは間違えて売らないで、と響達に念を押します。トーン達も懇願。すでに購入済みの家庭に対しても(子どもにとって)値打ちものなので勝手に捨てたりしないでねという念の入れよう。クリスマス商戦までの長期戦です。それを過ぎればどうでもいい。そりゃドリームコレットも必要ないって言われます。スポンサーへの配慮と作品としての妥協点や割切りがハッキリしているのもプリキュアの面白いところ。
メフィストはプリキュアがチェストの力を得たことに苛立ちを募らせます。トリオを叱りつけて尻を叩きます。メフィストの態度にヒヤヒヤするファルセットとバリトン。が、バスドラはモグモグ食べながら「メフィスト様もようやく本気になってきたってことだよな」と冷静。胆が座っているというか、危機感が無いというか。
街ではフリーマーケットの参加者以外にも演奏している人達がいます。音楽の街というだけあって催し物には付きものなのでしょう。
子どもを連れたお母さんはふと人だかりを発見します。近寄ってみるとハミィが大安売りと宣伝しています。これだけ堂々としていれば逆に疑われない。文字どおり招き猫。女の子が欲しい!と言うと、奏はうさぎのぬいぐるみを紹介。女の子は一目で気に入ります。セイレーンのお手製らしい。器用です。女の子はこの子が一緒におうちに帰りたいと母親にねだります。女の子らしい言い回しです。早速ミミちゃんと名付けます。ぬいぐるみを大事そうに抱える少女を3人は嬉しそうに見送ります。
奏太とアコが様子を見にやってきます。奏が店の手伝いのことを伝えると奏太は思い出してアコに断ります。アコも気にせず帰るつもりだったと話しを合わせます。合わせているのか本当にそう思っていたのか微妙なところですが。この子はどこか人と距離を置いているように見える。集団の中に居ても孤立しているような、そんな印象。
響は自分が使っていたTシャツをあげるとアコに見せます。普段なら生意気そうにつっぱねそうなところですが、アコは物憂げな表情を浮かべながら辞退すると言葉少なに立ち去っていきます。心なしか意気消沈しているように見える。彼女の背に向かって奏太はまた明日、と声をかけます。奏太少年はいたずらっ子ですが気さくで面倒見が良い。
ところで、響の手に残ったTシャツは私が言い値で買い取ろう。他の衣服も頂きたい。いや、ちょっと知り合いの娘さんにプレゼントしたくて。上着だけじゃなく下…おっと、誰か来たようだ。
②ミューズの思惑
私がちょっと事情聴取を受けている間、チェストの販促をやったりして話しが進みます。タッチパネル型の鍵盤で演奏できるギミックがあります。
トリオは女装して近づく作戦のようです。割とノリがいい人達。
女装したトリオを見てドン引きする響達。絶対この人達会場を間違えてるよ。ただならぬプレッシャーを感じます。チェストに目を留めると無理矢理掴み取ってしまいます。普通に強引だな、おい。本物であることを確認して馬脚を表します。
店番を奏太に任せると3人はトリオを追いかけます。
チェストを奪還したものの女装が仇となって躓いて転倒。その拍子にチェストを手放してしまいます。すると何者かがチェストを拾います。素手で拾っているところを見るに、ミューズの中の人か関係者。建物の影に隠れた人物は小柄なようなですが、さて。
ダミーのチェストを拾い上げトリオは響達の目に見つからぬよう隠れます。その様子をビルの屋上から見るミューズ。移動したにしては早いが。
ようやくチェストが偽物だと気付くと同時に響達にも見つかります。偽物を見て響達もビックリ。本物はいずこに?
ミューズの目の前にありました。プリキュアも思わず盗んでしまう新商品。数年前に蒼い子が新商品を欲しがったこともありました。
ドドリーは早く返そうと言います。そうするつもりがないであろうミューズがチェストに手を伸ばすとクレッシェンドトーンが機先を制します。ドドリーはクレッシェンドトーン様とへりくだって挨拶をします。やはりトーンの上位者らしい。ドドリーに返事をすると、クレッシェンドトーンは出し抜けに言います。
「キュアミューズ、仮面を着けなくてはならないあなたの苦しい気持ちは分ります。ですが大丈夫、あなたが仮面を取る日はやがて訪れるでしょう」
メイジャー、マイナー、そしてもう一つの何かがあるのかもしれない。
バスドラは女の子が持ったミミちゃんに狙いをつけるとネガトーン化させます。これは酷い。いたいけな少女を脅かしたあげく女装の格好での召喚バンク。誰得だよ。
変貌したミミちゃんに少女は困惑しながらも手を伸ばします。母親はすぐに娘を抱えるとその場を退避。直後ネガトーンの腕が振り下ろされます。普通に殺傷力がある攻撃です。あぶねぇ。ネガトーンは音波を出して人々を苦しめます。
絶対にゆるせない! 珍しくモジューレを構えていません。スポンサーからチェスト優先の指示でもあったんでしょうか。私の感想、さっきから色々ツッコミ過ぎなんですがこういうノリなのでご了承ください。玩具宣伝アニメとして見ながら、女児向けアニメとして見ながら、大人の視点から見ながら、スカートを下から見ながら、様々な角度から見て楽しめるプリキュアは最高です。
耳も使って動くネガトーンは一筋縄ではいかなさそうです。プリキュアは三方向に分かれて攻撃をしかけます。メロディが気を引きます。その隙にリズムとビートが挟撃…のはずが返り討ち。メロディも音波を浴びて苦戦。なかなか良いローアングル。今週のネガトーンは良い仕事します。
眼下で繰り広げられる戦い。ミューズは動かないものの拳に力が入ります。クレッシェンドトーンは3人は世界の幸せのために必至で戦っている。その気持ちは同じはずだと言葉を投げかけます。思わず顔を背けるミューズ。後ろめたい、あるいは素直に向き合うには難しい何かがあるようです。ドドリーもミューズの内心までは分らないようです。
「キュアミューズ、あなたにとって最も大切な人達を守りたいというその気持ち分ります」
その言葉にミューズは驚いて振り向きます。どうやら彼女には彼女の道理があるらしい。
そうしている間にもメロディ達はネガトーンに反撃を入れます。メロディのパンチ→キック→リズム・ビートの同時キックのコンボは地味に凶悪。
「あの3人は幸せを願う人々を悲しみから守るために必死で戦っているのです。あなたもあの3人も守りたいという思いに変わりはないはず」
「ミューズ、メロディ達を信じるのです。あの3人とあなたの心はきっと一つになれるはずです」
詳しい事情は分りませんが、ミューズの意思とメロディ達の意思は根底で同じだから早まってはいけないと諭しているようです。
③あなたには人を幸せにする力がある
メロディは起死回生の策を閃きます。リズムとビートがネガトーンを引きつけている隙にメロディは横断幕で目隠しをします。これで身動きは取れない。
しかしミミちゃんの持ち主の女の子がネガトーンを庇います。母親が止めに入りますが女の子はミミちゃんを返して!と泣き出します。プリキュアは、いじめているわけではない、元の姿に戻すために取り憑いた悪い心と戦っている。必ずミミちゃんを返すと約束します。
メロディはネガトーンに語りかけます。
「思い出してあの女の子があなたを愛していることを。あなたにあの子を幸せにする力があることを」
流石プリキュアだ、唐突だ。この作品の悪いところでもあり、良いところでもある。常に直球で攻める。玩具宣伝回かと思いきやこういうところで攻めてくるから油断できない。スタッフの抜け目の無さに感心します。これはこの物語の縮図です。仲の良い友達がいること、何らかの理由で関係が崩れてしまうこと、それでも信じてくれる人が居ること、成すべきは成敗ではなく救済であること、再びあなたは他者の愛に気付きその人を幸せにすることができること。それをこの物語は証明する。
ミミちゃんを女の子に返します。ビートはうっかり自分が作った人形だと口を滑らしてしまいメロディに口を塞がれます。信じてくれてありがとうとメロディは少女にお礼を言います。少女のミミちゃんを信じる心をプリキュアは叶える。その意味でプリキュアは代行者です。他者を思い遣る心が幸せを紡ぐ。
ミューズはチェストを持って噴水の前へ降ります。
店番をしていた奏太のところに戻ります。いつの間にかアコも来ています。手にはチェスト。噴水の所に落ちていたと言います。喜んだは響はアコを抱きしめます。突然のことにアコは戸惑います。なるほどこうやって知らず知らずのうちに女の子を攻略していくわけなんだな響は。アコの陥落も近いかもしれない。
帰って行くアコを再び奏太は見送ります。何はともあれチェストは戻ってきたし一件落着。店の後片付けを手伝います。ハミィはクレッシェンドトーンに何があったのか訪ねますが、今日は疲れたとはぐらかされます。したたか。
ラストシーンはチェストで締め。当然直後にチェストのCM。ラブギターロッドも発売中。
④次回予告
また変装かよ。少しずつ物語は進んでいく。
○トピック
玩具宣伝回に見せかけてとても大切なことを伝える回。
スポンサーから金は頂く。宣伝もする。が、後は好きにさせてもらうと言わんばかりのエピソード。スポンサーの商品を宣伝するのがアニメ製作会社の使命。同時に子どもの心を育むのが子ども向けアニメの使命。その狭間で妥協することなく戦うプリキュアの勇姿が素敵です。
物語としてはいよいよミューズの話しが始動し始める。彼女なりの動機で戦っているらしいことが分ります。ミューズと何らかの関係がありそうなアコ。同一人物なのかそれとも…。彼女(達)はその心に何を抱き、何を紡いでいくのか。一ヶ月後には映画も控え、番組も後半戦。脂がのってきました。
本編中の感想でも触れましたが、ミミちゃんのエピソードは短いながらもスイートの物語をよく現しています。プリキュアは暴れ狂う心を破壊するためではなく癒すために居る。その心が操られたものであるか、自らそうなってしまったかに差はありません。人は過ちを、時に心を憎悪で満たすことがある。それでも彼女達はそうした人々の心を守ろうとする。なぜなら彼女達自身がそうであったからです。ネガトーンの媒体は人ではありませんが、子どもにとっての人形は友達なのでこれをモチーフにして物語の大事なメッセージを伝えているのは上手い表現です。プリキュアは完全無欠の超人や救世主ではありません。弱く脆い心を持つ普通の人々。プリキュア達の戦いは我々が背負う業そのものです。
常にこのシリーズがそうであるように本作もまたさらに一歩を踏みだそうとしています。憎悪に歪んだ心を癒すだけではなく、その心もまた人を幸せにする力があるのだと主張しています。
「思い出してあの女の子があなたを愛していることを。あなたにあの子を幸せにする力があることを」
如何に人が合わせ鏡のように相互的であるかを示す言葉です。そしてこの言葉が裏切られた人にではなく、裏切った人に向けられていることは示唆に富みます。裏切られることよりも裏切る事の方が辛く困難な道を辿るのだと思います。セイレーンは言うまでもなく、響と奏だってお互いに不信感を募らせて相手の心に見て見ぬ振りをしていました。それは裏切りと同じです。
愛されている、誰かに見られているということは相手もまたあなたに愛されたい、見て貰いたいと求めていることでもある。今一度振り返って欲しいあなたが一人ではないことを。あなたに差し伸ばされた手を掴むことが出来たなら、あの子はきっと喜んでくれる。コミュニケーションを主題とした本作らしい力強いメッセージです。
人間関係、絆、信頼、愛を通じて人は人を生かす。しかし他者の愛情を信じる、自分を理解して貰えていると信じることはとてもデリケートな問題で自分を託すことだと言っても良い。それはとても勇気が要ることです。響と奏が不安を抱きながら少しずつしか歩み寄れなかったのはそういう背景があります。でもだからこそそれを信じられることは本当に大切なことなのだと思います。信じることで初めて拓ける道がある。響が辿った道はとても長く険しいものでしたが、それ故に彼女は友達や絆の強さ、美しさ、喜びを知っています。ネガトーンに語りかけた言葉には彼女の経験や想いが息づいています。
こうしたことを考慮すれば最も恐れるべきは孤独でしょう。響が奏と、家族と心が離れたときに感じた孤独、不安。セイレーンが募らせた挫折と憎悪は孤独ゆえに行き場を失い募っていく。音が共鳴し音楽を形作る世界と対極をなすのは音がない、あるいは響かない世界。スイートが真に立ち向かう敵はそうしたものに関わってくるかもしれませんが、それはいずれ分るでしょう。なにより大事なことはプリキュアの物語は人を信じる物語であることです。これはシリーズとおして変らない。
私達には自分を、人を幸せにしていける力がある。
それを証明するのがプリキュアの物語です。
①フリーマーケット
時計台のてっぺんに佇むミューズ。人に見つけられたら100%通報ものの出立ちと状況ですが、本人はあまり気にしていないかもしれません。
ミューズは前回メロディ達がクレッシェンドトーンの力を使っていたことを思い返しながら拳に力を入れます。不審に思ったドドリーが訪ねても相変わらず無言のまま。表情からも感情が読み取れません。ただ一つ分ることは、歯車がまた一つ動き出し始めたこと。
今日は加音町のフリーマーケット。広場には人が集まり各々品を広げています。もちろん響達も店側として参加。セイレーンは周囲の様子を伺いながら活気に感嘆。春と秋に開催されるんだけどピクニックみたいで楽しいと響は説明を加えながら自身もウキウキしています。
奏が声をかけます。すぐ隣でラッキースプーンの出張営業をやっています。店番は美空さんが担当。相変わらずお若い。絶対この店の男性利用客は美空さん目当てだと思う。
おやつにカップケーキが出ると聞いてハミィははしゃぎます。小判を持っているのは招き猫の真似でしょうか。その様子を男性が目撃。興味を持ちます。セイレーンはしゃべるぬいぐるみだと誤魔化します。ハミィも必死にモノマネ。ところがますます興味を持った男性は欲しがります。売り物ではないと説明すると今度はチェストを欲しがりますがこれも売り物ではないと断ります。だったら人目のつくところに置くなよという気もしますが、いわゆる客寄せ的なものです。おっさんも欲しがる「にゃんにゃんハミィ」と「ヒーリングチェスト」のセット。娘さんに買っていってあげれば喜ばれること間違いなし。子ども視点ではなく大人視点で訴求。女児向け玩具業界を席巻するプリキュアに隙はありません。
ハミィは間違えて売らないで、と響達に念を押します。トーン達も懇願。すでに購入済みの家庭に対しても(子どもにとって)値打ちものなので勝手に捨てたりしないでねという念の入れよう。クリスマス商戦までの長期戦です。それを過ぎればどうでもいい。そりゃドリームコレットも必要ないって言われます。スポンサーへの配慮と作品としての妥協点や割切りがハッキリしているのもプリキュアの面白いところ。
メフィストはプリキュアがチェストの力を得たことに苛立ちを募らせます。トリオを叱りつけて尻を叩きます。メフィストの態度にヒヤヒヤするファルセットとバリトン。が、バスドラはモグモグ食べながら「メフィスト様もようやく本気になってきたってことだよな」と冷静。胆が座っているというか、危機感が無いというか。
街ではフリーマーケットの参加者以外にも演奏している人達がいます。音楽の街というだけあって催し物には付きものなのでしょう。
子どもを連れたお母さんはふと人だかりを発見します。近寄ってみるとハミィが大安売りと宣伝しています。これだけ堂々としていれば逆に疑われない。文字どおり招き猫。女の子が欲しい!と言うと、奏はうさぎのぬいぐるみを紹介。女の子は一目で気に入ります。セイレーンのお手製らしい。器用です。女の子はこの子が一緒におうちに帰りたいと母親にねだります。女の子らしい言い回しです。早速ミミちゃんと名付けます。ぬいぐるみを大事そうに抱える少女を3人は嬉しそうに見送ります。
奏太とアコが様子を見にやってきます。奏が店の手伝いのことを伝えると奏太は思い出してアコに断ります。アコも気にせず帰るつもりだったと話しを合わせます。合わせているのか本当にそう思っていたのか微妙なところですが。この子はどこか人と距離を置いているように見える。集団の中に居ても孤立しているような、そんな印象。
響は自分が使っていたTシャツをあげるとアコに見せます。普段なら生意気そうにつっぱねそうなところですが、アコは物憂げな表情を浮かべながら辞退すると言葉少なに立ち去っていきます。心なしか意気消沈しているように見える。彼女の背に向かって奏太はまた明日、と声をかけます。奏太少年はいたずらっ子ですが気さくで面倒見が良い。
ところで、響の手に残ったTシャツは私が言い値で買い取ろう。他の衣服も頂きたい。いや、ちょっと知り合いの娘さんにプレゼントしたくて。上着だけじゃなく下…おっと、誰か来たようだ。
②ミューズの思惑
私がちょっと事情聴取を受けている間、チェストの販促をやったりして話しが進みます。タッチパネル型の鍵盤で演奏できるギミックがあります。
トリオは女装して近づく作戦のようです。割とノリがいい人達。
女装したトリオを見てドン引きする響達。絶対この人達会場を間違えてるよ。ただならぬプレッシャーを感じます。チェストに目を留めると無理矢理掴み取ってしまいます。普通に強引だな、おい。本物であることを確認して馬脚を表します。
店番を奏太に任せると3人はトリオを追いかけます。
チェストを奪還したものの女装が仇となって躓いて転倒。その拍子にチェストを手放してしまいます。すると何者かがチェストを拾います。素手で拾っているところを見るに、ミューズの中の人か関係者。建物の影に隠れた人物は小柄なようなですが、さて。
ダミーのチェストを拾い上げトリオは響達の目に見つからぬよう隠れます。その様子をビルの屋上から見るミューズ。移動したにしては早いが。
ようやくチェストが偽物だと気付くと同時に響達にも見つかります。偽物を見て響達もビックリ。本物はいずこに?
ミューズの目の前にありました。プリキュアも思わず盗んでしまう新商品。数年前に蒼い子が新商品を欲しがったこともありました。
ドドリーは早く返そうと言います。そうするつもりがないであろうミューズがチェストに手を伸ばすとクレッシェンドトーンが機先を制します。ドドリーはクレッシェンドトーン様とへりくだって挨拶をします。やはりトーンの上位者らしい。ドドリーに返事をすると、クレッシェンドトーンは出し抜けに言います。
「キュアミューズ、仮面を着けなくてはならないあなたの苦しい気持ちは分ります。ですが大丈夫、あなたが仮面を取る日はやがて訪れるでしょう」
メイジャー、マイナー、そしてもう一つの何かがあるのかもしれない。
バスドラは女の子が持ったミミちゃんに狙いをつけるとネガトーン化させます。これは酷い。いたいけな少女を脅かしたあげく女装の格好での召喚バンク。誰得だよ。
変貌したミミちゃんに少女は困惑しながらも手を伸ばします。母親はすぐに娘を抱えるとその場を退避。直後ネガトーンの腕が振り下ろされます。普通に殺傷力がある攻撃です。あぶねぇ。ネガトーンは音波を出して人々を苦しめます。
絶対にゆるせない! 珍しくモジューレを構えていません。スポンサーからチェスト優先の指示でもあったんでしょうか。私の感想、さっきから色々ツッコミ過ぎなんですがこういうノリなのでご了承ください。玩具宣伝アニメとして見ながら、女児向けアニメとして見ながら、大人の視点から見ながら、スカートを下から見ながら、様々な角度から見て楽しめるプリキュアは最高です。
耳も使って動くネガトーンは一筋縄ではいかなさそうです。プリキュアは三方向に分かれて攻撃をしかけます。メロディが気を引きます。その隙にリズムとビートが挟撃…のはずが返り討ち。メロディも音波を浴びて苦戦。なかなか良いローアングル。今週のネガトーンは良い仕事します。
眼下で繰り広げられる戦い。ミューズは動かないものの拳に力が入ります。クレッシェンドトーンは3人は世界の幸せのために必至で戦っている。その気持ちは同じはずだと言葉を投げかけます。思わず顔を背けるミューズ。後ろめたい、あるいは素直に向き合うには難しい何かがあるようです。ドドリーもミューズの内心までは分らないようです。
「キュアミューズ、あなたにとって最も大切な人達を守りたいというその気持ち分ります」
その言葉にミューズは驚いて振り向きます。どうやら彼女には彼女の道理があるらしい。
そうしている間にもメロディ達はネガトーンに反撃を入れます。メロディのパンチ→キック→リズム・ビートの同時キックのコンボは地味に凶悪。
「あの3人は幸せを願う人々を悲しみから守るために必死で戦っているのです。あなたもあの3人も守りたいという思いに変わりはないはず」
「ミューズ、メロディ達を信じるのです。あの3人とあなたの心はきっと一つになれるはずです」
詳しい事情は分りませんが、ミューズの意思とメロディ達の意思は根底で同じだから早まってはいけないと諭しているようです。
③あなたには人を幸せにする力がある
メロディは起死回生の策を閃きます。リズムとビートがネガトーンを引きつけている隙にメロディは横断幕で目隠しをします。これで身動きは取れない。
しかしミミちゃんの持ち主の女の子がネガトーンを庇います。母親が止めに入りますが女の子はミミちゃんを返して!と泣き出します。プリキュアは、いじめているわけではない、元の姿に戻すために取り憑いた悪い心と戦っている。必ずミミちゃんを返すと約束します。
メロディはネガトーンに語りかけます。
「思い出してあの女の子があなたを愛していることを。あなたにあの子を幸せにする力があることを」
流石プリキュアだ、唐突だ。この作品の悪いところでもあり、良いところでもある。常に直球で攻める。玩具宣伝回かと思いきやこういうところで攻めてくるから油断できない。スタッフの抜け目の無さに感心します。これはこの物語の縮図です。仲の良い友達がいること、何らかの理由で関係が崩れてしまうこと、それでも信じてくれる人が居ること、成すべきは成敗ではなく救済であること、再びあなたは他者の愛に気付きその人を幸せにすることができること。それをこの物語は証明する。
ミミちゃんを女の子に返します。ビートはうっかり自分が作った人形だと口を滑らしてしまいメロディに口を塞がれます。信じてくれてありがとうとメロディは少女にお礼を言います。少女のミミちゃんを信じる心をプリキュアは叶える。その意味でプリキュアは代行者です。他者を思い遣る心が幸せを紡ぐ。
ミューズはチェストを持って噴水の前へ降ります。
店番をしていた奏太のところに戻ります。いつの間にかアコも来ています。手にはチェスト。噴水の所に落ちていたと言います。喜んだは響はアコを抱きしめます。突然のことにアコは戸惑います。なるほどこうやって知らず知らずのうちに女の子を攻略していくわけなんだな響は。アコの陥落も近いかもしれない。
帰って行くアコを再び奏太は見送ります。何はともあれチェストは戻ってきたし一件落着。店の後片付けを手伝います。ハミィはクレッシェンドトーンに何があったのか訪ねますが、今日は疲れたとはぐらかされます。したたか。
ラストシーンはチェストで締め。当然直後にチェストのCM。ラブギターロッドも発売中。
④次回予告
また変装かよ。少しずつ物語は進んでいく。
○トピック
玩具宣伝回に見せかけてとても大切なことを伝える回。
スポンサーから金は頂く。宣伝もする。が、後は好きにさせてもらうと言わんばかりのエピソード。スポンサーの商品を宣伝するのがアニメ製作会社の使命。同時に子どもの心を育むのが子ども向けアニメの使命。その狭間で妥協することなく戦うプリキュアの勇姿が素敵です。
物語としてはいよいよミューズの話しが始動し始める。彼女なりの動機で戦っているらしいことが分ります。ミューズと何らかの関係がありそうなアコ。同一人物なのかそれとも…。彼女(達)はその心に何を抱き、何を紡いでいくのか。一ヶ月後には映画も控え、番組も後半戦。脂がのってきました。
本編中の感想でも触れましたが、ミミちゃんのエピソードは短いながらもスイートの物語をよく現しています。プリキュアは暴れ狂う心を破壊するためではなく癒すために居る。その心が操られたものであるか、自らそうなってしまったかに差はありません。人は過ちを、時に心を憎悪で満たすことがある。それでも彼女達はそうした人々の心を守ろうとする。なぜなら彼女達自身がそうであったからです。ネガトーンの媒体は人ではありませんが、子どもにとっての人形は友達なのでこれをモチーフにして物語の大事なメッセージを伝えているのは上手い表現です。プリキュアは完全無欠の超人や救世主ではありません。弱く脆い心を持つ普通の人々。プリキュア達の戦いは我々が背負う業そのものです。
常にこのシリーズがそうであるように本作もまたさらに一歩を踏みだそうとしています。憎悪に歪んだ心を癒すだけではなく、その心もまた人を幸せにする力があるのだと主張しています。
「思い出してあの女の子があなたを愛していることを。あなたにあの子を幸せにする力があることを」
如何に人が合わせ鏡のように相互的であるかを示す言葉です。そしてこの言葉が裏切られた人にではなく、裏切った人に向けられていることは示唆に富みます。裏切られることよりも裏切る事の方が辛く困難な道を辿るのだと思います。セイレーンは言うまでもなく、響と奏だってお互いに不信感を募らせて相手の心に見て見ぬ振りをしていました。それは裏切りと同じです。
愛されている、誰かに見られているということは相手もまたあなたに愛されたい、見て貰いたいと求めていることでもある。今一度振り返って欲しいあなたが一人ではないことを。あなたに差し伸ばされた手を掴むことが出来たなら、あの子はきっと喜んでくれる。コミュニケーションを主題とした本作らしい力強いメッセージです。
人間関係、絆、信頼、愛を通じて人は人を生かす。しかし他者の愛情を信じる、自分を理解して貰えていると信じることはとてもデリケートな問題で自分を託すことだと言っても良い。それはとても勇気が要ることです。響と奏が不安を抱きながら少しずつしか歩み寄れなかったのはそういう背景があります。でもだからこそそれを信じられることは本当に大切なことなのだと思います。信じることで初めて拓ける道がある。響が辿った道はとても長く険しいものでしたが、それ故に彼女は友達や絆の強さ、美しさ、喜びを知っています。ネガトーンに語りかけた言葉には彼女の経験や想いが息づいています。
こうしたことを考慮すれば最も恐れるべきは孤独でしょう。響が奏と、家族と心が離れたときに感じた孤独、不安。セイレーンが募らせた挫折と憎悪は孤独ゆえに行き場を失い募っていく。音が共鳴し音楽を形作る世界と対極をなすのは音がない、あるいは響かない世界。スイートが真に立ち向かう敵はそうしたものに関わってくるかもしれませんが、それはいずれ分るでしょう。なにより大事なことはプリキュアの物語は人を信じる物語であることです。これはシリーズとおして変らない。
私達には自分を、人を幸せにしていける力がある。
それを証明するのがプリキュアの物語です。
第31話「ワンツー!プリキュアキャンプでパワーアップニャ♪」
○今週の出来事
①プリキュアの特訓
丘の上にある東屋でおやつタイム。奏のカップケーキに響達は舌鼓を打ちます。美味しそうに食べるみんなを見て奏も嬉しそうです。いつもどおり響は奏のカップケーキは最高だと絶賛。もういっそのこと「カップケーキ」は省略していいんじゃないかな。
単に飲み食いしに集まったわけではなく、前回のクレッシェンドトーンパワーがお題。あの力を使いこなせるようになれば戦いも楽になります。無くてもミュージックロンド3連で倒せますが、営業活動は大事です。黄色が出る前に売れるだけ売っときたいところ。
直接クレッシェンドトーンに力の使い方を尋ねます。焦らすクレッシェンドトーンに響達は顔に汗を浮かべながら詰め寄ります。その汗1mlにつき500円払おう。
「自分達で考えなさい」
ですよねー。
ハミィは力を使うにはプリキュアのパワーを高めれば良いと言います。順当なところです。ハーモニーパワーですね。
「やっぱり特訓かな」
考えていることが視聴者と違う気がする。
ラッキースプーンで待ち合わせ。遅れて響がやってきます。奏もそうですが妙に装備が大きい。「ごめーん、待った?」「もう、遅いよ響」デートの会話です。本当にありがとうございます。
するとポロロン、と音が聞えてきます。ギターを鳴らしながらセイレーンが得意顔でやってきます。出オチ狙いかよ。この前完全装備ネタをやったので同じ手は使えないと小道具を用意したようです。
ふたりが身なりについて訪ねると、音吉さんの本で勉強したと言うセイレーン。キャンプ→青春→ギターという発想らしい。向学心はとても大事だし褒めたいと思うのですが、なんか毎回方向が微妙に間違っている。ギターはまだしもその衣装はどこから持ってきたんだ。っていうか、音吉さんは本を貸すだけじゃなくて口頭で教えてあげて下さい。
本来の目的を忘れて青春をエンジョイしようとするセイレーンに待ったをかけながら、響は厳しい特訓をど根性で乗越えてパワーアップと燃え上がります。この子もちょっと方向が違う。響とは対照的に距離を置く奏。久々にまともです。この子は普段からおかしいイメージが定着していますが、基本的にはまとも…だったような気がします。
セイレーンはキャンプするのは初めて、と楽しみにしているようです。穴蔵生活に近いようなことはしていたと思いますが。
響達の動向をチェックしていたトリオは自分達もパワーアップを狙います。
街の外に出ての遠征。夏休みにあったハイキングイベントの続きみたいなノリです。道中も楽しそうに会話。電車、バスを乗り継いでいきます。セイレーンはテンションが高いのか常に何か話している印象。ところでやっぱりギターは持って行くのね。
山奥までやってきます。響は軽々と山道を登りますが、続く奏とセイレーンは息切れ。ようやく到着するとふたりはすぐに腰を下ろしてしまいます。目の前に見えるログハウス的なものは北条家の別荘。パパが作曲するときに籠もる別荘だと響が紹介します。裕福そうな家だと思っていましたが、別荘有りとはいやはや。団さんも夕方に来るらしい。
奏はキャンプしないで家に泊ろうとねだりますが響は頑として受け付けません。雰囲気でない。そういう問題だろうか。いや、これは父親の目の届かないところで奏と寝食を共にしたいという意図があると見るべきか。セイレーンはキャンプの方が青春って感じがする!とテンションを上げます。「どんだけ青春好きなのよ」奏もついていけません。まあ、同級生三人でキャンプって時点で青春だと思うけどね。
②特訓メニュー
まずは空手の特訓。
道着に着替えて響が指導役。声にも張りがあります。やる気十分。かたやふたりはテンションだだ下がり状態。響から叱責が飛びます。スポ根ものが好きなのかもしれません。
気合いを入れるため、胡散臭い呼吸法を行います。私は格闘技や武道に詳しくないですが、友人曰く「腰を落として手を前に出しながら肺の空気とともに気を吐くってのがあったかもしれない」そうです。でも首を90度に曲げるのはやり過ぎ。
「ちょっと待った」
このノリ疲れる、と音を上げる奏とセイレーン。正直、半分顔芸大会になってたと思う。
楽しくやりたいと言う奏。先生役をかってでます。私は奏の満面の笑みを見るだけで楽しくなります。
音楽に合わせてエアロビクス。
こちらの方がまだ音楽に関連している分ハーモニーパワーぽくはある。今度は響とセイレーンが燃えられないと不満。響は武道には肉体の鍛錬とともに心の鍛錬も含まれていると主張。それを聞いてセイレーンが乗り出します。
座禅。
渋い。っていうかさっきから衣装がその都度変っているんだけど、そりゃ荷物増えるわな。音吉さんから借りた本で調べたと話すセイレーン。
「えーまたそれー…」
「音吉さんの趣味っていったい…」
彼の評判が下がりだしてきました。親の趣味が偏っていると子どももその影響を受けることはある。
ハミィは無駄口を叩く響と奏に渇を入れます。しばらく続きそうです。
一方、トリオ達は大盛りカレーに挑戦。意味が分らん。30分以内に食べればタダ。趣旨変ってね?
夕方。団さんも別荘に到着。相変わらずマイペース。
日が沈みかけても座禅は続いています。とはいえ、そろそろ三人も限界。お互いにやめたいものの言い出せないため不毛な苦行が続いています。ハミィの我慢大会という例えは言い得て妙。
響は奏に目線を送ります。奏でも響の方を見ます。流石です。セイレーンも限界。ということで、響は隣に居る奏とセイレーンに手を伸ばします。響が差し出した手を見て奏は呆気にとられつつもすぐに理解します。今週もこのノリで行くのか。ギャグと真面目の温度差が急激だな。ちなみにここの奏の表情は非常に綺麗です。綺麗というのは可愛いという意味でなく、彼女が響のしぐさから何を受け取って理解したのかがその表情(の変化)で読み取れるからです。それまでギャグのノリで見ていた私もこの表情を見たからには襟を正さねばなりません。
響の手をふたりは同時に掴み、三人は「三人で一緒にギブアップしよう」と声をハモらせます。笑顔が漏れます。クレッシェンドトーンがわずかに反応します。良かった。てっきりスタッフもハーモニーパワーのこと忘れているかと思っていました。
③特訓の成果
トリオはラーメン、ネギトロ丼、ハンバーグ、カツ丼と大食いを続けていきます。絶対目的忘れてるだろ。ジャンボパフェは私も食べたい。実際食べたこともあります。
満腹して三人は公園で眠り込んでしまいます。野宿かよ。このままだとネガトーンが出なさそうなんですが、どうなる。
響達は満天の星空を寝袋に入ったまま見つめます。て、それキャンプじゃなくて野宿になってない!? 虫とか寄ってくるし朝霧とか結構ベタつくよ。
明日のスケジュールは早朝から山登りで日の出を見るようです。流れ星を見つけて大喜びするハミィですが、三人はすでに寝ています。ハミィも就寝。彼女達を見届けて団さんも部屋の中に引き返します。今回セリフはほとんど無いのですが存在感があります。
トリオが寝ていると突然大きな音が鳴り響きます。近くで道路工事をしています。音符を発見。ロードローラーをネガトーン化させます。真夜中に召喚。これはプリキュアどうするんでしょうか。
早朝。響達は山登りを始めます。……プリキュアが居ないところでネガトーンを暴れさせればいいというシンプル且つ強力な答えが見つかったような。
響は余裕があるものの奏とセイレーンはバテ気味。会話もなく進みます。頂上まであと25mというところまで来ます。って、鎖で登るの!? 難易度高いな。
代わりに荷物を持つと言う響にふたりはそれでは特訓にならないと断ります。しかし響は大事なのは一人で頑張ることではなく3人の心が一つになることだと答えます。座禅しているときに気付いたようです。それ以上なにも言わず笑顔を向け続ける響。これ以上は言葉では進まない。ハミィはそれがハーモニーパワーだと言います。
響は3人分の荷物を持ち、身が軽いセイレーンは先に足場を調べるために先行します。流石猫。自分はどうすれば?と戸惑う奏に響は後ろでどんと構えていて欲しい、いつもの優しい笑顔で、と伝えます。嫁の笑顔で頑張れる。流石嫁です。
セイレーンが先行しながら指示を出します。奏も笑みを絶やさず元気に登ります。逆に響はバテはじめてしまい、足を踏み外してしまいそうになったところをふたりに助けられます。それぞれが役割をこなしながら三人で力を合わせて登頂に成功。山頂にたどり着いた三人は手を繋ぎながら日の出を見つめます。
するとトーン達がネガトーンが暴れていると伝えにやってきます。トーンは索敵要員。
街ではネガトーンがやりたい放題。プリキュア到着。
キックを放つもローラで走らされるハメに。ネガトーンに追われながらもメロディは今回のキャンプで気がついた!と断言。凛々しい。プリキュアの力は強さじゃない。困難にぶつかったときに三人の力を一つにして助け合って乗越えること。それがプリキュアの力。これはメロディとリズムのふたりだったときにも言えます。
手を繋いだプリキュアは突進してネガトーンを弾き飛ばします。クレッシェンドトーンが力を貸します。
正式バンク。1ヶ月もすれば少なくとも映画で黄色が登場するというのに相変わらずのバンク使い捨て覚悟の演出。でも成長や絆を明示する分にはうってつけ。バンクを見ただけでもスイートの変遷が分る親切設計。バンクシーンは印象に残りやすいのですがそれを逆手にとって魅せてくれるのは斬新です。
「いでよ、全ての音の源よ」
「届けましょう、希望のシンフォニー」
鍵盤の道を造って突進。
「プリキュア!スイートセッションアンサンブル!」
武器も持たずに体当たり。原始的ですが無駄にクレッシェンドトーンがデカイので火力が高そうです。
「フィナーレ!」
着地ポーズがカッコイイ。相変わらずプリキュアの必殺技はどこに行こうとしているのか分らない。
3人は特訓の成果が出たと喜びます。
遠くからミューズが観察。さすがはクレッシェンドトーン、と褒めるドドリー。親元ですしね。しかし力が強いことを懸念します。何か引っかかることがあるらしい。しかしミューズは無言のまま去ります。
④次回予告
すいません、コスプレは所定の場所でやってください。
○トピック
お馴染みの特訓回。29話のパッショナートハーモニーの完成形。
前回を鑑みての解答。出来なくても次出来るように頑張る。それも一人で頑張るのではなくみんなで頑張るという形で提示しています。幼児向けであるため過剰な特訓や肉体的な鍛錬は必要ありませんが、努力は欠かせないところです。
ストーリーはギャグ調ですが、今回も些細な点でコミュニケーションの問題を取り上げています。
3人でギブアップするところが妙に美談ぽく描かれているのが本作らしい点です。3人とも止めたいのに言い出せない。ディスコミュニケーションなわけです。空手、エアロビ、座禅もみんなが納得してやっているわけでもない。登山も自分で登らないといけないと奏とセイレーンは思い込んでいる。それは違う、そうじゃないんだ、我慢して強情を張る必要なんてない。みんなで一緒に楽しくやることが価値あることなんだというのがこの物語の主張です。
この物語は人間関係に根ざしている。人の心が離ればなれになったり、人を憎むことは辛く悲しいことなのだと響達の姿をとおして描いています。だからこそ3人で協力して登頂したときに一緒に見た日の出が彼女達にとって美しく感動的な体験として描かれています。誰かと見た光景、誰かと手を携えて得たモノ、お互いにそれを大切なことだと共有できる喜び。心を一つにすることがハーモニーパワーと呼ばれていますが、その本質には自己と他者がお互いに深く結ばれること、価値観を共有しお互いに受け入れ受け入れられることの価値と創造性があります。スイートが云うプリキュアの力とは、この人と人との間に生まれる創造性です。アンサンブルは音楽用語では合奏ですが、フランス語では一緒という意味になる。お互いに価値を損なわせる不協和音を脱してお互いの価値を称え皆で創造していく調和を目指すというのがこの物語の帰結だろうと思われます。そこで何を創造できるか、私が見たい、見ようとしているのはそこです。
子ども向け番組である以上、過剰な特訓や努力は不要です。そもそも子どもは体格的にも知能的にも大人や強者に勝てるわけがないからです。子どもが持っているものなんて気持ちくらいしかない。一途さや一生懸命さ、無邪気さ、誠実さ、素直さくらいしかない。それとて長じればくすむ。一人では弱くても友達と立ち向かいましょう、一人で悩んでいないで友達を頼りましょう、困っている子がいたら手を差し伸べましょう、そうやってみんなで友達を、親友を作っていきましょう。そうすることであなた達はどんどん成長して強くなっていけるよ、というのがプリキュアの子ども番組としてのメッセージになります。絆や友情は子ども向けとして鉄板ですが、その絆や友情を微に入り細に入り洞察していくことで人間の普遍的な課題を描き出しているのがスイートの特徴です。
絆や友情はプリキュアのベースとなるテーマですが、実はフレッシュ・ハートキャッチはこのテーマから若干外れています。もちろん友情や絆はあります。けど物語で重要な位置を占めていたのは自己に由来する問題でした。罪やコンプレックスがそうです。それらを克服するために四ツ葉町の人々の優しさ、ファッション部での活動などがありました。
その意味でスイートは原点回帰を行っています。初代プリキュアのなぎさとほのかはほとんど赤の他人の状態から親友となりました。お互いの性格を受け止めながら絆を深め合っていった物語であったとも言えます。スイートの物語は人間関係(コミュニケーション、意思疎通)をベースにしています。ケンカも信頼も関係性から発するものです。「ハーモニーパワー=心を一つにしたときの力」は分りやすい明示です。絆をメインに置いている。が、同時に人間関係の難しさ、悲劇にも言及しています。
プリキュアを長年見ていていつも感心していることなのですが、このシリーズはずっと続いている物語になっています。同じ事の再生産はしていない。常に新しいアプローチ、より深く人間の姿を描いている。前述したようにフレッシュとハートキャッチは友情・絆から離れていますが人間が抱える苦悩を描き出した物語でした。その意味で普遍性が高い物語です。スイートは言わばそれらの集大成として見ることも出来ます。子ども向けとして友情や絆は大切なメッセージです。しかし絆や友情を育むその裏には同時に人間関係によって引き起こされる苦悩もありうる。人間が本質的に抱え込む苦悩と絆を同時に描き出す。プリキュアにうってつけなテーマです。これをやれるくらいにシリーズが積み重なっている。製作スタッフは入れ替わっているから意図的にやっているわけじゃないんだろうけどね。でも、ずっと見てきた身としてはそう感じるし、それがプリキュアの伝統だとも思う。毎年リセットされる着せ替え番組ではなく、プリキュアという一つの長い物語。毎年「今年のプリキュアは集大成」だと思える。
次回は「にゃんにゃんハミィ」抱き合わせ商法。売れなければシリーズも続かない。そんな現実ともプリキュアは戦います。女子中学生の肩に玩具会社とアニメ製作会社の未来がかかっている。
①プリキュアの特訓
丘の上にある東屋でおやつタイム。奏のカップケーキに響達は舌鼓を打ちます。美味しそうに食べるみんなを見て奏も嬉しそうです。いつもどおり響は奏のカップケーキは最高だと絶賛。もういっそのこと「カップケーキ」は省略していいんじゃないかな。
単に飲み食いしに集まったわけではなく、前回のクレッシェンドトーンパワーがお題。あの力を使いこなせるようになれば戦いも楽になります。無くてもミュージックロンド3連で倒せますが、営業活動は大事です。黄色が出る前に売れるだけ売っときたいところ。
直接クレッシェンドトーンに力の使い方を尋ねます。焦らすクレッシェンドトーンに響達は顔に汗を浮かべながら詰め寄ります。その汗1mlにつき500円払おう。
「自分達で考えなさい」
ですよねー。
ハミィは力を使うにはプリキュアのパワーを高めれば良いと言います。順当なところです。ハーモニーパワーですね。
「やっぱり特訓かな」
考えていることが視聴者と違う気がする。
ラッキースプーンで待ち合わせ。遅れて響がやってきます。奏もそうですが妙に装備が大きい。「ごめーん、待った?」「もう、遅いよ響」デートの会話です。本当にありがとうございます。
するとポロロン、と音が聞えてきます。ギターを鳴らしながらセイレーンが得意顔でやってきます。出オチ狙いかよ。この前完全装備ネタをやったので同じ手は使えないと小道具を用意したようです。
ふたりが身なりについて訪ねると、音吉さんの本で勉強したと言うセイレーン。キャンプ→青春→ギターという発想らしい。向学心はとても大事だし褒めたいと思うのですが、なんか毎回方向が微妙に間違っている。ギターはまだしもその衣装はどこから持ってきたんだ。っていうか、音吉さんは本を貸すだけじゃなくて口頭で教えてあげて下さい。
本来の目的を忘れて青春をエンジョイしようとするセイレーンに待ったをかけながら、響は厳しい特訓をど根性で乗越えてパワーアップと燃え上がります。この子もちょっと方向が違う。響とは対照的に距離を置く奏。久々にまともです。この子は普段からおかしいイメージが定着していますが、基本的にはまとも…だったような気がします。
セイレーンはキャンプするのは初めて、と楽しみにしているようです。穴蔵生活に近いようなことはしていたと思いますが。
響達の動向をチェックしていたトリオは自分達もパワーアップを狙います。
街の外に出ての遠征。夏休みにあったハイキングイベントの続きみたいなノリです。道中も楽しそうに会話。電車、バスを乗り継いでいきます。セイレーンはテンションが高いのか常に何か話している印象。ところでやっぱりギターは持って行くのね。
山奥までやってきます。響は軽々と山道を登りますが、続く奏とセイレーンは息切れ。ようやく到着するとふたりはすぐに腰を下ろしてしまいます。目の前に見えるログハウス的なものは北条家の別荘。パパが作曲するときに籠もる別荘だと響が紹介します。裕福そうな家だと思っていましたが、別荘有りとはいやはや。団さんも夕方に来るらしい。
奏はキャンプしないで家に泊ろうとねだりますが響は頑として受け付けません。雰囲気でない。そういう問題だろうか。いや、これは父親の目の届かないところで奏と寝食を共にしたいという意図があると見るべきか。セイレーンはキャンプの方が青春って感じがする!とテンションを上げます。「どんだけ青春好きなのよ」奏もついていけません。まあ、同級生三人でキャンプって時点で青春だと思うけどね。
②特訓メニュー
まずは空手の特訓。
道着に着替えて響が指導役。声にも張りがあります。やる気十分。かたやふたりはテンションだだ下がり状態。響から叱責が飛びます。スポ根ものが好きなのかもしれません。
気合いを入れるため、胡散臭い呼吸法を行います。私は格闘技や武道に詳しくないですが、友人曰く「腰を落として手を前に出しながら肺の空気とともに気を吐くってのがあったかもしれない」そうです。でも首を90度に曲げるのはやり過ぎ。
「ちょっと待った」
このノリ疲れる、と音を上げる奏とセイレーン。正直、半分顔芸大会になってたと思う。
楽しくやりたいと言う奏。先生役をかってでます。私は奏の満面の笑みを見るだけで楽しくなります。
音楽に合わせてエアロビクス。
こちらの方がまだ音楽に関連している分ハーモニーパワーぽくはある。今度は響とセイレーンが燃えられないと不満。響は武道には肉体の鍛錬とともに心の鍛錬も含まれていると主張。それを聞いてセイレーンが乗り出します。
座禅。
渋い。っていうかさっきから衣装がその都度変っているんだけど、そりゃ荷物増えるわな。音吉さんから借りた本で調べたと話すセイレーン。
「えーまたそれー…」
「音吉さんの趣味っていったい…」
彼の評判が下がりだしてきました。親の趣味が偏っていると子どももその影響を受けることはある。
ハミィは無駄口を叩く響と奏に渇を入れます。しばらく続きそうです。
一方、トリオ達は大盛りカレーに挑戦。意味が分らん。30分以内に食べればタダ。趣旨変ってね?
夕方。団さんも別荘に到着。相変わらずマイペース。
日が沈みかけても座禅は続いています。とはいえ、そろそろ三人も限界。お互いにやめたいものの言い出せないため不毛な苦行が続いています。ハミィの我慢大会という例えは言い得て妙。
響は奏に目線を送ります。奏でも響の方を見ます。流石です。セイレーンも限界。ということで、響は隣に居る奏とセイレーンに手を伸ばします。響が差し出した手を見て奏は呆気にとられつつもすぐに理解します。今週もこのノリで行くのか。ギャグと真面目の温度差が急激だな。ちなみにここの奏の表情は非常に綺麗です。綺麗というのは可愛いという意味でなく、彼女が響のしぐさから何を受け取って理解したのかがその表情(の変化)で読み取れるからです。それまでギャグのノリで見ていた私もこの表情を見たからには襟を正さねばなりません。
響の手をふたりは同時に掴み、三人は「三人で一緒にギブアップしよう」と声をハモらせます。笑顔が漏れます。クレッシェンドトーンがわずかに反応します。良かった。てっきりスタッフもハーモニーパワーのこと忘れているかと思っていました。
③特訓の成果
トリオはラーメン、ネギトロ丼、ハンバーグ、カツ丼と大食いを続けていきます。絶対目的忘れてるだろ。ジャンボパフェは私も食べたい。実際食べたこともあります。
満腹して三人は公園で眠り込んでしまいます。野宿かよ。このままだとネガトーンが出なさそうなんですが、どうなる。
響達は満天の星空を寝袋に入ったまま見つめます。て、それキャンプじゃなくて野宿になってない!? 虫とか寄ってくるし朝霧とか結構ベタつくよ。
明日のスケジュールは早朝から山登りで日の出を見るようです。流れ星を見つけて大喜びするハミィですが、三人はすでに寝ています。ハミィも就寝。彼女達を見届けて団さんも部屋の中に引き返します。今回セリフはほとんど無いのですが存在感があります。
トリオが寝ていると突然大きな音が鳴り響きます。近くで道路工事をしています。音符を発見。ロードローラーをネガトーン化させます。真夜中に召喚。これはプリキュアどうするんでしょうか。
早朝。響達は山登りを始めます。……プリキュアが居ないところでネガトーンを暴れさせればいいというシンプル且つ強力な答えが見つかったような。
響は余裕があるものの奏とセイレーンはバテ気味。会話もなく進みます。頂上まであと25mというところまで来ます。って、鎖で登るの!? 難易度高いな。
代わりに荷物を持つと言う響にふたりはそれでは特訓にならないと断ります。しかし響は大事なのは一人で頑張ることではなく3人の心が一つになることだと答えます。座禅しているときに気付いたようです。それ以上なにも言わず笑顔を向け続ける響。これ以上は言葉では進まない。ハミィはそれがハーモニーパワーだと言います。
響は3人分の荷物を持ち、身が軽いセイレーンは先に足場を調べるために先行します。流石猫。自分はどうすれば?と戸惑う奏に響は後ろでどんと構えていて欲しい、いつもの優しい笑顔で、と伝えます。嫁の笑顔で頑張れる。流石嫁です。
セイレーンが先行しながら指示を出します。奏も笑みを絶やさず元気に登ります。逆に響はバテはじめてしまい、足を踏み外してしまいそうになったところをふたりに助けられます。それぞれが役割をこなしながら三人で力を合わせて登頂に成功。山頂にたどり着いた三人は手を繋ぎながら日の出を見つめます。
するとトーン達がネガトーンが暴れていると伝えにやってきます。トーンは索敵要員。
街ではネガトーンがやりたい放題。プリキュア到着。
キックを放つもローラで走らされるハメに。ネガトーンに追われながらもメロディは今回のキャンプで気がついた!と断言。凛々しい。プリキュアの力は強さじゃない。困難にぶつかったときに三人の力を一つにして助け合って乗越えること。それがプリキュアの力。これはメロディとリズムのふたりだったときにも言えます。
手を繋いだプリキュアは突進してネガトーンを弾き飛ばします。クレッシェンドトーンが力を貸します。
正式バンク。1ヶ月もすれば少なくとも映画で黄色が登場するというのに相変わらずのバンク使い捨て覚悟の演出。でも成長や絆を明示する分にはうってつけ。バンクを見ただけでもスイートの変遷が分る親切設計。バンクシーンは印象に残りやすいのですがそれを逆手にとって魅せてくれるのは斬新です。
「いでよ、全ての音の源よ」
「届けましょう、希望のシンフォニー」
鍵盤の道を造って突進。
「プリキュア!スイートセッションアンサンブル!」
武器も持たずに体当たり。原始的ですが無駄にクレッシェンドトーンがデカイので火力が高そうです。
「フィナーレ!」
着地ポーズがカッコイイ。相変わらずプリキュアの必殺技はどこに行こうとしているのか分らない。
3人は特訓の成果が出たと喜びます。
遠くからミューズが観察。さすがはクレッシェンドトーン、と褒めるドドリー。親元ですしね。しかし力が強いことを懸念します。何か引っかかることがあるらしい。しかしミューズは無言のまま去ります。
④次回予告
すいません、コスプレは所定の場所でやってください。
○トピック
お馴染みの特訓回。29話のパッショナートハーモニーの完成形。
前回を鑑みての解答。出来なくても次出来るように頑張る。それも一人で頑張るのではなくみんなで頑張るという形で提示しています。幼児向けであるため過剰な特訓や肉体的な鍛錬は必要ありませんが、努力は欠かせないところです。
ストーリーはギャグ調ですが、今回も些細な点でコミュニケーションの問題を取り上げています。
3人でギブアップするところが妙に美談ぽく描かれているのが本作らしい点です。3人とも止めたいのに言い出せない。ディスコミュニケーションなわけです。空手、エアロビ、座禅もみんなが納得してやっているわけでもない。登山も自分で登らないといけないと奏とセイレーンは思い込んでいる。それは違う、そうじゃないんだ、我慢して強情を張る必要なんてない。みんなで一緒に楽しくやることが価値あることなんだというのがこの物語の主張です。
この物語は人間関係に根ざしている。人の心が離ればなれになったり、人を憎むことは辛く悲しいことなのだと響達の姿をとおして描いています。だからこそ3人で協力して登頂したときに一緒に見た日の出が彼女達にとって美しく感動的な体験として描かれています。誰かと見た光景、誰かと手を携えて得たモノ、お互いにそれを大切なことだと共有できる喜び。心を一つにすることがハーモニーパワーと呼ばれていますが、その本質には自己と他者がお互いに深く結ばれること、価値観を共有しお互いに受け入れ受け入れられることの価値と創造性があります。スイートが云うプリキュアの力とは、この人と人との間に生まれる創造性です。アンサンブルは音楽用語では合奏ですが、フランス語では一緒という意味になる。お互いに価値を損なわせる不協和音を脱してお互いの価値を称え皆で創造していく調和を目指すというのがこの物語の帰結だろうと思われます。そこで何を創造できるか、私が見たい、見ようとしているのはそこです。
子ども向け番組である以上、過剰な特訓や努力は不要です。そもそも子どもは体格的にも知能的にも大人や強者に勝てるわけがないからです。子どもが持っているものなんて気持ちくらいしかない。一途さや一生懸命さ、無邪気さ、誠実さ、素直さくらいしかない。それとて長じればくすむ。一人では弱くても友達と立ち向かいましょう、一人で悩んでいないで友達を頼りましょう、困っている子がいたら手を差し伸べましょう、そうやってみんなで友達を、親友を作っていきましょう。そうすることであなた達はどんどん成長して強くなっていけるよ、というのがプリキュアの子ども番組としてのメッセージになります。絆や友情は子ども向けとして鉄板ですが、その絆や友情を微に入り細に入り洞察していくことで人間の普遍的な課題を描き出しているのがスイートの特徴です。
絆や友情はプリキュアのベースとなるテーマですが、実はフレッシュ・ハートキャッチはこのテーマから若干外れています。もちろん友情や絆はあります。けど物語で重要な位置を占めていたのは自己に由来する問題でした。罪やコンプレックスがそうです。それらを克服するために四ツ葉町の人々の優しさ、ファッション部での活動などがありました。
その意味でスイートは原点回帰を行っています。初代プリキュアのなぎさとほのかはほとんど赤の他人の状態から親友となりました。お互いの性格を受け止めながら絆を深め合っていった物語であったとも言えます。スイートの物語は人間関係(コミュニケーション、意思疎通)をベースにしています。ケンカも信頼も関係性から発するものです。「ハーモニーパワー=心を一つにしたときの力」は分りやすい明示です。絆をメインに置いている。が、同時に人間関係の難しさ、悲劇にも言及しています。
プリキュアを長年見ていていつも感心していることなのですが、このシリーズはずっと続いている物語になっています。同じ事の再生産はしていない。常に新しいアプローチ、より深く人間の姿を描いている。前述したようにフレッシュとハートキャッチは友情・絆から離れていますが人間が抱える苦悩を描き出した物語でした。その意味で普遍性が高い物語です。スイートは言わばそれらの集大成として見ることも出来ます。子ども向けとして友情や絆は大切なメッセージです。しかし絆や友情を育むその裏には同時に人間関係によって引き起こされる苦悩もありうる。人間が本質的に抱え込む苦悩と絆を同時に描き出す。プリキュアにうってつけなテーマです。これをやれるくらいにシリーズが積み重なっている。製作スタッフは入れ替わっているから意図的にやっているわけじゃないんだろうけどね。でも、ずっと見てきた身としてはそう感じるし、それがプリキュアの伝統だとも思う。毎年リセットされる着せ替え番組ではなく、プリキュアという一つの長い物語。毎年「今年のプリキュアは集大成」だと思える。
次回は「にゃんにゃんハミィ」抱き合わせ商法。売れなければシリーズも続かない。そんな現実ともプリキュアは戦います。女子中学生の肩に玩具会社とアニメ製作会社の未来がかかっている。
第30話「ワオーン!ヒーリングチェストの不思議ニャ!」
○今週の出来事
①テスト勉強は計画的に
朝から何やらうんうんとうなる響。奏が挨拶しながら指で頬をつんつんします。朝から健康的なスキンシップです。
今日は学校で小テスト。それで頭を抱えているようです。小言を言い始める奏を制す響。たぶん言われ慣れているのでしょう。それにひきかえセイレーンはバッチリ。響はこのままでは一人だけおちこぼれてしまうと不安になります。猫に負けるのはどうかと思いますが、そこに小学生が加わっても響の一人負けは変わらないと思います。
困った時の便利道具。ヒーリングチェスト。色々な力が秘められているのでテスト用の力もあるかもしれないと期待する響。クレッシェンドトーンの声が聞えるのでカンニング的なことは出来るかもしれません。
それは駄目、と奏がチャストを取り上げます。では何に使うのか。ハミィも分らないようです。
「貯金箱とか?」。お金を入れる穴が無い。
「じゃあ宝石箱」。ある意味見たまんまだけどたぶん違う。
ハミィのツッコミが光ります。実はツッコミ要員でもいけるかもしれない。用途が分らないと頭を悩ますハミィとトーン達。その間にも響はチェストにテストを何とかして欲しいと拝みます。成績の悪い子ほどこういう悪知恵が働くような気がする。のび太君とか。一種の適応と言うべきか。期待に胸を膨らませる響に「そういうことは自分の力で頑張るのです」と答えが返ってきます。ごもっとも。
教室。逆さまになった教科書を凝視して響は全然分んないと音を上げます。でしょうね、とあっさりな奏。今更どうこうする問題ではないのでしょう。
響は突然閃くと立ち上がって指笛を鳴らします。ん? いや、何となく想像できる。和音が「お呼びとあらば即参上!」的なノリで登場。君は犬か。
困ったら助けてくれるっていつも言ってるよね?と和音を頼る響。もう手段を選んでねーな。和音もまんざらでない様子。普段は奏がべったりなのでここで好感度を上げる気のようです。椅子に座って事情を聞きます。和音が座っているのは内戸君の場所なので一応了解を得ておきます。今週はノリとテンポが良い。
「こんな話しはどう?」と話し始める和音。待て、話しってなんだ。昨日の夜ジョギングしていたら犬達が「ワオーン、ワオーン」と合唱していたと話します。テストとどんな関係?と奏が訪ねると「関係ないよ」とさわやかに答えます。響を励ましたかっただけのようです。それもそのはず、和音のテストの成績は響とどっこい。前回のテストの結果を見て三人も目を丸くします。
「じゃ、そういうわけだから!」颯爽と登場して颯爽と帰って行く和音に、なんでテストなんか持ち歩いているのかしら?とセイレーンは疑問を投げかけます。
チャイムの音。結局時間を浪費しただけでした。
メフィストにチェストの情報を報告。魔響の森から戻って来たことに驚くメフィストにバスドラは本当に恐ろしい場所なんですか?と疑いの目を向けます。前回あんだけ無理だと言ってた割にはあっさり戻ってきているので信憑性に欠けているのでしょう。
メフィストは部下を叱りつけながら、かつて森で恐ろしい目に遭ったのだと表情豊かに説明します。ところが肝心なことは忘れている様子。話しを打ち切ってバスドラ達にチャスト奪取の命令を下します。
メフィスト自身も何故憶えていないのか不審がります。耳のノイズ蓋を映すシーン。彼自身も何者かに操られていることを示唆しています。
②怪奇音が鳴っても順応できる加音町の人々
テスト結果を見ようとハミィが学校にやってくると、聞くまでもない様子で落込んでいる響を発見します。響に結果を訪ねられた奏とセイレーンは返答を躊躇います。そこでふたりに代わっていつの間にか答案用紙を持っていたハミィが結果を見せます。ふたりのテスト結果に響はノックアウト。本当に猫に負けたよ、この子。
テストは今回だけじゃないと奏は励まします。セイレーンも中間テストに期末テスト、実力テスト、そして来年は受験、と数々のテストを上げていきます。それを聞いてますます泣き崩れる響。この世は偏差値社会。もっとも、点数が良いことと仕事が出来ることは違うことだったりするのですが。テストの結果は良くても柔軟性や要領が悪い人は苦労します。
奏は次の授業は体育、気分を変えようとフォロー。嫁をなだめるのも嫁の仕事です。
階段を下りると一歩一歩ごとにピアノのような音が鳴ります。普通に怪奇現象だと思うのですが響は喜んではしゃぎます。順応性高ぇな。そこにトーン達がやってきます。トーンが自分を励ましてくれたのだろうと思ってお礼を言います。
響が先に行くと、奏はトーンを褒めます。が、トーンは知らないと言います。階段も元に戻っています。
体育の授業。元気を取り戻した響にふたりも安心。体育は響の唯一得意な授業だと奏はセイレーンに説明します。それを聞いて響はまた落込みます。あまり気にしてはいけません。夏休みの宿題が嫌だからと学校を壊すことに同意しかけた青い人とか居ましたし。体育教師が生徒達を整列させようと笛を吹くと変な音が鳴ります。
お昼。食が進まない響に奏が卵焼きを譲ろうとします。最近はセイレーン強化月間が続いていましたが、ここらでこの番組本来のバカップルタイム復活。一度は遠慮したものの奏に促されて響はパクっと卵焼きを食べます。響が口をつけた箸を奏は舐めたと思いますが、さすがに映像的にまずいのでカットされています。響が舐めた後に奏が舐めたその箸、言い値で買おう。
ちょっと元気出たとお礼を言う響。間違いなく奏はそれ以上に元気になったと思います。
トーン達もお腹が空いたと言います。お腹空くの?この前アイスを食べてたけど。チェストを使って欲しいと頼むトーン。使い方が分らないと話す響に、セイレーンは出来そうな気がすると言います。何か閃いたのでしょうか。
「ヒーリングチャストだけに、フィーリングで」
どや顔で言い放ったよ、この娘。
「あー、うん…そうね」
「じゃ、じゃあエレンに任せようかな」
「フィーリングで!」
「二回言わなくていいから」
セイレーンさんも一人前のボケになりました。
チェストにトーンを入れて鍵盤を弾くとトーン達が満足して出てきます。
下校。ようやく響はトーン達のしわざではなかったことに気付きます。
では何なのか。悩んでいると奏太がテストの結果を訪ねてきます。答えをはぐらかす響を見ていつもどおりだねとニヤニヤしながら近寄ってきます。どーせ駄目だったんだろ!とズバリ言ってくる奏太に「当たり」と素直にそして悲しそうに答える響。ここでムキになって奏太を追っ払おうとしないあたりが響らしいというか、奏太もそれが分っていて懐いている気がします。
奏太と言えばセットのアコ。自業自得と冷ややかに言います。勝ち誇ったようにふん、と鼻を鳴らします。今週のナイスショットです。全国で「あの見下した表情がたまらない」「まったく、小学生は最高だぜ」と悶絶している人々が大量発生していると思います。
アコが立ち去ろうとするとまた変な音が鳴ります。これにはアコもビックリ。恐る恐る一歩踏み出すとやはり変な効果音が鳴ります。奏太は鳴らないようです。その様子に響は笑います。一転して笑い物になったアコは恥ずかしさと悔しさを表情に浮かべながら帰って行きます。今週のベストショットです。まったく、小学生は最高だぜ!!
音にまつわる不思議現象。音吉さんなら何か分るかもしれません。
調べの館に付くと外からでも演奏が聞えてきます。音吉さんが演奏しているのだろうと中に入ると人影は見えず、オルガンが勝手に動いて演奏しています。それを見てセイレーンは驚天動地の大慌て。なるほどエレンの中にセイレーンが入っているから変身できない…って意味が分らないな。こっちの方が怪奇現象より怖ぇよ。
「大丈夫だから、だぶん」。奏さん説得力ないです。
音吉さんが静かにせんか、と注意します。セイレーンが音吉さんの肩を掴んで揺らします。音の源の精霊が近くに来ていると音吉さんは言います。肩を掴んでいるセイレーンが可愛い。
「あなたの力ですね、クレッシェンドトーン」
「元気そうですね音吉」
お久しぶりですと音吉さんも挨拶を返します。そのやり取りを見て響達は目を丸くします。視聴者的には想定の範囲内。音吉さんがなにやろうが、何を知っていようが驚くに値しません。プリキュアの老人キャラは最高権威者です。
間に合いますか?と問いかけるクレッシェンドに、必ず間に合わせると鋭い視線でパイプオルガンを見つめる音吉さん。傍目には何が何だか。今はまだ細かいことは教えてくれないようです。
館を出て音吉さんの不思議さに奏が思考を巡らしていると、顔が広いとハミィは簡単に話しを纏めてしまいます。響とセイレーンも頷きます。まあ、うん、そう考えた方が良いのかもしれない。
今日の不思議な音は響を応援したかったクレッシェンドトーンによるものでした。犬の声も彼女の仕業です。生憎響は寝てしまいましたが。頑張る人や落込んでいる人を応援したい、ただそれだけだと彼女は言います。
河川敷を歩いていると赤ちゃんが泣いています。クレッシェンドトーンが力を使って木が揺れる音を鈴の音に変えます。赤ちゃんの泣き声が止り笑い声に変わります。今度はキャッチボールしている子ども達が喧嘩し始めます。キャッチしたときの音をチャイム音に変えると喧嘩は収まりまた楽しそうに遊び始めます。音の力に感嘆する奏。
響はごめんね、と突然謝ります。何度も励ましてくれた人に答えるためにも次のテスト頑張る!と意気込みます。彼女の最も優れた美点です。彼女自身は力も劣り、不安を抱える幼子のように心が弱いところもある。けど彼女は周囲の人々の働きかけや絆を見ることが出来る素直さを持っている。それが彼女の力となって、彼女の周囲の人々をも変えていけるようになる…のかもしれない。
響の答案用紙に音符を発見するハミィ。同時にトリオ達も発見。
ネガトーン召喚。恥ずかしがって答案用紙を抑えようとする響。その努力も虚しく実体化します。口に当たる部分が○になっていますが、これは零点なのか○×の○なのか。響の名誉のためにも後者と信じたい。
チェストは絶対に渡さない!と声を合わせて変身。許さない以外にも言えたんだ。
③クイズバトル
変身が完了するとクイズ番組みたいにプリキュアは席に座っています。ちょっと前に戦隊でも似たようなことがありました。ネガトーンが司会兼出題者のようです。
「うわ、普通にしゃべった!」
セイレーンもしゃべれるとは思っていなかったらしい。
テストアレルギーなメロディは困惑していますがリズムは割と平気そうです。リボンが折れているのがウサギっぽくて可愛い。
リズムを指名して出題。白の英語読み。楽勝です。リズムさんやる気満々です。ビートへの出題は青の英語読み。これも楽勝。この程度問題になりません。むしろ、トリオですら呆れている展開なのに順応しているプリキュアの方が問題のような気がします。
メロディへはピンクの日本語読み。これはさりげに狡い。うっかりピンクと誤答してしまい×マークの攻撃が直撃。意外と容赦無い攻撃です。ちなみに射撃時に口が×になるのでやはり○×のシンボルのようです。リズムが代りに答えます。いや、それよりも隣でぶっ倒れている仲間を心配した方がいいんじゃないでしょうか。
トリオの指示でメロディに集中的に出題。集中砲火をあびせます。っていうか、これ正解してもプリキュア側は攻撃されないってだけで反撃できないのがタチ悪い。
メロディは分かんないんだもんと言いながらも次までには勉強してくる、励ましてくれたみんなを裏切りたくない、みんなを笑顔に出来るように次こそ頑張ると立ち上がります。えっ、あ、そういう纏め方するんだ。ギャグ回でも子どもへの配慮を忘れません。これで親の財布のヒモが緩めばしめたもの。見逃しやすいところですが「みんなを笑顔に出来るように」と言っているのがポイント。笑顔や絆を「守りたい」というところから「作りたい」へと変わっていこうとしています。プリキュアの使命は守ることにあらず。創ることにある。
クレッシェンドトーンはメロディを花丸だと支持します。
「今こそ、あなたに力を貸しましょう」
この流れでパワーアップ!? まさか新フォーム!?
魔方陣の上に立ってチェストの鍵盤を撫でます。この魔方陣はスーパーカルテットの魔方陣と同じ模様です。鍵盤の道をメロディは飛翔して巨大なクレッシェンドトーンを纏って突進。簡単に言うとシューティングスター。ところが負荷に耐えられず途中で脱落。
バスドラはアタックのチャンス!とチェストを奪おうとします。地味にネタを仕込んでいるあたりスタッフも楽しんでいるような気がする。ちょっと待った!リズムが止めます。チェストが欲しいなら自分達の出す問題に答えろと言います。不満そうなトリオにリズムはそっちばっかり不公平だと抗議。気持ちは分るけど番組の趣旨変わってね?
結局トリオ達も了承してクイズバトル再開。今週からプリキュアを見た人は訳が分らない。メロディを加えてプリキュアから出題。
「プリキュアクイズ。テレビの前のみんなも一緒に考えてみてね」
言っちゃったー!?
今から出てくる技の名前は? トリオは武器の名前を答えます。
「さて、それじゃ答え合わせよ♪」
リズムさんマジ外道。正解していようと外れていようと必殺技をぶっぱなすプリキュアマジ汚い。リズムのミュージックロンドの発音もいつもと違っていて面白い。
敵に狡いと言われながらもフィナーレを決めます。勝負の世界は非情です。メロディは答案を即行で回収。早っ。音符を摘んでハミィに渡します。仕草が可愛い。っていうかエロい。
敵を撃退したものの、クレッシェンドトーンの力に応えられず響は気を落とします。次頑張るんでしょと励ます奏達に響はもちろん!と答えます。
新たな力を目標にして三人は奮い立ちます。
④次回予告
修行のために山ごもり。ハーモニーパワーを鍛えろよ。
○トピック
ネタの飽和攻撃。シリーズでも今回のようにクイズをやったりギャグに特化したり突然ソフトボールを始めたりと好き勝手やった回はありますが、それらと比べても遊び度合いが強い。本編中で視聴者に話しかけるのはシリーズ初。遊んでいるようで主軸のエピソードに絡めてくるあたりは抜け目がありません。
本作の主人公である響は精神的に幼いところがあり視聴者である女児と近い位置に居ます。今出来ないことがあっても諦めずに頑張ればいいというのは視聴者へのメッセージでもあります。また彼女の最大の美点である素直さ、誠実さは幼く非力な彼女を成長させる原動力になっています。暖かく励ましてくれる友達に感謝しながら自分を奮い立たせていくのは実はとても凄いことです。現実には自信を失ってやけっぱちになる事が多い。自信を失ってしまうと自分のことばかり考えてしまい周囲の声も聞えなくなってしまいます。ですが、響は奏や両親と絆を再び結んだことで自信を取り戻し他者の声にも耳を傾けられるようになっています。これ地味ですが重要です。ハートキャッチのつぼみがそうであったように、他者の想いに応えるためにも自分を変えていく、自分を奮い立たせ他者に自分の意思を伝えていくことでより良い関係、結果を生み出していく。
アプローチの仕方は違えど目指すべきゴールは一緒なのがプリキュアシリーズの伝統です。その道程の違いは、言い方を変えれば如何にそれだけ人の業が深いか、罪が多いか、弱く未熟であるかを示すものでもある。フレッシュ以降特にそうですが、プリキュアの世界観は一貫して悪が存在しない世界です。戦う相手は人が生み出した災いそのもの。だとすればその世界で生きる人々は幸せになれないの? そんなことはない。罪深くとも弱くても人は幸せになれることを証明するのがプリキュアの物語の核心です。
音楽についても今回触れられています。
音は人に心理的影響を与えます。楽しげな音は人の気分を明るく、さわやかな音は落ち着かせる。もちろんマイナーのようにおどろおどろしい音であれば人を不安にさせたり悲しくさせたりもする。これは音が良いか悪いかの問題ではなく、音は人の生活と切っても切り離せないものでその効用の違いがあるということです。
それは人の声にも通じるでしょう。他者の声が時に自分を励まし、時に傷つける。音を発する者の意図、それを聞く者の意図によっても効果は変わる。発信側と受信側の同期、つまりコミュニケーションを現すことも出来ます。音楽の奏者は発信者でもありその音を聴く受信者でもある。作中で明言されていませんが、主題歌のとおりこの物語はみんなで唄う物語になると思われます。多様な人々による組曲。バラバラになってしまった人や世界は再び一つのしかし多様な音(人)が存在する世界へと再構築される。…と思っていますがはてさて、残り約20話。この物語はどんな幸せのメロディを奏でてくれるのでしょうか。
①テスト勉強は計画的に
朝から何やらうんうんとうなる響。奏が挨拶しながら指で頬をつんつんします。朝から健康的なスキンシップです。
今日は学校で小テスト。それで頭を抱えているようです。小言を言い始める奏を制す響。たぶん言われ慣れているのでしょう。それにひきかえセイレーンはバッチリ。響はこのままでは一人だけおちこぼれてしまうと不安になります。猫に負けるのはどうかと思いますが、そこに小学生が加わっても響の一人負けは変わらないと思います。
困った時の便利道具。ヒーリングチェスト。色々な力が秘められているのでテスト用の力もあるかもしれないと期待する響。クレッシェンドトーンの声が聞えるのでカンニング的なことは出来るかもしれません。
それは駄目、と奏がチャストを取り上げます。では何に使うのか。ハミィも分らないようです。
「貯金箱とか?」。お金を入れる穴が無い。
「じゃあ宝石箱」。ある意味見たまんまだけどたぶん違う。
ハミィのツッコミが光ります。実はツッコミ要員でもいけるかもしれない。用途が分らないと頭を悩ますハミィとトーン達。その間にも響はチェストにテストを何とかして欲しいと拝みます。成績の悪い子ほどこういう悪知恵が働くような気がする。のび太君とか。一種の適応と言うべきか。期待に胸を膨らませる響に「そういうことは自分の力で頑張るのです」と答えが返ってきます。ごもっとも。
教室。逆さまになった教科書を凝視して響は全然分んないと音を上げます。でしょうね、とあっさりな奏。今更どうこうする問題ではないのでしょう。
響は突然閃くと立ち上がって指笛を鳴らします。ん? いや、何となく想像できる。和音が「お呼びとあらば即参上!」的なノリで登場。君は犬か。
困ったら助けてくれるっていつも言ってるよね?と和音を頼る響。もう手段を選んでねーな。和音もまんざらでない様子。普段は奏がべったりなのでここで好感度を上げる気のようです。椅子に座って事情を聞きます。和音が座っているのは内戸君の場所なので一応了解を得ておきます。今週はノリとテンポが良い。
「こんな話しはどう?」と話し始める和音。待て、話しってなんだ。昨日の夜ジョギングしていたら犬達が「ワオーン、ワオーン」と合唱していたと話します。テストとどんな関係?と奏が訪ねると「関係ないよ」とさわやかに答えます。響を励ましたかっただけのようです。それもそのはず、和音のテストの成績は響とどっこい。前回のテストの結果を見て三人も目を丸くします。
「じゃ、そういうわけだから!」颯爽と登場して颯爽と帰って行く和音に、なんでテストなんか持ち歩いているのかしら?とセイレーンは疑問を投げかけます。
チャイムの音。結局時間を浪費しただけでした。
メフィストにチェストの情報を報告。魔響の森から戻って来たことに驚くメフィストにバスドラは本当に恐ろしい場所なんですか?と疑いの目を向けます。前回あんだけ無理だと言ってた割にはあっさり戻ってきているので信憑性に欠けているのでしょう。
メフィストは部下を叱りつけながら、かつて森で恐ろしい目に遭ったのだと表情豊かに説明します。ところが肝心なことは忘れている様子。話しを打ち切ってバスドラ達にチャスト奪取の命令を下します。
メフィスト自身も何故憶えていないのか不審がります。耳のノイズ蓋を映すシーン。彼自身も何者かに操られていることを示唆しています。
②怪奇音が鳴っても順応できる加音町の人々
テスト結果を見ようとハミィが学校にやってくると、聞くまでもない様子で落込んでいる響を発見します。響に結果を訪ねられた奏とセイレーンは返答を躊躇います。そこでふたりに代わっていつの間にか答案用紙を持っていたハミィが結果を見せます。ふたりのテスト結果に響はノックアウト。本当に猫に負けたよ、この子。
テストは今回だけじゃないと奏は励まします。セイレーンも中間テストに期末テスト、実力テスト、そして来年は受験、と数々のテストを上げていきます。それを聞いてますます泣き崩れる響。この世は偏差値社会。もっとも、点数が良いことと仕事が出来ることは違うことだったりするのですが。テストの結果は良くても柔軟性や要領が悪い人は苦労します。
奏は次の授業は体育、気分を変えようとフォロー。嫁をなだめるのも嫁の仕事です。
階段を下りると一歩一歩ごとにピアノのような音が鳴ります。普通に怪奇現象だと思うのですが響は喜んではしゃぎます。順応性高ぇな。そこにトーン達がやってきます。トーンが自分を励ましてくれたのだろうと思ってお礼を言います。
響が先に行くと、奏はトーンを褒めます。が、トーンは知らないと言います。階段も元に戻っています。
体育の授業。元気を取り戻した響にふたりも安心。体育は響の唯一得意な授業だと奏はセイレーンに説明します。それを聞いて響はまた落込みます。あまり気にしてはいけません。夏休みの宿題が嫌だからと学校を壊すことに同意しかけた青い人とか居ましたし。体育教師が生徒達を整列させようと笛を吹くと変な音が鳴ります。
お昼。食が進まない響に奏が卵焼きを譲ろうとします。最近はセイレーン強化月間が続いていましたが、ここらでこの番組本来のバカップルタイム復活。一度は遠慮したものの奏に促されて響はパクっと卵焼きを食べます。響が口をつけた箸を奏は舐めたと思いますが、さすがに映像的にまずいのでカットされています。響が舐めた後に奏が舐めたその箸、言い値で買おう。
ちょっと元気出たとお礼を言う響。間違いなく奏はそれ以上に元気になったと思います。
トーン達もお腹が空いたと言います。お腹空くの?この前アイスを食べてたけど。チェストを使って欲しいと頼むトーン。使い方が分らないと話す響に、セイレーンは出来そうな気がすると言います。何か閃いたのでしょうか。
「ヒーリングチャストだけに、フィーリングで」
どや顔で言い放ったよ、この娘。
「あー、うん…そうね」
「じゃ、じゃあエレンに任せようかな」
「フィーリングで!」
「二回言わなくていいから」
セイレーンさんも一人前のボケになりました。
チェストにトーンを入れて鍵盤を弾くとトーン達が満足して出てきます。
下校。ようやく響はトーン達のしわざではなかったことに気付きます。
では何なのか。悩んでいると奏太がテストの結果を訪ねてきます。答えをはぐらかす響を見ていつもどおりだねとニヤニヤしながら近寄ってきます。どーせ駄目だったんだろ!とズバリ言ってくる奏太に「当たり」と素直にそして悲しそうに答える響。ここでムキになって奏太を追っ払おうとしないあたりが響らしいというか、奏太もそれが分っていて懐いている気がします。
奏太と言えばセットのアコ。自業自得と冷ややかに言います。勝ち誇ったようにふん、と鼻を鳴らします。今週のナイスショットです。全国で「あの見下した表情がたまらない」「まったく、小学生は最高だぜ」と悶絶している人々が大量発生していると思います。
アコが立ち去ろうとするとまた変な音が鳴ります。これにはアコもビックリ。恐る恐る一歩踏み出すとやはり変な効果音が鳴ります。奏太は鳴らないようです。その様子に響は笑います。一転して笑い物になったアコは恥ずかしさと悔しさを表情に浮かべながら帰って行きます。今週のベストショットです。まったく、小学生は最高だぜ!!
音にまつわる不思議現象。音吉さんなら何か分るかもしれません。
調べの館に付くと外からでも演奏が聞えてきます。音吉さんが演奏しているのだろうと中に入ると人影は見えず、オルガンが勝手に動いて演奏しています。それを見てセイレーンは驚天動地の大慌て。なるほどエレンの中にセイレーンが入っているから変身できない…って意味が分らないな。こっちの方が怪奇現象より怖ぇよ。
「大丈夫だから、だぶん」。奏さん説得力ないです。
音吉さんが静かにせんか、と注意します。セイレーンが音吉さんの肩を掴んで揺らします。音の源の精霊が近くに来ていると音吉さんは言います。肩を掴んでいるセイレーンが可愛い。
「あなたの力ですね、クレッシェンドトーン」
「元気そうですね音吉」
お久しぶりですと音吉さんも挨拶を返します。そのやり取りを見て響達は目を丸くします。視聴者的には想定の範囲内。音吉さんがなにやろうが、何を知っていようが驚くに値しません。プリキュアの老人キャラは最高権威者です。
間に合いますか?と問いかけるクレッシェンドに、必ず間に合わせると鋭い視線でパイプオルガンを見つめる音吉さん。傍目には何が何だか。今はまだ細かいことは教えてくれないようです。
館を出て音吉さんの不思議さに奏が思考を巡らしていると、顔が広いとハミィは簡単に話しを纏めてしまいます。響とセイレーンも頷きます。まあ、うん、そう考えた方が良いのかもしれない。
今日の不思議な音は響を応援したかったクレッシェンドトーンによるものでした。犬の声も彼女の仕業です。生憎響は寝てしまいましたが。頑張る人や落込んでいる人を応援したい、ただそれだけだと彼女は言います。
河川敷を歩いていると赤ちゃんが泣いています。クレッシェンドトーンが力を使って木が揺れる音を鈴の音に変えます。赤ちゃんの泣き声が止り笑い声に変わります。今度はキャッチボールしている子ども達が喧嘩し始めます。キャッチしたときの音をチャイム音に変えると喧嘩は収まりまた楽しそうに遊び始めます。音の力に感嘆する奏。
響はごめんね、と突然謝ります。何度も励ましてくれた人に答えるためにも次のテスト頑張る!と意気込みます。彼女の最も優れた美点です。彼女自身は力も劣り、不安を抱える幼子のように心が弱いところもある。けど彼女は周囲の人々の働きかけや絆を見ることが出来る素直さを持っている。それが彼女の力となって、彼女の周囲の人々をも変えていけるようになる…のかもしれない。
響の答案用紙に音符を発見するハミィ。同時にトリオ達も発見。
ネガトーン召喚。恥ずかしがって答案用紙を抑えようとする響。その努力も虚しく実体化します。口に当たる部分が○になっていますが、これは零点なのか○×の○なのか。響の名誉のためにも後者と信じたい。
チェストは絶対に渡さない!と声を合わせて変身。許さない以外にも言えたんだ。
③クイズバトル
変身が完了するとクイズ番組みたいにプリキュアは席に座っています。ちょっと前に戦隊でも似たようなことがありました。ネガトーンが司会兼出題者のようです。
「うわ、普通にしゃべった!」
セイレーンもしゃべれるとは思っていなかったらしい。
テストアレルギーなメロディは困惑していますがリズムは割と平気そうです。リボンが折れているのがウサギっぽくて可愛い。
リズムを指名して出題。白の英語読み。楽勝です。リズムさんやる気満々です。ビートへの出題は青の英語読み。これも楽勝。この程度問題になりません。むしろ、トリオですら呆れている展開なのに順応しているプリキュアの方が問題のような気がします。
メロディへはピンクの日本語読み。これはさりげに狡い。うっかりピンクと誤答してしまい×マークの攻撃が直撃。意外と容赦無い攻撃です。ちなみに射撃時に口が×になるのでやはり○×のシンボルのようです。リズムが代りに答えます。いや、それよりも隣でぶっ倒れている仲間を心配した方がいいんじゃないでしょうか。
トリオの指示でメロディに集中的に出題。集中砲火をあびせます。っていうか、これ正解してもプリキュア側は攻撃されないってだけで反撃できないのがタチ悪い。
メロディは分かんないんだもんと言いながらも次までには勉強してくる、励ましてくれたみんなを裏切りたくない、みんなを笑顔に出来るように次こそ頑張ると立ち上がります。えっ、あ、そういう纏め方するんだ。ギャグ回でも子どもへの配慮を忘れません。これで親の財布のヒモが緩めばしめたもの。見逃しやすいところですが「みんなを笑顔に出来るように」と言っているのがポイント。笑顔や絆を「守りたい」というところから「作りたい」へと変わっていこうとしています。プリキュアの使命は守ることにあらず。創ることにある。
クレッシェンドトーンはメロディを花丸だと支持します。
「今こそ、あなたに力を貸しましょう」
この流れでパワーアップ!? まさか新フォーム!?
魔方陣の上に立ってチェストの鍵盤を撫でます。この魔方陣はスーパーカルテットの魔方陣と同じ模様です。鍵盤の道をメロディは飛翔して巨大なクレッシェンドトーンを纏って突進。簡単に言うとシューティングスター。ところが負荷に耐えられず途中で脱落。
バスドラはアタックのチャンス!とチェストを奪おうとします。地味にネタを仕込んでいるあたりスタッフも楽しんでいるような気がする。ちょっと待った!リズムが止めます。チェストが欲しいなら自分達の出す問題に答えろと言います。不満そうなトリオにリズムはそっちばっかり不公平だと抗議。気持ちは分るけど番組の趣旨変わってね?
結局トリオ達も了承してクイズバトル再開。今週からプリキュアを見た人は訳が分らない。メロディを加えてプリキュアから出題。
「プリキュアクイズ。テレビの前のみんなも一緒に考えてみてね」
言っちゃったー!?
今から出てくる技の名前は? トリオは武器の名前を答えます。
「さて、それじゃ答え合わせよ♪」
リズムさんマジ外道。正解していようと外れていようと必殺技をぶっぱなすプリキュアマジ汚い。リズムのミュージックロンドの発音もいつもと違っていて面白い。
敵に狡いと言われながらもフィナーレを決めます。勝負の世界は非情です。メロディは答案を即行で回収。早っ。音符を摘んでハミィに渡します。仕草が可愛い。っていうかエロい。
敵を撃退したものの、クレッシェンドトーンの力に応えられず響は気を落とします。次頑張るんでしょと励ます奏達に響はもちろん!と答えます。
新たな力を目標にして三人は奮い立ちます。
④次回予告
修行のために山ごもり。ハーモニーパワーを鍛えろよ。
○トピック
ネタの飽和攻撃。シリーズでも今回のようにクイズをやったりギャグに特化したり突然ソフトボールを始めたりと好き勝手やった回はありますが、それらと比べても遊び度合いが強い。本編中で視聴者に話しかけるのはシリーズ初。遊んでいるようで主軸のエピソードに絡めてくるあたりは抜け目がありません。
本作の主人公である響は精神的に幼いところがあり視聴者である女児と近い位置に居ます。今出来ないことがあっても諦めずに頑張ればいいというのは視聴者へのメッセージでもあります。また彼女の最大の美点である素直さ、誠実さは幼く非力な彼女を成長させる原動力になっています。暖かく励ましてくれる友達に感謝しながら自分を奮い立たせていくのは実はとても凄いことです。現実には自信を失ってやけっぱちになる事が多い。自信を失ってしまうと自分のことばかり考えてしまい周囲の声も聞えなくなってしまいます。ですが、響は奏や両親と絆を再び結んだことで自信を取り戻し他者の声にも耳を傾けられるようになっています。これ地味ですが重要です。ハートキャッチのつぼみがそうであったように、他者の想いに応えるためにも自分を変えていく、自分を奮い立たせ他者に自分の意思を伝えていくことでより良い関係、結果を生み出していく。
アプローチの仕方は違えど目指すべきゴールは一緒なのがプリキュアシリーズの伝統です。その道程の違いは、言い方を変えれば如何にそれだけ人の業が深いか、罪が多いか、弱く未熟であるかを示すものでもある。フレッシュ以降特にそうですが、プリキュアの世界観は一貫して悪が存在しない世界です。戦う相手は人が生み出した災いそのもの。だとすればその世界で生きる人々は幸せになれないの? そんなことはない。罪深くとも弱くても人は幸せになれることを証明するのがプリキュアの物語の核心です。
音楽についても今回触れられています。
音は人に心理的影響を与えます。楽しげな音は人の気分を明るく、さわやかな音は落ち着かせる。もちろんマイナーのようにおどろおどろしい音であれば人を不安にさせたり悲しくさせたりもする。これは音が良いか悪いかの問題ではなく、音は人の生活と切っても切り離せないものでその効用の違いがあるということです。
それは人の声にも通じるでしょう。他者の声が時に自分を励まし、時に傷つける。音を発する者の意図、それを聞く者の意図によっても効果は変わる。発信側と受信側の同期、つまりコミュニケーションを現すことも出来ます。音楽の奏者は発信者でもありその音を聴く受信者でもある。作中で明言されていませんが、主題歌のとおりこの物語はみんなで唄う物語になると思われます。多様な人々による組曲。バラバラになってしまった人や世界は再び一つのしかし多様な音(人)が存在する世界へと再構築される。…と思っていますがはてさて、残り約20話。この物語はどんな幸せのメロディを奏でてくれるのでしょうか。
第29話「ハラハラ!メイジャーランドで宝探しニャ♪」
○今週の出来事
①メイジャーランド
クレッシェンドトーンが呼んでいることを響はふたりに話します。トーン達はいよいよ本格的にダウン。ぶっ倒れています。しかしクレッシェンドトーンの名はハミィもセイレーンも初耳。とにかくメイジャーに行ってみよう、と前向きなハミィ。他にやりようもありません。
背負いカゴにトーンを乗せて準備はOK。行商人みたい。呪文を唱えると鍵盤の回廊が出現します。ハミィが先導します。足を乗せると自動で運んでくれます。乗るときがスリルかもしれない。響が続き、セイレーンは奏の手を掴んで一緒に乗ります。最近までセイレーンは控え目な態度が多かったのですがメイジャー関連となれば彼女の庭、積極的に動きます。
一行はメイジャーランドへ。
プリキュア達の動向を見張っていたトリオはメフィストに報告。我々も追いかけましょうと打診します。ところが予想に反して「その必要はない」との指示。メフィストはクレッシェンドトーンのことを知っているようです。プリキュアでは太刀打ち出来ず自滅すると自信を持って断言。音符回収の指示を出します。
メイジャーランドが見えてきます。各所をハミィが紹介。セイレーンが幼い頃に迷って泣いた場所もあるようです。ハミィにかかると秘密が秘密でなくなります。ピクニック気分のハミィに奏が遊びに来たんじゃないと注意します。目的はクレッシェンドトーン。
アフロディテと接見。響と奏が話すのは21話以来の2度目です。アフロディテは今までよくプリキュアを導いてくれたとハミィを労います。自分は褒められて伸びるタイプもっと褒めて、と喜ぶハミィ。普段の様子を見ると褒めても貶しても気にしないタイプに見えるが。
オウムがやってきて本題に戻します。クレッシェンドトーンはこの世界の全ての音を生み出した音の精霊だと話すアフロディテ。厳しい表情を浮かべます。トーン達もクレッシェンドトーンから生まれたようです。トーンの親玉ってわけね。この話しはハミィも初耳だったようです。
そのクレッシェンドトーンが宿るのがヒーリングチェスト(定価8400円)。メイジャーランドの宝。ところが巨大な闇が襲ってきて奪われてしまいました。闇の正体は不明。チェストは魔響の森に封印されてしまいます。地元の人的には近づいちゃいけない危険な場所になっているようです。幾人も奪還に挑むも成果なし。クレッシェンドトーンが直接プリキュアに呼びかけたということは意味があるはず。チェストを取り戻すのです、とアフロディテは響達に指示します。
お約束的な展開。トーンが使えないので難易度はかなり上がっていますがここで決めなきゃ女がすたる。するとモジューレが光り出します。トーン無しでどうやって変身するのかと思いきや、アフロディテの力も借りて変身に成功。どうやらトーンは必須条件ではないらしい。ビートも初回はモジューレ無くても変身できたしね。てっきりトーンを掴んでモジューレに突っ込むのかと思っていました。
変身は非バンク。響の髪型のまま色が変わるので髪を下ろした状態のメロディは非常に珍しい。
本当に大丈夫なのかと心配するオウムに、アフロディテはプリキュアにとってこれは大いなる試練だと言います。これは少しメタ的な発言です。この試練は闇の支配に立ち向かえるかどうかが試されるわけですが、その鍵は何か、何が彼女達を支えているのかを示唆しています。国家安寧の危機だとか、プリキュアに国を助けて貰おうとか、そういう目線の話しではありません。アフロディテの言動は基本的にプリキュア達の目線や背景を支持する形になっています。
②魔響の森
入り口に到着。メイジャーとマイナーの狭間の空間にあるとビートが説明。メロディが先陣を切って中を覗くと真っ暗で見えません。突然光り出すとプリキュア達は中に吸い込まれてしまいます。
気がつくと3人はバラバラの状態に。目の前に稲妻が落ちてモアイ像のような顔の石の巨人が現れます。いわゆる番人的な存在。予想に反してカッコイイ声です。戦闘を仕掛けてきます。3人バラバラなこともあって苦戦。メロディの倒れ方が色っぽい。
かつて多くの者がヒーリングチェストを求め魔響の森に挑んだ、と述懐するメフィスト。彼もその一人。どんな強靱の心の持ち主も闇の力に心を奪われ闇のしもべになったと言います。そう、今回はチェスト云々よりもこっちの方が物語的に重要な点。黒幕が居る。
ゴーレムはプリキュアにお前達の弱点は仲間を信じていることだと言います。力の源はハーモニーパワー、つまり一人一人は何の力もないと言葉を続けます。そのための分断のようです。拳と拳をぶつけあっているシーンのリズムがマジ強そう。ハーモニーパワーなくても勝てるよきっと。プリキュアはバラバラになっても言葉も動きも同じようにしてゴーレムを攻撃。以心伝心。
すると今度はノイズ発生装置が飛んできて耳に装着。なるほど力で勝てても精神攻撃が残っているようです。このノイズ発生装置は当然メフィスト達と同じもの。こうやって洗脳されたのでしょう。
友情、愛情、信じる心、そんなものはまやかしだと言うゴーレム。メフィストが言っていた言葉と同じです。シリーズお約束の敵側主張。これ自体にはさほど意味はありません。問題はプリキュアが何を持ってそれに抗うか。プリキュアが育ててきたものは何かというところ。
メロディはリズムに話しかけます。「奏、聞えてる?」こういうときに本名で呼ぶのはプリキュア的伝統です。これから響が話すのは至極個人的な、しかしそれ故に結びつきの深いものです。
「私、嬉しかったよ。子どもの頃みたいに奏と仲良しになれて。時々ケンカもするけど、私は奏とおしゃべりしたりピアノ弾いたりしているときが一番幸せなんだ。私また奏の作るケーキが食べたい」
「エレンは誰よりも悩んだり苦しんだりしてたよね。でも、憎しみの心を断ち切ってプリキュアになってくれた、私達の友達になってくれた、信じていれば想いは通じるんだよね」
「私達はどんなことがあってもずっと」
「ずっと」
「ずっと」
「ずっと」
「ずっと、友達なんだ!」
この物語の主たる課題はディスコミュニケーションです。対人関係における意思不通、軋轢、心と心に亀裂が入って人が孤独になっていく様が描かれている。人と一緒に居るからといって心も一緒に居るとは限らない。お互いに壁を作り、心に蓋をすることすらままある。相手の言葉に刺を感じ、自分の希望に叶う言葉が発せられないことに失望し、自らもまた相手の求めるものを見ようとしない。そして終いには相手を憎むようになる。そうした疑心暗鬼、不信、すれ違い、エゴ、虚栄心、嘘、逃避などの対人関係の危うさ、脆さ、心の弱さを描き出してきました。3人がバラバラになっているのはそれを示唆しているでしょう。本当に仲間を信じられるのか。囚人のジレンマのように相手が自分を裏切るのではないかと疑心暗鬼になって、お互いに裏切り合うことで最悪の結果を生み出しかねない。そうした心の隙につけ込むのがノイズの意図でしょう。
しかしそんなものは響達にとって茶番です。1話からこれまでこの物語はえぐいくらいにディスコミュニケーションや心の迷いを彼女達に負わせてきました。その過程を通じて彼女達が育み、再び獲得した絆はそれ故に貴重で確かなものです。ああ、そうか、だから再回帰的であるんだな。一度失ったことによる不安と恐怖、それを再び得ることの喜びと確かさ。人は過ちを犯すが故に、その意味と価値を真に知る。賢者への扉は愚者にこそ開かれているのかもしれない。
…という話しを置いても、響と奏のバカップルぶりが凄まじい。なにこの告白。じゃあウェディングケーキを食べさせてあげる!気合いのレシピ見せてあげる!と奏が本気出すレベルです。
3人は再会を果たします。ゴーレムもまた3体合体してさらに巨大化。ムキムキマッチョな体型に。しかもハミィを人質にとります。セコイ。
ゴーレムの攻撃を受けてプリキュアは変身解除。相変わらずセイレーンは毎週ナイスなアングルがあるんですが、これはノルマでもあるんでしょうか。毎週一枚、みたいな。
ゴーレムはハミィ・トーンを指してこんな下らない命のために犠牲になるなんてとあざ笑います。これには毎週のように絶対に許さないと言っている響達も本気で堪忍袋の緒が切れます。奏マジ怖えぇ。命に大きいも小さいも無い、かけがえのない命を踏みにじるなんて、絶対に許せない!と3人は立ち上がります。スイートの音楽は生命を含む(といか生命から生じる)ものなのでそれを否定するものには断固として立ち向かいます。
自力変身。もうほんと、トーン要らないっスね。
トーンがなくてもハーモニーパワーがある!と3人でパッショナートハーモニーを撃ちます。豪快にゴーレムの土手っ腹に風穴を開けます。
これは終わりではない、始まりだ、とお約束な言葉を残してゴーレムは散ります。荒廃した土地は復活して元の綺麗な自然へと戻ります。
鍵を発見。デザイン的にはマイナー側のモチーフであるカラスの骸骨。これを引き抜くと空に扉が出現し鍵が刺さると開きます。お目当てのチェスト登場。クレッシェンドトーンが話しかけます。やはり先行してアイキャッチや映画予告で出ていた金色のトーンでした。トーン達がチェストに入ると体力回復。元の元気な状態に戻ります。
宮殿に帰るとアフロディテが響達を労います。きっと役に立つはずとチャストを響達に託します。具体的には新必殺技とかですね。
加音町に戻る一行。すでに陽は落ち月明かりが響達を照らします。奏に胸がある…だと!? まさかこれがチェストの効果なのでしょうか。
シリーズ初の本編ブルーレイ発売案内。これを期に過去シリーズもBDBOX化してくれないでしょうか。通算でDVDが100巻超えているので物理的に押し入れを圧迫しています。コンパクトにしたいんだよね。
③次回予告
ちょ、エレンの口の中に本体がいる!?
○トピック
番組も折り返して後半戦。新商品投入の時期。ということでお披露目。クレッシェンドトーンは映画でメロディのパワーアップにも関連してきそうですから、本編でもパワーアップフォームが登場するのか気になるところです。
マイナーの黒幕がいるであろうことが判明。ディスコミュニケーションをテーマとしているため、普通に考えれば和解ENDが妥当なところですが、それでは最終決戦が盛り上がらないし物語を総括してより昇華する上でもラスボスの顕在化はするだろうと思っていましたのでこの辺は想定内。メイジャーとマイナーは結局同じ音楽。それを生み出しているのがクレッシェンドトーンで、それを奪う闇の存在は対極的で分かりやすい。ただ、プリキュアの場合ラスボスの概念はかなり終盤にならないと判明しないためまだまだ予断を許さないところです。メフィストにしてもセイレーン同様何かしら心の隙を突かれた可能性が高いので、アフロディテやメイジャーとの軋轢があるかもしれません。アフロディテ・メフィストの対話もありうるでしょう。様々な関係、結びつき、誤解やすれ違いを描く本作のテーマを深めるものと期待したいところです。
心の会話、必殺技から見て今回が響・奏・セイレーンのハーモニーの醸成として一端の区切りが付いたと考えて良いでしょう。セイレーンとの関係は響・奏のそれと比べれば歴史が浅いですが、信頼を持った上で新しい友達を受け入れていくことで物語序盤であったような危なっかしい関係とはならないはずです。信頼に基づく自己表現の仕方を知っている彼女達はこれまでの課題を克服しています。その点でもクレッシェンドトーンの登場、未だに音沙汰はないもののそろそろ出てきそうな黄色の存在は新しいステップへと進み始めていることを予感させます。
①メイジャーランド
クレッシェンドトーンが呼んでいることを響はふたりに話します。トーン達はいよいよ本格的にダウン。ぶっ倒れています。しかしクレッシェンドトーンの名はハミィもセイレーンも初耳。とにかくメイジャーに行ってみよう、と前向きなハミィ。他にやりようもありません。
背負いカゴにトーンを乗せて準備はOK。行商人みたい。呪文を唱えると鍵盤の回廊が出現します。ハミィが先導します。足を乗せると自動で運んでくれます。乗るときがスリルかもしれない。響が続き、セイレーンは奏の手を掴んで一緒に乗ります。最近までセイレーンは控え目な態度が多かったのですがメイジャー関連となれば彼女の庭、積極的に動きます。
一行はメイジャーランドへ。
プリキュア達の動向を見張っていたトリオはメフィストに報告。我々も追いかけましょうと打診します。ところが予想に反して「その必要はない」との指示。メフィストはクレッシェンドトーンのことを知っているようです。プリキュアでは太刀打ち出来ず自滅すると自信を持って断言。音符回収の指示を出します。
メイジャーランドが見えてきます。各所をハミィが紹介。セイレーンが幼い頃に迷って泣いた場所もあるようです。ハミィにかかると秘密が秘密でなくなります。ピクニック気分のハミィに奏が遊びに来たんじゃないと注意します。目的はクレッシェンドトーン。
アフロディテと接見。響と奏が話すのは21話以来の2度目です。アフロディテは今までよくプリキュアを導いてくれたとハミィを労います。自分は褒められて伸びるタイプもっと褒めて、と喜ぶハミィ。普段の様子を見ると褒めても貶しても気にしないタイプに見えるが。
オウムがやってきて本題に戻します。クレッシェンドトーンはこの世界の全ての音を生み出した音の精霊だと話すアフロディテ。厳しい表情を浮かべます。トーン達もクレッシェンドトーンから生まれたようです。トーンの親玉ってわけね。この話しはハミィも初耳だったようです。
そのクレッシェンドトーンが宿るのがヒーリングチェスト(定価8400円)。メイジャーランドの宝。ところが巨大な闇が襲ってきて奪われてしまいました。闇の正体は不明。チェストは魔響の森に封印されてしまいます。地元の人的には近づいちゃいけない危険な場所になっているようです。幾人も奪還に挑むも成果なし。クレッシェンドトーンが直接プリキュアに呼びかけたということは意味があるはず。チェストを取り戻すのです、とアフロディテは響達に指示します。
お約束的な展開。トーンが使えないので難易度はかなり上がっていますがここで決めなきゃ女がすたる。するとモジューレが光り出します。トーン無しでどうやって変身するのかと思いきや、アフロディテの力も借りて変身に成功。どうやらトーンは必須条件ではないらしい。ビートも初回はモジューレ無くても変身できたしね。てっきりトーンを掴んでモジューレに突っ込むのかと思っていました。
変身は非バンク。響の髪型のまま色が変わるので髪を下ろした状態のメロディは非常に珍しい。
本当に大丈夫なのかと心配するオウムに、アフロディテはプリキュアにとってこれは大いなる試練だと言います。これは少しメタ的な発言です。この試練は闇の支配に立ち向かえるかどうかが試されるわけですが、その鍵は何か、何が彼女達を支えているのかを示唆しています。国家安寧の危機だとか、プリキュアに国を助けて貰おうとか、そういう目線の話しではありません。アフロディテの言動は基本的にプリキュア達の目線や背景を支持する形になっています。
②魔響の森
入り口に到着。メイジャーとマイナーの狭間の空間にあるとビートが説明。メロディが先陣を切って中を覗くと真っ暗で見えません。突然光り出すとプリキュア達は中に吸い込まれてしまいます。
気がつくと3人はバラバラの状態に。目の前に稲妻が落ちてモアイ像のような顔の石の巨人が現れます。いわゆる番人的な存在。予想に反してカッコイイ声です。戦闘を仕掛けてきます。3人バラバラなこともあって苦戦。メロディの倒れ方が色っぽい。
かつて多くの者がヒーリングチェストを求め魔響の森に挑んだ、と述懐するメフィスト。彼もその一人。どんな強靱の心の持ち主も闇の力に心を奪われ闇のしもべになったと言います。そう、今回はチェスト云々よりもこっちの方が物語的に重要な点。黒幕が居る。
ゴーレムはプリキュアにお前達の弱点は仲間を信じていることだと言います。力の源はハーモニーパワー、つまり一人一人は何の力もないと言葉を続けます。そのための分断のようです。拳と拳をぶつけあっているシーンのリズムがマジ強そう。ハーモニーパワーなくても勝てるよきっと。プリキュアはバラバラになっても言葉も動きも同じようにしてゴーレムを攻撃。以心伝心。
すると今度はノイズ発生装置が飛んできて耳に装着。なるほど力で勝てても精神攻撃が残っているようです。このノイズ発生装置は当然メフィスト達と同じもの。こうやって洗脳されたのでしょう。
友情、愛情、信じる心、そんなものはまやかしだと言うゴーレム。メフィストが言っていた言葉と同じです。シリーズお約束の敵側主張。これ自体にはさほど意味はありません。問題はプリキュアが何を持ってそれに抗うか。プリキュアが育ててきたものは何かというところ。
メロディはリズムに話しかけます。「奏、聞えてる?」こういうときに本名で呼ぶのはプリキュア的伝統です。これから響が話すのは至極個人的な、しかしそれ故に結びつきの深いものです。
「私、嬉しかったよ。子どもの頃みたいに奏と仲良しになれて。時々ケンカもするけど、私は奏とおしゃべりしたりピアノ弾いたりしているときが一番幸せなんだ。私また奏の作るケーキが食べたい」
「エレンは誰よりも悩んだり苦しんだりしてたよね。でも、憎しみの心を断ち切ってプリキュアになってくれた、私達の友達になってくれた、信じていれば想いは通じるんだよね」
「私達はどんなことがあってもずっと」
「ずっと」
「ずっと」
「ずっと」
「ずっと、友達なんだ!」
この物語の主たる課題はディスコミュニケーションです。対人関係における意思不通、軋轢、心と心に亀裂が入って人が孤独になっていく様が描かれている。人と一緒に居るからといって心も一緒に居るとは限らない。お互いに壁を作り、心に蓋をすることすらままある。相手の言葉に刺を感じ、自分の希望に叶う言葉が発せられないことに失望し、自らもまた相手の求めるものを見ようとしない。そして終いには相手を憎むようになる。そうした疑心暗鬼、不信、すれ違い、エゴ、虚栄心、嘘、逃避などの対人関係の危うさ、脆さ、心の弱さを描き出してきました。3人がバラバラになっているのはそれを示唆しているでしょう。本当に仲間を信じられるのか。囚人のジレンマのように相手が自分を裏切るのではないかと疑心暗鬼になって、お互いに裏切り合うことで最悪の結果を生み出しかねない。そうした心の隙につけ込むのがノイズの意図でしょう。
しかしそんなものは響達にとって茶番です。1話からこれまでこの物語はえぐいくらいにディスコミュニケーションや心の迷いを彼女達に負わせてきました。その過程を通じて彼女達が育み、再び獲得した絆はそれ故に貴重で確かなものです。ああ、そうか、だから再回帰的であるんだな。一度失ったことによる不安と恐怖、それを再び得ることの喜びと確かさ。人は過ちを犯すが故に、その意味と価値を真に知る。賢者への扉は愚者にこそ開かれているのかもしれない。
…という話しを置いても、響と奏のバカップルぶりが凄まじい。なにこの告白。じゃあウェディングケーキを食べさせてあげる!気合いのレシピ見せてあげる!と奏が本気出すレベルです。
3人は再会を果たします。ゴーレムもまた3体合体してさらに巨大化。ムキムキマッチョな体型に。しかもハミィを人質にとります。セコイ。
ゴーレムの攻撃を受けてプリキュアは変身解除。相変わらずセイレーンは毎週ナイスなアングルがあるんですが、これはノルマでもあるんでしょうか。毎週一枚、みたいな。
ゴーレムはハミィ・トーンを指してこんな下らない命のために犠牲になるなんてとあざ笑います。これには毎週のように絶対に許さないと言っている響達も本気で堪忍袋の緒が切れます。奏マジ怖えぇ。命に大きいも小さいも無い、かけがえのない命を踏みにじるなんて、絶対に許せない!と3人は立ち上がります。スイートの音楽は生命を含む(といか生命から生じる)ものなのでそれを否定するものには断固として立ち向かいます。
自力変身。もうほんと、トーン要らないっスね。
トーンがなくてもハーモニーパワーがある!と3人でパッショナートハーモニーを撃ちます。豪快にゴーレムの土手っ腹に風穴を開けます。
これは終わりではない、始まりだ、とお約束な言葉を残してゴーレムは散ります。荒廃した土地は復活して元の綺麗な自然へと戻ります。
鍵を発見。デザイン的にはマイナー側のモチーフであるカラスの骸骨。これを引き抜くと空に扉が出現し鍵が刺さると開きます。お目当てのチェスト登場。クレッシェンドトーンが話しかけます。やはり先行してアイキャッチや映画予告で出ていた金色のトーンでした。トーン達がチェストに入ると体力回復。元の元気な状態に戻ります。
宮殿に帰るとアフロディテが響達を労います。きっと役に立つはずとチャストを響達に託します。具体的には新必殺技とかですね。
加音町に戻る一行。すでに陽は落ち月明かりが響達を照らします。奏に胸がある…だと!? まさかこれがチェストの効果なのでしょうか。
シリーズ初の本編ブルーレイ発売案内。これを期に過去シリーズもBDBOX化してくれないでしょうか。通算でDVDが100巻超えているので物理的に押し入れを圧迫しています。コンパクトにしたいんだよね。
③次回予告
ちょ、エレンの口の中に本体がいる!?
○トピック
番組も折り返して後半戦。新商品投入の時期。ということでお披露目。クレッシェンドトーンは映画でメロディのパワーアップにも関連してきそうですから、本編でもパワーアップフォームが登場するのか気になるところです。
マイナーの黒幕がいるであろうことが判明。ディスコミュニケーションをテーマとしているため、普通に考えれば和解ENDが妥当なところですが、それでは最終決戦が盛り上がらないし物語を総括してより昇華する上でもラスボスの顕在化はするだろうと思っていましたのでこの辺は想定内。メイジャーとマイナーは結局同じ音楽。それを生み出しているのがクレッシェンドトーンで、それを奪う闇の存在は対極的で分かりやすい。ただ、プリキュアの場合ラスボスの概念はかなり終盤にならないと判明しないためまだまだ予断を許さないところです。メフィストにしてもセイレーン同様何かしら心の隙を突かれた可能性が高いので、アフロディテやメイジャーとの軋轢があるかもしれません。アフロディテ・メフィストの対話もありうるでしょう。様々な関係、結びつき、誤解やすれ違いを描く本作のテーマを深めるものと期待したいところです。
心の会話、必殺技から見て今回が響・奏・セイレーンのハーモニーの醸成として一端の区切りが付いたと考えて良いでしょう。セイレーンとの関係は響・奏のそれと比べれば歴史が浅いですが、信頼を持った上で新しい友達を受け入れていくことで物語序盤であったような危なっかしい関係とはならないはずです。信頼に基づく自己表現の仕方を知っている彼女達はこれまでの課題を克服しています。その点でもクレッシェンドトーンの登場、未だに音沙汰はないもののそろそろ出てきそうな黄色の存在は新しいステップへと進み始めていることを予感させます。
第28話「ドキドキ!エレンの初めての学校生活ニャ!」
○今週の出来事
①夏休みの終わり
森でカブトムシを捕まえた響は得意げに自慢します。セイレーンは初めて見るようで、すぐ手を引っ込めます。虫はあまり得意ではないのか。
ハミィは探しているのは虫ではないとカブトムシを逃がしてしまいます。今日も今日とて音符探し。セイレーンがゲット。早速シリーを呼ぶとフラフラとやってきます。前回に引き続きバテ気味。音符を回収したシリーは腰を下ろして一息つきます。他のトーン達もみな疲れた表情を浮かべています。しかしハミィはあまり深く考えず元気づけるためにも音符をもっと集めようと張り切ります。余計に疲れそう。
近くで少年達がカブトムシを捕まえて喜んでいます。響はさっき自分が捕まえたものだと物惜しそうに言います。ちょっとむくれているのが可愛い。女子中学生が虫取りに興味を持つのは希だと思いますが、この辺は視聴者視点が混ざっています。少年達の会話を聞いてもう夏休みも終わりだと寂しがるふたり。それを聞いてセイレーンはビックリ。
「夏休みって終わっちゃうの!?」
終わらない夏休みがあるとすれば、それはまあ、なんだ、察してあげましょう。
調べの館で休憩。みんなでアイスを食べます。
夏休みが終わったらソフトボール大会、学園祭とイベントがあることを話すふたり。セイレーンは寂しくないの?と訪ねます。夏休みの間色々な行事に参加して楽しんだセイレーンからすれば惜しく感じるのでしょう。ふたりと遊べなくなるというのもあるでしょうが。
ふたりは寂しいけど学校もまた違った意味で楽しいと話します。今年の主人公はキチンと宿題を済ませたようです。凄いと褒める奏に「私だって成長しているのだよ奏君」と鼻高々に答える響君。ご満悦のところ申し上げにくいですが、それ普通ですから。
ふたりの話しを聞いて感化されたセイレーンは自分も学校に行きたいと言い出します。ちょうど音吉さんがやってきます。来ると思ってました。王子先輩がそうだったように、あなたはこういうポジションですよね。
夏休みも最後の日。今日も今日とてデートの響と奏。結局夏休み中毎日デートだったのだと思います。
トーン達は作戦会議。音符を奪われたことを気取られるわけにはいかない、と自分達だけで奪還作戦を決行するようです。ハミィにお家で休むと話して別れます。
奏にエレンの話しを振られた響は父親に相談すると答えます。戸籍も後見人もあったもんじゃないセイレーンは学校に行くどころの話しではありません。いくら天才音楽家とはいえそこは難しそう。必要なのは偽造技術。
するとセイレーンは嬉しそうな声でふたりのもとに駆け寄ってきます。一息つくセイレーンのスカートが素晴らしい。なんというギリギリ感。黒ニーソによる絶対領域のハーモニーは奏のそれに勝るとも劣らない。東堂いづみ先生の熱心な仕事ぶりに感心します。
学校に行けることになったの!と満面の笑みで話すセイレーン。音吉さんがすべて処理してくれたようです。流石です。こんな怪しいことをやれるのはこの人しかいない。実は街の最高権力者だとか、アリア学園の理事長だとか、世界の富の過半数はこの人の影響下にあると言われても信じます。プリキュアの大人ポジションは事実上何でも有りなのでこれくらい朝飯前です。当然制服のサイズも事前チェック済みです。あとで情報を売って下さい。
音吉さんはますます謎だと話す奏。割と本気で思うんですが、私はそういう大人になりたいって思います。大人はなんでもやれるんだぜ、って子どもに見せつけてやりたい。そういう大人に君達もなれ、と。いや、偽造とかサイズチェックの話しじゃなくて。
中学校についてリハーサルをしようと申し出る奏。相変わらず面倒見が良いです。
飛んで火にいる夏の虫作戦を立案するバスドラ。今日はファルセットがリーダーのようですがバスドラがやりたがっているので今日も彼が指揮するようです。もう、なんかこいつらのリーダー争いは子どものリーダー争いと大差無いな。今日は俺が勇者役な、みたいな。
手順を紙芝居で説明。先日奪取した音符を囮にしてプリキュアをおびきよせ、一気に檻で捉えるという算段です。作戦内容は取るに足りませんが、無駄に画力が高いのが納得いきません。見た目によらず絵がうめぇ。
調べの館で学校のスケジュールを説明する奏。セイレーンは細々とメモを取ります。以前さくらという女子生徒に化けて学校に行った際も事前にメモを取っていましたしマメな性格なのかもしれません。
説明の合間に響はどこでお弁当を食べると美味しいと補足します。それもメモります。奏は1年を通じて運動会、学園祭、遠足があると話しを続けます。イメージ図が自分に都合の良い絵になっているのが奏らしいというかなんというか。響は木かよ。
覚えることはたくさんありますが細かいことは学校に行ってからじょじょに覚えればいい、まずは自己紹介の練習から始めようと促します。奏の説明は分かりやすく実践的です。
ハミィがお手本を見せます。奏がなんで?とツッコミを入れている間に始めてしまいます。ハミィの名前はハミィニャ♪と自己紹介。一人称を自分の名前にしているとそういう変な自己紹介になります。一人称が自分の名前というのは幼児期、特に女の子に見受けられます。ハミィの自己紹介までメモるセイレーン。この子は繰り返し型のギャグが得意かもしれない。そのまま自己紹介を続けるハミィ。トーンも紹介しますが、居ません。先ほど帰りました。自己紹介を続けます。カップケーキが好きというのもメモ。奏が止めます。実は人の話し聞かないタイプかもしれません。
ハミィは続けて奏は自分の肉球を触るのが大好き、と言います。そんなこと言わないでいい!と大声で制止する奏。えー、今更何いってんスか。「奏は肉球を触るのが好き」とメモ。もしかしてセイレーンのメモには響や奏の個人情報が細々と書いてあるのかもしれない。そのメモ買った!!
受け狙いで歌を唄ったりして、と余計なことを言う響。絶対に真に受けるでしょそれ。セイレーンのメモは大変なことになってそうです。
その頃、トーン達はバスドラが仕掛けた罠にまんまとハマってしまいます。絵で描いた音符で釣れるんだ。檻が落ちて閉じ込められたように見えましたが、人間用のため隙間から脱走。ところがトリオに捕まってしまいます。がこれも残ったトーンの活躍によって無事逃げおおせます。対フェアリートーンは惨敗気味。
セイレーンへのレクチャーは続きます。その途中響の耳にはまた例の声が聞えてきます。謎の声が聞えるという響にセイレーンは怖がります。何度も言うけど、しゃべって変化(へんげ)できる君の方がリアルで怖いから。
夏バテ気味なんじゃない、と奏は話しを流してセイレーンに上手く行きそうか訪ねます。緊張してきたという彼女に、自分のことを伝えたいという気持ちが大事と奏はアドバイスします。響もみんなもエレンの事が好きになると背中を押します。
その夜、奏と響はセイレーンへのプレゼントをこしらえます。セイレーンも自己紹介の練習。
スイートプリキュアのDSゲーム。アコのパティシエ姿とデレ顔。なんという破壊力。これは大型新人到来の予感です。
②新学期の始まり
新学期最初の登校。あれは?と訪ねる響にちゃんと作ってきたと答える奏。響も指に絆創膏を貼っていますが労は報われたようです。セイレーンの姿を見つけます。
声をかけられて振り返ったセイレーンの顔は見るも無惨。目の下にはっきりとクマを作っています。緊張して一睡も出来なかったと話します。それはそれとして、ふたりはプレゼントを渡します。ハンカチとペンケース。喜んだセイレーンは心のビートは止められないわ!と元気を取り戻します。それ、変身前でも言うんだ。
黒板にでっかく名前を書くセイレーン。あまりに大きくてスペースが足りなくなり「ン」だけ小さくなっています。ぱっと見は黒川エレさんです。頭を抱える響と奏。これは先が思いやられます。
先生は構わず自己紹介を促します。すると鞄から巻物を取り出して広げます。どうやら自己紹介を書いた紙のようですが、どれだけ語る気なんだよ。黒板といい、出だしから仕込みぶりがハンパねぇ。どうでもいいことですが、巻物を読むというと勧進帳を連想します。
大音量で読み始めます。先生が小さい声でいいのよ、と冷静にアドバイス。普通に自己紹介を始めると好きな食べ物や色を話し始めます。猫が好きってまあ、うん、同属? っていうか食べ物はすき焼きが好きなんだと思ってました。半ば我が子を見るかのような状態になっている奏はハミィの自己紹介そのままだと呆れます。表情が可愛い。そこの男子生徒、どきたまえ。君には過ぎた場所だ。
音楽に溢れるこの街が大好きで、この中学校に入れて嬉しいと話すセイレーン。先が思いやられるかと思いましたがなかなかどうして、良い感じです。あのまま奏が肉球マニアだとバラすのかと期待してしまいましたがさすがにそこまではやらないようです。響も後押しします。ところが、歌うのが好きなので一曲唄うと言い出します。思わぬ展開にムンクの叫び状態のふたり。このままでは色んな意味でヤバイ中学デビューになってしまいます。
ふたりはしきりに「×」とジェスチャーを送ります。届けこの思い。
「ふたりともあんなに応援してくれてる」
この物語のメインテーマはディスコミュニケーションです。
「ああ~…」
「ありがとう黒川さん、歌はまた聴かせてね」
先生良い仕事してます。ところで独身ですか? その眼鏡良いと思いますよ。
休み時間にはクラスメイト達や他のクラスからも人が集まってセイレーンを質問攻め。とりあえず、変な子と避けられるような事態は避けられたようです。和音さんお久しぶりです。
人垣が出来て響と奏は近づけません。ふたりに貰ったプレゼントを握りしめて自分を奮い立たせるようにして質問に答えていくセイレーン。猫は特に黒猫が好き、だって私は黒ね…とうっかり言ってしまいそうになった瞬間に響はUFOが!とベタなネタをかましますが完全にスルーされます。どこに住んでいたの?この質問もまずい。当然のように素直に答えるセイレーンを見て奏は慌ててラッキースプーンっていうカップケーキ屋さんに住んでいると大声で言います。それみんな知ってるから。響も奏も同レベルです。
なんとか妨害しようとするふたりに和音が邪魔しないで、とばかりに不平を言います。セイレーンは立ち上がると大声でみんなと仲良くなりたい!と言います。プレゼントを胸に抱きしめながら声が小さくなって、倒れます。
保健室。響と奏が付き添っています。寝不足が原因。過度な緊張がそれに拍車をかけたような感じでしょう。落込むセイレーンに響は大丈夫と答えます。自己紹介は大成功、一生懸命な気持ちはみんなに伝わったと言います。その証拠に、と奏は窓を開けます。
そこには和音をはじめとしたクラスメイト達が心配そうにセイレーンを見つめる姿が。口々に心配と思い遣りの言葉をかける生徒達。セイレーンは改めて、こんな私だけどこれからよろしくお願いします、と挨拶をします。彼女を迎え入れる生徒達。困ったときはいつでも助けると和音は言葉をかけます。
③フェアリートーンを救え
一件落着。ということでバトルタイム。音符発見→ネガトーン召喚のいつもの流れ。
疲れていても変身時には自動召喚されるフェアリートーン。これシュールだなぁ。やっぱそうなるんだ。トーンに休みはありません。
フレッシュのサントラに収録されなかったBGMがかかります。未練がましいんですが、フレッシュの未収録曲を映画か何かのサントラに収録してもらえませんかね?クリスマス回ラストにかかっていた感動的な曲とか大好きなんで今からでも遅くないから収録して欲しいです。作曲者同じですし。
薬箱ネガトーンをキックで一蹴。追撃を加えようと挑みかかろうとしたらリズムが一本釣りされます。メロディも捕まってしまいます。リズムは逆さ吊り状態。カメラさん、スカートスカート。見えないのは分かってるんだけど、そこはお約束なんで。
ビートも捕まりますが、自ら回転して束縛を脱します。まだまだ新キャラ補正は健在。かかと落としで反撃。ナイスアングル。ビートさんマジ素敵。メロディ、リズムを救出。
一筋縄ではいかない。こうなったら一気に、と必殺技で決めようとするプリキュア。めっちゃ一筋縄で行こうとしていると思うんですが。それはそれとしてバテているトーンで果たして必殺技が可能なのか興味あるところです。
「おいでミリー!」
「ミ~ミミ…」
「おいでファリー!」
「ファ、ファファ…」
「おいでソリー!」
「ソ、ソソ…」
やっぱり駄目でした。あー、なるほど。改めて思ったけどプリキュアはフェアリートーン達とも協力してこそ本来の力が出せるわけだ。
こうなることを見据えてやった、作戦どおり!と豪語するバスドラ。なんとでも言い訳出来る。
トーン不在の状態で果敢に戦おうとするプリキュア。しかし捉えられ大ピンチ。そこに登場、キュアミューズ。最近何もしていませんでしたが今回は大活躍。鍵盤攻撃によってプリキュアを救出&ネガトーンの動きを止めます。となれば、トーン無しで出せる必殺技は一つしかない。
久々のパッショナートハーモニー。おお、これは嬉しい誤算。もう使われることはないだろうと思っていましたが、こういう登場の仕方をするとは。今となっては派手さもない技ですが、ふたりの笑顔が素敵な技です。
音符を回収。トーンを見たハミィは音符が無いことに気付きます。もう少し早く気付いて欲しかったんですが。
トリオに取られてしまったと正直に話すドリー。ハミィは気がつかなくてごめんと謝ります。地味ですがハミィの良さが出ているシーンです。ドドリーがトリオから取り戻そうと頑張りすぎたと補足します。
シリーを手にとって撫でるメロディ。自分達の知らないところで彼らが頑張っていたことを知ります。そして声。ミューズに訪ねるとクレッシェンドトーンと答えが返ってきます。トーンの声なのか。例の金色トーン?
フェアリートーンが弱っている。時間がないと今度はハッキリとした声が聞えてきます。かなり切羽詰まっている印象。下からのローアングル。このシーンで私が無邪気に喜ぶと思った方はまだまだ甘い。そういうことじゃないんです。スカート、モコモコ、太もものコントラストとハーモニーが大事なんです。
三人ともハミィと一緒にメイジャーランドに来なさい、と声は言います。
謎の声が風雲急を告げる。
④次回予告
メイジャーで待ち受けていたのは……モアイ像!? ハミィのトーン運送方法が可愛い。
○トピック
新学期、新しい学校に転校しても大丈夫、元気を出してみんなに気持ちを伝えよう。みんなもあなたに応えてくれる、というお話し。メイン視聴者には未就学児童も多いでしょうが学校というのはこういうところだよ、というチュートリアルにもなっています。
セイレーンはハミィ以外に友達がいなく、響と奏とは学校経由で知り合っていないので、初体験の彼女を通して学校や級友との出会いを描くのはその点で合理的です。またセイレーンはプリキュアになって以降、響奏以外の友達がいなかったので学校をつうじて友達を作っていく事は彼女が人の輪に入っていくこと、世界に繋がり彼女自身もまた輪の一部となることを示唆します。学校に転入することも踏まえてエレンと名乗っているのでしょう(これは作劇的に不自然さを無くすため。セイレーンと名乗るよりはエレンの方が違和感ない)。
プリキュア加入後のセイレーンの位置づけとしては、初めて友達を作り始める(あるいは新しい環境に置かれた)時期の子どもの目線に合わせている感じ。素直に気持ちを伝えれば、みんなもあなたに心開いてくれると繰り返し強調しています。セイレーンが改めて友達を作っていく過程と同期させています。
またこれは新章への前準備だと思いますが、フェアリートーンが妖精ポジションになりつつあります。最初は響・奏がメインで、ハミィ・セイレーンが妖精ポジション。トーンはプリキュアアイテム付属品という印象でしたが、セイレーン加入、トーン達の出番増加によって響・奏・ハミィ・セイレーンが同じテーブルに着いて、トーンが妖精ポジションになった感があります。最近のエピソードで示唆されているように、プリキュアが十分に力を出すにはトーン達の協力が必要であり、プリキュアの活躍の裏にはトーン達の支えがあります。つまりトーン達とも繋がりが必要になってきたということ。新たな絆、ハーモニーの拡張が示唆されています。夏休み期間中のエピソードは例年メインストーリーに絡まないことが多いのですが地味に話しを積んでいます。スイートどんだけ詰込んでんだよ。
果たして今年の新商品にはどんな機能が盛り込まれるのか。いつもの高額設定なのか。映画の予告以来とんと音沙汰の無い黄色の動向。武器の名前とお値段は? CMはギター並に気合いを入れるのだろうか。本編と関係ないところまで楽しみにしながら次回以降も見ていきます。
①夏休みの終わり
森でカブトムシを捕まえた響は得意げに自慢します。セイレーンは初めて見るようで、すぐ手を引っ込めます。虫はあまり得意ではないのか。
ハミィは探しているのは虫ではないとカブトムシを逃がしてしまいます。今日も今日とて音符探し。セイレーンがゲット。早速シリーを呼ぶとフラフラとやってきます。前回に引き続きバテ気味。音符を回収したシリーは腰を下ろして一息つきます。他のトーン達もみな疲れた表情を浮かべています。しかしハミィはあまり深く考えず元気づけるためにも音符をもっと集めようと張り切ります。余計に疲れそう。
近くで少年達がカブトムシを捕まえて喜んでいます。響はさっき自分が捕まえたものだと物惜しそうに言います。ちょっとむくれているのが可愛い。女子中学生が虫取りに興味を持つのは希だと思いますが、この辺は視聴者視点が混ざっています。少年達の会話を聞いてもう夏休みも終わりだと寂しがるふたり。それを聞いてセイレーンはビックリ。
「夏休みって終わっちゃうの!?」
終わらない夏休みがあるとすれば、それはまあ、なんだ、察してあげましょう。
調べの館で休憩。みんなでアイスを食べます。
夏休みが終わったらソフトボール大会、学園祭とイベントがあることを話すふたり。セイレーンは寂しくないの?と訪ねます。夏休みの間色々な行事に参加して楽しんだセイレーンからすれば惜しく感じるのでしょう。ふたりと遊べなくなるというのもあるでしょうが。
ふたりは寂しいけど学校もまた違った意味で楽しいと話します。今年の主人公はキチンと宿題を済ませたようです。凄いと褒める奏に「私だって成長しているのだよ奏君」と鼻高々に答える響君。ご満悦のところ申し上げにくいですが、それ普通ですから。
ふたりの話しを聞いて感化されたセイレーンは自分も学校に行きたいと言い出します。ちょうど音吉さんがやってきます。来ると思ってました。王子先輩がそうだったように、あなたはこういうポジションですよね。
夏休みも最後の日。今日も今日とてデートの響と奏。結局夏休み中毎日デートだったのだと思います。
トーン達は作戦会議。音符を奪われたことを気取られるわけにはいかない、と自分達だけで奪還作戦を決行するようです。ハミィにお家で休むと話して別れます。
奏にエレンの話しを振られた響は父親に相談すると答えます。戸籍も後見人もあったもんじゃないセイレーンは学校に行くどころの話しではありません。いくら天才音楽家とはいえそこは難しそう。必要なのは偽造技術。
するとセイレーンは嬉しそうな声でふたりのもとに駆け寄ってきます。一息つくセイレーンのスカートが素晴らしい。なんというギリギリ感。黒ニーソによる絶対領域のハーモニーは奏のそれに勝るとも劣らない。東堂いづみ先生の熱心な仕事ぶりに感心します。
学校に行けることになったの!と満面の笑みで話すセイレーン。音吉さんがすべて処理してくれたようです。流石です。こんな怪しいことをやれるのはこの人しかいない。実は街の最高権力者だとか、アリア学園の理事長だとか、世界の富の過半数はこの人の影響下にあると言われても信じます。プリキュアの大人ポジションは事実上何でも有りなのでこれくらい朝飯前です。当然制服のサイズも事前チェック済みです。あとで情報を売って下さい。
音吉さんはますます謎だと話す奏。割と本気で思うんですが、私はそういう大人になりたいって思います。大人はなんでもやれるんだぜ、って子どもに見せつけてやりたい。そういう大人に君達もなれ、と。いや、偽造とかサイズチェックの話しじゃなくて。
中学校についてリハーサルをしようと申し出る奏。相変わらず面倒見が良いです。
飛んで火にいる夏の虫作戦を立案するバスドラ。今日はファルセットがリーダーのようですがバスドラがやりたがっているので今日も彼が指揮するようです。もう、なんかこいつらのリーダー争いは子どものリーダー争いと大差無いな。今日は俺が勇者役な、みたいな。
手順を紙芝居で説明。先日奪取した音符を囮にしてプリキュアをおびきよせ、一気に檻で捉えるという算段です。作戦内容は取るに足りませんが、無駄に画力が高いのが納得いきません。見た目によらず絵がうめぇ。
調べの館で学校のスケジュールを説明する奏。セイレーンは細々とメモを取ります。以前さくらという女子生徒に化けて学校に行った際も事前にメモを取っていましたしマメな性格なのかもしれません。
説明の合間に響はどこでお弁当を食べると美味しいと補足します。それもメモります。奏は1年を通じて運動会、学園祭、遠足があると話しを続けます。イメージ図が自分に都合の良い絵になっているのが奏らしいというかなんというか。響は木かよ。
覚えることはたくさんありますが細かいことは学校に行ってからじょじょに覚えればいい、まずは自己紹介の練習から始めようと促します。奏の説明は分かりやすく実践的です。
ハミィがお手本を見せます。奏がなんで?とツッコミを入れている間に始めてしまいます。ハミィの名前はハミィニャ♪と自己紹介。一人称を自分の名前にしているとそういう変な自己紹介になります。一人称が自分の名前というのは幼児期、特に女の子に見受けられます。ハミィの自己紹介までメモるセイレーン。この子は繰り返し型のギャグが得意かもしれない。そのまま自己紹介を続けるハミィ。トーンも紹介しますが、居ません。先ほど帰りました。自己紹介を続けます。カップケーキが好きというのもメモ。奏が止めます。実は人の話し聞かないタイプかもしれません。
ハミィは続けて奏は自分の肉球を触るのが大好き、と言います。そんなこと言わないでいい!と大声で制止する奏。えー、今更何いってんスか。「奏は肉球を触るのが好き」とメモ。もしかしてセイレーンのメモには響や奏の個人情報が細々と書いてあるのかもしれない。そのメモ買った!!
受け狙いで歌を唄ったりして、と余計なことを言う響。絶対に真に受けるでしょそれ。セイレーンのメモは大変なことになってそうです。
その頃、トーン達はバスドラが仕掛けた罠にまんまとハマってしまいます。絵で描いた音符で釣れるんだ。檻が落ちて閉じ込められたように見えましたが、人間用のため隙間から脱走。ところがトリオに捕まってしまいます。がこれも残ったトーンの活躍によって無事逃げおおせます。対フェアリートーンは惨敗気味。
セイレーンへのレクチャーは続きます。その途中響の耳にはまた例の声が聞えてきます。謎の声が聞えるという響にセイレーンは怖がります。何度も言うけど、しゃべって変化(へんげ)できる君の方がリアルで怖いから。
夏バテ気味なんじゃない、と奏は話しを流してセイレーンに上手く行きそうか訪ねます。緊張してきたという彼女に、自分のことを伝えたいという気持ちが大事と奏はアドバイスします。響もみんなもエレンの事が好きになると背中を押します。
その夜、奏と響はセイレーンへのプレゼントをこしらえます。セイレーンも自己紹介の練習。
スイートプリキュアのDSゲーム。アコのパティシエ姿とデレ顔。なんという破壊力。これは大型新人到来の予感です。
②新学期の始まり
新学期最初の登校。あれは?と訪ねる響にちゃんと作ってきたと答える奏。響も指に絆創膏を貼っていますが労は報われたようです。セイレーンの姿を見つけます。
声をかけられて振り返ったセイレーンの顔は見るも無惨。目の下にはっきりとクマを作っています。緊張して一睡も出来なかったと話します。それはそれとして、ふたりはプレゼントを渡します。ハンカチとペンケース。喜んだセイレーンは心のビートは止められないわ!と元気を取り戻します。それ、変身前でも言うんだ。
黒板にでっかく名前を書くセイレーン。あまりに大きくてスペースが足りなくなり「ン」だけ小さくなっています。ぱっと見は黒川エレさんです。頭を抱える響と奏。これは先が思いやられます。
先生は構わず自己紹介を促します。すると鞄から巻物を取り出して広げます。どうやら自己紹介を書いた紙のようですが、どれだけ語る気なんだよ。黒板といい、出だしから仕込みぶりがハンパねぇ。どうでもいいことですが、巻物を読むというと勧進帳を連想します。
大音量で読み始めます。先生が小さい声でいいのよ、と冷静にアドバイス。普通に自己紹介を始めると好きな食べ物や色を話し始めます。猫が好きってまあ、うん、同属? っていうか食べ物はすき焼きが好きなんだと思ってました。半ば我が子を見るかのような状態になっている奏はハミィの自己紹介そのままだと呆れます。表情が可愛い。そこの男子生徒、どきたまえ。君には過ぎた場所だ。
音楽に溢れるこの街が大好きで、この中学校に入れて嬉しいと話すセイレーン。先が思いやられるかと思いましたがなかなかどうして、良い感じです。あのまま奏が肉球マニアだとバラすのかと期待してしまいましたがさすがにそこまではやらないようです。響も後押しします。ところが、歌うのが好きなので一曲唄うと言い出します。思わぬ展開にムンクの叫び状態のふたり。このままでは色んな意味でヤバイ中学デビューになってしまいます。
ふたりはしきりに「×」とジェスチャーを送ります。届けこの思い。
「ふたりともあんなに応援してくれてる」
この物語のメインテーマはディスコミュニケーションです。
「ああ~…」
「ありがとう黒川さん、歌はまた聴かせてね」
先生良い仕事してます。ところで独身ですか? その眼鏡良いと思いますよ。
休み時間にはクラスメイト達や他のクラスからも人が集まってセイレーンを質問攻め。とりあえず、変な子と避けられるような事態は避けられたようです。和音さんお久しぶりです。
人垣が出来て響と奏は近づけません。ふたりに貰ったプレゼントを握りしめて自分を奮い立たせるようにして質問に答えていくセイレーン。猫は特に黒猫が好き、だって私は黒ね…とうっかり言ってしまいそうになった瞬間に響はUFOが!とベタなネタをかましますが完全にスルーされます。どこに住んでいたの?この質問もまずい。当然のように素直に答えるセイレーンを見て奏は慌ててラッキースプーンっていうカップケーキ屋さんに住んでいると大声で言います。それみんな知ってるから。響も奏も同レベルです。
なんとか妨害しようとするふたりに和音が邪魔しないで、とばかりに不平を言います。セイレーンは立ち上がると大声でみんなと仲良くなりたい!と言います。プレゼントを胸に抱きしめながら声が小さくなって、倒れます。
保健室。響と奏が付き添っています。寝不足が原因。過度な緊張がそれに拍車をかけたような感じでしょう。落込むセイレーンに響は大丈夫と答えます。自己紹介は大成功、一生懸命な気持ちはみんなに伝わったと言います。その証拠に、と奏は窓を開けます。
そこには和音をはじめとしたクラスメイト達が心配そうにセイレーンを見つめる姿が。口々に心配と思い遣りの言葉をかける生徒達。セイレーンは改めて、こんな私だけどこれからよろしくお願いします、と挨拶をします。彼女を迎え入れる生徒達。困ったときはいつでも助けると和音は言葉をかけます。
③フェアリートーンを救え
一件落着。ということでバトルタイム。音符発見→ネガトーン召喚のいつもの流れ。
疲れていても変身時には自動召喚されるフェアリートーン。これシュールだなぁ。やっぱそうなるんだ。トーンに休みはありません。
フレッシュのサントラに収録されなかったBGMがかかります。未練がましいんですが、フレッシュの未収録曲を映画か何かのサントラに収録してもらえませんかね?クリスマス回ラストにかかっていた感動的な曲とか大好きなんで今からでも遅くないから収録して欲しいです。作曲者同じですし。
薬箱ネガトーンをキックで一蹴。追撃を加えようと挑みかかろうとしたらリズムが一本釣りされます。メロディも捕まってしまいます。リズムは逆さ吊り状態。カメラさん、スカートスカート。見えないのは分かってるんだけど、そこはお約束なんで。
ビートも捕まりますが、自ら回転して束縛を脱します。まだまだ新キャラ補正は健在。かかと落としで反撃。ナイスアングル。ビートさんマジ素敵。メロディ、リズムを救出。
一筋縄ではいかない。こうなったら一気に、と必殺技で決めようとするプリキュア。めっちゃ一筋縄で行こうとしていると思うんですが。それはそれとしてバテているトーンで果たして必殺技が可能なのか興味あるところです。
「おいでミリー!」
「ミ~ミミ…」
「おいでファリー!」
「ファ、ファファ…」
「おいでソリー!」
「ソ、ソソ…」
やっぱり駄目でした。あー、なるほど。改めて思ったけどプリキュアはフェアリートーン達とも協力してこそ本来の力が出せるわけだ。
こうなることを見据えてやった、作戦どおり!と豪語するバスドラ。なんとでも言い訳出来る。
トーン不在の状態で果敢に戦おうとするプリキュア。しかし捉えられ大ピンチ。そこに登場、キュアミューズ。最近何もしていませんでしたが今回は大活躍。鍵盤攻撃によってプリキュアを救出&ネガトーンの動きを止めます。となれば、トーン無しで出せる必殺技は一つしかない。
久々のパッショナートハーモニー。おお、これは嬉しい誤算。もう使われることはないだろうと思っていましたが、こういう登場の仕方をするとは。今となっては派手さもない技ですが、ふたりの笑顔が素敵な技です。
音符を回収。トーンを見たハミィは音符が無いことに気付きます。もう少し早く気付いて欲しかったんですが。
トリオに取られてしまったと正直に話すドリー。ハミィは気がつかなくてごめんと謝ります。地味ですがハミィの良さが出ているシーンです。ドドリーがトリオから取り戻そうと頑張りすぎたと補足します。
シリーを手にとって撫でるメロディ。自分達の知らないところで彼らが頑張っていたことを知ります。そして声。ミューズに訪ねるとクレッシェンドトーンと答えが返ってきます。トーンの声なのか。例の金色トーン?
フェアリートーンが弱っている。時間がないと今度はハッキリとした声が聞えてきます。かなり切羽詰まっている印象。下からのローアングル。このシーンで私が無邪気に喜ぶと思った方はまだまだ甘い。そういうことじゃないんです。スカート、モコモコ、太もものコントラストとハーモニーが大事なんです。
三人ともハミィと一緒にメイジャーランドに来なさい、と声は言います。
謎の声が風雲急を告げる。
④次回予告
メイジャーで待ち受けていたのは……モアイ像!? ハミィのトーン運送方法が可愛い。
○トピック
新学期、新しい学校に転校しても大丈夫、元気を出してみんなに気持ちを伝えよう。みんなもあなたに応えてくれる、というお話し。メイン視聴者には未就学児童も多いでしょうが学校というのはこういうところだよ、というチュートリアルにもなっています。
セイレーンはハミィ以外に友達がいなく、響と奏とは学校経由で知り合っていないので、初体験の彼女を通して学校や級友との出会いを描くのはその点で合理的です。またセイレーンはプリキュアになって以降、響奏以外の友達がいなかったので学校をつうじて友達を作っていく事は彼女が人の輪に入っていくこと、世界に繋がり彼女自身もまた輪の一部となることを示唆します。学校に転入することも踏まえてエレンと名乗っているのでしょう(これは作劇的に不自然さを無くすため。セイレーンと名乗るよりはエレンの方が違和感ない)。
プリキュア加入後のセイレーンの位置づけとしては、初めて友達を作り始める(あるいは新しい環境に置かれた)時期の子どもの目線に合わせている感じ。素直に気持ちを伝えれば、みんなもあなたに心開いてくれると繰り返し強調しています。セイレーンが改めて友達を作っていく過程と同期させています。
またこれは新章への前準備だと思いますが、フェアリートーンが妖精ポジションになりつつあります。最初は響・奏がメインで、ハミィ・セイレーンが妖精ポジション。トーンはプリキュアアイテム付属品という印象でしたが、セイレーン加入、トーン達の出番増加によって響・奏・ハミィ・セイレーンが同じテーブルに着いて、トーンが妖精ポジションになった感があります。最近のエピソードで示唆されているように、プリキュアが十分に力を出すにはトーン達の協力が必要であり、プリキュアの活躍の裏にはトーン達の支えがあります。つまりトーン達とも繋がりが必要になってきたということ。新たな絆、ハーモニーの拡張が示唆されています。夏休み期間中のエピソードは例年メインストーリーに絡まないことが多いのですが地味に話しを積んでいます。スイートどんだけ詰込んでんだよ。
果たして今年の新商品にはどんな機能が盛り込まれるのか。いつもの高額設定なのか。映画の予告以来とんと音沙汰の無い黄色の動向。武器の名前とお値段は? CMはギター並に気合いを入れるのだろうか。本編と関係ないところまで楽しみにしながら次回以降も見ていきます。
第27話「カチッカチッ!30分で世界を救うニャ!」
○今週の出来事
①スタートは8時半
響の眼前に広がる巨大なお菓子。スイーツの国。夢が叶った!とお菓子を食べまくります。この国の公用語は関西弁だったりするのでしょうか。前回同様謎の声が響に語りかけます。響…響…響…寝ている響を起こす父の声。
今日はみんなでハイキング。そのことに気付いた響は時計を見て仰天。集合は9時。現在8時半。慌てて飛び起きると身支度を始めます。
南野宅では奏がお菓子作り。って、デカっ!業務用のボール!?何人前作る気? オーブンに入れて30分焼きます。時間ピッタリ。「我ながら完璧♪」。焼き上がった後も箱に入れたりとかあるからオーバーするんじゃない?
今回所々にカウントダウンの演出が入ります。これはオーブンのタイマーと同期しています。
DSゲームのCM。先行して公式PVを見ていましたが見所はリズムがドラムを担当しているところ。出オチ感がハンパねぇ。
山の上に設置された巨大アンテナ。休日の朝からバリトンさんは仕事する気満々です。
音符も集まり上機嫌なメフィスト。バスドラは出来て当然、これまでのリーダーがお間抜けなだけだったと嫌味を言います。30分以内に世界を不幸の音楽に包むと宣言。
②カウントダウン
調べの館。ハミィがセイレーンの部屋を訪れると完全装備したセイレーンが立っています。それ熱中症で倒れるよ、というツッコミを入れる前にハミィがズッコケます。調べの館ってどういう構造なのか分からないけど宿泊できる場所があるのね、とかそういうこと言う前に出オチで来るの止めて下さい。
音吉さんの本で調べたと話すセイレーン。ハイキングとは野山を歩き回ること→登山の一種→野宿→テント→自炊→お鍋…と連想を広げていきます。いや、登山する人はすき焼きみたいなことはしないと思うよ。重量かさむし。
ハイキングはもっとお手軽に楽しむもの、大げさな荷物はいらないと至極真っ当に指摘するハミィ。この荷物もどっから持ってきたんだか。音吉さんの私物でしょうか。時計を見ると8時35分。セイレーン組も一波乱。
一方、響は朝食。お茶漬けをあっと言う間に平らげてお片付け、歯磨き、身繕い、お着替え。準備完了で8時40分。10分前に起きたことを考えれば驚異的なスピードです。前回予告どおりの進行。流石あたし、と鼻を高くする響。いやそれ以前に寝坊してるから君。ハミィが見あたりません。奏の家に先に行ったのかもと考えて響も向かいます。
トリオは謎の乗り物に乗って移動。これもパワーアップの恩恵でしょうか。散々嫌味を言われたバスドラは作戦は考えてあるんだろうな?とバリトンに聞きます。当然、とラジオを見せながら「名付けてトロイの木馬作戦」と自信に満ちた態度で言うバリトン。ラジオとトロイの木馬?
天文台に向かう途中で音符を回収。その様子をセイレーンが発見。見逃すわけにはいきません。
奏の家にハミィはまだ来ていないようです。肩を落とす響。しかし私はテンションが上がります。奏がニーソ着用。春服とは違うタイプですが奏はニーソのイメージが強い。この子は下半身がエロい(酷い発言だ)。
エレンを迎えに調べの館に行ったのでは?と推測。オーブンを奏太に頼んでふたりは調べの館へと向かいます。ハイキングにアコも同行するらしい。夏休みの間も奏太はアコと一緒。なんて羨ましい。
残り15分。調べの館に行って戻るだけの時間があるんだろうか。響の家から奏の家まで5分で移動しているようなんですが、実は近所?
セイレーンはハミィに響達に知らせてと頼み単身トリオ達を追います。
南野宅出発後約1分で調べの館到着。早っ。近っ。加音町の位置関係ってどうなってるんだろう。
ふたりの姿は見あたりません。響は奏にフェアリートーンにも探すのを手伝って貰おうと話します。自分達を呼ぶ声に応えようとして倒れるシリー。どうやら前回無理したらしく体力が戻っていないようです。音符を取られたこともまだ言ってないしどうしよう!?と不安になるファリー。レリーは自分達だけで取り返そう!と気丈。心配をかけないように響達の前では元気に振る舞おうとシリーが言います。この子達もこの子達で独立した話しになってるな。フェアリートーンは本編に直接関わらないところで話しに色をつけるポジションかと思ってたんだけど意外と話しが続いているし、次回も一波乱あるようだから響達と絡んでくるのかもしれない。
響達の前に姿を現すとさっそく散開してハミィを探しに行きます。頼りになる、と感心していると響の耳またあの声が聞えてきます。「急いで…」「急がないと…」。声が聞えない奏は響の様子にポカンとします。なお、現実に幻聴が聞える場合は精神科へ行きましょう。幻聴だけでなく統合失調症や解離症状も可能性として疑われます。大ざっぱに言うと幻聴を幻聴として認識する場合は解離症状、何か意味付け(誰々の声、自分を操ろうとしている)をする場合は統合失調症が疑われますが、医師の診断を仰ぎましょう。
ハミィが駆けつけます。フェアリートーン無駄足でした。ハミィも1分くらいで調べの館戻ってきています。全体的に移動速度速ぇ。残り約12分。現実でも8時41分。残り時間はほぼ一致しています。
ハミィからトロイの木馬作戦のことを聞くふたり。詳細は不明ですがセイレーンが向かっていると知って応援に向かいます。
③トロイの木馬作戦
トリオは天文台に到着。巨大アンテナを利用するつもりのようです。セイレーンが駆けつけます。何故分かったのか訪ねるバリトンに間抜けな会話が聞えた、トロイの木馬作戦だっけ?と勝ち誇ったように答えるセイレーン。ところが五線譜の結界に封じられ身動きが取れなくなってしまいます。これはちょっとお間抜け。今度はトリオ達が勝ち誇ります。結界はセイレーンも使えますが、使われると自力解除は出来ないらしい。フェアリートーンが必要です。
ハイキング出発まで残り10分。
ネガトーン召喚。作戦概要はこうです、アンテナから電波を出して世界中のラジオに不幸な曲を送信。世界は不幸に包まれるという算段らしい。その曲はトリオが歌うマイナーコーラス。ずいぶん手軽な世界征服の仕方です。あ、でも私ラジオ聴かないし、世界を不幸に包み込めるかというと微妙な感じが。ダムに毒いれたり、幼稚園バスを襲撃するみたいな微妙さ。とはいえこの作戦が成功するならもう音符集めなくても良いんじゃない? 音符集めて不幸のメロディ完成させてやることって要するにこれだよね。
バリトンの作戦に「あったまいい~」とバスドラもファルセットも感心。それを聞いてますますそんなことはさせないともがくセイレーン。「まずい聞かれていた」。コントだろこれ。
今まさに歌おうとした瞬間「ちょっと待った」コール。ねるとんを連想した人は若くないです。
響と奏が汗だくになりながらかけつけます。毎度毎度勝手なことばかり、いい加減にしなさいと苦情を言います。なんかノリ的には世界の危機とかよりも、これからハイキングしようってときに邪魔すんなくらいの勢いです。
フェアリートーンの力で五線譜解除。プリキュアに変身。現在8時47分。いつもどおりです。変身シークエンスに脚部シーン追加。この足を揃えるシーン好きです。キュート。今頃言うのもなんですがドレミファソラ、と鳴った後の飛び降りるシーンをよく見るとメロディのヘソが一瞬ですが書き込まれているコマがあります。きっと作画の人の趣味です。個人的にはメロディが足を曲げて万歳しているのが可愛い。特に太ももと太ももの間に隙間が出来ているのがポイント。コケテッシュ。コマ送り推奨シーンです。
などと書き手の変態ぶりをアピールしている間に戦闘が始まっています。攻撃を回避して跳躍したプリキュアは反動を利用して反撃。しかし返り討ち。敵のパワーアップに苦戦しますが、それで弱音を吐くプリキュアではありません。
主題歌アレンジBGMがかかります。ビートはソニックを使って反撃。そのままミュージックロンド3連。久々のミラクルベルティエ召喚シーン。これの最大の見所はメロディの太ももです。さっきから太もも太ももってどんだけ言ってんだよ。でもこの感想読んでいる人の過半数は共感するだろうと思ってます。
結局トロイの木馬の意味って何だったの?という話しですが、カッコイイから何となくという理由だったようです。スイートはギリシャ神話からの命名が多いのでトロイの木馬もそれ繋がりなのかも。
巨大アンテナの上で朝から頑張った!とメロディ。これで終わりではありません。急いで帰ろうと話すビート。「え?」とキョトンとしているリズム可愛い。メロディとリズムはハイキングのことを忘れていたようです。急いで帰ります。
残り40秒。ケーキもそろそろ焼き上がりそうです。奏太が待ちくたびれています。三人は屋根の上を跳んで全力ダッシュ。プリキュアのこういう使い方は珍しいですが面白い。「きっとすぐ来るわよ」とアコ到着。「悪かったわね、遅くなって」珍しく素直。
家の前に到着。変身を解いて駆けつけます。「来た」。映画のイラストを見る限りミューズと黄色は別人ぽいので、アコがミューズという線は大分薄くなりましたがそれでもアコがプリキュア関連のことを現状でも知っている節があります。いつもなら「どーせ道草食ってるんでしょ」と言いそうですが、今回素直なのもこの辺の事情によるところでしょう。
カップケーキも完成。それを見てアコは生唾を飲み込みます。表情もいつものクールさは見られず年相応な感じ。これは珍しい。カップケーキで大抵の人は釣れるようです。奏の両親、響の父と面子が揃います。総勢8名+ハミィ。これなら大量のカップケーキも納得。なお、このカップケーキは視聴者に公募したデザインのケーキのようです。EDのスタッフロールに採用者の名前が出ています。
30分で世界を救った彼女達は何事もなかったようにハイキングに出かけます。でも、カップケーキの減りは早いかもしれません。
④次回予告
新学期の巻。
○トピック
夏休み最後の回。海に行ったり祭りをやったり音符探して世界を救ってハイキングと盛りだくさんな夏休みでした。お出かけする時でもプリキュアを見てね、という作り手の意思表示が見えなくもない。
イベント前にドタバタする展開は新鮮。まさに子ども向けらしいエピソード。たった30分ですがそこには色んな事がギッシリ詰まっている。子どもにとっての30分、アニメの30分は長い冒険です。その後でみんなでお出かけしようというのも気持ちのいい流れです。休日の始まりを想起させます。プリキュアにとっては世界を救うことよりも、こうした日常の豊かさ、楽しさ、充実を得ていくことの方が重要です。そのために戦っています。
①スタートは8時半
響の眼前に広がる巨大なお菓子。スイーツの国。夢が叶った!とお菓子を食べまくります。この国の公用語は関西弁だったりするのでしょうか。前回同様謎の声が響に語りかけます。響…響…響…寝ている響を起こす父の声。
今日はみんなでハイキング。そのことに気付いた響は時計を見て仰天。集合は9時。現在8時半。慌てて飛び起きると身支度を始めます。
南野宅では奏がお菓子作り。って、デカっ!業務用のボール!?何人前作る気? オーブンに入れて30分焼きます。時間ピッタリ。「我ながら完璧♪」。焼き上がった後も箱に入れたりとかあるからオーバーするんじゃない?
今回所々にカウントダウンの演出が入ります。これはオーブンのタイマーと同期しています。
DSゲームのCM。先行して公式PVを見ていましたが見所はリズムがドラムを担当しているところ。出オチ感がハンパねぇ。
山の上に設置された巨大アンテナ。休日の朝からバリトンさんは仕事する気満々です。
音符も集まり上機嫌なメフィスト。バスドラは出来て当然、これまでのリーダーがお間抜けなだけだったと嫌味を言います。30分以内に世界を不幸の音楽に包むと宣言。
②カウントダウン
調べの館。ハミィがセイレーンの部屋を訪れると完全装備したセイレーンが立っています。それ熱中症で倒れるよ、というツッコミを入れる前にハミィがズッコケます。調べの館ってどういう構造なのか分からないけど宿泊できる場所があるのね、とかそういうこと言う前に出オチで来るの止めて下さい。
音吉さんの本で調べたと話すセイレーン。ハイキングとは野山を歩き回ること→登山の一種→野宿→テント→自炊→お鍋…と連想を広げていきます。いや、登山する人はすき焼きみたいなことはしないと思うよ。重量かさむし。
ハイキングはもっとお手軽に楽しむもの、大げさな荷物はいらないと至極真っ当に指摘するハミィ。この荷物もどっから持ってきたんだか。音吉さんの私物でしょうか。時計を見ると8時35分。セイレーン組も一波乱。
一方、響は朝食。お茶漬けをあっと言う間に平らげてお片付け、歯磨き、身繕い、お着替え。準備完了で8時40分。10分前に起きたことを考えれば驚異的なスピードです。前回予告どおりの進行。流石あたし、と鼻を高くする響。いやそれ以前に寝坊してるから君。ハミィが見あたりません。奏の家に先に行ったのかもと考えて響も向かいます。
トリオは謎の乗り物に乗って移動。これもパワーアップの恩恵でしょうか。散々嫌味を言われたバスドラは作戦は考えてあるんだろうな?とバリトンに聞きます。当然、とラジオを見せながら「名付けてトロイの木馬作戦」と自信に満ちた態度で言うバリトン。ラジオとトロイの木馬?
天文台に向かう途中で音符を回収。その様子をセイレーンが発見。見逃すわけにはいきません。
奏の家にハミィはまだ来ていないようです。肩を落とす響。しかし私はテンションが上がります。奏がニーソ着用。春服とは違うタイプですが奏はニーソのイメージが強い。この子は下半身がエロい(酷い発言だ)。
エレンを迎えに調べの館に行ったのでは?と推測。オーブンを奏太に頼んでふたりは調べの館へと向かいます。ハイキングにアコも同行するらしい。夏休みの間も奏太はアコと一緒。なんて羨ましい。
残り15分。調べの館に行って戻るだけの時間があるんだろうか。響の家から奏の家まで5分で移動しているようなんですが、実は近所?
セイレーンはハミィに響達に知らせてと頼み単身トリオ達を追います。
南野宅出発後約1分で調べの館到着。早っ。近っ。加音町の位置関係ってどうなってるんだろう。
ふたりの姿は見あたりません。響は奏にフェアリートーンにも探すのを手伝って貰おうと話します。自分達を呼ぶ声に応えようとして倒れるシリー。どうやら前回無理したらしく体力が戻っていないようです。音符を取られたこともまだ言ってないしどうしよう!?と不安になるファリー。レリーは自分達だけで取り返そう!と気丈。心配をかけないように響達の前では元気に振る舞おうとシリーが言います。この子達もこの子達で独立した話しになってるな。フェアリートーンは本編に直接関わらないところで話しに色をつけるポジションかと思ってたんだけど意外と話しが続いているし、次回も一波乱あるようだから響達と絡んでくるのかもしれない。
響達の前に姿を現すとさっそく散開してハミィを探しに行きます。頼りになる、と感心していると響の耳またあの声が聞えてきます。「急いで…」「急がないと…」。声が聞えない奏は響の様子にポカンとします。なお、現実に幻聴が聞える場合は精神科へ行きましょう。幻聴だけでなく統合失調症や解離症状も可能性として疑われます。大ざっぱに言うと幻聴を幻聴として認識する場合は解離症状、何か意味付け(誰々の声、自分を操ろうとしている)をする場合は統合失調症が疑われますが、医師の診断を仰ぎましょう。
ハミィが駆けつけます。フェアリートーン無駄足でした。ハミィも1分くらいで調べの館戻ってきています。全体的に移動速度速ぇ。残り約12分。現実でも8時41分。残り時間はほぼ一致しています。
ハミィからトロイの木馬作戦のことを聞くふたり。詳細は不明ですがセイレーンが向かっていると知って応援に向かいます。
③トロイの木馬作戦
トリオは天文台に到着。巨大アンテナを利用するつもりのようです。セイレーンが駆けつけます。何故分かったのか訪ねるバリトンに間抜けな会話が聞えた、トロイの木馬作戦だっけ?と勝ち誇ったように答えるセイレーン。ところが五線譜の結界に封じられ身動きが取れなくなってしまいます。これはちょっとお間抜け。今度はトリオ達が勝ち誇ります。結界はセイレーンも使えますが、使われると自力解除は出来ないらしい。フェアリートーンが必要です。
ハイキング出発まで残り10分。
ネガトーン召喚。作戦概要はこうです、アンテナから電波を出して世界中のラジオに不幸な曲を送信。世界は不幸に包まれるという算段らしい。その曲はトリオが歌うマイナーコーラス。ずいぶん手軽な世界征服の仕方です。あ、でも私ラジオ聴かないし、世界を不幸に包み込めるかというと微妙な感じが。ダムに毒いれたり、幼稚園バスを襲撃するみたいな微妙さ。とはいえこの作戦が成功するならもう音符集めなくても良いんじゃない? 音符集めて不幸のメロディ完成させてやることって要するにこれだよね。
バリトンの作戦に「あったまいい~」とバスドラもファルセットも感心。それを聞いてますますそんなことはさせないともがくセイレーン。「まずい聞かれていた」。コントだろこれ。
今まさに歌おうとした瞬間「ちょっと待った」コール。ねるとんを連想した人は若くないです。
響と奏が汗だくになりながらかけつけます。毎度毎度勝手なことばかり、いい加減にしなさいと苦情を言います。なんかノリ的には世界の危機とかよりも、これからハイキングしようってときに邪魔すんなくらいの勢いです。
フェアリートーンの力で五線譜解除。プリキュアに変身。現在8時47分。いつもどおりです。変身シークエンスに脚部シーン追加。この足を揃えるシーン好きです。キュート。今頃言うのもなんですがドレミファソラ、と鳴った後の飛び降りるシーンをよく見るとメロディのヘソが一瞬ですが書き込まれているコマがあります。きっと作画の人の趣味です。個人的にはメロディが足を曲げて万歳しているのが可愛い。特に太ももと太ももの間に隙間が出来ているのがポイント。コケテッシュ。コマ送り推奨シーンです。
などと書き手の変態ぶりをアピールしている間に戦闘が始まっています。攻撃を回避して跳躍したプリキュアは反動を利用して反撃。しかし返り討ち。敵のパワーアップに苦戦しますが、それで弱音を吐くプリキュアではありません。
主題歌アレンジBGMがかかります。ビートはソニックを使って反撃。そのままミュージックロンド3連。久々のミラクルベルティエ召喚シーン。これの最大の見所はメロディの太ももです。さっきから太もも太ももってどんだけ言ってんだよ。でもこの感想読んでいる人の過半数は共感するだろうと思ってます。
結局トロイの木馬の意味って何だったの?という話しですが、カッコイイから何となくという理由だったようです。スイートはギリシャ神話からの命名が多いのでトロイの木馬もそれ繋がりなのかも。
巨大アンテナの上で朝から頑張った!とメロディ。これで終わりではありません。急いで帰ろうと話すビート。「え?」とキョトンとしているリズム可愛い。メロディとリズムはハイキングのことを忘れていたようです。急いで帰ります。
残り40秒。ケーキもそろそろ焼き上がりそうです。奏太が待ちくたびれています。三人は屋根の上を跳んで全力ダッシュ。プリキュアのこういう使い方は珍しいですが面白い。「きっとすぐ来るわよ」とアコ到着。「悪かったわね、遅くなって」珍しく素直。
家の前に到着。変身を解いて駆けつけます。「来た」。映画のイラストを見る限りミューズと黄色は別人ぽいので、アコがミューズという線は大分薄くなりましたがそれでもアコがプリキュア関連のことを現状でも知っている節があります。いつもなら「どーせ道草食ってるんでしょ」と言いそうですが、今回素直なのもこの辺の事情によるところでしょう。
カップケーキも完成。それを見てアコは生唾を飲み込みます。表情もいつものクールさは見られず年相応な感じ。これは珍しい。カップケーキで大抵の人は釣れるようです。奏の両親、響の父と面子が揃います。総勢8名+ハミィ。これなら大量のカップケーキも納得。なお、このカップケーキは視聴者に公募したデザインのケーキのようです。EDのスタッフロールに採用者の名前が出ています。
30分で世界を救った彼女達は何事もなかったようにハイキングに出かけます。でも、カップケーキの減りは早いかもしれません。
④次回予告
新学期の巻。
○トピック
夏休み最後の回。海に行ったり祭りをやったり音符探して世界を救ってハイキングと盛りだくさんな夏休みでした。お出かけする時でもプリキュアを見てね、という作り手の意思表示が見えなくもない。
イベント前にドタバタする展開は新鮮。まさに子ども向けらしいエピソード。たった30分ですがそこには色んな事がギッシリ詰まっている。子どもにとっての30分、アニメの30分は長い冒険です。その後でみんなでお出かけしようというのも気持ちのいい流れです。休日の始まりを想起させます。プリキュアにとっては世界を救うことよりも、こうした日常の豊かさ、楽しさ、充実を得ていくことの方が重要です。そのために戦っています。
第26話「ピポパポ♪フェアリートーンの大冒険ニャ♪」
○今週の出来事
①縁の下の力持ち
伝説の楽譜を食い入るように見つめるメフィスト。何度見ようが真っ白は真っ白。セイレーンが脱退してしまったので歌い手不在ですが、とりあえずは音符収集を優先します。これがないと始まらない。
部下のトリオ達はというと…海でバカンス中。海で泳いだり、砂浜でお城を作ったりして夏を満喫しています。
何をやっている!とメフィストの叱責が飛びます。全くです。響達が海に行ったときは水着のミの字もなかったというのに。女の子の水着は映さないけど野郎の水着はOKとか、絶対意図的にやっているだろ。なんという嫌がらせ。ほらお前らの大好きな水着だぜ、という意思がひしひしと伝わってきます。プリキュアは大友に媚びぬ!という隠れたメッセージ。これに対して男女差別反対!女の子の水着を出すべきだ!などと言えば、どっちも水着出さない手で打ってくるのは必定。こと水着問題に関しては一歩も譲らないのが東堂いづみ先生のご意志のようです。でも変身するときは裸OK。先生の考えはよく分かりません。
部下達の使えなさに頭を抱えるメフィスト。これでは集まるものも集まりません。ということでレッツ洗脳。まさかの変身シーン。むさ苦しい野郎達が暑苦しくなりました。
どういうノリなんだこの展開。メフィストのおっさんは相変わらずギャグ顔が似合う。
北条宅。時間は7時前。響はまだぐっすり寝ています。
ミッションスタート、とドリー。フェアリートーン達と共同でカーテンを開けて太陽の光を部屋に入れます。続いてテコの原理を利用してシリーがジャンプ。響の頭に乗って10点、と自己採点。ようやく響の目が覚めます。同時に目覚まし時計のベルが鳴り出しジャスト7時で起床。ドリーがベルを止めます。
ハミィはまだ眠たがりますが、今日は音符探しでしょと響が起こします。最近目覚ましが鳴る前に起きられるようになったと自画自賛。その裏ではトーン達が早起きミッション成功!と喜びます。なるほど今回はこういう路線で行くのね。面白い使い方です。
フェアリートーン3つの約束。
ひとつ、はぐれないように気をつける。
ふたつ、いつも笑顔でにっこり。
みっつ、困ったときはチームワーク。
自分達は大切な音符を預かっている使命があるとトーン達はミーティングを行います。案外今までこんな感じで打合せやっていたのかもしれません。
そんなわけで、森の中で響達は音符探し。でもなかなか見つからないようです。
時同じくしてトリオ達も音符探し。こちらは首尾良く見つけていきます。あの格好で街の中でもお構いなしに探します。八百屋の人が胡散臭い目でバリトンを見ています。親子の間ではきっと「お母さん、あれなに?」「しーっ、見ちゃいけません」という会話がなされていると思います。
コスプレはそういう会場でやってください。今の時期だとビッグサイトとかですかね。
響達は公園に移動して捜索しますが見つからず。セイレーンも熱さのためか匂いが嗅ぎ取れないようです。私はセイレーンのナイスアングルを見つけられてウハウハです。水着の有り無しなど些細な事。重要なのは一瞬のカットも見逃さない集中力。夏バテしている暇などありません。
公園で遊んでいた子ども達のボールがハミィに直撃。思わす声を出してしまうハミィ。それを聞いた子ども達はしゃべった!とハミィを追いかけます。むしろ今までよくバレてなかったな、という気もしますがちと面倒なことになりました。ハミィを巡っての大騒動。響達がフォローに入りますが収拾がつきません。そこでシリーが太鼓の音を出して子どもの気を引きます。その隙に響はハミィを抱えて脱出。ナイスアシスト。
駄菓子屋で休憩。ベンチの下でトーン達は点呼を取ります。欠員無し。
響はかき氷に舌鼓を打ちます。かき氷は初めてらしいセイレーン。案の定キーンとなります。可愛いシーンです。奏がアイスクリーム頭痛と説明します。言い忘れていましたが今回初めて基本私服姿を披露。響や奏と比べてファッション性が高い衣装です。セイレーンは大人しい印象と大人びた印象が同居しているのでシーンによって可憐に見えたりボーイッシュに見えたりします。
飾られている風鈴を真似てファリーが鈴の音を鳴らします。チャイムの音も出せるようです。それを聞いて響達は感心します。先ほどもそうですが意外と器用な能力です。
そんな一同をバリトンがストーキング。なにやら良からぬことを企んでいるようです。
②ポケットの中の戦争
音符探し再開。しかしなかなか見つかりません。するとラリーが音符を発見。しかしこれはバリトンの罠。捕まってしまいます。
喉が渇いて動けないと音を上げるハミィ。水分補給をしようと奏が提案します。よい子のみんなも倒れないようにとの熱中症対策です。隙を突かれレリーも捕まってしまいます。ラリー、レリーが捕まるのはマズイ。
ラムネで水分補給。
再びトーン達は点呼を取ります。ド・ミ・ファ・ソ・シ。足りません。っていうかその前に気付け。「レリーとラリーはどこドド?」「ここドド」。バリトン参上。ドリーが捕まってしまいます。ちょうどそこにバスドラとファルセットが合流。相変わらず音符を一番集めた奴がリーダー、というゲームをやっているようです。
小瓶の量はファルセット>バスドラ>バリトン
しかしバリトンには切り札があります。ドリー、レリー、ラリーを見せます。セイレーンの作戦の真似っこ!と抗議の声をあげるふたり。しかしバリトンはそんなことには頓着せずトーン達から音符を抜きます。この状態だと変身も不可というおまけ付き。バリトンは頭脳プレー派でしょうか。
バリトンは残る4人(?)のトーンにも狙いを付けます。プリキュアのいないところで大ピンチ。
ラムネで元気充電。響の音頭で音符探し再開です。ハミィがトーン達を呼びに行きます。と、そこにトーンを追いかけてきたバスドラが現れます。思わぬ珍客に驚く三人。
ファルセットとバリトンも現れトリオが揃います。細かい点ですが、ここで囚われたトーンが隠されているのがポイント。今回の胆はフェアリートーンの活動が響達の目に触れていない点にあります。
いつもとは違う出で立ちに警戒するセイレーン。よい子のみんなは変な格好をした人を見たら全力で逃げましょう。バカがうつります。
バリトンが扇風機をネガトーン化。ファルセットがやるときはやっぱり高い声なんでしょうか。ネガトーンもカラーが黒くなって力強そうです。音波を出して街の人々を悲しませます。
仲間を救出すべくシリーがリーダーとなって残る3人のトーンと協力します。
バスドラの後ろに回ったソリーが笛の音で意表を突き、ミリーとファリーがダブルキックで後頭部に打撃。ファルセットに倒れこみます。その拍子に虫かごが転げ落ちて脱出。気付いたファルセットがシリーを捕まえます。シリーを人質に取るファルセット。しかしシリーは僕に構わずにプリキュアに変身させろ!と気丈に振る舞います。弱気なラリーを勇気付けるようにドリーとレリーが促し、プリキュアのもとへと向かいます。人質作戦はあまり意味が無かったようです。これでシリーが砕かれたらショッキング映像になってしまいますが、親の苦情が怖いのでそんなことはしません。
さて、いつもの展開に戻ります。子ども達を悲しませる悪行に怒りを燃やす響。絶対に許せない!ドリー・レリー・ラリー参上。ナイスタイミング。
バスドラ達に文句を言うバリトン。またケンカし始めます。ファルセットはシリーをどうしてくれる?と握りしめます。そこにハミィ登場。なにしてる?と肩に乗ったハミィにビックリした隙をついてダブルトーンキックが炸裂。シリー救出。ハミィのお手柄、とトーン達は感謝。
仕切り直してプリキュアVSネガトーン戦が始まります。この番組はプリキュアが主役です。
初手でメロディをぶっ飛ばすネガトーン。負けじとビートがかかと落としを決めてリズムがアッパー。しかし尻尾を地面に突き刺して体勢を立て直したネガトーンは反撃を繰り出します。リズム、ビートをメロディが抱えて退避。倒れたときのリズムの表情が「そんなメロディ、こんなところで」みたいに見えるのは私だけでしょうか。まあ、喜んでいるに違いないと思いますが。
回避成功と思った矢先尻尾が振り下ろされて街の中を大移動。見た目の変化どおりネガトーンが強化されています。
今度は強風がプリキュアを襲います。メロディのデコが可愛い。
好機、と見てトリオ達は力を合わせて歌を歌います。すると強風がパワーアップ。吹き飛ばされて地面に叩き付けられるプリキュア。大苦戦。プリキュアを助けるためソリーが駆けつけます。
ラブギターロッドを召喚するのかと思いきや、モジュールに装着して吹きます。久しぶりの使用方法。販促タイム。っていうか今回自体販促、っていうかプリキュア自体が販促アニメなんですが。緑色のオーラがプリキュアを包みこみ元気を取り戻します。ソリーのソはソウルのソ、集中力が上がると解説するハミィ。うーん、遠いような。
ハートキャッチのパフュームよろしくパワーアップしたプリキュアの大反撃。ビートの「モコモコだからっていつも見えるわけじゃない」キックが炸裂。しかしそれに耐えたネガトーンはビートを払いのけます。メロディ、リズムが打撃を浴びせます。しかしこれも耐えてふたりを地面に叩き付けます。それでも強いネガトーン。
ビートがバリアを張って音波攻撃からメロディとリズムを守ります。いつもより結界が大きい。しかしビートのバリアは割れるバリア。限界に達します。割れないバリアはルミナスだけです。
土煙の中からメロディリズムが飛び出して突進。形勢をひっくり返します。三人になってもふたりで連携するメロディとリズムは流石です。阿吽の呼吸。
必殺販促技により浄化。ミラクルベルティ、ファンタスティックベルティエ、ラブギターロッドを買ってフィナーレを決めよう、という力強いメッセージ。力強いというか、それで飯食っている人がいるので割と命がけ。
フェアリートーンみたいに良いチームワークだった、とハミィが総括。これで分かるように今回の主役はフェアリートーンです。
戦いに勝って音符を1個ゲットしたものの、トリオ達の手には大量の音符。音符集めでは大きな水をあけられてしまいました。責任を感じるドリー。
浜辺の夕日。シリーの生還をラリーは喜びます。
トリオ達が集めた音符を見て落胆するセイレーン。奏も今まで自分達が集めた音符より多かったかも…と不安を表します。その会話を聞いてますます落込むドリー。ファリーとソリー、ミリーが励まします。
それを見たハミィは毎日1個でも集めていけばいっぱいになるとセイレーン達を励まします。セイレーンナイスアングル。地味にセイレーン強化週間です。そうです、毎週1枚でも集めていけば最終的にはフォルダがいっぱいになります。なんのフォルダかは言えませんが。
元気を取り戻すセイレーン。響は大声で「不幸のメロディなんて絶対に完成させないんだからー!」と夕日に向かって叫びます。隣で驚くセイレーンが可愛い。そして響の横顔が美しい。
響の耳に「それだけでは駄目」という声が届きます。しかし奏とセイレーンは聞えなかった様子。空耳かな?と疑問を浮かべる響をシリーがタッチします。次の鬼らしい。おいおい響さんに鬼て。そりゃ響鬼さんは鬼だけど。ってこれ狙ってるでしょ!?
フェアリートーンを追いかける響。ハミィも加わって鬼ごっこ。その様子を奏とセイレーンは笑います。
先行きの不安や謎があったとしても、今日も楽しい一日を過ごします。
③次回のスケジュール
8時30分ハイキングの準備開始。
8時40分着替え終了。
8時46分トリオザマイナー発見。
8時48分フェアリートーンが消えた!
8時55分ネガトーンが現れた!
8時57分みんな!変身よ!
OP・EDを抜くと実質的には20分くらいで世界を救います。
○トピック
相変わらず次回予告が酷い。なんて身も蓋もない。
販促全開、とばかりにフェアリートーンメインのお話。フェアリートーンは響達と関係性がないのでドドリーのような狂言回しのポジションだったり、客観的なポジションだったりと比較的自由な立ち位置ですが今回のエピソードはそれに輪をかけて面白い見せ方です。
感覚的にはトイ・ストーリー的な遊び心があって楽しい。トーン達の活躍や努力を響達は知りません。これはちっちゃな大冒険であり、知らないうちに玩具達が自分を助けてくれる夢のあるエピソードです。それだけに終始することなくプリキュアとの連携や、フェアリートーンの頑張りがハミィへ、ハミィから響達へと伝わる流れも綺麗です。ドリーは責任を感じていますが、この問題はみんなの問題でありみんなで成し遂げていくものとして総括しています。視聴者的には玩具達が助けてくれたように、あなたも玩具達を助けよう、みんな頑張ろうという感じ。
余談ですが、プリキュアは視聴者を信じている節があります。例えばセイレーンがエレンとして改心するにあたって、響奏がセイレーンに対して態度を和らげていく過程は少し飛躍しています。フレッシュでいうとラブはともかくとして美希や祈里のせつなに対する態度にも言えます。これは多分に彼女達の苦悩の様子を重ねていくことで視聴者(メイン層である子ども)に訴えかけているのだと思います。彼女達も苦しい思いをしている。悪いことをしたけど許そうよ、って。今回のエピソードも作中では響達はトーン達の活躍や失敗を知りません。でも一緒に頑張ろうと一致団結しています。ドリー達の失敗の責任も問わない。視聴者の代りに全部主人公達が体験してしゃべって説明するのではなく、部分部分では視聴者自身が体験して答えを出してそれを主人公達が追認している面があります。フレッシュの映画でも最終的にトイマジンを救ったのは視聴者でした。プリキュアは子ども目線で作っている作品なんですが、視聴者に主体性(厳密には思考誘導ですが)を促しているようにも見えます。良く言えば視聴者を信じている、悪く言えば説明不足、飛躍とも言えますが。でも、こうしたところもプリキュアの好きな点です。子どもに向けて作られているからこそ好きなんです。
さて、話しを本編に戻して、次章を予感させる謎の声。不幸のメロディを完成させないだけでは駄目というのは何を意味するか。それは反対の幸せのメロディを完成させるだけでは駄目とも取れる。まっ、プリキュアは単に世界の危機を救うだけなんてチャチなことはしません。幸せのメロディを完成させるというのなら、その幸せとは何か、どんな形なのか、伝説の楽譜を破り捨ててでも彼女達自身が幸せの楽譜を完成させるでしょう。ハートキャッチがただ人の心を守るだけでなく如何にして花咲かせて、救ってきたかを見せたように。プリキュアの使命は守ることではありません。幸せを創っていくことです。そこにプリキュアの物語のダイナミズムがある。30分で世界を救い、1年でみんなを幸せにする。
①縁の下の力持ち
伝説の楽譜を食い入るように見つめるメフィスト。何度見ようが真っ白は真っ白。セイレーンが脱退してしまったので歌い手不在ですが、とりあえずは音符収集を優先します。これがないと始まらない。
部下のトリオ達はというと…海でバカンス中。海で泳いだり、砂浜でお城を作ったりして夏を満喫しています。
何をやっている!とメフィストの叱責が飛びます。全くです。響達が海に行ったときは水着のミの字もなかったというのに。女の子の水着は映さないけど野郎の水着はOKとか、絶対意図的にやっているだろ。なんという嫌がらせ。ほらお前らの大好きな水着だぜ、という意思がひしひしと伝わってきます。プリキュアは大友に媚びぬ!という隠れたメッセージ。これに対して男女差別反対!女の子の水着を出すべきだ!などと言えば、どっちも水着出さない手で打ってくるのは必定。こと水着問題に関しては一歩も譲らないのが東堂いづみ先生のご意志のようです。でも変身するときは裸OK。先生の考えはよく分かりません。
部下達の使えなさに頭を抱えるメフィスト。これでは集まるものも集まりません。ということでレッツ洗脳。まさかの変身シーン。むさ苦しい野郎達が暑苦しくなりました。
どういうノリなんだこの展開。メフィストのおっさんは相変わらずギャグ顔が似合う。
北条宅。時間は7時前。響はまだぐっすり寝ています。
ミッションスタート、とドリー。フェアリートーン達と共同でカーテンを開けて太陽の光を部屋に入れます。続いてテコの原理を利用してシリーがジャンプ。響の頭に乗って10点、と自己採点。ようやく響の目が覚めます。同時に目覚まし時計のベルが鳴り出しジャスト7時で起床。ドリーがベルを止めます。
ハミィはまだ眠たがりますが、今日は音符探しでしょと響が起こします。最近目覚ましが鳴る前に起きられるようになったと自画自賛。その裏ではトーン達が早起きミッション成功!と喜びます。なるほど今回はこういう路線で行くのね。面白い使い方です。
フェアリートーン3つの約束。
ひとつ、はぐれないように気をつける。
ふたつ、いつも笑顔でにっこり。
みっつ、困ったときはチームワーク。
自分達は大切な音符を預かっている使命があるとトーン達はミーティングを行います。案外今までこんな感じで打合せやっていたのかもしれません。
そんなわけで、森の中で響達は音符探し。でもなかなか見つからないようです。
時同じくしてトリオ達も音符探し。こちらは首尾良く見つけていきます。あの格好で街の中でもお構いなしに探します。八百屋の人が胡散臭い目でバリトンを見ています。親子の間ではきっと「お母さん、あれなに?」「しーっ、見ちゃいけません」という会話がなされていると思います。
コスプレはそういう会場でやってください。今の時期だとビッグサイトとかですかね。
響達は公園に移動して捜索しますが見つからず。セイレーンも熱さのためか匂いが嗅ぎ取れないようです。私はセイレーンのナイスアングルを見つけられてウハウハです。水着の有り無しなど些細な事。重要なのは一瞬のカットも見逃さない集中力。夏バテしている暇などありません。
公園で遊んでいた子ども達のボールがハミィに直撃。思わす声を出してしまうハミィ。それを聞いた子ども達はしゃべった!とハミィを追いかけます。むしろ今までよくバレてなかったな、という気もしますがちと面倒なことになりました。ハミィを巡っての大騒動。響達がフォローに入りますが収拾がつきません。そこでシリーが太鼓の音を出して子どもの気を引きます。その隙に響はハミィを抱えて脱出。ナイスアシスト。
駄菓子屋で休憩。ベンチの下でトーン達は点呼を取ります。欠員無し。
響はかき氷に舌鼓を打ちます。かき氷は初めてらしいセイレーン。案の定キーンとなります。可愛いシーンです。奏がアイスクリーム頭痛と説明します。言い忘れていましたが今回初めて基本私服姿を披露。響や奏と比べてファッション性が高い衣装です。セイレーンは大人しい印象と大人びた印象が同居しているのでシーンによって可憐に見えたりボーイッシュに見えたりします。
飾られている風鈴を真似てファリーが鈴の音を鳴らします。チャイムの音も出せるようです。それを聞いて響達は感心します。先ほどもそうですが意外と器用な能力です。
そんな一同をバリトンがストーキング。なにやら良からぬことを企んでいるようです。
②ポケットの中の戦争
音符探し再開。しかしなかなか見つかりません。するとラリーが音符を発見。しかしこれはバリトンの罠。捕まってしまいます。
喉が渇いて動けないと音を上げるハミィ。水分補給をしようと奏が提案します。よい子のみんなも倒れないようにとの熱中症対策です。隙を突かれレリーも捕まってしまいます。ラリー、レリーが捕まるのはマズイ。
ラムネで水分補給。
再びトーン達は点呼を取ります。ド・ミ・ファ・ソ・シ。足りません。っていうかその前に気付け。「レリーとラリーはどこドド?」「ここドド」。バリトン参上。ドリーが捕まってしまいます。ちょうどそこにバスドラとファルセットが合流。相変わらず音符を一番集めた奴がリーダー、というゲームをやっているようです。
小瓶の量はファルセット>バスドラ>バリトン
しかしバリトンには切り札があります。ドリー、レリー、ラリーを見せます。セイレーンの作戦の真似っこ!と抗議の声をあげるふたり。しかしバリトンはそんなことには頓着せずトーン達から音符を抜きます。この状態だと変身も不可というおまけ付き。バリトンは頭脳プレー派でしょうか。
バリトンは残る4人(?)のトーンにも狙いを付けます。プリキュアのいないところで大ピンチ。
ラムネで元気充電。響の音頭で音符探し再開です。ハミィがトーン達を呼びに行きます。と、そこにトーンを追いかけてきたバスドラが現れます。思わぬ珍客に驚く三人。
ファルセットとバリトンも現れトリオが揃います。細かい点ですが、ここで囚われたトーンが隠されているのがポイント。今回の胆はフェアリートーンの活動が響達の目に触れていない点にあります。
いつもとは違う出で立ちに警戒するセイレーン。よい子のみんなは変な格好をした人を見たら全力で逃げましょう。バカがうつります。
バリトンが扇風機をネガトーン化。ファルセットがやるときはやっぱり高い声なんでしょうか。ネガトーンもカラーが黒くなって力強そうです。音波を出して街の人々を悲しませます。
仲間を救出すべくシリーがリーダーとなって残る3人のトーンと協力します。
バスドラの後ろに回ったソリーが笛の音で意表を突き、ミリーとファリーがダブルキックで後頭部に打撃。ファルセットに倒れこみます。その拍子に虫かごが転げ落ちて脱出。気付いたファルセットがシリーを捕まえます。シリーを人質に取るファルセット。しかしシリーは僕に構わずにプリキュアに変身させろ!と気丈に振る舞います。弱気なラリーを勇気付けるようにドリーとレリーが促し、プリキュアのもとへと向かいます。人質作戦はあまり意味が無かったようです。これでシリーが砕かれたらショッキング映像になってしまいますが、親の苦情が怖いのでそんなことはしません。
さて、いつもの展開に戻ります。子ども達を悲しませる悪行に怒りを燃やす響。絶対に許せない!ドリー・レリー・ラリー参上。ナイスタイミング。
バスドラ達に文句を言うバリトン。またケンカし始めます。ファルセットはシリーをどうしてくれる?と握りしめます。そこにハミィ登場。なにしてる?と肩に乗ったハミィにビックリした隙をついてダブルトーンキックが炸裂。シリー救出。ハミィのお手柄、とトーン達は感謝。
仕切り直してプリキュアVSネガトーン戦が始まります。この番組はプリキュアが主役です。
初手でメロディをぶっ飛ばすネガトーン。負けじとビートがかかと落としを決めてリズムがアッパー。しかし尻尾を地面に突き刺して体勢を立て直したネガトーンは反撃を繰り出します。リズム、ビートをメロディが抱えて退避。倒れたときのリズムの表情が「そんなメロディ、こんなところで」みたいに見えるのは私だけでしょうか。まあ、喜んでいるに違いないと思いますが。
回避成功と思った矢先尻尾が振り下ろされて街の中を大移動。見た目の変化どおりネガトーンが強化されています。
今度は強風がプリキュアを襲います。メロディのデコが可愛い。
好機、と見てトリオ達は力を合わせて歌を歌います。すると強風がパワーアップ。吹き飛ばされて地面に叩き付けられるプリキュア。大苦戦。プリキュアを助けるためソリーが駆けつけます。
ラブギターロッドを召喚するのかと思いきや、モジュールに装着して吹きます。久しぶりの使用方法。販促タイム。っていうか今回自体販促、っていうかプリキュア自体が販促アニメなんですが。緑色のオーラがプリキュアを包みこみ元気を取り戻します。ソリーのソはソウルのソ、集中力が上がると解説するハミィ。うーん、遠いような。
ハートキャッチのパフュームよろしくパワーアップしたプリキュアの大反撃。ビートの「モコモコだからっていつも見えるわけじゃない」キックが炸裂。しかしそれに耐えたネガトーンはビートを払いのけます。メロディ、リズムが打撃を浴びせます。しかしこれも耐えてふたりを地面に叩き付けます。それでも強いネガトーン。
ビートがバリアを張って音波攻撃からメロディとリズムを守ります。いつもより結界が大きい。しかしビートのバリアは割れるバリア。限界に達します。割れないバリアはルミナスだけです。
土煙の中からメロディリズムが飛び出して突進。形勢をひっくり返します。三人になってもふたりで連携するメロディとリズムは流石です。阿吽の呼吸。
必殺販促技により浄化。ミラクルベルティ、ファンタスティックベルティエ、ラブギターロッドを買ってフィナーレを決めよう、という力強いメッセージ。力強いというか、それで飯食っている人がいるので割と命がけ。
フェアリートーンみたいに良いチームワークだった、とハミィが総括。これで分かるように今回の主役はフェアリートーンです。
戦いに勝って音符を1個ゲットしたものの、トリオ達の手には大量の音符。音符集めでは大きな水をあけられてしまいました。責任を感じるドリー。
浜辺の夕日。シリーの生還をラリーは喜びます。
トリオ達が集めた音符を見て落胆するセイレーン。奏も今まで自分達が集めた音符より多かったかも…と不安を表します。その会話を聞いてますます落込むドリー。ファリーとソリー、ミリーが励まします。
それを見たハミィは毎日1個でも集めていけばいっぱいになるとセイレーン達を励まします。セイレーンナイスアングル。地味にセイレーン強化週間です。そうです、毎週1枚でも集めていけば最終的にはフォルダがいっぱいになります。なんのフォルダかは言えませんが。
元気を取り戻すセイレーン。響は大声で「不幸のメロディなんて絶対に完成させないんだからー!」と夕日に向かって叫びます。隣で驚くセイレーンが可愛い。そして響の横顔が美しい。
響の耳に「それだけでは駄目」という声が届きます。しかし奏とセイレーンは聞えなかった様子。空耳かな?と疑問を浮かべる響をシリーがタッチします。次の鬼らしい。おいおい響さんに鬼て。そりゃ響鬼さんは鬼だけど。ってこれ狙ってるでしょ!?
フェアリートーンを追いかける響。ハミィも加わって鬼ごっこ。その様子を奏とセイレーンは笑います。
先行きの不安や謎があったとしても、今日も楽しい一日を過ごします。
③次回のスケジュール
8時30分ハイキングの準備開始。
8時40分着替え終了。
8時46分トリオザマイナー発見。
8時48分フェアリートーンが消えた!
8時55分ネガトーンが現れた!
8時57分みんな!変身よ!
OP・EDを抜くと実質的には20分くらいで世界を救います。
○トピック
相変わらず次回予告が酷い。なんて身も蓋もない。
販促全開、とばかりにフェアリートーンメインのお話。フェアリートーンは響達と関係性がないのでドドリーのような狂言回しのポジションだったり、客観的なポジションだったりと比較的自由な立ち位置ですが今回のエピソードはそれに輪をかけて面白い見せ方です。
感覚的にはトイ・ストーリー的な遊び心があって楽しい。トーン達の活躍や努力を響達は知りません。これはちっちゃな大冒険であり、知らないうちに玩具達が自分を助けてくれる夢のあるエピソードです。それだけに終始することなくプリキュアとの連携や、フェアリートーンの頑張りがハミィへ、ハミィから響達へと伝わる流れも綺麗です。ドリーは責任を感じていますが、この問題はみんなの問題でありみんなで成し遂げていくものとして総括しています。視聴者的には玩具達が助けてくれたように、あなたも玩具達を助けよう、みんな頑張ろうという感じ。
余談ですが、プリキュアは視聴者を信じている節があります。例えばセイレーンがエレンとして改心するにあたって、響奏がセイレーンに対して態度を和らげていく過程は少し飛躍しています。フレッシュでいうとラブはともかくとして美希や祈里のせつなに対する態度にも言えます。これは多分に彼女達の苦悩の様子を重ねていくことで視聴者(メイン層である子ども)に訴えかけているのだと思います。彼女達も苦しい思いをしている。悪いことをしたけど許そうよ、って。今回のエピソードも作中では響達はトーン達の活躍や失敗を知りません。でも一緒に頑張ろうと一致団結しています。ドリー達の失敗の責任も問わない。視聴者の代りに全部主人公達が体験してしゃべって説明するのではなく、部分部分では視聴者自身が体験して答えを出してそれを主人公達が追認している面があります。フレッシュの映画でも最終的にトイマジンを救ったのは視聴者でした。プリキュアは子ども目線で作っている作品なんですが、視聴者に主体性(厳密には思考誘導ですが)を促しているようにも見えます。良く言えば視聴者を信じている、悪く言えば説明不足、飛躍とも言えますが。でも、こうしたところもプリキュアの好きな点です。子どもに向けて作られているからこそ好きなんです。
さて、話しを本編に戻して、次章を予感させる謎の声。不幸のメロディを完成させないだけでは駄目というのは何を意味するか。それは反対の幸せのメロディを完成させるだけでは駄目とも取れる。まっ、プリキュアは単に世界の危機を救うだけなんてチャチなことはしません。幸せのメロディを完成させるというのなら、その幸せとは何か、どんな形なのか、伝説の楽譜を破り捨ててでも彼女達自身が幸せの楽譜を完成させるでしょう。ハートキャッチがただ人の心を守るだけでなく如何にして花咲かせて、救ってきたかを見せたように。プリキュアの使命は守ることではありません。幸せを創っていくことです。そこにプリキュアの物語のダイナミズムがある。30分で世界を救い、1年でみんなを幸せにする。
第25話「ヒュ~ドロ~!エレンの弱点見~つけたニャ!」
○今週の出来事
①波乱の夏祭り
今年も夏祭り。プリキュアの定番ネタです。王子隊やスイーツ部も祭りを手伝っています。場所は響達の学校。半分文化祭的な感じのようです。
少し離れたところでセイレーンは人々の幸せそうな姿に見入ります。ハミィが混ざればいいと声をかけてきます。遊びに来たとは恥ずかしくて言えないセイレーンはプリキュアの潜入捜査だと言い訳。何にでも使えそうな言い訳です。
セイレーンの浴衣で遊んでいたハミィは頑張ってと励ますとどこかに行ってしまいます。ハミィはプリキュアをサポートする妖精というよりホントに気ままな猫という感じ。このフレンドリーさが女児達の購買欲を刺激するのでしょう。さすが主力商品です。
一息付けたと思ったら悲鳴が聞えてきます。視線を向けると奏太が驚きの声を上げています。怪しい影。ネガトーンかと思ったセイレーンは奏太の前に飛び出します。目の前に待ち受けていたのは提灯のお化けとカラ傘のお化け。頬を舐められたセイレーンは青ざめて悲鳴を上げるとそのままバックドロップ。いやいやそれ驚きすぎだろ。
怯えてすくんでいるセイレーンに響と奏が声をかけます。ネガトーンを探すセイレーンにふたりは提灯とカラ傘を見せます。姉に文句を言う奏太。どうやらふたりが犯人のようです。アコはたかがお化けに驚きすぎ、しかも雑な作り物と辛口コメント。色がまだ塗られていない箇所もありますが総じて完成度が高い気はします。先ほど舌を使って舐めていたし。前回のサンドアートといい加音町の人は器用です。奏太はアコを連れて去っていきます。残念ながらアコの出番は終了。浴衣を堪能したかったのですが。ところで奏太はアコ以外に友達いないんでしょうか。いなかったとしても勝ち組に違いないんですが。
作り物と知って安堵するセイレーン。それを見た響はお化け怖いの?と訪ねます。慌てて否定するとお化け屋敷の準備に誘われます。カラ傘の係、と奏は持っていた傘を渡します。それを間近で見たセイレーンは傘に目がついている!?と慌て驚いて傘を投げ出します。奏ナイスキャッチ。
呆然とするふたりに見られていると気付いてようやく冷静になったセイレーンは「ん、何?」と取り繕います。この子面白いな。
「やっぱ怖いんだ」「エレンたら」「可愛い~」ふたりの玩具決定。これは百合が広…もとい、夢が広がりそうです。
いじられているセイレーンはたまったものではないですが、響と奏は一緒に夏祭りを楽しもうと手を取ります。しかしセイレーンは本気で心配したんだから!と抗議すると走り去っていきます。本人的には真面目にやっているのに、何故かそれが空回りして周囲に面白がられてしまう、というのはちと格好がつかない。いじられ慣れているなら上手くいなせるところですが、セイレーンは生真面目なところがあるのでふたりとの距離感もまだ掴めていないので少し難しい。
②王子先輩の人生相談
バスドラ達はアジトでマジックハンドに使うような蛇腹を組み立てています。夏休みの宿題? セイレーンをギャフンと言わせたいバスドラはバリトンとファルセットに良い案はないかと聞きます。それより、と夏祭りのチラシを見せるバリトン。音符探し優先。珍しくバスドラを様付けしています。一応リーダーなので体裁を整えているのでしょうか。あまり威厳も権威もないリーダーですが。
セイレーンも居るかもしれないとバスドラも乗り気。彼が言う前にバリトンとファルセットがいくぞ~!とかけ声を出します。音符とか関係なしに夏祭り行きたいだけのような気がしてきた。
セイレーンは人気の無い校舎の裏に来ると恥ずかしいところを見られたと落込みます。君の恥ずかしいところをもっと見たい。…なんかもうおっさん臭い発言だな。
ラリーとソリーが心配して声をかけます。泣いてない、と照れながら言う姿がなんとも可愛い。場所を移そうとして躓いて転んでしまいます。泣きっ面に蜂。やることなすこと全部裏目。セイレーンの心中としては恥ずかしいというより情けない感じになってきているかもしれません。そしてこの展開は、アレしかない。
「君、大丈夫?」
安心の王子クオリティ。知ってた。分かってた。君そういうポジションだもんね。手を貸して立ち上がらせると擦りむいていることに気付きます。大したことないと放っておこうとするセイレーンの意図に反して、王子は彼女の手を掴むと救護所へ連れて行きます。
手当を済ませると王子はセイレーンにラムネジュースを渡します。どこかで会ったっけ?と訪ねる王子。以前彼女をおんぶしたことがあったはずですが忘れているらしい。彼の場合は困っている人は誰彼構わず助けているようなので記憶に残らないのかもしれない。脚本家が失念している可能性もありますが大勢に影響ない部分ではあります。
隣町から引っ越してきたばかりと答えると、王子は自己紹介を始めます。促されてセイレーンも黒川エレンと名乗ります。泣いてたみたいだけど何かあったの?と王子は訪ねます。彼は包容力があるので肩肘張らずに答えられそうです。
お化け屋敷の準備を進める響と奏にハミィはセイレーンが怖がりだと教えます。自分は怖くないけどセイレーンは恐がりだったと何度も強調。それフラグですか? フェアリートンの汎用性高いなぁ。話に全く関係ないところで盛り上げています。ところで誰もが思うだろうけど、人の言葉がしゃべれて人の姿に化けることが出来る猫ってそのまま化け猫だと思うんだけど、同属が怖いとはこれ如何に。
内緒話を堂々と暴露してしまったハミィですが、謝って仲直りしようと気持ちを切り替えます。相変わらず切替えが早い。響と奏はセイレーンを探しに行きます。
残ったハミィの前に3体のお化けが現れます。ビックリ仰天して逃げ出すハミィ。セイレーンと似たり寄ったりのようです。お化けの正体はトリオ。セイレーンの弱点を知って利用する気満々です。
出店が並ぶ道を歩きながらセイレーンは王子に素直に打ち明けます。多少脚色はしていますが本筋はそのままです。そしてこの脚色は視聴者視点でもある。この時期は転勤などで引っ越す機会が多く転校する子も少なくない。ようやく仲良くなれたと思ったら、夏休み中にケンカをしてしまうこともあるでしょう。
意地悪されたと話すセイレーン。お化けが苦手なのを笑われたと言います。自分は仲良くなりたいのに。
「そのふたり、本当に君に意地悪するつもりだったのかな?」
流石はプリキュアの大人ポジション。言うことが違う。
冷静に考えると自分のお化け嫌いをふたりは知りません。意地悪しようがない。思い込みだったのでは? 今頃君のことを心配しているんじゃないのかな? 落ち着いた声で諭すように話す王子。相手の視点で考えればまた違ったものが見えてくる。
事実響と奏は祭り会場を探し回っています。ふたりの声に気付くセイレーン。勇気を出して仲直りしてごらん。王子は背中を押します。これが並大抵の男なら、夏祭りで落込んでいる女の子発見、ここは元気づけて好感度を上げるチャンス!夏だけど春到来!そのふたりより僕と仲良くなろう!などと妄想を溢れさせているところです。
③意趣返し
ふたりに謝るためお化け屋敷にやってくるセイレーン。しかしふたりの姿は見えません。するとダンボールの箱がカタカタと動き出します。河童のお化けと骸骨のお化けが現れます。「泣き虫ビート」「プリキュア失格!」とふりがなまでふってあるプレートを持ってセイレーンを弾劾します。準備いいな、おい。
涙目になっているセイレーンは半ば焦点が合わぬままふたりを見ます。ギリギリのラインですが、後の展開を考えるとこの時ふたりの髪の毛がはみ出ているところを見ている描写になっています。
セイレーンは仲直りしようと思ったに!と言い残して走り去っていきます。作戦成功!と喜ぶトリオ。三人のハーモニーパワーを削ぐ作戦です。
セイレーンを探していた響と奏は一旦合流。ハイタッチ。どんなときでもスキンシップを忘れないのは流石です。セイレーンの後ろ姿を発見。追いかけます。
ようやく追いつくとセイレーンに謝ります。しかしセイレーンは頑なにふたりを拒みます。
そこにトリオが現れプリキュアとの友情や絆など所詮まやかしとセイレーンを引き込もうとします。ふたりは必至に言葉を投げかけます。
カラ傘に音符。例によってネガトーン化。「私のお化けが!」アコに雑な作りと言われたときにも「ちょっと失礼ね」と言っていました。奏的にはお気に入りだったのかもしれません。
このままでは折角の三人変身バンクも2人+1人のバンクに逆戻り。玩具販促的にはどっちでも良いところですが、プリキュア的には3人バンクで行きたいところ。残された時間はわずか。どうやって仲直りするんでしょうか。
ふたりはモジューレを構えます。まずい、本格的にまずい。このままではふたりで変身してしまいます。この感想を書いているのはもちろん一通り見終わった後ですが、実際初見のときはハラハラして見ていました。
ネガトーンが着地したときに衝撃で倒れたふたりはモジューレを手放してしまいます。それをマジックハンドで掴むと、手袋をはめたバスドラがキャッチ。直接触れると電撃か何かが走るので防護しているようです。
「マイナーランドの歌姫として返り咲くのだ!」セイレーンを勧誘するバスドラ。ここでセイレーンが単独変身してもアウト。3人変身は和解の意味もある。ビートに変身してモジューレを奪還しては意味が無い。3人一緒にプリキュアになることに意義がある。
セイレーンはふたりを睨むように見つめます。踵を返すとバスドラのもとへ向かいます。勝ち誇るバスドラ。今がチャンス。すかさず素早い身のこなしでバスドラの手からモジューレを奪い取ります。セイレーンはふたりにモジュレーを返します。
「あのふたりはお前を騙したんだぞ!」
「騙したのはあんたでしょ」
ふたりを信頼するセイレーン。
「あんた達をギャフンと言わせたくて騙されたふりをしていたのよ!」
流石泥棒猫、汚い(ちゃんと褒めろよ)。
安心したふたりにこれでおあいこ、と言うセイレーン。疑いが信頼へ、不安が安心へと変わるとよりその想いが増す、のかもしれない。
そういうことで3人変身。2回目ではあるけど、このために今回の話しがあったと言ってもいい。偶然でもノリでも見栄でもなく、今のプリキュアは3人でプリキュアです。
ネガトーンはメロディとリズムを翻弄しながら戦います。距離を置くビート。お化け相手なので二の足を踏んでいます。挑みかかるも足がすくんで無防備になってしまいます。ふたりがフォロー。
ネガトーンは自分達が、と引き受けるも返り討ち。大ピンチ。ビートを意を決してバリアとソニックで反撃に出ます。
お化けが怖くても仲間のために立ち向かう!と決意表明。前回ふたりの受け入れる言葉への返答と考えて良いでしょう。ミュージックロンド3連。夏休み玩具販促月間。お求めはお近くの玩具屋へ。ネットでも買えます。
ふたりは改めてセイレーンに謝ります。セイレーンも改めて一緒に戦ってくれる?と控えめがちに言います。もちろん!と答えが返ってきます。
お化け屋敷はやめてステージの方へ行こうと誘うふたりの手を掴むと、セイレーンはお化け屋敷に突入。
案の定キャーキャー騒ぎながらお化け屋敷を進むセイレーン。手を握られた響と奏は引きずられるように翻弄されながらついていきます。なんだかんだ言ってもお化け屋敷を一番楽しめるのは恐がりの人だと思う。私みたいに怖がるどころか観察してしまう類だとまあ、それはそれで楽しめるんだけど正しい楽しみ方とは言えない。
ドラキュラに扮していた王子はセイレーンに親指を立てて合図を送ります。今週のMVP。この人達観しすぎ。プリキュアの大人ポジション良いなぁ。
見事ゴール。一人大喜びのセイレーン。「そんなにはしゃいじゃって」「エレンたら」「かっわい~」
からかわれて恥ずかしがるセイレーンにふたりは「笑顔が一番素敵」と手を差し伸べます。セイレーンはその手を掴みます。
④次回予告
フェアリートーン回…ってなんだその格好!? 展開が読めない。
○トピック
浴衣回あるいはセイレーン強化月間のうち百面相回。セイレーンさんの萌え化(デレ期)ぶりが甚だしい。これは4人目のデレ期にも期待できます。
引っ越しして友達が変わっても一緒にプリキュアごっこすれば大丈夫。プリキュアは女児の共通言語。そんな自信が作り手から見えなくもない。
プリキュアになったわけなんだけど、プリキュアになる=仲良しになるというわけじゃないので、それはそれ、これはこれとして個人的な友情を醸成していくのが前回からの流れです。プリキュアの力の源は絆なのでそこを蔑ろにするわけには行きません。その意味で今回の3人変身は絶対に譲れない展開です。
コメディ色が強いですが王子との会話は大事な点です。本作の特徴が良く出ています。誰にも悪意がない。意地悪するつもりなんてない。苦手なところを見られるのは恥ずかしい、けど見る方は楽しい。それを嘲笑、意地悪と取るかは微妙なところです。勘違いしてしまったり思い込んでしまったり、すれ違ってしまうことで善意が嫌悪や失望に変わってしまいかねないことが描かれています。友達は時にはふざけ合うし時に笑い合うし時には助け合う。よくよく考えれば一貫性がなく矛盾するような言動です。しかしそうしたてんでバラバラなことを通じて相手を知り、自分を知って貰いその上で信頼を強めていくのが友達という関係の難しくて不思議なところなのだと思います。
どっちがどっちを、というのではなく結局お互いにどう距離を取っていくか、了解していくかということになる。プリキュアが3人の合意によって作られるのはそのためです。三人揃ってスイートプリキュア。友達、相互関係性がプリキュアに仮託されている。一緒に戦おうと言っているのも友達になろう一緒に遊ぼうと言っているのと同じです。プリキュアは正義の味方である前に、親友なんだってとこがポイントです。子ども向けとして大事な部分です。
今はまだ響と奏の輪に入っていく格好になっていますが、いずれこの関係も三人のものとなるでしょう。そのときが三人の組曲の完成であるし、次なるステップへの始まりでもあります。物語の楽譜はまだまだ続く。
①波乱の夏祭り
今年も夏祭り。プリキュアの定番ネタです。王子隊やスイーツ部も祭りを手伝っています。場所は響達の学校。半分文化祭的な感じのようです。
少し離れたところでセイレーンは人々の幸せそうな姿に見入ります。ハミィが混ざればいいと声をかけてきます。遊びに来たとは恥ずかしくて言えないセイレーンはプリキュアの潜入捜査だと言い訳。何にでも使えそうな言い訳です。
セイレーンの浴衣で遊んでいたハミィは頑張ってと励ますとどこかに行ってしまいます。ハミィはプリキュアをサポートする妖精というよりホントに気ままな猫という感じ。このフレンドリーさが女児達の購買欲を刺激するのでしょう。さすが主力商品です。
一息付けたと思ったら悲鳴が聞えてきます。視線を向けると奏太が驚きの声を上げています。怪しい影。ネガトーンかと思ったセイレーンは奏太の前に飛び出します。目の前に待ち受けていたのは提灯のお化けとカラ傘のお化け。頬を舐められたセイレーンは青ざめて悲鳴を上げるとそのままバックドロップ。いやいやそれ驚きすぎだろ。
怯えてすくんでいるセイレーンに響と奏が声をかけます。ネガトーンを探すセイレーンにふたりは提灯とカラ傘を見せます。姉に文句を言う奏太。どうやらふたりが犯人のようです。アコはたかがお化けに驚きすぎ、しかも雑な作り物と辛口コメント。色がまだ塗られていない箇所もありますが総じて完成度が高い気はします。先ほど舌を使って舐めていたし。前回のサンドアートといい加音町の人は器用です。奏太はアコを連れて去っていきます。残念ながらアコの出番は終了。浴衣を堪能したかったのですが。ところで奏太はアコ以外に友達いないんでしょうか。いなかったとしても勝ち組に違いないんですが。
作り物と知って安堵するセイレーン。それを見た響はお化け怖いの?と訪ねます。慌てて否定するとお化け屋敷の準備に誘われます。カラ傘の係、と奏は持っていた傘を渡します。それを間近で見たセイレーンは傘に目がついている!?と慌て驚いて傘を投げ出します。奏ナイスキャッチ。
呆然とするふたりに見られていると気付いてようやく冷静になったセイレーンは「ん、何?」と取り繕います。この子面白いな。
「やっぱ怖いんだ」「エレンたら」「可愛い~」ふたりの玩具決定。これは百合が広…もとい、夢が広がりそうです。
いじられているセイレーンはたまったものではないですが、響と奏は一緒に夏祭りを楽しもうと手を取ります。しかしセイレーンは本気で心配したんだから!と抗議すると走り去っていきます。本人的には真面目にやっているのに、何故かそれが空回りして周囲に面白がられてしまう、というのはちと格好がつかない。いじられ慣れているなら上手くいなせるところですが、セイレーンは生真面目なところがあるのでふたりとの距離感もまだ掴めていないので少し難しい。
②王子先輩の人生相談
バスドラ達はアジトでマジックハンドに使うような蛇腹を組み立てています。夏休みの宿題? セイレーンをギャフンと言わせたいバスドラはバリトンとファルセットに良い案はないかと聞きます。それより、と夏祭りのチラシを見せるバリトン。音符探し優先。珍しくバスドラを様付けしています。一応リーダーなので体裁を整えているのでしょうか。あまり威厳も権威もないリーダーですが。
セイレーンも居るかもしれないとバスドラも乗り気。彼が言う前にバリトンとファルセットがいくぞ~!とかけ声を出します。音符とか関係なしに夏祭り行きたいだけのような気がしてきた。
セイレーンは人気の無い校舎の裏に来ると恥ずかしいところを見られたと落込みます。君の恥ずかしいところをもっと見たい。…なんかもうおっさん臭い発言だな。
ラリーとソリーが心配して声をかけます。泣いてない、と照れながら言う姿がなんとも可愛い。場所を移そうとして躓いて転んでしまいます。泣きっ面に蜂。やることなすこと全部裏目。セイレーンの心中としては恥ずかしいというより情けない感じになってきているかもしれません。そしてこの展開は、アレしかない。
「君、大丈夫?」
安心の王子クオリティ。知ってた。分かってた。君そういうポジションだもんね。手を貸して立ち上がらせると擦りむいていることに気付きます。大したことないと放っておこうとするセイレーンの意図に反して、王子は彼女の手を掴むと救護所へ連れて行きます。
手当を済ませると王子はセイレーンにラムネジュースを渡します。どこかで会ったっけ?と訪ねる王子。以前彼女をおんぶしたことがあったはずですが忘れているらしい。彼の場合は困っている人は誰彼構わず助けているようなので記憶に残らないのかもしれない。脚本家が失念している可能性もありますが大勢に影響ない部分ではあります。
隣町から引っ越してきたばかりと答えると、王子は自己紹介を始めます。促されてセイレーンも黒川エレンと名乗ります。泣いてたみたいだけど何かあったの?と王子は訪ねます。彼は包容力があるので肩肘張らずに答えられそうです。
お化け屋敷の準備を進める響と奏にハミィはセイレーンが怖がりだと教えます。自分は怖くないけどセイレーンは恐がりだったと何度も強調。それフラグですか? フェアリートンの汎用性高いなぁ。話に全く関係ないところで盛り上げています。ところで誰もが思うだろうけど、人の言葉がしゃべれて人の姿に化けることが出来る猫ってそのまま化け猫だと思うんだけど、同属が怖いとはこれ如何に。
内緒話を堂々と暴露してしまったハミィですが、謝って仲直りしようと気持ちを切り替えます。相変わらず切替えが早い。響と奏はセイレーンを探しに行きます。
残ったハミィの前に3体のお化けが現れます。ビックリ仰天して逃げ出すハミィ。セイレーンと似たり寄ったりのようです。お化けの正体はトリオ。セイレーンの弱点を知って利用する気満々です。
出店が並ぶ道を歩きながらセイレーンは王子に素直に打ち明けます。多少脚色はしていますが本筋はそのままです。そしてこの脚色は視聴者視点でもある。この時期は転勤などで引っ越す機会が多く転校する子も少なくない。ようやく仲良くなれたと思ったら、夏休み中にケンカをしてしまうこともあるでしょう。
意地悪されたと話すセイレーン。お化けが苦手なのを笑われたと言います。自分は仲良くなりたいのに。
「そのふたり、本当に君に意地悪するつもりだったのかな?」
流石はプリキュアの大人ポジション。言うことが違う。
冷静に考えると自分のお化け嫌いをふたりは知りません。意地悪しようがない。思い込みだったのでは? 今頃君のことを心配しているんじゃないのかな? 落ち着いた声で諭すように話す王子。相手の視点で考えればまた違ったものが見えてくる。
事実響と奏は祭り会場を探し回っています。ふたりの声に気付くセイレーン。勇気を出して仲直りしてごらん。王子は背中を押します。これが並大抵の男なら、夏祭りで落込んでいる女の子発見、ここは元気づけて好感度を上げるチャンス!夏だけど春到来!そのふたりより僕と仲良くなろう!などと妄想を溢れさせているところです。
③意趣返し
ふたりに謝るためお化け屋敷にやってくるセイレーン。しかしふたりの姿は見えません。するとダンボールの箱がカタカタと動き出します。河童のお化けと骸骨のお化けが現れます。「泣き虫ビート」「プリキュア失格!」とふりがなまでふってあるプレートを持ってセイレーンを弾劾します。準備いいな、おい。
涙目になっているセイレーンは半ば焦点が合わぬままふたりを見ます。ギリギリのラインですが、後の展開を考えるとこの時ふたりの髪の毛がはみ出ているところを見ている描写になっています。
セイレーンは仲直りしようと思ったに!と言い残して走り去っていきます。作戦成功!と喜ぶトリオ。三人のハーモニーパワーを削ぐ作戦です。
セイレーンを探していた響と奏は一旦合流。ハイタッチ。どんなときでもスキンシップを忘れないのは流石です。セイレーンの後ろ姿を発見。追いかけます。
ようやく追いつくとセイレーンに謝ります。しかしセイレーンは頑なにふたりを拒みます。
そこにトリオが現れプリキュアとの友情や絆など所詮まやかしとセイレーンを引き込もうとします。ふたりは必至に言葉を投げかけます。
カラ傘に音符。例によってネガトーン化。「私のお化けが!」アコに雑な作りと言われたときにも「ちょっと失礼ね」と言っていました。奏的にはお気に入りだったのかもしれません。
このままでは折角の三人変身バンクも2人+1人のバンクに逆戻り。玩具販促的にはどっちでも良いところですが、プリキュア的には3人バンクで行きたいところ。残された時間はわずか。どうやって仲直りするんでしょうか。
ふたりはモジューレを構えます。まずい、本格的にまずい。このままではふたりで変身してしまいます。この感想を書いているのはもちろん一通り見終わった後ですが、実際初見のときはハラハラして見ていました。
ネガトーンが着地したときに衝撃で倒れたふたりはモジューレを手放してしまいます。それをマジックハンドで掴むと、手袋をはめたバスドラがキャッチ。直接触れると電撃か何かが走るので防護しているようです。
「マイナーランドの歌姫として返り咲くのだ!」セイレーンを勧誘するバスドラ。ここでセイレーンが単独変身してもアウト。3人変身は和解の意味もある。ビートに変身してモジューレを奪還しては意味が無い。3人一緒にプリキュアになることに意義がある。
セイレーンはふたりを睨むように見つめます。踵を返すとバスドラのもとへ向かいます。勝ち誇るバスドラ。今がチャンス。すかさず素早い身のこなしでバスドラの手からモジューレを奪い取ります。セイレーンはふたりにモジュレーを返します。
「あのふたりはお前を騙したんだぞ!」
「騙したのはあんたでしょ」
ふたりを信頼するセイレーン。
「あんた達をギャフンと言わせたくて騙されたふりをしていたのよ!」
流石泥棒猫、汚い(ちゃんと褒めろよ)。
安心したふたりにこれでおあいこ、と言うセイレーン。疑いが信頼へ、不安が安心へと変わるとよりその想いが増す、のかもしれない。
そういうことで3人変身。2回目ではあるけど、このために今回の話しがあったと言ってもいい。偶然でもノリでも見栄でもなく、今のプリキュアは3人でプリキュアです。
ネガトーンはメロディとリズムを翻弄しながら戦います。距離を置くビート。お化け相手なので二の足を踏んでいます。挑みかかるも足がすくんで無防備になってしまいます。ふたりがフォロー。
ネガトーンは自分達が、と引き受けるも返り討ち。大ピンチ。ビートを意を決してバリアとソニックで反撃に出ます。
お化けが怖くても仲間のために立ち向かう!と決意表明。前回ふたりの受け入れる言葉への返答と考えて良いでしょう。ミュージックロンド3連。夏休み玩具販促月間。お求めはお近くの玩具屋へ。ネットでも買えます。
ふたりは改めてセイレーンに謝ります。セイレーンも改めて一緒に戦ってくれる?と控えめがちに言います。もちろん!と答えが返ってきます。
お化け屋敷はやめてステージの方へ行こうと誘うふたりの手を掴むと、セイレーンはお化け屋敷に突入。
案の定キャーキャー騒ぎながらお化け屋敷を進むセイレーン。手を握られた響と奏は引きずられるように翻弄されながらついていきます。なんだかんだ言ってもお化け屋敷を一番楽しめるのは恐がりの人だと思う。私みたいに怖がるどころか観察してしまう類だとまあ、それはそれで楽しめるんだけど正しい楽しみ方とは言えない。
ドラキュラに扮していた王子はセイレーンに親指を立てて合図を送ります。今週のMVP。この人達観しすぎ。プリキュアの大人ポジション良いなぁ。
見事ゴール。一人大喜びのセイレーン。「そんなにはしゃいじゃって」「エレンたら」「かっわい~」
からかわれて恥ずかしがるセイレーンにふたりは「笑顔が一番素敵」と手を差し伸べます。セイレーンはその手を掴みます。
④次回予告
フェアリートーン回…ってなんだその格好!? 展開が読めない。
○トピック
浴衣回あるいはセイレーン強化月間のうち百面相回。セイレーンさんの萌え化(デレ期)ぶりが甚だしい。これは4人目のデレ期にも期待できます。
引っ越しして友達が変わっても一緒にプリキュアごっこすれば大丈夫。プリキュアは女児の共通言語。そんな自信が作り手から見えなくもない。
プリキュアになったわけなんだけど、プリキュアになる=仲良しになるというわけじゃないので、それはそれ、これはこれとして個人的な友情を醸成していくのが前回からの流れです。プリキュアの力の源は絆なのでそこを蔑ろにするわけには行きません。その意味で今回の3人変身は絶対に譲れない展開です。
コメディ色が強いですが王子との会話は大事な点です。本作の特徴が良く出ています。誰にも悪意がない。意地悪するつもりなんてない。苦手なところを見られるのは恥ずかしい、けど見る方は楽しい。それを嘲笑、意地悪と取るかは微妙なところです。勘違いしてしまったり思い込んでしまったり、すれ違ってしまうことで善意が嫌悪や失望に変わってしまいかねないことが描かれています。友達は時にはふざけ合うし時に笑い合うし時には助け合う。よくよく考えれば一貫性がなく矛盾するような言動です。しかしそうしたてんでバラバラなことを通じて相手を知り、自分を知って貰いその上で信頼を強めていくのが友達という関係の難しくて不思議なところなのだと思います。
どっちがどっちを、というのではなく結局お互いにどう距離を取っていくか、了解していくかということになる。プリキュアが3人の合意によって作られるのはそのためです。三人揃ってスイートプリキュア。友達、相互関係性がプリキュアに仮託されている。一緒に戦おうと言っているのも友達になろう一緒に遊ぼうと言っているのと同じです。プリキュアは正義の味方である前に、親友なんだってとこがポイントです。子ども向けとして大事な部分です。
今はまだ響と奏の輪に入っていく格好になっていますが、いずれこの関係も三人のものとなるでしょう。そのときが三人の組曲の完成であるし、次なるステップへの始まりでもあります。物語の楽譜はまだまだ続く。
第24話「サンサン!お砂のハミィで友情の完成ニャ!」
○今週の出来事
①海へ行こう、ただし水着なしで
朝。目を覚ますセイレーン。前回のことを思い返します。勢いで「心と心で繋がりたい」とは言ったものの具体的にどうすればいいのか皆目見当がつきません。悩んでいるとおはようと響と奏が訪ねてきます。
海に行こうとふたりはセイレーンを誘います。セイレーンはちょっと考えさせてと引っ込みます。海と訊いて前回のように叫ぶのかと逡巡。いや、流石にそれは無いと思うのですが。本人的にもアレはやっぱり恥ずかしかったらしい。外を見るとふたりの姿が見えません。いつの間にか部屋に来ています。
ふたりはセイレーンを着替えさせます。残念ながら着替えシーンはありません。DVD版に期待したいところです(ねーよ)。
ところで、セイレーンが住んでいる家ってどこ?
新OP。フレッシュの時のようなマイナーチェンジ。アニメーション的にはセイレーンのシーンとラストが変わっています。やはり服装も変わるようです。雰囲気が明るくなって溌剌として可愛い。全体的には微修正な感じ。4人目が控えているので大きくテコ入れするとしたらその時でしょうか。
しかし今回の変更点の胆は提供イラスト。奏の太ももがたまらない。前回のイラストはフェアリートーンが空気を読んで邪魔してくれやがりましたが、今回はバッチリ。どんなに苦しくても、仕事で疲れていてもこれを見れば私は生きてて良かったと心から思える。まさに心のオアシス。
ということで海に到着。サンドアートのイベントをやっています。前回の優勝作品クオリティ高ぇな。今回の優勝商品はラッキースプーンのカップケーキ1年分。それを聞いて響は俄然燃え上がります。今でも食べ放題みたいなものなんじゃないのか。審査員として去年優勝した王子先輩が招かれています。あの城作ったのお前かよ。器用だなぁ。それを聞いて今度は奏が燃え上がります。当然これは響に合わせるためのブラフです。ふたりの後ろでセイレーンはタジタジ。テンション上がりまくっているふたりに気圧されます。
②ふたりと一人
とりあえずセイレーンはふたりに合わせます。困ったらハミィに聞けばいい。ところがハミィはビーチボールを使ってコサックダンスをするかのように遊んでいます。フェアリートーンも一緒。お前ら隠す気まるでねーな。
響と奏は何を作るか思案。セイレーンはふたりが話しているのに合わせます。響に何が良い?と訪ねられ返答に困ってそっちは?と訪ね返します。響は大きなハンバーグを提案します。…それ単に自分が食べたいものなんじゃないのか。しかしセイレーンはそれが良いと二つ返事。当然奏が異議を唱えます。いくらなんでもセンスがない。ただの丸い布団にしか見えないと主張。確かに完成図を想像するとシュールな光景です。これでは小学生にすら勝てない。
そこで奏が出した案は「ケーキ」。…前から思ってたんですが、奏は頭良いけどアホですよね。発想が響と変わらねぇ。
いつもケーキばっかり作っているから今日はハンバーグにしようと反論する響。いや、そういうことじゃないだろ。ステーキ、ポークソテーと代案を出します。だから食べ物から離れろ。
ふたりはセイレーンにハンバーグとケーキどちらが良いか意見を求めます。とりあえずお前らそこにある海水で頭冷やせ。どう言えば正解なのかと迷うセイレーン。彼女にとってはサンドアートなどよりこの場をどう乗り切るかの方が大事です。
係の人が何を作るか訪ねにやってきます。響と奏はお互いに口止めし合って膠着状態。きっとお互いに手のひらに相手の唇が密着してたまらないとかそんな感じだと思います。いつものバカップルぶり。
ふたりを放置して係の人はセイレーンに訪ねます。助けを求めるようにハミィを呼びます。すると係の人は猫を作るのかと了解して行ってしまいます。響と奏は恨めしそうにセイレーンを見ます。どう考えてもハミィ(猫)の方がマシです。ハミィも自分がモデルになるので喜んでいます。ふたりの意に反してしまったのでセイレーンは謝ります。しかしふたりはセイレーンの案を採用。先ほどまで言い争っていましたが仲直り。
セイレーンが受け付けに行くのを見送りながら、奏はセイレーンが気を遣っていると響に話します。割とセイレーンの言動を見ていたらしく意見を合わせていたことや名前を呼んでくれなかったことを挙げます。名前で呼んでくれればぐっと距離が近づいた感じがすると言う奏。「ねえ、奏」「なあに、エレン」また妄想し始めます。無理矢理にでも呼ばせるようにしちゃおうかしら、と強気発言。君そういうキャラだっけ? なかなか面白い子です。この子は仲良くなるとお節介焼きを出す傾向があります。勿論これは響の気を引いて嫉妬させる戦術も入っています。あまり効果ないですが。
響は無理矢理は駄目、彼女が自分達に向き合ってくれるのを信じて待つしかないんじゃないか、と冷静に返します。響と奏はどちらが頭良いかと言えば奏でしょうが、どちらが賢いかと言えば響になると思う。響からすれば奏のお節介が良い効果を果たす時もあれば悪い効果を果たすときがあると実体験で分かっているのでしょう。声をかけて貰えるというのは恵まれたことです。しかしそれがプレッシャーになることもある。響は殻から出たばかりのセイレーンの自立を尊重しています。奏も響の意見に頷きます。
ハミィはセイレーンに何故名前を呼ばないのかとストレートに訪ねます。これが出来るところにハミィとの距離と響奏との距離の違いがある。ふたりに拒まれやしないかと躊躇うセイレーン。ハミィは彼女の背中を押しますが、セイレーンはメイジャーのときでも仲良しはハミィしかいなかったと過去を振り返ります。何となくセイレーンは孤高な感じはする。
ハミィはふたりを自分だと思えばすんなり話せるようになると助言します。いや~それはそれでどうなんだろ。突然やかましいわ!とかつっこまれたら響と奏もビックリしそう。
アコと奏太の話し声。ふたりでイベントに参加していたようです。夏休みまでアコと一緒とか、マジ奏太勝ち組。
人魚というお題で何故か頭はゴリラ。奏太は目を引くと主張しますが、アコは人を笑わせるために作ったのではないにべもない返し。センスがないと付け加えます。怒り心頭の奏太は水鉄砲でアコを狙いますが、全弾回避されます。すげぇ。
その様子を見るセイレーンはケンカ?と訝ります。が、音吉さんは楽しそうじゃな、とふたりの様子を見ます。砂浜にその自転車で乗り付けるな。っていうかよく走れたなぁ。何でも言い合えるのはいいもんじゃ、とセイレーンに説明するかのように評します。アコは奏太のレベルに合わせているだけ、と減らず口は留まるところを知りません。そして水鉄砲は相変わらず当たらない。奏太を見てもいねぇ。流石黄色。
仲良くケンカしている関係をセイレーンは戸惑いながら見つめます。
新アイキャッチ。ドドリー登場。さらにはフェアリートーンゴールドモード。今年も宝石箱的なものが登場するようです。トーンは映画だけの仕様かと思いきや本編でも登場するのかな。
③三人の組曲
作業に取りかかりながら、セイレーンはふたりを名前で呼ぼうと試みます。ふたりの顔をハミィにすげ替えてイメージ。シュールすぎるわ。「どうかしたの?」「目がちょっと怖い」。まるっきり不審者です。
ヒャコーイ。トーン達はジュースにへばりついて涼んでいます。相変わらずあざといくらいに可愛い。
早くも完成。ところが誤ってセイレーンは壊してしまいます。必死に謝るセイレーンにふたりはまた作ればいいと気軽に答えます。それでもセイレーンは自分が壊したのだから自分で直すと主張します。遠慮することはない、仲間じゃん、と笑顔で答えるふたり。分かりやすい対比です。セイレーンは自分の責任だから自分一人で請け負おうとしている。それを共有しようというのがふたりの態度。
セイレーンはふたりに、一人で直せばいいと言えばいい、仲間になりたいのにどうすればいいのか分からないと切り出します。不器用な子です。でもとても素直。女児向けアニメの面目躍如。素直さ、真っ直ぐさこそ子どもの特権であり武器。
響と奏はセイレーンを挟むように抱きつきます。やっと話してくれた。海に誘ったのもエレンのこと知りたかったから、遠慮しないから言いたいこと言って欲しい、一緒に笑って、たまにはケンカして、いつかなんでも話せるような仲間になりたい。ど直球。おそらく本当にそういう関係になるまでにはまだ時間を要するでしょう。だからこれは所信表明です。仲良しになりたい、ケンカもしよう、でも決して自分達はあなたを拒まない。受け止めるという意思表示。前回のセイレーンの言葉への返礼。
響と奏と一緒にいたいとセイレーンは言葉にします。三人は手を重ねます。やっぱり自分の言ったとおりになったとハミィは喜びます。
再び一から作り直し。奏と響に駄目だしするセイレーン。自然に名前で呼びます。彼女も乗ってきたようです。三人で突貫工事。あっと言う間に完成。他の参加者達も仕上がっていきます。イルカ作っている親子すげぇ。尻尾とボールのバランスどうなんてんの。中に骨組みでも仕込んでいるのか。
参加者達の楽しそうな姿にセイレーンは共感します。
そろそろ頃合い。かき氷で涼をとっていたトリオはセイレーンを発見。ちょうど音符もハミィ像に張り付いています。いつもの流れでネガトーン化。三人も変身。
変身シーンは三人で並んでモジューレを押して生地を纏うシーンに差し替え。ここからが胆です。今までのように2人+1人の編成かもしれない。衣装を纏い、髪を結い上げ……三人で手を伸ばして腕に装着。ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ♪とイヤリング装着。三人で降り立ちます。
「届け!三人の組曲!スイートプリキュア!」
これだよ! これを見たかったんだ!!
三人でちゃんと変身した!やった! 1話でふたりの組曲って聞いた時から気になっていました。プリキュアが増えるのは分かっている。となればかけ声はどうするのか。MHのように2人+1人になるのか、ハートキャッチのようにつぼみとえりかは一緒に変身して、サンシャイン、ムーンライトと単に切り貼りするだけの変身なのか。これがスイートの答え。しかも明らかに4人目の空きがある。イヤリングの装着とドレミファソラシドをかけるのを考えた人は「俺って天才」と自賛したに違いない。音楽をモチーフにした作品らしさが倍増しています。3人で変身するのと単独変身が3個組み合わさっているのとでは全く印象が異なります。一体感が段違い。なにより見ていて楽しい。複数人ならではの魅力です。
ネガトーンに蹴りを入れると三体に分かれます。3対3の戦いに持ち込みますが、ネガトーンは砂嵐を作りだしてプリキュアを足止め。その隙に砂の彫刻を破壊しようとします。ビートが単身阻止に向かうも返り討ち。トリオはプリキュアになったことを後悔しても遅い、と勝ち誇ります。
ミューズが手助けに入ろうとした刹那、ビートは起き上がってネガトーンに再び挑みます。後悔などするものか、自分には仲間がいると言い返します。プリキュアになることは、仲間や絆を作っていくということと同義。
ミュージックロンド3連。来た!久しぶりのメロディリズムのミュージックロンド。これの色っぽさはシリーズでも抜きん出ている。フィナーレ。……リズムだけ跳ばないとか流石です。もういっそのこと1人で帰ってもいいんじゃないかな。
優勝はイルカを作った親子。確かにあのバランスは凄いと思う。強度どうなっているんだろう。
賞は逃したものの、セイレーンは凄く楽しかったと感想を言います。と、脚にヤドカリがくっついているのに気付いて驚きます。どうやらヤドカリが苦手らしい。意外な弱みを見つけたと言わんばかりにニヤっとした視線をふたりはセイレーンに向けます。
新しい友達を加え、物語は次の段階へと進み出します。
新ED。こちらは完全新作。右が妙に空いているのは4人目用でしょうか。ハミィは代理? ハミィが飛び込んできたときにリズムが視線を向けているのは芸が細かい。
④次回予告
恒例の浴衣回。
○トピック
海に行っても水着にならない。それがプリキュアの掟。でも変身するときは裸になる。矛盾を抱えながらも抜け道を用意してくれるスタッフに頭が下がります。黄色もこの調子でお願いしたい。
ということで、プリキュア恒例の新人研修。新しく加入したセイレーンと打ち解けるイベント。後から仲良しグループに入るのは敷居が高かったりするものですが、受け入れ態勢はバッチリ。勿論これで終わりというわけではなく、次回以降もセイレーンがどういう子で、どう関わり合っていくか描かれていくでしょう。
序盤で響と奏の描写が濃かったことから閉鎖的な印象もありましたが、適宜拡張性を示唆していたので今回の流れは自然な展開です。ここで言う自然とは物語として、という意味です。ついこの間まで敵対し合って疑ってかかっていたのにこの手のひらの返しようはなんだと指摘することもできるんですが、元々スイートは人間関係とそこにまつわる心の葛藤を主体にしながら絆の拡張性を響・奏、ハミィ・セイレーン、メイジャー・マイナーと構造的に示唆していました。
ここでより重要なのは、すでに仲良しの友達がいる中でさらに新しいお友達を加えればもっと楽しくなれるという提示です。新しい子の意外な一面、新しい子との体験を知れば今までよりももっと仲良くなれる。セイレーンは輪に入っていくこと、響と奏は輪を大きくしていくことに各々の成長の機会が設けられています。贖罪や寛容なんてみみっちい話しではなく、友達を作っていくことでより強くより大きな絆や笑顔を作っていく。子ども向け作品としてあるべき姿だと思います。その純粋さがプリキュアの魅力でもあります。
その点で、新規変身バンクにそれが全部仮託されています。2人と1人じゃない。3人で一つを表現。今後も2人変身や単独変身はあるかもしれませんが必殺技といいスイートのバンク使い捨てぶりは潔くて面白い。どんどん新しく変わっていく。彼女達の変化が視覚的にも表現されています。
番組も折り返し。残り半分。もう半分しか…という寂しさもありますが、最終回への期待感はそれを圧倒的に上回ります。元々最終回を見るために見ているんですから。この物語はどこまで見せてくれるのでしょうか。
①海へ行こう、ただし水着なしで
朝。目を覚ますセイレーン。前回のことを思い返します。勢いで「心と心で繋がりたい」とは言ったものの具体的にどうすればいいのか皆目見当がつきません。悩んでいるとおはようと響と奏が訪ねてきます。
海に行こうとふたりはセイレーンを誘います。セイレーンはちょっと考えさせてと引っ込みます。海と訊いて前回のように叫ぶのかと逡巡。いや、流石にそれは無いと思うのですが。本人的にもアレはやっぱり恥ずかしかったらしい。外を見るとふたりの姿が見えません。いつの間にか部屋に来ています。
ふたりはセイレーンを着替えさせます。残念ながら着替えシーンはありません。DVD版に期待したいところです(ねーよ)。
ところで、セイレーンが住んでいる家ってどこ?
新OP。フレッシュの時のようなマイナーチェンジ。アニメーション的にはセイレーンのシーンとラストが変わっています。やはり服装も変わるようです。雰囲気が明るくなって溌剌として可愛い。全体的には微修正な感じ。4人目が控えているので大きくテコ入れするとしたらその時でしょうか。
しかし今回の変更点の胆は提供イラスト。奏の太ももがたまらない。前回のイラストはフェアリートーンが空気を読んで邪魔してくれやがりましたが、今回はバッチリ。どんなに苦しくても、仕事で疲れていてもこれを見れば私は生きてて良かったと心から思える。まさに心のオアシス。
ということで海に到着。サンドアートのイベントをやっています。前回の優勝作品クオリティ高ぇな。今回の優勝商品はラッキースプーンのカップケーキ1年分。それを聞いて響は俄然燃え上がります。今でも食べ放題みたいなものなんじゃないのか。審査員として去年優勝した王子先輩が招かれています。あの城作ったのお前かよ。器用だなぁ。それを聞いて今度は奏が燃え上がります。当然これは響に合わせるためのブラフです。ふたりの後ろでセイレーンはタジタジ。テンション上がりまくっているふたりに気圧されます。
②ふたりと一人
とりあえずセイレーンはふたりに合わせます。困ったらハミィに聞けばいい。ところがハミィはビーチボールを使ってコサックダンスをするかのように遊んでいます。フェアリートーンも一緒。お前ら隠す気まるでねーな。
響と奏は何を作るか思案。セイレーンはふたりが話しているのに合わせます。響に何が良い?と訪ねられ返答に困ってそっちは?と訪ね返します。響は大きなハンバーグを提案します。…それ単に自分が食べたいものなんじゃないのか。しかしセイレーンはそれが良いと二つ返事。当然奏が異議を唱えます。いくらなんでもセンスがない。ただの丸い布団にしか見えないと主張。確かに完成図を想像するとシュールな光景です。これでは小学生にすら勝てない。
そこで奏が出した案は「ケーキ」。…前から思ってたんですが、奏は頭良いけどアホですよね。発想が響と変わらねぇ。
いつもケーキばっかり作っているから今日はハンバーグにしようと反論する響。いや、そういうことじゃないだろ。ステーキ、ポークソテーと代案を出します。だから食べ物から離れろ。
ふたりはセイレーンにハンバーグとケーキどちらが良いか意見を求めます。とりあえずお前らそこにある海水で頭冷やせ。どう言えば正解なのかと迷うセイレーン。彼女にとってはサンドアートなどよりこの場をどう乗り切るかの方が大事です。
係の人が何を作るか訪ねにやってきます。響と奏はお互いに口止めし合って膠着状態。きっとお互いに手のひらに相手の唇が密着してたまらないとかそんな感じだと思います。いつものバカップルぶり。
ふたりを放置して係の人はセイレーンに訪ねます。助けを求めるようにハミィを呼びます。すると係の人は猫を作るのかと了解して行ってしまいます。響と奏は恨めしそうにセイレーンを見ます。どう考えてもハミィ(猫)の方がマシです。ハミィも自分がモデルになるので喜んでいます。ふたりの意に反してしまったのでセイレーンは謝ります。しかしふたりはセイレーンの案を採用。先ほどまで言い争っていましたが仲直り。
セイレーンが受け付けに行くのを見送りながら、奏はセイレーンが気を遣っていると響に話します。割とセイレーンの言動を見ていたらしく意見を合わせていたことや名前を呼んでくれなかったことを挙げます。名前で呼んでくれればぐっと距離が近づいた感じがすると言う奏。「ねえ、奏」「なあに、エレン」また妄想し始めます。無理矢理にでも呼ばせるようにしちゃおうかしら、と強気発言。君そういうキャラだっけ? なかなか面白い子です。この子は仲良くなるとお節介焼きを出す傾向があります。勿論これは響の気を引いて嫉妬させる戦術も入っています。あまり効果ないですが。
響は無理矢理は駄目、彼女が自分達に向き合ってくれるのを信じて待つしかないんじゃないか、と冷静に返します。響と奏はどちらが頭良いかと言えば奏でしょうが、どちらが賢いかと言えば響になると思う。響からすれば奏のお節介が良い効果を果たす時もあれば悪い効果を果たすときがあると実体験で分かっているのでしょう。声をかけて貰えるというのは恵まれたことです。しかしそれがプレッシャーになることもある。響は殻から出たばかりのセイレーンの自立を尊重しています。奏も響の意見に頷きます。
ハミィはセイレーンに何故名前を呼ばないのかとストレートに訪ねます。これが出来るところにハミィとの距離と響奏との距離の違いがある。ふたりに拒まれやしないかと躊躇うセイレーン。ハミィは彼女の背中を押しますが、セイレーンはメイジャーのときでも仲良しはハミィしかいなかったと過去を振り返ります。何となくセイレーンは孤高な感じはする。
ハミィはふたりを自分だと思えばすんなり話せるようになると助言します。いや~それはそれでどうなんだろ。突然やかましいわ!とかつっこまれたら響と奏もビックリしそう。
アコと奏太の話し声。ふたりでイベントに参加していたようです。夏休みまでアコと一緒とか、マジ奏太勝ち組。
人魚というお題で何故か頭はゴリラ。奏太は目を引くと主張しますが、アコは人を笑わせるために作ったのではないにべもない返し。センスがないと付け加えます。怒り心頭の奏太は水鉄砲でアコを狙いますが、全弾回避されます。すげぇ。
その様子を見るセイレーンはケンカ?と訝ります。が、音吉さんは楽しそうじゃな、とふたりの様子を見ます。砂浜にその自転車で乗り付けるな。っていうかよく走れたなぁ。何でも言い合えるのはいいもんじゃ、とセイレーンに説明するかのように評します。アコは奏太のレベルに合わせているだけ、と減らず口は留まるところを知りません。そして水鉄砲は相変わらず当たらない。奏太を見てもいねぇ。流石黄色。
仲良くケンカしている関係をセイレーンは戸惑いながら見つめます。
新アイキャッチ。ドドリー登場。さらにはフェアリートーンゴールドモード。今年も宝石箱的なものが登場するようです。トーンは映画だけの仕様かと思いきや本編でも登場するのかな。
③三人の組曲
作業に取りかかりながら、セイレーンはふたりを名前で呼ぼうと試みます。ふたりの顔をハミィにすげ替えてイメージ。シュールすぎるわ。「どうかしたの?」「目がちょっと怖い」。まるっきり不審者です。
ヒャコーイ。トーン達はジュースにへばりついて涼んでいます。相変わらずあざといくらいに可愛い。
早くも完成。ところが誤ってセイレーンは壊してしまいます。必死に謝るセイレーンにふたりはまた作ればいいと気軽に答えます。それでもセイレーンは自分が壊したのだから自分で直すと主張します。遠慮することはない、仲間じゃん、と笑顔で答えるふたり。分かりやすい対比です。セイレーンは自分の責任だから自分一人で請け負おうとしている。それを共有しようというのがふたりの態度。
セイレーンはふたりに、一人で直せばいいと言えばいい、仲間になりたいのにどうすればいいのか分からないと切り出します。不器用な子です。でもとても素直。女児向けアニメの面目躍如。素直さ、真っ直ぐさこそ子どもの特権であり武器。
響と奏はセイレーンを挟むように抱きつきます。やっと話してくれた。海に誘ったのもエレンのこと知りたかったから、遠慮しないから言いたいこと言って欲しい、一緒に笑って、たまにはケンカして、いつかなんでも話せるような仲間になりたい。ど直球。おそらく本当にそういう関係になるまでにはまだ時間を要するでしょう。だからこれは所信表明です。仲良しになりたい、ケンカもしよう、でも決して自分達はあなたを拒まない。受け止めるという意思表示。前回のセイレーンの言葉への返礼。
響と奏と一緒にいたいとセイレーンは言葉にします。三人は手を重ねます。やっぱり自分の言ったとおりになったとハミィは喜びます。
再び一から作り直し。奏と響に駄目だしするセイレーン。自然に名前で呼びます。彼女も乗ってきたようです。三人で突貫工事。あっと言う間に完成。他の参加者達も仕上がっていきます。イルカ作っている親子すげぇ。尻尾とボールのバランスどうなんてんの。中に骨組みでも仕込んでいるのか。
参加者達の楽しそうな姿にセイレーンは共感します。
そろそろ頃合い。かき氷で涼をとっていたトリオはセイレーンを発見。ちょうど音符もハミィ像に張り付いています。いつもの流れでネガトーン化。三人も変身。
変身シーンは三人で並んでモジューレを押して生地を纏うシーンに差し替え。ここからが胆です。今までのように2人+1人の編成かもしれない。衣装を纏い、髪を結い上げ……三人で手を伸ばして腕に装着。ド・レ・ミ・ファ・ソ・ラ♪とイヤリング装着。三人で降り立ちます。
「届け!三人の組曲!スイートプリキュア!」
これだよ! これを見たかったんだ!!
三人でちゃんと変身した!やった! 1話でふたりの組曲って聞いた時から気になっていました。プリキュアが増えるのは分かっている。となればかけ声はどうするのか。MHのように2人+1人になるのか、ハートキャッチのようにつぼみとえりかは一緒に変身して、サンシャイン、ムーンライトと単に切り貼りするだけの変身なのか。これがスイートの答え。しかも明らかに4人目の空きがある。イヤリングの装着とドレミファソラシドをかけるのを考えた人は「俺って天才」と自賛したに違いない。音楽をモチーフにした作品らしさが倍増しています。3人で変身するのと単独変身が3個組み合わさっているのとでは全く印象が異なります。一体感が段違い。なにより見ていて楽しい。複数人ならではの魅力です。
ネガトーンに蹴りを入れると三体に分かれます。3対3の戦いに持ち込みますが、ネガトーンは砂嵐を作りだしてプリキュアを足止め。その隙に砂の彫刻を破壊しようとします。ビートが単身阻止に向かうも返り討ち。トリオはプリキュアになったことを後悔しても遅い、と勝ち誇ります。
ミューズが手助けに入ろうとした刹那、ビートは起き上がってネガトーンに再び挑みます。後悔などするものか、自分には仲間がいると言い返します。プリキュアになることは、仲間や絆を作っていくということと同義。
ミュージックロンド3連。来た!久しぶりのメロディリズムのミュージックロンド。これの色っぽさはシリーズでも抜きん出ている。フィナーレ。……リズムだけ跳ばないとか流石です。もういっそのこと1人で帰ってもいいんじゃないかな。
優勝はイルカを作った親子。確かにあのバランスは凄いと思う。強度どうなっているんだろう。
賞は逃したものの、セイレーンは凄く楽しかったと感想を言います。と、脚にヤドカリがくっついているのに気付いて驚きます。どうやらヤドカリが苦手らしい。意外な弱みを見つけたと言わんばかりにニヤっとした視線をふたりはセイレーンに向けます。
新しい友達を加え、物語は次の段階へと進み出します。
新ED。こちらは完全新作。右が妙に空いているのは4人目用でしょうか。ハミィは代理? ハミィが飛び込んできたときにリズムが視線を向けているのは芸が細かい。
④次回予告
恒例の浴衣回。
○トピック
海に行っても水着にならない。それがプリキュアの掟。でも変身するときは裸になる。矛盾を抱えながらも抜け道を用意してくれるスタッフに頭が下がります。黄色もこの調子でお願いしたい。
ということで、プリキュア恒例の新人研修。新しく加入したセイレーンと打ち解けるイベント。後から仲良しグループに入るのは敷居が高かったりするものですが、受け入れ態勢はバッチリ。勿論これで終わりというわけではなく、次回以降もセイレーンがどういう子で、どう関わり合っていくか描かれていくでしょう。
序盤で響と奏の描写が濃かったことから閉鎖的な印象もありましたが、適宜拡張性を示唆していたので今回の流れは自然な展開です。ここで言う自然とは物語として、という意味です。ついこの間まで敵対し合って疑ってかかっていたのにこの手のひらの返しようはなんだと指摘することもできるんですが、元々スイートは人間関係とそこにまつわる心の葛藤を主体にしながら絆の拡張性を響・奏、ハミィ・セイレーン、メイジャー・マイナーと構造的に示唆していました。
ここでより重要なのは、すでに仲良しの友達がいる中でさらに新しいお友達を加えればもっと楽しくなれるという提示です。新しい子の意外な一面、新しい子との体験を知れば今までよりももっと仲良くなれる。セイレーンは輪に入っていくこと、響と奏は輪を大きくしていくことに各々の成長の機会が設けられています。贖罪や寛容なんてみみっちい話しではなく、友達を作っていくことでより強くより大きな絆や笑顔を作っていく。子ども向け作品としてあるべき姿だと思います。その純粋さがプリキュアの魅力でもあります。
その点で、新規変身バンクにそれが全部仮託されています。2人と1人じゃない。3人で一つを表現。今後も2人変身や単独変身はあるかもしれませんが必殺技といいスイートのバンク使い捨てぶりは潔くて面白い。どんどん新しく変わっていく。彼女達の変化が視覚的にも表現されています。
番組も折り返し。残り半分。もう半分しか…という寂しさもありますが、最終回への期待感はそれを圧倒的に上回ります。元々最終回を見るために見ているんですから。この物語はどこまで見せてくれるのでしょうか。
第23話「ザザ~ン!涙は世界で一番ちいさな海ニャ!」
○今週の出来事
①小さな出会い
メイジャーにもマイナーにも帰れず自分の居場所を見失うセイレーン。
エレン、と響達が呼びます。これからは一緒に戦おうと声をかけます。しかしセイレーンは自責の念から拒みます。
この感想では特に理由が無い限り「セイレーン」と呼称します。本名であることと、ハミィがそう呼んでいるためです。作中で「エレン」に統一しないのはハミィにとって幼い頃からその名で馴染んでいることと、セイレーンの全てを知って許容しているためであろうと思われます。エレンがセイレーンに帰れる余地を残している。まあ、番組的に言えば日常生活でセイレーンと名乗るのは不都合も多いでしょう。人間用の名前を使うのはくるみ(ミルク)の前例があります。
トリオ達は拠点を灯台に移します。必要性はないような気がしますが、セイレーンの立ち位置が変わったことに合わせて変化を付けていると思われます。トリオ達はセイレーンを敵と認めます。この辺のリアクションも響達とは違う点です。
調べの館に戻ってくるセイレーン。
子猫が姿を現わします。すると子猫を追って少年もやってきます。近所の子猫らしい。「マモル!」と少年を呼ぶ声。父親の声を聞いたマモル君はセイレーンを連れて隠れます。
父親が行ってしまうと安心したのか腹の虫が鳴ります。少年を気遣うセイレーンも同じく虫が鳴ります。ニャーと鳴く子猫。つられてふたりも笑い出します。
響と奏はセイレーンを心配します。彼女達はもうセイレーンを疑う気は無いようです。前回の懺悔や変身の経緯を見れば警戒心を抱くよりも心配する気持ちが大きいのでしょう。今力になれるのは自分達しかいない、独りぼっちにできないと口にするふたり。孤独の苦しさ、不安は彼女達も知っています。
とは言っても何をすればいいのか分からない響。ハミィは楽しくおしゃべりすればすぐに仲良しになれると言います。「だよね」。絶対何も考えてないだろ、おい。結論から言えばそのとおりなんだけど、それを素直に認められないのが感情ってもんです。良くも悪くも人は変化を嫌う。
話題作りのためかはたまた餌付けのためか奏はカップケーキを持参しています。腹が減っているところを食い物でつる、姑息ですが有効的な手段です。
そこに先ほどの父親が慌てた様子で通りがかります。
②分かれ道
マモル君と雑談をするセイレーン。少し打ち解けています。そこに響と奏。居場所の目星を付けられていたようです。消去法的にここしかない。
なんの用?と厳しい口調でふたりに返事をするセイレーン。奏は「べっつに~」とそっけない態度で答えながらカップケーキを見せます。上手い作戦です。仲間になれ、友達になろうと直球で攻めるよりは一緒に食べようと誘う方が受け入れやすい。少しずつ譲歩させていくのは交渉の基本です。
これにはマモル君が飛びつきます。ラッキースプーンを知っているようです。
美味しそうに食べるマモル君。隣に居るセイレーンは少々困った様子です。なし崩し的に響と奏が一緒に座っています。響は食べ終わったのでしょう子猫を膝に置いています。
マモル君が持っていたのは父親の仕事道具。勝手に持ち出してきたようです。
外に出たマモルを追って奏達が声をかけます。先ほどすれ違った慌てた人は親父さんだろうと目星を付けます。何があったか訪ねるもふたりに関係ないと拒否。しかし食べ物の力は偉大。もう友達だから、と接点を作ります。控えめながらもセイレーンも聞きたいと言います。
街の医者として働いていた父は船医となって働くことになり1年家を空けることに。マモル君はそれに反発。医者としての使命感を語る父。個人の使命や仕事と家庭との天秤をバランス良く取るのは難しい。一概に子どもといってもある程度長じていれば親がいなくても気にならないだろうし、親が必要な時期もある。10歳は必要とする年齢でしょう。
響は寂しいかもしれないけど心と心が繋がっていれば大丈夫、と自分の経験を踏まえて言います。実際問題として、小学生がこれを理解するのはかなり難しいと思います。中学生でも難しい。愛情の在り方、目に見えないものを信じる、愛されていると実感するには多くの経験と精神的な成熟を要します。親と別居していても愛情に飢えない程度に関係を構築することはそれほど難しくないと思いますが、これをより積極・能動的に実感して受け止めるとなるととたんに敷居が高くなります。大人でも愛情による結びつきを性愛や物理的な距離によってしか見られない人もいます。これは単に愛情に充足するだけでなく、目に見えないものを信じるという抽象的な次元になってくるので精神的な成熟や経験が必要だからです。
奏も響の言葉に追従します。セイレーンにも話しを振ると「そうは思わない」と答えが返ってきます。日陰に隠れているのが視覚的にも分かりやすいところです。
人は孤独、誰だって最後は独り、独りで生きていけるように強くなれば寂しさなんて無くなると言います。彼女の心象がそのまま出ている。そしておそらく本人も意識せずにマモルを自分側に引き寄せようとしている。孤独と言いながら真の孤独を拒もうとする矛盾があります。
セイレーンの言葉に頷くマモル。奏は父親の鞄を持ってきたのは行って欲しくないからでしょ?と訊きます。良いところを突きました。マモル君は言葉に詰まります。人は孤独です。私もそう思う。でも孤独であることと、孤独でありたいと思うことは別です。絆や連帯、居場所を作りそれを実感して喜びや充実、生の豊かさを感じる、あるいはそれを求めようとすることに意味があるのだと思う。そこに人の本質があると考える。
父親の出発は今日の夕方。猶予の時間はありません。このままでは最悪の形で分かれてしまいます。響と奏はすぐに父親を捜しに向かいます。
対してセイレーンはパパに会いたくないんでしょ?と自分と来るように言います。ハミィは何も言わずセイレーンを見つめます。セイレーンも何も言わず立ち去っていきます。
大勢の人出で賑わう商店街を歩きながら、セイレーンは自分達は独りぼっちと呟きます。マモル君はセイレーンの言葉に引き込まれるように思考の中に落込んでいきます。あやうく赤信号を渡りかけてしまいます。セイレーンに抱きかかえられます。なんて羨ましい。
倒れた拍子に鞄が投げ出され中身が出てしまいます。その中の一つに目を留めるマモル君。不器用な猫のぬいぐるみ。ふと父親が指をケガしているのを思い出すと彼は気付きます。
「お姉ちゃん、ごめん。僕戻るよ」
自分のために作られたぬいぐるみに父との絆、愛情を感じるマモル君。セイレーンはでもマモルを置いて行ってしまうと追求します。
「でも、このままじゃきっと今度はパパが独りぼっちになっちゃう。僕はパパを独りぼっちにしたくない。だって、僕、パパが大好きだから」
見事だ。完敗です。なんで気付かなかったんだろう。この物語の洞察と追求は見事と云う他ない。あなたが孤独だということは、あなたと連なる彼(彼女)までも孤独にしてしまうということ。彼(彼女)のことが大好きなあなたはそれを許せるの? そう問うことも出来る。
セイレーンに大好きな人、大好きになりたい人は?と問うマモル。セイレーンの脳裏にはハミィ、響と奏が映ります。
「マモル、戻ろっか」
停滞していた心は再び歩み出します。
③ビートのキャラが色々ぶっとんでる
父との再会。プレゼントだったと話す父にマモルはお礼を言います。
セイレーンに戻ってきてくれてありがとうとお礼を言う響。ハミィは最初から知っていた、昔っからずっと心で繋がっていると純真無垢な表情で言います。しかしセイレーンは少し後ろめたい顔を浮かべています。
トリオ登場。ぬいぐるみをネガトーン化させます。音波によって嘆き悲しむマモル親子。セイレーンが心配します。その横で出番だ、と言わんばかりに堂々と並んで前に出る響奏。ごめん、ここちょっと吹きそうになりました。変身。
ネガトーンと激しく戦うプリキュア。それを見てセイレーンは疑問を口にします。何故戦うのか、何故自分にまで優しい言葉をかけてくるのか。ハミィが答えます。ふたりは自分の心に素直なだけ、守りたいもののために全力で頑張る、力を合わせる、それがハーモニーパワー、それこそがプリキュア。
セイレーンに変身しないのか?と問いかけるバスドラ。セイレーンはモジュールを見つめながら戸惑います。先ほどのハミィの言葉に自分は値するのか。
マモル親子を苦しめるバスドラにこんな酷いことは止めてと言うと「貴様が今まで散々やってきたことではないか!」と罵られます。このアニメ容赦ねぇ。セイレーンはモジュールを取り落としてしまいます。
転がったモジューレの前で、ハミィは今どうしたいのかと問います。このアニメ容赦ねぇ。こういうストレートなことをやってくれるのがプリキュアの良いところ。過去は消えない。しがらみもある。けど、今何をすべきか。過去の自分と向き合いながら脚を踏み出していく強さ。その原動力が何であるかを問います。
「私は…私は…守りたい。私が今まで壊してきたもの、友情とか愛情とか。信じる心…そう、心の絆を、私はもう二度と壊したくない!そのための力が、その資格が、この私に、あるというのなら!私は、プリキュアになりたい!」
その言葉を待っていたラリーとソリーが迎えます。心の強さを力に、胸の内にわき上がる想いを声に。セイレーンはキュアビートへと変身します。
「心のビートはもう、止められないわ」
髪の毛を弾くビート。……誰だこれ考えた奴。このノリを女児向けアニメでやろうと言い出した人は素直に手を挙げなさい。
ビート無双。ネガトーンを圧倒します。トリオは超級覇王電影弾を使って特攻してきます。だから誰だよこのノリで行こうって言った人。ラブギターロッドを召喚。ラリーがくっつきます。バリアを発生させて攻撃をはじき返します。追加戦士はバリア持ちが地味に多い。
次いでソニック。無数の音符が槍となってトリオを打ちます。前回ギターとして使いませんでしたが、ちゃんとギターとしての利用価値があるようです。困ったことにベルティエよりも優秀な武器です。ベルティエの真の価値はバンクの艶めかしさにありますが。
一曲弾き終わった、みたいな感じで一瞬隙が生まれたビートにネガトーンが襲いかかります。すかさずメロディリズムがアシスト。最近忘れられかけていますが、主人公です。
BGMを聴くとCMを連想してしまうミュージックロンドを発動。あのCMの完成度とインパクトの強さは近年希に見る。売上げの半分以上はCMの功績だと思います。それはそれとして、ミュージックロンドで好きなシーンはトリガー引いた直後の後ろ姿です。サイドポニーの髪型がキュート。正面からもそうですが、後ろ姿も可愛いのはポイント高いです。
これまた演奏終わったという感じで髪をかき上げるビート。これを女児向けに取り込むアグレッシブさが凄い。もう好き放題。
④絆に満ちた世界へ
マモルは父親を見送ります。
その姿を見てセイレーンは涙を零します。
「涙は世界で一番小さな海。アンデルセンの言葉じゃな」
いつの間にか音吉さんが居ます。
「人は人と繋がることで生きていける。そして人はみな心に海を持っている。お前さんの心に涙という海があるのならお前さんも必ず誰かと繋がることが出来よう」
「私は幸せのメロディが大好きだった。でもその歌い手にハミィが選ばれたときハミィを憎んでしまった。その憎しみはじょじょに大きくなりやがて幸せのメロディを、世界の幸せさえも憎んでしまった。大好きなものを大嫌いに変えてしまう。そんな恐ろしい心が私の中にあった。だから私はプリキュアになるのが怖かった。だって、いつまた私の心に憎しみが生まれるか分からないから…」
セイレーンは自分の心のわだかまりを告白します。震える手を奏と響は掴みます。
「エレンはもう一人じゃないから」
「だからもうそんなことありえない。私達がそんなことさせないよ」
かつて大好きな人を大嫌いになったふたり。そしてまた大好きになったふたりの言葉。言いたいことをみんなと繋がっている海に言おうと促します。
「ごめんなさい! 今まで酷いことをしてたくさんの心の絆を壊してごめんなさい。でもこれからは守るから…心の絆を守っていくから、だから私もハミィやみんなと心と心で繋がりたい!」
ふたりは彼女の手を両手で包み込みます。
「ありがとう」
⑤次回予告
…………………。海で穴掘りとか意味わかんねーよ!!!
○トピック
次回予告が全てをぶちこわした回。最近ここの出だしが本編と関係ないことばかりになってきたので、そろそろ真面目に入ろうかと思います。
孤独からの解放、心の救済に対してド直球に投げるプリキュアの肝の据わり方が凄い。プリキュアの醍醐味です。大事なことは本編で完全に語られていますが、論理的にも構成されています。
セイレーンは今回にて本格的に新しい一歩を踏み出していくことになるので、エレンの名にそれが仮託されていると見ていいでしょう(エレンの名が1話で登場していても前回まで使われていなかったのはこのためでしょう)。しかし当然ながらセイレーンの名(過去)が無くなるわけではないので、過去を知るハミィがセイレーンと呼ぶのも正しい表現と言えます。彼女は生まれ変わったわけでも、過去を失ったわけでもありません。エレンとして、セイレーンの過去を背負った者として存在しています。この辺はややこしいのでおそらく作中でも詳しく説明はされないと思われます。ハートキャッチで言えばつぼみが眼鏡をたまにかけているようなものです。重要なことは、過去から連続しているということです。眼鏡を外すことも、エレンと名乗ることも過去があったからであり、新しい変化を受け止めながら自分をどう規定し肯定していくかに意味があります。
セイレーンのエピソードはフレッシュのせつなのエピソードと似ていますが、アプローチの仕方は全く異なります。この違いは物語のテーマ、扱っている事象の違いによって生じています。
せつなは異世界の異なる価値観の下で生まれた人物で、ラブ達が住む世界の価値観や人の温かみに触れることで心の持ち方が変わった少女でした。これは言い換えれば愛情を受けたことがない子どもと言えます。彼女にあゆみさん(ラブのお母さん)を引き合せて家族を持たせました。愛情に恵まれなかった子どもを保護し、家と家族を与えた上で彼女に愛情、幸せの形を実感させています。その子どもが成長して母国を幸せな国にしていけるように巣立っていく物語となっています。幸せや愛情の獲得とそこからの拡張が提示されている。
これに対してセイレーンは再回帰的です。好きだったものを嫌いになってしまったことで色んな悲劇を生み出してしまった。そうなってしまったのは人間関係や心の弱さ、隙が原因です。これは響と奏もそうです。スイートの物語は人の心が弱く脆いもので人間関係によってそれが露呈してしまうことを描いています。より現実的な人間像、事象を扱っていると言えます。人間関係には人と人を繋ぎ合せる力もある。だからセイレーンは誰かに保護されるのではなく、誰かに影響されながら、誰かと共に在ることで孤独からの解放、良心の復活を遂げています。「心の絆」が何度も繰り返し強調されているのはそのためです。スイートらしい転換を描いています。
これをセイレーンに実感させるにあたって今回ハミィ、響奏をメインに置かなかったのは正しい作りです。物語の意味を拡張しつつ普遍化させています。
重要なことはセイレーンが全くの他人から学んでいる点です。ハミィ、響奏は頼まなくても彼女に優しく接するでしょう。良くも悪くもこれまでの経緯で関係しているからです。でも少年は違う。行きずりの他人です。その他人の気持ち、絆の在り方にセイレーンは感じ入り見出しています。
スイートでは、響と奏のように四六時中一緒にいて親友として絆を育む描写と同時に、親と離れていても愛情で繋がっていれば寂しくないという関係も描写されています。これは現代では単身赴任が珍しくないことから、子ども達に安心感や希望を持たせる配慮があると思いますが、愛情の在り方、人間関係の距離の多様さを描いているとも言えます。響の家庭のように親と離れて暮らす、奏のように親兄弟と一緒に食事を摂る、様々な形態の家庭があり、絆がある。決して愛情の在り方、絆、友情は一つの形ではないのです。それは何も親しい仲だけではなく、響や奏、セイレーンが今回マモル君を気遣ったように親切さや思い遣りとして他人にも向けられます。この世界は見ず知らずの他者を受け入れ、あるいはセイレーンがそうであるように他者の姿から何かを見出し糧にすることが出来る世界なのです。優しさや可能性に満ちている。それと反対に絆を壊し、人から幸せを奪い、醜悪でおぞましいことが生まれる世界でもある。憎しみや猜疑心、無関心に満ちている。世界の多様さは人の多様さと同義です。
この世界はそうした無数の絆、心、人々が存在している世界なのだとセイレーンは気付くんですね。今回の一番大事なところはここです。彼女は自責の念から人と繋がることを拒んでいました。それは自分のやったことから目を背けることと同義です。自分の殻に閉じこもろうとしていた。これに対して大好きな人を孤独にしていいの?と問いかけるのは見事でした。殻の内側から、自ら世界へと目を向けられるよう転換させています。
それによってハミィとの絆、響奏の絆、それらと同じ絆をたくさん壊してきたことを彼女は本当に実感するのです。前回に引き続き容赦ないところです。その上で彼女は自らの過ちを認めやり直していきます。それは心の再生を自ら意志していくこと、自ら歩み寄っていくことで孤独から開放されることでもある。セイレーン個人の救済の道と、彼女達が暮らす世界の豊穣さを同時に提示しています。世界は開かれ、人々はそこで繋がり合っている。
絆、友情をテーマにして、それを個別的な枠に限定することなく今までやってきたことを踏まえて普遍化しています。これは本作の「音楽」の意味とも関連するでしょう。人、自然が奏でる音。この世界そのものが音楽と云える。そしてこの世界には人々の心や絆が充ち満ちている。孤独がさらに孤独を作りだしていくのなら、絆が絆を作りだしていけること、様々な出会いや関係から人が成長していけることを描いています。
人の両面性、両義性を描きながらそれでも人を肯定し続ける意志をこの作品から感じます。人は色んな形、距離で繋がり合っている。そこには優しさや思い遣り、負の感情もあるでしょう。無関心もある。時に人は過ちも犯す。過ちに気づいた時に人は贖罪のためではなく、自らの心が発する愛情によって歩めと言っています。そうすることでより多くの愛情を生み出していける。
これは現代らしい考え方でしょう。もう現代は社会正義や思想のような大きな正義を標榜できません。冷戦は終わり共産主義と資本主義の対立も消滅している。個人主義も浸透している。だから現代の物語にはヒーローものであっても純粋な悪党や悪の組織が登場しにくいのです。純粋な悪を出すということは純粋な正義を出す必要があって、その正義に説得力を感じなくなっているんです。何のために戦う?なんで戦わなければならないのか?何と戦えと言うのか?
プリキュアは人そのものと戦う道を選んでいます。人の心に潜む弱さ、脆さ、過ち、憎悪と戦う。日々の中で体験する悩みや苦しみからどうすれば解放され、幸せになることができるのか。しかし人が存在する限り不幸も過ちもなくなることはありません。生きる限りずっとそうした人の弱さや矛盾、歪みと付き合わなければならない。プリキュアの物語はそれに打ちのめされることなく人が創り出す素晴らしいものに目を向けて肯定していく物語として私の目に映ります。
人間にとっての世界とは詰まるところ人間が居る世界です。人間が一番好きなものも嫌いなものも人間なのだと思う。生の肯定、幸せは人間を肯定できるかにある。この世界に生きる私達はそれを見出していけるのか。プリキュアはずっとそれに向き合ってきた物語です。毎年、何度でも言うけど、そこが凄く面白くて好きです。
①小さな出会い
メイジャーにもマイナーにも帰れず自分の居場所を見失うセイレーン。
エレン、と響達が呼びます。これからは一緒に戦おうと声をかけます。しかしセイレーンは自責の念から拒みます。
この感想では特に理由が無い限り「セイレーン」と呼称します。本名であることと、ハミィがそう呼んでいるためです。作中で「エレン」に統一しないのはハミィにとって幼い頃からその名で馴染んでいることと、セイレーンの全てを知って許容しているためであろうと思われます。エレンがセイレーンに帰れる余地を残している。まあ、番組的に言えば日常生活でセイレーンと名乗るのは不都合も多いでしょう。人間用の名前を使うのはくるみ(ミルク)の前例があります。
トリオ達は拠点を灯台に移します。必要性はないような気がしますが、セイレーンの立ち位置が変わったことに合わせて変化を付けていると思われます。トリオ達はセイレーンを敵と認めます。この辺のリアクションも響達とは違う点です。
調べの館に戻ってくるセイレーン。
子猫が姿を現わします。すると子猫を追って少年もやってきます。近所の子猫らしい。「マモル!」と少年を呼ぶ声。父親の声を聞いたマモル君はセイレーンを連れて隠れます。
父親が行ってしまうと安心したのか腹の虫が鳴ります。少年を気遣うセイレーンも同じく虫が鳴ります。ニャーと鳴く子猫。つられてふたりも笑い出します。
響と奏はセイレーンを心配します。彼女達はもうセイレーンを疑う気は無いようです。前回の懺悔や変身の経緯を見れば警戒心を抱くよりも心配する気持ちが大きいのでしょう。今力になれるのは自分達しかいない、独りぼっちにできないと口にするふたり。孤独の苦しさ、不安は彼女達も知っています。
とは言っても何をすればいいのか分からない響。ハミィは楽しくおしゃべりすればすぐに仲良しになれると言います。「だよね」。絶対何も考えてないだろ、おい。結論から言えばそのとおりなんだけど、それを素直に認められないのが感情ってもんです。良くも悪くも人は変化を嫌う。
話題作りのためかはたまた餌付けのためか奏はカップケーキを持参しています。腹が減っているところを食い物でつる、姑息ですが有効的な手段です。
そこに先ほどの父親が慌てた様子で通りがかります。
②分かれ道
マモル君と雑談をするセイレーン。少し打ち解けています。そこに響と奏。居場所の目星を付けられていたようです。消去法的にここしかない。
なんの用?と厳しい口調でふたりに返事をするセイレーン。奏は「べっつに~」とそっけない態度で答えながらカップケーキを見せます。上手い作戦です。仲間になれ、友達になろうと直球で攻めるよりは一緒に食べようと誘う方が受け入れやすい。少しずつ譲歩させていくのは交渉の基本です。
これにはマモル君が飛びつきます。ラッキースプーンを知っているようです。
美味しそうに食べるマモル君。隣に居るセイレーンは少々困った様子です。なし崩し的に響と奏が一緒に座っています。響は食べ終わったのでしょう子猫を膝に置いています。
マモル君が持っていたのは父親の仕事道具。勝手に持ち出してきたようです。
外に出たマモルを追って奏達が声をかけます。先ほどすれ違った慌てた人は親父さんだろうと目星を付けます。何があったか訪ねるもふたりに関係ないと拒否。しかし食べ物の力は偉大。もう友達だから、と接点を作ります。控えめながらもセイレーンも聞きたいと言います。
街の医者として働いていた父は船医となって働くことになり1年家を空けることに。マモル君はそれに反発。医者としての使命感を語る父。個人の使命や仕事と家庭との天秤をバランス良く取るのは難しい。一概に子どもといってもある程度長じていれば親がいなくても気にならないだろうし、親が必要な時期もある。10歳は必要とする年齢でしょう。
響は寂しいかもしれないけど心と心が繋がっていれば大丈夫、と自分の経験を踏まえて言います。実際問題として、小学生がこれを理解するのはかなり難しいと思います。中学生でも難しい。愛情の在り方、目に見えないものを信じる、愛されていると実感するには多くの経験と精神的な成熟を要します。親と別居していても愛情に飢えない程度に関係を構築することはそれほど難しくないと思いますが、これをより積極・能動的に実感して受け止めるとなるととたんに敷居が高くなります。大人でも愛情による結びつきを性愛や物理的な距離によってしか見られない人もいます。これは単に愛情に充足するだけでなく、目に見えないものを信じるという抽象的な次元になってくるので精神的な成熟や経験が必要だからです。
奏も響の言葉に追従します。セイレーンにも話しを振ると「そうは思わない」と答えが返ってきます。日陰に隠れているのが視覚的にも分かりやすいところです。
人は孤独、誰だって最後は独り、独りで生きていけるように強くなれば寂しさなんて無くなると言います。彼女の心象がそのまま出ている。そしておそらく本人も意識せずにマモルを自分側に引き寄せようとしている。孤独と言いながら真の孤独を拒もうとする矛盾があります。
セイレーンの言葉に頷くマモル。奏は父親の鞄を持ってきたのは行って欲しくないからでしょ?と訊きます。良いところを突きました。マモル君は言葉に詰まります。人は孤独です。私もそう思う。でも孤独であることと、孤独でありたいと思うことは別です。絆や連帯、居場所を作りそれを実感して喜びや充実、生の豊かさを感じる、あるいはそれを求めようとすることに意味があるのだと思う。そこに人の本質があると考える。
父親の出発は今日の夕方。猶予の時間はありません。このままでは最悪の形で分かれてしまいます。響と奏はすぐに父親を捜しに向かいます。
対してセイレーンはパパに会いたくないんでしょ?と自分と来るように言います。ハミィは何も言わずセイレーンを見つめます。セイレーンも何も言わず立ち去っていきます。
大勢の人出で賑わう商店街を歩きながら、セイレーンは自分達は独りぼっちと呟きます。マモル君はセイレーンの言葉に引き込まれるように思考の中に落込んでいきます。あやうく赤信号を渡りかけてしまいます。セイレーンに抱きかかえられます。なんて羨ましい。
倒れた拍子に鞄が投げ出され中身が出てしまいます。その中の一つに目を留めるマモル君。不器用な猫のぬいぐるみ。ふと父親が指をケガしているのを思い出すと彼は気付きます。
「お姉ちゃん、ごめん。僕戻るよ」
自分のために作られたぬいぐるみに父との絆、愛情を感じるマモル君。セイレーンはでもマモルを置いて行ってしまうと追求します。
「でも、このままじゃきっと今度はパパが独りぼっちになっちゃう。僕はパパを独りぼっちにしたくない。だって、僕、パパが大好きだから」
見事だ。完敗です。なんで気付かなかったんだろう。この物語の洞察と追求は見事と云う他ない。あなたが孤独だということは、あなたと連なる彼(彼女)までも孤独にしてしまうということ。彼(彼女)のことが大好きなあなたはそれを許せるの? そう問うことも出来る。
セイレーンに大好きな人、大好きになりたい人は?と問うマモル。セイレーンの脳裏にはハミィ、響と奏が映ります。
「マモル、戻ろっか」
停滞していた心は再び歩み出します。
③ビートのキャラが色々ぶっとんでる
父との再会。プレゼントだったと話す父にマモルはお礼を言います。
セイレーンに戻ってきてくれてありがとうとお礼を言う響。ハミィは最初から知っていた、昔っからずっと心で繋がっていると純真無垢な表情で言います。しかしセイレーンは少し後ろめたい顔を浮かべています。
トリオ登場。ぬいぐるみをネガトーン化させます。音波によって嘆き悲しむマモル親子。セイレーンが心配します。その横で出番だ、と言わんばかりに堂々と並んで前に出る響奏。ごめん、ここちょっと吹きそうになりました。変身。
ネガトーンと激しく戦うプリキュア。それを見てセイレーンは疑問を口にします。何故戦うのか、何故自分にまで優しい言葉をかけてくるのか。ハミィが答えます。ふたりは自分の心に素直なだけ、守りたいもののために全力で頑張る、力を合わせる、それがハーモニーパワー、それこそがプリキュア。
セイレーンに変身しないのか?と問いかけるバスドラ。セイレーンはモジュールを見つめながら戸惑います。先ほどのハミィの言葉に自分は値するのか。
マモル親子を苦しめるバスドラにこんな酷いことは止めてと言うと「貴様が今まで散々やってきたことではないか!」と罵られます。このアニメ容赦ねぇ。セイレーンはモジュールを取り落としてしまいます。
転がったモジューレの前で、ハミィは今どうしたいのかと問います。このアニメ容赦ねぇ。こういうストレートなことをやってくれるのがプリキュアの良いところ。過去は消えない。しがらみもある。けど、今何をすべきか。過去の自分と向き合いながら脚を踏み出していく強さ。その原動力が何であるかを問います。
「私は…私は…守りたい。私が今まで壊してきたもの、友情とか愛情とか。信じる心…そう、心の絆を、私はもう二度と壊したくない!そのための力が、その資格が、この私に、あるというのなら!私は、プリキュアになりたい!」
その言葉を待っていたラリーとソリーが迎えます。心の強さを力に、胸の内にわき上がる想いを声に。セイレーンはキュアビートへと変身します。
「心のビートはもう、止められないわ」
髪の毛を弾くビート。……誰だこれ考えた奴。このノリを女児向けアニメでやろうと言い出した人は素直に手を挙げなさい。
ビート無双。ネガトーンを圧倒します。トリオは超級覇王電影弾を使って特攻してきます。だから誰だよこのノリで行こうって言った人。ラブギターロッドを召喚。ラリーがくっつきます。バリアを発生させて攻撃をはじき返します。追加戦士はバリア持ちが地味に多い。
次いでソニック。無数の音符が槍となってトリオを打ちます。前回ギターとして使いませんでしたが、ちゃんとギターとしての利用価値があるようです。困ったことにベルティエよりも優秀な武器です。ベルティエの真の価値はバンクの艶めかしさにありますが。
一曲弾き終わった、みたいな感じで一瞬隙が生まれたビートにネガトーンが襲いかかります。すかさずメロディリズムがアシスト。最近忘れられかけていますが、主人公です。
BGMを聴くとCMを連想してしまうミュージックロンドを発動。あのCMの完成度とインパクトの強さは近年希に見る。売上げの半分以上はCMの功績だと思います。それはそれとして、ミュージックロンドで好きなシーンはトリガー引いた直後の後ろ姿です。サイドポニーの髪型がキュート。正面からもそうですが、後ろ姿も可愛いのはポイント高いです。
これまた演奏終わったという感じで髪をかき上げるビート。これを女児向けに取り込むアグレッシブさが凄い。もう好き放題。
④絆に満ちた世界へ
マモルは父親を見送ります。
その姿を見てセイレーンは涙を零します。
「涙は世界で一番小さな海。アンデルセンの言葉じゃな」
いつの間にか音吉さんが居ます。
「人は人と繋がることで生きていける。そして人はみな心に海を持っている。お前さんの心に涙という海があるのならお前さんも必ず誰かと繋がることが出来よう」
「私は幸せのメロディが大好きだった。でもその歌い手にハミィが選ばれたときハミィを憎んでしまった。その憎しみはじょじょに大きくなりやがて幸せのメロディを、世界の幸せさえも憎んでしまった。大好きなものを大嫌いに変えてしまう。そんな恐ろしい心が私の中にあった。だから私はプリキュアになるのが怖かった。だって、いつまた私の心に憎しみが生まれるか分からないから…」
セイレーンは自分の心のわだかまりを告白します。震える手を奏と響は掴みます。
「エレンはもう一人じゃないから」
「だからもうそんなことありえない。私達がそんなことさせないよ」
かつて大好きな人を大嫌いになったふたり。そしてまた大好きになったふたりの言葉。言いたいことをみんなと繋がっている海に言おうと促します。
「ごめんなさい! 今まで酷いことをしてたくさんの心の絆を壊してごめんなさい。でもこれからは守るから…心の絆を守っていくから、だから私もハミィやみんなと心と心で繋がりたい!」
ふたりは彼女の手を両手で包み込みます。
「ありがとう」
⑤次回予告
…………………。海で穴掘りとか意味わかんねーよ!!!
○トピック
次回予告が全てをぶちこわした回。最近ここの出だしが本編と関係ないことばかりになってきたので、そろそろ真面目に入ろうかと思います。
孤独からの解放、心の救済に対してド直球に投げるプリキュアの肝の据わり方が凄い。プリキュアの醍醐味です。大事なことは本編で完全に語られていますが、論理的にも構成されています。
セイレーンは今回にて本格的に新しい一歩を踏み出していくことになるので、エレンの名にそれが仮託されていると見ていいでしょう(エレンの名が1話で登場していても前回まで使われていなかったのはこのためでしょう)。しかし当然ながらセイレーンの名(過去)が無くなるわけではないので、過去を知るハミィがセイレーンと呼ぶのも正しい表現と言えます。彼女は生まれ変わったわけでも、過去を失ったわけでもありません。エレンとして、セイレーンの過去を背負った者として存在しています。この辺はややこしいのでおそらく作中でも詳しく説明はされないと思われます。ハートキャッチで言えばつぼみが眼鏡をたまにかけているようなものです。重要なことは、過去から連続しているということです。眼鏡を外すことも、エレンと名乗ることも過去があったからであり、新しい変化を受け止めながら自分をどう規定し肯定していくかに意味があります。
セイレーンのエピソードはフレッシュのせつなのエピソードと似ていますが、アプローチの仕方は全く異なります。この違いは物語のテーマ、扱っている事象の違いによって生じています。
せつなは異世界の異なる価値観の下で生まれた人物で、ラブ達が住む世界の価値観や人の温かみに触れることで心の持ち方が変わった少女でした。これは言い換えれば愛情を受けたことがない子どもと言えます。彼女にあゆみさん(ラブのお母さん)を引き合せて家族を持たせました。愛情に恵まれなかった子どもを保護し、家と家族を与えた上で彼女に愛情、幸せの形を実感させています。その子どもが成長して母国を幸せな国にしていけるように巣立っていく物語となっています。幸せや愛情の獲得とそこからの拡張が提示されている。
これに対してセイレーンは再回帰的です。好きだったものを嫌いになってしまったことで色んな悲劇を生み出してしまった。そうなってしまったのは人間関係や心の弱さ、隙が原因です。これは響と奏もそうです。スイートの物語は人の心が弱く脆いもので人間関係によってそれが露呈してしまうことを描いています。より現実的な人間像、事象を扱っていると言えます。人間関係には人と人を繋ぎ合せる力もある。だからセイレーンは誰かに保護されるのではなく、誰かに影響されながら、誰かと共に在ることで孤独からの解放、良心の復活を遂げています。「心の絆」が何度も繰り返し強調されているのはそのためです。スイートらしい転換を描いています。
これをセイレーンに実感させるにあたって今回ハミィ、響奏をメインに置かなかったのは正しい作りです。物語の意味を拡張しつつ普遍化させています。
重要なことはセイレーンが全くの他人から学んでいる点です。ハミィ、響奏は頼まなくても彼女に優しく接するでしょう。良くも悪くもこれまでの経緯で関係しているからです。でも少年は違う。行きずりの他人です。その他人の気持ち、絆の在り方にセイレーンは感じ入り見出しています。
スイートでは、響と奏のように四六時中一緒にいて親友として絆を育む描写と同時に、親と離れていても愛情で繋がっていれば寂しくないという関係も描写されています。これは現代では単身赴任が珍しくないことから、子ども達に安心感や希望を持たせる配慮があると思いますが、愛情の在り方、人間関係の距離の多様さを描いているとも言えます。響の家庭のように親と離れて暮らす、奏のように親兄弟と一緒に食事を摂る、様々な形態の家庭があり、絆がある。決して愛情の在り方、絆、友情は一つの形ではないのです。それは何も親しい仲だけではなく、響や奏、セイレーンが今回マモル君を気遣ったように親切さや思い遣りとして他人にも向けられます。この世界は見ず知らずの他者を受け入れ、あるいはセイレーンがそうであるように他者の姿から何かを見出し糧にすることが出来る世界なのです。優しさや可能性に満ちている。それと反対に絆を壊し、人から幸せを奪い、醜悪でおぞましいことが生まれる世界でもある。憎しみや猜疑心、無関心に満ちている。世界の多様さは人の多様さと同義です。
この世界はそうした無数の絆、心、人々が存在している世界なのだとセイレーンは気付くんですね。今回の一番大事なところはここです。彼女は自責の念から人と繋がることを拒んでいました。それは自分のやったことから目を背けることと同義です。自分の殻に閉じこもろうとしていた。これに対して大好きな人を孤独にしていいの?と問いかけるのは見事でした。殻の内側から、自ら世界へと目を向けられるよう転換させています。
それによってハミィとの絆、響奏の絆、それらと同じ絆をたくさん壊してきたことを彼女は本当に実感するのです。前回に引き続き容赦ないところです。その上で彼女は自らの過ちを認めやり直していきます。それは心の再生を自ら意志していくこと、自ら歩み寄っていくことで孤独から開放されることでもある。セイレーン個人の救済の道と、彼女達が暮らす世界の豊穣さを同時に提示しています。世界は開かれ、人々はそこで繋がり合っている。
絆、友情をテーマにして、それを個別的な枠に限定することなく今までやってきたことを踏まえて普遍化しています。これは本作の「音楽」の意味とも関連するでしょう。人、自然が奏でる音。この世界そのものが音楽と云える。そしてこの世界には人々の心や絆が充ち満ちている。孤独がさらに孤独を作りだしていくのなら、絆が絆を作りだしていけること、様々な出会いや関係から人が成長していけることを描いています。
人の両面性、両義性を描きながらそれでも人を肯定し続ける意志をこの作品から感じます。人は色んな形、距離で繋がり合っている。そこには優しさや思い遣り、負の感情もあるでしょう。無関心もある。時に人は過ちも犯す。過ちに気づいた時に人は贖罪のためではなく、自らの心が発する愛情によって歩めと言っています。そうすることでより多くの愛情を生み出していける。
これは現代らしい考え方でしょう。もう現代は社会正義や思想のような大きな正義を標榜できません。冷戦は終わり共産主義と資本主義の対立も消滅している。個人主義も浸透している。だから現代の物語にはヒーローものであっても純粋な悪党や悪の組織が登場しにくいのです。純粋な悪を出すということは純粋な正義を出す必要があって、その正義に説得力を感じなくなっているんです。何のために戦う?なんで戦わなければならないのか?何と戦えと言うのか?
プリキュアは人そのものと戦う道を選んでいます。人の心に潜む弱さ、脆さ、過ち、憎悪と戦う。日々の中で体験する悩みや苦しみからどうすれば解放され、幸せになることができるのか。しかし人が存在する限り不幸も過ちもなくなることはありません。生きる限りずっとそうした人の弱さや矛盾、歪みと付き合わなければならない。プリキュアの物語はそれに打ちのめされることなく人が創り出す素晴らしいものに目を向けて肯定していく物語として私の目に映ります。
人間にとっての世界とは詰まるところ人間が居る世界です。人間が一番好きなものも嫌いなものも人間なのだと思う。生の肯定、幸せは人間を肯定できるかにある。この世界に生きる私達はそれを見出していけるのか。プリキュアはずっとそれに向き合ってきた物語です。毎年、何度でも言うけど、そこが凄く面白くて好きです。